説明

排ガス処理システム

【課題】集塵機の入口側に配置された熱交換器の伝熱管表面への灰付着を抑制すること。
【解決手段】ボイラ11の蒸気発生用熱交換器13で発生する蒸気を蒸気タービン15に供給し、蒸気タービンの排気を冷却して蒸気発生用熱交換器に戻す蒸気循環ライン17、ボイラの排ガスを処理する排ガス処理ライン19、排ガスの一部をボイラに戻す排ガス循環ダクト21を備え、蒸気循環ラインの復水器を出た水と熱媒体aを熱交換する第1熱交換器29、排ガス処理ラインの集塵機37の下流側を流れる排ガスを圧縮して発熱した排ガスと熱媒体aとを熱交換する第2熱交換器63、排ガス処理ラインの集塵機の入口側を流れる排ガスと熱媒体aとを熱交換する第3熱交換器35を備え、第1熱交換器で冷却された熱媒体を第2熱交換器で加熱し、第3熱交換器でさらに加熱した後に第1熱交換器に戻すこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、富酸素ガスと循環排ガスを混合した燃焼用ガスを用いて燃料を燃焼させるボイラを備えた排ガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素(CO)の排出量を低減する技術として、酸素燃焼方式のボイラ(以下、ボイラと略す)が注目されている。このボイラは、酸化剤として空気の代わりに高濃度の酸素ガス(以下、酸素と略す。)を用いることから、ボイラから排出される排ガスの主成分は水と二酸化炭素となる。このため、排ガスを圧縮することにより、排ガス中から二酸化炭素(CO)を容易に分離することができる。
【0003】
この種のボイラを備えた酸素燃焼システムは、ボイラと、ボイラの排ガスの熱を回収する熱交換器(以下、A/Hという。)と、排ガス中の灰を除去する集塵機と、排ガス中のSOxを除去する脱硫装置と、排ガス中の二酸化炭素を除去するCO分離手段とから構成される。このような構成において、ボイラから排出された排ガスは、A/Hで減温された後、集塵機に導かれて灰が除去される。灰が除去された排ガスは、脱硫装置に導かれ、排ガス中のSOxが吸収液に吸収されて分離された後、CO分離手段に導かれる。CO分離手段に導入された排ガスは、圧縮機により圧縮され、その際に発生した熱が熱交換器によって除熱されることにより、液状の水分が排ガスから分離される。さらに、排ガスは圧縮機により圧縮された後、熱交換器によって除熱されることで、液状の二酸化炭素が排ガスから分離される。
【0004】
ところで、この種のボイラには、酸化剤として酸素が導入されるため、空気を酸化剤とする空気燃焼式ボイラと比べて燃焼温度が高くなる。このため、集塵機と脱硫装置との間の煙道に排ガス循環ダクトの一端を接続し、排ガス循環ダクトの他端をボイラに接続することで、集塵機を通過した排ガスの一部を排ガス循環ダクトを経由してボイラに戻し、燃焼温度を下げるようにしている。
【0005】
しかし、このように脱硫装置の上流側から排ガスの一部を抜き出す場合、排ガス循環ダクトには、脱硫処理がされていない循環排ガスが通流することになるため、排ガス循環ダクトの内部がSOxによって腐食するおそれがある。ここで、脱硫装置の後流側の煙道から排ガス循環ダクトを分岐させた場合、脱硫処理がなされた後の循環排ガスが排ガス循環ダクトを通流するため、排ガス循環ダクトの腐食を抑制することができるが、脱硫装置の排ガス処理量が増えるため、経済性等の点で好ましくない。また、排ガス中に水銀が含まれている場合には、CO分離手段に設けられた圧縮機が腐食するおそれがある。
【0006】
これに対し、本願の出願人は、特願2009−267914号の酸素燃焼システムにおいて、A/Hと集塵機との間の煙道に熱交換器を配設し、この熱交換器を通過する排ガスを熱媒体と熱交換させることにより、集塵機入口の排ガス温度をSOの酸露点以下で水露点以上の温度まで減温することを提案している。すなわち、排ガス温度を酸露点以下の温度まで下げることにより、排ガス中のSOが凝縮して灰に付着する。このため、この灰を集塵機で捕集することにより、排ガス中のSO濃度を減少させて、腐食を抑制することができる。また、排ガス中の水銀についても、同様の方法で排ガス温度を下げることにより、集塵機で回収することができる。
【0007】
また、特許文献1の排ガス処理プラントでは、ボイラに設置された蒸気発生用熱交換器で発生する蒸気を蒸気タービンに供給する経路と、蒸気タービンの排気を凝縮させる復水器から出た復水を復水用再加熱器で熱媒体と熱交換させて加熱した後、蒸気発生用熱交換器に戻す経路と、A/Hと集塵機の間の煙道に設置した熱交換器と、この熱交換器と復水用再加熱器との間で熱媒体を循環させる循環経路とを備えた構成が開示されている。
【0008】
このように、復水用再加熱器において、復水と熱交換して常温まで減温された熱媒体を熱交換器に供給して排ガスと熱交換させることにより、排ガス温度を所定温度まで下げることができるため、その後流側の集塵機で灰を捕集することにより、SOや水銀等を除去することができる。また、熱交換器で熱媒体が排ガスから回収した熱を復水の加熱用として利用することができるため、熱効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−308269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、集塵機の上流側に設置される熱交換器(A/Hを除く)の構造について、図4を用いて説明する。例えば、A/Hを通過した排ガスは、約160〜200℃まで減温されており、このような低温場で高効率の熱交換性能を得るためには、図4に示すような伝熱管1の外周に複数のフィン3を取り付けたフィンチューブ5を用いるのが一般的である。
【0011】
また、フィンチューブ5の上流側には、通常、多数の孔が形成されたスートブロア7が設けられている。このスートブロア7にはボイラの熱で発生した蒸気の一部が導かれ、フィンチューブ5に向けて多数の孔から蒸気9が一時的に噴出するようになっている。このようにスートブロア7から噴出された蒸気がフィンチューブ5のフィン3や伝熱管1に吹き付けられることにより、フィンチューブ5に付着した灰を除去することができる。
【0012】
ところで、このような構造の熱交換器を特願2009−267914号に記載される熱交換器、つまりA/Hと集塵機との間の煙道に設置された熱交換器に用いた場合、フィンチューブ5に大量の灰が付着し、スートブロア7から蒸気を噴き付けただけでは、灰が除去しきれないことがある。特に米国や中国などで使用されている硫黄分を多く含む石炭を使用する場合は、このような現象が顕著に見られることが判明した。これは、酸素燃焼システムの排ガスに多量に含まれる水分とSOxが原因と考えられる。
【0013】
表1に、硫黄含有量が2.7%の石炭を空気燃焼又は酸素燃焼した場合の排ガス組成を比較して示す。SO濃度とSO濃度は、空気燃焼に対して酸素燃焼が4〜5倍となり、水分濃度は3倍の30%まで高濃度化されることがわかる。このように水分濃度が10%から30%に上昇すると、排ガスの水露点は50℃から70℃に上がり、伝熱管表面で水分が結露しやすくなる。また、排ガス中のSO、SOは水に溶けやすいため、伝熱管表面に発生した水分に溶け込み、酸性の溶液となる。このように伝熱管表面に酸性の液が発生すると、排ガス中の灰が大量に付着して伝熱性能が低下するとともに、灰の除去が難しくなる。
【表1】

【0014】
一方、特許文献1の場合、熱交換器の伝熱管には、復水用再加熱器において復水と熱交換することにより、常温に減温された熱媒体が供給されるため、伝熱管の表面温度は約30℃〜50℃になる。このため、熱交換器を通過する排ガス中の水分が伝熱管表面で結露し、灰付着の問題が生じるおそれがある。
【0015】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、集塵機の入口側に配置された熱交換器の伝熱管の表面への灰付着を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の排ガス処理システムは、上記課題を解決するため、富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、このボイラに設けられた蒸気発生用熱交換器で発生する蒸気を蒸気タービンに供給して発電させ、蒸気タービンから排出される蒸気を冷却して蒸気発生用熱交換器に戻す蒸気循環ラインと、ボイラから発生する排ガスを処理する排ガス処理ラインと、排ガス処理ラインに設けた集塵機の下流側を流れる排ガスの一部を抜き出してボイラに導く排ガス循環ラインとを備える排ガス処理システムにおいて、蒸気循環ラインの蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機の下流側を流れる排ガスを圧縮することで発熱した排ガスと熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機の入口側に設けられ、この入口側を流れる排ガスと熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、第1熱交換器で冷却された熱媒体を第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された熱媒体を第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された熱媒体を第1熱交換器に戻すことを特徴としている。
【0017】
これによれば、熱媒体は、第1熱交換器で復水器を出た水と熱交換して常温まで冷却された後、第2熱交換器に導入される。第2熱交換器に導入された熱媒体は、圧縮されて発熱(例えば130℃)した排ガスと熱交換することにより、例えば50〜70℃に加熱される。このようにして加熱された熱媒体が、より高温の排ガスが流入する第3熱交換器に導入されるため、第3熱交換器の伝熱管の表面温度は70℃よりも高い温度になる。よって、伝熱管の表面温度は、例えば排ガス中の水分濃度が30%のときの水露点温度である70℃を下回ることがないため、排ガス中の水分が伝熱管表面で結露することがなく、伝熱管の表面への灰の付着を抑制することができる。
【0018】
この場合において、第3熱交換器に導入される熱媒体の温度は70℃以上、好ましくは80℃以上となるように設定されてなるものとする。なお、このように熱媒体の温度を設定するためには、第3熱交換器以外の熱交換器に対して周知の方法により熱交換量等を調整すればよい。
【0019】
また、このような排ガス処理システムに代えて、蒸気循環ラインの蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機の下流側に設けられた湿式脱硫装置の底部に貯留される脱硫液と熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機の入口側に設けられ、この入口側を流れる排ガスと熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、第1熱交換器で冷却された熱媒体を第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された熱媒体を第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された熱媒体を第1熱交換器に戻すことを特徴とするものとしてもよい。
【0020】
すなわち、酸素燃焼システムでは、排ガス中に多くの水分を含むことから、湿式脱硝装置内の温度は約70℃まで上昇する。このため、熱媒体を湿式脱硫装置の底部に貯留された脱硫液と熱交換させることにより、常温の熱媒体を約50〜70℃まで昇温することができる。よって、例えば、湿式脱硫装置の底部に貯留される脱硫液内に第2熱交換器を設置し、この第2熱交換器で脱硫液と熱交換して昇温された熱媒体を第3熱交換器に導くことにより、伝熱管の表面温度が約70〜90℃になることから、排ガス中の水分が伝熱管表面で結露することがなく、伝熱管の表面への灰の付着を抑制することができる。
【0021】
また、これらの排ガス処理システムに代えて、蒸気循環ラインの蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機とその下流側に設けられた湿式脱硫装置との間を流れる排ガスと熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、排ガス処理ラインの集塵機の入口側に設けられ、この入口側を流れる排ガスと熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、第1熱交換器で冷却された熱媒体を第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された熱媒体を第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された熱媒体を第1熱交換器に戻すことを特徴とするものとしてもよい。
【0022】
すなわち、酸素燃焼システムにおける集塵機出口の排ガス温度は、約90〜110℃であるため、集塵機とその下流側の湿式脱硫装置との間を流れる排ガスと熱媒体を熱交換させることにより、常温の熱媒体を約50〜70℃まで昇温することができる。よって、排ガス処理ラインの集塵機とその下流側に設けられた湿式脱硫装置との間に第2熱交換器を設置し、この第2熱交換器で排ガスと熱交換して昇温された熱媒体を第3熱交換器に導くことにより、伝熱管の表面温度は約70〜90℃となるため、排ガス中の水分が伝熱管表面で結露することがなく、伝熱管の表面への灰の付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の排ガス処理システムによれば、集塵機の入口側に配置される熱交換器の伝熱管への灰付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用してなる排ガス処理システムの第1の実施形態における概略系統図である。
【図2】本発明を適用してなる排ガス処理システムの第2の実施形態における概略系統図である。
【図3】本発明を適用してなる排ガス処理システムの第3の実施形態における概略系統図である。
【図4】集塵機の入口側に配置された熱交換器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明を適用してなる排ガス処理システムの第1の実施形態について、図1を参照して説明する。本実施形態では、酸素燃焼式のボイラを用い、ボイラで燃焼させる化石燃料として微粉炭燃料を用いる例を説明するが、化石燃料であれば微粉炭燃料に限定されるものではない。また、本実施形態では、ボイラに供給する酸化剤として、空気から分離された富酸素ガス(以下、酸素と略す。)を用いるものとする。
【0026】
本実施形態の排ガス処理システムは、酸素を酸化剤として微粉炭燃料を燃焼させるボイラ11と、ボイラ11に設けられた蒸気発生用熱交換器13から発生する蒸気を蒸気タービン15に供給して発電させ、この蒸気タービン15から排出される蒸気を液化させて加熱した後に蒸気発生用熱交換器13に戻す蒸気循環ライン17と、ボイラ11から発生する排ガスを処理する排ガス処理ライン19と、排ガス処理ライン19の煙道を流れる排ガスの一部を抜き出してボイラに導く排ガス循環ダクト21を備えて構成される。
【0027】
蒸気循環ライン17は、ボイラ11の燃焼熱を利用して蒸気を発生する蒸気発生用熱交換器13と、その蒸気を利用して発電機23を駆動する蒸気タービン15と、蒸気タービン15からの排気を冷却して凝縮する復水器25と、復水器25から出た復水を昇圧する昇圧ポンプ27と、昇圧ポンプ27から吐出された復水を熱媒体aと熱交換させて加熱する第1熱交換器29とから構成される。第1熱交換器29は、復水が導かれる容器内に熱媒体が通流する伝熱管を収容して構成される。これにより、蒸気発生用熱交換器13を出た蒸気が蒸気タービン15、復水器25を順に経由して復水となり、この復水が昇圧ポンプ27、第1熱交換器29を順に経由して蒸気発生用熱交換器13に戻されるようになっている。
【0028】
排ガス処理ライン19は、ボイラ11から排出された排ガス中のNOxを除去する脱硝装置31と、排ガスと循環排ガス(後述)とを熱交換して排ガスを減温させるA/H33と、排ガスを熱媒体aと熱交換させて減温させる第3熱交換器35と、排ガス中の灰を捕集する集塵機37と、排ガス中のSOxを除去する湿式の脱硫装置39と、排ガス中の二酸化炭素を液化させて分離するCO分離手段41を、この順に煙道43で接続して構成される。第3熱交換器35は、排ガスが導入される容器内に熱媒体が通流する伝熱管、つまりフィンチューブ(図4)を収容して構成され、その上流側にスートブロアが設けられている。
【0029】
ボイラ11には、図示しないバーナが設けられており、このバーナには、炉内に微粉炭燃料を供給するための燃料供給経路45が接続されている。集塵機37と脱硫装置39を接続する煙道部分には、分配器47が設けられており、この分配器47には、煙道43を流れる排ガスの一部を抜き出す排ガス循環ダクト21の一端が接続されている。この排ガス循環ダクト21は、A/H33を経由して延在する他端が、燃料供給経路45に設けられた排ガス混合器49に接続されている。
【0030】
排ガス循環ダクト21の分配器47とA/H33との間には、排ガス循環ダクト21を流れる循環排ガスの流量を調節する循環用ファン51が設けられている。この循環用ファン51のファン回転数を調節して循環排ガスの循環量を例えば排ガス量全体の7〜8割とすることで、ボイラ11の燃焼温度を空気燃焼運転時と同等程度に調整することができる。なお、排ガス循環ダクト21は、脱硫装置39の後流側の煙道43を分岐させて一端を接続し、脱硫処理後の排ガスを抜き出して循環させるようにしてもよい。
【0031】
燃料供給経路45には、図示しない石炭粉砕ミル等によって所定の粒度に粉砕された微粉炭燃料が搬送用ガスに同伴されて供給されるようになっている。燃料供給経路45の排ガス混合器49の上流側には、酸素の供給経路が接続される酸素混合器53が設けられており、酸素混合器53には、酸素が供給されて微粉炭燃料と酸素が混合されるようになっている。排ガス混合器49には、排ガス循環ダクト21を流れる循環排ガスが供給され、ここで微粉炭燃料と酸素及び循環排ガスが混合されるようになっている。
【0032】
脱硫装置39は、吸収塔55の下方の導入口から導入した排ガスを上方の排出口に向けて流し、塔内を流れる排ガスにスプレーノズル57から脱硫液を噴き付けるようになっている。排ガスの導入口よりも低い位置、つまり吸収塔55の底部には、スプレーノズル57から噴き出した吸収液を回収して貯留する底部59が形成されている。
【0033】
CO分離手段41は、第1の圧縮機61と、第2熱交換器63と、第2の圧縮機65が順に配管で接続され、排ガスを圧縮する過程で水と二酸化炭素が液化した状態でそれぞれ排ガス中から分離されるようになっている。
【0034】
第2熱交換器63は、排ガスが導入される容器内に熱媒体が通流する伝熱管を収容して構成され、この容器内には、排ガスから分離された水分を容器内から抜き出す排水供給用ダクト67の一端が接続され、その他端は、図示しない排水処理設備に接続されている。これにより、第1の圧縮機61で圧縮されて発熱した排ガスは、第2熱交換器63にて熱媒体と熱交換して除熱され、水が分離された後、さらに第2の圧縮機65で圧縮された後、除熱されることで液化した二酸化炭素が分離されるようになっている。
【0035】
ここで、本実施形態では、第1熱交換器29の伝熱管を流れる熱媒体aの流路と、第2熱交換器63の伝熱管を流れる熱媒体aの流路と、第3熱交換器35の伝熱管を流れる熱媒体aの流路とを互いに配管69を介して連通させることにより、熱媒体aが循環する熱媒体循環ライン71を形成している。すなわち、第1熱交換器29の伝熱管を流れた熱媒体aが第2熱交換器63の伝熱管に流入し、第2熱交換器63の伝熱管を流れた熱媒体aが第3熱交換器35の伝熱管に流入し、第3熱交換器35の伝熱管を流れた熱媒体aが第1熱交換器29の伝熱管に戻されるようになっている。ここで、第1熱交換器29の伝熱管を流れた熱媒体aが第2熱交換器63の伝熱管に向かって流れる配管69には、循環ポンプ73が設けられており、この循環ポンプ73が駆動することで、熱媒体aは熱媒体循環ライン71を循環するようになっている。
【0036】
次に、このようにして構成される排ガス処理システムの動作を説明する。
【0037】
蒸気循環ライン17においては、ボイラ11内の燃焼反応によって発生した熱により蒸気発生用熱交換器13から高温高圧の蒸気が発生し、この蒸気が蒸気タービン15に導入されて蒸気タービン15が回転することにより、発電機23が発電する。蒸気タービン15から排出された低圧の蒸気は、復水器25において徐冷されて液化され、復水となって昇圧ポンプ27に吸い込まれる。昇圧ポンプ27で昇圧された復水は、第1熱交換器29の容器内に導かれ、伝熱管を流れる熱媒体aと熱交換して加熱された後、蒸気発生用熱交換器13に戻される。
【0038】
排ガス処理ライン19においては、燃料供給経路45を介して、微粉炭燃料と酸素と循環排ガスがボイラ11に供給されることで、微粉炭燃料が燃焼される。この燃焼により、ボイラ11から排出された排ガスは、煙道43を通り、脱硝装置31に導かれ、脱硝触媒と接触することにより、排ガス中のNOxが除去される。続いて、脱硝装置31を出た排ガスは、A/H33に導かれて循環排ガスと熱交換することにより約160℃〜200℃に減温された後、第3熱交換器35の容器内に導かれる。第3熱交換器35では、排ガスが伝熱管を流れる熱媒体aと熱交換することにより、水露点以上で酸露点以下となる、例えば110℃〜160℃に減温されて排出される。第3熱交換器35を出た排ガスは、集塵機37に導かれて排ガスに含まれる灰が除去される。
【0039】
集塵機37を出た排ガスは、その一部が循環用ファン51の駆動により煙道43から抜き出され、排ガス循環ダクト21に導かれる。排ガス循環ダクト21を流れる循環排ガスは、循環用ファン51を経由してA/H33に導かれ、脱硝装置31を出た排ガスと熱交換することにより加熱された後、燃料供給経路45を介してボイラ11内に導かれる。
【0040】
一方、集塵機37を出た排ガスは、脱硫装置39の吸収塔55に導入される。吸収塔55内を上昇する排ガスはスプレーノズル57から噴霧された脱硫液と接触し、排ガスに含まれるSOが脱硫液に吸収される。SOを吸収した脱硫液は吸収塔55の底部59に貯留され、ここにおいて、例えば、脱硫液の成分と反応したSOは塩となり底部59の脱硫液中から分離される。なお、図示していないが、底部59に貯留された脱硫液はポンプで汲み上げられてスプレーノズル57に供給され、再び吸収塔55内に噴霧される。
【0041】
続いて、脱硫装置7を出た約50℃の排ガスは、CO分離手段41に導かれる。ここでは、まず、排ガスが第1の圧縮機61で圧縮される。この圧縮により約130℃まで発熱した排ガスは、第2熱交換器63の容器内に導かれ、伝熱管を流れる熱媒体aと熱交換することにより常温まで冷却される。これにより、排ガス中の水分のほとんどが液状となり、ドレン水となって排水供給用ダクト67から排水される。一方、第2熱交換器63から出た排ガスは、さらに第2の圧縮機65で圧縮され、その後冷却されることにより液化した二酸化炭素が分離される。ここで分離された二酸化炭素は、図示しない貯蔵器に貯蔵される。CO分離手段41を出た排ガスは、図示しない煙突から大気中へ放出される。
【0042】
ここで、本発明の特徴構成となる熱媒体循環ライン71を流れる熱媒体aの動作について説明する。
【0043】
まず、第1熱交換器29の伝熱管に流入した熱媒体aは、第1熱交換器29の容器内に流入する水、つまり復水器25を出た復水と熱交換することにより、常温の約20〜40℃まで冷却される。続いて、この熱媒体aは、循環ポンプ73を介して第2熱交換器63に供給される。第2熱交換器63の伝熱管に流入した熱媒体aは、第2熱交換器63の容器内に導入された排ガス、つまり第1の圧縮機61により圧縮されて発熱(約130℃)した排ガスと熱交換することにより、約50〜70℃に加熱される。
【0044】
このようにして第2熱交換器63で加熱された熱媒体aは、第3熱交換器35の伝熱管に流入し、第2熱交換器63の容器内に導入された排ガス、つまりA/H33を出て約160〜200℃になった排ガスと熱交換することにより、約90〜110℃に加熱される。そして、第3熱交換器35で加熱された熱媒体は、第1熱交換器29の伝熱管に戻されて再び常温まで冷却される。
【0045】
ここで、第3熱交換器35の伝熱管には、第2熱交換器63で約50〜70℃に昇温された熱媒体aが供給され、さらに、第3熱交換器35の容器内には、約160℃〜200℃の排ガスが流入されるため、第3熱交換器35の伝熱管表面の温度は、70℃以上(例えば70〜90℃)に保持される。したがって、第3熱交換器35の伝熱管表面の温度は、酸素燃焼式のボイラ11から排出される排ガス(水分濃度30%)の水露点70℃よりも低くなることがないため、排ガス中の水分が伝熱管の表面で結露することがなく、伝熱管の表面に付着した灰をスートブロアで容易に除去することができ、安定した運転を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第2熱交換器63と第3熱交換器35で熱媒体aが排ガスからそれぞれ回収した熱を復水の加熱用として利用することができるため、熱効率を向上させることができる。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用してなる排ガス処理システムの第2の実施形態について、図2を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と異なる点について説明し、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、脱硫装置39の吸収塔55の底部59に貯留される脱硫液内に、第4熱交換器75を設置し、熱媒体循環ライン71において、第1熱交換器29の伝熱管を通過した熱媒体aを第4熱交換器75の伝熱管に導いて脱硫液と熱交換させた後、第3熱交換器35の伝熱管に導くようにしている点で、第1の実施形態と異なる。なお、本実施形態では、第2熱交換器63の伝熱管を流れる熱媒体として、熱媒体aとは異なる別の熱媒体を用いている。
【0049】
すなわち、酸素燃焼式のボイラから排出される排ガスは、水分濃度が30%と高く、脱硫装置39の吸収塔55内の温度が上昇して約70℃になることから、第4熱交換器75を吸収塔55内の底部59に貯留された約70℃の脱硫液内に設置し、第1熱交換器29を通過した常温の熱媒体aを第4熱交換器75に導くことにより、熱媒体aを約50〜70℃まで昇温させることができる。そして、この第4熱交換器75で加熱された熱媒体aを第3熱交換器35に導くことで、第3熱交換器35の伝熱管の表面温度は70℃以上(例えば、70〜90℃)に保持される。よって、本実施形態のように構成しても、第3熱交換器35の伝熱管の表面には、排ガス中の水分が結露することがないため、伝熱管表面に付着する灰をスートブロアで容易に除去することができ、安定した運転を実現することができる。
【0050】
また、脱硫装置39の脱硫性能は、一般に吸収塔内の温度が上昇することにより、低下する傾向にあるが、本実施形態によれば、脱硫装置39の温度を熱媒体aが回収して下げることができるため、脱硫性能の低下を抑制することができる。
【0051】
(第3の実施形態)
以下、本発明を適用してなる排ガス処理システムの第3の実施形態について、図3を参照して説明する。本実施形態では、第1及び第2の実施形態と異なる点について説明し、これらの実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、集塵機37と脱硫装置39の間の煙道43に第5熱交換器77を設置し、熱媒体循環ライン71において、第1熱交換器29の伝熱管を通過した熱媒体aを第5熱交換器77の伝熱管に導いて排ガスと熱交換させた後、第3熱交換器35の伝熱管に導くようにしている点で、第1の実施形態と異なる。
【0053】
すなわち、集塵機37を出た排ガスの温度は約90〜110℃であるため、このような排ガスが流れる煙道に第5熱交換器77を設置し、第1熱交換器29を通過した常温の熱媒体aを第5熱交換器77に導くことにより、熱媒体aを約50〜70℃まで昇温させることができる。そして、この第5熱交換器77で加熱された熱媒体aを第3熱交換器35に導くことで、第3熱交換器35の伝熱管表面温度は70℃以上(例えば、70〜90℃)に保持される。よって、本実施形態のように構成しても、第3熱交換器35の伝熱管の表面には、排ガス中の水分が結露することがないため、伝熱管表面に付着する灰をスートブロアで容易に除去することができ、安定した運転を実現することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、脱硫装置39に導入される排ガスの温度をより低くすることができるため、脱硫性能の低下を抑制することができる。加えて、本実施形態によれば、第5熱交換器77と第3熱交換器35で熱媒体aがそれぞれ排ガスから回収した熱を復水の加熱用として利用することができるため、熱効率を向上させることができる。
【0055】
以上述べたように、上記の実施形態によれば、酸素燃焼式のボイラから排出される排ガス、つまり水分濃度やSO濃度が高い排ガスにおいても、集塵機37の入口側を流れる排ガスと熱媒体aとを熱交換する第3熱交換器35の伝熱管表面温度を、水が結露しない70℃以上に維持できるため、伝熱管表面への灰の付着を大幅に低減することができ、排ガス処理プラントの安定運転が可能となる。
【0056】
なお、上記の実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明はこれらの実施形態の構成にのみ限定されるものではない。例えば、熱媒体循環ライン71の第1熱交換器29と第3熱交換器35以外の熱交換器については、第3熱交換器35の伝熱管表面に結露が生じない範囲で、上記の実施形態の熱交換器の構成を適宜組み合わせて構成するようにしてもよい。
【0057】
また、第3熱交換器35を流れる排ガスの温度変化による影響を受けることなく、伝熱管表面の結露の発生をより確実に防ぐためには、第3熱交換器35の伝熱管に導入される熱媒体aの温度が70℃以上、より好ましくは80℃以上となるように設定するのが有効である。このように熱媒体aの温度を設定するためには、第3熱交換器35以外の他の熱交換器に対して周知の方法により熱交換量等を調整すればよい。
【符号の説明】
【0058】
11 ボイラ
13 蒸気発生用熱交換器
15 蒸気タービン
17 蒸気循環ライン
19 排ガス処理ライン
21 排ガス循環ダクト
25 復水器
27 昇圧ポンプ
29 第1熱交換器
35 第3熱交換器
37 集塵機
39 脱硫装置
41 CO分離手段
59 底部
63 第2熱交換器
71 熱媒体循環ライン
75 第4熱交換器
77 第5熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、該ボイラに設けられた蒸気発生用熱交換器で発生する蒸気を蒸気タービンに供給して発電させ、該蒸気タービンから排出される蒸気を冷却して前記蒸気発生用熱交換器に戻す蒸気循環ラインと、前記ボイラから発生する排ガスを処理する排ガス処理ラインと、該排ガス処理ラインに設けた集塵機の下流側を流れる排ガスの一部を抜き出して前記ボイラに導く排ガス循環ラインとを備える排ガス処理システムにおいて、
前記蒸気循環ラインの前記蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と前記蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、前記復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機の下流側を流れる排ガスを圧縮することで発熱した排ガスと前記熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機の入口側に設けられ、該入口側を流れる前記排ガスと前記熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、
前記第1熱交換器で冷却された前記熱媒体を前記第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第1熱交換器に戻すことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
前記第3熱交換器に導入される前記熱媒体の温度が70℃以上となるように設定されてなる請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、該ボイラに設けられた蒸気発生用熱交換器で発生する蒸気を蒸気タービンに供給して発電させ、該蒸気タービンから排出される蒸気を冷却して前記蒸気発生用熱交換器に戻す蒸気循環ラインと、前記ボイラから発生する排ガスを処理する排ガス処理ラインと、該排ガス処理ラインに設けた集塵機の下流側を流れる排ガスの一部を抜き出して前記ボイラに導く排ガス循環ラインとを備える排ガス処理システムにおいて、
前記蒸気循環ラインの前記蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と前記蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、前記復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機の下流側に設けられた湿式脱硫装置の底部に貯留される脱硫液と前記熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機の入口側に設けられ、該入口側を流れる前記排ガスと前記熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、
前記第1熱交換器で冷却された前記熱媒体を前記第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第1熱交換器に戻すことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項4】
富酸素ガスと循環排ガスとを混合した燃焼用ガスにより燃料を燃焼させるボイラと、該ボイラに設けられた蒸気発生用熱交換器で発生する蒸気を蒸気タービンに供給して発電させ、該蒸気タービンから排出される蒸気を冷却して前記蒸気発生用熱交換器に戻す蒸気循環ラインと、前記ボイラから発生する排ガスを処理する排ガス処理ラインと、該排ガス処理ラインに設けた集塵機の下流側を流れる排ガスの一部を抜き出して前記ボイラに導く排ガス循環ラインとを備える排ガス処理システムにおいて、
前記蒸気循環ラインの前記蒸気タービンから排出された蒸気を冷却する復水器と前記蒸気発生用熱交換器との間に設けられ、前記復水器を出た水と熱媒体とを熱交換する第1熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機とその下流側に設けられた湿式脱硫装置との間を流れる前記排ガスと前記熱媒体とを熱交換する第2熱交換器と、
前記排ガス処理ラインの前記集塵機の入口側に設けられ、該入口側を流れる前記排ガスと前記熱媒体とを熱交換する第3熱交換器とを備え、
前記第1熱交換器で冷却された前記熱媒体を前記第2熱交換器に導いて加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第3熱交換器に導いてさらに加熱し、この加熱された前記熱媒体を前記第1熱交換器に戻すことを特徴とする排ガス処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149792(P2012−149792A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7167(P2011−7167)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度〜22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、戦略的石炭ガス化・燃焼技術開発(STEP CCT)/石炭利用プロセスにおける微量成分の環境への影響低減手法の開発 高度除去技術に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】