説明

振動抑制装置

【課題】構造が簡単で、安価であり、柱状構造物への取り付け作業も簡単な、柱状構造物の振動を効果的に抑制する振動抑制装置を提供する。
【解決手段】略半円形状に湾曲した板材3と、柱状構造物1の外周に固定される取付バンド2とからなり、柱状構造物1の外周面に沿って、複数の板材3が相対向して設けられ、板材3の適宜の外周2箇所に夫々、取付バンド2を巻き付けて、これらの板材3を柱状構造物1の外周に固定した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明柱や標識柱等の柱状構造物の振動を抑制する振動抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、交通量の増加と車両の大型化・重量化に伴い、車両の通過が原因で発生する交通振動が問題となっている。交通振動は、道路上に設置された照明柱や標識柱等の柱状構造物に金属疲労を引き起こし、柱状構造物に設けられた機器の寿命低下を招く原因となるからである。高架道路や高速道路の橋梁上に設置された照明柱や標識柱等の柱状構造物は、日々、大きな交通振動にさらされているため、特に機器の寿命低下や金属疲労が問題となる。
【0003】
そこで、特許文献1に係る発明では、上部又は下部の一方がセンタープレートで、上部又は下部の他方が間隔をあけた二枚の板からなるサイドプレートから成り、サイドプレートにセンタープレートを挟み、かつ、センタープレートとサイドプレートとの間に粘弾性体を介在させているもので、これらのセンタープレート及びサイドプレートを柱状構造体の外周面から浮かせて設けている構成が示されている。
【特許文献1】特開2009−114837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、柱状構造物の振動対策は、柱状構造物の数量及び価格を考慮すると、構造が簡単で、かつ安価なものでなければ適用が難しい。また、柱状構造物への取り付け作業も、より簡単なものである方が望ましい。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に対処するため、構造が簡単で、安価であり、柱状構造物への取り付け作業も簡単な、柱状構造物の振動を効果的に抑制する振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、略半円形状に湾曲した板材と、柱状構造物の外周に固定される取付バンドとからなり、
柱状構造物の外周面に沿って、複数の前記板材が相対向して設けられ、当該板材の適宜の外周2箇所に夫々、前記取付バンドを巻き付けて、これらの板材を柱状構造物の外周に固定した、振動抑制装置とした。
【0007】
請求項2の発明では、前記取付バンドは前記板材の上端と下端とに巻き付けた、請求項1に記載の振動抑制装置とした。
【0008】
請求項3の発明では、前記振動抑制装置を、柱状構造物の柱脚部付近に設ける、請求項1又は2に記載の振動抑制装置とした。
【0009】
請求項4の発明では、外側から前記取付バンドを巻き付ける箇所の、柱状構造物の外周に、保護材を設ける、請求項1〜3のいずれかに記載の振動抑制装置とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4の発明によれば、柱状構造物の外周に振動抑制装置を設ける構成としたことにより、交通振動等により生じた柱状構造物の振動を抑制し、大幅に低減することができる。なお、この振動低減効果は柱状構造物と板材との間に生じる摩擦減衰により得られる。また、振動抑制装置は主として、板材と取付バンドにより構成されている簡単な構成である。従って、柱状構造物への取り付け作業も簡便である。また構成部材が少ないため、低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、略半円形状に湾曲した板材と、柱状構造物の外周に固定される取付バンドとからなり、柱状構造物の外周面に沿って、複数の前記板材が相対向して設けられ、当該板材の適宜の外周2箇所に夫々、前記取付バンドを巻き付けて、これらの板材を柱状構造物の外周に固定した構成とすることにより、交通振動等により生じた柱状構造物の振動を抑制し、大幅に低減することができる。
【実施例1】
【0012】
図1は、振動抑制装置Aの全体を示す正面図である。振動抑制装置Aは、柱状構造物1の外周に設けられている。また振動抑制装置Aは、取付バンド2と、板材3とから構成されている。
【0013】
取付バンド2は、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材であり、図2に示すように、2つの略半円形の外枠4の両端の突片4aを相対向させて、これらの突片4a間に、ボルト5を通して、ナット6で締め付けることにより、組み合わされて、略リング状になっている。この取付バンド2は、2つの板材3が柱状構造物1の外周に配置された上から、柱状構造物1に巻き回され、2つの板材3を柱状構造物1の外周に固定する役割を果たす。
【0014】
図3に示した板材3は、例えばSS400等の一般構造用圧延鋼材であり、矩形である。そして、柱状構造物1の外周面に沿って当接可能なように、長手方向を軸として略半円形状に湾曲している。また、板材3は、長いほど柱状構造物1の振動を抑制する効果が高く、板材3の長手方向の長さは、200mm又400mmが望ましい。なお、本実施例では、長手方向の長さが400mmの板材3を使用している。
【0015】
次に、振動抑制装置Aの柱状構造物1への取り付け方を説明する。柱状構造物1の柱脚部付近外周に、2つの板材3を相対向させた状態で被せ、その上から2つの取付バンド2を板材3の上部と下部に取り付け、各取付バンド2をボルト5及びナット6により締め付け、固定する。なお、板材3の上方部に固定した取付バンド2と、板材3の下方部に固定した取付バンド2との間隔は、156mmが望ましい。
【0016】
このように、振動抑制装置Aを柱状構造物1の柱脚部付近に取り付けると、柱状構造物1の柱脚部付近の一部が板材3によって被覆されることとなる。従って、図4に示すように、交通振動等により柱状構造物1及び柱状構造物1に固定された板材3が振動した場合、柱状構造物1の動きと、板材3との動きにずれが生じ、柱状構造物1の外周と、板材3の内周との間に摩擦力が生じるため、柱状構造物1の振動を減衰することとなる。なお、柱状構造物1の外周と、板材3の内周との間に生じる摩擦力は、取付バンド2間で生じる摩擦力と、取付バンド2間の外側で生じる摩擦力の合計である。また、柱状構造物1と板材3との摩擦が生じるのは、主として、取付バンド2が固定された箇所である。
【0017】
以上のような原理により、振動抑制装置Aは、交通振動等により生じた柱状構造物1の振動を抑制し、大幅に低減することができる。具体的には、本実施例の場合、振動抑制装置Aを取り付けていない場合と比して、交通振動等により柱状構造物1に発生した振動に対する応答低減率は、約10分1に低減した。
【0018】
なお本実施例では、板材3の長手方向の長さが400mmで、2つの取付バンド2を156mmの間隔で板材3上に固定する構成を示したが、この構成に限定されるわけではない。例えば、図5に示すように、2つの取付バンド2を356mmの間隔で、つまり2つの取付バンド2を、板材3の上端部と下端部に固定する構成としても良い。または、2つの取付バンド2を44mmの間隔で板材3上に固定する構成としても良い。
【0019】
または、図6に示すように、板材3の長手方向の長さが200mmで、2つの取付バンド2を間隔なく板材3上に固定する構成として良い。
【0020】
更に、外側から取付バンド2を巻き付ける箇所の、柱状構造物1の外周に、保護材7を設ける構成としても良い。例えば保護材7は、図7に示すように、長さ50mm、直径2mmの針金材を約20本柱状構造物1の外周に巻き付ける。または、針金材の代わりに、外側から取付バンド2を巻き付ける箇所の、柱状構造物1の外周に、保護材7として、テフロン(登録商標)シートを設ける構成としても良い。
【0021】
外側から取付バンド2を巻き付ける箇所の、柱状構造物1の外周に、針金材又はテフロン(登録商標)シート等の保護材7を設ける構成とすれば、柱状構造物1の外周と板材3との間に間隔ができ、柱状構造物1と板材3とが接触せず、柱状構造物1の外周に傷がつかない。
【0022】
また、本実施例においては、柱状構造物1の柱脚部付近外周に、2つの板材3を相対向させた状態で被せる構成を示したが、この構成に限定されるわけではなく、3つあるいは4つ等の複数の板材3を相対向させた状態で被せる構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る実施例1の振動抑制装置Aの全体的な構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施例1の振動抑制装置Aの取付バンドを示す底面図である。
【図3】本発明に係る実施例1の振動抑制装置Aの2つの板材を相対向した状態を示す、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【図4】本発明に係る実施例1の振動抑制装置Aの振動を抑制する原理を概念的に示した概念図である。
【図5】本発明に係る振動抑制装置Aの別の構成例を示す正面図である。
【図6】本発明に係る振動抑制装置Aの別の構成例を示す正面図である。
【図7】本発明に係る実施例1の振動抑制装置Aの板材と柱状構造物との間に保護材を設けた別の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
A:振動抑制装置、
1:柱状構造物、2:取付バンド、3:板材、4:外枠、4a:突片、5:ボルト、6:ナット、7:保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半円形状に湾曲した板材と、柱状構造物の外周に固定される取付バンドとからなり、
柱状構造物の外周面に沿って、複数の前記板材が相対向して設けられ、当該板材の適宜の外周2箇所に夫々、前記取付バンドを巻き付けて、これらの板材を柱状構造物の外周に固定したことを特徴とする、振動抑制装置。
【請求項2】
前記取付バンドは前記板材の上端と下端とに巻き付けたことを特徴とする、請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記振動抑制装置を、柱状構造物の柱脚部付近に設けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の振動抑制装置。
【請求項4】
外側から前記取付バンドを巻き付ける箇所の、柱状構造物の外周に、保護材を設けることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の振動抑制装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−87584(P2012−87584A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237045(P2010−237045)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000225201)那須電機鉄工株式会社 (22)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】