説明

振動測定法におけるアーティファクトの周波数スペクトルの使用法

【課題】複数の圧力ステップからの振動測定データを処理して患者の血圧を決定する。
【解決手段】患者に接続された心拍数監視装置32により患者の心拍数を取得する。時間−周波数領域変換器54が振動測定データを受け取って、該振動測定データを周波数領域へ変換する。算出された心拍数に基づいて、本システム及び方法は、基本周波数及び少なくとも1つの高調波周波数を中心とした通過帯域を持つフィルタにより周波数領域振動測定信号をフィルタリングする。通過帯域内の周波数領域信号のエネルギが、通過帯域の外側の周波数領域振動測定信号のエネルギの少なくとも一部分と比較される。前記比較に基づいて、本システムは、患者の血圧を算出する際に現在の圧力ステップにおける信号を利用すべきかどうかを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に云えば、非侵襲性血圧監視の分野に関するものである。より具体的には、本発明は、アーティファクトにより汚染された振動測定データの処理を改善するために患者からの信号をフィルタリングするための方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人の心臓は周期的に収縮して動脈に血液を送り出す。このポンプ作用の結果として、動脈内に圧力パルス又は振動が存在し、これにより動脈の容積を循環的に変化させる。各サイクル中に最小圧力は拡張期血圧として知られており、また各サイクル中に最大圧力は収縮期血圧として知られている。「平均動脈血圧(MAP)」として知られている別の血圧値は、各々のサイクルにわたる測定血圧の時間重み付き平均を表す。
【0003】
患者の拡張期、収縮期及び平均動脈血圧の決定のために多数の技術が利用可能であるが、非侵襲性血圧監視に典型的に使用されるこのような1つの方法は、振動測定(oscillometric) 技術と呼ばれている。この血圧を測定する方法は、患者の肢部(例えば、上腕)の周りに膨張可能なカフを適用することを含む。カフは患者の収縮期血圧よりも高い圧力まで膨らませ、次いで一連の小さなステップで圧力を増分的(incremental) に低減する。カフに空気圧連結された圧力センサにより、空気を抜く過程全体にわたってカフの圧力を測定する。センサの感度は、患者の動脈を流れる血液に起因したカフ内に生じる圧力変動を測定できるようになっている。各拍動により、血流は動脈容積に小さな変化を引き起こし、これは膨らんだカフに伝達されて、更にカフ内に僅かな圧力変動を引き起こし、その圧力変動がセンサによって検出される。圧力センサは、空気抜き過程中の各圧力ステップで患者の心臓の拍動に伴う一連の小さな周期的圧力変動と組み合わさったカフ圧力レベルを表す電気信号を発生する。「複合波」又は「振動」と呼ばれるこれらの変動は、収縮期血圧より高い印加カフ圧力に対しては最小であるピーク・ピーク振幅を持つ。
【0004】
カフ圧力が減少するにつれて、振動の大きさは単調に増大し始めて、最終的には最大振幅に達する。振動の大きさが最大振幅に達した後、振動の大きさは、カフ圧力が減少し続けるにつれて単調に減少する。このような振動測定データはしばしば、「釣鐘形曲線」のてを持つものとして記述することができる。実際に、測定された振動測定パルスを表す最適な当てはめ曲線、すなわち、包絡線(envelope)を算出することができる。生理学的には、最大振動振幅値におけるカフ圧力はMAPを近似する。更に、収縮期及び拡張期血圧に等価なカフ圧力における複合波振幅は、この最大振動振幅値に対して固定の関係を持つ。従って、振動測定法は、様々なカフ圧力における検出された振動振幅の測定に基づくものである。
【0005】
振動測定法に従って動作する血圧測定装置は、様々な印加カフ圧力レベルでの圧力振動の振幅を検出する。これらの振動の振幅、並びに印加カフ圧力は、装置が所定の圧力パターンを通じてカフ圧力を自動的に変えるとき、共に記憶される。これらの振動振幅は振動測定「包絡線」を定めると共に、最大値及びその関連カフ圧力(これはMAPにほぼ等しい)を見付けるために評価される。最大値に対して或る固定の関係を持つ振動振幅を生じさせるMAP値よりも低いカフ圧力は、拡張期血圧と呼ばれている。また同様に、その最大値に対して或る固定の関係を持つ振幅を持つ複合波を生じさせるMAP値よりも高いカフ圧力は、収縮期血圧と呼ばれている。MAPにおける最大値に対する収縮期及び拡張期血圧における振動振幅の関係は、それぞれ、当業者の選択に応じて経験的に導出された比率である。一般に、これらの比率は、MAPにおける振幅の40%〜80%に指定されている。
【0006】
振動の大きさを決定するための一方法は、記録された振動振幅及び対応するカフ圧力レベルに適当な曲線をコンピュータで当てはめることである。その当てはめた曲線を用いることにより、MAP、収縮期及び拡張期データ点の近似値を算出することができる。MAPの推定値は、当てはめた曲線上の、最大振動を持つカフ圧力レベルと見なされる。従って、MAPの1つの可能な推定値は、当てはめた曲線上の、一次導関数がゼロに等しい点を見付けることによって決定することができる。この最大振動値のデータ点から、MAPにおける振動振幅の或る百分率を取ることによって、収縮期及び拡張期血圧での振動の振幅を算出することができる。このようにして、当てはめた曲線に沿った収縮期データ点及び拡張期データ点の各々を算出することができ、従って、それらのそれぞれの圧力もまた推定することができる。この曲線当てはめ技術は、生の振動測定データをフィルタリング又は平滑化する利点を持つ。しかしながら、場合によっては、振動測定包絡線を作り且つ処理するために使用される追加のフィルタリング技術により、血圧値の決定精度を改善できることが判明している。
【0007】
血圧算出の信頼性及び再現性は、振動振幅を正確に決定する能力の要である。しかしながら、振動振幅の決定はアーティファクトによる汚染の影響を受け易い。振動測定法が測定されるカフ圧力の小さな変動を検出することに依存しているので、このカフ圧力に影響を及ぼす外力は、場合によっては振動測定データを完全に遮蔽するか、さもなければ無用なものにするアーティファクトを生じさせることがある。このようなアーティファクトの1つの源は、患者の自発的な又は無意識の動きによるものである。患者の身震いのような無意識の動きは、振動測定データ中に高周波アーティファクトを生じさせることがある。自発的な動きによるアーティファクト、例えば、患者が腕、手又は胴体を動かすことによって引き起こされるアーティファクトは、低周波アーティファクトを生じさせることがある。
【0008】
現在利用可能なシステムでは、収集された振動測定データがアーティファクトによって損なわれているかどうかを決定できることがあるが、しかしながら、現在のフィルタリング技術は所望の振動測定データと同様な周波数成分を持つアーティファクトを除くのに有効ではない。この代わりに、非侵襲性血圧システムでは、アーティファクトによって損なわれるものとして指定された振動測定データを単純に拒絶することができる。このような場合、適度にアーティファクトの無い振動測定データを取得できるようになるまで各圧力ステップでより多くの振動測定データを収集しなければならない。この場合、患者の血圧を決定するための時間が大幅に長くなり、また膨張可能なカフが関連した肢部への血液の流れを制限することに伴って患者が蒙る不快さが増大することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7678059号
【発明の概要】
【0010】
本書では、患者の血圧を決定する際に用いるための振動測定包絡線を算出する方法を開示する。本方法は、振動測定信号及び患者の心拍数(heart rate)の表示を受け取る工程を含む。次いで、SpO2 又はECGのような異なる生理学的パラメータを用いて、心拍数の基本周波数及び少なくとも1つの高調波周波数を見付ける。次いで、振動測定データを周波数領域に変換する。
【0011】
いったん振動測定データが周波数領域に変換されると、その周波数領域振動測定信号が、基本周波数及び1つ以上の高調波周波数を中心とする通過帯域を持つ1つ以上の帯域通過フィルタを用いてフィルタリングされる。基本周波数及び1つ以上の高調波周波数を中心とする通過帯域内のエネルギが決定される。更に、本方法及びシステムは、1つ以上の通過帯域の外側にある信号の少なくとも一部分内の周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する。一実施形態では、周波数領域振動測定信号のエネルギは、通過帯域よりも僅かに高い周波数位置及び僅かに低い周波数位置にあるアーティファクト帯域において算出することができる。
【0012】
いったん通過帯域内のエネルギ及び通過帯域の外側のエネルギが算出されると、本方法及びシステムは、通過帯域内のエネルギと通過帯域の外側のエネルギとの比を算出する。算出された比が閾値を超えている場合には、本システムは通過帯域内のフィルタリングされた周波数領域信号から振動測定信号を算出し、また振動測定包絡線データ点を算出する。
【0013】
前記比が閾値を超えていない場合には、本システムは、次の圧力ステップに移る前に現在の圧力ステップで追加の振動測定データを求めることができる。この代わりに、本システムは、振動測定信号を再構成する際にどの通過帯域を用いるべきかを決定することができる。最後に、通過帯域内のエネルギと通過帯域の外側のエネルギとの比較を本システム及び方法によって利用することにより、血圧の読みの品質値を決定することができる。
【0014】
図面には、本発明開示内容を実施するのに現在考えられる最良の実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、血圧の非侵襲性測定のためのシステムの一実施形態を示す。
【図2】図2は、多数の圧力ステップにおいて血圧カフから収集された振動測定データを示すグラフである。
【図3】図3は、振動測定データのアーティファクト抵抗性分析のための振動測定データ処理システムの一実施形態である。
【図4】図4は、患者からの周波数領域振動測定信号のグラフである。
【図5】図5は、患者からの周波数領域振動測定信号の別のグラフである。
【図6】図6は、本発明開示のフィルタリング・システムのための多数の通過帯域及び多数のアーティファクト帯域を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明開示のシステムの動作シーケンスを例示する流れ図である。
【図8】図8は、本発明開示のシステムの動作シーケンスの別の実施形態を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、一実施形態の非侵襲性血圧(NIBP)監視システム10を示す。NIBP監視システム10は、患者14の腕又は他の肢部に装着される通常の柔軟な膨張収縮可能なカフである圧力カフ12を含む。処理装置16が、加圧空気源20と圧力導管22との間に配置された空気注入弁18を制御する。空気注入弁18がカフ12内の圧力を増大するように制御されたとき、カフ12は患者14の腕の周りを締め付ける。カフ12内の圧力が充分な値に達すると、カフ12は患者14の上腕動脈を完全に閉塞させる。
【0017】
カフ12が完全に膨張した後、処理装置16は更に空気抜き弁24を制御して、カフ12から圧力導管22を介して周囲空気中へ圧力を増分的に解放し始める。カフ12の膨張及び増分的な収縮の際に、圧力導管28によって圧力カフ12に空気圧連結された圧力トランスデューサ26が、圧力カフ12内の圧力を測定する。代替実施形態では、カフ12は、増分的に空気抜きされるのではなく、連続的に空気抜きされれる。このような連続的に空気抜きする実施形態では、圧力トランスデューサ26はカフ内の圧力を連続的に又は一定の間隔で増分的に測定することができる。
【0018】
カフ12内の圧力が減少するにつれて、圧力トランスデューサ26は、測定されたカフ圧力の中の振動測定パルスを検出する。これらの振動測定パルスは、患者の血液が各心拍動により上腕動脈に流れ込み、その結果として付加的な容積の血液を受け容れるように動脈が膨張することによって引き起こされる圧力変動を表す。
【0019】
圧力トランスデューサ26によって測定されたような、振動測定パルスを含むカフ圧力データは、処理装置16に供給されて、処理し分析することができ、また収縮期血圧、拡張期血圧及びMAPを含む患者の血圧の決定値を、臨床医のために表示装置30で表示することができる。
【0020】
処理装置16は更に、心拍数監視装置32によって取得されたような患者14の心拍数の表示を受け取ることができる。心拍数監視装置32は、様々な普通に使用される心拍数検出技術の内の1つ以上を用いて、患者14の心拍数を取得する。用いることのできる1つの心拍数検出技術は心電図記録法(ECG)であり、該技術では、患者14の特定の解剖学的部位に接続された電気リード線34により、患者の心臓を通る電気的活動の伝播を監視する。この代わりに、患者の心拍数は、SpO2 、体積変動記録技術、又はカフ圧力データの信号処理及び分析を含む他の技術を用いて、取得することができる。
【0021】
図2は、図1に示したNIBP監視システム10から取得することのできる様々な圧力値を示すグラフである。圧力トランスデューサ26によって決定されるようなカフ圧力は、カフ圧力グラフ36として表される。カフ圧力は38aで最大になり、これは、処理装置16によって制御されるようにカフ12を完全に膨張させたときのカフ圧力である。処理装置16は、38aが患者の収縮期血圧よりも充分に高い圧力になるように、カフ12の膨張を制御する。これは、標準的な医療行為を参照した患者血圧データの以前に決定された値、又は血圧推定値を参照することによって、制御又は修正することができる。カフ圧力グラフ36は一連の圧力ステップ38a〜38uで増分的に低下する。これらのステップは、空気抜き弁24によって制御されるようなカフ12内の各々の増分的圧力減少を反映する。患者の上腕動脈がもはや完全に閉塞されない圧力ステップにカフ圧力が達する前では、測定されたカフ圧力には振動測定パルス40が現れている。各圧力ステップで検出される振動測定パルスの数は、患者の心拍数と、NIBPシステムが各圧力ステップでデータを収集する時間の長さとの関数として制御される。しかし、典型的には、カフ圧力データが、各圧力レベルで少なくとも2つの振動測定パルスを得るように記録される。
【0022】
各々の増分的圧力ステップで、振動測定パルス・データを含めて、カフ圧力が測定される。該測定は、振動測定パルスが振動測定包絡線を完全に特定できるほどに充分に小さくなるような増分的圧力ステップ(例えば、図中の増分的圧力ステップ38u)にカフ圧力が到達するまで行われる。この時点で、処理装置16は空気抜き弁24を制御して、圧力カフ12から完全に空気抜きし、もって血圧データの収集が完了する。
【0023】
図2は更に、一連の増分的カフ圧力ステップで収集された振動測定パルス・データを用いて算出されたものとして振動測定包絡線42を示している。処理装置16は各々の圧力ステップにおける振動測定パルスを分離して、振動測定包絡線42を表すための最良の当てはめ曲線を生成する。振動測定包絡線は、収縮期血圧、拡張期血圧及びMAPを推定するのに有用である。MAPは、振動測定包絡線42のピーク44に対応する増分的圧力ステップ38kとして決定される。いったんMAPが決定されると、収縮期血圧46及び拡張期血圧48は、MAPの圧力レベルにおける振動振幅の所定の百分率である特定の振動振幅に関連した圧力レベル値として識別することができる。一実施形態では、収縮期血圧46は、振動測定包絡線振幅がMAPの振幅の50%である増分的圧力ステップ38hに対応する。別の実施形態では、拡張期血圧48は、包絡線振幅がMAPにおける包絡線振幅の60%〜70%である増分的圧力ステップ38nに対応する。収縮期血圧及び拡張期血圧を推定するために使用されるMAP振幅の百分率は、通常、処理装置16によって使用される特定のアルゴリズムに依存して、40%〜80%である。
【0024】
代替実施形態では、各圧力ステップにおける振動測定パルスの振幅を平均して、振動測定包絡線データ点を生成する。これらの実施形態の幾分かでは、或る圧力ステップにおける最初及び/又は最後の振動測定パルスのパルス整合又は除去のような技術を用いることにより、算出された振動測定データ点の品質を改善することができる。振動測定包絡線42はまた、最適な当てはめ曲線の入力データ点として該圧力ステップにおける複合振幅の平均を用いることによって生成することができる。この代わりに、振動測定包絡線42のデータ点を、各圧力ステップにおける振動測定パルスの最大振幅とすることができる。
【0025】
図2から分かるように、振動測定パルスは全体のカフ圧力及び圧力増分ステップに対して相対的に小さい。これにより、振動測定パルスの検出はノイズや他のアーティファクトの影響を非常に受け易い。20Hz以上の周波数のような比較的高い周波数のノイズは容易にフィルタリング(濾波)することができるが、振動測定パルスの大きさが比較的小さいので、人の体動に起因したアーティファクトを適切にフィルタリングすることは困難である。と云うのは、これらのアーティファクトが典型的には相対的に低い信号周波数の周波数を持っているからであり、例えば、アーティファクトの周波数が振動測定パルス信号の周波数と同様であるからである。
【0026】
本書で開示するような生理学的監視システム及び血圧決定方法は、振動測定パルスと同様な周波数を持つアーティファクトを除去するように振動測定パルス信号の処理を改善することを目的としている。本書で開示する実施形態によれば、所望の生理学的信号及びアーティファクトが特定の周波数成分特性を持っているとき、より高品質の振動測定パルス信号を生成させることができる。これは、振動測定包絡線の構成及び患者の血圧推定値の算出の正確さを高める。図2は、段階的に空気抜き(減圧)して振動測定信号を取得する一例を示しているが、連続的な空気抜きによるような振動測定信号を取得する他の技術も可能であり、従って、本書に記載の説明は、実施形態の有用性を、段階的な空気抜きに関して以下に開示されるように制限することを意味していない。
【0027】
図3は、一実施形態の振動測定データ処理システム50を示す。データ処理システム50は、患者に適用された圧力カフからの生の振動測定パルス信号を収集する圧力トランスデューサ26を含む。圧力トランスデューサ26は任意の適当なサンプリング速度でカフ圧力をサンプリングすることができる。一実施形態では、圧力トランスデューサ26は毎秒400サンプルの速度でカフ圧力をサンプリングすることができるが、他の実施形態では、当業者には周知の毎秒100サンプル又は他の任意のサンプリング速度を利用してもよい。図示例の実施形態では、カフ圧力は、各々の圧力増分ステップがほぼ5秒持続するように制御される。しかしながら、各圧力増分ステップの長さは本発明開示に従って変更することができる。説明のための模範的な実施形態では、本システムは、各圧力ステップでほぼ2000サンプルの振動測定パルス信号を生じるように毎秒400サンプルのサンプリング速度で5秒間のデータを記録することができる。しかしながら、本発明開示の範囲内で動作しながら、異なる数のサンプルの振動測定パルス信号を生じさせる多種多様なサンプリング速度及び/又は圧力ステップの長さを利用することができる。
【0028】
生の振動測定信号52が時間−周波数変換器54へ送られる。時間−周波数変換器54は離散的フーリエ変換アルゴリズム(DFT)とすることができる。時間−周波数変換器54は、生の振動測定信号を時間領域信号から周波数領域信号へ変換する。この変換のためのより有用な手法は高速フーリエ変換(FFT)である。時間から周波数への変換の結果は、信号を時間に関して表すのと異なり、振動測定信号をその周波数に関して表す信号である。
【0029】
データ処理システム50は更に、生の振動測定パルス信号が取得されるときに患者の心拍数を取得する心拍数監視装置32を含む。前に述べたように、心拍数監視装置32はECG又はSpO2 技術を用いることができる。しかしながら、別の実施形態では、心拍数は、時間−周波数変換器54から得られる周波数領域振動測定信号を用いて決定することができる。
【0030】
次に図4について説明すると、時間−周波数変換器54によって生成される周波数領域振動測定信号56の第1の模範的な実施形態が図示されている。図4の実施形態では、周波数領域信号56は148の心拍数を持つ患者からの信号である。前に述べたように、患者からの心拍数信号は図3の心拍数監視装置32によって生成されて、以下に述べるような様々な構成要素に供給される。
【0031】
図4について再び説明すると、周波数領域振動測定信号56は、基本周波数で生じる第1のピーク60を含む。図4に示されている実施形態では、基本周波数は2.46Hzである。第2のピーク62が4.93Hzの第1の高調波周波数の付近に生じる。図4に示されていないけれども、周波数領域振動測定信号56は7.40Hzの第2の高調波周波数において別のピークを持つことがある。かなりのアーティファクト63が基本周波数より低い周波数で生じる。
【0032】
図5は、周波数領域振動測定信号56の更に別の実施形態を例示する。図5の実施形態では、患者の心拍数は125であり、基本周波数が2.08Hzである。前に述べたように、第1のピーク60は基本周波数で生じ、また第2のピーク62が4.17Hzの第1の高調波周波数で生じる。しかしながら、図5に示されている実施形態では、振動測定信号56に存在するアーティファクトに起因して第2のピーク62付近に有意量の歪みが生じる。
【0033】
周波数領域振動測定信号中のアーティファクトを除去する1つの既知の方法は、心拍数の基本周波数及び1つ以上の高調波周波数を中心にした通過帯域を持つ非常に狭い帯域通過フィルタを用いて該信号をフィルタリングすることである。このようなシステムの一例が、米国特許出願公開第2009/0209868号に図示し説明されている。このようなシステム及び方法は多くの場合において有効であると証明されているが、該システムは通過帯域以外の領域において周波数領域信号中のエネルギ量を分析していない。
【0034】
再び図3について説明すると、本発明開示によれば、心拍数58及び周波数領域振動測定信号56が基本周波数フィルタ64及び第1の高調波フィルタ56に供給され、また更に任意の数の追加の第nの高調波フィルタ68に供給することができる。図3に示されていないが、基本周波数フィルタ64、第1の高調波フィルタ66及び第nの高調波フィルタ68の各々は、患者の心拍数58を受け取り且つ患者の心拍数58の関連した基本周波数及び高調波周波数を算出する或る種類の処理装置又は制御装置が付設されている。高調波算出装置を付設した周波数領域フィルタ64、66及び68は、心拍数の関連する高調波を中心とした妥当な狭い帯域幅を持つ帯域通過フィルタで構成される。各々の通過帯域についての妥当な狭い帯域幅は0.6Hzとすることができる。しかしながら、これは、本発明開示の範囲内で利用可能な帯域幅の範囲を制限しようとするものではない。
【0035】
次に図6について説明すると、125の心拍数を持つ患者に利用される実施形態において、基本周波数フィルタ64が、2.08Hzの基本周波数を中心とする第1の通過帯域70を生成する。第1の高調波フィルタ66が、4.17Hzの第1の高調波周波数を中心とする第2の通過帯域72を生成する。図6の実施形態では、第2の高調波フィルタが、6.25Hzの第2の高調波周波数を中心とする第3の通過帯域74を生成する。
【0036】
再び図3について説明すると、振動測定データ処理システム50は、周波数領域振動測定信号の他の部分を分離するために複数組のアーティファクト・フィルタを含む。図3の実施形態では、第1組のアーティファクト・フィルタ76が、基本周波数よりも高い周波数及び低い周波数の両方のアーティファクト帯域を生成する。図6に示されている実施形態では、第1組のアーティファクト・フィルタが、第1の通過帯域70よりも僅かに低い第1のアーティファクト帯域78と、第1の通過帯域70よりも僅かに高い第2のアーティファクト帯域80とを生成する。例示の実施形態では、アーティファクト帯域78、80の各々の帯域幅はまた0.6Hzの範囲にすることができるが、他の帯域幅も本発明開示の範囲内にあるものと考えられる。
【0037】
再び図6について説明すると、第2組のアーティファクト・フィルタが、第2の通過帯域72よりも僅かに低い第3のアーティファクト帯域84と、第2の通過帯域72よりも僅かに高い第4のアーティファクト帯域86とを生成するために利用される。第3及び第4のアーティファクト帯域84、86はまた、第1の高調波フィルタ66に関連したコンピュータ処理装置によって算出される。図6の実施形態では、第n組のアーティファクト・フィルタが、図3及び6で理解できるように、第5のアーティファクト帯域90及び第6のアーティファクト帯域92を生成する。
【0038】
いったん周波数領域振動測定信号56が基本周波数フィルタ64並びに高調波フィルタ66及び68を通過すると、各々の通過帯域内のエネルギがエネルギ累算器94で受け取られる。通過帯域エネルギ累算器94は、記述した通過帯域の各々の中のエネルギの和を生成する。図3及び6に示されているシステムは基本周波数通過帯域並びに第1及び第2の高調波通過帯域を利用すると記述したが、本発明開示の範囲内で動作しながら、追加の通過帯域を又はより少ない数の通過帯域を利用できることを理解されたい。
【0039】
図3に例示されているように、第1組のアーティファクト・フィルタ76、第2組のアーティファクト・フィルタ82及び第n組のアーティファクト・フィルタ88で決定されたエネルギ量は、アーティファクト帯域累算器96で合算される。通過帯域エネルギ累算器94と同様に、アーティファクト帯域累算器96は、各々のアーティファクト帯域内の検出されたエネルギを合算する。図3及び6に示された実施形態では、アーティファクト帯域は基本周波数及び高調波周波数の各々の両側に生成される。しかしながら、本発明開示の範囲内で動作しながら、他の種類のアーティファクト・フィルタを利用できることを理解されたい。
【0040】
図3及び6の実施形態は基本周波数通過帯域及び高調波周波数通過帯域の両側でそれぞれアーティファクト・フィルタを利用しているが、その代わりに図3のシステムが通過帯域の外側の周波数領域振動測定信号の全てのエネルギを累算できることを理解されたい。このような実施形態では、アーティファクト帯域について別々のフィルタが必要とされず、通過帯域の外側の信号部分内の周波数領域振動測定信号のエネルギがアーティファクト帯域累算器96によって累算される。
【0041】
比計算器98が、通過帯域エネルギ累算器によって決定されるような通過帯域内のエネルギと、アーティファクト帯域累算器96によって決定されるようなアーティファクト帯域内のエネルギとの比を生成するために利用される。比計算器98は、下記の式(1)を具現化するために利用することができる。
【0042】
【数1】

上記の式に示されているように、比は通過帯域内のエネルギに対するアーティファクト帯域内のエネルギを表す。この代わりに、上式は、比がアーティファクト帯域内のエネルギに対する通過帯域内のエネルギを表すように反転することができる。更に、アーティファクト帯域内のエネルギは、前に述べたように、通過帯域の外側の周波数領域振動測定信号のエネルギであってよい。以下により詳しく説明するように、算出された比に基づいて、開示したシステム及び方法は、振動測定データ処理システム50の動作を修正することができる。
【0043】
比計算器98が式(1)によって示された比を算出した後、システム50は次いで、血圧カフの現在の圧力について包絡線データ点を算出することができる。図3に示された波形再構成装置100は、基本周波数及び選択された高調波周波数を中心とする通過帯域の各々の中の周波数領域振動測定信号の部分に基づいて、振動測定信号を再構成するように動作する。本発明開示のシステムを動作させる方法の例を以下に説明する。
【0044】
そこで図7について説明すると、本発明開示の振動測定データ処理システム50を動作させる第1の方法が示されて記述されている。先ず、本システムは、工程102に例示されているように、血圧カフに空気圧連結された圧力トランスデューサから現在の圧力ステップにおける振動測定信号を受け取る。前に述べたように、本システムは、ほぼ5秒のような所定の期間にわたって選択されたサンプリング速度で血圧カフから振動測定データを取得することができる。
【0045】
振動測定データ信号を取得した後、本システムは、工程104に例示されているように、図3の時間−周波数変換器54を利用して、最近のエポック(epoch) についての周波数領域情報を算出する。図4は、148bpmの心拍数を持つ患者についての周波数領域振動測定信号の一例を示す。
【0046】
患者から振動測定データ信号を受け取るのに加えて、本システムはまた心拍数監視装置から心拍数をも受け取る。心拍数監視装置から受け取った心拍数に基づいて、本システムは、工程106に示されているように、一組の通過帯域を適宜に形成する。前に述べたように、通過帯域は、患者の心拍数に基づいて決定される基本周波数及び1つ以上の高調波周波数を中心として定められる。図3では、通過帯域は、基本周波数フィルタ64、第1の高調波フィルタ66及び第nの高調波フィルタ68によって定められる。
【0047】
本発明開示の一実施形態では、本システムは、工程108に例示されているように、通過帯域の両側に一組のアーティファクト帯域を適宜生成する。図6は、第1の通過帯域70の両側に第1及び第2のアーティファクト帯域78及び80を例示している。
【0048】
いったん通過帯域及びアーティファクト帯域が定められると、本システムは、工程110に例示されているように、関連した通過帯域及びアーティファクト帯域の各々についてエネルギ量を算出する。工程110では、本システムは、各々の個別の帯域内のエネルギを算出することができ、或いは全ての通過帯域及び全てのアーティファクト帯域内のエネルギを累算することができる。
【0049】
図7の方法では、本システムは、工程112に例示されているように、周波数領域振動測定信号について更なる処理を行うことができるように通過帯域の両側のアーティファクト帯域の各々のエネルギが充分に低いか否かを決定する。一例として、本システムは、図6に示されている第1及び第2のアーティファクト帯域78及び80内のエネルギを算出し、該エネルギを第1の通過帯域70内のエネルギに対して比較する。第1及び第2のアーティファクト帯域78及び80内の合計エネルギが充分に低い場合は、本システムは、工程114に例示されているように、第1の通過帯域70内のデータを使用して、振動測定データ点を算出する。この処理工程中、本システムはまた、第3及び第4のアーティファクト帯域84及び86内のエネルギを第2の通過帯域72内のエネルギと比較する。第3及び第4のアーティファクト帯域84及び86内のエネルギが充分に低い場合は、第2の通過帯域内のエネルギはまた、工程114において振動測定データ点を算出するために利用される。
【0050】
工程112において、本システムは、多数の異なる種類の計算を遂行することが可能である。一例として、本システムは、第1、第2及び第3の通過帯域70、72及び74内の合計エネルギを、全てのアーティファクト帯域内の合計エネルギ、又は通過帯域の外側の周波数領域振動測定信号の他の部分のエネルギのいずれかと比較することができる。典型的には、通過帯域内のエネルギが通過帯域の外側のエネルギと比較されて、式(1)によって規定された比が閾値より低い場合は、本システムは工程114へ進む。しかしながら、工程112で為された比較結果が所定の閾値又は式(1)の比を満たしていない場合は、本システムは工程116へ進んで、血圧カフが最大持続時間よりも長い時間にわたって現在の圧力レベルに留まっているかどうか判定する。一例として、任意の圧力ステップで血圧カフが留まることのできる最大持続時間は、20秒とすることができる。血圧カフが最大持続時間にわたって現在のステップに留まっていない場合、本システムは工程118へ進んで、現在の圧力ステップにおいて追加の振動測定データを収集する。いったん追加のデータが工程118において収集されると、本システムは工程104へ戻って、再び、前に述べたように、様々な通過帯域及びアーティファクト帯域を算出する。
【0051】
本システムが、工程116において、圧力ステップについての最大持続期間に達したと判定した場合、本システムは工程114へ進んで、振動の大きさを算出する際に該圧力ステップにおけるデータを利用する。データが最適でないことがあるが、本システムはカフ内の圧力が最大持続時間にわたって現在のレベルに留まっていたことを判定して、本システムは工程114へ進む。
【0052】
工程114の後、本システムは、工程120において血圧カフを減圧させて、新しい圧力ステップのために工程102へ戻る。
【0053】
図7に例示した方法から理解することができるように、本システムは、1つ以上の通過帯域内のエネルギと、アーティファクト帯域内のエネルギ又は周波数領域振動測定信号の他の部分のエネルギとを比較して、通過帯域内のエネルギが処理のための良好な信号を供給するのに充分であるかどうか決定する。図7に従って動作した本システムは、容認可能な信号を受け取るまで、又はステップ持続時間の限界に達するまで、血圧カフ内の圧力を次の圧力ステップまで低減させない。この態様では、本システムは、通過帯域内のエネルギが適切な信号を供給できるように通過帯域の外側のアーティファクトに対して充分に高くなったとき、或いは次のカフ圧力レベルへ移動するのが最良の方策とされるほど充分に長い時間が経過したとき、単に血圧カフ内の圧力を低減する。
【0054】
次に図8について説明すると、本発明開示の振動測定データ処理システムを動作させる別の方法が示されている。図8に示された方法は、図7で述べたのと同じ処理工程102〜110で開始される。しかしながら、工程110で全ての関連した通過帯域及びアーティファクト帯域についてエネルギ量が算出された後、本システムは、工程122で、算出された帯域エネルギを利用して現在の圧力ステップについての品質値を決定する。品質値は、選択された通過帯域内のエネルギを、前に述べた複数のアーティファクト帯域内のエネルギのような通過帯域の外側のエネルギに関係付ける相対値である。通過帯域内のエネルギが通過帯域の外側のエネルギよりもかなり高い場合、本システムは品質値を算出し、その品質値は血圧測定値と共に表示することができる。品質値は、数値で、或いはカラー又はグラフで表示して、血圧カフから得られた信号の相対的な品質を示すことができると考えられる。この態様では、各カフ圧力ステップからの品質情報を組み合わせて、信号が高品質、中位の品質又は低品質であるかどうかに関して、算出された血圧の表示を定量化できるようにすることができる。更に、品質についてのこのような周波数領域の測度を用いることにより、血圧推定値を公表すべきか否か決定することが可能である。
【0055】
図8は、工程124で次の圧力ステップへ移動する前に、品質値を算出するものとして示されているが、工程122は図7に示された方法に取り入れることができることを理解されたい。一例として、品質値は、本発明開示の範囲内で動作しながら、図7の工程114と120との間で算出することが可能である。
【0056】
前に述べたように、図3及び他の図に示し説明した振動測定データ処理システム50は、通過帯域内のエネルギを周波数領域振動測定信号の他の部分に対して定量化し決定するために多数の機能を遂行するように利用することができる。一実施形態では、それぞれ患者の基本周波数に基づいて定められた1つ以上の通過帯域内のエネルギを、該通過帯域の外側のエネルギと比較することにより、本システムが次の圧力ステップへ移動する前にどれほど長く血圧カフを個別の圧力ステップに留めるべきかを決定することができる。更に、本システムを利用することにより、現在の圧力ステップについての包絡線データ点を算出するためにどの通過帯域を利用すべきかを決定することができる。前に述べたように、本システムは、各通過帯域内のエネルギを該通過帯域の直ぐ隣のエネルギと比較して、通過帯域内のエネルギが高品質かどうか決定する。次に、本発明開示のシステム及び方法は、1つ以上の通過帯域内のエネルギを該通過帯域の外側のエネルギと比較することによって、血圧決定の品質の表示を提供するように利用することができる。本発明開示のシステム及び方法の他の使用法が、本発明開示の範囲内にあると考えられる。
【0057】
本明細書は、最良の実施形態を含めて、本発明を開示するために、また当業者が本発明を作成し使用することができるようにするために、幾つかの例を使用した。本発明の特許可能な範囲は「特許請求の範囲」の記載に定めており、また当業者に考えられる他の例を含み得る。このような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの記載から実質的に差異のない構造的要素を持つ場合、或いはそれらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0058】
10 非侵襲性血圧監視システム
12 圧力カフ
14 患者
22 圧力導管
28 圧力導管
34 電気リード線
36 カフ圧力グラフ
38a〜38u 増分的圧力ステップ
40 振動測定パルス
42 振動測定包絡線
44 MAP
46 収縮期血圧
48 拡張期血圧
50 データ処理システム
52 生の振動測定信号
56 周波数領域振動測定信号
58 心拍数
60 第1のピーク
62 第2のピーク
63 アーティファクト
70、72、74 通過帯域
76、82、88 アーティファクト・フィルタ
78、80、84、86、90、92 アーティファクト帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(14)の血圧を決定する際に用いるための振動測定包絡線を算出する方法であって、
患者に位置決めされた血圧カフ(12)から振動測定信号(56)を受け取る工程と、
前記患者の心拍数(58)の表示を受け取る工程と、
前記心拍数の基本周波数を算出する工程と、
前記振動測定信号を周波数領域へ変換する工程と、
前記基本周波数を中心とする第1の通過帯域(70)を持つ帯域通過フィルタ(64)を使用して、前記周波数領域振動測定信号をフィルタリングする工程と、
前記基本周波数を中心とする前記第1の通過帯域(70)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第1の通過帯域(70)の外側の信号の少なくとも一部分内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第1の通過帯域(70)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギに対する前記第1の通過帯域(70)の外側の前記周波数領域振動測定信号のエネルギの比を算出する工程と、
前記算出された比が閾値より小さいときのみ、前記第1の通過帯域(70)内の前記フィルタリングされた周波数領域信号から前記振動測定信号を再構成する工程と、
前記算出された比が閾値より小さいときのみ、前記再構成された振動測定信号から振動測定包絡線データ点を算出する工程と、
を有する方法。
【請求項2】
更に、心拍数の少なくとも第1の高調波周波数を算出する工程と、
前記第1の高調波周波数を中心とする第2の通過帯域(72)を持つ第2の帯域通過フィルタ(66)を使用して、前記周波数領域振動測定信号をフィルタリングする工程と、
前記第2の通過帯域(72)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第2の通過帯域(72)内の前記算出されたエネルギを、前記第1の通過帯域(70)内の前記算出されたエネルギと合算する工程と、
前記合算されたエネルギに基づいて前記比を算出する工程と、
を有している請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の通過帯域の外側のエネルギを算出する前記工程が、
前記第1の通過帯域(70)よりも低い第1の周波数範囲を持つ第1のノイズ帯域(78)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第1の通過帯域(70)よりも高い第2の周波数範囲を持つ第2のノイズ帯域(80)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第1及び第2のノイズ帯域内の前記算出されたエネルギを合算して、前記第1の通過帯域の外側のエネルギを規定する工程と、
を含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の周波数範囲が前記基本周波数よりも小さい、請求項3記載の方法。
【請求項5】
更に、心拍数の少なくとも第1の高調波周波数を算出する工程と、
前記第1の高調波周波数を中心とする第2の通過帯域(72)を持つ第2の帯域通過フィルタ(66)を使用して、前記周波数領域振動測定信号をフィルタリングする工程と、
前記第1の高調波周波数を中心とする前記第2の通過帯域(72)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第2の通過帯域(72)よりも低い第3のノイズ帯域(84)内の及び前記第2の通過帯域(72)よりも高い第4のノイズ帯域(86)内の前記周波数領域振動測定信号のエネルギを算出する工程と、
前記第3及び第4の通過帯域内のエネルギの合計に対する前記第2の通過帯域(72)内のエネルギの第2の比を算出する工程と、
前記第1又は第2の通過帯域が閾値よりも低い比を持つ場合に前記第1又は第2の通過帯域のみを使用して、前記フィルタリングされた周波数領域信号から前記振動測定信号を再構成する工程と、
を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記受け取った振動測定信号が前記血圧カフについての単一の圧力ステップからのものであり、また前記算出されたデータ点が前記単一の圧力ステップにある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
更に、血圧カフの複数の圧力ステップで前記方法を繰り返して、複数の包絡線データ点を算出する工程を含んでいる請求項6記載の方法。
【請求項8】
更に、前記算出された比が閾値を超えたときに各々の圧力ステップで追加の振動測定信号を取得する工程と、
前記算出された比が閾値よりも低いときに前記血圧カフの圧力を次の圧力ステップまで低減する工程と、
を含んでいる請求項7記載の方法。
【請求項9】
患者(14)の血圧を決定する際に用いるための振動測定データを処理するためのシステムであって、
患者に接続されていて、患者の心拍数を取得する心拍数監視装置(32)と、
患者に位置決めされていて、一連の圧力ステップに減圧可能である血圧カフ(12)と、
各圧力ステップで取得された振動測定信号を受け取って、その振動測定データを周波数領域に変換する時間−周波数領域変換器(54)と、
前記心拍数監視装置に接続されていて、少なくとも心拍数の基本周波数及び少なくとも1つの高調波周波数を導き出す高調波周波数計算器と、
前記基本周波数を中心とする第1の通過帯域(70)を持つ第1のフィルタ(64)と、
前記少なくとも1つの高調波周波数を中心とする第2の通過帯域(72)を持つ第2のフィルタ(66)と、
前記第1及び第2の通過帯域内の周波数領域振動測定信号の少なくとも一部分のエネルギに対する前記第1及び第2の通過帯域の各々の外側の周波数領域信号のエネルギの比を算出するための制御装置(16)と、
前記算出された比が閾値より小さいときに振動測定包絡線データ点を決定する血圧決定計算器と、
を有するシステム。
【請求項10】
更に、前記第1及び第2の通過帯域の一方に隣接したノイズ帯域を持つ少なくとも1つのフィルタ(76)を含んでいる請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194217(P2011−194217A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−278695(P2010−278695)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】