説明

振動板ユニット及びそれを用いたスピーカ装置

【課題】特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果のより高い「振動板ユニット」及びそれを用いた「スピーカ装置」を提供することである。
【解決手段】可撓性基材11の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイル13の形成された振動板ユニット10であって、渦巻状配線パターン13の外側配線端132に続いて形成された外端子部15と、渦巻状配線パターン13の内側配線端133に続いて形成され、外端子部15の面積より大きい面積の拡張部14とを有する構成となる。また、スピーカ装置は、そのような振動板ユニット10と磁気回路20とによって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニット及びその振動板ユニットを用いたスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットの前記平面ボイスコイルを磁石及びヨークプレート等にて構成される磁気回路の磁気ギャップ内に配して前記磁気回路からの磁界と前記平面ボイスコイルに供給される音声信号電流との相互作用によって前記振動板ユニットを振動させるようにしたスピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなスピーカ装置では、円筒状のボイスコイルとコーン状の振動板とを用いたスピーカ装置に比べて薄型化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−59884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットを用いた従来のスピーカ装置では、大出力化を図る場合、機械的強度を大きくするために可撓性基材を厚くする必要があるが、平面ボイスコイルの形成された可撓性基材を厚くすると磁気ギャップを広く形成する必要がある。磁気ギャップを広く形成すると、平面ボイスコイルに作用する磁界の強度が低下することから、磁気回路を大型化させなければならず、スピーカ装置全体の薄型化が損なわれてしまう。
【0005】
また、大出力化による平面ボイスコイルの温度上昇を低減させるために、渦巻状配線パターンの各配線を厚くすると、磁気ギャップを広くしなければならず、前述と同様の問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果のより高い振動板ユニットを提供するものである。
【0007】
また、本発明は、そのような振動板ユニットを用いたスピーカ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動板ユニットは、可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、前記渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された外端子部と、前記渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成され、前記外端子部の面積より大きい面積の拡張部とを有する構成となる。
【0009】
このような構成により、平面ボイスコイルの渦巻状配線パターンの外側配線端に続く外端子部より広い拡張部が当該渦巻状配線パターンの内側配線端から続くように形成されるので、その比較的広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、渦巻状配線パターンの平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができるようになる。
【0010】
本発明に係る振動板ユニットは、可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、前記渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された外端子部と、前記渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成された拡張部とを有し、前記拡張部は、前記渦巻状配線パターンの最内側領域に配され、該最内側領域において当該拡張部の面積がそれ以外部分の面積より大きい構成となる。
【0011】
このような構成により、平面ボイスコイルの渦巻状配線パターンの最内側領域に当該渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成される拡張部が、当該最内側領域においてそれ以外の部分より広いので、その比較的広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、渦巻状配線パターンの平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができるようになる。
【0012】
前記平面ボイスコイルの渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成された拡張部は、当該平面ボイスコイルの前記外端子部に対になる内端子部とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る振動板ユニットにおいて、前記拡張部と前記渦巻状配線パターンの前記最内側領域を囲む最内側配線との隙間が、前記渦巻状配線パターンにおける線間幅と略同じである構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、平面ボイスコイルの渦巻状配線パターンの最内側領域が略拡張部にて占められるようになるので、渦巻状配線パターンの内側配線端に続くより広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、渦巻状配線パターンの平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができるようになる。
【0015】
本発明に係る振動板ユニットは、可撓性基材の表面に平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、前記平面ボイスコイルは、前記可撓性基材の一方の面に形成された第1渦巻状配線パターンと、前記可撓性基材の他方の面に形成された第2渦巻状配線パターンとを有するとともに、前記第1渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された第1外端子部と、前記第1渦巻配線パターンの内側配線端に続いて形成された第1拡張部と、前記第2渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された第2外端子部と、前記第2渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成された第2拡張部とを有し、前記第1渦巻状配線パターンと前記第2渦巻状配線パターンとは、配線部分と線間部分とが前記可撓性基材を挟んで対向するように配置された構成となる。
【0016】
このような構成により、可撓性基材の両面に形成された第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとが、配線部分と線間部分とが可撓性基材を挟んで対向するように配置されるので、第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンの各配線部分によって可撓性基材の両面から加熱される部分が少なくなり、第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンにて発生する熱をより有効に放散し得るようになる。また、可撓性基材の平面ボイスコイルが形成された領域では、第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンの一方の線間部分を他方の配線部分が補強するようになるので、有効に強度維持を図ることができるようになる。
【0017】
本発明に係る振動板ユニットにおいて、前記第1渦巻状配線パターンの第1拡張部と前記第2渦巻状配線パターンの第2拡張部とが前記可撓性基材に形成されたスルーホールを介して電気的に接続された構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、可撓性基材の両面に形成された第1渦巻配線パターンと第2渦巻配線パターンとがそれぞれ第1拡張部及び第2拡張部を介して電気的に接続されるので、可撓性基材に第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとが直列的に接続された平面ボイスコイルを形成することができる。
【0019】
本発明に係る振動板ユニットにおいて、前記第1拡張部及び前記第2拡張部の少なくとも一方は、前記第1外端子部及び前記第2外端子部のそれぞれの面積より大きい面積を有する構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、平面ボイスコイルの第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンの両内側線端に続く第1拡張部及び第2拡張部の少なくともいずれかが、第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンの両外側線端に続く第1外端子部及び第2外端子部より広いので、その比較的広い第1拡張部及び第2拡張部の少なくとも一方によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、平面ボイスコイルで発生した熱を更に有効に放散させることができるようになる。
【0021】
また、本発明に係る振動板ユニットにおいて、前記第1拡張部及び前記第2拡張部の少なくとも一方は、対応する渦巻状配線パターンの最内側領域に配され、該最内側領域において当該連結部の面積がそれ以外の面積より大きい構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、平面ボイスコイルの第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンの両内側線端に続く第1拡張部及び第2拡張部の少なくともいずれかが、対応する渦巻状配線パターンの最内側領域においてそれ以外の部分より広いので、第1渦巻状配線コイル及び第2渦巻状配線コイルの少なくとも一方の内側配線端に続くより広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができる。
【0023】
更に、本発明に係る振動板ユニットにおいて、前記渦巻状配線パターンの最内側領域に配された前記拡張部と前記渦巻配線パターンの前記最内側領域を囲む最内側配線との隙間が、前記渦巻状配線パターンにおける線間幅と略同じである構成とすることができる。
【0024】
このような構成により、平面ボイスコイルの渦巻状配線パターン(第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状パターンの少なくとも一方)の最内側領域が略拡張部にて占められるようになるので、第1渦巻状配線コイル及び第2渦巻状配線コイルの少なくとも一方の内側配線端に続くより広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができる。
【0025】
本発明に係るスピーカ装置は、前述したいずれかの振動板ユニットと、磁気ギャップの形成された磁気回路とを有し、前記振動板ユニットに形成された平面ボイスコイルを前記磁気ギャップ内に配されるように前記振動板ユニットと前記磁気回路部とが相対的に配置され、前記磁気回路部から発生する磁界と前記平面ボイスコイルに供給される音声信号電流との相互作用によって前記振動板が振動する構成となる。
【0026】
このような構成により、渦巻状配線パターンの内配線端に続いて形成される拡張部によって平面ボイスコイルが補強されるとともに、当該渦巻状配線パターンの平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができる振動板ユニットを用いたスピーカ装置、あるいは、平面ボイスコイルとして可撓性基材の両面に第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとが形成され、前記第1渦巻状配線パターンと前記第2渦巻状配線パターンの各配線部分が可撓性基材の同じ部分を両面から加熱することがなく、第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンにて発生する熱をより有効に放散し得るようになり、また、その可撓性基材の平面ボイスコイルが形成された領域では、前記第1渦巻状配線パターン及び前記第2渦巻状配線パターンの一方の線間部分を他方の配線部分が補強するような振動板ユニットを用いたスピーカ装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る振動板ユニットによれば、渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成される比較的広い拡張部によって、平面ボイスコイルが補強されるとともに、渦巻状配線パターンの平面ボイスコイルで発生した熱を有効に放散させることができるようになるので、あるいは、平面ボイスコイルとして可撓性基材の両面に第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとが形成される場合、第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンの各配線部分によって可撓性基材の両面から加熱される部分が少なくなり、第1渦巻状配線パターン及び第2渦巻状配線パターンにて発生する熱をより有効に放散し得るようになり、また、その可撓性基材の平面ボイスコイルが形成された領域では、前記第1渦巻状配線パターン及び前記第2渦巻状配線パターンの一方の線間部分を他方の配線部分が補強するようになるので、特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果をより高くすることができるようになる。
【0028】
また、本発明に係るスピーカ装置によれば、特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果をより高くすることが可能となる振動板ユニットが用いられるので、薄型を維持しつつ大出力化を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る振動板ユニットを用いたスピーカ装置の基本構成を模式的に示す断面図である。
【図2A】振動板ユニットに形成される平面ボイスコイル(渦巻状配線パターン)の構成例を示す平面図である。
【図2B】図2Aに示す振動板ユニットのA線での断面を示す断面図である。
【図3A】振動板ユニットに形成された平面ボイスコイルの端子の配置例を示す図である。
【図3B】平面ボイスコイルの内側に端子を形成した場合の磁気ギャップと端子に形成された半田ボールとの関係を示す断面図である。
【図4】振動板ユニットに形成される平面ボイスコイル(渦巻状配線パターン)の他の構成例を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニットに形成される平面ボイスコイルを構成する第1渦巻状配線パターンの構成例を模式的に示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニットに形成される平面ボイスコイルを構成する第2渦巻状配線パターンの構成例を模式的に示す平面図である。
【図7】図5及び図6に示す第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとを重ねて示す平面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニットの断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0031】
本発明の第1の実施の形態に係る振動板ユニットを有するスピーカ装置の基本的な構成は、図1に示すようになっている。なお、図1は、スピーカ装置の基本構成を模式的に示している。
【0032】
図1において、このスピーカ装置は、振動板ユニット10の両端がフレーム30に支持された構造となっている。振動板ユニット10の一端部は、フレーム30の収容部30aに収容されたダンパ31、32によって弾性支持され、振動板ユニット10の他端部は、フレーム30の支持部33によって固定支持されている。フレーム30の収容部30a近傍に磁気回路20が設けられている。磁気回路20は、磁石21、下ヨーク22及び上ヨーク23を備え、これら磁石21、下ヨーク22及び上ヨーク23は、下ヨーク22及び上ヨーク23との間に磁気ギャップGpが形成されるように一体化されている。振動板ユニット10には後述するような平面ボイスコイル13が形成されており、この平面ボイスコイル13が磁気回路20の磁気ギャップGp内に位置するように振動板ユニット10がフレーム30によって支持されている。
【0033】
平面ボイスコイル13の形成された振動板ユニット10は、図2A及び図2Bに示すように構成されている。なお、図2Aは、振動板ユニット10に形成された平面ボイスコイル13の構造を詳細に示しており、図2Bは、図2Aに示す振動板ユニットのA線での断面を示している。
【0034】
図2A及び図2Bにおいて、矩形状のフレキシブル基板(可撓性基材)11の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイル13が形成されている。フレキシブル基板11の表面には平面ボイスコイル13を覆うようにレジスト層12が形成されている。なお、図2Aは、レジスト層12を透過した状態でフレキシブル基板11の表面に形成された平面ボイスコイル13を示している。
【0035】
平面ボイスコイル(適宜、渦巻状配線パターンという)13の外側配線端132に続いて矩形状の外端子部15が形成され、また、渦巻状配線パターン13の内側配線端133に続いて拡張部14が形成されている。この拡張部14は、その面積が外端子部15の面積より大きく、渦巻状配線パターン13の最内側領域130を略覆う広さを有している。具体的には、拡張部14と渦巻状配線パターン13の最内側領域130を囲む最内側配線131a、131b、131cとの隙間Δ(例えば、図2Bにおける拡張部14と最内側配線131bとの隙間Δ参照)が、渦巻配線パターン13における線間幅Δと略同じとなるように(図2B参照)、最内側領域130内に当該拡張部14が形成されている。
【0036】
フレキシブル基板11を覆うレジスト層12には、拡張部14の渦巻状配線パターン13の内側配線端133近傍の矩形領域を露出させる内側端子窓121が形成され、その内側端子窓121から露出する拡張部14の矩形領域が内端子部14aとして用いられる。また、レジスト層12には、外端子部15を露出させる外側端子窓122が形成されている。レジスト層12の内側端子窓121及び外側端子窓122から露出する拡張部14の内端子部14aと外側端子部15との間に音声信号を印加することにより、渦巻状パターン13(平面ボイスコイル)に音声信号電流が流れる。
【0037】
上述したような構造の振動板ユニット10がフレーム30にセットされると、図3Aに示すように、磁気回路20(上ヨーク23)によって渦巻状配線パターン13が覆われる。このとき、レジスト層12の外側端子窓122から露出する外端子部15は、磁気回路20中の磁気ギャップGpの外側に配置されるものの、レジスト層12の内側端子窓121から露出する拡張部14の内端子部14aは、磁気回路20に覆われて磁気ギャップGp内に配置される。このため、図3Bに示すように、上ヨーク23の内端子部14aに対向する部位に凹部23aを形成し、内端子部14aに音声信号線を半田付けした際の半田ボール16と上ヨーク23とが干渉しないようにしている。このようにすれば、スペーサ24a、24bによって下ヨーク22と上ヨーク23との間に形成される磁気ギャップGpをより狭く設定することができ、平面ボイスコイル13(渦巻状配線パターン)を横切る磁束密度をより大きくすることができる。
【0038】
第1の実施の形態に係るスピーカ装置では、平面ボイスコイル13(渦巻状配線パターン)の外端子部15と内端子部14aとの間に音声信号が印加されて平面ボイスコイル13に音声信号電流が流れると、平面ボイスコイル13を流れる音声信号電流と磁気回路20にて発生する磁界との相互作用によって平面ボイスコイル13に音声信号電流に応じた力が作用する。これにより、振動板ユニット10のダンパ31、32にて弾性支持された部位から平面ボイスコイル13が形成された部分までが音声信号電流に応じて往復動(図1における矢印Hで示す左右方向の動き)し、この往復動によって、フレーム30の支持部33によって他端部が固定支持された振動板ユニット10が振動する。この振動板ユニット10の音楽信号電流に応じた振動が、音(空気振動)となって出力される。
【0039】
振動板ユニット10では、平面ボイスコイル13の渦巻状配線パターンの外側配線端132に続く外端子部15より広い、更には、渦巻配線パターンの最内側領域130全体を略覆うほどの広い拡張部14が渦巻配線パターンの内側配線端133に続いて形成されているので、その大きい面積を有する拡張部14によって平面ボイスコイル13(渦巻状配線パターン)が補強される。これにより、大出力化を図ることによって、大きな力が振動板ユニット10の平面ボイスコイル13の形成された領域に作用しても、その領域は、波打つように曲がることなく、磁気ギャップGp内で音声信号電流に応じて確実に往復動できるようになる。
【0040】
また、渦巻状配線パターンの内側配線端133に続く大きい面積の拡張部14は、電流の最短経路とはならずその内部では電流が流れない。従って、この広い拡張部14は、磁気回路20からの磁界に影響されることなく、平面ボイスコイル13(渦巻状配線パターンの各配線)で発生する熱を有効に放散させることができる。
【0041】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る振動板ユニット10によれば、平面ボイスコイル13の渦巻状配線パターンの内側配線端133に続いて形成される広い拡張部14によって、平面ボイスコイル13が補強されるとともに、平面ボイスコイル13で発生する熱を有効に放散させることができるようになるので、特に、厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果をより高くすることができるようになる。そして、このような振動板ユニット10を用いるスピーカ装置によれば、特に厚さを大きくすることなく、振動板ユニット10の強度及び放熱効果をより高くすることができるので、薄型を維持しつつ大出力化を図ることができるようになる。
【0042】
平面ボイスコイル13の渦巻状配線パターンの内側配線端133に続いて形成される拡張部14は、渦巻状配線パターンの最内側領域130全体を略覆うほどの広さがなくてもよい。例えば、図4に示すように、平面ボイスコイル13の渦巻状配線パターンの最内側領域130内に形成される拡張部14´は、最内側領域130においてその面積がそれ以外の部分130aの面積より大きいものとすることができる。
【0043】
なお、渦巻状配線パターンの内側配線端133に続いて形成される拡張部14は、通常、端子部として利用される面積、例えば、外端子部15の面積より大きい面積を有するものであれば、その端子部より大きい部分によって、その大きさに応じた補強及び放熱効果を得ることができるようになる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニットについて説明する。この振動板ユニットは、フレキシブル基板(可撓性基材)の両面それぞれに渦巻状配線パターンが形成される点で前述した第1の実施の形態に係る振動板ユニット10と異なる。
【0045】
本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニットは、図5〜図8に示すように構成される。なお、図5は、振動板ユニットに形成される平面ボイスコイルを構成する第1渦巻状配線パターンの構成例を模式的に示す平面図であり、図6は、振動板ユニットに形成される平面ボイスコイルを構成する第2渦巻状配線パターンの構成例を模式的に示す平面図であり、図7は、図5及び図6に示す第1渦巻状配線パターンと第2渦巻状配線パターンとを重ねて示す平面図であり、図8は、振動板ユニットの断面を示す断面図である。
【0046】
図5及び図8を参照するに、振動板ユニット50は矩形状のフレキシブル基板51(可撓性基材)を有する。このフレキシブル基板51の一方の面に第1渦巻状配線パターン53が形成され、フレキシブル基板51の第1渦巻配線パターン53の形成された面に第1レジスト層52が形成されている。なお、図5は、第1レジスト層52を透過した状態でフレキシブル基板51の一方の面に形成された第1渦巻状配線パターン53を示している。第1渦巻状パターン53には、第1の実施の形態に係る振動板ユニット10の場合と同様に、外側配線端に続いて第1外端子部55が形成されるとともに、内側配線端に続いて第1拡張部54(図8参照)が形成されている。
【0047】
図6及び図8を参照するに、フレキシブル基板51の他方の面に第2渦巻状配線パターン63が形成され、フレキシブル基板51の第2渦巻状パターン63の形成された面に第2レジスト層62が形成されている。なお、図6は、第1レジスト層52及びフレキシブル基板51を透過した状態でフレキシブル基板51の第1渦巻状配線53が形成された面の逆側の面に形成された第2渦巻状パターン63を示している。第2渦巻状パターン63には、第1の実施の形態に係る振動板ユニット10の場合と同様に、内側配線端に続いて第2拡張部64(図8参照)が形成されている。
【0048】
図8に示すように、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63は、それぞれの第1拡張部54及び第2拡張部64がフレキシブル基板51を挟んで対向するように配置されている。それら第1拡張部54及び第2拡張部64に対応するフレキシブル基板51の部位にはスルーホール56が形成され、そのスルーホール56を介して第1拡張部54及び第2拡張部64が電気的に接続されている。これにより、第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63とが直列的に接続され、これら2つの渦巻状配線パターン53、63によって単一の平面ボイスコイルが構成される。
【0049】
また、図6及び図7に示すように、フレキシブル基板51の第2渦巻状配線パターン63の外側配線端に対応する部位にスルーホール66が形成されるとともに、フレキシブル基板51の第1渦巻状配線パターン53の形成された面のスルーホール66の隣接部位に第2外端子部65が形成されている。第2渦巻配線パターン63の外側配線端はスルーホール66を介して第2外端子部65に電気的に接続されている。これにより、第1外端子部55と第2外端子部65との間に音声信号を印加すると、音声信号電流が第1外端子部55と第2外端子部63と間で直列接続される第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63を流れる。なお、第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配配線パターン63それぞれの巻き方向は、フレキシブル基板51の一方の面から見た状態で同じ方向に音声信号電流が流れるように設定されている。
【0050】
更に、フレキシブル基板51の両面に形成される第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63とは、配線部分と線間部分とがフレキシブル基板51を挟んで対向するように配置されている。具体的には、図8に示すように、第1渦巻状配線パターン53の配線部分531と配線部分532との間の線間部分と第2渦巻状配線パターン63の配線部分632とがフレキシブル基板51を挟んで対向し、また、第2渦巻状配線パターン63の配線部分631と配線部分632との間の線間部分と第1渦巻状配線パターン63の配線部分531とがフレキシブル基板51を挟んで対向している。
【0051】
なお、図8に示すように、第1渦巻状配線パターン53が形成されるフレキシブル基板51の面を覆う第1レジスト層52の第1外端子部55に対応する部位に端子窓522が形成され、第1外端子部55が露出している。この端子窓522から露出する第1外端子部55に音声信号線を半田付けする半田ボール58が形成される。また、図示されてはいないが、第1レジスト層52の第2外端子部65に対応する部位にも端子窓が形成され、第2外端子部65が端子窓から露出しており、その第2外端子部65に音声信号線が半田付けされている。
【0052】
前述した構造の振動板ユニット50は、図7に示すように、フレキシブル基板51の両面に重なるように形成された第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63によって構成される平面ボイスコイルが磁気回路20の磁気ギャップGp内に配されるように、フレーム30にセットされる(図1参照)。この状態で、第1外端子部55及び第2外端子部65の双方とも磁気回路20の磁気ギャップGpの外側に配される。これにより、第1外端子部55及び第2外端子部65に形成される半田ボールが磁気回路20と干渉することなく、磁気ギャップGpをより狭く設定することができる。
【0053】
前述したような構成のスピーカ装置では、平面ボイスコイル(第1渦巻状配線パターン53、第2渦巻状配線パターン63)の外端子部55と第2外端子部65との間
に音声信号が印加されて当該平面ボイスコイルに音声信号電流が流れると、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63を流れる音声信号電流と磁気回路20にて発生する磁界との相互作用によって第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63(平面ボイスコイル)に音声信号電流に応じた力が作用する。これにより、振動板ユニット50のダンパ31、32にて弾性支持された部位から当該平面ボイスコイルが形成された部分までが音声信号電流に応じて往復動(図1における矢印Hで示す左右方向の動き)し、この往復動によって、フレーム30の支持部33によって他端部が固定支持された振動板ユニット50が振動する。この振動板ユニット50の音楽信号電流に応じた振動が、音(空気振動)となって出力される。
【0054】
振動板ユニット50では、フレキシブル基板51の両面に形成された第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63とが、配線部分と線間部分とがフレキシブル基板51を挟んで対向するように配置されるので(図8参照)、第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63の各配線部分によってフレキシブル基板51の両面から加熱される部分が少なくなり、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63にて発生する熱をより有効に放散し得るようになる。また、フレキシブル基板51の平面ボイスコイルが形成された領域では、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63の一方の線間部分を他方の配線部分が補強するようになるので、有効に強度維持を図ることができるようになる。
【0055】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る振動板ユニット50によれば、第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63の各配線部分によってフレキシブル基板51の両面から加熱される部分が少なくなり、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63にて発生する熱をより有効に放散し得るようになり、また、そのフレキシブル基板51の平面ボイスコイル(第1渦巻状配線パターン53、第2渦巻状配線パターン63)が形成された領域では、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63の一方の線間部分を他方の配線部分が補強するようになるので、特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果をより高くすることができるようになる。そして、このような振動板ユニット50を用いるスピーカ装置によれば、特に厚さを大きくすることなく、振動板ユニット50の強度及び放熱効果をより高くすることができるので、薄型を維持しつつ大出力化を図ることができるようになる。
【0056】
なお、第1拡張部54及び第2拡張部64は、第1の実施の形態に係る振動板ユニット10の場合と同様に、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63の最内側領域を略覆うほどの広さに形成されている(図2参照)。これにより、第1の実施の形態に係る振動板ユニット10の場合と同様に、更に、振動板ユニット50の強度及び放熱効果をより高いものとなる。
【0057】
ただし、前述したように、フレキシブル基板51の両面に形成された第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63とが、配線部分と線間部分とがフレキシブル基板51を挟んで対向するように配置されている場合、その構成によって、比較的高い強度及び放熱効果を得ることができるので、第1拡張部54及び第2拡張部64は、第1渦巻状配線パターン53及び第2渦巻状配線パターン63の最内側領域においてそれら以外の部分より広い程度の広さ、各外端子部55、65より広い程度の広さ、あるいは、各外端子部55、65と同程度の広さ、更には、スルーホール56によって相互に接続できるだけの広さと、いずれの広さとすることもできる。
【0058】
なお、前述した例では、第1渦巻状配線パターン53と第2渦巻状配線パターン63とは、スルーホール56を通して直列的に接続されるものであったが、それらは並列的に接続するものであっても、独立したものであてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上、説明したように、本発明に係る振動板ユニットは、特に厚さを大きくすることなく、強度及び放熱効果をより高くすることができるという効果を有し、可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットとして有用であり、大出力の薄型スピーカ装置に適用し得る。
【符号の説明】
【0060】
10 振動板ユニット
11 フレキシブル基板(可撓性基材)
12 レジスト層
121 内側端子窓
122 外側端子窓
13 平面ボイスコイル(渦巻状配線パターン)
130 最内側領域
131a、131b、131c 最内側配線
132 外側配線端
133 内側配線端
14、14´ 拡張部
14a 内端子部
15 外端子部
16 半田ボール
20 磁気回路
21 磁石
22 下ヨーク
23 上ヨーク
24a、24b スペーサ
30 フレーム
30a 収容部
31、32 ダンパ
33 支持部
50 振動板ユニット
51 フレキシブル基板(可撓性基材)
52 第1レジスト層
53 第1渦巻状配線パターン
54 第1拡張部
55 第1外端子部
56 スルーホール
58 半田ボール
62 第2レジスト層
63 第2渦巻状配線パターン
64 第2拡張部
65 第2外端子部
66 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、
前記渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された外端子部と、
前記渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成され、前記外端子部の面積より大きい面積の拡張部とを有する振動板ユニット。
【請求項2】
可撓性基材の表面に渦巻状配線パターンとなる平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、
前記渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された外端子部と、
前記渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成された拡張部とを有し、
前記拡張部は、前記渦巻状配線パターンの最内側領域に配され、該最内側領域において当該拡張部の面積がそれ以外部分の面積より大きい振動板ユニット。
【請求項3】
前記拡張部は、前記平面ボイスコイルの前記外端子部と対になる内端子部とする請求項1または2記載の振動板ユニット。
【請求項4】
前記拡張部と前記渦巻状配線パターンの前記最内側領域を囲む最内側配線との隙間が、前記渦巻状配線パターンにおける線間幅と略同じである請求項2記載の振動板ユニット。
【請求項5】
可撓性基材の表面に平面ボイスコイルの形成された振動板ユニットであって、
前記平面ボイスコイルは、前記可撓性基材の一方の面に形成された第1渦巻状配線パターンと、
前記可撓性基材の他方の面に形成された第2渦巻状配線パターンとを有するとともに、
前記第1渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された第1外端子部と、
前記第1渦巻配線パターンの内側配線端に続いて形成された第1拡張部と、
前記第2渦巻状配線パターンの外側配線端に続いて形成された第2外端子部と、
前記第2渦巻状配線パターンの内側配線端に続いて形成された第2拡張部とを有し、
前記第1渦巻状配線パターンと前記第2渦巻状配線パターンとは、配線部分と線間部分とが前記可撓性基材を挟んで対向するように配置された振動板ユニット。
【請求項6】
前記第1渦巻状配線パターンの第1拡張部と前記第2渦巻状配線パターンの第2拡張部とが前記可撓性基材に形成されたスルーホールを介して電気的に接続された請求項5記載の振動板ユニット。
【請求項7】
前記第1拡張部及び前記第2拡張部の少なくとも一方は、前記第1外端子部及び前記第2外端子部のそれぞれの面積より大きい面積を有する請求項5または6記載の振動板ユニット。
【請求項8】
前記第1拡張部及び前記第2拡張部の少なくとも一方は、対応する渦巻状配線パターンの最内側領域に配され、該最内側領域において当該連結部の面積がそれ以外の面積より大きい請求項5または6記載の振動板ユニット。
【請求項9】
前記渦巻状配線パターンの最内側領域に配された前記拡張部と前記渦巻配線パターンの前記最内側領域を囲む最内側配線との隙間が、前記渦巻状配線パターンにおける線間幅と略同じである請求項8記載の振動板ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の振動板ユニットと、
磁気ギャップの形成された磁気回路とを有し、
前記振動板ユニットに形成された平面ボイスコイルを前記磁気ギャップ内に配されるように前記振動板ユニットと前記磁気回路とが相対的に配置され、
前記磁気回路から発生する磁界と前記平面ボイスコイルに供給される音声信号電流との相互作用によって前記振動板が振動するスピーカ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−101278(P2011−101278A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255836(P2009−255836)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】