説明

排ガス処理装置およびその方法

【課題】排ガス中の水銀の除去率を向上できる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の排ガス処理装置10は、水銀を含む排ガスの配管経路に乾式電気集塵手段14とバグフィルタ16を設けた排ガス処理装置10において、前記乾式電気集塵手段14の前段に熱交換手段12と、前記バグフィルタ16の排出側配管の水銀濃度を測定する測定手段18と、前記測定手段18の測定値に基づいて活性炭添加手段20から活性炭を前記乾式電気集塵手段14と前記バグフィルタ16の間の配管に供給する制御手段22と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に排ガス中に灰分、硫黄分、水銀などを含む微粉炭ボイラの排ガス処理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微粉炭焚き火力発電所から排出される排ガスには、大気汚染物質である煤塵や窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO、SO)の発生原因となる灰分や硫黄分を多く含むうえ、微量有害物質である水銀なども含んでいる。このうち煤塵や硫黄酸化物については、高い集塵効率を有する乾式電気集塵装置、脱硫装置、湿式電気集塵装置の導入によって、規制値以下まで除去されている。
【0003】
一方、水銀については、排ガスの流路に取り付けた乾式電気集塵装置前後に脱硫装置が設置されている場合、脱硝装置にて酸化されて塩化水銀となる。この塩化水銀は、灰への吸着性および水への吸着性を有している。このため、後段の乾式電気集塵装置や脱硫装置にて煤塵や硫黄酸化物とともに除去することができる。
【0004】
ところが、ボイラ出口の排ガス中に含まれるNO濃度が煙突出口のNO濃度の規制値以下の場合、脱硝装置を設置する必要がなくなる。この場合水銀は前述のように酸化されないため排ガス処理装置では除去できず、そのまま煙突から大気へ放出されてしまう。
【0005】
このような水銀の大気排出を防止するため、従来以下に示す排ガス処理装置が提案されている。図4は従来の排ガス処理装置の構成概略を示す図である。図示のように排ガス処理装置は、ボイラ1の排ガスの流路2に沿って乾式電気集塵機3、バグフィルタ4、脱硫装置5を備えた構成としている。ここで特許文献1では、乾式電気集塵機3で煤塵を除去した後、排ガス中に活性炭6を添加して水銀を吸着させている。そして後段に設置したバグフィルタ4によって、活性炭6を回収する排ガス処理システムが開示されている(特許文献1の段落番号0045〜0046)。
【0006】
また特許文献2に開示の排ガス処理システムは、排ガスを減温する排ガス減温装置と、減温された排ガスから集塵する前段側集塵装置及び後段側集塵装置を備え、前段側集塵装置で集塵された排ガスに活性炭と酸性ガス中和剤を加えて、水銀等を吸着させて除去している(特許文献2の段落番号0017)。
【特許文献1】特表2005−524769号公報
【特許文献2】特開2007−117890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の乾式電気集塵機とバグフィルタの間を流れる排ガスは、乾式電気集塵機によって煤塵が除去されている。しかしながら排ガス中には水銀のほか、硫黄酸化物も含まれている。排ガス中の水銀を活性炭に吸着除去させる場合、活性炭に水銀のみを効率よく吸着させるには、排ガス中に含まれる水銀以外の物質をできるだけ少量にすることが望ましい。
【0008】
ここで排ガスに含まれる硫黄化合物は、二酸化硫黄(SO)が主であるが、ボイラ内での燃焼や触媒酸化によって、一部は三酸化硫黄(SO)となる。SOは物質として非常に不安定であるため、水と反応して硫酸になる。この三酸化硫黄は濃度が数十ppmの場合、温度が百数十度以上ではガス状であるが、ガス温度が酸露点以下になると、凝縮して硫酸ミストになる。この硫酸ミストが乾式電気集塵装置とバグフィルタの間に存在する場合、活性炭の細孔が閉塞されてしまい、水銀との吸着性が悪くなり、水銀の回収率が著しく低下するという問題があった。
【0009】
特許文献1は、ボイラからのガスが気体プレヒータで約300℃−400℃から約150℃−200℃にガス温度を落として吸着材に水銀を吸着させている。このため排ガス中には硫黄酸化物が含まれているため、活性炭に硫黄酸化物が吸着して水銀の回収率が低下する問題がある。
【0010】
また特許文献2は、集塵装置の前段に排ガス減温装置を備えているが、具体的な排ガス温度の提示がなく、また排ガス中の硫黄酸化物は活性炭とともに供給した酸性ガス中和剤によって中和反応により後段側集塵装置で除去している。このため、活性炭に硫黄酸化物が吸着して水銀の回収率が低下する問題がある。
【0011】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、排ガス中に含まれる水銀の回収率を向上させることができる排ガス処理装置およびその方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の排ガス処理装置は、硫黄酸化物と水銀を含む排ガスの流路に乾式電気集塵手段とバグフィルタを設けた排ガス処理装置において、前記乾式電気集塵手段の前段に熱交換手段と、前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度を測定する測定手段と、前記測定手段の測定値に基づいて活性炭を前記乾式電気集塵手段と前記バグフィルタの間の配管に供給させる制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
この場合において前記熱交換手段は、排ガス温度を酸露点以下に冷却するとよい。
また前記制御手段は、前記測定手段の測定値に基づいて前記バグフィルタの逆洗をさせるとよい。
【0014】
本発明の排ガス処理方法は、硫黄酸化物と水銀を含む排ガスの流路に設けた乾式電気集塵手段とバグフィルタにより集塵する排ガス処理方法において、前記乾式電気集塵手段の前段で前記排ガスを酸露点以下に冷却して前記硫黄酸化物をミスト化し、前記乾式電気集塵手段で硫酸ミストを捕集して、前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度の測定値に基づいて活性炭を前記乾式電気集塵手段と前記バグフィルタの間の配管に供給して前記水銀を前記活性炭に吸着させて、前記水銀を前記バグフィルタで回収することを特徴としている。
【0015】
この場合において、前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度の測定値に基づいて、前記バグフィルタを逆洗するとよい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成による本発明の排ガス処理装置およびその方法によれば、バグフィルタの前段の乾式電気集塵手段で硫酸ミストを除去することができる。これにより排ガス中に添加した活性炭の表面に硫酸ミストが付着することによって活性炭が閉塞することがない。よって活性炭と水銀間の吸着性が向上して、水銀の回収率を上げることができる。
【0017】
また測定手段によりバグフィルタ出口の水銀濃度を測定している。この測定値に基づいて制御手段では、活性炭の添加量を制御している。これにより排ガス中の水銀を活性炭に吸着させて回収し、排ガス中の水銀濃度を規制値以下にして排気することができる。また活性炭の使用量を必要最小限に抑えることにより、処理コストの低減化を図ることができる。
【0018】
また本発明の制御手段は、水銀濃度の測定値に基づいて、バグフィルタの逆洗を行っている。これにより通常の圧力損失による逆洗に加えて、水銀濃度の上昇による逆洗を行うことにより、常時、バグフィルタによる高い水銀除去率を維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の排ガス処理装置およびその方法の実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の排ガス処理装置の構成概略を示す図である。図示のように本発明の排ガス処理装置10は、排ガスの流路11に沿ってボイラ13側から順に熱交換手段12と乾式電気集塵手段14とバグフィルタ16と脱硫手段24を配置し、さらに測定手段18と活性炭添加手段20と制御手段22と備えた構成としている。
【0020】
熱交換手段12はボイラ13から排出され排ガスの温度が所定の温度となるように冷却している。一例として排ガス温度は約160度でボイラ13から排出されている。具体的に熱交換手段12では排ガスの温度を酸露点以下に冷却している。また本実施形態では熱交換手段としてガスガスヒータ(以下GGHという。)を用いている。GGHは、熱交換器と再加熱器で構成されている。熱交換器ではボイラ排ガスと媒体(水など)との熱交換によって排ガスの熱を回収して媒体は熱水となる。この媒体は熱媒循環ポンプで再加熱器へ送られる。再加熱器では熱水により脱硫処理ガスを加熱し、煙突から排気するために必要な温度へ昇温している。ここでGGH出口の温度は、具体的には酸露点以下に設定している。硫黄酸化物(SO)は、温度が90度以下になるとミスト化して硫酸ミストとなる。硫酸ミストは大径であり、後段の乾式電気集塵手段14によって捕集することができる。
【0021】
なお熱交換手段12により冷却する排ガスの設定温度は、酸露点以下であればよいが、SOを完全にミスト化させるため、より好ましくは約90℃程度が望ましい。
【0022】
乾式電気集塵手段14は、熱交換手段12から排出された排ガス中に含まれる大径の塵埃と硫酸ミストを捕集している。
活性炭添加手段20は、乾式電気集塵手段14と後述するバグフィルタ16の間の流路上に接続している。活性炭添加手段20は、活性炭を保持するケーシングを備え、図示しない供給手段によって流路配管に活性炭を添加している。
【0023】
バグフィルタ16は、乾式電気集塵手段20から排出された排ガス中に含まれる活性炭を除去している。
測定手段18は、バグフィルタ16から排出された排ガス、すなわちバグフィルタ16の排出側配管を流れる排ガスの水銀濃度を測定している。本発明の測定手段18は一例として水銀濃度センサを用いている。
【0024】
制御手段22は、前述の活性炭添加手段20と測定手段18となる水銀濃度センサに電気的に接続している。制御手段22では、大気へ排気する水銀濃度規制値(0.03mg/Nm〜0.15mg/Nm)に基づいて、測定した水銀濃度に必要な活性炭の添加量を予め設定してある。制御手段22では、水銀濃度センサの水銀濃度の測定値に基づいて、活性炭添加手段20から乾式電気集塵手段14とバグフィルタ16の間の流路へ添加する活性炭の添加量を制御している。
【0025】
脱硫手段24は、一例として湿式脱硫装置を用いることができる。湿式脱硫放置は、排ガス温度が水の露点近傍で最も脱硫性能が高いため、装置内では多量の循環水をスプレーしている。湿式脱硫装置では、排ガス温度が水分の露点である約50度〜60度まで低下され、硫黄酸化物(SO)を捕集している。
【0026】
次に上記構成による本発明の排ガス処理方法を以下説明する。
微粉炭を燃焼するボイラ13から排出された排ガスは、排ガスの流路に沿って設けられた排ガス処理装置10の熱交換手段12に導入される。熱交換手段12では、排ガスの温度を酸露点温度以下に冷却している。具体的には酸露点以下として90℃以下の温度まで冷却させている。このとき排ガス中の硫黄酸化物(SO)は、ミスト化されて硫酸ミストとなる。
【0027】
次いで温度制御された排ガスが乾式電気集塵手段14に導入される。乾式電気集塵手段14では、前述の熱交換手段12によってミスト化された大径の硫酸ミストと煤塵が捕集される。
【0028】
乾式電気集塵手段14とバグフィルタ16の間の配管には、活性炭添加手段20を取り付けてある。またバグフィルタ16の排出側の水銀濃度を測定手段18により測定している。測定手段18の測定値が制御手段22に送られ、制御手段22では、予め測定した水銀濃度に必要な活性炭の添加量を設定してあり、測定値に基づいて、必要な活性炭の添加量を決定する。そして制御手段22から活性炭添加手段20に必要な活性炭の添加量の制御信号が送られ、活性炭添加手段20から乾式電気集塵手段14とバグフィルタ16の間の配管に活性炭が添加される。
【0029】
このとき前述の乾式電気集塵手段14によって排ガス中の硫酸ミストは回収されているため、活性炭表面には、硫酸ミストが付着することがなく、排ガス中に含まれる水銀のみが付着する。
【0030】
図2は活性炭添加濃度と水銀濃度および水銀除去率の関係を示す図である。ここで横軸は活性炭添加濃度(g/Nm)を、左縦軸はバグフィルタ出口水銀濃度(mg/Nm)を、右縦軸はバグフィルタ前後水銀除去率(%)をそれぞれ示している。一例としてバグフィルタ入口水銀濃度が0.1mg/Nm〜0.15mg/Nmのとき、活性炭添加が0のとき、バグフィルタ出口水銀濃度が0.01mg/Nm〜0.04mg/Nmとなり、水銀除去率は、60%以下となる。
【0031】
一方、活性炭添加量が0.15g/Nm〜0.2g/Nmでは、バグフィルタ出口水銀濃度が0.01mg/Nm以下となり、水銀除去率が95%以上と高い除去効果が得られる。また活性炭添加濃度が0.5g/Nmのときも、バグフィルタ出口水銀濃度が0.01mg/Nm以下となり、水銀除去率が95%以上と高い除去効果が得られる。ここで、活性炭添加濃度が0.15g/Nmと0.5g/Nmでは、いずれも水銀除去率が95%以上であり、飽和状態であると考えられる。従ってより好ましくは、活性炭添加濃度が0.15g/Nm〜0.2g/Nmであると活性炭に水銀を効率的に吸着させることができる。
【0032】
図3は活性炭吸込量と水銀除去率の関係を示す図である。ここで横軸は活性炭添加量(g/Nm)を、縦軸は水銀除去率(%)をそれぞれ示している。また排ガス温度は210度、180度、168度の場合を示している。図示のように排ガス温度が低いほど、活性炭添加量が0.15g/Nmと少量でも水銀除去率90%以上の高い除去硬化が得られる傾向にある。本発明では熱交換手段12により、乾式電気集塵手段14の入口で酸露点以下にすることで、さらに水銀除去率を促進させることができる。
【0033】
そして排ガスおよび活性炭がバグフィルタ16に導入される。バグフィルタ16では、排ガス中の活性炭表面に吸着された水銀が活性炭とともに回収される。
次いでバグフィルタ16から脱硫手段24に排ガスが供給されて、排ガス中の硫黄酸化物(SO)の脱硫処理が行われる。
【0034】
このような排ガス処理装置によれば、活性炭を添加する前に排ガス中に含まれる硫酸ミストを集塵しているため、添加した活性炭に硫酸ミストが付着することがない。よって排ガス中の水銀を活性炭に吸着させて効率的に回収し回収率を上げることができる。
【0035】
また通常、バグフィルタの逆洗は、圧力損失に基づいて行っている。本発明の排ガス処理装置10では、さらにバグフィルタ16の排出側の水銀濃度の測定値に基づいて逆洗を実施している。制御手段22は、大気へ排気する水銀濃度規制値(0.03mg/Nm〜0.15mg/Nm)に基づいて、予め逆洗を実施する水銀濃度の設定値を設定している。そして水銀濃度が予め設定した設定値を超えた場合には、制御手段22によりバグフィルタ16の逆洗作業を実施している。本発明では一例として逆洗の設定値を0.01mg/Nmとすることができる。バグフィルタ16の逆洗は、一例としてフィルタに供給する排ガスと逆方向に洗浄用空気を、図示しない供給手段により供給して濾布に付着した塵埃、活性炭などを剥離させている。
【0036】
これによりバグフィルタの高い捕集率を維持することができる。よって水銀の回収率が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の排ガス処理装置の構成概略を示す図である。
【図2】活性炭添加濃度と水銀濃度および水銀除去率の関係を示す図である。
【図3】活性炭添加量と水銀除去率の関係を示す図である。
【図4】従来の排ガス処理装置の構成概略を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1………ボイラ、2………流路、3………乾式電気集塵機、4………バグフィルタ、5………脱硫装置、6………活性炭、10………排ガス処理装置、11………流路、12………熱交換手段、13………ボイラ、14………乾式電気集塵手段、16………バグフィルタ、18………測定手段、20………活性炭添加手段、22………制御手段、24………脱硫手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄酸化物と水銀を含む排ガスの流路に乾式電気集塵手段とバグフィルタを設けた排ガス処理装置において、
前記乾式電気集塵手段の前段に熱交換手段と、
前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度を測定する測定手段と、
前記測定手段の測定値に基づいて活性炭を前記乾式電気集塵手段と前記バグフィルタの間の配管に供給させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記熱交換手段は、排ガス温度を酸露点以下に冷却することを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記測定手段の測定値に基づいて前記バグフィルタの逆洗をさせることを特徴とした請求項1また2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
硫黄酸化物と水銀を含む排ガスの流路に設けた乾式電気集塵手段とバグフィルタにより集塵する排ガス処理方法において、
前記乾式電気集塵手段の前段で前記排ガスを酸露点以下に冷却して前記硫黄酸化物をミスト化し、前記乾式電気集塵手段で硫酸ミストを捕集して、
前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度の測定値に基づいて活性炭を前記乾式電気集塵手段と前記バグフィルタの間の配管に供給して前記水銀を前記活性炭に吸着させて、
前記水銀を前記バグフィルタで回収することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項5】
前記バグフィルタの排出側配管の水銀濃度の測定値に基づいて、前記バグフィルタを逆洗することを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−291734(P2009−291734A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148981(P2008−148981)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】