説明

排ガスの処理方法及び設備

【課題】湿式脱硫後の硫酸ミストによる排ガス処理設備の耐腐食性を向上させた排ガスの処理方法及び設備を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の排ガスの処理方法は、排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガスの処理方法において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する際に、前記脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給して前記排ガス中に前記アンモニアガスを混入させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス中の硫酸ミストを湿式電気集塵装置で除去する排ガス処理方法及び設備に関する。
【背景技術】
【0002】
石油、重油等を燃料とするボイラー、燃焼炉等で発生する排ガス中には二酸化硫黄、三酸化硫黄などの硫黄酸化物が含まれている。特に硫黄成分を高濃度に含む重質油燃焼排ガスは、排ガス中のSOの含有率が高くなる。
【0003】
従来の排ガス処理設備は、ボイラーの後段に乾式電気集塵装置、湿式脱硫装置の順に配設されている。ボイラーから排出された排ガスは、乾式電気集塵装置において除塵された後、湿式脱硫装置に導入される。湿式脱硫装置ではアルカリ剤としてCa系又はNa系の薬剤を用い、排ガス中の硫黄酸化物を除去している。硫黄酸化物内のうちSOは粒子径が小さいミスト状であるため、湿式脱硫装置で十分に除去されず、後段に湿式電気集塵装置を設けて除去されている。
【0004】
また特許文献1の排ガス処理設備は、湿式脱硫した後の硫酸ミスト量を求め等量比1以下のアンモニアガスを湿式脱硫装置と湿式電気集塵装置の間に混入して硫酸ミストを湿式電気集塵装置で除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−260619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら湿式電気集塵装置に導入されるミストはSOが主成分であるため、pHが2よりも小さく湿式電気集塵装置内部は激しい腐食環境下に置かれる。このため湿式電気集塵装置はpHを調整したスプレー水を装置内部に連続で噴霧して腐食速度を低減させる対策などが講じられている。また電気集塵手段の後段のガスガスヒータの放熱部では管群の表面に付着した硫酸ミストが蒸発過程で濃縮されて材料の寿命が短くなるという問題があった。
【0007】
また特許文献1に示すように、硫酸ミストと反応させるアンモニアガスを設備内に供給させるためには、アンモニアの高圧ガスボンベ、圧力制御弁などの設備が必要となり、これらの設備は取り扱いが煩雑であるという問題があった。
【0008】
上記従来技術の問題点を解決するため本発明の排ガスの処理方法及び設備は、湿式脱硫後の硫酸ミストによる排ガス処理設備の耐腐食性を向上させた排ガスの処理方法及び設備を提供することを目的としている。また本発明の排ガス処理方法及び設備は、硫酸ミストと反応させるアンモニアの供給を容易にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排ガスの処理方法は、アルカリ性の脱硫剤で排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガスの処理方法において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する際に、前記脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給して前記排ガス中にアンモニアガスを混入させることを特徴としている。
【0010】
上記構成により、脱硫剤を用いた湿式脱硫工程において、無機アンモニウム塩を供給し、無機アンモニウム塩とアルカリ性の脱硫剤を反応させてアンモニアガスを発生させることができる。脱硫装置内でアンモニアガスを発生させることにより、後段の湿式電気集塵装置までの間でアンモニアガスと硫酸ミストの滞留時間を長くして十分に反応させることができる。
【0011】
本発明の排ガスの処理方法は、排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガスの処理方法において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する脱硫工程と、湿式脱硫した後の前記排ガスのpH値を測定する工程と、前記pH値に基づいて、前記脱硫工程の前記脱硫剤に無機アンモニウム塩の供給量を制御して前記排ガス中に前記アンモニアガスを混入させる工程と、からなることを特徴としている。
【0012】
上記構成により、湿式脱硫工程よりも後段の設備の耐腐食性が向上し、長寿命化を図り、長期に亘って安定した硫黄酸化物を含む排ガスの処理を行うことができる。
この場合において、前記pH値が少なくとも4以上となるように前記無機アンモニウム塩を供給するとよい。
【0013】
上記方法により設備の耐腐食性が向上し、長寿命化を図り、長期に亘って安定した硫黄酸化物を含む排ガスの処理を行うことができる。また無機アンモニウム塩の使用量を最適化することができる。
また前記無機アンモニウム塩は、NHCl、NHNO、(NHCO、(NHSOのいずれかであるとよい。
【0014】
上記方法により無機アンモニウム塩は中性の化合物であるため、アンモニアガスと比べて取り扱いが容易となり、硫酸ミストを含む排ガス中に容易にアンモニアガスを混入させることができる。
【0015】
本発明の排ガス処理設備は、排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置に前記湿式脱硫装置内の前記脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給手段を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成により、アルカリ性の脱硫剤を用いた湿式脱硫装置内において、無機アンモニウム塩を供給し、無機アンモニウム塩とアルカリ性の脱硫剤を反応させてアンモニアガスを発生させることができる。湿式脱硫装置内でアンモニアガスを発生させることにより、後段の湿式電気集塵装置までの間でアンモニアガスと硫酸ミストの滞留時間を長くして十分に反応させることができる。
【0017】
本発明の排ガス処理設備は、排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置と、前記アンモニアと反応させた前記硫酸ミストを除去する湿式電気集塵装置と、湿式脱硫後、前記湿式電気集塵装置の入口の前記硫酸ミストのpH値を測定するpH測定手段と、前記pH値に基づいて、前記湿式脱硫装置内の前記脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給量を制御する供給手段を備えたことを特徴としている。
【0018】
上記構成により、湿式脱硫装置よりも後段の設備の耐腐食性が向上し、長寿命化を図り、長期に亘って安定した硫黄酸化物を含む排ガスの処理を行うことができる。
この場合において、前記湿式電気集塵装置から排出された前記無機アンモニウム塩を含む捕集液を前記湿式脱硫装置へ供給可能な回収手段を備えているとよい。
【0019】
湿式電気集塵装置の捕集液にはNHとSOの反応で生成した硫安が含まれているため、上記構成によりこの捕集液を湿式脱硫装置に供給することにより、新たに供給する無機アンモニウム塩の供給量を削減することができる。
また前記無機アンモニウム塩は、NHCl、NHNO、(NHCO、(NHSOのいずれかであるとよい。
【0020】
上記方法により無機アンモニウム塩は中性の化合物であるため、アンモニアガスと比べて取り扱いが容易となり、硫酸ミストを含む排ガス中に容易にアンモニアガスを混入させることができる。
【発明の効果】
【0021】
上記方法又は構成による本発明によれば、無機アンモニウム塩を湿式脱硫装置に供給することによって装置内でアンモニアガスを発生させることができる。湿式脱硫装置内でアンモニアガスを発生させることにより、後段の湿式電気集塵装置までの間でアンモニアガスと硫酸ミストの滞留時間を長くして十分に反応させることができる。
【0022】
湿式脱硫した後の排ガスのpH値を測定し、このpH値に基づいて、脱硫工程の前記脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給することにより、湿式脱硫装置よりも後段の設備の耐腐食性が向上し、長寿命化を図り、長期に亘って安定した硫黄酸化物を含む排ガスの処理を行うことができる。
【0023】
また無機アンモニウム塩は湿式脱硫装置へ溶解状又は固体状で供給することができ、従来のアンモニアガス(気体状)として設備内に供給する方法に比べて取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の排ガス処理設備の構成概略を示す図である。
【図2】無機アンモニウム塩(硫安)と硫酸ミストのモル比とpHの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の排ガスの処理方法及び設備の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本発明の排ガス処理設備の構成概略を示す図である。図示のように本発明の排ガス処理設備10は、ボイラー12と、第1熱交換手段14と、乾式電気集塵装置16と、湿式脱硫装置20と、湿式電気集塵装置40と、第2熱交換手段18と、を主な基本構成とし、ボイラー12から煙突(不図示)までをこの順番で配設している。
【0026】
ボイラー12から排出された排ガスは第1熱交換手段14へ導入される。第1熱交換手段14は、一例としてガスガスヒータを用いることができる。第1熱交換手段14では、排ガスの熱を利用して燃焼用空気等の空気の予熱が行われる。具体的に第1熱交換手段14では、燃焼用空気等の空気との熱交換(吸熱)によって排ガス温度を百数十度まで低下させている。
【0027】
次に熱交換された排ガスは、乾式電気集塵手段16に導入されて排ガス中に含まれる塵埃が除去される。
湿式脱硫装置20は、一例として脱硫塔本体21と、入口ダクト22と、出口ダクト23と、スプレーノズル24と、吸収液の循環ポンプ25と、酸化タンク26と、撹拌機27と、空気吸い込み管28と、エリミネーター29とを主な基本構成としている。脱硫塔本体21の側部に排ガスの入口ダクト22、上部に出口ダクト23がそれぞれ形成されている。入口ダクト22と出口ダクト23の間には吸収液のスプレーノズル24が水平方向に多段に形成されている。脱硫塔本体21の下部には吸収液が滞留する酸化タンク26が形成され、撹拌機27、空気吸い込み管28、循環ポンプ25を備えた循環液配管30、脱硫剤供給手段32が配設されている。また出口ダクト23の本体側にはエリミネーター29が形成されている。このような構成の湿式脱硫装置20は、排ガスが入口ダクト22から脱硫塔本体21の内部へ導入される。脱硫塔本体21では循環ポンプ25から送られる脱硫剤を含んだ吸収液が、スプレーノズル24から噴霧され、吸収液と排ガスの気液接触が行われる。
【0028】
例えば脱硫剤に炭酸カルシウム(CaCO)を用いた場合、吸収液は排ガス中のSOを選択的に吸収して重亜硫酸カルシウムを生成する。スラリー状の脱硫剤は、脱硫剤供給手段32によって酸化タンク26内へ供給される。重亜硫酸カルシウムを生成した吸収液は酸化タンク26に留まり、撹拌機27によって撹拌されながら、空気吸い込み管28から供給される空気によって酸化されて石膏(CaSO)を生成する。炭酸カルシウム及び石膏が共存する酸化タンク26内の吸収液の一部は、循環液配管30から再度スプレーノズル24に送られる。その他は吸収液の抜出しポンプ34から廃液処理などの外部へ排出される。湿式脱硫された排ガスは出口ダクト23から後段の湿式電気集塵装置40へ排出される。このときスプレーノズル24から噴霧された小さい液滴は、エリミネーター29により回収される。
【0029】
湿式電気集塵装置40では、脱硫ミストと塵埃が除去される。湿式電気集塵装置40から排出された排ガスは第2熱交換手段18へ導入される。第2熱交換手段18は、一例としてガスガスヒータを用いることができる。第2熱交換手段18では、排ガスを再加熱して煙突から排出する際の白煙を防止している。第2熱交換手段18で再加熱処理された後、処理後の排ガスは煙突(不図示)から外部へ排出される。
【0030】
また湿式電気集塵装置40は、洗浄水で集塵極板に付着した塵埃、硫安を洗浄している。湿式電気集塵装置40には洗浄水の回収手段42が設置されている。回収手段42では、アンモニアガスと硫酸ミストの反応によって生成した硫安と、洗浄水を分離し、硫安を分離した洗浄水が、再度洗浄水として再利用する構成となっている。
【0031】
このような基本構成において、本発明の排ガス処理設備10では排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備10において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置20に湿式脱硫装置20内の脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給手段50を備えた構成としている。
【0032】
また本発明の排ガス処理設備10では排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備10において、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置20と、アンモニアと反応させた硫酸ミストを除去する湿式電気集塵装置40と、湿式脱硫後、湿式電気集塵装置40の入口の硫酸ミストのpH値を測定するpH測定手段60と、pH値に基づいて、湿式脱硫装置20内の脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給手段50を備えた構成としている。
さらに湿式電気集塵装置40から排出された無機アンモニウム塩を含む捕集液を湿式脱硫装置20へ供給可能な回収手段42を備えた構成としている。
【0033】
本実施形態の無機アンモニウム塩の供給手段50は、湿式脱硫装置20に接続し、装置内の酸化タンク26内に溶液状又は固体状の無機アンモニウム塩を供給可能に構成している。
【0034】
本実施形態の無機アンモニウム塩は、一例としてNHCl、NHNO、(NHCO、(NHSOのいずれか又は組み合わせを用いることができる。このような無機アンモニウム塩によれば、中性の化合物であるため、従来高圧のガスボンベから供給していたアンモニアガスと比べて取り扱いが容易である。すなわち、液体状又は固体状の無機アンモニウム塩を供給手段50から脱硫剤供給手段32と同様に酸化タンク26へ供給すればよい。前記無機アンモニウム塩とアルカリ性の脱硫剤を反応させることによって硫酸ミストを含む排ガス中に容易にアンモニアガスを混入させることができる。
【0035】
また本実施形態のアルカリ性の脱硫剤は、無機アンモニウム塩との反応でアンモニアガスが発生するものであれば良く、一例として苛性ソーダ(NaOH)、石灰(CaCO)、Mg(OH)などを用いることができる。
【0036】
酸化タンク26内では、脱硫剤にCaCOを用いた場合には、前述のように炭酸カルシウム及び石膏が共存する状態である。酸化タンク26内に無機アンモニウム塩(例えば硫安:(NHSOを用いた場合)の溶液又は固体を供給すると、アルカリ性の脱硫剤と無機アンモニウム塩により次のような反応式によってアンモニアガスが発生する。
【0037】
【化1】

【化2】

【0038】
湿式脱硫装置20の内部では、脱硫剤が排ガスに噴霧されて、排ガス中の二酸化硫黄が吸収除去される。このとき排ガス温度は、飽和温度である数十度まで低下する。温度低下によって、排ガス中に含まれる硫酸は凝縮して硫酸ミストとなる。この硫酸ミストのpHは1より小さい値である。
湿式脱硫装置20内で発生したアンモニアガスは後段の湿式電気集塵装置40に導入されるまでの間で、この硫酸ミストと反応して硫安が生成される。
【0039】
本実施形態の湿式脱硫装置20と湿式電気集塵装置40の間のダクト46には、pH測定手段60を設置している。pH測定手段60は湿式電気集塵装置40に導入される前の排ガス中の硫酸ミストのpH値を測定可能に構成している。またpH測定手段60は、供給手段50と電気的に接続しており、測定したpH値を送信可能に構成している。
【0040】
湿式電気集塵装置40の回収手段42は、湿式脱硫装置20と接続する硫安供給管44を形成している。硫安供給管44は、回収手段42で洗浄液と分別された硫安を湿式脱硫装置20の酸化タンク26内へ供給可能な配管である。
【0041】
次に上記構成による排ガス処理設備10の排ガス処理方法について以下説明する。
ボイラー12から排出された排ガスは、第1熱交換手段14で百数十度まで冷却された後、乾式電気集塵装置16に導入される。
【0042】
次に乾式電気集塵装置16で塵埃などが除去された排ガスは湿式脱硫装置20へ導入される。湿式脱硫装置20内部では、脱硫剤が溶解した吸収液がスプレーノズル24から排ガスに噴霧されており、排ガス中の二酸化硫黄が吸収除去される。また無機アンモニア塩の供給手段50から酸化タンク26に無機アンモニウム塩が供給されており、回収液の脱硫剤と無機アンモニウム塩が反応してアンモニアガスが発生する。酸化タンク26上で発生したアンモニアガスは装置内の排ガスに混入される。このように本実施形態の排ガスの処理方法によれば、アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する際に、脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給して排ガス中にアンモニアガスを混入させることができる。
【0043】
一方、湿式脱硫装置20内部の排ガスの温度は、数十度まで低下され、温度低下の過程で排ガス中に含まれる硫酸が凝縮して硫酸ミストとなる。この硫酸ミストと湿式脱硫装置20内部で発生させたアンモニアガスが反応することにより硫安が生成される。
【0044】
湿式脱硫装置20と湿式電気集塵装置40の間のダクト46上に設けたpH測定手段60で測定されたpH値が無機アンモニウム塩の供給手段50に送信され、本実施形態の供給手段50では、測定したpH値に基づいて、湿式脱硫装置20へ供給する無機アンモニウム塩の供給量を制御している。
【0045】
図2は無機アンモニウム塩(硫安)とSOのモル比とpHの関係を示すグラフである。同グラフの縦軸は湿式電気集塵装置の入口側の硫酸ミストのpH値を示し、横軸は(NHSOの供給量(mol/h)/SO量(mol/h)を示している。同グラフに示すように、硫安とSOのモル比が等モル比のとき、湿式電気集塵装置の入口側の硫酸ミストのpH値が4となる。そしてSOに対して硫安の供給量を増加していくと湿式電気集塵装置の入口側の硫酸ミストのpH値は4よりも大きい値を示している。またSOに対して硫安の供給量を低減していくと湿式電気集塵装置の入口側の硫酸ミストのpH値は4よりも小さい値を示している。
【0046】
ここで湿式電気集塵装置40や、第2熱交換手段18の本体では耐食性に優れたステンレス鋼を用いている。pH値が高くても耐食性を有するステンレス鋼があるが、本実施形態では比較的入手が容易、汎用性のあるSUS304、SUS316Lであっても、腐食性の進行を遅らせて適用可能なようにするため、pH値が少なくとも4以上となるようにしている。またpH値が4以上となるために(NHSOの供給量(mol/h)/SO量(mol/h)は、SOに対して硫安の供給量を等価以上となるようにしている。以上より、無機アンモニウム塩の供給手段50は、pH測定手段60のpH値が少なくとも4以上となるように無機アンモニウム塩の供給量を制御すればよい。
【0047】
また湿式電気集塵装置40には洗浄水の回収手段42が設置されており、回収手段42では、アンモニアガスと硫酸ミストの反応によって生成した硫安と、洗浄水を分離している。硫安を分離した洗浄水は、再度洗浄水として再利用する構成となっている。一方、硫安は回収手段42の硫安供給管44から湿式脱硫装置20へ供給している。このように湿式電気集塵装置40で捕集された硫安を再度湿式脱硫装置20へ供給することにより、新たに供給する無機アンモニウム塩の供給量を削減することができる。
【0048】
このような本発明の排ガスの処理方法及び設備によれば、湿式脱硫装置内でアンモニアガスを発生させることにより、後段の湿式電気集塵装置までの間でアンモニアガスと硫酸ミストの滞留時間を長くして十分に反応させることができる。
【0049】
また湿式脱硫した後の硫酸ミストのpH値を測定し、このpH値に基づいて、脱硫工程の前記脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給することにより、湿式脱硫装置よりも後段の設備の耐腐食性が向上し、長寿命化を図り、長期に亘って安定した硫黄酸化物を含む排ガスの処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
10………排ガス処理設備、12………ボイラー、14………第1熱交換手段、16………乾式電気集塵装置、18………第2熱交換手段、20………湿式脱硫装置、21………脱流塔本体、22………入口ダクト、23………出口ダクト、24………スプレーノズル、25………循環ポンプ、26………酸化タンク、27………撹拌機、28………空気吸い込み管、29………エリミネーター、30………循環液配管、32………脱硫剤供給手段、34………抜出しポンプ、40………湿式電気集塵装置、42………回収手段、44………硫安供給管、46………ダクト、50………供給手段、60………pH測定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガスの処理方法において、
アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する際に、前記脱硫剤に無機アンモニウム塩を供給して前記排ガス中にアンモニアガスを混入させることを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項2】
排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガスの処理方法において、
アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する脱硫工程と、
湿式脱硫した後の前記排ガスのpH値を測定する工程と、
前記pH値に基づいて前記脱硫工程の前記脱硫剤に無機アンモニウム塩の供給量を制御して前記排ガス中にアンモニアガスを混入させる工程と、
からなることを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記pH値が少なくとも4以上となるように前記無機アンモニウム塩を供給することを特徴とする請求項2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項4】
前記無機アンモニウム塩は、NHCl、NHNO、(NHCO、(NHSOのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の排ガスの処理方法。
【請求項5】
排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備において、
アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置に前記湿式脱硫装置内の前記脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給手段を備えたことを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項6】
排ガスを湿式脱硫して硫黄酸化物を除去し、前記排ガス中にアンモニアを供給して硫酸ミストを除去する排ガス処理設備において、
アルカリ性の脱硫剤を排ガス中に噴霧して前記排ガス中の前記硫黄酸化物を吸収除去する湿式脱硫装置と、
前記アンモニアと反応させた前記硫酸ミストを除去する湿式電気集塵装置と、
湿式脱硫後、前記湿式電気集塵装置の入口の前記硫酸ミストのpH値を測定するpH測定手段と、
前記pH値に基づいて前記湿式脱硫装置内の前記脱硫剤と反応させてアンモニアガスを発生させる無機アンモニウム塩の供給量を制御する供給手段を備えたことを特徴とする排ガス処理設備。
【請求項7】
前記湿式電気集塵装置から排出された前記無機アンモニウム塩を含む捕集液を前記湿式脱硫装置へ供給可能な回収手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の排ガス処理設備。
【請求項8】
前記無機アンモニウム塩は、NHCl、NHNO、(NHCO、(NHSOのいずれかであることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の排ガス処理設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35153(P2012−35153A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174669(P2010−174669)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】