説明

振動検出装置

【課題】簡易な構成でデジタルの振動検出信号を出力することが可能な振動検出装置を提供する。
【解決手段】振動膜11の変位によるレーザ光Lの回折角の変化、およびレーザ光Lの波長変調によるレーザ光Lの回折角の変化をレーザ光源13への帰還パラメータとするΔΣ変調器を含むようにする。複雑な構成のAD変換部等が不要なり、簡易な構成で振動膜11の振動が、2値化された音声信号Soutとしてデジタル検出される。また、振動膜11自身の変位ではなく、レーザ光Lの回折角の変化が帰還パラメータとなっているため、装置全体としても簡易な構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動体の変位を光学的に検出する振動検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、SACD(Super Audio Compact Disc)や24bit−96kHzのサンプリングを利用した録音方式等が用いられ、高音質化が主流になりつつある。このような流れの中、従来のアナログ方式のマイクロホン装置は、特に20kHz以上の高域の音声の収録に限界があるため、上記録音方式の特徴である高域の再生を生かしてコンテンツを収録しようとする場合に、ボトルネックになっていた。
【0003】
また、ダイナミックレンジに関しても、上記録音方式の特徴である24bitビット録音により可能な144dBまで及ばず、広範なダイナミックレンジを十分に生かしきれていなかった。
【0004】
さらに、録音現場においては、従来のアナログ方式のマイクロホン装置では、アナログケーブルでの長距離の引き回しに起因してノイズが増加してしまったり、コンデンサマイクに対してミキシングコンソールからファンタム電源を供給しなければならず、録音・制作システムにおける全デジタル化の障害となっていた。
【0005】
そこで、近年、デジタル方式のマイクロホン装置がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、マッハ・ツェンダ方式などの干渉計においてマイク振動膜の変位により生じる干渉縞の変化を、光電変換素子で信号変換すると共にデジタル的に信号処理することにより、デジタル音声信号出力を得るようにしたものが提案されている。また、例えば特許文献2では、マイケルソン方式の干渉計においてマイク振動板の変位により生じる干渉縞の変化を光電変換素子により信号変換すると共にこの値を2値量子化することでビットストリーム信号を得るようにし、いわゆるΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を構成するための帰還路としてマイク振動膜を動かす振動膜駆動手段を持つようにしたものが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−308998号公報
【特許文献2】特開平11−178099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、マイクロホン装置の形態としては、場所をとらず、可搬であることが望ましいため、マイクロホン装置の構成は簡易であることが好ましい。
【0008】
ところが、上記特許文献1のマイクロホン装置では、2つの光路からのレーザ光を互いに干渉させてその干渉縞を光検出器で検出しているが、その検出信号をデジタルカウント器でカウントする必要があるため、AD(Analog to Digital)変換部やカウンタ、音声信号変換処理部などの構成が複雑化し、改善の余地があった。
【0009】
一方、上記特許文献2のマイクロホン装置では、振動板の変位に対して帰還をかけてΔΣ変調器を構成するようにしているため、AD変換部の構成は簡素化されている。しかしながら、音波に応じて振動する振動板自身に対して帰還をかけ変位させているため、振動板の振動モードが複雑なものとなり、マイクロホン装置全体としては依然として複雑な構成であった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡易な構成でデジタルの振動検出信号を出力することが可能な振動検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の振動検出装置は、振動体と、この振動体に入射するレーザ光を発する光源とを含んで構成され、振動体の変位によるレーザ光の振れ角の変化およびレーザ光の波長変調によるこのレーザ光の振れ角の変化を光源への帰還パラメータとして振動体の振動を検出するΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を含むようにしたものである。
【0012】
本発明の振動検出装置では、振動によって変位する振動体に対し、光源からレーザ光が入射される。そして振動体が変位したりレーザ光が波長変調するとレーザ光の振れ角が変化し、これらによる振れ角の変化がΔΣ変調器の帰還パラメータとして光源へ帰還され、振動体の振動が検出される。
【0013】
本発明の振動検出装置では、上記ΔΣ変調器が、レーザ光を振動体の変位およびレーザ光の波長変調に応じた方向に回折し、回折レーザ光を発生させる回折格子と、この回折レーザ光をその進行方向に応じて受光し、光電変換を行う一対の光電変換素子と、これら一対の光電変換素子のうちの一方の光電変換素子からの出力信号と、一対の光電変換素子のうちの他方の光電変換素子からの出力信号とを比較する比較器とを含むように構成可能である。このように構成した場合、回折格子によって振動体の変位およびレーザ光の波長変調に応じた方向にレーザ光が回折され、回折レーザ光となる。そしてこの回折レーザ光がその進行方向に応じて一対の光電変換素子のうちの一方によって光電変換され、これら一対の光電変換素子からの出力信号同士が比較器によって比較されることで、例えば2値化された振動体の検出信号が出力される。また、回折格子を利用しているため、レーザ光に対して波長依存性が生じ、レーザ光に対する波長変調が可能となる。
【0014】
本発明の振動検出装置では、上記ΔΣ変調器が振動体の振動に応じて動くカンチレバーを含むと共に、このカンチレバー上に上記回折格子を配設するようにするのが好ましい。このように構成した場合、カンチレバーの光テコ作用によって回折レーザ光の振れ角が増加し、その結果、検出対象である振動体の変位量も増加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の振動検出装置によれば、振動体の変位によるレーザ光の振れ角の変化およびレーザ光の波長変調によるこのレーザ光の振れ角の変化を光源への帰還パラメータとするΔΣ変調器を含むようにしたので、複雑な構成のAD変換部やカウンタ、音声信号処理部などが不要なり、簡易な構成で振動体の振動をデジタル検出することができる。また、振動体自身の変位ではなく、レーザ光の振れ角の変化を帰還パラメータとしているため、装置全体としても簡易な構成となる。よって、簡易な構成でデジタルの振動検出信号を出力することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る振動検出装置(光学式のマイクロホン装置1)の全体構成を表すものである。このマイクロホン装置1は、後述するΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を含んで構成され、音波Swに応じて振動する振動膜(後述する振動膜11)を利用して2値化された音声信号Soutを出力するものであり、一対の支持部10A,10Bと、振動膜11と、カンチレバー12と、レーザ光源13と、量子化器14と、遅延回路15と、積分器16と、ゲイン付与回路17と、光源駆動部18とを備えている。
【0018】
振動膜11は、音波Swに応じて変位するものであり、円盤状かつ筒状(円柱状)の枠10によって支持されている。なお、この振動膜11には、入力する音波Swにより所望の振動特性を得るため、カプセル状の筐体(図示せず)によって音響回路が構成されるようになっている。
【0019】
カンチレバー12は、振動膜11の変位に応じて動くように構成されており、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって作製され、ばね定数が小さくて応答周波数が高いものを用いるのが好ましい。このカンチレバー12のレーザ光源13側の表面には、図示しない反射性の回折格子(後述する回折格子12A)が設けられている。
【0020】
レーザ光源13は、カンチレバー12および回折格子に対してレーザ光Lを照射するものであり、例えばマルチモード(ファブリペロー型)のレーザ光源(例えば、端面発光型の半導体レーザ光源)などが用いられる。なお、マルチモードのレーザ光源を用いた場合、後述するように、電流変化によってレーザ光Lの波長を変調することができるようになっている。
【0021】
量子化器14は、一対の光電変換素子141A,141Bからなる光電変換素子141と、比較器142とを有している。
【0022】
光電変換素子141A,141Bはそれぞれ、カンチレバー12上の回折格子12によって回折されたレーザ光を受光して光電変換するものであり、例えばPD(Photo Diode)などにより構成される。また、詳細は後述するが、カンチレバー12の変位やレーザ光Lの波長変調に応じて、これら光電変換素子141A,141Bのうちの一方に回折されたレーザ光が入射するようになっている。
【0023】
比較器142は、光電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかを、「+1」または「−1」という2値化された出力信号(音声信号Sout)として出力するものである。
【0024】
遅延回路15は、出力信号である音声信号Soutを1サンプル分遅延をかけて出力するものである。また、積分器16は、遅延回路15の出力信号に対して積分処理を施すものである。また、ゲイン付与回路17は、積分器16の出力信号に対して所定のゲインを付与して出力するものである。なお、これら遅延回路15、積分器16およびゲイン付与回路17によって、光源駆動部18に対するフィードバックループ(帰還経路)が形成されるようになっている。
【0025】
光源駆動部18は、レーザ光源13を駆動するものである。また、詳細は後述するが、レーザ光Lの波長に対して変調を行うようになっている。なお、前述のようにレーザ光源13がマルチモードのレーザ光源により構成されている場合、駆動電流を駆動することで、レーザ光Lの波長を変調することができるようになっている。
【0026】
次に、図1と比較しつつ図2および図3を参照して、ΔΣ変調器の構成について説明する。ここで、図2は、一般的なΔΣ変調器の構成例(ΔΣ変調器100)を表したものであり、図3は、以下説明するようにΔΣ変調器200と等価な構成からなるΔΣ変調器(ΔΣ変調器200)を表したものである。
【0027】
図2に示したΔΣ変調器100は、入力Xから後述するゲイン付与回路107の出力信号を減算処理する減算器103と、この減算器103の出力信号に対して積分処理を施す積分器101と、この積分器101の出力信号から量子化ノイズNqで2値量子化を行う量子化器104と、この量子化器104の出力Yに対して1サンプル分遅延をかける遅延回路105と、この遅延回路105の出力信号に対して所定のゲインを付与するゲイン付与回路107とを有している。そして入力Xは、例えば以下の(11)式で示したように変換されて出力Yとして出力され、量子化ノイズNqに対してノイズシェービング効果が表されるようになっている。
【0028】
一方、図3に示したΔΣ変調器200は、入力X(信号S200)に対して積分処理を施す積分器201と、この積分器201の出力信号から後述する積分器206の出力信号を減算処理する減算器203と、この減算器203の出力信号S203に対して量子化ノイズNqで2値量子化を行う量子化器204と、この量子化器204の出力Y(出力信号S204)に対して1サンプル分遅延をかける遅延回路205と、この遅延回路205の出力信号S205に対して積分処理を施す積分器206とを有している。そして入力Xは、例えば以下の(12)式で示したように変換されて出力Yとして出力され、量子化ノイズNqに対してノイズシェービング効果が表されるようになっている。つまり、ΔΣ変調器100に対応する(11)式と、ΔΣ変調器200に対応する(12)式とが同じ結果となるため、これらΔΣ変調器100,200は、互いに等価な構成であるといえる。
【0029】
【数1】

【0030】
ここで、本実施の形態のマイクロホン装置1では、振動膜11がΔΣ変調器200における積分器201に対応し、量子化器14がΔΣ変調器200における量子化器204に対応している。
【0031】
具体的には、振動膜11は、その機械的な要素として積分特性を付加するものである。より具体的には、例えば面積Seの振動膜11に音圧Pがかかる場合に力Fが生じるものとし、振動膜11のスティフネスをSm(厳密には、振動膜11自体のスティフネスと、図示しないカプセル気室によるスティフネスとの和)、質量をmおよび抵抗をRmとすると、以下の(13)式のような運動方程式が成り立つ。ここで、振動膜の変位xは力Fに対して2次のローパスフィルタ特性の応答を示すが、その固有振動周波数f0は通常、可聴周波数限界の例えば20kHz付近に設定されており、また、過度な共振が起こらないように抵抗Rmを十分に大きく選択し、共振鋭度が小さく設定されるようになっている。また、現実の振動膜11の固有振動周波数f0は、ΔΣ変調器100のサンプリング周波数に比べ十分低いため、この周波数帯域では、振動膜11は機械的過渡応答として積分特性を持っているとみなしてよい。
【0032】
【数2】

【0033】
また、量子化器14では、前述のように、電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかを、「+1」または「−1」という2値化された出力信号(音声信号Sout)として出力するため、振動膜11の変位(回折されたレーザ光の回折角)というアナログデータを2値化されたデジタルデータ(音声信号Sout)として出力する量子化器104に対応していることになる。
【0034】
次に、図4〜図6を参照して、本実施の形態のマイクロホン装置1の動作を、図3に示したΔΣ変調器200の動作と比較しつつ説明する。ここで、図4は、ΔΣ変調器200の基本動作を表したものであり、図5および図6は、カンチレバー12に対するレーザ光Lの入射角と回折角との関係を表したものである。
【0035】
ます、本実施の形態のマイクロホン装置1は、上記のようにΔΣ変調器200の構成を含んでいる。ここで、このΔΣ変調器200の基本動作としては、例えば図4に示したようになる。すなわち、入力X(信号S200:図4(A))に対して積分器201により積分処理が施され、減算器203において、積分器201の出力信号から後述する積分器206の出力信号が減算される。そしてこの減算器203の出力信号S203(図4(A))に対し、量子化器204において量子化ノイズNqで2値量子化が行われ、出力Y(出力信号S204:図4(B))として出力される。一方、量子化器204の出力Y(出力信号S204)に対し、遅延回路205において1サンプル分遅延がかけられると共にこの遅延回路205の出力信号S205(図4(C))に対し、積分器206において積分処理が施され、この積分器206の出力信号が、上記したように減算器203へ入力するようになっている。
【0036】
次に、各部の動作を具体的に説明すると、まず、レーザ光源13からレーザ光Lが出射されると、このレーザ光Lはカンチレバー12へ到達する。
【0037】
ここで、カンチレバー12では、例えば図5に示したように、回折格子12Aによって、後述するように振動膜11の変位およびレーザ光Lの波長変調に応じた方向に、入射レーザ光Linが回折され、回折レーザ光Ldif1となる。
【0038】
ここで、振動膜11の変位およびレーザ光Lの波長変調に応じてカンチレバー12が角度θの分だけ変位すると、例えば図4に示したように、入射レーザ光Linが回折され回折レーザ光Ldif2となり、入射角αや回折角βも変位する。これらの関係は、以下の(14)〜(16)式によって表される。また、このときレーザ光Lの回折角の変位θ’(および光電変換素子141における回折されたレーザ光の変位x)がなるべく大きくなるように、カンチレバー12に対するレーザ光Lの入射角αが設定され、検出感度が高まるようになっている。
θ’=θ+β−β’ …(14)
sinα+sinβ=m×(λ/Λ) …(15)
sinα’+sinβ’=m×(λ/Λ) …(16)
但し、mは回折の次数であり、λはレーザ光Lの波長であり、Λは回折格子12Aの格子定数であり、θはカンチレバー12の振れ角であり、αはレーザ光Lの入射角であり、βはレーザ光Lの回折角であり、α’はカンチレバー12がθの分だけ振れた後のレーザ光Lの入射角(=α+θ)であり、β’はカンチレバー12がθの分だけ振れた後のレーザ光Lの回折角であり、θ’はカンチレバーがθの分だけ振れた際のレーザ光Lの回折角の変位であり、lはカンチレバー12と光電変換素子141との距離であり、xは光電変換素子141における回折されたレーザ光Lの変位である。
【0039】
なお、図5に示した入射角および回折角等の具体例としては、例えば図6に示したように、Λ=550nm、λ=650nm、m=1の場合において、α=14°、θ=1°とすると、β=70.03°,β’=67.37°,θ’=1.66°となる。
【0040】
次に、光電変換素子141では、カンチレバー12の変位やレーザ光Lの波長変調に応じて、光電変換素子141A,141Bのうちの一方に回折されたレーザ光が入射する。そして比較器142では、電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかが、「+1」または「−1」という2値化された出力信号として、音声信号Soutが出力される。
【0041】
また、この際、遅延回路15、積分器16およびゲイン付与回路17によって、光源駆動部18に対するフィードバックループ(帰還経路)が形成されているため、振動膜11の変位によるレーザ光Lの振れ角の変化、およびレーザ光Lの波長変調によるレーザ光Lの振れ角の変化が、帰還パラメータとして光源駆動部19へフィードバックされる。
【0042】
光源駆動部18では、振動膜11の変位およびレーザ光Lの波長変調に応じて、レーザ光Lの波長に対して変調がかけられ、レーザ光Lの波長が変化する。
【0043】
このようにして本実施の形態のマイクロホン装置1では、音波Swによる振動によって変位する振動膜11に対し、レーザ光源13からレーザ光Lが入射される。そして振動膜11が変位したりレーザ光Lが波長変調すると、カンチレバー12におけるレーザ光Lの振れ角(回折角)が変化し、これらによる振れ角の変化がΔΣ変調器の帰還パラメータとして光源13(光源駆動部18)へフィードバックされ、振動膜11の振動が音声信号Soutとして検出される。
【0044】
なお、レーザ光Lの波長変化をΔλとすると、この波長変調によるレーザ光Lの回折角の変化Δβは、以下の(17)式により表される。
Δβ=[m/(Λ×cosβ)]×Δλ …(17)
【0045】
以上のように本実施の形態では、振動膜11の変位によるレーザ光Lの回折角の変化およびレーザ光Lの波長変調によるレーザ光Lの回折角の変化をレーザ光源13への帰還パラメータとするΔΣ変調器を含むようにしたので、複雑な構成のAD変換部やカウンタ、音声信号処理部などが不要なり、簡易な構成で振動膜11の振動を2値化された音声信号Soutとしてデジタル検出することができる。また、振動膜11自身の変位ではなく、レーザ光Lの回折角の変化を帰還パラメータとしているため、装置全体としても簡易な構成となる。よって、簡易な構成でデジタルの振動検出信号を出力することが可能となる。
【0046】
また、ΔΣ変調器を含むようにしたので、ノイズシェービング効果により、可聴帯域内の低ノイズ化を実現することが可能となる。
【0047】
また、ΔΣ変調器が振動膜11の振動に応じて動くカンチレバー12を含むと共に、このカンチレバー12上に回折格子12Aを設けるようにしたので、このカンチレバー12の光テコ作用を利用して、回折されたレーザ光の回折角を増加させ、検出対象である振動膜11の変位量(音声信号Soutの信号レベル)も増加させることができる。よって、検出感度を向上させることが可能となる。
【0048】
また、上記(14)〜(17)式を用いて、レーザ光Lの回折角の変位θ’(および光電変換素子141における回折されたレーザ光の変位x)がなるべく大きくなるように、カンチレバー12に対するレーザ光Lの入射角αを設定するようにしたので、やはり音声信号Soutの信号レベルも増加させ、検出感度を向上させることが可能となる。
【0049】
また、レーザ光源13を、マルチモード(ファブリペロー型)のレーザ光源により構成した場合、電流変化によってレーザ光Lの波長を直接変調することができ、簡単に波長変調を行うことが可能となる。
【0050】
また、反射体ではなく回折格子12Aを利用してレーザ光Lを光電変換素子141の側へ向けるようにしたので、レーザ光Lに対して波長依存性を生じさせ、実際にレーザ光Lに対する波長変調を行うことが可能となる。
【0051】
さらに、従来のマイクロホン装置のように、振動膜に対して金蒸着を行うことが不要となるので、振動系を軽量化し、高域特性を向上させることが可能となる。また、高速動作が可能なので、量子化器14においてサンプリング周波数を高く設定でき、量子化ノイズを低減することも可能となる。
【0052】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0053】
例えば、上記実施の形態では、回折格子12Aをカンチレバー12上に設けるようにした場合について説明したが、例えばカンチレバー12を設けないようにすると共に、振動膜11上に別途作製した回折格子を配置するようにしてもよい。このように構成した場合、検出感度は落ちることになるが、カンチレバー12を設けなくてもよいため、構成をより簡素化することができる。
【0054】
また、上記実施の形態では、回折格子12Aによる1次回折光を利用して検出する場合について説明したが、1次回折光には限られず、一般化してn(n:自然数)次回折光を利用して検出することが可能である。また、上記実施の形態では、反射性の回折を利用して検出する場合について説明したが、例えば透過性の回折を利用して検出するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、レーザ光Lを発する光源として半導体レーザを挙げて説明したが、これ以外にも例えば、ガスレーザや固定レーザなどを用いるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、本発明の振動検出装置の一例として、振動体が音波に応じて振動する振動膜(振動膜11)であり、この振動膜11の振動を音声信号Soutとして検出する光学式マイクロホン装置について説明したが、本発明の振動検出装置はこれには限られず、他の振動を検出するように構成してもよい。
【0057】
さらに、本発明の振動検出装置(マイクロホン装置)は、例えば図7に示したように、図1に示したマイクロホン装置1に加え、このマイクロホン装置1から出力される音声信号Soutをエンコードする伝送フォーマットエンコーダ2と、この伝送フォーマットエンコーダ2とデジタル伝送経路(例えば、光ファイバなど)で接続された編集機器3、1ビットストリーム方式レコーダ4およびPCM(Pulse Code Modulation)方式レコーダ6と、1ビット方式記録メディア51と、PCM方式記録メディア71と、再生機器アンプスピーカ52,72とから構成される音声信号記録再生システムに適用することが可能である。このような構成の音声信号記録再生システムでは、2値化された音声信号Soutを伝送することができるため、アナログの音声信号を伝送する場合と比べ、容易に長距離伝送をすることが可能となる。
【0058】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図8は、本発明の他の実施形態に係る振動検出装置(光学式のマイクロホン装置1)の全体構成を表すものである。このマイクロホン装置1は、ΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を含んで構成され、音波Swに応じて振動する振動膜(後述する振動膜11)を利用して2値化された音声信号Soutを出力するものであり、支持部に支持された振動膜11と、カンチレバー12と、レーザ光源13と、AO素子(音響光学変換素子)20と、量子化器14と、遅延回路15と、積分器16と、AO素子ドライバ19と、光源駆動部18とを備えている。
【0059】
振動膜11は、音波Swに応じて変位するものであり、円盤状かつ筒状(円柱状)の枠10によって支持されている。なお、この振動膜11には、入力する音波Swにより所望の振動特性を得るため、カプセル状の筐体(図示せず)によって音響回路が構成されるようになっている。
【0060】
カンチレバー12は、振動膜11の変位に応じて動くように構成されており、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって作製され、ばね定数が小さくて応答周波数が高いものを用いるのが好ましい。
【0061】
レーザ光源13は、カンチレバー12およびAO素子20に対してレーザ光Lを照射するものであり、例えばマルチモード(ファブリペロー型)のレーザ光源(例えば、端面発光型の半導体レーザ光源)などが用いられる。
【0062】
量子化器14は、一対の光電変換素子141A,141Bからなる光電変換素子141と、比較器142とを有している。
【0063】
光電変換素子141A,141Bはそれぞれ、カンチレバー12によって反射したレーザ光を受光して光電変換するものであり、例えばPD(Photo Diode)などにより構成される。また、詳細は後述するが、カンチレバー12の変位やレーザ光LのAO素子20を介した変調に応じて、これら光電変換素子141A,141Bのうちの一方に回折されたレーザ光が入射するようになっている。
【0064】
比較器142は、光電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかを、「+1」または「−1」という2値化された出力信号(音声信号Sout)として出力するものである。
【0065】
遅延回路15は、出力信号である音声信号Soutを1サンプル分遅延をかけて出力するものである。また、積分器16は、遅延回路15の出力信号に対して積分処理を施すものである。
【0066】
また、AO素子ドライバ19は、積分器16の出力信号に対してVCO(Voltage Controlled Oscillator)で周波数変換した音波や超音波信号をAO素子20に付与するものである。なお、これら遅延回路15、積分器16およびAO素子ドライバ19によって、AO素子20に対するフィードバックループ(帰還経路)が形成されるようになっている。また、光源駆動部18は、レーザ光源13を駆動するものである。
【0067】
本実施形態のマイクロホン装置1で適用されるΔΣ変調器の構成は、先に説明した実施形態と同様であり、図2および図3に示す構成となっている。すなわち、図2に示したΔΣ変調器100は、入力Xからゲイン付与回路107(本実施形態ではAO素子ドライバ19)の出力信号を減算処理する減算器103と、この減算器103の出力信号に対して積分処理を施す積分器101と、この積分器101の出力信号から量子化ノイズNqで2値量子化を行う量子化器104と、この量子化器104の出力Yに対して1サンプル分遅延をかける遅延回路105と、この遅延回路105の出力信号に対して所定のゲインを付与するゲイン付与回路107(本実施形態ではAO素子ドライバ19)とを有している。そして入力Xは、例えば以下の(11)式で示したように変換されて出力Yとして出力され、量子化ノイズNqに対してノイズシェービング効果が表されるようになっている。
【0068】
一方、図3に示したΔΣ変調器200は、入力X(信号S200)に対して積分処理を施す積分器201と、この積分器201の出力信号から後述する積分器206の出力信号を減算処理する減算器203と、この減算器203の出力信号S203に対して量子化ノイズNqで2値量子化を行う量子化器204と、この量子化器204の出力Y(出力信号S204)に対して1サンプル分遅延をかける遅延回路205と、この遅延回路205の出力信号S205に対して積分処理を施す積分器206とを有している。そして入力Xは、例えば以下の(12)式で示したように変換されて出力Yとして出力され、量子化ノイズNqに対してノイズシェービング効果が表されるようになっている。つまり、ΔΣ変調器100に対応する(11)式と、ΔΣ変調器200に対応する(12)式とが同じ結果となるため、これらΔΣ変調器100,200は、互いに等価な構成であるといえる。
【0069】
ここで、本実施形態のマイクロホン装置1では、振動膜11が図3に示すΔΣ変調器200における積分器201に対応し、量子化器14がΔΣ変調器200における量子化器204に対応することになる。
【0070】
具体的には、振動膜11は、その機械的な要素として積分特性を付加するものである。より具体的には、例えば面積Seの振動膜11に音圧Pがかかる場合に力Fが生じるものとし、振動膜11のスティフネスをSm(厳密には、振動膜11自体のスティフネスと、図示しないカプセル気室によるスティフネスとの和)、質量をmおよび抵抗をRmとすると、以下の(13)式のような運動方程式が成り立つ。ここで、振動膜の変位xは力Fに対して2次のローパスフィルタ特性の応答を示すが、その固有振動周波数f0は通常、可聴周波数限界の例えば20kHz付近に設定されており、また、過度な共振が起こらないように抵抗Rmを十分に大きく選択し、共振鋭度が小さく設定されるようになっている。また、現実の振動膜11の固有振動周波数f0は、ΔΣ変調器100のサンプリング周波数に比べ十分低いため、この周波数帯域では、振動膜11は機械的過渡応答として積分特性を持っているとみなしてよい。
【0071】
また、量子化器14では、前述のように、電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかを、「+1」または「−1」という2値化された出力信号(音声信号Sout)として出力するため、振動膜11の変位(回折されたレーザ光の回折角)というアナログデータを2値化されたデジタルデータ(音声信号Sout)として出力する量子化器104に対応していることになる。
【0072】
次に、本実施形態のマイクロホン装置1の動作を説明する。本実施形態のマイクロホン装置1では、カンチレバー12の表面にレーザ光を全反射するミラーが形成されている。図9に示すように、カンチレバー12を用いることにより光テコの原理で振動膜の微小振動を拡大する。なお、図10のように音圧あたりの振幅が大きくとれる振動膜11の場合はカンチレバーが不要であり、振動膜11に金属蒸着などにより直接全反射面を生成する構成をとることが可能である。以下の説明では、カンチレバー12を備えるマイクロホン装置1を例とするが、図10に示すようなカンチレバーの不要なマイクロホン装置1であっても動作原理は同じである。
【0073】
カンチレバー12のバネ定数は数pN/nm程度のものが開発されており振動膜が音圧により受ける力に比べはるかに小さいため音波による振動への大きな悪影響を及ぼすことはない。
【0074】
次に、各部の動作を具体的に説明すると、まず、レーザ光源13からレーザ光Lが出射されると、このレーザ光LはAO素子20を介してカンチレバー12へ到達する。
【0075】
ここで、カンチレバー12では、例えば図11に示したように、振動膜11の変位およびレーザ光LのAO素子20による変調に応じた方向に、入射レーザ光が全反射され、反射レーザ光となる。
【0076】
入射レーザ光はカンチレバー12の表面に入射角αで入射すると出射角αで全反射される。ここで振動膜11の変位に応じてカンチレバー12が角度θの分だけ変位すると、入射角はα’になり出射角もα’になる。さらにAO素子20が帰還信号を受け回折角γを生じると入射角βとなり出射角βの反射光を生じる。さらにカンチレバー12が角度θだけ変化すると、入射角はβ’となり出射角β’の反射光を生じる。
【0077】
次に、光電変換素子141では、カンチレバー12の変位やレーザ光LのAO素子20での変調に応じて、光電変換素子141A,141Bのうちの一方に回折されたレーザ光が入射する。そして比較器142では、電変換素子141A,141Bそれぞれからの出力信号の差分をとって出力することにより、どちらの光電変換素子に回折されたレーザ光が入射したかが、「+1」または「−1」という2値化された出力信号として、音声信号Soutが出力される。
【0078】
また、この際、遅延回路15、積分器16およびAO素子ドライバ19によって、AO素子20に対するフィードバックループ(帰還経路)が形成されているため、振動膜11の変位によるレーザ光Lの振れ角の変化、およびレーザ光LのAO素子20での変調によるレーザ光Lの振れ角の変化が、帰還パラメータとしてAO素子ドライバ19へフィードバックされる。
【0079】
AO素子ドライバ19では、振動膜11の変位およびレーザ光LのAO素子20による回折角度の変調に応じてAO素子20を音波駆動し、レーザ光Lの回折角度を変化させる。
【0080】
ここで、図8に示す本実施形態の構成では、1サンプル前の2値量子化出力をフィードバックするためにAO素子20を使用することで、帰還ループを実現している。AO素子20では、θ:ブラッグ角、λ:レーザ波長、fc:音波周波数、v:音波進行速度とすると、ブラッグ角θは、以下の(18)式によって表される。
θ=λ・fc/2v …(18)
【0081】
これにより、音波の周波数を変化させることでAO素子20のブラッグ角を変えることができる。
【0082】
本実施形態の構成では、積分器16によって積分された帰還電圧をVCO(Voltage Controlled Oscillator)で周波数変換しAO素子ドライバ19に与えることにより、ブラッグ角度変化に変換することができる。この回折光はカンチレバー12に形成されたミラーに入射するが、AO素子20により変調された角度によりミラー入射角が変化するため、その角度によって2分割された光電変換素子141A,141B上の適切な位置に結像される。すなわち、図9に示すように、同じカンチレバー12の角度変化であっても、AO素子20を介して出射されるレーザ光の角度が異なることで、カンチレバー12上の反射位置が変わり、2分割された光電変換素子141A,141B上のレーザ光結像位置が変化する状態となる(図9の一点鎖線および破線参照)。
【0083】
さらに、音圧により変位せしめられた振動膜11によりカンチレバー12の角度が変化するため、このカンチレバー角度を加算した角度をもって出射され、2分割された光電変換素子141A,141B上に結像される。光電変換素子141では結像位置がどちらの光電変換素子141A,141B上にあるかを、差動増幅器を用いて判別する。これにより、0次光成分による像が残っていても正しく判別することができる。
【0084】
そして、この2分割された光電変換素子141A,141Bによりある閾値をもった2値量子化が行なわれたことになる。量子化器14の出力は伝送路に送り出されるが、2値情報になっているため通常のデジタル信号用の伝送路トランシーバや光ファイバーを使用することで容易に長距離伝送が可能である。
【0085】
このようにして本実施の形態のマイクロホン装置1では、音波Swによる振動によって変位する振動膜11に対し、レーザ光源13からレーザ光Lが入射される。そして振動膜11が変位したり、レーザ光Lの回折角度が変調されると、カンチレバー12におけるレーザ光Lの反射位置が変化し、これらによる変化がΔΣ変調器の帰還パラメータとしてAO素子20(AO素子ドライバ19)へフィードバックされ、振動膜11の振動が音声信号Soutとして検出される。
【0086】
以上のように本実施形態では、振動膜11の変位によるレーザ光Lの反射角度の変化およびレーザ光LのAO素子20によるレーザ光Lの回折角の変化をAO素子20への帰還パラメータとするΔΣ変調器を含むようにしたので、複雑な構成のAD変換部やカウンタ、音声信号処理部などが不要なり、簡易な構成で振動膜11の振動を2値化された音声信号Soutとしてデジタル検出することができる。また、振動膜11自身の変位ではなく、レーザ光Lの回折角の変化を帰還パラメータとしているため、装置全体としても簡易な構成となる。よって、簡易な構成でデジタルの振動検出信号を出力することが可能となる。
【0087】
また、ΔΣ変調器を含むようにしたので、ノイズシェービング効果により、可聴帯域内の低ノイズ化を実現することが可能となる。また、高速動作が可能なためサンプリング周波数を高く設定でき、量子化ノイズの低減を図ることができる。
【0088】
また、上記実施の形態では、レーザ光Lを発する光源として半導体レーザを挙げて説明したが、これ以外にも例えば、ガスレーザや固定レーザなどを用いるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態では、本発明の振動検出装置の一例として、振動体が音波に応じて振動する振動膜(振動膜11)であり、この振動膜11の振動を音声信号Soutとして検出する光学式マイクロホン装置について説明したが、本発明の振動検出装置はこれには限られず、他の振動を検出するように構成してもよい。
【0090】
さらに、本発明の振動検出装置(マイクロホン装置)は、例えば図7に示したように、図8に示したマイクロホン装置1に加え、このマイクロホン装置1から出力される音声信号Soutをエンコードする伝送フォーマットエンコーダ2と、この伝送フォーマットエンコーダ2とデジタル伝送経路(例えば、光ファイバなど)で接続された編集機器3、1ビットストリーム方式レコーダ4およびPCM(Pulse Code Modulation)方式レコーダ6と、1ビット方式記録メディア51と、PCM方式記録メディア71と、再生機器アンプスピーカ52,72とから構成される音声信号記録再生システムに適用することが可能である。このような構成の音声信号記録再生システムでは、2値化された音声信号Soutを伝送することができるため、アナログの音声信号を伝送する場合と比べ、容易に長距離伝送をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施の形態に係る振動検出装置の全体構成を表すブロック図である。
【図2】一般的なΔΣ変調器の構成例を表すブロック図である。
【図3】一般的なΔΣ変調器の他の構成例を表すブロック図である。
【図4】図3に示したΔΣ変調器の動作を説明するためのタイミング波形図である。
【図5】カンチレバーおよび回折格子に対するレーザ光の入射角と回折角との関係を説明するための図である。
【図6】図5に示した入射角および回折角の一具体例を表す図である。
【図7】図1に示した振動検出装置を備えた音声記録再生システムの構成例を表すブロック図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る振動検出装置の全体構成を表すブロック図である。
【図9】カンチレバーおよび回折格子に対するレーザ光の入射角と回折角との関係を説明するための図である。
【図10】振動膜に金属蒸着した例を説明する図である。
【図11】カンチレバーおよびAO素子によるレーザ光の入射角と反射角との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0092】
1…マイクロホン装置、10…枠、11…振動膜、12…カンチレバー、12A…回折格子、13…レーザ光源、14…量子化器、141(141A,141B)…光電変換素子、142…比較器、15…遅延回路、16…積分器、17…ゲイン付与回路、18…光源駆動部、19…AO素子ドライバ、20…AO素子、2…伝送フォーマットエンコーダ、3…編集機器、4…1ビットストリーム方式レコーダ、51…1ビット方式記録メディア、52,72…再生機器アンプスピーカ、6…PCM方式レコーダ、71…PCM方式記録メディア、Sw…音波、Sout…音声信号、L…レーザ光、Lin…入射光、Ldif1,Ldif2…回折光、α,α’…入射角、β,β’…回折角、θ…カンチレバーの振れ角、θ’…回折角の変位、l…カンチレバーと光源変換素子との距離、x…光電変換素子上の回折光の変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動体と、この振動体に入射するレーザ光を発する光源とを含んで構成され、前記振動体の変位による前記レーザ光の振れ角の変化および前記レーザ光の波長変調によるこのレーザ光の振れ角の変化を前記光源への帰還パラメータとして前記振動体の振動を検出するΔΣ(デルタ・シグマ)変調器を含んで構成されている
ことを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
前記ΔΣ変調器は、
前記レーザ光を前記振動体の変位および前記レーザ光の波長変調に応じた方向に回折し、回折レーザ光を発生させる回折格子と、
前記回折レーザ光をその進行方向に応じて受光し、光電変換を行う一対の光電変換素子と、
前記一対の光電変換素子のうちの一方の光電変換素子からの出力信号と、前記一対の光電変換素子のうちの他方の光電変換素子からの出力信号とを比較する比較器とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項3】
前記ΔΣ変調器は、前記振動体の振動に応じて動くカンチレバーを含み、
前記回折格子が前記カンチレバー上に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項4】
以下の(1)式〜(3)式により、前記レーザ光の回折角の変位θ’が大きくなるように前記カンチレバーに対する前記レーザ光の入射角αが設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の振動検出装置。
θ’=θ+β−β’ …(1)
sinα+sinβ=m×(λ/Λ) …(2)
sinα’+sinβ’=m×(λ/Λ) …(3)
但し、
m:回折の次数
λ:レーザ光の波長
Λ:回折格子の格子定数
θ:カンチレバーの振れ角
α:レーザ光の入射角
β:レーザ光の回折角
α’:カンチレバーがθの分だけ振れた後のレーザ光の入射角(=α+θ)
β’:カンチレバーがθの分だけ振れた後のレーザ光の回折角
θ’:カンチレバーがθの分だけ振れた際のレーザ光の回折角の変位
【請求項5】
前記回折格子が前記振動体上に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項6】
前記光源がマルチ波長モードのレーザ光源であり、このレーザ光源の駆動電流を変化させることで前記レーザ光の波長変調を行うように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項7】
前記振動体が音波に応じて振動する振動膜であり、この振動膜の振動を音声信号として検出する光学式マイクロホン装置として構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項8】
前記ΔΣ変調器は、
前記レーザ光を前記振動体の変位および前記レーザ光のn次回折角に応じた方向に回折し、回折レーザ光を発生させる音響光学変換素子と、
前記回折レーザ光をその進行方向に応じて受光し、光電変換を行う一対の光電変換素子と、
前記一対の光電変換素子のうちの一方の光電変換素子からの出力信号と、前記一対の光電変換素子のうちの他方の光電変換素子からの出力信号とを比較する比較器とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の振動検出装置。
【請求項9】
前記ΔΣ変調器は、前記振動体の振動に応じて動くカンチレバーを含み、
前記音響光学変換素子が前記光源から前記カンチレバーまでの光路上に配設されている
ことを特徴とする請求項8に記載の振動検出装置。
【請求項10】
前記振動体が音波に応じて振動する振動膜であり、この振動膜の振動を音声信号として検出する光学式マイクロホン装置として構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の振動検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−154226(P2008−154226A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300180(P2007−300180)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】