説明

捲回型電池、及び捲回型電池の製造方法

【課題】セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる捲回型電池及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】捲回型電池は、正極活物質を塗工した正極板20と、負極活物質を塗工した負極板30と、正極板20と負極板30とを隔離する二枚のセパレータとを重ね合わせて捲回した捲回電極体10を備えたものである。第1セパレータ40と第2セパレータ50とは、正極板20と負極板30との間に交互に一枚ずつ配置されている。第1セパレータ40の内周面は、耐熱層42からなる。第2セパレータ50の両面は、耐熱層52からなる。第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも長く捲回し、第1セパレータ40の巻き終わり端部を第1セパレータ40の外周面に接着テープで接着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面に正極活物質層が形成された正極板と、正極板と接触する側の面に耐熱層が形成された第1セパレータと、両面に負極活物質層が形成された負極板と、少なくとも負極板と接触する側と反対側の面に耐熱層が形成された第2セパレータとが、順次重ね合わされて捲回された捲回電極体を有する捲回型電池、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の電子機器、ハイブリッド車両や電気自動車等の車両など、多岐にわたる分野で利用されている。このような電池として、正極活物質を塗工した正極板と、負極活物質を塗工した負極板と、正極板と負極板とを隔離するセパレータとを重ねて合わせて捲回した捲回型電池が知られている(特許文献1参照)。この捲回型電池では、二枚のセパレータが、正極板と負極板との間に、交互に一枚ずつ配置されている。そして、最外周面を形成するセパレータの端部を、接着テープにより接着して巻き止めすることが行われている。
【0003】
ところで、電池の製造に使用されるセパレータは、正極板と負極板とを絶縁するための樹脂層を有している。そして、セパレータの中には、HRL(Heat Resistance Layer)と呼ばれる耐熱層を有するもの(HRLセパレータ)がある。この耐熱層は、例えば、金属酸化物等からなる粉状の層である。この耐熱層をセパレータに形成することで、電池の過熱を防ぐことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−149507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には、次のような問題があった。
捲回型電池の製造にHRLセパレータを使用する際、耐熱層やセパレータの種類その他の事情によって、耐熱層がセパレータの外周側に配置されることがあった。この場合、セパレータの巻き終わり端部を接着テープで巻き止めしたときに、粉状の耐熱層が接着テープの貼付面に付着して、粉状の耐熱層が樹脂層から剥離し、接着テープが剥がれ、捲回した捲回電極体の端部が離れてしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる捲回型電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る捲回型電池は、次のような特徴を有している。
(1)両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池において、第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、第1セパレータの外周面に接着テープで接着したこと、を特徴とする。
(2)(1)に記載する捲回型電池において、前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、前記第2セパレータは、少なくとも前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、を特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る捲回型電池の製造方法は、次のような特徴を有している。
(3)両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池の製造方法において、第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、第1パレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、第1セパレータの外周面に接着テープで接着すること、を特徴とする。
(4)(3)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、前記第2セパレータは、少なくとも前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、を特徴とする。
【0009】
(5)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記第1セパレータの切断部位より捲回側の部位を、引き延ばしておくことにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とする。
(6)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、前記第1切断手段の切断タイミングを、前記第2切断手段の切断タイミングより遅らせることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とする。
(7)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、前記第1切断手段の切断部位を、前記第2切断手段の切断部位よりも前記供給部側にすることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記特徴を有する捲回型電池は、次のような作用及び効果を奏する。
(1)両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池において、第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、第1セパレータの外周面に接着テープで接着したこと、を特徴とするので、接着テープにより第1セパレータの樹脂層同士を接着することが可能となるため、セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる。近年、第2セパレータの両面に耐熱層を形成することが行われている。そのときに、本発明は、特に有効である。
(2)(1)に記載する捲回型電池において、前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、前記第2セパレータは、少なくとも前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、を特徴とするので、正極に対向した面に耐熱層を有する正極対向型のセパレータを用いるときに、有効である。ここで、正極対向型のセパレータを用いる理由は、セパレータ樹脂材料、例えば、PEは、正極と反応する可能性があり、それを回避するためである。また、捲回順序を、内側から正極板/セパレータ1/負極板/セパレータ2としているのは、負極の銅くずが捲回装置へ混入することを抑制するためである。
【0011】
上記特徴を有する捲回型電池の製造方法は、次のような作用及び効果を奏する。
(3)両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池の製造方法において、第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、第1パレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、第1セパレータの外周面に接着テープで接着すること、を特徴とするので、接着テープにより第1セパレータの樹脂層同士を接着することが可能となるため、セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる。特に、捲回型電池の製造工程においては、種々の事情によりHRLセパレータの耐熱層が外周側に配置されることがあるが、本発明によれば第1セパレータの樹脂層により捲回電極体の最外周面が形成されるので、第2セパレータの耐熱層が第1セパレータの樹脂層で完全に覆われた状態となり、セパレータの巻き終わり端部を接着テープで巻き止めするときに、粉状の耐熱層が接着テープの貼付面に付着することがない。
(4)(3)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、前記第2セパレータは、少なくとも前記負極板と接触する側と反対側の面に耐熱層が形成されていること、を特徴とするので、正極に対向した面に耐熱層を有する正極対向型のセパレータを用いるときに、有効である。
【0012】
(5)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記第1セパレータの切断部位より捲回側の部位を、引き延ばしておくことにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とするので、共通の切断手段により第1セパレータ及び第2セパレータを切断することができ、本発明を簡易な構成で実現することができる。
【0013】
(6)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、前記第1切断手段の切断タイミングを、前記第2切断手段の切断タイミングより遅らせることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とするので、第2セパレータに別途張力を追加することなく本発明を実現することができる。
【0014】
(7)(3)または(4)に記載する捲回型電池の製造方法において、前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、前記第1切断手段の切断部位を、前記第2切断手段の切断部位よりも前記供給部側にすることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、を特徴とするので、第2セパレータに別途張力を追加することなく本発明を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るリチウムイオン電池を示す斜視図である。
【図2】同電池の捲回電極体10を示す断面図である。
【図3】図2のB部拡大図である。
【図4】電極捲回装置2000の概略構成を示す図である。
【図5】セパレータカッター2013の構成の第1の実施例を示す図である。
【図6】セパレータカッター2013の構成の第2の実施例を示す図である。
【図7】第2実施例であって、図3と同じ部分を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る捲回型電池及びその製造方法を具体化した実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施形態では、ハイブリッド車両や電気自動車等の電動車両に搭載されるリチウムイオン二次電池に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0017】
<電池の構成>
まず、リチウムイオン二次電池の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るリチウムイオン電池を示す斜視図である。図2は、図1のA−A断面図であり、リチウムイオン二次電池の内部構造を示す。図3は、図2のB部拡大図である。
リチウムイオン二次電池1は、図1に示すように、捲回電極体10、正極集電部材5、負極集電部材6、及び電解液2を、電池容器4に収容して蓋3により密閉したものである。蓋3からは、正極集電部材5の正極端子部5aと、負極集電部材6の負極端子部6aが突出している。正極端子部5a、及び負極端子部6aは各々、絶縁部材7、7を介して蓋3に取付けられている。蓋3には、安全弁8が取付けられている。
【0018】
「電解液」
電解液2は、有機溶媒に電解質を溶解させたものである。有機溶媒として例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のエステル系溶媒や、エステル系溶媒にγ−ブチロラクトン(γ−BL)、ジエトキシエタン(DEE)等のエーテル系溶媒等を配合した有機溶媒が挙げられる。また、電解質である塩として、過塩素酸リチウム(LiClO)やホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)などのリチウム塩を用いることができる。
【0019】
「捲回電極体」
捲回電極体10は、図2及び図3に示すように、両面に負極活物質層32、33が形成されている負極板30と、両面に正極活物質層22、23が形成されている正極板20と、正極板20と負極板30とを隔離する第1セパレータ40及び第2セパレータ50と、を重ね合わせて軸心に捲回したものである。捲回電極体10の第1セパレータ40と第2セパレータ50とは、正極板20と負極板30との間に交互に配置されている。捲回電極体10の最外周面は、第1セパレータ40により形成されている。
【0020】
「正極板」
正極板20は、正極芯材であるアルミ箔21にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を含む合材を塗布して、正極活物質層22、23を形成したものである。正極活物質として、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、コバルト酸リチウム(LiCoO)等のリチウム複合酸化物、導電助材、バインダを含む合材を用いている。
正極板20には、正極塗工部と、正極非塗工部とがある。正極塗工部は、正極芯材に正極活物質層22、23が形成されている箇所である。正極非塗工部は、正極芯材に正極活物質層22、23が形成されていない箇所である。本実施例では、アルミ箔21の厚みは、約10μmであり、正極活物質層22、23の厚みは各々、60〜70μmである。
正極集電部材5は、捲回電極体10の正極芯材であるアルミ箔21と接続されている。その材質は、アルミニウムである。
【0021】
「負極板」
負極板30は、負極芯材である銅箔31にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質、導電助材、バインダを含む合材を塗布して、負極活物質層32、33を形成したものである。負極活物質として、非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
負極板30には、負極活物質層32、33が形成されている負極塗工部と、負極活物質層32、33が形成されていない負極非塗工部とがある。本実施例では、銅箔31の厚みは、約10μmであり、負極活物質層32、33の厚みは各々、60〜70μmである。
負極集電部材6は、捲回電極体10の負極芯材である銅箔31と接続されている。その材質は、銅である。
【0022】
「セパレータ」
第1セパレータ40は、樹脂層41の内周表面のみに耐熱層42が形成されたものである。樹脂層41は、ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔性フィルムである。第1セパレータ40の厚みは、10〜50μm程度である。本実施例では、樹脂層41の厚みが、約20μmであり、耐熱層42の厚みが、4〜8μmである。耐熱層42は、HRL(Heat Resistance Layer)と呼ばれる耐熱層である。耐熱層42は、金属酸化物等からなる粉状の層である。耐熱層42を第1セパレータ40に形成することで、電池の過熱を防ぐことが行われている。
第2セパレータ50は、樹脂層51の少なくとも外周表面に耐熱層52が形成されたものである。本実施例では、樹脂層51の外周表面、内周表面の両面に耐熱層52が形成されている。樹脂層51は、ポリエチレンやポリプロピレン等の多孔性フィルムである。第2セパレータ50の厚みは、10〜50μm程度である。本実施例では、樹脂層51の厚みが、約20μmであり、耐熱層52の厚みが、4〜8μmである。耐熱層52は、HRL(Heat Resistance Layer)と呼ばれる耐熱層であっても良いし、他の種類の耐熱層であっても良い。一例としては、耐熱層52は、金属酸化物等からなる粉状の層である。
【0023】
図2、図3に示すように、捲回されたものの内側から、正極板20、第1セパレータ40、負極板30、第2セパレータ50の順で、順次重ね合わされている。
正極板20は、アルミ箔21の内周面側に正極活物質層22が形成され、外周側に正極活物質層23が形成されている。第1セパレータ40は、本実施例では、内周表面のみに耐熱層42が形成されている。
負極板30は、銅箔31の内周面側に負極活物質層32が形成され、外周側に負極活物質層33が形成されている。第2セパレータ50は、少なくとも負極板30と接触する内周面と反対側の面である外周表面に耐熱層52が形成されている。本実施例では、第2セパレータ50の外周表面、及び内周表面の両面に耐熱層52が形成されている。
ここで、正極対向型のセパレータを用いる理由は、セパレータ樹脂材料、例えば、PEは、正極と反応する可能性があり、それを回避するためである。また、捲回順序を、内側から正極板/第1セパレータ/負極板/第2セパレータとしているのは、負極の銅くずが捲回装置へ混入することを抑制するためである。
【0024】
図3に拡大図で示すように、正極板20が終了端部20aで途切れたあとも、第1セパレータ40は、さらに1周捲回部40bを形成する。ここで、1周捲回部40bとは、正極板20が途切れた後も、約1周分余分に捲回されている第1セパレータ40の部分をいう。負極板30の終了端部30aは、正極板20の終了端部20aとほぼ同じ位置で終了する。負極板30の外側にある第2セパレータ50は、負極板30の終了端部30aを覆った位置で、終了端部50a(52a、51a、52a)として終了する。
第1セパレータ40は、1周捲回部40bにより、第2セパレータ50の終了端部50aを覆った位置で、終了端部40aとして終了する。ここで、終了端部40aは、1周捲回部40bの終端に近い部分をいう。また、終了端部50aは、第2セパレータ50の終端に近い部分をいう。
ここで、第1セパレータ40の1周捲回部40b、及び終了端部40aの外周面側には、樹脂層41b、41aが配置されている。
そして、第1セパレータ40の終了端部40aである樹脂層41aの外周表面に接着テープ11の一端部の接着面11aを接着する。そして、接着テープ11の他端部の接着面11aを1周捲回部40bの樹脂層41bの外周面に接着する。これにより、樹脂面同士を接着できるため、接着テープ11が剥離することが無い。
【0025】
次に、本実施例の捲回型電極を製造する方法について説明する。
本実施例の電極捲回装置2000の概略構成を図4に示す。電極捲回装置2000は、図4に示すように、正極板20、第1セパレータ40、負極板30、及び第2セパレータ50の順で、重ね合わせて捲回して、一巻の捲回電極体10を連続的に製造するための装置である。図4では、電極捲回装置2000の各部が実線で、捲回に供される各部材が破線で描かれている。
電極捲回装置2000は、図4に示すように、正極板巻き出し部2001、第1セパレータ巻き出し部2003、負極板巻き出し部2002、及び第2セパレータ巻き出し部2004と、捲回部2005a、2005b、2005cと、駆動部2006と、正極板用カッター2011と、負極板用カッター2012と、セパレータ用カッター2013と、正極板把持部2021と、負極板把持部2022と、押圧ローラ2100とを有している。
【0026】
正極板巻き出し部2001は、捲回部2005aに供給する正極板20を巻き出すためのものである。負極板巻き出し部2002は、捲回部2005aに供給する負極板30を巻き出すためのものである。第2セパレータ巻き出し部2003、第1セパレータ巻き出し部2004は、それぞれ、捲回部2005aに供給する第1セパレータ40、第2セパレータ50を巻き出すためのものである。
【0027】
次に、本実施例の技術的特徴部分である最終端の形成方法について詳細に説明する。図4のセパレータ用カッター2013の構成の第1の実施例を図5に示す。
捲回電極体10と、セパレータ切断用の1個のセパレータカッター61の中間位置に、上下に移動可能なダンシングブレード60が設けられている。
そして、セパレータカッター61を駆動する前に、ダンシングブレード60を上方向に移動させ、第1セパレータ40に、1周捲回部40bの長さに相当する山なりの余裕部分を形成する。この状態で、セパレータカッター61を駆動して、第1セパレータ40と第2セパレータ50とを同時に切断する。なお、正極板20は、適切な箇所で正極板用カッター2011により切断されており、負極板30は、適切な箇所で負極板用カッター2012により切断されている。
これにより、第1セパレータ40の終了端部40aは、第2セパレータ50の終了端部50aより1周捲回分以上長くなっているので、図2、図3に示す構造を実現できる。
【0028】
次に、図4のセパレータ用カッター2013の第2の実施例について、図6に基づいて説明する。
捲回電極体10に捲回される第1セパレータ40と第2セパレータ50の直線部分には、第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72が付設されている。
第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72とは、第1セパレータ40の1周捲回40bの長さに相当する距離離れて設置されている。第1セパレータカッター71は、第1セパレータ40のみを切断でき、第2セパレータカッター72は、第2セパレータ50のみを切断できる構造となっている。
第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72とを同時に駆動することにより、第1セパレータ40の終了端部40aは、第2セパレータ50の終了端部50aより1周捲回分以上長くなっているので、図2、図3に示す構造を実現できる。
第2実施例では、第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72とを同時に駆動しているが、駆動するタイミングを適宜変えれば、第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72の距離を近づけて、装置をコンパクト化することができる。
第1セパレータカッター71と第2セパレータカッター72とを、ほとんど同じ箇所に配置すれば、全体装置を最もコンパクト化することができる。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施例の捲回型電池、または捲回型電池の製造方法によれば、両面に正極活物質層22、23が形成された正極板20と、両面に負極活物質層32,33が形成された負極板30と、正極板20と負極板30との間に、内周面に耐熱層42が形成された第1セパレータ40と、外周面に耐熱層52が形成された第2セパレータ50とが捲回され、第2セパレータ50が最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池において、第1セパレータ40の外周面は、耐熱層42が形成されていない樹脂層41からなること、第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも長く捲回し、第1セパレータ40の1周捲回部40bの外周面に接着テープ11で接着したこと、を特徴とするので、接着テープ11により第1セパレータ40の樹脂層41同士を接着することが可能となるため、セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる。
特に、また、本実施例の捲回型電池、または捲回型電池の製造方法によれば、両面に正極活物質層22、23が形成された正極板20と、正極板20と接触する側の表面のみに耐熱層42が形成された第1セパレータ40と、両面に負極活物質層32、33が形成された負極板30と、負極板30と接触する側の表面、及びその反対側の表面の両面に耐熱層52が形成された第2セパレータ50とが、順次重ね合わされて捲回された捲回電極体10を有する捲回型電池において、第1セパレータ40の外周面は、耐熱層42が形成されていない樹脂層41からなること、第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも長く捲回し、第1セパレータ40の巻き終わり端部である終了端部40aの外周面を、第1セパレータ40の1周捲回部40bの外周面に接着テープ11で接着したこと、を特徴とするので、接着テープ11により第1セパレータ40の樹脂層41同士を接着することが可能となるため、セパレータの巻き終わり端部を接着テープにより確実に接着することができる。
近年、第2セパレータ50の両面に耐熱層52を形成することが行われている。そのときに、本実施例は、特に有効である。
【0030】
また、図5の方法によれば、第1セパレータ40、及び第2セパレータ50を、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時にセパレータカッター61により切断して巻き終わり端部を形成すること、第1セパレータ40の切断部位より捲回側の部位を、例えば、引出し方向と交差する方向へ引き延ばしておくことにより、第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも、1周巻回部40bの分以上長く捲回すること、を特徴とするので、共通のセパレータカッター61により第1セパレータ40、及び第2セパレータ50を切断することができ、本発明を簡易な構成で実現することができる。
【0031】
また、図6の方法によれば、第1セパレータ40、及び第2セパレータ50を、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、切断手段として、第1セパレータ40を切断する第1セパレータカッター71と、第2セパレータ50を切断する第2セパレータカッター72とを独立して設けること、第1セパレータカッター71の切断タイミングを、第2セパレータカッター72の切断タイミングより遅らせることにより、第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも、1周巻回部40bの分以上長く捲回すること、を特徴とするので、第1セパレータ40に別途ダンシングブレードを追加することなく本発明を実現することができる。
【0032】
また、図6の方法によれば、第1セパレータ40、及び第2セパレータ50を、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、切断手段として、第1セパレータ40を切断する第1セパレータカッター71と、第2セパレータ50を切断する第2セパレータカッター72とを独立して設けること、第1セパレータカッター71の切断部位を、第2セパレータカッター72の切断部位よりも供給部側にすることにより、第1セパレータ40を第2セパレータ50よりも、1周捲回部40bの分以上長く捲回すること、を特徴とするので、第1セパレータ40に別途ダンシングブレードを追加することなく本発明を実現することができる。
【0033】
次に、第2実施例について説明する。第2の実施例は、ほとんどの内容が第1実施例と同じなので、第1実施例と相違する点のみ詳細に説明して、同じ部分の説明を割愛する。
図7に、図3に対応する図を示す。図7に示すように、第2実施例では、第2セパレータ50の樹脂層51の外周面(正極に対向する面)にのみ耐熱層52が形成されている。
捲回型電池の製造工程においては、種々の事情によりHRLセパレータである第2セパレータ50の耐熱層52が外周側に配置されることがあるが、第2実施例によれば第1セパレータ40の樹脂層41により捲回電極体10の最外周面が形成されるので、第2セパレータ50の耐熱層52が第1セパレータ40の樹脂層41で完全に覆われた状態となり、セパレータの巻き終わり端部を接着テープ11で巻き止めするときに、粉状の耐熱層が接着テープの貼付面に付着することがない。
【0034】
なお、上記した実施形態及びその変更例は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
例えば、上記実施例では、扁平型電池について説明したが、捲回電極体を用いた他形状の電池、例えば、捲回電極体を円筒形状の捲回電極体を有する丸型電池にも適用することができる。
また、リチウムイオン二次電池に限らない。ニッケル水素電池やその他の二次電池にも適用することができる。また、電池であれば、二次電池に限らず、一次電池にも適用することができる。
また、図5では、第1セパレータ40を引き延ばす方向を、引き出し方向と垂直に交差する方向としているが、平行な方向に引き出しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1…リチウムイオン二次電池(捲回型電池)
2…電解液
3…蓋
4…電池容器
5…正極集電部材
5a…正極端子部
6…負極集電部材
6a…負極端子部
10…捲回電極体
11…接着テープ
20…正極板
21…アルミ箔
22…正極活物質層
23…正極活物質層
30…負極板
31…銅箔
32…負極活物質層
33…負極活物質層
40…第1セパレータ
41…樹脂層
42…耐熱層
50…第2セパレータ
51…樹脂層
52…耐熱層
60 ダンシングブレード
61 セパレータカッター
71 第1セパレータカッター
72 第2セパレータカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池において、
前記第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、
前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、前記第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、前記第1セパレータの外周面に接着テープで接着したこと、
を特徴とする捲回型電池。
【請求項2】
請求項1に記載する捲回型電池において、
前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、
前記第2セパレータは、少なくとも前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、
を特徴とする捲回型電池。
【請求項3】
両面に正極活物質層が形成された正極板と、両面に負極活物質層が形成された負極板と、前記正極板と前記負極板との間に、内周面に耐熱層が形成された第1セパレータと、外周面に耐熱層が形成された第2セパレータとが交互に捲回され、前記第2セパレータが最外周に捲回された捲回電極体を有する捲回型電池の製造方法において、
前記第1セパレータの外周面は、耐熱層が形成されていない樹脂層からなること、
前記第1パレータを前記第2セパレータよりも長く捲回し、前記第1セパレータの巻き終わり端部の外周面を、前記第1セパレータの外周面に接着テープで接着すること、
を特徴とする捲回型電池の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載する捲回型電池の製造方法において、
前記第1セパレータは、前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、
前記第2セパレータは、少なくとも前記正極板と接触する側の面に耐熱層が形成されていること、
を特徴とする捲回型電池の製造方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載する捲回型電池の製造方法において、
前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、
前記第1セパレータの切断部位より捲回側の部位を、引き延ばしておくことにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、
を特徴とする捲回型電池の製造方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載する捲回型電池の製造方法において、
前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、
前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、
前記第1切断手段の切断タイミングを、前記第2切断手段の切断タイミングより遅らせることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、
を特徴とする捲回型電池の製造方法。
【請求項7】
請求項3または請求項4に記載する捲回型電池の製造方法において、
前記第1セパレータ及び前記第2セパレータを、各供給部から引出しつつ捲回し、捲回終了時に切断手段により切断して巻き終わり端部を形成すること、
前記切断手段として、前記第1セパレータを切断する第1切断手段と、前記第2セパレータを切断する第2切断手段とを独立して設けること、
前記第1切断手段の切断部位を、前記第2切断手段の切断部位よりも前記供給部側にすることにより、前記第1セパレータを前記第2セパレータよりも長く捲回すること、
を特徴とする捲回型電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4195(P2013−4195A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131226(P2011−131226)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】