説明

排ガス処理装置

【課題】従来の排ガス処理装置よりイニシャルコスト、ランニングコスト及びVOC除去効率低下を抑え、更に省スペースでの設置を可能にするとともに、長時間にわたる運転が可能となる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】揮発性有機化合物を含有する排ガスを噴射した洗浄水に接触させて、上記排ガス中の揮発性有機化合物を上記洗浄水に吸収、移行させるスクラバー部と、洗浄水を循環させる循環部と、洗浄水を冷却する冷却部と、循環水を排水する排水部とを備える排ガス処理装置において、洗浄水が補給水部と循環水部からなり、循環水量に対する補給水の比が0.1以上であり、且つ補給水と循環水は別のシャワーノズルより噴射し、更に洗浄水温度を35℃以下とし、また洗浄水を殺菌処理することを特徴とする排ガス処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント等より大気へ放出される排ガスから揮発性有機化合物(以下VOC)を除去する排ガス処理装置に関する。例えば、複数の排ガス排出口を有する乾燥施設での揮発性有機化合物を含有する排ガスの処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、VOCを含有する排ガスの処理方法としては、活性炭、ゼオライト等の吸着剤を用いた吸着法、排ガス中のVOCを高温下で酸化分解する燃焼法(直接燃焼法、触媒燃焼法、蓄熱燃焼法)、または水などの溶液に対象とするVOCガスを吸収させる方法(以下スクラバー方式)がある。
【0003】
特に平成18年6月の改正大気汚染防止法の施行により、排出濃度が規制強化されたことから処理効率が重視され、VOCガス処理の処理効率が高い、燃焼法が採用される場合が多い。
【0004】
しかし、燃焼方式はイニシャルコストも高く、またVOCガス濃度が低いと助燃剤が必要となり、ランニングコストが高くなり、また二酸化炭素も余計に排出することとなる。現在の省エネルギー、低炭素化が叫ばれている時期には課題が多い方法となる。
【0005】
また、活性炭、ゼオライト等を用いる吸着法は、ダストやミストを含むVOC含有排ガスに対しては、前処理として、ダストやミストの除去装置(バグフィルター、ミストセパレーターなど)が必要となるので、活性炭、ゼオライト等の再生費用を含めたランニングコストが高い欠点がある。
【0006】
スクラバー方式については、(i)補給水使用量を抑えるための提案、(ii)除去効率を向上させる提案がされている。
【0007】
(i)においては、補給水使用量を抑えるため複数の処理塔に順次排ガスを通過させて処理される方式が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、これらの方法はイニシャルコストが嵩み、設置スペースも広く必要となるなどの課題が多い方法となる。更に、循環水槽内で好気性微生物処理を行い、水量減で除去効率向上を提案している(特許文献4)。しかし、この方法においても、循環水槽内に微生物スラッジが存在しているため、スクラバー部の充填層の目詰まりにより循環水量が低下し、長時間の運転には適さないとの問題がある。また、補給水は循環水槽または循環水配管を通して補給され循環水と混合されるため、VOCを含まない新鮮な水を増やす必要がある。
【0008】
(ii)においては、VOC除去効率を向上させるために補給水部と循環水部に冷却部を設けることが提案されている。しかし、補給水に対し循環水の比率が多過ぎる場合、循環水を幾ら冷却しても溶液がVOC平衡濃度に達してしまい、VOC除去率が上がらない(特許文献5)。
【0009】
また冷却部においては、稼働し続けると菌の増殖等で冷却部が閉塞し、循環水量が低下し、VOC除去効率が著しく低下するという問題が生じることも分かってきた。
【0010】
更にマイクロナノバブルを含有する溶液で好気性微生物を活性化させて排ガス処理を行うことで、排ガスとの接触効率が向上し、活性化した好気性微生物で分解処理することで、処理効率が向上するとの提案がなされている(特許文献6、特許文献7)。この方法においては、多量のマイクロナノバブルを発生することが必要であり、イニシャルコストが嵩むという問題がある。また、イニシャルコストを抑えるべく、活性炭吸着塔を併用してコストを抑えた方法も提案されているが(特許文献8)、ランニングコストが嵩み、設置スペースが広くなる等の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−118440号公報
【特許文献2】特開2002−126446号公報
【特許文献3】特開2002−136827号公報
【特許文献4】特開平6−343822号公報
【特許文献5】特開平7−60050号公報
【特許文献6】特開2007−209922号公報
【特許文献7】特開2009−165992号公報
【特許文献8】特開2010−247090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような従来の事情を鑑みてなされたもので、従来の排ガス処理装置よりイニシャルコスト、ランニングコスト及びVOC除去効率低下を抑え、更に省スペースでの設置を可能にするとともに、長時間にわたる運転が可能となる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明では、揮発性有機化合物を含有する排ガスを噴射した洗浄水に接触させて、上記排ガス中の揮発性有機化合物を上記洗浄水に吸収、移行させるスクラバー部と、洗浄水を循環させる循環部と、洗浄水を冷却する冷却部と、循環水を排水する排水部とを備える排ガス処理装置において、洗浄水が補給水部と循環水部からなり、循環水量に対する補給水量の比が0.1以上であり、且つ補給水と循環水は別のシャワーノズルより噴射されることとしたものである。更に上記排ガス処理装置は、洗浄水温度を35℃以下にすること、また洗浄水は補給水部の補給水槽内及び/または循環水部の循環槽内で殺菌処理することで更なる効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排ガス処理装置により、イニシャルコスト、ランニングコスト及びVOC除去効率低下を抑え、更に省スペースでの設置を可能にするとともに、長時間にわたる運転を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置のフロー工程図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る排ガス処理装置であり、オゾン発生装置も含めたフロー工程図である。
【図3】図3は比較例の一実施形態に係る排ガス処理装置のフロー工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。図1、2は本発明の排ガス処理装置のフロー工程図である。図1、2において、スクラバー本体1内には、充填層2、上部にシャワーノズル(循環水)3、シャワーノズル(補給水)3′とエリミネータ4を設けている。循環水は循環ポンプ11により、循環水供給配管7、熱交換器16、圧力計17、流量計12を通り、シャワーノズル3により噴射されている。循環水槽6は、好ましくはオゾン発生器25でオゾン曝気処理されている。また補給水は補給水ポンプ11により、補給水供給配管9、流量計12を通り、シャワーノズル3′により噴射されている。補給水槽8へは補給水供給配管10を通り、水が補給される。補給水槽8は、好ましくはオゾン発生器25′でオゾン曝気処理されている。循環水槽6に、ある一定レベル以上の循環水が溜まると、排水配管15を通り排水される。
【0017】
スクラバー方式(気液接触方式)には、散水方式(スプレー)、充填方式が知られている。本発明においては、充填方式が好ましい。
【0018】
排ガスは排ガス導入口5よりスクラバー本体1へ入り、充填層2で水と接触し、エリミネータ4、排ガス排出口23を通り、ファン24で損出した風量分を補い、外気へ放出される。
【0019】
充填層2の充填物としては、規則充填物、不規則充填物のいずれも用いることができる。充填物の材質として、プラスチック、金属、セラミック、セルロース等を用いることができるが、好ましくはプラスチックである。充填高さは50〜150mmが好ましく、更に好ましくは70〜120mmである。
【0020】
シャワーノズルとしては、特に種類等に制限はないが、流量に準じた大きさであり、且つ不純物等(スケールや菌等が培養してできるゲル状物質等)により、シャワーノズルを閉塞させないものが好ましい。またシャワーノズルの配置としては充填層に均等に噴出できていることが好ましい。
【0021】
洗浄水量としては、ガスの空塔質量速度、液の空塔質量速度、圧力損失等を加味し、計算するが、経験値からして、単位時間あたりの排ガスとの接触断面積に対し、100〜300L/min/mが好ましい。更に好ましくは150〜200L/min/mである。
【0022】
循環水量は、図1〜図3のシャワーノズル3より1分間あたりに噴射される水量である。補給水量は、図1、図2のシャワーノズル3′より1分間あたりに噴射される水量である。例えば、図1のシャワーノズル3より循環水量が120L/min噴射され、シャワーノズル3′より30L/min噴射された場合、循環水量に対する補給水量の比は、
30/120=0.25
と算出される値を意味する。
【0023】
洗浄水の温度、特に循環水のシャワー噴出温度としては、5〜35℃が好ましいが、ランニングコストの面を加味すると20〜30℃での運用が更に好ましい。また、補給水としては、上水道、地下水等の制約はない。
【0024】
循環水槽の大きさとしては、循環水量(L/min)の1〜5倍量を貯水できる大きさが好ましく、更に好ましくは1.5〜3倍量を貯水できるものである。
【0025】
殺菌処理としては、オゾン処理、UV処理、ろ過処理、マイクロナノバブル処理等の処理方法があるが、中でもオゾン処理が好ましい。
【0026】
オゾン発生器のオゾン発生量としては、50mg/h以上が好ましく、300mg/h以上が更に好ましい。
【0027】
熱交換器としては、プレート式、二重管式、多管円筒式、多重円管式、渦巻き管式等あるが特に制約するものではない。
【0028】
冷凍機に関しては、設置スペース等より空冷式のものが好ましい。冷凍機能力としては、排ガス量、排ガス処理温度、排ガス処理後温度、排ガス相対湿度等を勘案し、選定される。
【0029】
本発明の処理対象となるVOCガス濃度は、500ppmC以上が好ましく、更に好ましくは1000ppmC以上である。
【0030】
排ガスに含まれるVOCが水溶性であれば、本発明の効果が現れやすい。VOCとしては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、及びシクロヘキサノン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び乳酸エチル等のエステルが挙げられ、更にVOCの混合ガスでも処理可能である。中でも、本発明はVOCが炭素数3以下のアルコール類である場合において、著しい効果が現れる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
図1のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽なし/補給水槽なし
【0032】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。7日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)と同等な能力を発揮した。また、長時間運転(14日以上の連続運転)は出来ない結果となった。
【0033】
(実施例2)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽なし
【0034】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。20日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)と同等な能力を発揮した。また、循環水槽のみをオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0035】
(実施例3)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽あり
【0036】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。30日以降でも問題なく運転できた。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)と同等な能力を発揮した。また、循環水槽及び補給水槽をそれぞれオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0037】
(実施例4)
図1のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 25℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽なし/補給水槽なし
【0038】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。12日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧し、更に循環水を冷却することで、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)を凌ぐ能力を発揮した。また、長時間運転(14日以上の連続運転)は出来ない結果となった。
【0039】
(実施例5)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 25℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽なし
【0040】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。25日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧し、更に循環水を冷却することで、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)を凌ぐ能力を発揮した。また、循環水槽のみをオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0041】
(実施例6)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 25℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽あり
【0042】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。30日以降でも問題なく運転できた。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.1875とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧し、更に循環水を冷却することで、その除去効率は後述する比較例1〜6より大幅に向上し、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)を凌ぐ能力を発揮した。また、循環水槽及び補給水槽をそれぞれオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0043】
(比較例1)
図3のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 180L/min
補給水量 10L/min(補給水供給配管10の流量)
オゾン曝気 なし
【0044】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。4日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.0556とし、補給水を循環水槽へ入れた場合ではVOC除去効果が殆ど見られなかった。また、長時間運転(14日以上の連続運転)が出来ない結果となった。
【0045】
(比較例2)
図3のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 178L/min
補給水量 12L/min(補給水供給配管10の流量)
オゾン曝気 なし
【0046】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。5日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、補給水量を増やし、循環水量に対する補給水量の比を0.0674としても、補給水を循環水槽へ入れた場合ではその除去効率は僅かであった。また、長時間運転(14日以上の連続運転)が出来ない結果となった。
【0047】
(比較例3)
図3のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 160L/min
補給水量 30L/min(補給水供給配管10の流量)
オゾン曝気 なし
【0048】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。7日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、補給水量を更に増やし、実施例1〜3と同様の循環水量に対する補給水量の比0.1875としても、補給水を循環水槽へ入れた場合では、その除去効率は実施例1〜3までは上がらなかった。また、長時間運転(14日以上の連続運転)が出来ない結果となった。
【0049】
(比較例4)
図1のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 180L/min
補給水量 10L/min
オゾン曝気 なし
【0050】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後に実施した。4日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.0556とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は比較例1よりは僅かに向上したが、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)には到底及ぶ能力ではなかった。また、長時間運転(14日以上の連続運転)が出来ない結果となった。
【0051】
(比較例5)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 180L/min
補給水量 10L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽なし
【0052】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。18日後に循環水量が設置値よりも大幅に低下したため、排ガス処理を中止した。
結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.0556とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は比較例1よりは僅かに向上したが、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)には到底及ぶ能力ではなかった。また、循環水槽のみをオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0053】
(比較例6)
図2のフロー工程図に従い、以下の条件で行った。
排ガス量 10000m/h
排ガス温度 60℃
VOC濃度 (エタノール+イソプロピルアルコール) 1000ppmC
循環水温度 40℃
補給水温度 25℃
循環水量 180L/min
補給水量 10L/min
オゾン曝気 循環槽あり/補給水槽あり
【0054】
排ガス濃度測定は排ガス処理後1日後、3日後及び15日後に実施した。30日以降でも問題なく運転できた。結果は表1に記載の通り、循環水量に対する補給水量の比を0.0556とし、補給水と循環水を別のシャワーノズルで噴霧した場合、その除去効率は比較例1よりは僅かに向上したが、一般的なスクラバー処理効率(新鮮な水を連続的に噴霧するものでは40%〜50%の除去率がある)には到底及ぶ能力ではなかった。また、循環水槽及び補給水槽をそれぞれオゾン曝気することで長時間運転(14日以上の連続運転)が出来る結果となった。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の排ガス処理装置は、イニシャルコスト、ランニングコスト及びVOC除去効率低下を抑え、更に省スペースでの設置を望み、且つ長時間にわたり運転するVOCガスを排出する施設に有効に利用される。
【符号の説明】
【0057】
1 スクラバー本体
2 充填材
3 シャワーノズル(循環水)
3′ シャワーノズル(補給水)
4 エリミネータ
5 排ガス導入口
6 循環水槽
7 循環水供給配管
8 補給水槽
9 補給水供給配管(シャワーノズル行き)
10 補給水供給配管
11 ポンプ
12 流量計
13 温度計
14 バルブ
15 排水配管
16 熱交換器
17 圧力計
18 冷凍機
19 冷水タンク
20 冷水配管(冷凍機から熱交換器行き)
21 冷水配管(熱交換器から冷水タンク行き)
22 冷水配管(冷水タンクから冷凍機行き)
23 排ガス排出口
24 ファン
25 オゾン発生装置(循環水槽)
25′ オゾン発生装置(補給水槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物を含有する排ガスを噴射した洗浄水に接触させて、上記排ガス中の揮発性有機化合物を上記洗浄水に吸収、移行させるスクラバー部と、洗浄水を循環させる循環部と、洗浄水を冷却する冷却部と、循環水を排水する排水部とを備える排ガス処理装置において、洗浄水が補給水部と循環水部からなり、循環水量に対する補給水量の比が0.1以上であり、且つ補給水と循環水は別のシャワーノズルより噴射されることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記洗浄水温度を35℃以下に制御することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記洗浄水は、補給水部を溜める補給水槽内及び/または循環水部を溜める循環槽内で殺菌処理されることを特徴とする請求項1または2記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記殺菌処理がオゾン曝気処理であることを特徴とする請求項3記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記排ガス中の揮発性有機化合物が、炭素数3以下のアルコール類であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−157830(P2012−157830A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20039(P2011−20039)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】