説明

振動減衰組成物

0.9g/cm未満の密度を有する振動減衰組成物を調製するための硬化性前駆体組成物であって、(i)1つ以上の剛性エポキシ樹脂と、(ii)1つ以上の可撓性エポキシ樹脂と、(iii)第1の組の中空微小球と、(iv)第2の組の中空微小球であって、第1の組の微小球は、第2の組の微小球と組成が異なる、第2の組の中空微小球と、剛性及び可撓性のエポキシ樹脂を架橋結合できる硬化剤と、を含有する、前駆体組成物。また、前駆体組成物から得ることができる振動減衰組成物、及びかかる振動減衰組成物を調製する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、英国特許第0724378.5号(2007年12月14日出願)の利益を主張し、その開示内容全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に提供される組成物及びこれらの組成物を作製するための方法は、エポキシ樹脂に基づく振動減衰組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの運搬用車両、電子デバイス機器、及び機械は、それらが配置又は使用される環境のために、ノイズ及び振動に曝される。かかるノイズ及び振動は、それらの使用又は機能に問題を提起し得、かかるデバイス又は機器のユーザーを悩ますか、あるいは害を及ぼし得る。したがって、機器、デバイス、及びそれらのユーザーに対する、かかるノイズ及び振動の影響を減少させる必要がある。多くの用途において、ノイズ及び振動は、かかる車両又はデバイスに引張減衰器を配置又は固定することによって減少される。通常、引張減衰器は、片側に感圧性又はホットメルト接着剤を有する複合パッドである。これらが振動する基材に適用される。かかるプレートは、特殊な形状の部品に付着させること、又はそれらの周囲に形状化するのは困難である。
【0004】
パッドの代替として、熱硬化性樹脂組成物が使用されている。国際公開特許第99/16840号には、良好な振動減衰特性を有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。しかしながら、国際公開特許第02/50184号によれば、良好な振動減衰値は、非常に狭い温度枠内でのみ観察されている。温度枠を増やすためには、高い縦横比又は板状構造を有する特定の充填剤を使用しなければならない。温度枠を増やすために、国際公開特許第02/50184号は、エポキシ樹脂及び熱可塑性共重合体を含有する、代替樹脂組成物の使用について記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
依然として、30℃を超える温度枠でだけでなく、例えば、室温から最高約100℃のより広い温度枠で、良好な機械抵抗を有する振動減衰特性を有する、組成物が必要である。そのような良好な機械的特性は、減衰組成物が適用された構成要素が、様々な温度及び/又は機械力に曝され得る、航空産業、自動車産業、又は船舶業等の運送業において、振動減衰組成物を採用する場合、特に所望される。
【0006】
更に、運送業において特にそうであるが、他の用途においても同様に、重量を削減してエネルギーコストを節約する継続的な必要性が存在する。したがって、低密度であるが、なお比較的広い温度枠にわたって良好な振動減衰及び機械抵抗を有する、振動減衰組成物が所望される。
【0007】
したがって、注入可能若しくは押し出し可能であるか、又は注入可能若しくは押し出し可能な前駆体組成物から調製され得る、比較的広い温度枠にわたる良好な振動減衰特性、室温を超える温度にわたって十分な機械的強度及び/又は抵抗を有し、更に低密度を有する、振動減衰組成物が必要である。
【0008】
低密度、好ましくは0.9g/cm未満の密度であるが、なお広い温度枠、好ましくは室温から最高少なくとも約100℃にわたって、良好な振動減衰特性及び機械抵抗(例えば、10MPaを超えるヤング率)を有する、効果的な振動減衰組成物を、可撓性及び剛性のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂を架橋結合するための硬化剤と、中空球状粒子の組み合わせとの混合物を含有する組成物を用いて調製し得ることが、今では判明している。
【0009】
したがって、以下に、0.9g/cm未満の密度を有する振動減衰組成物を調製するための、硬化性前駆体組成物が提供され、前記前駆体組成物は、
(i)1つ以上の剛性エポキシ樹脂と、
(ii)1つ以上の可撓性エポキシ樹脂と、
(iii)第1の組の中空微小球と、
(iv)第2の組の中空微小球であって、第1の組の微小球は、第2の組の微小球と組成が異なる、第2の組の中空微小球と、
剛性及び可撓性のエポキシ樹脂を架橋結合できる硬化剤と、を含有する。
【0010】
また、上記の前駆体組成物を硬化することによって得ることができる、振動減衰組成物が提供される。
【0011】
更に、振動減衰組成物を調製する方法が提供され、その方法は、
a)前駆体組成物を提供する工程と、
b)前駆体組成物を表面に接触させる工程と、
c)前駆体組成物を硬化する工程と、を含む。
【0012】
加えて、振動減衰組成物を含む物品が提供される。
【0013】
更に別の態様では、例えば、自動車両、ジェット車両、又は風選機用送風機若しくはそのハウジング等の振動構成要素の振動を減衰するための、組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ポリマー組成物の振動減衰特性は、動的熱分析(DMTA)によって測定することができる。様々な温度で所定の試料に振動力を加え、得られた変位及び/又は試料によるエネルギーの吸収を測定する。加えられた力と比較して、変位における時間差を測定することによって、材料の減衰特性を決定することが可能である。時間差は、位相遅れの正接として報告され、「損失係数」又は「タンデルタ」と表現される。損失係数は温度に依存する。温度に対して損失係数をプロットすると、プロットは、ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)でピークに達する。したがって、ポリマー組成物のTgでの損失係数である、「損失係数ピーク」が導入された。成分の比率を変化させるか、又は可塑剤を添加することによって、組成物のTgに影響を及ぼすことができ、即ち、組成物が最も高い振動の減衰を達成する温度に、組成物を微調整することができる。温度に対する損失係数のプロットの最大値は、鋭く狭いピークであり得る。これは、減衰特性が狭い温度枠内でのみ満足できるものであり得ることを意味する。しかしながら、広い温度範囲にわたって良好な振動減衰特性が所望される場合、温度に対する損失係数のプロットは、鋭いピークではなく広いピークを露呈するはずである。そのようなピークの「幅」は、損失係数ピークの温度範囲と称される。0.2を超える損失係数は、良好な振動減衰特性を表すと見なされる。したがって、損失係数がなお0.2以上の値に達する、損失係数ピークの周りに広い温度範囲を有する、組成物を提供することが所望される。温度範囲が大きいほど、試料が十分な減衰性能を有する温度範囲が広くなる。好ましくは、損失係数がなお0.2以上の値に達する損失係数ピークの温度範囲は、40℃を超える。
【0015】
ガラス転移温度、及びしたがって、最大減衰効果は、構成成分の比率、特に可撓性エポキシ樹脂の剛性エポキシ樹脂に対する比率を修正することによって、及び/又は他のポリマー、いわゆる可塑剤を添加することによって、調整することができる。振動減衰組成物は、典型的には、約20℃を超えるガラス転移温度(DMTAによって決定される)を有し得る。ガラス転移温度は、120℃未満又は100℃未満であり得る。典型的には、ガラス転移温度は、約40℃〜約90℃内である。
【0016】
本明細書で提供される組成物は、良好な振動の減衰を提供する比較的広い枠を有し、したがって、様々な動作温度、例えば、約15〜約150℃、又は約20〜約120℃に曝される、振動する基材に好適であり得る。
【0017】
低密度にかかわらず、組成物は、DMTAによって測定される少なくとも10MPaを超える、好ましくは少なくとも約20℃〜約100℃の温度範囲を超える、ヤング率によって表される、十分な機械的強度を有し得る。
【0018】
振動減衰組成物は、前駆体組成物を硬化することによって得られる。
【0019】
前駆体組成物は、典型的には押し出し可能又は注入可能である。それらは、0.5MPa(5バール)の圧力で4mmの開口を通る、少なくとも約30g/分、好ましくは40g/分の押し出し速度を有し得る。前駆体組成物、又は2成分組成物の場合、前駆体組成物のそれぞれの部分が、例えば、約40〜約700Pa.sの25℃でのブルックフィールド粘度を有し得る。
【0020】
前駆体組成物は、硬化性エポキシ樹脂に基づく。それらは、少なくとも1つの剛性エポキシ樹脂及び少なくとも1つの可撓性エポキシ樹脂、異なる化学型の中空球状粒子(微小球)の組み合わせ、並びに振動減衰組成物を形成するためにエポキシ樹脂を架橋結合する硬化剤を含有する。可撓性及び剛性のエポキシ樹脂は、典型的には2つの別個の樹脂であり、硬化時に相互に架橋結合することができる。しかしながら、前駆体組成物中の可撓性及び剛性のエポキシ樹脂が、1つの樹脂の中に含有され得ることも想到され、即ち、そのような樹脂は、可撓性及び剛性のエポキシ構成成分を有することができる。
【0021】
改善された振動減衰特性(0.5を超える損失係数ピークと、損失係数が少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃の少なくとも0.2である損失係数ピークの温度範囲とを有する)を有する組成物は、本明細書により提供される硬化性(熱硬化性)前駆体組成物を硬化することによって調製し得ることが判明している。
【0022】
また、改善された振動減衰特性(0.5を超える損失係数ピークと、損失係数が少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃の少なくとも0.2である損失係数ピークの温度範囲とを有する)を有し、0.9g/cm未満又は0.7g/cm未満、好ましくは0.6g/cm未満の密度を有する組成物は、本明細書により提供される硬化性(熱硬化性)前駆体組成物を硬化することによって調製し得ることが判明している。
【0023】
改善された振動減衰特性(0.5を超える損失係数ピークと、損失係数が少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃の少なくとも0.2である損失係数ピークの温度範囲とを有する)を有し、0.9g/cm未満又は0.7g/cm未満、好ましくは0.6g/cm未満の密度を有し、温度100℃で少なくとも10MPaのヤング率を有する組成物は、本明細書により提供される硬化性(熱硬化性)前駆体組成物を硬化することによって調製し得ることが、更に判明している。
【0024】
前駆体組成物は、2部式組成物又は1部式組成物であり得る。2部式組成物では、第1部は、典型的には硬化剤を含有し、第2部は、典型的にはエポキシ樹脂を含有し、第2部は第1部から分離される。第1部及び第2部の比率は、硬化剤及びエポキシ樹脂のモル量が、エポキシ樹脂の架橋結合が発生する範囲内にあるように、選定される。2つの構成成分を組み合わせることにより、硬化プロセスが開始される。好ましくは、硬化剤は、室温で硬化を開始することができる。1成分組成物では、硬化は、製剤を高温に付すことによって開始され、硬化剤は、典型的には室温(25℃)である保存温度で、実質的に架橋結合が発生しないように選択される。
【0025】
好ましくは、前駆体組成物は2部式組成物である。
【0026】
前駆体組成物の成分、及びしたがって、前駆体組成物から得ることができる振動減衰組成物も同様に、以下でより詳細に記載する。
【0027】
エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、オキシラン環(エポキシド)を有する有機化合物の開環反応を介して重合することによって誘導される、ポリマーである。そのような材料には、脂肪族系、脂環式、芳香族系、又は複素環式ポリマーエポキシドが含まれる。好適な材料は、1分子当たり少なくとも2つの反応性の、即ち、重合可能又は架橋結合可能な、好ましくは末端の、エポキシ基を有する。典型的には、エポキシ樹脂は、単量体を含有するエポキシ基を重合することによって調製される。好適な単量体は、典型的には、モノ、ビス−、又はポリグリシジルエーテルを産生する、エピハロヒドリンのポリヒドロキシ炭化水素との反応生成物である。
【0028】
剛性エポキシ樹脂
本明細書で使用される剛性エポキシ樹脂は、フェノール又は多核フェノール(それらの誘導体を含む)のグリシジルエーテルから誘導される反復単位を含む、エポキシ樹脂である。例としては、p,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−1,1−ジナフチルメタンのモノ−、ジ−、又はポリグリシジルエーテル、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンブレンド又はそれらの組み合わせの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’の異性体が挙げられる。好ましい例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、それらのブレンド又は組み合わせのグリシジル又はジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0029】
そのようなグリシジルエーテルは、例えば、対応するヒドロキシル官能化アレーンを過剰のエピクロロヒドリンと反応させることによって、調製することができる。
【0030】
剛性エポキシ樹脂の典型的な例には、一般式(I):
【0031】
【化1】

【0032】
によって表されるものが挙げられ、
式中、
RはH、C〜Cアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルを表し、
はそれぞれ発生時に独立してC〜Cアルキレン(例えば、プロピレン、1−メチルエチレン、若しくは1,1−ジメチルメチレン)、直接結合、又はカルボニルであり、
はそれぞれ発生時に独立してH、又はアルキル、例えば、C〜Cアルキレンであり、
mは別個に、それぞれ発生時に、0〜3の整数であり、
rは0又は整数>0であり得、該樹脂の所望の分子量に到達し得るように選定される。
【0033】
ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに基づく市販の剛性エポキシ樹脂の例としては、Hexion Speciality Chemicals GmbH,Rosbach,GermanyからのEPON 828、EPON 1001、EPON 1310、及びEPON 1510の商標名の下で入手可能なもの、並びにDow Chemical Co.から入手可能であるDER−331、DER−332、及びDER−334が挙げられる。ビスフェノールFのジグリシジルエーテルに基づく商業用樹脂には、例えば、Dainippon Ink and Chemicals,Inc.から入手可能なEPICLON 830が挙げられる。ビスフェノールA及びFのブレンドに基づく樹脂は、例えば、Resolution Performance ProductsからのEPIKOTE 232として市販されている。
【0034】
剛性エポキシ樹脂は、典型的には約170〜約10,000、好ましくは約200〜約3,000g/モルの範囲の分子量を有する。
【0035】
剛性エポキシ樹脂は、室温(25℃)で固体、ペースト、又は液体であることができ、あるいは液状エポキシ樹脂中に分散された固体又はペーストであってもよい。
【0036】
剛性エポキシ樹脂は、典型的には、前駆体又は振動減衰組成物の総重量を基準として、20〜約40重量%の量で組成物中に存在する。
【0037】
可撓性エポキシ樹脂
本明細書で使用される可撓性エポキシ樹脂は、少なくとも1つのスペーサー基によって互いから分離される、2つのエポキシド部分を有する単量体から誘導される反復単位を含む、エポキシ樹脂である。スペーサー基は、少なくとも6つ又は少なくとも7つの直鎖カテナリー原子を有する、アルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル鎖であり得る。該鎖は、非置換であるか、あるいは1つ以上の同一又は異なる、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル、アルキオキシ、又はポリオキシアルキル基で置換されてもよい。好ましくは、置換基の数は、カテナリー原子の数未満である。
【0038】
鎖は、その長さの少なくとも一部にわたって、好ましくはその長さ全体にわたって、自由に回転可能、即ち、可撓性である。したがって、エポキシ樹脂は、「可撓性」エポキシ樹脂と称される。
【0039】
可撓性エポキシ樹脂は、脂肪族系又は芳香族系であり得る。
【0040】
脂肪族系可撓性エポキシ樹脂は、少なくとも6つ又は少なくとも7つの(直鎖)カテナリー原子を有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル鎖によって分離される、少なくとも2つのエポキシ基又はグリシジルエーテル基を含む単量体から誘導される反復単位を含む。幾つかの実施形態では、スペーサー基は、30未満、又は20未満、又は15未満の直鎖カテナリー原子を含み得る。アルコキシ又はポリオキシアルキル鎖が好ましい。典型的な例としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール又はアルカンジオール等の、ポリオキシポリオールのグリシジルエーテル又はジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0041】
可撓性の脂肪族系エポキシ樹脂は、一般に、式(II):
E1−R−E2 (II)
によって記載することができ、
式中、
E1及びE2は、互いに独立してエポキシド又はグリシジルエーテルを表し、Rは、少なくとも6つ又は少なくとも7つの(直鎖)カテナリー原子を有する、アルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル鎖であるスペーサー基を表す。
【0042】
好ましくは、Rは、例えば、1つ以上のエチレンオキシ若しくはプロピレンオキシ単位、又はそれらの組み合わせを含有する基等の、アルコキシ又はポリオキシアルキレンである。
【0043】
可撓性の芳香族系エポキシ樹脂は、少なくとも2つの芳香族グリシジルエーテル又は少なくとも1つの芳香族グリシジルエーテル、及びスペーサー基によって分離されるグリシジルエーテル基を含有する単量体から誘導される反復単位を含み、該スペーサー基は、少なくとも6つ又は少なくとも7つの(直鎖)カテナリー原子を有するアルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル鎖である。
【0044】
可撓性の芳香族系エポキシ樹脂は、一般に、式(III):
E3−R−E4 (III)
によって記載することができ、
式中、
E3及びE4は、互いに独立して、エポキシ基、グリシジルエーテル基、又はエポキシ若しくはグリシジルエーテル部分を担持する芳香族基を表し、E3及びE4のうちの少なくとも1つ、好ましくは両方は、グリシジルエーテル基等のエポキシ部分を担持する、芳香族基を表す。
【0045】
グリシジルエーテル基等のエポキシ部分を担持する芳香族基としては、例えば、置換されても、されなくてもよい、例えば、限定されないが、p,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−1,1−ジナフチルメタンのグリシジルエーテル等の、グリシジルエーテルフェニル基、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、又はそれらの組み合わせの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’異性体が挙げられる。
【0046】
Rは、少なくとも6つ又は少なくとも7つの(直鎖)カテナリー原子を有する、アルキル、アルコキシ、又はポリオキシアルキル鎖である、スペーサー基を表す。
【0047】
可撓性エポキシ樹脂は、例えば、対応する脂肪族系ヒドロキシ化合物を、例えば、米国特許第5,308,895号に記載される過剰のエピクロロヒドリンと反応させることによって、調製することができる。
【0048】
芳香族系可撓性エポキシ樹脂は、例としては、例えばCardolite NC 514等として、Cardolite Corporation,Newark,NJ,USAから市販されている。
【0049】
可撓性樹脂は、典型的には、前駆体又は減衰組成物の重量を基準として、約5〜約25重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0050】
硬化剤(ハードナー)
製剤は、エポキシ樹脂を硬化(架橋結合)することができる硬化剤を更に含有する。硬化剤は、エポキシ樹脂を架橋結合(硬化)することができ、当業者に既知である、任意の硬化剤であり得る。好ましくは、硬化剤は、室温で、又は室温(25℃)を超える温度で架橋結合することができる。例としては、アミン末端硬化剤(一級アミン)が挙げられるが、二級アミンも同様である。かかるアミンには、一級及び/又は二級アミン基を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル、ポリエーテル、アルキルアミン、並びに骨格鎖に芳香族基を含有するアミン末端ポリマーが含まれる。好ましくは、硬化剤は、約150g/モル超、例えば200〜700g/モルの分子量を有する。典型的には、硬化剤は、3000g/モル未満の分子量を有する。
【0051】
また、二無水物を含む無水物、及びシアンジアミド又はジシアンジアミド、並びにそれらの誘導体も、硬化剤として使用することができる。硬化剤の選択は、組成物が1部式の組成物であるか、あるいは2部式の組成物であるか、及び組成物の最適硬化温度を決定し得る。
【0052】
2成分組成物には、典型的には一級若しくは二級アミン又は無水物硬化剤が使用される。1成分製剤には、シアンジアミド又はジシアンジアミド硬化剤が使用され得る。
【0053】
好適な硬化剤の例としては、一般式
N−R−NRH (IV)
に従うようなものが挙げられ、
、R、及びRは、互いに独立して、水素、直鎖若しくは分岐鎖アルキル、又は直鎖若しくは分岐鎖ポリオキシアルキル部分を表す。
【0054】
残基R、R、Rは、約1〜25個の炭素原子を有する炭化水素、又は3〜25個の炭素原子を有するポリエーテルを含有し得る。R、R、及びRの好ましくは1つ、より好ましくは2つ、最も好ましくは全てが水素である。
【0055】
は、直鎖若しくは分岐鎖アルキル、アルキルアミン、ポリアミノアルキレン、ポリアミドアルキレン、アルキルエーテル、又はポリオキシアルキレン基を表す。好ましくは、Rはポリエーテルであり、硬化剤は、ポリエーテルアミン、又はポリプロピレンオキシド若しくはポリエチレンオキシドから誘導することができるポリエーテルアミンを含む、ポリエーテルジアミンである。Rは、二量体又は三量体のカルボン酸をポリエーテルアミンと反応させることによって誘導可能なものを含む、ポリアミドアミン又はポリアミドジアミンであってもよい。
【0056】
好適なポリエーテルアミンとしては、一般式
H2N−C3H6−O−[C2H4−O−]nC3H6−NH2, (IVa)
H2N−C3H6−O−[C3H6−O−]nC3H6−NH2, (IVb)
H2N−C(CH3)H−CH2−[O−CH2−C(CH3)H]n−O−CH2−CH(CH3)−NH2 (IVc)
(ここで、nは、1〜34(1及び34を含む)であり、例えば1、2、3、4、5、又は1〜2(例えば、1.5若しくは1.7)、2〜3(例えば2.5若しくは2.7)、3〜4(例えば3.5若しくは3.7)、4〜5(例えば4.5若しくは4.7)であって、あるいは、nは、31、32、33、又は31〜33である)に相当するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
硬化剤の組み合わせ、例えば、2つ以上のポリエーテルジアミンの組み合わせも、好適であり得る。
【0058】
好適な商業用硬化剤の例としては、Nitroil,GermanyからのPC AMINE DA、又はHuntsman,BelgiumからのJEFFAMINEの商標名の下で入手可能なものが挙げられる(しかし、これらに限定されない)。
【0059】
典型的には、1つ以上の硬化剤は、前駆体組成物又は振動減衰組成物の総量を基準として、約10〜約25重量%の量で存在し得る。
【0060】
硬化触媒
組成物は、エポキシ樹脂をエポキシ硬化剤化合物と反応させて、硬化プロセスを加速するための触媒を更に含有することができる。かかる触媒は当業者には周知であり、尿素、イミダゾール等の有機触媒、及び三ハロゲン化ホウ素(例えば、三フッ化ホウ素)又は金属塩触媒等の無機触媒が挙げられる。金属塩触媒が好ましい。好適な金属塩触媒としては、第I族金属、第II族金属、又はランタノイド塩が挙げられ、アニオンは、ニトラート、ヨウ化物、チオシアネート、トリフレート、アルコキシド、過塩素酸塩、及びスルホネートから選択される。ニトラート、ヨウ化物、チオシアネート、トリフレート及びスルホネート(それらの水和物を包含する)が好ましく、かつニトラート(それらの水和物を包含する)、例えば硝酸カルシウムが、特に好ましい。
【0061】
好ましい第I族金属(カチオン)は、リチウムであり、好ましい第II族金属カチオンは、カルシウム及びマグネシウムであって、カルシウムが特に好ましい。したがって、好ましい触媒塩は、硝酸ランタン、ランタントリフレート、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム及びそれらの対応する水和物である。
【0062】
使用される触媒の量は、所望の反応性(硬化速度)及び貯蔵安定性に依存して変化し得る。好ましくは、触媒は、振動減衰組成物の重量又は前駆体製剤の総重量を基準として、0.1〜5重量パーセントの量で存在する。
【0063】
ほとんどの用途に対して、組成物全体の総重量を基準として、約0.05〜15重量部未満の金属触媒が使用される。非金属触媒は、一般に、組成物全体の総重量を基準として、0.1〜5重量%の量で使用され得る。
【0064】
触媒は、2成分前駆体組成物のA部若しくはB部、又は両方に存在してもよい。
【0065】
可塑剤
組成物は、製剤のガラス転移温度を修正するために、可塑剤を更に含有することができる。可塑剤をこのように使用して、温度範囲に対する損失係数ピークを、最大の振動減衰が所望されるものに転換することができる。好適な可塑剤は、エポキシ樹脂と相溶するポリマー化合物である。典型的な例としては、ポリエステルポリオール、エチレンプロピレンコポリマー等のポリオレフィンが挙げられる。可塑剤は、典型的には25℃で約1000cpsを超える粘度を有する。可塑剤は、25℃で約1000cpsから、ペーストに典型的であるそれらの値までの粘度値を有し得る。可塑剤は、組成物全体の総量を基準として、1〜15重量%の量で存在し得る。
【0066】
球状充填剤
組成物は、球状又は本質的に球状の充填剤(微小球)の組み合わせを、更に含有する。本質的に球状とは、粒子が完全な球体ではないが、なお球体と表現されるのが最もふさわしいことを意味する。球状充填剤は中空である。それらは無機性又は有機性であり得る。「中空」とは、球体が中実ではないことを意味する。中空の球体は、例えば、真空、ガス、あるいは複数のガス若しくは1つの液体の混合物、又は複数の液体の混合物、又は1つ以上のガス及び1つ以上の液体の混合物を含み得る。
【0067】
無機微小球:
球状充填剤は、無機微小球であり得る。
【0068】
かかる無機微小球の外殻は、例としてガラス又はセラミックス等を含む、金属酸化物又は炭素等の、様々な無機材料から選択することができる。
【0069】
無機微小球は、好ましくは自由流動性粉末を形成する。好ましくは、それらは比較的均質の粒度を有する。平均粒度は、典型的には約1〜約300μm、好ましくは約5〜約200μm、より好ましくは約10〜約100μmである。無機微小球は、好ましくは約0.5g/cm未満、より好ましくは約0.1〜約0.45g/cm、特に好ましくは約0.1〜約0.4g/cmの密度を呈する。
【0070】
無機微小球は、好ましくは、それらが本質的に、混合及び押し出しを含む前駆体の処理を耐え抜くように、有利な破砕強度を有するように選択される。それらは、好ましくは、前駆体中に含まれるかかる微小球の少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の量が、前駆体に対する少なくとも2,500、より好ましくは少なくとも27.6MPa(4,000psi(ポンド毎平方インチ))の圧力の印加を耐え抜くように選択される。
【0071】
本発明に有用な無機微小球は、好ましくは、荒い外側表面よりもむしろ滑らかな外側表面を有する。
【0072】
特に好ましい中空の無機微小球としては、ガラス微小球が挙げられる。中空のガラス微小球は、例えば、3M Company,St.Paul,Mn,USAから商品名SCOTCHLITEで市販されている。
【0073】
有機微小球:
本明細書で提供される組成物はまた、有機微小球を含有し得る。微小球は、好ましくは中空であり、「中空」は上記と同じ意味を有する。
【0074】
有機微小球は、ポリマー微小球である。ポリマー微小球は、有機ポリマー、即ち、少なくとも1つの不飽和炭素−炭素結合を含有する単量体から誘導される反復単位を含む材料から作製される。好適なポリマーの典型的な例としては、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、アクリレートポリマー若しくはコポリマー、ビニリデンポリマー若しくはコポリマー、ポリアセテートポリマー若しくはコポリマー、ポリエステルポリマー若しくはコポリマー、塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマー、アクリレート/アクリロニトリルコポリマー、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0075】
有機微小球の平均直径は、好ましくは15〜200μm、より好ましくは20〜180μmである。典型的には、有機微小球は低密度を有し、典型的には0.01〜0.3g/cmの密度である。
【0076】
好ましくは、有機微小球は圧縮性である。これは、圧縮性有機微小球の体積が、例えば、0.5MPa(5バール)の圧力を施された時に減少することを意味する。好ましくは、それらは弾性的に圧縮性である。即ち、圧力が取り除かれると、それらの元の形状及び/又は寸法に本質的に戻る。
【0077】
微小球は、膨張性でなくてもよく、又は予備膨張されたものでもよい。好適な有機微小球の例は、予備膨張された微小球である。予備膨張された有機微小球は、例えば、アクリロニトリル/アクリル酸コポリマー、又は塩化ビニリデン/アクリロニトリルコポリマーを含む、ポリマー外殻を含む。外殻は、例えば、限定されないが、真空、空気、窒素、又は1つ以上の本質的に(室温で)ガス状である炭化水素を含む、内核を被包し得る。
【0078】
予備膨張された有機中空微小球は、例えば、Lehmann & Voss,Hamburg,Germanyから、商品名DUALITEで市販されている。
【0079】
球状充填剤は、前駆体組成物又は振動減衰組成物の総重量を基準として、約10重量パーセント以上、より好ましくは約15重量パーセント以上の量で存在し得る。好ましくは、球状充填剤は、前駆体組成物又は振動減衰組成物の総重量を基準として、約10〜約35重量%の量で存在する。
【0080】
組成物は、化学的に異なる微小球の組み合わせ、好ましくは無機及び有機微小球の組み合わせを含む。典型的には、組成物は、有機微小球よりも多い量(重量%で決定される)の無機微小球を含む。
【0081】
典型的には、組成物全体の総量を基準として、無機微小球は約8〜約30重量%の量で存在し、有機微小球は少なくとも1重量%又は少なくとも2重量%の量で存在し得、典型的には約1〜約10重量%の量で含まれる。
【0082】
微小球は、同一又は異なる寸法であり得る。例えば、第1の組の微小球は、約5μm〜約105μmの平均粒径を有することができ、第2の組の微小球は、約90〜200μmの平均粒度を有することができる。
【0083】
典型的には、組成物は、無機及び有機微小球の組み合わせを含む。それらの組み合わせでは、有機微小球は、無機球体(例えば、約5〜約105μmであるが、これに限定されない)より大きい粒径(例えば、約90〜約200μmであるが、これに限定されない)を有し得る。
【0084】
補助剤
組成物は、1つ以上の補助剤を含有し得る。補助剤は、エポキシを含有する組成物の調製に使用される既知の材料であり得る。典型的な補助剤には、充填剤、即ち、非球状充填剤、反応性希釈剤、接着促進剤、顔料(三酸化二鉄、ブリックダスト、カーボンブラック、酸化チタン等を含むが、これらに限定されない、無機又は有機顔料)、難燃剤、酸化防止剤等が更に含まれる。
【0085】
振動減衰組成物及びそれらの前駆体の調製方法
振動減衰組成物は、前駆体組成物を硬化することによって調製される。好ましくは、前駆体組成物は室温で、又は室温(25℃)を超える温度で硬化性である。
【0086】
前駆体組成物は、上記の成分を含有する。好ましくは、前駆体組成物は、ハードナー(硬化剤)を含むA部と、可撓性及び剛性のエポキシ樹脂を含む別個の構成成分Bとを含む、2部式組成物である。球状充填剤は、A部若しくはB部、又は両方に含まれ得る。
【0087】
構成成分は、押し出し可能な前駆体組成物を産生するのに効果的な量で存在する。2部式系では、好ましくは、二重Pacカートリッジ内での分注及び混合を可能にするように、両方の部が押し出し可能である。それぞれの部の押し出し速度は、周辺温度(25℃)で、4mmのノズル開口を通り、0.5MPa(5バール)の圧力で、300mLのSemcoカートリッジ(PPG Industries,Hamburg,Germanyから入手可能)を使用して、測定することができる。得られる押し出し速度は、好ましくは40g/分を超え、より好ましくは少なくとも45g/分である。
【0088】
更に、構成成分、特に第1及び第2のエポキシ樹脂、硬化剤、並びに球状充填剤は、少なくとも0.4、好ましくは少なくとも0.5の損失係数ピークを有する振動減衰組成物が、結果として生じるように、効果的な量で存在する。
【0089】
振動減衰組成物の損失係数ピークは、好ましくは30〜100℃、より好ましくは55〜85℃の温度においてである。
【0090】
損失係数が0.2を超える温度範囲は、好ましくは少なくとも30℃、好ましくは40℃、より好ましくは少なくとも45℃である。
【0091】
好ましくは、振動減衰組成物は、70〜150MPaの損失係数ピークのヤング率を有する。
【0092】
好ましくは、成分及びそれらの量は、振動減衰組成物が、約0.90未満、約0.70未満、又は約0.60g/cm未満、好ましくは約0.50g/cm未満、より好ましくは約0.45g/cm未満の密度を有するように、選定される。
【0093】
更に、構成成分、特に可撓性及び剛性のエポキシ樹脂、硬化剤、及び球状充填剤は、振動減衰組成物が、室温(25℃)で少なくとも約450、好ましくは少なくとも約600MPa、典型的には約1500MPa未満のヤング率を有するような量で存在し得る。
【0094】
構成成分、特に可撓性及び剛性のエポキシ樹脂、硬化剤、及び球状充填剤の量は、振動減衰組成物が、100℃で約10MPaを超えるヤング率を有するように選定することができる。
【0095】
損失係数、損失係数ピークの温度範囲、及びヤング率等は、DMTAによって決定される。
【0096】
本明細書に記載される振動減衰組成物又はその前駆体組成物の典型的な実施形態では、剛性エポキシ樹脂は、組成物の総重量を基準として、約25〜約35重量%の量で存在する。可撓性エポキシ樹脂は、剛性エポキシ樹脂より少ない量で存在してもよい。可撓性樹脂の典型的な量は、組成物の総重量を基準として、9〜約20重量%の範囲である。硬化剤は、組成物の総重量を基準として、約12〜約18重量%の量で存在し得る。
【0097】
球状充填剤は、組成物の総重量を基準として、約18〜約32重量%、好ましくは有機微小球の約2〜8重量%及び無機微小球の約6〜30重量%の量で存在し得る。更に、組成物は、約3〜10%の可塑剤を含有し得る。
【0098】
振動減衰組成物を調製するプロセスは、典型的には動作状態にある振動する基材である基材に、前駆体製剤を接触させる工程を伴う。基材は、音の減衰又は緩和が所望される任意の基材であり得る。かかる基材は、金属、木材、プラスチック、又は繊維強化プラスチックであり得る。
【0099】
製剤は、自動車産業、家電産業、及び建設業を含む多岐にわたる産業において使用され得る。したがって、本明細書に記載される組成物の、例えば、自動車両、ジェットエンジン、又は送風機等の振動減衰における使用も、本明細書に提供される。製剤は、自動車両、航空車両、若しくは船舶機の本体若しくは構成要素、又はエンジンのハウジング、又はエンジン若しくはそれらのハウジングに(直接的若しくは間接的に)接続される部品、並びに風選機用送風機及びそれらのハウジング(送風機及び/又は例えば、飛行機の外側案内羽根等のそれらのハウジングに接続される構成要素を含む)等の送風機等の、不規則な形状の対象物の中に押し出し又は注入することができるような、低密度及び低粘度であるという点において特に有利である。典型的なエンジンとしては、燃焼機関、ポンプ、電気機関、ジェットエンジン、空力エンジンが挙げられる。
【0100】
したがって、振動減衰組成物及びその前駆体組成物は、自動車、貨物自動車、オートバイ、列車、船、飛行機等の航空車両、船舶機、及び自動車両における振動減衰に特に好適である。
【0101】
本発明の製剤は、例えば、基材にコーティング、塗装、若しくは塗布する、又は注入する等の、当該技術分野において既知である任意の手段によって、基材と接触させることができる。この目的ために、当該技術分野において既知の適用ツールを使用することができる。
【0102】
製剤を基材と接触させると、製剤が硬化するが、これは、室温で、又は熱の適用時に生じ得る。
【0103】
以下の実施例は、本発明を更に説明するために提供されるが、本発明はそれらに制限されない。
【0104】
実施例及び方法
1.動的機械熱分析(DMTA)測定
DMTA測定を、約1.5mmの厚みを有する5mm×10mmの試料に行った。
【0105】
1.1.試料の調製:
前駆体組成物は、MIXPAC(Mixpac Systems,AG,Rotkreuz,Switzerland)からのMC13〜18型の混合ノズルを取り付けた、400mLのMixpacカートリッジから押し出した。次いで、実験室用のコーティング機を使用して、該生成物を約1.5mmの厚みに広げた。
【0106】
被検物を24時間室温で、その後、強制空気炉内で、100℃で2時間硬化させた。冷却後、5mm×10mmの被検物を硬化した試料から切り取り、DMTA V(Rheometric Scientific Inc.,Piscataway,NJ 08854,USAより入手可能)を使用してDMTA測定を施した。
【0107】
ピーク損失係数、ヤング率、及びガラス転移温度のDMTA V試験設定は、以下の通りであった。
【0108】
単一カンチレバー曲げモード
駆動アセンブリの配向:水平
動的温度傾斜試験
温度範囲:−50℃/+200℃
加熱速度;2℃/分
周波数:1Hz、10Hz
ひずみ:0.05%
1.2.損失係数ピーク及びガラス転移温度の測定
タンデルタ、即ち、損失率の貯蔵弾性率(損失係数)に対する比率を、上記の条件下の曲げモードで測定する。
【0109】
1.3.損失係数ピークでの温度範囲の決定
適用される温度に対するタンデルタを記録し、損失係数ピークを測定し、依然として0.2以上のタンデルタが測定される、損失係数ピークの周囲の温度枠を測定することによって、温度範囲を得た。
【0110】
1.4.ヤング率の決定
ヤング率(上記のDMTA引張又は曲げモードで測定される、応力のひずみ振幅に対する比率)は、示される温度で決定された。
【0111】
2.圧縮強度
硬化したエポキシに基づく組成物の圧縮強度は、ASTM D695に従って測定した。B/Aの混合比を2/1にするのに好適な「Mixpac」からの400mLのカートリッジに、容積で1:2の比率のA部及びB部を、手作業で400mLまで充填した。MIXPAC(Mixpac Systems,AG,Rotkreuz,Switzerland)からのMC 13〜18型の混合ノズルを、カートリッジに取り付けた。このようにして、12.7mm(高さ)×12.7mm(幅)×25mm(長さ)の寸法を有し、1つの主要な側面が開口する、Teflonコーティングされた成形型の中に、約50gを押し出した。
【0112】
成形型を強制空気炉内に定置し、硬化プログラムを施した。炉の温度を24時間23℃に保持し、次いで温度を2時間100℃に保持し、エポキシに基づく組成物を硬化した。100℃で2時間の硬化が終了した後、硬化したエポキシに基づく組成物を45分間にわたって23℃に冷却した。
【0113】
試験片は、加熱能力を備えるZwick Model Z030 Tensile Tester(Zwick GmbH&CO.,UIm,Germany)を使用して、1mm/分の一定の張力計のクロスヘッド速度で、それらの25mmの軸腺に沿って圧縮した。
【0114】
23℃(室温)及び100℃の両方で、圧縮強度を測定した。100℃での試験の前に、少なくとも30分間、加熱した機器の中で、試験片を前条件付けした。
【0115】
それぞれのエポキシ組成物について、少なくとも3つの試料を測定し、結果はMPaで平均をとって記録した。
【0116】
3.ブルックフィールド(Brookfield)粘度
粘度は、2RPM及び25+/−2℃で稼動する、N°7スピンドルを装着したRVF式を使用して、測定することができる。
【0117】
4.密度
硬化したエポキシに基づく組成物の密度は、ASTM D1622に従って測定した。エポキシに基づく組成物の試料は、対応する前駆体を成形型に流し込み、試験方法の「圧縮強度」に記載した通りの温度プログラムを使用して、強制空気炉内で硬化することによって調製した。エポキシに基づく組成物の硬化した試料を成形型から取り外し、それらの正確な寸法を記録した。それぞれの試料の重量を量り、密度を算出して、1cm当たりのグラム数を記録した。
【0118】
5.押し出し速度
押し出し速度は、4mmのノズルを通って、0.5MPa(5バール)の圧力を60秒間適用した後に押し出される量を測定することによって決定した。
【0119】
B/Aの混合比を2/1にするために好適な「Mixpac」からの400mLのカートリッジに、容積で1:2の比率のA部及びB部を、手作業で400mLまで充填した。MIXPAC(Mixpac Systems,AG,Rotkreuz,Switzerland)からのMC 13−18型の混合ノズルを、カートリッジに取り付けた。空気式分注ガンを0.5MPa(5バール)の圧力で60秒間使用して、カートリッジから生成物を押し出した。周囲条件(25℃)で測定を行った。それぞれの前駆体を3回評価し、結果を平均したg/分で表した。
【0120】
6.材料
【0121】
【表1】

【0122】
7.実施例1及び2
2成分前駆体組成物の調製
A部の調製
EPIKOTE 232が、室温で混合下、数回に分けて添加された2−l機械式混合器に、JEFFAMINE D230を定置した。室温で60分間、混合を継続した。次いで、混合物を80℃に加熱し、この温度で更に60分間保った。硝酸カルシウム及びイミダゾールを添加し、両方の材料が完全に溶解するまで混合した。次いで、混合物を室温に冷却し、その後ANCAMINE K54を添加した。その均質な混合物に、ガラス泡を添加し、約30分間混合した。次いで、DUALITE微小球を添加して15分間混合し、均質な白色ペーストを得た。表1に示す量のこの成分を使用した。
【0123】
B部の調製
本発明の基剤樹脂(B部)は、表2に列記される成分を2リットルの機械式混合器内で組み合わせることによって調製した。水冷却を使用して、混合プロセスの間、35℃未満の温度に維持した。エポキシ樹脂であるEPIKOTE 232、CARDOLITE NC 514、及びCARDOLITE NC 513を、約30分間、エチレンプロペンコポリマー(可塑剤)と共に混合した。均質な混合物を得た後、ガラス微小球を添加して15分間混合した。最終工程では、ポリマー微小球を混合物に添加し、均質になるまで混合した。これらの混合物は、滑らかな均一の稠度を有するペーストであった。表2に示す量のこの成分を使用した(B1及びB2)。
【0124】
振動減衰組成物の調製(A+B)
A部及びB部は、「Mixpac」からの、B/Aの混合比を2/1にするのに好適である、400mLのカートリッジを使用して、A:Bを1:2v/vの比率で組み合わせた。MIXPAC(Mixpac Systems,AG,Rotkreuz,Switzerland)からのMC13〜18型の混合ノズルをカートリッジに取り付けた。
【0125】
前駆体組成物をキャリア(PTFEスライド)上に押し出し(押し出し速度は40g/分であった)、次いで、実験室用コーティング機を使用して、約1.5mmの厚みに広げた。被検物を室温で24時間、その後、100℃で2時間、炉内で硬化させた。室温へ冷却後、被検物に上記のDMTA試験手順を施した。結果を表3に示す(実施例1)。
【0126】
8.比較例1(C1)
A部、B部、及びA+Bの硬化した組成物は、ガラス泡又はポリマー微小球が、球状の水酸化アルミニウム(APYRAL24)と置き換えられたことを除いて、実施例1について上記の通り調製された。
【0127】
A部及びB部の組成物を表1(A2)及び2(B3)に示し、硬化した組成物の機械的特性を表3(C1)に示す。
【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.9g/cm未満の密度を有する振動減衰組成物を調製するための硬化性前駆体組成物であって、
(i)1つ以上の剛性エポキシ樹脂と、
(ii)1つ以上の可撓性エポキシ樹脂と、
(iii)第1の組の中空微小球と、
(iv)第2の組の中空微小球であって、前記第1の組の微小球は、前記第2の組の微小球と組成が異なる、第2の組の中空微小球と、
前記剛性及び可撓性のエポキシ樹脂を架橋結合できる硬化剤と、を含有する、前駆体組成物。
【請求項2】
前記可撓性樹脂が、芳香族樹脂である、請求項1に記載の前駆体組成物。
【請求項3】
前記第1の組の微小球が、有機微小球である、請求項1又は2に記載の前駆体組成物。
【請求項4】
前記第1の組の微小球が、約90μm〜200μmの平均直径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項5】
前記第2の組の微小球が、約5μm〜約105μmの平均粒径を有し、前記第1の組の粒子が、約90〜200μmの平均粒度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項6】
前記第2の組の微小球が、無機性である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項7】
前記剛性エポキシ樹脂が、エポキシ官能化ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はこれらの組み合わせから誘導される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項8】
前記第1の組の微小球が、有機性であり、約2〜8重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項9】
前記第2の組の微小球は、無機性であり、約18〜約32重量%の量で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項10】
4mmのノズルを介して周囲条件かつ0.5MPa(5バール)の圧力で注入可能である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の前駆体組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の前駆体組成物を硬化することによって得ることができる、振動減衰組成物。
【請求項12】
100℃で少なくとも10MPAのヤング率を有する、請求項11に記載の振動減衰組成物。
【請求項13】
少なくとも40℃の損失係数ピークの温度範囲を有する、請求項11又は12に記載の振動減衰組成物。
【請求項14】
少なくとも0.45の損失係数ピークを有する、請求項11〜13のいずれか一項に記載の振動減衰組成物。
【請求項15】
振動減衰組成物を調製する方法であって、
a)請求項1〜10のいずれか一項に記載の前駆体組成物を提供する工程と、
b)前記前駆体組成物を表面に接触させる工程と、
c)前記前駆体組成物を硬化する工程と、を含む、方法。
【請求項16】
請求項10〜14のいずれか一項に記載の振動減衰組成物を含む物品。
【請求項17】
振動構成要素において振動を減衰するための、請求項10〜14のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2011−506689(P2011−506689A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538221(P2010−538221)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086758
【国際公開番号】WO2009/079428
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】