説明

捺染見本の作成方法

【課題】 資材や労力等の効率化及び作成時間の短縮化が可能になり、しかも、本生産品と同等の品質を確保することができる捺染見本の作成方法を提供する。
【解決手段】 捺染見本の作成方法は、エンドレスベルトと、スクリーン捺染ユニットと、複数色捺染を行うための複数種のスクリーンとを備え、エンドレスベルトによって被捺染布を所要送りピッチで間欠的に搬送し、エンドレスベルトの停止時に捺染を行う自動スクリーン捺染機を用い、サンプル用の被捺染布をエンドレスベルトの表面に貼り付ける工程と、エンドレスベルトの正転により被捺染布をスクリーン捺染ユニットが設けられた捺染位置まで間欠的に送って捺染を行う捺染工程と、捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転により、エンドレスベルトの正転時の被捺染布の移動方向の先頭を、元の捺染位置まで戻す頭出し工程と、を備え、前記捺染工程と前記頭出し工程とを交互に繰り返す一方、前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色捺染見本の作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン捺染機による新柄の捺染生産は、先発見本及び着分見本を作成した後に行われる。
【0003】
ところで、3〜20mの先発見本及び着分見本の作成を自動スクリーン捺染機を用いて行う場合には、エンドレスベルトの上にサンプル用の被捺染布を貼り付け、この上に色数に応じた複数のスクリーン捺染ユニットを配設し、被捺染布を間欠的に送り、エンドレスベルトの停止時に、複数のスクリーン捺染ユニットのスクリーンを一斉に降下させて捺染作業を行うようにしている。そして、複数のスクリーンは、捺染見本に使用される色数がNの場合には、N枚のスクリーンが
使用され、被捺染布が1ピッチ搬送される度に、N枚のスクリーンによる捺染を繰り返し、N枚のスクリーンを通過した段階で捺染見本を完成するようにしていた。
【0004】
しかしながら、スクリーン枠は、スクリーン捺染ユニットの型枠のはみ出し分を考慮して捺染布の送りピッチ長Pの2倍(2P)ごとに配置されるので、1見本分の捺染見本を完成させるのに2NPの長さの被捺染布が必要になるという問題があった。また、ベルトの正転時には、横流れのおそれがあるので、各捺染ユニット毎に型合わせ作業が必要になる。更に、各スクリーン枠の位置を微調整するために導布が必要となるので、資材、労力や作成時間の面で無駄が多かった。
【0005】
一方、見本専用の捺染機を用いて作成しようとした場合には、本生産品と同等の品質を得るのは困難になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、資材や労力等の効率化及び作成時間の短縮化が可能になり、しかも、本生産品と同等の品質を確保することができる捺染見本の作成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねて完成されたものである。
1.エンドレスベルトと、スクリーン捺染ユニットと、複数色捺染を行うための複数種のスクリーンとを備え、エンドレスベルトによって被捺染布を所要送りピッチで間欠的に搬送し、エンドレスベルトの停止時に捺染を行う自動スクリーン捺染機を用い、サンプル用の被捺染布をエンドレスベルトの表面に貼り付ける工程と、エンドレスベルトの正転により被捺染布をスクリーン捺染ユニットが設けられた捺染位置まで間欠的に送って捺染を行う捺染工程と、捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転により、エンドレスベルトの正転時の被捺染布の移動方向の先頭を、元の捺染位置まで戻す頭出し工程と、を備え、前記捺染工程と前記頭出し工程とを交互に繰り返す一方、前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うことを特徴とする捺染見本の作成方法を提供する。
2.エンドレスベルトと、スクリーン捺染ユニットと、複数色捺染を行うための複数種のスクリーンとを備え、エンドレスベルトによって被捺染布を所要送りピッチで間欠的に搬送し、エンドレスベルトの停止時に捺染を行う自動スクリーン捺染機を用い、サンプル用被捺染布をエンドレスベルトの表面に貼り付ける工程と、エンドレスベルトの正転により被捺染布をスクリーン捺染ユニットが設けられた捺染位置に間欠的に送って捺染を行う、正転送りによる捺染工程と、正転送りによる捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転による間欠的送りによって、被捺染布を元の捺染位置まで戻しながら捺染を行う、逆転送りによる捺染工程と、を備え、正転送りによる捺染工程と逆転送りによる捺染工程とを交互に繰り返し、一の前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うことを特徴とする捺染見本の作成方法を提供する。
3.捺染位置に一つのスクリーン捺染ユニットをセットしたことを特徴とする前記1又は2に記載の捺染見本の作成方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る捺染見本の作成方法によれば、前記捺染工程と前記頭出し工程とを交互に繰り返す一方、前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うので、上述のように複数のスクリーン捺染ユニットを送りピッチ長Pの2倍ごとに配置する必要がなくなり、サンプル用の被捺染布の長さを節約できる。
【0009】
また、捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転により、エンドレスベルトの正転時の被捺染布の移動方向の先頭を元の捺染位置まで戻す頭出し工程と、を備えたので、短尺のサンプル用被捺染布を用いる場合に、捺染終了後にエンドレスベルトを正転させて頭出しをするのに較べ、短時間での頭出しが可能になり、作成時間の短縮化が図れる。
【0010】
また、逆転させて元の位置に戻すことによって正転により生じる誤差を相殺することができるので、柄ずれ防止のための被捺染布の位置決め調整が不要になる。また、各スクリーン枠の位置を微調整するための導布が不要になるので、資材、労力や作成時間の面で効率化が図れる。
【0011】
請求項2に係る捺染見本の作成方法によれば、正転送りによる捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転による被捺染布の間欠的送りによって元の捺染位置まで戻しながら捺染を行う、逆転送りによる捺染工程を備えるので、被捺染布を逆転で元の位置まで戻しながら、捺染を行うことにより、捺染布の頭出しが不要になり、作成効率を更に向上させることができる。
請求項1及び2の捺染見本の作成方法によれば、本生産機を用いて捺染見本を作成するので、再現性に優れ、生産品と同等の品質を確保することができる。
また、捺染位置に一つのスクリーン捺染ユニットをセットしたので、同一の捺染ユニットを用いて多色捺染を行うことができ、型合わせが不要になって作業能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施形態1
本実施形態の捺染見本の作成方法は、図1に示す自動スクリーン捺染機Aを用いてサンプル用の被捺染布1に捺染を施すものである。被捺染布1は複数の送りピッチ長分の長さ(図面では4P)を有する。
【0013】
自動スクリーン捺染機Aは、図外の駆動モータ(サーボモータ)によって駆動し、かつ逆転可能な一対の駆動ローラ2と、該駆動ローラ2間に水平にかけ渡され、駆動ローラ2の間欠駆動によって所要送りピッチで間欠的に回転するエンドレスベルト3と、スクリーン捺染ユニット4とを備え、また、エンドレスベルト3は駆動ローラ2の逆転方向の間欠駆動によって逆転方向に所要送りピッチPで間欠的に回転するようになっている。
【0014】
スクリーン捺染ユニット4は、スクリーン5が張設されたスクリーン枠6と、スクリーン5の図柄を被捺染布1の表面に捺染するための図外のスキージとを備え、スクリーン5には図柄が形成されており、スクリーン5はスクリーン枠6に張設されている。複数色捺染を行うための複数種のスクリーン枠6を用意される。
【0015】
捺染見本の作成方法は、図外の挟圧ローラによって被捺染布1をエンドレスベルト3に押圧して被捺染布1をエンドレスベルト3の表面に貼り付ける工程と、捺染工程と、被捺染布1の頭出し工程と、を備えている。
【0016】
捺染工程では、エンドレスベルト3の正転により、図2(a)乃至(d)のように被捺染布1を送りピッチPずつ間欠的に送り、エンドレスベルト3が停止している間にスクリーン捺染ユニット4の降下及びスキージの走行によって捺染を行う。そして、図2(d)のようにエンドレスベルト3の正転時の被捺染布1の移動方向の後尾部1Aが、スクリーン捺染ユニット4の下方位置(捺染位置)まで送られて捺染されることによって、一色目の捺染が終了する。
その後、頭出し工程では、エンドレスベルト3を逆転させることにより、図2(a)のようにエンドレスベルト3の正転時の被捺染布1の移動方向の先頭部1Bを元の位置まで戻す(頭出し工程)を行う一方、スクリーン捺染ユニット4のスクリーン枠6を第2色目の色材の図柄を有するスクリーン枠6と交換する。なお、1色目の色材と2色目の色材が混じり合わないように、色材の乾燥時間を確保した後に2色目の捺染を行う。以下、同様の作業を繰り返す。このように正転による捺染と頭出しを繰り返すことによって多色の図柄を重ねた1デザイン分の捺染を完了し、その後、乾燥機に送られる。
【0017】
図4は、自動スクリーン捺染機を動作させるための駆動モータの制御フローチャートを示す。ステップ41〜47のうち、ステップ42ではプリント回数を設定し、ベルトカウンタがその設定回数に到達すると、プリント終了とし、ベルト復帰(逆転)動作に切り換える。
実施形態2
本実施形態の捺染見本の作成方法は、図1の自動スクリーン捺染機Aを用いて上述のサンプル用の被捺染布1に捺染を施すものであり、上述のようにして被捺染布1をエンドレスベルト3の表面に貼り付ける工程と、正転送りによる捺染工程と、正転送りによる捺染工程による捺染後に、逆転送りによる捺染工程と、を備えている。
【0018】
正転送りによる捺染工程は、実施形態1で述べた捺染工程と同じ要領で、エンドレスベルト3の正転により被捺染布1をスクリーン捺染ユニット4が設けられた捺染位置に間欠的に送って捺染を行い、エンドレスベルト3の正転時の被捺染布1の移動方向の後尾部1Aが、スクリーン捺染ユニット4の下方位置(捺染位置)まで送られて捺染されることによって、一色目の捺染が終了する。
【0019】
逆転送りによる捺染工程は、エンドレスベルト3の逆転により、図3のように被捺染布1を間欠的送りによって元の捺染位置まで戻しながら捺染を行う。すなわち、正転送りによる捺染工程による一色目の捺染が終了した後に、スクリーン捺染ユニット4のスクリーン枠6を交換し、1色目の色材と2色目の色材が混じり合わないように、色材の乾燥時間を確保した後に、エンドレスベルト3の逆転により、図4(a)乃至(d)のように被捺染布1を送りピッチ長ずつ間欠的に送り、エンドレスベルト3が停止している間にスクリーン捺染ユニット4の降下及びスキージの走行によって捺染を行い、図4(d)のようにエンドレスベルト3の正転時の被捺染布1の移動方向の先頭部1Bを元の位置まで戻す。
【0020】
そして、正転送りによる捺染工程と逆転送りによる捺染工程とを交互に繰り返し、一の捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニット4のスクリーン枠6を交換することにより、多色の図柄を重ねた1デザイン分の捺染を完了し、その後、乾燥機に送られる。
【0021】
図5は、自動スクリーン捺染機を動作させるための駆動モータの制御フローチャートを示す。ステップ51〜62のうち、ステップ53ではプリント回数を設定し、ベルトカウンタがその設定回数に到達すると、プリント終了とし、ベルト復帰(逆転)動作に切り換える。ステップ56においてベルト送り量を増量値にするのは、逆転プリント時に現在位置から送り量を減算していくためである。ステップ60ではカウンタの現在値が0になるまで逆転させる(カウンタが0の値がスタート位置となる)。
なお、図面では、スクリーン捺染ユニットは、捺染見本の捺染位置にのみ配置されているが、本生産時の態勢で複数のスクリーン捺染ユニットを配置し、捺染見本の捺染位置のスクリーン捺染ユニットのみを用いて捺染見本の作成を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の捺染見本の作成方法に用いられる自動スクリーン捺染機の平面図、(b)は正面図である。
【図2】(a)乃至(d)は本発明の捺染見本の作成方法に係る実施形態1の捺染工程を示す平面図である。
【図3】駆動モータの制御フローチャートを示す。
【図4】(a)乃至(d)は本発明の捺染見本の作成方法に係る実施形態2の逆転送りによる捺染工程を示す平面図である。
【図5】駆動モータの制御フローチャートを示す。
【符号の説明】
【0023】
A 自動スクリーン捺染機
1 被捺染布
2 駆動ローラ
3 エンドレスベルト
4 スクリーン捺染ユニット
5 スクリーン
6 スクリーン枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスベルトと、スクリーン捺染ユニットと、複数色捺染を行うための複数種のスクリーンとを備え、エンドレスベルトによって被捺染布を所要送りピッチで間欠的に搬送し、エンドレスベルトの停止時に捺染を行う自動スクリーン捺染機を用い、
サンプル用の被捺染布をエンドレスベルトの表面に貼り付ける工程と、
エンドレスベルトの正転により被捺染布をスクリーン捺染ユニットが設けられた捺染位置まで間欠的に送って捺染を行う捺染工程と、
捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転により、エンドレスベルトの正転時の被捺染布の移動方向の先頭を元の捺染位置まで戻す頭出し工程と、を備え、
前記捺染工程と前記頭出し工程とを交互に繰り返す一方、前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うことを特徴とする捺染見本の作成方法。
【請求項2】
エンドレスベルトと、スクリーン捺染ユニットと、複数色捺染を行うための複数種のスクリーンとを備え、エンドレスベルトによって被捺染布を所要送りピッチで間欠的に搬送し、エンドレスベルトの停止時に捺染を行う自動スクリーン捺染機を用い、
サンプル用被捺染布をエンドレスベルトの表面に貼り付ける工程と、
エンドレスベルトの正転により被捺染布をスクリーン捺染ユニットが設けられた捺染位置に間欠的に送って捺染を行う、正転送りによる捺染工程と、
正転送りによる捺染工程による捺染後に、エンドレスベルトの逆転による間欠的送りによって、被捺染布を元の捺染位置まで戻しながら捺染を行う、逆転送りによる捺染工程と、を備え、
正転送りによる捺染工程と逆転送りによる捺染工程とを交互に繰り返し、一の前記捺染工程による捺染が終了する度にスクリーン捺染ユニットのスクリーンを交換することにより、複数色捺染を行うことを特徴とする捺染見本の作成方法。
【請求項3】
捺染位置に一つのスクリーン捺染ユニットをセットしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の捺染見本の作成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−70386(P2006−70386A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255362(P2004−255362)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(390008833)東伸工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】