説明

振動感知タッチ入力装置

本発明は、表面におけるタッチ器具のタッチ衝突および/または摩擦移動による振動を用いて、タッチ位置などのタッチに関連する情報を判断するタッチ感知入力装置を提供する。本発明はまた、そのような振動感知入力オ装置内のリフトオフ事象の検出を提供する。タッチプレート上の持続的タッチを表わす信号を監視するとともにそのような信号の変化をリフトオフ事象と関連付けることにより、リフトオフ検出を達成することができる。持続的タッチを表わす信号は、タッチ器具を介してタッチプレート内に結合された低周波ランブル、持続的タッチの力によるタッチプレートの屈曲、および持続的タッチの力によるタッチプレートの変位を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ入力に関連する情報を判断するためにタッチプレート内を伝播する振動を利用するタッチ入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ディスプレイは生活のあらゆる面で広く用いられている。過去には電子ディスプレイの利用は主にデスクトップコンピュータおよびノートブックコンピュータなどの演算用用途に限定されていたが、処理能力がより利用しやすくなるにつれて、そのような能力が幅広い用途に組み込まれてきた。例えば今では一例を挙げると現金自動預け払い機、ゲーム機、自動車ナビゲーションシステム、レストラン管理システム、食料品店精算ライン、ガソリンポンプ、情報端末、およびシステム電子手帳などの多様な用途で電子ディスプレイを見ることが一般的である。そのようなディスプレイおよび装置とのユーザの対話のため、タッチ感知入力装置を提供することが有用且つ便利であることよく分かっている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、振動感知タッチセンサ上の持続的タッチ(sustained touch)の存在検出方法を提供する。この方法はタッチによりタッチプレート内を伝播する振動を用いてタッチプレートのタッチ面へのタッチの位置を判断するステップと、タッチ面上のタッチの持続的接触を表わす信号を検出するステップと、持続的接触を表わす信号の十分な変化を、タッチ面からのタッチの除去と相関付けるステップとを含む。様々な実施形態において、持続的接触を表わす信号が、タッチプレートの変位、タッチプレートの湾曲、タッチ接触からタッチプレート内に結合された低周波振動等を含み得る。
【0004】
また、本発明は、タッチプレートのタッチ面上のタッチ入力によりタッチプレート内を伝播する振動に応じて発生された信号からタッチ入力情報を判断可能なタッチ入力装置を提供し、入力装置はタッチプレートに結合されるとともにタッチ入力がタッチ面上に残っている間信号を発生するように構成された1つまたは複数のセンサと、タッチ入力がタッチ面から除去されたか否かを判断するためのものであって、1つまたは複数のセンサにより発生された信号を受信するように構成された電子機器とを含む。いくつかの実施形態において、持続的タッチ入力を検出するために用いられるセンサを、タッチ位置を判断するために用いられる振動を検出するために用いることができる。他の実施形態において、異なるセンサを用いて持続的タッチ入力およびタッチ位置を判断するために用いられる振動を検出することができる。
【0005】
本発明は、添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を考慮することでより完全に理解されよう。
【0006】
本発明は、様々な変更例および代替形状態が可能であるが、その具体例は一例として図面に示すとともに詳細に説明する。しかし、本発明を記載の特定の実施形態に限定しようとするものではないことは理解されよう。逆に、本発明の要旨および範囲内にある変更例、等価物および代替例をすべて網羅しようとするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、タッチプレートのタッチ面上の指、スタイラスまたは他のタッチ器具の衝突または摩擦移動により生じた振動により発生された信号からタッチ接触箇所を判断することができる振動感知タッチセンサに関する。
【0008】
タッチダウンの検出およびタッチ接触の追跡に加えて、タッチが表面から除去された時を示す接触リフトオフを判断することも有利であり得る。本発明によれば、タッチ面上のタッチの持続的接触を示す信号を監視するとともに、その後持続的タッチの除去と相関付けられ得る信号レベルの低下などのその信号の変化を検出することにより、リフトオフ検出を達成することができる。例えばタッチ接触が残っている間に存在するタッチプレート上のタッチ力は、持続的タッチを表わす信号を発生することができる。タッチ力下のタッチプレートの変位を測定するものおよびタッチ力下のタッチプレートの屈曲または湾曲を測定するものを始めとする多数の技術を用いて、タッチ力を測定することができる。持続的タッチは、比較的低周波振動をタッチプレートに結合することにもなり得る。振動センサを用いてこのような低周波振動またはランブルを監視することが可能であり、その存在は持続的タッチを表わすとともに、その後の不存在がリフトオフ事象を表わす。いくつかの実施形態において、タッチのタッチ衝突またはタッチの摩擦移動から振動を検出するために用いたものと同じ振動センサを用いてランブルを検出することができる一方で、他の実施形態において、1つまたは複数の別のセンサを用いてランブルを検出することができる。
【0009】
タッチ入力を用いるシステムにおいて、いつリフトオフが発生したかを知ることは有用であり得る。例えばタッチ器具がアイコンの真上に位置する場合、機能に関連する表示アイコンが強調表示され得るとともに、リフトオフ時に関連する機能が実行される。ドラッグアンドドロップ動作において、リフトオフが検出された場合のみドロップ機能を実行することが望ましいことがある。多くの用途において、リフトオフを、機能の実行のもとになる意図的ユーザ行為と見なすことができる。
【0010】
接触の除去が確実に検出可能な振動にならないこともあるため、リフトオフ検出はタッチ衝突または摩擦移動により生じる振動信号に依存するタッチシステムでは困難である場合がある。このような受動振動感知システムを、検出可能な方法でタッチ器具と対話する振動または超音波を伝播するために変換器を用いる能動振動感知システムと対比させることができる。このようなシステムでは、タッチが持続される限り、直接測定することができ、リフトオフ事象を検出することは容易である。
【0011】
例示的受動振動感知タッチセンサの動作は、国際公開第01/48684号パンフレットおよび同第03/005292号パンフレット、欧州特許第1240617B1号明細書、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/729,540号明細書、米国特許出願第10/750,290号明細書、米国特許出願第10/750,291号明細書および米国特許出願第10/750,502号明細書、米国特許出願公開第2003/0066692号明細書および同第2002/0135570号明細書、ならびに米国特許第5,637,829号明細書に記載されている。簡単に言えば、受動振動感知タッチ入力装置は以下のように機能することができる。圧電変換素子などの振動センサは、センサが少なくともタッチプレートのタッチ面上のタッチ入力の衝突により生じるような振動周波数を含む周波数範囲にわたりタッチプレート内の屈曲波振動を検出できるように、タッチプレートに結合されている。振動センサは、タッチダウン事象により生成された振動を捕らえるとともに、コントローラ電子機器に伝達される信号を生成する。プレートの入力面にタッチする動作は、エネルギーのインパルスを生成するが、その帯域幅および振幅は接触材料(指、スタイラス、手袋等)、プレート材料(ガラス、アクリル等)、および接触強度に依存する。接触点で付与されたエネルギーは、概してタッチプレートの周辺の周囲の様々な点(矩形プレートの角部など)に位置し、デジタル化可能な信号を発生する振動センサに向かって伝播する。コントローラ電子機器は、デジタル化信号に対する計算を実行してタッチ衝突の箇所またはタッチの強度、タッチ器具のタイプ等などのタッチに関連する他の情報を判断することができる。
【0012】
受動振動感知タッチ装置は、タッチプレートの入力面にわたって追跡されたタッチ器具により生成された振動も検出することができる。タッチ器具とパネルの表面との間の摩擦接触は、ノイズ性信号を発生することが可能であり、その信号の帯域幅および振幅は、タッチ器具およびタッチプレートの材料、タッチ面の粗度、およびその粗度が周期的かランダムかということ、とりわけ、追跡の速度および圧力に依存する。接触点におけるエネルギー入力が振動センサに伝播し、位置がタッチの初期衝突に対するものとほぼ同様の方法で計算される。
【0013】
タッチ入力を表わす振動が概して伝播中に分散しやすい屈曲波振動を含むため、入力位置または他の判断情報にエラーを生じる恐れがある分散効果を補正することが望ましい場合がある。分散効果を補正する例示的方法は、上述の国際公開第01/48684号パンフレットに開示されている。
【0014】
タッチ衝突および摩擦タッチ移動の検出を支える原理は、接触状態の変化がタッチセンサにより感知できる振動を生じるということである。これには、スクリーンと静的接触している他の物体が性能に最小効果を有するという対応する利点がある。手のひら拒否(palm rejection)および汚染耐性などの特徴はこの特性を利用する。例えば人はタッチセンサ面上に手を載せて、指でその面を軽くたたくことができるとともに、手の接触の存在にもかかわらず指でたたいた箇所が判断され得る。
【0015】
受動振動検出方法は、衝突または摩擦移動検出に用いたものと同じ技法を用いてリフトオフ事象を検出することが困難である場合がある。多くの環境下では、タッチ接触の除去は、タッチ器具の初期のタッチ衝突または摩擦移動に起因するものと同じ大きさの振動エネルギーを付与しない。このように、リフトオフ信号は検出可能でない場合があり、このような逆インパルスに基づくリフトオフ検出の方法は、システムオペレーションに組み込むだけでは十分に信頼性が高くない恐れがある。
【0016】
リフトオフを検出するのに用いられ得る1つの方法は、タッチ面に接触しているタッチ器具からタッチプレートに結合される低周波信号に基づいている。この方法は最初の接触時のエネルギー入力に加えて、概してユーザがタッチ面との接触を維持している間に検出可能な低周波ノイズ性入力があるという観察に依存している。この持続的タッチからのノイズ入力は、概して0Hz〜200Hzの周波数範囲にあり、周波数が増加するにつれて信号レベルは概して低下する。持続的タッチから発生される信号を監視するとともに、信号の低下または不存在などのこのような信号の変化を検出することにより、リフトオフが記録される。
【0017】
いくつかの実施形態において、接触による静的力入力に直接関連する0Hz信号を監視することができる。一般に、タッチ器具のタッチ衝突または摩擦移動によるタッチプレート内の屈曲波振動を検出するために用いられる振動センサは、静的力を検出するために必要であるDC測定よりAC測定により適している。例えば振動感知に適した圧電センサは、応力に応じて電荷を生成する容量性装置である。その後、この電荷を、積分装置を用いてDC結合されずに十分な安定性を維持する電圧に変換して測定することができる。このように容量式力センサなどのセンサ、歪み計、屈曲センサおよび圧電センサを、プレート変位および/またはプレート湾曲などの0Hz持続的タッチ信号を検出するために好適に用い得る。
【0018】
他の実施形態において、タッチプレートに結合された振動変換器を用いて低周波(0Hzを超える)ノイズ性信号を検出することができる。これらの振動変換器は、タッチ位置特定に用いられるセンサと同一であり得るか、または持続的タッチ信号を監視するために用いられる1つまたは複数の別のセンサであり得る。好適には、持続的タッチを表わす低周波振動を監視するために用いられるセンサは、少なくとも5Hz〜200Hz範囲の振動に敏感である。このようにセンサおよび駆動電子機器の低周波帯域幅は少なくともその範囲の信号を感知するのに十分でなければならない。動作中、コントローラにより感知される低周波エネルギーのレベルの上昇が接触時に記録されるとともに、タッチが維持されている間高レベルのままである。リフトオフ事象が発生すると低周波エネルギーはより低いレベルに戻る。
【0019】
低周波信号をリフトオフの信頼性の高い判断基準として用い得るが、これらの信号の帯域幅により応答速度が所望のものより遅い場合がある。遅い応答時間は変化を検出するために対象の低周波数で数サイクルを測定しなければならないことに起因するとともに、より低周波サイクルの波長はタッチプレートのサイズと類似し得る。この状況において低周波リフトオフ測定を、逆インパルスを始めとする他のリフトオフ検出技術と組み合わせて最も効果的に用い得る。逆インパルスはタッチ面からタッチ入力を引き上げることにより生じる比較的小さい振幅外乱であり、所与の例において検出可能であるまたは可能でない比較的小さい振幅変動を生じ得る。自然な指移動の場合によくあり得るように逆インパルスが確実に記録可能である場合、リフトオフが速い応答時間で記録され得る。スタイラス移動およびある緩やかな指移動の場合であり得る、逆インパルスが記録されないまたは確実に記録できない状況では、低周波ランブルの低下を検出することによりリフトオフはなお報告され得るが、これはより遅い応答速度という犠牲になり得る。そうは言ってもリフトオフ応答が初期タッチ箇所判断と同じ位の速さであることは概してあまり重要ではない。概してユーザはタッチダウンのすぐ後、例えば約5〜25ミリ秒以内にディスプレイ内の応答を見ることを期待する。正確なタッチ位置がユーザによって確認されれば、ユーザはリフトオフにより引き起こされる機能の実行のためにより長い応答を容認しやすい。事実ユーザは、リフトオフを検出するためのより長い応答時間は選択された機能を開始するための処理時間の一部であると理解しやすい。
【0020】
受動的リフトオフのための低周波を感知するためには、低周波数範囲内の振動センサの感度を最適化することが有益であり得る。このために可能な1つの技法は、タッチプレートに垂直な軸に沿った圧電変換器の感度(z軸感度)を利用することである。一実施形態において、屈曲波の通過に応答してタッチプレートの表示面上の面内応力を感知するように圧電変換器を設置することができる。このモードに加えて、センサは、z軸(タッチプレート面に垂直)に圧縮された場合に電圧を生成することができる。タッチプレートの外面と支持ベゼルとの間に発泡体を配置することにより、センサの低周波感度を強化し得る。センサの出力レベルは、通常タッチプレートの下に配置された発泡体の剛性と共に増加する。
【0021】
代替例は、縁部懸架発泡体をこれらの低周波数で軸として動作して、低周波振動をz軸力から面内応力に変えるように最適化することである。面内応力は、圧電センサによって動作の通常モードを用いて感知され得る。
【0022】
低周波数に対するシステムの感度増加の1つの潜在的な結果は、ダイナミックレンジの低下であり得る。システムのダイナミックレンジとは、概して様々な接触のタイプ(スタイラス、指等)およびタッチのある強度範囲の自然な使用により入力される信号の範囲を指す。最大信号は、センサの1つに近い箇所でのスタイラスまたは他の硬質物体による強いタッチに起因する。最小信号は、概して振動センサのうちの1つから遠い軽い指のタッチに起因する。低周波感度を最大化することは、センサおよびコントローラにより記録される信号レベルを大幅に増加し得る一方で、タッチ位置特定に用いられる高周波信号の大きさは変更されない。そのためシステムは、同じレンジで様々なタッチ入力を感知する場合、より大きいダイナミックレンジの恩恵を受ける。
【0023】
ダイナミックレンジの低下に対する1つの可能な解決策は、高低周波信号を分離してアナログ−デジタルコンバータ(ADC)の異なるチャネルでそれらを感知することである。低周波信号が合計されるとともに低速(そのため低コスト)の1つのADCチャネルに伝えられ得る。また信号はハイパスフィルタ処理されるとともに4つの別々のADCチャネル内に伝えられて接触位置特定される。
【0024】
以上の説明は、接触の存在する場合の低周波振動レベルの感知およびその変化に焦点を当てている。低周波振動のレベルの感知に加えて、各センサにおいて信号の相対的位相を測定することは有益であり得る。このような測定は、周波数応答を分析することにより、または代替的には相互相関またはコヒーレンス関数を算出することにより実施され得る。相対位相に基づく方法は、大量の低周波ノイズがある場合に有益であり得る。ここで、接触の動作は、暗振動によりパネル内に既に存在する波を妨害することであり、それが各センサにおける捕捉信号の相対的大きさおよび位相に影響することになる。
【0025】
同様な方法は、低周波ノイズの捕捉信号を取り消す適応フィルタを設定することである。これは、外部ノイズまたは振動を測定するように配置された加速度計またはマイクロフォンなどの外部参照に基づき得るか、さもなければ、1つのセンサ信号が他のセンサからの信号を取り消す参照として扱われる対(ペア)状に実施することができる。接触がある場合、システム伝達関数は取り消しフィルタの有効性を低減する。そして取り消し信号をリフトオフの指標として用い得る。
【0026】
図1に概略的に示された振動感知タッチ入力装置100を用いて本発明を実施することができる。振動感知タッチ入力装置100は、タッチプレート120に結合された振動センサ130A〜130Dを有するタッチセンサ110と、信号線140A〜140Dを介して振動センサから信号を受信するように構成されたコントローラ電子機器150とを含む。振動センサ130A〜130Dは、タッチプレート上のタッチ器具の接触または摩擦移動によりタッチプレート内を伝播する振動を検出するように構成されている。感知された振動は例えば国際公開第01/48684号パンフレット記載されているように、タッチ入力の位置を判断するためにコントローラにより用い得る信号に変換される。
【0027】
図示の目的のため、図1は、矩形のタッチプレートの各角に1つずつ、4つの振動センサを示しているが、より少ないかもしくはより多い振動センサを用いることが可能であるとともに、多様な配列で配置することができる。ディスプレイがタッチプレートを介して見えるようにタッチプレートをディスプレイ上で使用しようとする場合、視界外、例えばタッチプレートの角部または縁部付近に振動センサを配置することが望ましい。検出された振動は概してバルク振動(タッチプレート面に限定されない)を含むため、振動センサをタッチプレートの上(タッチ)面上またはタッチプレートの背面上のいずれかに載置することができる。
【0028】
振動センサは、タッチプレート内を伝播する振動を検出可能な任意のセンサであり得る。圧電材料は、振動センサの一例を提供し得る。振動センサにより検出され得るタッチプレート内を伝播する振動に対して達成される機械的結合が十分である限り、振動センサ130A〜130Dを任意の好適な手段により、例えば接着剤、はんだまたは他の好適な材料を用いて、タッチプレート120に接着することができる。例示的な振動センサおよび振動センサ装置は、同一譲受人による米国特許出願第10/440,650号明細書および同第10/739,471号明細書に開示されている。
【0029】
タッチプレート120は、感知される振動を保持可能な任意の材料であり得る。好適には、タッチプレート120は、硬質プレートあるとともに、ガラス、プラスチック(ポリアクリレート、ポリカーボネート等)、木、ボール紙、金属等などの任意の適当な材料であり得る。タッチプレートは、用途に応じて可視光透過性であってもなくてもよい。表示された画像がタッチセンサを介して視認されるように作られている場合、少なくともある程度の可視光透過性が望ましい。タッチプレートは、タッチセンサがタッチプレートを介して視認可能なディスプレイと一緒に用いられていようとなかろうと、静止図形(永久また除去可能、積層あるいは付着、もしくは近接保持、およびタッチプレートの上方または下方に位置決めされた)を組み込むこともできる。タッチプレートをその上に画像が投影されるようにも構成することができる。またタッチプレートは、ユーザが表面にわたって指または他のタッチ器具をドラッグする際に、検出可能な振動を生成するのに役立ち得る粗い表面を組み込むことができる。
【0030】
また、振動感知入力装置は、タッチプレートをその周囲から音響的に絶縁するのに役立つ振動ダンピング材料(図1に図示せず)を含むことができる。例えばタッチプレートが外部振動から実質的に絶縁されるようにおよび/またはタッチプレート内を伝播する振動が角部で吸収されて反射を低減するように、タッチプレートをシステムに載置することが望ましい場合がある。例示的な遮音材料には、アクリル発泡テープなどの様々な発泡テープ、商標名スリーエム(3M)4956およびスリーエム(3M)5962でスリーエム・カンパニー(3M Company)により販売されているものなどの両面接着テープ、ウレタンフォームテープ、商標名スリーエム(3M)4314でスリーエム・カンパニー(3M Company)により販売されているものなどの単一被覆テープ等があり得る。適当な他の材料には、様々なウレタン類およびシリコーン類、ならびに振動ダンピング用途に有用な粘弾性材料がある。
【0031】
タッチプレート上のタッチ器具接触および摩擦移動による振動の感知に加えて、本発明のいくつかの実施形態において、振動感知タッチ入力装置100の振動センサ130A〜130Dのうちの1つまたは複数を用いて持続的タッチを表わす信号を検出することができる。例えば振動センサ130A〜130Dのうちの1つまたは複数を用いて、持続的タッチ中にタッチプレート内に結合された低周波ランブルを監視することができる。この場合、約200Hz未満の周波数に敏感な少なくとも1つの振動センサを採用することが望ましい場合がある。他の例として振動センサ130A〜130Dのうちの1つまたは複数を用いて、持続的タッチの影響によるタッチプレートの屈曲を監視することができる。この場合、十分に長く且つ静的プレート屈曲により生じる表面応力に敏感であるような方向に配向された、少なくとも1つの振動センサを採用することが望ましい場合がある。
【0032】
いくつかの実施形態において、タッチ位置検出に用いられる振動センサに加えて、1つまたは複数のセンサを持続的タッチを検出する目的のために用い得る。図2a〜図2cは、いくつかの非限定例を概略的に示す。
【0033】
図2aにおいて、振動感知入力装置200Aは、タッチプレート210Aと、タッチ接触および/または摩擦移動による振動を検出するタッチプレートの角部に配置された振動センサ220Aと、タッチプレートの辺のうちの1つに沿って配置された低周波ランブル検出器230Aとを含む。ランブル検出器230Aは、好適には低周波振動に特に敏感な任意の振動感知装置であり得る。ランブル検出器をタッチプレート上の任意の適当な箇所に配置することができる。追加のランブル検出器を用いることもできる。
【0034】
図2bにおいて、振動感知入力装置200Bは、タッチプレート210Bと、タッチ接触および/または摩擦移動による振動を検出するタッチプレートの角部に配置された振動センサ220Bと、タッチプレートの縁部の各々に沿って配置されたプレート屈曲センサ230Bとを含む。プレート屈曲センサ230Bは、持続的タッチの影響により発生する静的プレート屈曲を検出するように構成され得る。プレート屈曲センサ230Bは、比較的長い波長に敏感な歪み計または細長い圧電変換素子などの任意の適当な装置であり得る。図2bは、4つのプレート屈曲センサを示しているが、より少ないまたはより多いセンサを用いることができるとともに、任意の適当な方法で配列および配向できることは理解されよう。図示のように多数のプレート屈曲センサを用いることにより、タッチプレートにわたるより多くのタッチ位置の持続的タッチによるプレート屈曲に対する感度の上昇を可能にする。好適には、タッチプレート210Bは、典型的な持続的タッチ力がセンサ230Bによる検出に十分なプレート屈曲を生じるような厚さを有するとともにそのように載置されている。
【0035】
図2cにおいて、振動感知入力装置200Cは、タッチプレート210Cと、タッチ接触および/または摩擦移動による振動を検出するタッチプレートの角部に配置された振動センサ220Cと、タッチプレートの縁部の各々に沿って配置されたプレート変位センサ230Cとを含む。プレート変位センサ230Cは、持続的タッチにより印加される力によるタッチプレート210Cの変位を検出するように構成され得る。適当な変位センサの例が図3に示されている。図2cは、4つのプレート変位センサを示しているが、より少ないまたはより多い変位センサを用いることができるとともに、任意の適当な方法で配列できることは理解されよう。図示のように多数のプレート変位センサを用いることにより、タッチプレートにわたるより多くのタッチ位置の持続的タッチ力に対する感度の上昇を可能にする。好適には、タッチプレート210Cは、典型的な持続的タッチ力が検出可能なプレート変位を生じるように載置されている。
【0036】
図3は、タッチプレート310と、振動センサ320Aおよび320Bと、プレート変位センサ330とを含む入力装置300の一部の概略的側面図を示す。変位センサ330は、タッチプレート310の下面に載置され、タッチ力を受けて移動可能である上部導電性プレート332と、タッチプレートに対して位置が固定された支持面340に載置された下部導電性プレート334とを含む。導電性プレート332および334は、その容量を監視してタッチプレートの変位に対して相関付けることができる可変キャパシタのプレートであり得る。タッチ力を測定する例示的変位センサには、その各々の全体を本明細書に引用する国際公開第02/084244号パンフレットおよび同第02/084578号パンフレットに記載されたものなどの可変キャパシタ力センサがある。このような力センサを用いてタッチ位置を判断することができるが、これらも本発明において持続的タッチの存在およびその後の不存在を判断するために有用であり得る。
【0037】
図4は、受動振動感知タッチ入力装置においてタッチのリフトオフを検出するために本発明により実行することができる工程を示すフローチャートである。一般に、タッチはまず、タッチ位置を判断するためにコントローラにより用いることができる振動を検出することにより検出される。タッチ事象が確認されると、システムは持続的タッチを表わす信号を検出することができる。持続的タッチのない短期間のタッチ衝突(例えば保持のないタップ・アンド・リフトオフ)の発生時には、持続的タッチ信号の不存在を用いて持続的タッチが保持されなかったということを正しく解釈することができる。持続的タッチを表わす信号が検出されるとシステムは随意に、必ずしもリフトオフを表さないがそれにもかかわらず監視することが有用である持続的タッチ信号の変化を監視し得るため、持続的タッチ信号が連続的または周期的に更新可能であるようになっている。このようにして持続的タッチ信号の不存在を判断する閾値を更新することもできる。例えば持続的タッチ信号がサンプリングされるため、各新たなサンプルを最後のものと大きさを比較することができるとともに、新たな信号が最後の信号に比べてある量未満(例えば前に検出された信号の10%以下)になった場合、信号の低下をリフトオフに相関付け得る。信号変化がリフトオフ事象に相関付けられたと見なされるとリフトオフが記録され得る。
【0038】
図5は、センサ部510と、コントローラ電子機器520と、ディスプレイ530とを含むシステム500に一体化された振動感知入力装置を概略的に示す。センサ部510は、タッチプレートと、振動センサ(図示せず)と、持続的タッチセンサ(図示せず)とを含む。センサ部の振動および持続的タッチセンサは、信号を用いてタッチ位置、リフトオフ事象等などのタッチ事象に関連する情報を判断するコントローラ電子機器520と電気通信している。システム500において、センサ部510は、ディスプレイ要素530上方に、例えばディスプレイがセンサ部を介して視認可能であるように配置されて示されている。ディスプレイ要素530は、例えば陰極管、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセントディスプレイ等などの可変ディスプレイであり得る。またディスプレイ要素530は、静的情報またはグラフィクスなどの画像を単独でまたは可変表示と組み合わせて含み得る。
【0039】
本発明は、上述した特定の例に限定して考えられるべきではなく、添付の特許請求の範囲に正しく記載されたように本発明のすべての態様を網羅するものと考えるべきものである。本明細書を検討すれば、本発明を適用可能な様々な変更例、等価物および多数の構造は本発明が対象とする技術の当業者には容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明で有用な振動感知タッチ入力装置を概略的に示す斜視図である。
【図2a】本発明によるタッチセンサの1実施形態を概略的に示す平面図である。
【図2b】本発明によるタッチセンサの1実施形態を概略的に示す平面図である。
【図2c】本発明によるタッチセンサの1実施形態を概略的に示す平面図である。
【図3】変位センサを組み込んだ本発明によるタッチセンサを概略的に示す側面図である。
【図4】本発明の方法において行われ得る工程を図示するフローチャートである。
【図5】本発明の振動感知タッチ入力装置を含むディスプレイシステムを概略的に示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動感知タッチセンサにおいて持続的タッチの存在を検出する方法であって、
タッチによりタッチプレート内を伝播する振動を用いてタッチプレートのタッチ面へのタッチの位置を判断することと、
前記タッチ面上の前記タッチの持続的接触を表わす信号を検出することと、
前記持続的接触を表わす前記信号の十分な変化を、前記タッチ面からの前記タッチの除去と相関付けることとを含む、持続的タッチの存在検出方法。
【請求項2】
少なくとも前記タッチが最初に検出された時から前記タッチの除去が判断されるまで、前記持続的接触を表わす前記信号の変化を監視することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変化が検出された時に、前記持続的接触を表わす前記信号のベースライン信号レベルを更新することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記持続的接触を表わす前記信号の十分な変化が信号レベルの閾値割合の低下を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記タッチの持続的接触を表わす信号を検出することが、前記タッチプレートの変位を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記タッチの持続的接触を表わす信号を検出することが、前記タッチプレートの湾曲を検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記タッチの持続的接触を表わす信号を検出することが、前記持続的接触により前記タッチプレート内に結合された低周波ランブルを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記タッチの除去が、前記振動感知タッチセンサを入力装置として用いるシステム内の機能の実行を開始するリフトオフとして記録される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
タッチプレートのタッチ面上のタッチ入力によりタッチプレート内を伝播する振動に応じて発生された信号からタッチ入力情報を判断可能なタッチ入力装置であって、
タッチプレートに結合されるとともに、タッチ入力がタッチ面上に残っている間に信号を発生するように構成された1つまたは複数のセンサと、
前記タッチ入力が前記タッチ面から除去されたか否かを判断するためのものであって、前記1つまたは複数のセンサにより発生された信号を受信するように構成された電子機器とを備えている、タッチ入力装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数のセンサが、前記タッチプレートの変位に応じて信号を発生するように構成されている、請求項9に記載のタッチ入力装置。
【請求項11】
前記1つまたは複数のセンサが可変キャパシタ力センサを備える、請求項10に記載のタッチ入力装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数のセンサが、前記タッチプレートの湾曲に応じて信号を発生するように構成されている、請求項9に記載のタッチ入力装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数のセンサが圧電変換素子を備える、請求項12に記載のタッチ入力装置。
【請求項14】
前記1つまたは複数のセンサが、前記タッチ入力から前記タッチプレート内に結合された低周波ランブルに応じて信号を発生するように構成されている、請求項9に記載のタッチ入力装置。
【請求項15】
前記1つまたは複数のセンサが、前記タッチ入力により前記タッチプレート内を伝播する振動を検出し、かつタッチ位置を判断するために用いられ得る信号を発生するように構成されている、請求項9に記載のタッチ入力装置。
【請求項16】
前記タッチプレートに結合され、そして前記タッチ入力により前記タッチプレート内を伝播する振動を検出し、かつタッチ位置を判断するために用いられ得る信号を発生するように構成された、前記1つまたは複数のセンサとは別の、1つまたは複数の振動感知装置をさらに備えている、請求項9に記載のタッチ入力装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−515089(P2008−515089A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534606(P2007−534606)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/030959
【国際公開番号】WO2006/039033
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】