説明

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法

【課題】排ガス中のパティキュレートを十分に捕集することができると共に、捕集したパティキュレートを効率よく燃焼させることができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化フィルタ1は、隔壁2を格子状に配して多数のセル3を設けた基材11と栓部12とを有する。隔壁2は平均細孔径の異なる複数の層からなり、少なくとも最も上流側の層である第1隔壁層21には触媒が担持されている。第1隔壁層21の表面積をS(mm2/mm3)、平均細孔径をD(μm)とした場合に、表面積Sに有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1)を乗じて算出される有効表面積S´が38mm2/mm3以上であり、隔壁2において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレート(以下、適宜、PMという)を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化用フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中のPMを捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。
この排ガス浄化フィルタとしては、例えば、多孔質の隔壁を格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを設けた基材と、セルの両端のいずれか一方の端部を封止する栓部とを有するものがある。
【0003】
上記構成の排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、排ガスを入口側のセルに導入し、多孔質の隔壁を通過させた後、出口側のセルから排出させる。
このとき、排ガス中のPMを多数の細孔が形成された隔壁において捕集することで、排ガスを浄化する。また、隔壁に捕集されたPMは、隔壁に担持された触媒との触媒反応によって燃焼させ、除去する。
【0004】
ところで、従来から、上記排ガス浄化フィルタについて、PMを効率よく捕集して燃焼させるための構造が提案されている。
例えば、特許文献1〜3には、隔壁を複数の層で構成し、排ガスが最初に通過する最表層の細孔径を大きくすることにより、その最表層の内部にPMを侵入・堆積させる構造が提案されている。また、特許文献4には、同じく隔壁を複数の層で構成し、その最表層を触媒材料よりなる多孔質の層とすることにより、最表層の内部にPMを侵入・堆積させる構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−332329号公報
【特許文献2】特開2004−300951号公報
【特許文献3】特開2006−192347号公報
【特許文献4】特開2005−21818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜4の排ガス浄化フィルタは、隔壁の細孔径を単純に大きくし、PMを隔壁の内部に侵入・堆積させて燃焼させることにより、燃焼性能を高めるというものである。ここで、隔壁において捕集したPMを有効に燃焼させるためには、PMと隔壁に担持された触媒とを十分に接触させることが重要となる。つまり、隔壁において捕集したPMと触媒との接触面積を十分に確保しなければならない。
【0007】
しかしながら、従来の構造では、隔壁の細孔径を大きくすることによって内部空間を増やし、PMの侵入量を多くすることができても、細孔径を大きくしたことによる表面積の減少によって内部に侵入・堆積したPMと触媒との接触面積を十分に確保することができなかった。そのため、隔壁において捕集したPMが効率よく十分に燃焼されているとは言えなかった。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、排ガス中のパティキュレートを十分に捕集することができると共に、捕集したパティキュレートを効率よく燃焼させることができる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、多孔質の隔壁を格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを設けた基材と、上記セルの両端のいずれか一方の端部を封止する栓部とを有する排ガス浄化フィルタにおいて、
上記隔壁は、平均細孔径の異なる複数の層からなり、
該複数の層のうち、少なくとも、上記隔壁を通過する際の排ガスの流れ方向において最も上流側の層である第1隔壁層には、排ガス中のパティキュレートを燃焼させるための触媒が担持されており、
上記第1隔壁層について、X線CTスキャンを用いた3次元解析により求めた表面積をS(mm2/mm3)、平均細孔径をD(μm)とした場合に、上記表面積Sに有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1・・・式(1))を乗じて算出される有効表面積S´が38mm2/mm3以上であり、
上記隔壁の上記複数の層において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成する他層用材料を押出成形し、該他層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流入させる入口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層を形成するスラリー状の第1隔壁層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記他層用材料からなる上記基材中間体及び上記第1隔壁層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、該他の層におけるAl23の化学組成が上記第1隔壁層よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項7)。
【0011】
第3の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記第1隔壁層におけるAl23の化学組成が上記他の層よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項11)。
【0012】
第4の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程と、
上記基材の上記隔壁に触媒を担持させる触媒担持工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記触媒担持工程では、上記隔壁の上記第1隔壁層にのみ上記触媒を担持させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項15)。
【0013】
第5の発明は、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程と、
上記基材の上記隔壁に触媒を担持させる触媒担持工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記触媒担持工程では、上記第1隔壁層における上記触媒の担持量が上記他の層よりも多くなるように、上記隔壁に上記触媒を担持させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項16)。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明の排ガス浄化フィルタは、上記隔壁が複数の層で構成されている。そして、排ガスが最初に通過する上記第1隔壁層の表面積Sに、平均細孔径Dを用いて上記式(1)で表される有効表面積係数Aを乗じて算出される有効表面積S´は、38mm2/mm3以上である。
【0015】
ここで、有効表面積係数Aは、上記第1隔壁層に一定量のPMを堆積させた場合に、PM全体量に対して上記第1隔壁層の内部に侵入して堆積したPM量の割合を示すものである。この有効表面積係数Aが高いほど、PMが上記第1隔壁層の外表面だけではなく、内部に侵入して堆積し、該第1隔壁層の細孔の内表面に担持された触媒に接触する機会が増える。本発明は、この有効表面積係数Aが平均細孔径Dを用いた上記式(1)によって導き出すことができることを見出したのである。
【0016】
また、上記第1隔壁層の表面積Sに有効表面積係数Aを乗じて算出される有効表面積S´は、上記第1隔壁層の表面積のうち、PMとの接触に有効に働く表面積を示すものとなる。この有効表面積S´が大きいほど、PMが上記第1隔壁層に担持された触媒に接触する面積が大きくなる。本発明は、この有効表面積S´がPMと上記第1隔壁層に担持された触媒との接触性の指標となることを見出したのである。
【0017】
そして、有効表面積S´の値を上記特定の範囲とすることにより、上記第1隔壁層の細孔径をPMが内部に侵入・堆積することのできる細孔径とし、内部空間を十分に確保すると共に、内部に侵入・堆積したPMが上記第1隔壁層の細孔の内表面に担持された触媒に接触する面積を十分に確保することができる。つまり、上記第1隔壁層の細孔径と表面積とのバランスを最適な範囲に制御することにより、内部空間の確保と接触面積の確保とを両立させ、PMと触媒との接触性を高めることができる。これにより、排ガス中のPMを上記第1隔壁層の内部に侵入・堆積させて十分に捕集することができると共に、捕集したPMを上記第1隔壁層に担持された触媒に接触させて効率よく燃焼させることができる。
【0018】
また、上記隔壁の上記複数の層における隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である。このように上記隔壁の各層間の熱膨張係数差を小さくしておくことにより、PM燃焼時の発熱によって層間に剥離やクラック等が発生することを十分に抑制することができる。これにより、上記排ガス浄化フィルタは、耐熱衝撃性に優れ、信頼性の高いものとなる。
【0019】
上記第2の発明の排ガス浄化フィルタの製造方法は、上記押出成形工程において、上記他層用材料からなる上記基材中間体を作製し、上記スラリー塗布工程において、上記基材中間体の上記所定の場所にスラリー状の上記第1隔壁層用材料を塗布する。その後、上記焼成工程において、上記他層用材料からなる上記基材中間体及び上記第1隔壁層用材料を同時に焼成する。
【0020】
そのため、排ガスの流れ方向において上流側に上記第1隔壁層、下流側に上記第1隔壁層以外の他の層が配置された上記隔壁を有する上記基材を作製することができる。これにより、上記隔壁を複数の層で構成することができ、かつ、各層の細孔径の個別制御が容易となるので、上記第1隔壁層の上記有効表面積S´の調整が必要な上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0021】
また、上記他層用材料からなる上記基材中間体と上記第1隔壁層用材料とを同時に焼成するため、両者の材料が互いに反応し、層間結合力の強い上記隔壁が形成される。これにより、上記基材の強度を向上させ、さらには上記排ガス浄化フィルタ全体の強度を向上させることができる。
【0022】
さらに、押出成形された上記基材中間体を焼成してなる上記他の層は、配向性を有するものとなるため、塗布された上記スラリーを焼成してなる上記第1隔壁層に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、上記他の層におけるAl23の化学組成が上記第1隔壁層よりも1〜4重量%大きくなるように、予め上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料を調整しておく。これにより、上記他の層の熱膨張係数を高め、上記第1隔壁層と上記他の層との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、上記隔壁において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0023】
上記第3〜第5の発明の排ガス浄化フィルタの製造方法は、上記押出成形工程において、上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体を作製し、上記スラリー塗布工程において、上記基材中間体の上記所定の場所にスラリー状の上記他層用材料を塗布する。その後、上記焼成工程において、上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成する。
【0024】
そのため、排ガスの流れ方向において上流側に上記第1隔壁層、下流側に上記第1隔壁層以外の他の層が配置された上記隔壁を有する上記基材を作製することができる。これにより、上記隔壁を複数の層で構成することができ、かつ、各層の細孔径の個別制御が容易となるので、上記第1隔壁層の上記有効表面積S´の調整が必要な上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0025】
また、上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体と上記他層用材料とを同時に焼成するため、両者の材料が互いに反応し、層間結合力の強い上記隔壁が形成される。これにより、上記基材の強度を向上させ、さらには上記排ガス浄化フィルタ全体の強度を向上させることができる。
【0026】
さらに、上記第3〜第5の発明では、押出成形された上記基材中間体を焼成してなる上記第1隔壁層は、配向性を有するものとなるため、塗布されたスラリーを焼成してなる上記他の層に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、上記第3の発明では、上記第1隔壁層におけるAl23の化学組成が上記他の層よりも1〜4重量%大きくなるように、予め上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料を調整しておく。これにより、上記第1隔壁層の熱膨張係数を高め、上記第1隔壁層と上記他の層との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、上記隔壁において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0027】
また、上記第4の発明では、上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料を同一の組成とすると共に、上記隔壁の上記第1隔壁層にのみ上記触媒を担持させる。これにより、上記第1隔壁層のマイクロクラックを減少させて熱膨張係数を高め、上記第1隔壁層と上記他の層との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、上記隔壁において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0028】
また、上記第5の発明では、上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料を同一の組成とすると共に、上記第1隔壁層における上記触媒の担持量が上記他の層よりも多くなるように、上記隔壁に上記触媒を担持させる。これにより、上記第1隔壁層のマイクロクラックを上記他の層よりも減少させて熱膨張係数を高め、上記第1隔壁層と上記他の層との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、上記隔壁において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0029】
このように、上記第1の発明によれば、排ガス中のパティキュレートを十分に捕集することができると共に、捕集したパティキュレートを効率よく燃焼させることができる排ガス浄化フィルタを提供することができる。
また、上記第2〜第5の発明によれば、上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1における、排ガス浄化フィルタを示す斜視図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの構造を示す断面図。
【図3】実施例1における、隔壁の構造を示す断面図。
【図4】実施例1における、(a)〜(c)基材を作製する際のスラリー塗布工程を示す説明図。
【図5】実施例1における、(a)栓部を配置した基材を示す説明図、(b)触媒担持工程を示す説明図。
【図6】実施例2における、基材を作製する際のスラリー塗布工程を示す説明図。
【図7】実施例4における、触媒担持工程(第2触媒担持工程)を示す説明図。
【図8】PMを堆積させた隔壁のSEM画像模式図。
【図9】隔壁の平均細孔径と有効表面積係数との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記第1の発明において、上記隔壁は、平均細孔径の異なる複数の層からなる。すなわち、上記隔壁は、2層で構成されていてもよいし、3層以上で構成されていてもよい。
また、上記隔壁(基材)を構成する材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ムライト、チタン酸アルミニウム等を用いることができる。
【0032】
また、上記隔壁における複数の層のうち、少なくとも、上記第1隔壁層には、上記触媒が担持されている。すなわち、上記触媒は、上記第1隔壁層にのみ担持させてもよいし、該第1隔壁層に加えてその他の層に担持させてもよい。
また、上記触媒としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属又はこれらの混合物等を用いることができる。
【0033】
また、上記隔壁の上記第1隔壁層は、表面積Sに有効表面積係数Aを乗じて算出した有効表面積S´が38mm2/mm3以上である。
上記隔壁の上記第1隔壁層の有効表面積S´が38mm2/mm3未満の場合には、PMが上記第1隔壁層に担持された触媒に接触する面積を十分に確保することができないおそれがある。
【0034】
また、上記隔壁の上記第1隔壁層の表面積Sは、X線CTスキャンを用いた3次元解析により求める。
具体的には、上記隔壁の断面層をX線CTスキャンにより所定の間隔で撮影し、その撮影した画像から3次元解析モデルを作製する。この3次元解析モデルから上記隔壁の上記第1隔壁層における単位体積当たりの表面積を求める。
【0035】
また、上記有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1・・・式(1))は、次のようにして導き出した。
まず、図8に示すごとく、基材912(隔壁92)に所定量(例えば、4g/L相当)のPMを堆積させ、それをSEMにて撮影する。次いで、画像処理により、隔壁92の外表面921に堆積したPMの面積X1、隔壁92の内部(細孔の内表面922)に堆積したPMの面積X2を求める。そして、有効表面積係数AをX2/(X1+X2)の式から求める。これを平均細孔径Dの異なる隔壁92を用いて行い、それぞれについて有効表面積係数Aを求める。
そして、図9に示すごとく、平均細孔径Dと有効表面積係数Aとの関係が得られる。この曲線Yを表したものが上記式(1)、すなわちA=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1である。
【0036】
また、上記隔壁の上記複数の層において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である。
上記隔壁の上記複数の層において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃を超える場合には、PM燃焼時の発熱によって上記隔壁の各層間に発生する剥離やクラック等を十分に抑制することができず、耐熱衝撃性が低下するおそれがある。
【0037】
また、上記隔壁の上記第1隔壁層は、平均細孔径が20〜40μmであり、かつ気孔率が65〜90%であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記第1隔壁層の内部にPMを十分に侵入させることができるといった効果や、上記第1隔壁層の表面積を十分に確保し、PMと触媒との接触性を高めることができるといった効果を十分に得ることができる。
【0038】
上記第1隔壁層の平均細孔径が20μm未満の場合には、上記第1隔壁層の内部にPMを十分に侵入させることができないおそれがある。
一方、平均細孔径が40μmを超える場合には、上記第1隔壁層の表面積が小さくなり、PMと触媒との接触性が低下するおそれがある。
【0039】
上記第1隔壁層の気孔率が65%未満の場合には、上記第1隔壁層の表面積が小さくなり、PMと触媒との接触性が低下するおそれがある。
一方、気孔率が90%を超える場合には、上記第1隔壁層の強度を十分に確保することができないおそれがある。
【0040】
また、上記隔壁は、上記第1隔壁層と、該第1隔壁層の下流側に隣接する第2隔壁層とからなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記第2隔壁層をPM捕集性能や強度の高い層とすることにより、上記隔壁全体としてのPM捕集性能、強度を高めることができる。
【0041】
また、上記第2隔壁層は、上記第1隔壁層よりも平均細孔径が小さく、その平均細孔径が5〜15μmであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記第1隔壁層を通り抜けたPMを上記第2隔壁層において捕集することができ、PM捕集性能を高めることができる。
【0042】
上記第2隔壁層の平均細孔径が上記第1隔壁層の平均細孔径よりも大きい場合には、PMが上記第2隔壁層をすり抜け易くなり、PM捕集性能が低下するおそれがある。
上記第2隔壁層の平均細孔径が5μm未満の場合には、圧力損失が増大するおそれがある。
一方、平均細孔径が15μmを超える場合には、PMが上記第2隔壁層をすり抜け易くなり、PM捕集性能が低下するおそれがある。
【0043】
また、上記隔壁の上記第2隔壁層は、上記第1隔壁層よりも気孔率が低く、その気孔率が35〜55%であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記第1隔壁層を通り抜けたPMを上記第2隔壁層において捕集することができ、PM捕集性能を高めることができる。また、上記第2隔壁層の強度を十分に確保し、さらには上記隔壁全体の強度を十分に確保することができる。
【0044】
上記第2隔壁層の気孔率が上記第1隔壁層の気孔率よりも高い場合には、上記第1隔壁層を通過したPMが上記第2隔壁層をすり抜け易くなり、上記隔壁のPM捕集性能が低下するおそれがある。
上記第2隔壁層の気孔率が35%未満の場合には、圧力損失が増大するおそれがある。
一方、気孔率が55%を超える場合には、PMが上記第2隔壁層をすり抜け易くなり、PM捕集性能が低下するおそれがある。
【0045】
また、上記隔壁の上記第1隔壁層は、上記第2隔壁層よりも厚みが大きいことが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記第1隔壁層の内部にPMを十分に侵入させることができるといった効果や、上記第1隔壁層の表面積を十分に確保し、PMと触媒との接触性を高めることができるといった効果を有効に発揮することができる。
【0046】
上記第2の発明において、上記隔壁を上記第1隔壁層及び上記第2隔壁層の2層で構成する場合には、上記他層用材料が上記第2隔壁層を形成する第2隔壁層用材料となり、上記他の層が上記第2隔壁層となる。
また、上記隔壁を3層以上で構成する場合には、上記スラリー塗布工程において、上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流入させる出口側の上記セルに面する部分に、上記第1隔壁層以外の各層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布すればよい。また、上記基材中間体と上記第1隔壁層用材料との間に塗布してもよい。これにより、3層以上で構成された上記隔壁を形成することができる。
【0047】
また、最終的に得られる上記排ガス浄化フィルタの上記基材の上記隔壁では、上記他の層におけるAl23の化学組成が上記第1隔壁層よりも1〜4重量%大きい。
例えば、上記他の層におけるAl23の化学組成が上記第1隔壁層よりも大きく、その量が1重量%未満の場合には、上記他の層の熱膨張係数を高めて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。一方、4重量%を超える場合には、上記他の層の熱膨張係数が高くなりすぎて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。
【0048】
また、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記他層用材料からなる上記基材中間体、上記第1隔壁層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数を減らすことができ、生産性を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0049】
また、上記焼成工程の後に、上記栓部用材料配置工程を行い、上記栓部用材料を焼成して上記栓部を作製する方法を用いることもできる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数が増えるものの、焼成時の割れ等の発生を抑制することができる。
【0050】
また、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記第1隔壁層の有効表面積S´が38mm2/mm3以上である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0051】
また、上記有機系造孔材としては、例えば、樹脂やカーボン等を用いることができる。
また、上記多孔質シリカとしては、ケイ酸をゲル化させた三次元構造のコロイダル状の多孔質のシリカ粉末であって、嵩密度が0.2〜1.0g/ccであり、平均粒子径が20〜150μm(好ましくは105〜150μm)のもの等を用いることができる。
また、上記コーディエライト化原料は、上記原材料に対して上記有機系造孔材の他、バインダー、水等を添加して作製することができる。
なお、上記の内容は、後述する上記第3〜第5の発明においても同様である。
【0052】
また、上記焼成工程の後、上記基材の上記隔壁全体に触媒を担持させる触媒担持工程を行うことが好ましい(請求項10)。
この場合には、上記第1隔壁層において捕集することができなかった微量のPMを上記触媒によって確実に燃焼させることができる。これにより、PM堆積による圧力損失の増大を抑制することができる。
ただし、上記隔壁の各層のAl23の化学組成を調整して熱膨張係数を制御するという効果を十分に発揮するためには、上記隔壁全体に上記触媒を均一に担持させることが好ましい。
【0053】
また、上記触媒担持工程において、上記触媒を上記隔壁に担持させる際には、スラリー状の触媒材料を上記隔壁における所望の場所に塗布し、乾燥させた後、熱処理を行う。これにより、上記触媒を上記隔壁における所望の場所に担持させることができる。
また、上記触媒としては、アルカリ金属等を用いることができる。特に、PM燃焼性能が高いデラフォサイト型のAg−Al23を用いることが好ましい。
なお、上記の内容は、後述する上記第3〜第5の発明においても同様である。
【0054】
上記第3〜第5の発明において、上記隔壁を上記第1隔壁層及び上記第2隔壁層の2層で構成する場合には、上記他層用材料が上記第2隔壁層を形成する第2隔壁層用材料となり、上記他の層が上記第2隔壁層となる。
また、上記隔壁を3層以上で構成する場合には、上記スラリー塗布工程において、上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流入させる入口側の上記セルに面する部分に、上記第1隔壁層以外の各層を形成するスラリー状の他層用材料を重ねて塗布すればよい。これにより、3層以上で構成された上記隔壁を形成することができる。
【0055】
上記第3の発明において、最終的に得られる上記排ガス浄化フィルタの上記基材の上記隔壁では、上記第1隔壁層におけるAl23の化学組成が上記他の層よりも1〜4重量%大きい。
例えば、上記第1隔壁層におけるAl23の化学組成が上記他の層よりも大きく、その量が1重量%未満の場合には、上記第1隔壁層の熱膨張係数を高めて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。一方、4重量%を超える場合には、上記第1隔壁層の熱膨張係数が高くなりすぎて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。
【0056】
また、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記第1隔壁層用材料からなる基材中間体、上記他層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数を減らすことができ、生産性を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0057】
また、上記焼成工程の後に、上記栓部用材料配置工程を行い、上記栓部用材料を焼成して上記栓部を作製する方法を用いることもできる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数が増えるものの、焼成時の割れ等の発生を抑制することができる。
【0058】
また、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記第1隔壁層の有効表面積S´が38mm2/mm3以上である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0059】
また、上記焼成工程の後、上記基材の上記隔壁全体に触媒を担持させる触媒担持工程を行うことが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記第1隔壁層において捕集することができなかった微量のPMを上記触媒によって確実に燃焼させることができる。これにより、PM堆積による圧力損失の増大を抑制することができる。
ただし、上記隔壁の各層のAl23の化学組成を調整して熱膨張係数を制御するという効果を十分に発揮するためには、上記隔壁全体に上記触媒を均一に担持させることが好ましい。
【0060】
上記第4及び第5の発明において、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記第1隔壁層用材料からなる基材中間体、上記他層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することが好ましい(請求項19)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数を減らすことができ、生産性を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0061】
また、上記焼成工程の後に、上記栓部用材料配置工程を行い、上記栓部用材料を焼成して上記栓部を作製する方法を用いることもできる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを製造する際に必要な焼成回数が増えるものの、焼成時の割れ等の発生を抑制することができる。
【0062】
また、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることが好ましい(請求項20)。
この場合には、上記第1隔壁層の有効表面積S´が38mm2/mm3以上である上記第1の発明の排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【0063】
上記第5の発明において、上記触媒担持工程では、上記隔壁全体に上記触媒を担持させる第1触媒担持工程と、その後に上記隔壁の上記第1隔壁層にのみ上記触媒をさらに担持させる第2触媒担持工程とを行うことが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記第1隔壁層における上記触媒の担持量が上記他の層よりも多くなるようにすることができる。
【0064】
また、上記第1触媒担持工程で担持させた上記触媒の重量をW1、上記第2触媒担持工程で担持させた上記触媒の重量をW2とした場合に、(W1+W2)/W1=1.1〜2.0の関係を満たすことが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記第1隔壁層と該第1隔壁層に隣接する上記他の層との熱膨張係数差を十分に小さくすることができる。
【0065】
上記触媒重量比(W1+W2)/W1の値が1.1未満の場合には、上記第1隔壁層の熱膨張係数を高めて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。
一方、上記触媒重量比(W1+W2)/W1の値が2.0を超える場合には、上記第1隔壁層に担持された触媒が細孔を埋めてしまうことにより、熱膨張係数が高くなりすぎて熱膨張係数差を小さくするという効果が十分に得られないおそれがある。
【実施例】
【0066】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタ及びその製造方法について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1、図2に示すごとく、多孔質の隔壁2を格子状に配して軸方向に延びる多数のセル3を設けた基材11と、セル3の両端のいずれか一方の端部を封止する栓部12とを有する。
隔壁2は、平均細孔径の異なる複数の層からなり、複数の層のうち、少なくとも、隔壁2を通過する際の排ガスGの流れ方向において最も上流側の層である第1隔壁層21には、排ガスG中のパティキュレート(PM)を燃焼させるための触媒(図示略)が担持されている。
【0067】
そして、第1隔壁層21について、X線CTスキャンを用いた3次元解析により求めた表面積をS(mm2/mm3)、平均細孔径をD(μm)とした場合に、表面積Sに有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1・・・式(1))を乗じて算出される有効表面積S´が38mm2/mm3以上である。
また、隔壁2の複数の層において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である。
以下、これを詳説する。
【0068】
図1に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、多孔質の隔壁2を四角形格子状に配して軸方向に延びる断面四角形状の多数のセル3を設けた円筒形状の基材11と、セル3の両端のいずれか一方の端部を封止する栓部12とを有している。
排ガス浄化フィルタ1は、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分として構成されている。
【0069】
図2に示すごとく、基材11のセル3のうち、排ガスGを流入させる入口側セル31の下流端と、隔壁2を通過した排ガスGを流出させる出口側セル32の上流端とには、栓部12が配置されており、セル3を封止している。
本例では、隣り合うセル3が交互に入口側セル31、出口側セル32となるように、栓部12が配置されている。基材11を軸方向から見ると、栓部12がいわゆる市松模様状に配置されている。
【0070】
図2、図3に示すごとく、基材11の隔壁2は、平均細孔径の異なる複数の層からなる。具体的には、隔壁2は、排ガスGの流れ方向において上流側の層である第1隔壁層21と、第1隔壁層21の下流側に隣接する第2隔壁層22とからなる。第1隔壁層21の厚みは300μmであり、第2隔壁層22の厚みは35μmである。
図3に示すごとく、第1隔壁層21の表面(外表面211及び細孔の内表面212)及び第2隔壁層22の表面(外表面221及び細孔の内表面222)には、排ガスG中のPMを燃焼させるための触媒(図示略)が担持されている。本例では、触媒としてデラフォサイト型Ag−Al23を用いた。
【0071】
また、第1隔壁層21は、平均細孔径が20〜40μmであり、気孔率が65〜90%である。
また、第2隔壁層22は、第1隔壁層21よりも平均細孔径が小さく、その平均細孔径が5〜15μmである。また、第2隔壁層22は、第1隔壁層21よりも気孔率が低く、その気孔率が35〜55%である。
なお、平均細孔径及び気孔率は、ポロシメータを用いた水銀圧入法により細孔容積を測定することにより求めることができる。
【0072】
また、第1隔壁層21及び第2隔壁層22は、上記化学組成のコーディエライトにより構成されている。ここで、第1隔壁層21におけるAl23の化学組成は、第2隔壁層22よりも1〜4重量%大きくなっている。また、隣接する第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差は、0.4×10-6/℃以下である。
なお、熱膨張係数は、熱膨張計を用いて熱膨張率を測定することにより求めることができる。
【0073】
そして、第1隔壁層21について、表面積をS(mm2/mm3)、平均細孔径をD(μm)とした場合に、その表面積Sに有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1)を乗じて算出される有効表面積S´が38mm2/mm3以上である。
なお、第1隔壁層21の表面積Sは、上述したとおり、X線CTスキャンを用いた3次元解析により求める。また、有効表面積係数Aは、上述した方法により求めた上記式(1)によって表されるものである(図7参照)。
【0074】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、特に基材11を作製するに当たっては、図4、図5に示すごとく、隔壁2における第1隔壁層21を形成する第1隔壁層用材料210を押出成形し、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110を作製する押出成形工程と、基材中間体110の表面のうち、排ガスGを流出させる出口側のセル3(出口側セル32)に面する部分に、隔壁2における第1隔壁層21以外の他の層(第2隔壁層22)を形成するスラリー状の他層用材料(第2隔壁層用材料220)を塗布するスラリー塗布工程と、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)を同時に焼成し、基材11を作製する焼成工程とを有する。
【0075】
そして、第1隔壁層用材料210及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第1隔壁層21に隣接する他の層(第2隔壁層22)となり、かつ、第1隔壁層21におけるAl23の化学組成が他の層(第2隔壁層22)よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料である。
以下、これを詳説する。
【0076】
排ガス浄化フィルタ1を製造するに当たっては、まず、多孔質シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料に有機系造孔剤、バインダー、水等を添加した後、混合機にて混合撹拌し、第1隔壁層用材料210(図4)を作製した。本例では、多孔質シリカとしては、ケイ酸をゲル化させた三次元構造のコロイダル状の多孔質のシリカ粉末であり、嵩密度が0.2〜1.0g/cc、平均粒子径が20〜150μmのものを用いた。また、原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加した。また、有機系造孔材としては、カーボンを用いた。
次いで、溶融シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナを含有する原材料にバインダー、水等を添加した後、混合機にて混合撹拌し、第2隔壁層用材料220(図4)を作製した。
【0077】
ここで、第1隔壁層用材料210(図4)及び第2隔壁層用材料220(図4)は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第2隔壁層22となり、かつ、第1隔壁層21におけるAl23の化学組成が第2隔壁層22よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料である。
【0078】
次いで、図4(a)に示すごとく、第1隔壁層用材料210を押出成形し、乾燥させた後、所望の長さに切断し、第1隔壁層用材料210よりなる隔壁を格子状に配して軸方向に延びる多数のセル3を設けた基材中間体110を作製した(押出成形工程)。
次いで、同図に示すごとく、基材中間体110の一方の端面111を覆うようにマスキングテープ81を貼り付け、第2隔壁層用材料220を配置するセル3(出口側セル32)に対応するマスキングテープ81にレーザ光を順次照射し、マスキングテープ81を溶融又は焼却除去した。
【0079】
次いで、図4(b)に示すごとく、基材中間体110を治具82にセットした後、基材中間体110の一方の端面111側に配置したスラリー状の第2隔壁層用材料220を基材中間体110の他方の端面112側からエアー吸引し、出口側セル32内を流通させた。これにより、図4(c)に示すごとく、基材中間体11の表面のうち、出口側セル32に面する部分に、スラリー状の第2隔壁層用材料220を塗布した。塗布した第2隔壁層用材料220は、その後乾燥させた(スラリー塗布工程)。
【0080】
次いで、図示を省略したが、溶融シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナを含有する原材料にバインダー、水等を添加した後、混合機にて混合撹拌し、栓部用材料120(図5(a))を作製した。そして、基材中間体110の両端面111、112を覆うようにマスキングテープを貼り付け、基材中間体110の両端面111、112の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去した。
【0081】
その後、スラリー状の栓部用材料120(図5(a))を入れた容器に基材中間体110の一方の端面111を浸漬させ、栓詰めすべきセル3の端部に栓部用材料120(図5(a))を適量浸入させ、配置した。また、基材中間体110の他方の端面112についても同様の工程を行った(栓部用材料配置工程)。
【0082】
次いで、図5(a)に示すごとく、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110を、基材中間体110に配置した第2隔壁層用材料220、栓部用材料120と共に同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、隔壁2(第1隔壁層21、第2隔壁層22)及びセル3を有する基材11と栓部12とを作製した(焼成工程)。
【0083】
次いで、酸化銀2.3g、θ−アルミナ1.0gをイオン交換水100ml中に分散させ、そこに酢酸2.4gを加えて撹拌した後、これを圧入容器に封入して175℃、24時間の条件で水熱合成した。これにより、スラリー状の触媒材料410(図5(b))を作製した。スラリー状の触媒材料410(図5(b))は、セル3の内部まで侵入することができるよう比較的低粘度(せん断速度10s-1の時、粘度10〜300mPa・s)とした。
【0084】
次いで、図5(b)に示すごとく、スラリー状の触媒材料410を入れた容器に基材11を浸漬させ、隔壁2全体に触媒材料410を含浸させた。そして、基材11の両端面111、112のそれぞれの側から吸引速度10〜40m/sでエアー吸引した。その後、基材11を100℃、5時間の条件で乾燥させ、さらに1000℃、5時間の条件で焼成した。これにより、隔壁2全体、すなわち第1隔壁層21の表面(外表面211及び細孔の内表面212)及び第2隔壁層22の表面(外表面221及び細孔の内表面222)に触媒を担持させた(触媒担持工程)。
以上により、図1〜図3に示す排ガス浄化フィルタ1を作製した。
【0085】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、隔壁2が複数の層(第1隔壁層21、第2隔壁層22)で構成されている。そして、排ガスGが最初に通過する第1隔壁層21の表面積Sに、平均細孔径Dを用いて上記式(1)で表される有効表面積係数Aを乗じて算出される有効表面積S´は、38mm2/mm3以上である。
【0086】
第1隔壁層21の有効表面積S´の値を上記特定の範囲とすることにより、第1隔壁層21の細孔径をPMが内部に侵入・堆積することのできる細孔径とし、内部空間を十分に確保すると共に、内部に侵入・堆積したPMが第1隔壁層21の細孔の内表面212に担持された触媒に接触する面積を十分に確保することができる。つまり、第1隔壁層21の細孔径と表面積とのバランスを最適な範囲に制御することにより、内部空間の確保と接触面積の確保とを両立させ、PMと触媒との接触性を高めることができる。これにより、排ガスG中のPMを第1隔壁層21の内部に侵入・堆積させて十分に捕集することができると共に、捕集したPMを第1隔壁層21に担持された触媒に接触させて効率よく燃焼させることができる。
【0087】
また、隔壁2において、隣接する第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である。このように層間の熱膨張係数差を小さくしておくことにより、PM燃焼時の発熱によって層間に剥離やクラック等が発生することを十分に抑制することができる。これにより、排ガス浄化フィルタ1は、耐熱衝撃性に優れ、信頼性の高いものとなる。
【0088】
また、本例では、隔壁2において、第1隔壁層21は、平均細孔径が20〜40μmであり、かつ気孔率が65〜90%である。そのため、第1隔壁層21の内部にPMを十分に侵入させることができるといった効果や、第1隔壁層21の表面積を十分に確保し、PMと触媒との接触性を高めることができるといった効果を十分に得ることができる。
【0089】
また、第2隔壁層22は、第1隔壁層21よりも平均細孔径が小さく、その平均細孔径が5〜15μmである。そのため、第1隔壁層21を通り抜けたPMを第2隔壁層22において捕集することができ、PM捕集性能を高めることができる。
【0090】
また、第2隔壁層22は、第1隔壁層21よりも気孔率が低く、その気孔率が35〜55%である。そのため、第1隔壁層21を通り抜けたPMを第2隔壁層22において捕集することができ、PM捕集性能を高めることができる。また、第2隔壁層22の強度を十分に確保し、さらには隔壁2全体の強度を十分に確保することができる。
【0091】
また、第1隔壁層21は、第2隔壁層22よりも厚みが大きい。そのため、第1隔壁層21の内部にPMを十分に侵入させることができるといった効果や、第1隔壁層21の表面積を十分に確保し、PMと触媒との接触性を高めることができるといった効果を有効に発揮することができる。
【0092】
また、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法は、押出成形工程において、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110を作製し、スラリー塗布工程において、基材中間体110の所定の場所にスラリー状の第2隔壁層用材料220を塗布する。その後、焼成工程において、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110及び第2隔壁層用材料220を同時に焼成する。
【0093】
そのため、排ガスGの流れ方向において上流側に第1隔壁層21、下流側に第2隔壁層22が配置された隔壁2を有する基材11を作製することができる。これにより、隔壁2を複数の層で構成することができ、かつ、各層の細孔径の個別制御が容易となるので、第1隔壁層21の有効表面積S´の調整が必要な本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0094】
また、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110と第2隔壁層用材料220とを同時に焼成するため、両者の材料が互いに反応し、層間結合力の強い隔壁2が形成される。これにより、基材11の強度を向上させ、さらには排ガス浄化フィルタ1全体の強度を向上させることができる。
【0095】
さらに、押出成形された基材中間体110を焼成してなる第1隔壁層21は、配向性を有するものとなるため、塗布されたスラリーを焼成してなる第2隔壁層22に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、第1隔壁層21におけるAl23の化学組成が第2隔壁層22よりも1〜4重量%大きくなるように、予め第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を調整しておく。これにより、第1隔壁層21の熱膨張係数を高め、第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、隔壁2において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0096】
また、スラリー塗布工程の後に、栓部12を形成する栓部用材料120をセル3の両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、焼成工程では、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110、第2隔壁層用材料220及び栓部用材料120を同時に焼成し、基材11及び栓部12を作製する。そのため、排ガス浄化フィルタ1を製造する際に必要な焼成回数を減らすことができ、生産性を向上させ、製造コストを削減することができる。
【0097】
また、第1隔壁層用材料210は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いる。そのため、第1隔壁層21の有効表面積S´が38mm2/mm3以上である本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0098】
また、焼成工程の後、基材11の隔壁2全体に触媒を担持させる触媒担持工程を行う。そのため、第1隔壁層21において捕集することができなかった微量のPMを触媒によって確実に燃焼させることができる。これにより、PM堆積による圧力損失の増大を抑制することができる。
【0099】
このように、本例の排ガス浄化フィルタ1によれば、排ガスG中のパティキュレート(PM)を十分に捕集することができると共に、捕集したパティキュレート(PM)を効率よく燃焼させることができる。また、本例の製造方法によれば、排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0100】
(実施例2)
本例は、図5、図6に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1の製造方法を変更した例である。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、特に基材11を作製するに当たっては、図5、図6に示すごとく、隔壁2における第1隔壁層21以外の他の層(第2隔壁層22)を形成する他層用材料(第2隔壁層用材料220)を押出成形し、他層用材料(第2隔壁層用材料220)からなる基材中間体110を作製する押出成形工程と、基材中間体110の表面のうち、排ガスGを流入させる入口側のセル3(入口側セル31)に面する部分に、隔壁2における第1隔壁層21を形成するスラリー状の第1隔壁層用材料210を塗布するスラリー塗布工程と、他層用材料(第2隔壁層用材料220)からなる基材中間体110及び第1隔壁層用材料210を同時に焼成し、基材11を作製する焼成工程とを有する。
【0101】
そして、第1隔壁層用材料210及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第1隔壁層21に隣接する他の層(第2隔壁層22)となり、かつ、他の層(第2隔壁層22)におけるAl23の化学組成が第1隔壁層21よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料である。
以下、これを詳説する。
【0102】
排ガス浄化フィルタ1を製造するに当たっては、まず、多孔質シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料に有機系造孔剤、バインダー、水等を添加した後、混合機にて混合撹拌し、第1隔壁層用材料210(図6)を作製した。本例では、多孔質シリカとしては、ケイ酸をゲル化させた三次元構造のコロイダル状の多孔質のシリカ粉末であり、嵩密度が0.2〜1.0g/cc、平均粒子径が20〜150μmのものを用いた。また、原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加した。また、有機系造孔材としては、カーボンを用いた。
次いで、溶融シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、アルミナを含有する原材料にバインダー、水等を添加した後、混合機にて混合撹拌し、第2隔壁層用材料220(図6)を作製した。
【0103】
ここで、第1隔壁層用材料210(図6)及び第2隔壁層用材料220(図6)は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第2隔壁層22となり、かつ、第2隔壁層22におけるAl23の化学組成が第1隔壁層21よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料である。
【0104】
次いで、図6(a)に示すごとく、第2隔壁層用材料220を押出成形し、乾燥させた後、所望の長さに切断し、第2隔壁層用材料220よりなる隔壁を格子状に配して軸方向に延びる多数のセル3を設けた基材中間体110を作製した(押出成形工程)。
次いで、同図に示すごとく、基材中間体110の一方の端面111を覆うようにマスキングテープ81を貼り付け、第1隔壁層用材料210を配置するセル3(入口側セル31)に対応するマスキングテープ81にレーザ光を順次照射し、マスキングテープ81を溶融又は焼却除去した。
【0105】
次いで、図6(b)に示すごとく、基材中間体110を治具82にセットした後、基材中間体110の一方の端面111側に配置したスラリー状の第1隔壁層用材料210を基材中間体110の他方の端面112側からエアー吸引し、入口側セル31内を流通させた。これにより、図6(c)に示すごとく、基材中間体11の表面のうち、入口側セル31に面する部分に、スラリー状の第1隔壁層用材料210を塗布した。塗布した第1隔壁層用材料210は、その後乾燥させた(スラリー塗布工程)。
【0106】
その後は、実施例1と同様に、栓部用材料配置工程、焼成工程及び触媒担持工程を順に行った(図5(a)、(b)参照)。
これにより、図1〜図3に示す排ガス浄化フィルタ1を作製した。
【0107】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法は、押出成形工程において、第2隔壁層用材料220からなる基材中間体110を作製し、スラリー塗布工程において、基材中間体110の所定の場所にスラリー状の第1隔壁層用材料210を塗布する。その後、焼成工程において、第2隔壁層用材料220からなる基材中間体110及び第1隔壁層用材料210を同時に焼成する。
【0108】
そのため、排ガスGの流れ方向において上流側に第1隔壁層21、下流側に第2隔壁層22が配置された隔壁2を有する基材11を作製することができる。これにより、隔壁2を複数の層で構成することができ、かつ、各層の細孔径の個別制御が容易となるので、第1隔壁層21の有効表面積S´の調整が必要な本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0109】
また、第2隔壁層用材料220からなる基材中間体110と第1隔壁層用材料210とを同時に焼成するため、両者の材料が互いに反応し、層間結合力の強い隔壁2が形成される。これにより、基材11の強度を向上させ、さらには排ガス浄化フィルタ1全体の強度を向上させることができる。
【0110】
さらに、押出成形された基材中間体110を焼成してなる第2隔壁層22は、配向性を有するものとなるため、塗布されたスラリーを焼成してなる第1隔壁層21に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、第2隔壁層22におけるAl23の化学組成が第1隔壁層21よりも1〜4重量%大きくなるように、予め第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を調整しておく。これにより、第2隔壁層22の熱膨張係数を高め、第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、隔壁2において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0111】
また、スラリー塗布工程の後に、栓部12を形成する栓部用材料120をセル3の両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、焼成工程では、第2隔壁層用材料220からなる基材中間体110、第1隔壁層用材料210及び栓部用材料120を同時に焼成し、基材11及び栓部12を作製する。そのため、排ガス浄化フィルタ1を製造する際に必要な焼成回数を減らすことができ、生産性を向上させ、製造コストを削減することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0112】
(実施例3)
本例は、図4、図5(a)、図7に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1の製造方法を変更した例である。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、特に基材11を作製するに当たっては、図4、図5(a)、図7に示すごとく、隔壁2における第1隔壁層21を形成する第1隔壁層用材料210を押出成形し、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110を作製する押出成形工程と、基材中間体110の表面のうち、排ガスGを流出させる出口側のセル3(出口側セル32)に面する部分に、隔壁2における第1隔壁層21以外の他の層(第2隔壁層22)を形成するスラリー状の他層用材料(第2隔壁層用材料220)を塗布するスラリー塗布工程と、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)を同時に焼成し、基材11を作製する焼成工程と、基材11の隔壁2に触媒を担持させる触媒担持工程とを有する。
【0113】
そして、第1隔壁層用材料210及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第1隔壁層21に隣接する他の層(第2隔壁層22)となり、かつ、触媒担持工程では、隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒を担持させる。
以下、これを詳説する。
【0114】
排ガス浄化フィルタ1を製造するに当たっては、実施例1と同様に、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を作製した後、押出成形工程、スラリー塗布工程、栓部用材料配置工程及び焼成工程を順に行った(図4(a)〜(c)、図5(a)参照)。
ここで、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第2隔壁層22となる。すなわち、両者は同一の組成を有する。
【0115】
次いで、実施例1と同様に、スラリー状の触媒材料410(図7)を作製した。そして、基材11の他方の端面112を覆うように、マスキングテープ83(図7)を貼り付けた。
次いで、図7に示すごとく、スラリー状の触媒材料410を入れた容器に基材11を浸漬させ、隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒材料410を含浸させた。そして、基材11の一方の端面111側から吸引速度10〜40m/sでエアー吸引した。その後、基材11を100℃、5時間の条件で乾燥させ、さらに1000℃、5時間の条件で焼成した。これにより、隔壁2における第1隔壁層21にのみ触媒を担持させた(触媒担持工程)。
以上により、図1〜図3に示す排ガス浄化フィルタ1を作製した。
【0116】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、押出成形された基材中間体110を焼成してなる第1隔壁層21は、配向性を有するものとなるため、塗布されたスラリーを焼成してなる第2隔壁層22に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を同一の組成とすると共に、隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒を担持させる。これにより、第1隔壁層21のマイクロクラックを減少させて熱膨張係数を高め、第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、隔壁2において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0117】
(実施例4)
本例は、図4、図5、図7に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1の製造方法を変更した例である。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、特に基材11を作製するに当たっては、図4、図5、図7に示すごとく、隔壁2における第1隔壁層21を形成する第1隔壁層用材料210を押出成形し、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110を作製する押出成形工程と、基材中間体110の表面のうち、排ガスGを流出させる出口側のセル3(出口側セル32)に面する部分に、隔壁2における第1隔壁層21以外の他の層(第2隔壁層22)を形成するスラリー状の他層用材料(第2隔壁層用材料220)を塗布するスラリー塗布工程と、第1隔壁層用材料210からなる基材中間体110及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)を同時に焼成し、基材11を作製する焼成工程と、基材11の隔壁2に触媒を担持させる触媒担持工程とを有する。
【0118】
そして、第1隔壁層用材料210及び他層用材料(第2隔壁層用材料220)は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第1隔壁層21に隣接する他の層(第2隔壁層22)となり、かつ、触媒担持工程では、第1隔壁層21における触媒の担持量が他の層(第2隔壁層22)よりも多くなるように、隔壁2に触媒を担持させる。
以下、これを詳説する。
【0119】
排ガス浄化フィルタ1を製造するに当たっては、実施例1と同様に、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を作製した後、押出成形工程、スラリー塗布工程、栓部用材料配置工程及び焼成工程を順に行った(図4(a)〜(c)、図5(a)参照)。
ここで、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする第1隔壁層21及び第2隔壁層22となる。すなわち、両者は同一の組成を有する。
【0120】
次いで、触媒担持工程を行った。本例では、隔壁2全体に触媒を担持させる第1触媒担持工程と、その後に隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒をさらに担持させる第2触媒担持工程とを行った。
具体的には、実施例1と同様に、スラリー状の触媒材料410(図5(b))を作製した。次いで、図5(b)に示すごとく、スラリー状の触媒材料410を入れた容器に基材11を浸漬させ、隔壁2全体に触媒材料410を含浸させた。そして、基材11の両端面111、112のそれぞれの側から吸引速度10〜40m/sでエアー吸引し、基材11を100℃、5時間の条件で乾燥させた。その後、第1触媒担持工程前後の基材11の重量を比較し、担持させた触媒の重量W1を求めた。
【0121】
次いで、基材11の他方の端面112を覆うように、マスキングテープ83(図7)を貼り付けた。
次いで、図7に示すごとく、スラリー状の触媒材料410を入れた容器に基材11を浸漬させ、隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒材料410を含浸させた。そして、基材11の一方の端面111側から吸引速度10〜40m/sでエアー吸引し、基材11を100℃、5時間の条件で乾燥させた。その後、第2触媒担持工程前後の基材11の重量を比較し、担持させた触媒の重量W2を求めた。本例では、(W1+W2)/W1=1.1〜2.0の関係を満たすようにした。
次いで、基材11を1000℃、5時間の条件で焼成した。これにより、第1隔壁層21における触媒の担持量が第2隔壁層22よりも多くなるように、隔壁2全体に触媒を担持させた(触媒担持工程)。
以上により、図1〜図3に示す排ガス浄化フィルタ1を作製した。
【0122】
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1の製造方法において、押出成形された基材中間体110を焼成してなる第1隔壁層21は、配向性を有するものとなるため、塗布されたスラリーを焼成してなる第2隔壁層22に比べて熱膨張係数が小さくなる傾向にある。
そこで、第1隔壁層用材料210及び第2隔壁層用材料220を同一の組成とすると共に、第1隔壁層21における触媒の担持量が第2隔壁層22よりも多くなるように、隔壁2に触媒を担持させる。これにより、第1隔壁層21のマイクロクラックを第2隔壁層22よりも減少させて熱膨張係数を高め、第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差を小さくすることができる。その結果、隔壁2において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下である本例の排ガス浄化フィルタ1を容易に製造することができる。
【0123】
また、触媒担持工程では、隔壁2全体に触媒を担持させる第1触媒担持工程と、その後に隔壁2の第1隔壁層21にのみ触媒をさらに担持させる第2触媒担持工程とを行う。これにより、第1隔壁層21における触媒の担持量が第2隔壁層22よりも多くなるようにすることができる。
【0124】
また、第1触媒担持工程で担持させた触媒の重量をW1、第2触媒担持工程で担持させた触媒の重量をW2とした場合に、(W1+W2)/W1=1.1〜2.0の関係を満たす。これにより、第1隔壁層21と第2隔壁層22との熱膨張係数差を十分に小さくすることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0125】
(実施例5)
本例は、本発明の排ガス浄化フィルタのPM燃焼性能について評価した例である。
本例では、表1に示すごとく、本発明品としての排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E4)と、比較品としての排ガス浄化フィルタ(試料C1〜C6)とを準備し、これらについてPM燃焼性能を調べた。
なお、排ガス浄化フィルタ(試料E1〜E4、試料C1〜C6)は、実施例1の排ガス浄化フィルタと同様の構成であり、触媒を担持させていないものである。また、セルの仕様は、12mil、300cpsiである。
【0126】
【表1】

【0127】
次に、PM燃焼性能の評価方法について説明する。
まず、排ガス浄化フィルタから直径30mm、長さ50mmのサンプルを切り出し、このサンプルに触媒を10g/L担持させた。そして、サンプルにPMを4g/L相当堆積させた。
【0128】
次いで、サンプルを排ガス分析装置にセットし、ガス流量20L/min(N2:18L/min、O2:2L/min)の条件でガスを流した。そして、電気炉にサンプルを入れ、電気炉の温度が650℃になるまで10℃/minの条件で昇温させた。このとき、PMが燃焼時に発生するCO2発生量を検知した。
【0129】
PM燃焼性能の判定は、CO2発生量のピーク時のCO2発生量を100%とした場合に、CO2発生量が50%となった時の温度(酸化時温度)を読み取り、この酸化時温度が従来(600℃)に比べて25%低減にあたる450℃以下となった場合には○、450°を超えた場合には×とした。
【0130】
表1にPM燃焼性能の評価結果を示す。
同表から、有効表面積S´が38mm2/mm3以上である本発明品E1〜E4は、酸化時温度が450℃以下となり、判定はすべて○であった。
一方、有効表面積S´が38mm2/mm3未満である比較品C1〜C6は、酸化時温度が450℃を超え、判定はすべて×であった。
【0131】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化フィルタは、優れたPM燃焼性能を有しており、捕集したPMを効率よく燃焼させることができることがわかった。また、これによって、PMが堆積した排ガス浄化フィルタを再生するために要する時間を大幅に短縮することができることがわかった。
【0132】
(実施例6)
本例は、本発明の製造方法により製造された排ガス浄化フィルタについて評価した例である。
本例では、表1に示すごとく、様々な製造方法を用いて排ガス浄化フィルタ(試料A1〜A15)を作製し、これらについて第1隔壁層と第2隔壁層との熱膨張係数差を調べた。
【0133】
なお、試料A1〜A15の排ガス浄化フィルタは、実施例1と同様の構成の排ガス浄化フィルタである。
また、試料A1〜A5は、実施例2と同様の製造方法により製造されたものである。また、試料A6〜A10は、実施例1と同様の製造方法により製造されたものである。また、試料A11は、実施例3と同様の製造方法により製造されたものである。また、試料A12〜A15は、実施例4と同様の製造方法により製造されたものである。
【0134】
また、試料A1〜A15において、第1隔壁層及び第2隔壁層の作製方法及び組成、触媒担持(全体、第1隔壁層のみ、全体+第1隔壁層のみ)、触媒重量比(W1+W2)/W1は、表2に示すとおりである。
また、試料A1〜A5において、第1隔壁層は、厚みが200μm、平均細孔径が32μm、気孔率が70%である。また、第2隔壁層は、厚みが150μm、平均細孔径が12μm、気孔率が50%である。
また、試料A6〜A15において、第1隔壁層は、厚みが300μm、平均細孔径が32μm、気孔率が70%である。また、第2隔壁層は、厚みが50μm、平均細孔径が12μm、気孔率が50%である。
【0135】
【表2】

【0136】
次に、第1隔壁層と第2隔壁層との熱膨張係数差の評価方法について説明する。
まず、第1隔壁層及び第2隔壁層について、熱膨張計を用いて熱膨張率を測定し、そこから熱膨張係数を求めた。そして、両者の熱膨張係数を比較し、熱膨張係数差を求めた。
熱膨張係数差の判定は、0.4×10-6/℃以下の場合には○、0.4×10-6/℃を超える場合には×とした。
【0137】
【表3】

【0138】
表3に、第1隔壁層及び第2隔壁層の熱膨張係数と両者の熱膨張係数差を示す。
試料A1〜A5について、第2隔壁層におけるAl23の化学組成が第1隔壁層と同じである試料A1は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃を超え、判定は×であった。
一方、第2隔壁層におけるAl23の化学組成が第1隔壁層よりも1〜4重量%大きい試料A2〜A5は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であり、判定は○であった。
【0139】
試料A6〜A10について、第1隔壁層におけるAl23の化学組成が第2隔壁層と同じである試料A6は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃を超え、判定は×であった。
一方、第1隔壁層におけるAl23の化学組成が第2隔壁層よりも1〜4重量%大きい試料A7〜A10は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であり、判定は○であった。
【0140】
試料A11は、第1隔壁層及び第2隔壁層の組成が同じであり、隔壁の第1隔壁層にのみ触媒を担持させたものである。試料A11は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であり、判定は○であった。
【0141】
試料A12〜A15について、第1隔壁層及び第2隔壁層の組成が同じであり、触媒重量比が1.0である試料A12は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃を超え、判定は×であった。
一方、第1隔壁層及び第2隔壁層の組成が同じであり、触媒重量比が1.1〜2.0である試料A13〜A15は、熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であり、判定は○であった。
【0142】
以上の結果から、本発明の製造方法によれば、隔壁において隣接する層同士(本例では、第1隔壁層と第2隔壁層)の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であり、耐熱衝撃性に優れ、信頼性の高い排ガス浄化フィルタを容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 排ガス浄化フィルタ
11 基材
12 栓部
2 隔壁
21 第1隔壁層
3 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁を格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを設けた基材と、上記セルの両端のいずれか一方の端部を封止する栓部とを有する排ガス浄化フィルタにおいて、
上記隔壁は、平均細孔径の異なる複数の層からなり、
該複数の層のうち、少なくとも、上記隔壁を通過する際の排ガスの流れ方向において最も上流側の層である第1隔壁層には、排ガス中のパティキュレートを燃焼させるための触媒が担持されており、
上記第1隔壁層について、X線CTスキャンを用いた3次元解析により求めた表面積をS(mm2/mm3)、平均細孔径をD(μm)とした場合に、上記表面積Sに有効表面積係数A(A=−4×10-8・D4+1.153×10-5・D3−1.225×10-3・D2+5.673×10-2・D−2.293×10-1)を乗じて算出される有効表面積S´が38mm2/mm3以上であり、
上記隔壁の上記複数の層において隣接する層同士の熱膨張係数差が0.4×10-6/℃以下であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記隔壁の上記第1隔壁層は、平均細孔径が20〜40μmであり、気孔率が65〜90%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記隔壁は、上記第1隔壁層と、該第1隔壁層の下流側に隣接する第2隔壁層とからなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記第2隔壁層は、上記第1隔壁層よりも平均細孔径が小さく、その平均細孔径が5〜15μmであることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記隔壁の上記第2隔壁層は、上記第1隔壁層よりも気孔率が低く、その気孔率が35〜55%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記隔壁の上記第1隔壁層は、上記第2隔壁層よりも厚みが大きいことを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成する他層用材料を押出成形し、該他層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流入させる入口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層を形成するスラリー状の第1隔壁層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記他層用材料からなる上記基材中間体及び上記第1隔壁層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、該他の層におけるAl23の化学組成が上記第1隔壁層よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記他層用材料からなる上記基材中間体、上記第1隔壁層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記焼成工程の後、上記基材の上記隔壁全体に触媒を担持させる触媒担持工程を行うことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記第1隔壁層におけるAl23の化学組成が上記他の層よりも1〜4重量%大きくなるように調整されたコーディエライト化原料であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体、上記他層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記焼成工程の後、上記基材の上記隔壁全体に触媒を担持させる触媒担持工程を行うことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程と、
上記基材の上記隔壁に触媒を担持させる触媒担持工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記触媒担持工程では、上記隔壁の上記第1隔壁層にのみ上記触媒を担持させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
上記隔壁における上記第1隔壁層を形成する第1隔壁層用材料を押出成形し、該第1隔壁層用材料からなる基材中間体を作製する押出成形工程と、
上記基材中間体の表面のうち、排ガスを流出させる出口側の上記セルに面する部分に、上記隔壁における上記第1隔壁層以外の他の層を形成するスラリー状の他層用材料を塗布するスラリー塗布工程と、
上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体及び上記他層用材料を同時に焼成し、上記基材を作製する焼成工程と、
上記基材の上記隔壁に触媒を担持させる触媒担持工程とを有し、
上記第1隔壁層用材料及び上記他層用材料は、共に、最終的に、化学組成がSiO2:45〜55重量%、Al23:33〜42重量%、MgO:12〜18重量%よりなるコーディエライトを主成分とする上記第1隔壁層及び該第1隔壁層に隣接する上記他の層となり、かつ、上記触媒担持工程では、上記第1隔壁層における上記触媒の担持量が上記他の層よりも多くなるように、上記隔壁に上記触媒を担持させることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記触媒担持工程では、上記隔壁全体に上記触媒を担持させる第1触媒担持工程と、その後に上記隔壁の上記第1隔壁層にのみ上記触媒をさらに担持させる第2触媒担持工程とを行うことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記第1触媒担持工程で担持させた上記触媒の重量をW1、上記第2触媒担持工程で担持させた上記触媒の重量をW2とした場合に、(W1+W2)/W1=1.1〜2.0の関係を満たすことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記スラリー塗布工程の後に、上記栓部を形成する栓部用材料を上記セルの両端のいずれか一方の端部に配置する栓部用材料配置工程を行い、上記焼成工程では、上記第1隔壁層用材料からなる上記基材中間体、上記他層用材料及び上記栓部用材料を同時に焼成し、上記基材及び上記栓部を作製することを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれか1項に記載の排ガス浄化フィルタの製造方法において、上記第1隔壁層用材料は、少なくとも、シリカ、タルク、水酸化アルミニウムを含有する原材料100重量部に対して有機系造孔材を30〜80重量部添加したコーディエライト化原料であり、上記原材料中のシリカとして多孔質シリカを用いることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−177704(P2011−177704A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259411(P2010−259411)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】