説明

排ガス浄化用触媒およびこれを用いた排ガス浄化方法

【課題】貴金属を被覆物質で被覆することでシンタリングが抑制されるだけでなく、且つ、優れた触媒性能を有する排ガス浄化用触媒、および当該排ガス浄化用触媒を用いて効率よく内燃機関の排気ガスを浄化する方法を提供する。
【解決手段】排ガス浄化用触媒は、貴金属2と酸化セリウム3とからなる複合体が、ランタン含有アルミナ1によって被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスの浄化用触媒およびこれを用いた排ガス浄化方法に関するものであり、詳しくは、高温耐久処理後であっても、内燃機関からの排出ガスを効率良く浄化することができる排ガス浄化用触媒およびこれを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムアルコキシド由来のAlとCeOおよびLaとの複合酸化物を用いた担体は、高い表面積安定性を有し、該担体に貴金属を担持した触媒は、自動車模擬排ガスの浄化性能が高いことが開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、アルミウムアルコキシド由来の多孔質酸化物よりなる担体と酸素吸蔵放出材とが原子レベルで複合化された酸化物複合体に金属が担持された触媒により、金属および酸素吸蔵放出材の粒成長が抑制されることが開示されている(特許文献2)。
【0004】
一方、ゾルゲル法により作成したPt/SiO触媒は、Pt粒子がSiOによって被覆されており、Pt粒子のシンタリングを抑制できることが開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−230425号公報(平成1年(1989年)9月13日公開)
【特許文献2】特開平11−347410号公報(平成11年(1999年)12月21日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M. Azomoza, T. Lopez, R. Gomez, R. D. Gonzalez, “Synthesis of high surface area supported Pt/SiO2 catalysts from H2PtCl6・6H2O by the sol-gel method”, Catalysis Today, 21 October 1992, Volume 15, Issues 3-4, p.547-554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に記載のいずれの触媒においても、貴金属粒子の大部分は担持基材表面上に存在するため、貴金属のシンタリングに対する物理的障壁が少なく、高温使用時や長時間の高温耐久処理時には貴金属粒子のシンタリングが生じ易く、性能低下を招くという問題がある。
【0008】
これに対し、非特許文献1に記載の方法を用いて、貴金属をSiO等の被覆物質で被覆することにより、高温耐久処理時の貴金属粒子のシンタリングを抑制することはできるが、触媒性能が十分であるとはいえない。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シンタリングが抑制されるだけでなく、且つ、優れた触媒性能を有する排ガス浄化用触媒、および当該排ガス浄化用触媒を用いて効率よく内燃機関の排気ガスを浄化する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に鑑み鋭意検討した結果、本発明者は、貴金属を被覆物質で被覆することにより、高温耐久処理時の貴金属粒子のシンタリングを抑制することができることを見出した。しかし、このような被覆状態では、触媒活性成分である貴金属周辺での空燃比変動の緩和が十分に起こらないのではないかと考えた。そして、ランタン含有アルミナにより、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体(以下、「貴金属−酸化セリウム複合体」とも言う)を被覆したところ、シンタリングが抑制されるだけでなく、優れた触媒性能を有する排ガス浄化用触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、ランタン含有アルミナを用いて貴金属と酸化セリウムとからなる複合体を被覆するため、触媒の耐熱性を向上させ、シンタリングを抑制することが可能となるだけでなく、酸素吸収率を高く発現させることができ、触媒性能を高く保持することができる。従って、高温耐久処理後であっても、内燃機関からの排ガスを効率よく浄化することができる。すなわち、貴金属をアルミナで被覆することによる耐熱性向上と、空燃比変動の緩和能力の低下抑制とを両立可能であり、貴金属が被覆された状態であっても高い酸素吸蔵放出能を有する排ガス浄化用触媒、および当該排ガス浄化用触媒を用いて効率よく内燃機関の排気ガスを浄化する方法を提供することが可能となる。
【0013】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒では、上記複合体において、貴金属と酸化セリウムとの接触面に貴金属とセリウムとからなる化合物が形成されていることが好ましい。貴金属と酸化セリウムとの接触面に形成された上記化合物は、貴金属と酸化セリウムとが接触して複合体を形成していることを示す指標となる。よって、貴金属と酸化セリウムとの接触面に上記化合物が形成された触媒は、酸素吸収率が高く、触媒性能が高い触媒であるといえる。
【0014】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒では、上記複合体における上記酸化セリウムの含有量が上記化合物の含有量に比して大きいことが好ましい。上述したように、貴金属と酸化セリウムとの接触面に形成された上記化合物は、貴金属と酸化セリウムとが接触して複合体を形成していることを示す指標となる。しかしながら、形成された上記化合物は、もはや酸素吸蔵放出材としての機能を有さない。従って、上記酸化セリウムの含有量が上記複合体における化合物の含有量に比して大きいことにより、酸素吸収率を高く発現させることができ、触媒性能を高く保持することができる。
【0015】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒では、上記貴金属は、ロジウムであることが好ましい。ロジウムは、三元触媒性能が高いため、上記貴金属としてロジウムを選択することにより効率よく排ガスを浄化することができる。
【0016】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、上記化合物が、CeRhであることが好ましい。CeRhは、ロジウムと酸化セリウムとが接触して複合体を形成していることを示す指標となる。よって、ロジウムと酸化セリウムとの接触面にCeRhが形成された触媒は、酸素吸収率が高く、触媒性能が高い触媒であるといえる。
【0017】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、上記酸化セリウムの含有量が、貴金属と酸化セリウムとランタンとアルミナとの合計量に対して1重量%〜30重量%であることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、触媒活性成分である貴金属周辺で好適に空燃比変動の緩和が起こる。
【0019】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、温度が950℃〜1000℃である内燃機関の排ガスに曝された後(以下、本明細書においてにおいて「高温耐久処理後」と称することがある)も、ランタン含有アルミナによって被覆された複合体を含有することが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、高温耐久処理後でもなお、排ガス浄化用触媒は、ランタン含有アルミナによって被覆された上記複合体を含有している。そのため、高温耐久処理後であっても、上記被覆層内で酸素吸蔵放出が行われうる。よって、高温耐久処理後でもなお、安定的に排ガスを浄化することができる。
【0021】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、温度が950℃〜1000℃である内燃機関の排ガスに曝された後の露出貴金属表面積が、当該排ガスに曝される前の露出貴金属表面積に対して0%〜87%減少していることが好ましい。
【0022】
露出貴金属表面積の減少率が上記範囲であれば、高温耐久処理後であっても、アルミナの熱収縮、および貴金属のシンタリングが高度に抑制されているといえる。したがって、高温耐久処理後でも内燃機関からの排ガスをより効率よく浄化することができる。
【0023】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、酸素吸収率が30〜100%であることが好ましい。酸素吸収率が上記範囲であれば、酸素吸蔵放出能が高い触媒であるといえる。従って、高温耐久処理後でも内燃機関からの排ガスをより効率よく浄化することができる。
【0024】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、三次元構造体上に担持されてなることが好ましい。表面積が大きい三次元構造体を用いることにより、排ガス浄化用触媒を効率よく担持することができる。したがって、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化効率を向上させることができる。
【0025】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない、白金および/またはパラジウムを含んでなることが好ましい。これらの貴金属は触媒活性を有するので、ロジウムと併用することによって、本発明にかかる排ガス浄化用触媒にさらに高い排ガス浄化能力を付与することができる。
【0026】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、さらに、耐火性無機酸化物を含んでなることが好ましい。当該耐火性無機酸化物は、本発明にかかる排ガス浄化用触媒を分散させることができるため、排ガスを効率的に排ガス浄化用触媒成分に接触させることができる。したがって、高温下における排ガス浄化をより効率的に行うことができる。
【0027】
発明にかかる排ガス洗浄用触媒は、さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物を含んでなることが好ましい。
【0028】
上記酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物は、酸素吸蔵放出材として機能するとともに、助触媒として作用することができ、排ガス浄化用触媒の耐熱性を向上させたり、排ガス浄化用触媒の活性種による酸化・還元反応を促進させたりする作用を有するものである。したがって、高温下における排ガス浄化をより効率的に行うことができる。
【0029】
本発明にかかる排ガス浄化方法は、本発明にかかる排ガス浄化用触媒を、内燃機関の排ガスに曝す工程を含むことを特徴としている。
【0030】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、上述したように、耐熱性と酸素吸蔵放出能とを併せ持っている。よって、上記構成によれば、貴金属の触媒活性を十分に活用した排ガス処理を行うことができ、高温下での排ガス浄化を非常に効率的に行うことができる。
【0031】
本発明にかかる排ガス浄化方法では、上記内燃機関の排ガスの温度は0℃〜750℃であり、上記排ガス浄化用触媒は、上記内燃機関の排ガスに曝される前に、温度が950℃〜1000℃である空燃比が14.1〜15.1の排ガスに曝されていてもよい。
【0032】
上記構成によれば、内燃機関を搭載した自動車等の通常運転時に内燃機関から発生する排ガスを浄化できるのはもちろんのこと、自動車等の運転中または排ガス浄化用触媒の耐久試験中に、上記排ガス浄化用触媒に950℃〜1000℃の高温の排ガスが流入することがあったとしても、貴金属のシンタリングを抑制し、且つ、貴金属周辺において、酸素吸蔵放出能を発揮することができ空燃比変動の緩和が起こる。また、上記空燃比は、ガソリンエンジンの理論空燃比の近傍の値である。それゆえ、上記構成によれば、特にガソリンエンジンから排出された排ガスの浄化を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、以上のように、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されているという構成を備えているため、高温耐久処理後であっても、貴金属のシンタリングを抑制し、且つ高い酸素吸蔵放出能を有することが可能となり、高温耐久処理後においても内燃機関からの排出ガスを効率良く浄化することができるという効果を奏する。
【0034】
また、本発明にかかる排ガス洗浄方法は、以上のように、本発明にかかる排ガス洗浄用触媒を、内燃機関の排ガスに曝す工程を含む構成を備えているので、貴金属の触媒活性を十分に活用した排ガス処理を行うことができ、高温下での排ガス浄化を非常に効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、高温耐処理前における本発明にかかる排ガス浄化用触媒の状態を示す模式図であり、(b)は、貴金属と酸化セリウムとの接触面の状態を示す模式図である。
【図2】ランタン含有アルミナによって貴金属が被覆され、且つ酸化セリウムは上記貴金属とは近接せずに担持された状態を示す模式図である。
【図3】含浸法を用いて作製される従来の排ガス浄化用触媒における貴金属とアルミナとの担持状態を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例で製造された排ガス浄化用触媒の昇温評価における50%洗浄温度(T50)を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例で製造された排ガス浄化用触媒の酸素吸収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態について詳細に説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「A〜B」は「A以上、B以下」を意味し、例えば明細書中で「1重量%〜30重量%」と記載されていれば「1重量%以上、30重量%以下」を示す。また本明細書中の「および/または」は、いずれか一方または両方を意味する。
【0037】
〔1.排ガス浄化用触媒〕
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されていればよい。すなわち、本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、ランタン含有アルミナにより被覆された貴金属−酸化セリウム複合体を含有するものであればよい。
【0038】
上記「貴金属粒子と酸化セリウム粒子とが複合体を形成し、ランタン含有アルミナに被覆されている」状態を、図1(a)を参照しながら説明する。図1(a)は、高温耐処理前における本発明にかかる排ガス浄化用触媒の状態を示す模式図である。
【0039】
図1(a)に示すように、ランタン含有アルミナ1は、貴金属2と酸化セリウム3との複合体の周囲に近接して担持される。上記「近接して担持される」とは、貴金属2または酸化セリウム3とランタン含有アルミナ1とが一部接触している状態を指す。上記「近接して担持された状態」では、上記、貴金属2または酸化セリウム3とランタン含有アルミナ1との接触部において、貴金属2または酸化セリウム3に吸着可能な分子(例えば酸素(O)や一酸化炭素(CO))が吸着できない状態を指す。
【0040】
なお、図1及び図2において、ランタン含有アルミナ1は好ましくはランタン含有アルミナ粒子であり、貴金属2は好ましくは貴金属粒子であり、酸化セリウム3は好ましくは酸化セリウム粒子である。また、図1(a)及び図2において、符号1は一つのランタン含有アルミナしか指していないが、白色の不定形で表されている物質はすべてランタン含有アルミナである。また、符号3は一つの酸化セリウムしか指していないが、灰色で表されているのは全て酸化セリウムである。上述したように、ランタン含有アルミナ、貴金属および酸化セリウムは粒子であることが好ましい。かかる場合、ランタン含有アルミナおよび酸化セリウムは、一次粒子であっても二次粒子であってもよいが、一次粒子が凝集した二次粒子であることがより好ましい。また、ランタン含有アルミナおよび酸化セリウムの粒子の平均粒子径は0.5〜150μm、好ましくは1〜50μmである。
【0041】
ここで、上記「貴金属と酸化セリウムとからなる複合体」を図1(a)及び(b)を参照しながら説明する。図1(a)に示すように、「貴金属と酸化セリウムとからなる複合体」とは、貴金属2および酸化セリウム3のそれぞれ1原子以上が、少なくとも一部接触してなる複合体であり、貴金属と酸化セリウムとの固溶体、貴金属と酸化セリウム又はセリウムとの混合物、貴金属とセリウムとの化合物等、又はこれらの2以上の組み合わせを指す。貴金属粒子と酸化セリウム粒子とが複合体を形成した状態であれば、酸化セリウム3が貴金属2の近傍に存在するため、酸素過剰のガスが流入した場合に、酸化セリウム3が酸素を吸蔵するため、貴金属2の周囲のガス雰囲気を酸素過剰から緩和することができる。一方、酸素が不足する還元雰囲気下では、酸化セリウム3は、酸素過剰雰囲気下において吸蔵した酸素が貴金属2の周囲に存在するため、貴金属2によって酸素が有効に活用されうる。
【0042】
図1(b)は、貴金属と酸化セリウムとの接触面の状態を示す模式図である。図1(b)に示すように、上記貴金属と酸化セリウムとからなる複合体において、貴金属と酸化セリウムとの接触面には貴金属と酸化セリウムとからなる化合物4が形成されている。かかる化合物の形成は、「ランタン含有アルミナにより被覆された貴金属−酸化セリウム複合体」を、X線回折により分析することにより、確認することができる。なお、後述するように、かかる化合物の存在は、高温耐久処理前及び後において、確認することができる。
【0043】
図2は、ランタン含有アルミナ1によって貴金属2が被覆されているが、酸化セリウム3が貴金属2とは近接せずに担持された状態を示す模式図である。本発明に係る排ガス浄化用触媒と比較すると、かかる構成では、酸化セリウム3が貴金属2と近接していないため、高温耐久処理前及び後において、X線回折により分析すると、貴金属と酸化セリウムとからなる化合物の存在を確認することができない。また、かかる担持状態では、酸化セリウム3が貴金属2とは近接して担持されていないため、酸素過剰のガスが流入した場合に酸化セリウム3は酸素を吸蔵するが、貴金属2の周囲では過剰の酸素が残存することになると考えられる。一方、酸素が不足する還元雰囲気下では、酸化セリウム3は、酸素過剰雰囲気下において吸蔵した酸素を放出するが、貴金属2の周囲には酸素が放出されないため、貴金属2によって酸素が有効に活用されないと考えられる。
【0044】
また、図3は、含浸法を用いて作製される従来の排ガス浄化用触媒における貴金属2とアルミナ1との担持状態を示す模式図である。かかる担持状態では、図3に示すように、大部分の貴金属粒子は、担体表面に担持される。図3示すような担持状態では、高温耐久処理前及び後において、X線回折により分析を行っても、酸化セリウム3に帰属するピークがより明確に検出されるため、貴金属と酸化セリウムとからなる化合物のピークは検出され難い。また、酸化セリウム3は、貴金属2の比較的近傍に担持されるため、酸素過剰雰囲気下においては、貴金属2の周囲の酸素を酸化セリウム3が吸収し、還元雰囲気下では、酸化セリウム3から放出された酸素を貴金属2が利用することが可能である。しかしながら、貴金属2は、図1(a)および図2のように被覆されていないためシンタリングを起こしやすい。
【0045】
上記「ランタン含有アルミナ」とは、特に限定されるものではなく、ランタンとアルミナとが混合されているものであればよい。ランタン含有アルミナとしては、例えば、酸化ランタン(La)および/またはランタン−アルミナ複合酸化物(LaAlOなど)とアルミナとの混合物を挙げることができる。ランタンは酸化ランタンおよび/またはランタン−アルミナ複合酸化物(LaAlOなど)の形態で含有されることが好ましく、酸化ランタン(La)の形態で含有されることがより好ましい。また、「ランタン含有アルミナ」は、酸化ランタンとランタン−アルミナ複合酸化物とを共に含むものであることがさらに好ましい。
【0046】
上記「ランタン含有アルミナ」におけるランタンの含有量(La換算)は、ランタンとアルミナ(Al換算)との合計量に対して、0.5〜30重量%であることが好ましく、2〜20重量%であることがより好ましい。ランタンの含有量が0.5重量%以上であることにより、高温耐久処理後に貴金属がアルミナ中に固溶しにくくなるため好ましい。また、ランタンの含有量が30重量%以下であることにより、アルミナと比較して表面積が小さいランタンの割合が大きくなりすぎないため、他の触媒及び/又は助触媒成分の分散性の低下させにくいため好ましい。
【0047】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒に用いられる、上記貴金属としては、特に限定されるものではなく、例えば、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、これらの2種類以上の組み合わせ等を挙げることができる。中でも、三元触媒性能が高いことから、上記貴金属は、ロジウム、白金、またはパラジウムであることがより好ましく、窒素酸化物の浄化率が高いことから、ロジウムであることがさらに好ましい。
【0048】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒における酸化セリウムの含有量(CeO換算)は、貴金属(金属換算)と酸化セリウムとランタン(ランタン換算)とアルミナ(Al換算)の合計量に対して1〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。酸化セリウムの含有量が1重量%以上であることにより触媒活性成分である貴金属周辺で好適に空燃比変動の緩和が起こるため好ましい。また、30重量%以下であることにより、排ガスがロジウムとも接触しやすいため好ましい。
【0049】
本発明にかかる排ガス洗浄用触媒においては、上記酸化セリウムの含有量が上記貴金属と酸化セリウムとからなる複合体における、上記貴金属と酸化セリウムとからなる化合物の含有量に比して大きいことが好ましい。なお、ここで、上記「含有量」の大小は、X線回折分析によるピークの強度を比較することによって行うことができる。よって、本発明にかかる排ガス洗浄用触媒では、CeOおよびCeRhの最大強度を示す回折角(CeOは28.5547°±0.017°、CeRhは32.7652°±0.017°)におけるピークの強度を求め、CeOに帰属する28.5547°±0.017°におけるピークの強度が、CeRhに帰属する32.7652°±0.017°におけるピークの強度よりも強いことが好ましい。さらに、上記CeOおよびCeRhに帰属する回折角に近い位置に回折角を有する物質を含む場合には、当該物質に帰属するピークとCeOおよびCeRhに帰属するピークを分離した後のピーク強度を求めることとする。
【0050】
貴金属と酸化セリウムとからなる化合物の含有量に対する酸化セリウムの含有量の比は、排ガス浄化用触媒における酸化セリウムの含有量等に応じて変動するが、酸化セリウムの含有量が上述した1〜30重量%の範囲においては、酸化セリウムの含有量が上記複合体における上記化合物の含有量に比して大きいことにより、酸化セリウムの酸素吸蔵放出材としての機能が発揮され、貴金属周辺の空燃比変動の緩和が好適に起こるため好ましい。
【0051】
本発明の一実施形態において、上記貴金属がロジウムである場合、上記化合物はCeRhである。X線回折分析において、上記CeRhに帰属するピークの強度の値に対する酸化セリウムに帰属するピークの強度の値(以下、「CeO/CeRh」という)は、1.0より大きく3.3未満であることがより好ましく、1.0より大きく2.8未満であることがさらに好ましい。「CeO/CeRh」がかかる範囲内であれば酸素吸蔵放出能を有する酸化セリウムが存在し、且つCeRhも存在していることから、酸化セリウムがロジウムと近接した状態で担持されており、酸素吸蔵放出能を有効に発揮させることができる。
【0052】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒では、温度が950℃〜1000℃である内燃機関の排ガスに曝された後においても、ランタン含有アルミナによって被覆された複合体を含有することが好ましい。
【0053】
本発明の実施例では、950℃〜1000℃を、高温耐久処理の閾値とした。1000℃を閾値としたのは、高速運転時や耐久試験時などに触媒床温度が達する最高温度が1000℃程度であり、触媒床温度がこの温度以上に達するのは、エンジン制御エラーなどにより燃料が過剰に供給された場合や、触媒に付着した煤や燃料が異常燃焼した場合などであり、通常運転時には想定する必要はないためである。
【0054】
また、950℃より低い温度での高温耐久処理では、貴金属のシンタリングが起こりにくいため、本発明において貴金属のシンタリングを確認するための高温耐久処理温度としては用いない。
【0055】
高温耐久処理時間については特に限定されるものではないが、5〜100時間であることが好ましく、10〜50時間であることがより好ましい。5時間未満では高温耐久処理が十分ではなく、貴金属のシンタリング耐性を確認できない場合があるため好ましくない。また、100時間を超えて高温耐久処理を行っても、それ以上の状態変化は小さいにも関わらず高温耐久処理にかかるコストが増大するため好ましくない。
【0056】
一実施形態において、本発明にかかる排ガス浄化用触媒では、温度が950℃〜1000℃の酸素過剰ガスに曝された後においても、ランタン含有アルミナによって被覆された複合体を含有する。すなわち、触媒床温度が達しうる最高温度に曝されても、貴金属のシンタリングが抑制されるとともに、酸化セリウムによる酸素吸蔵放出が貴金属粒子近傍で行われるため、貴金属周辺においても空燃比変動の緩和が起こる。よって、高温耐久処理後であってもなお、貴金属を排ガス浄化用触媒として効率よく機能させることが可能である。
【0057】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒を上記ガスに曝す方法は特に限定されるものではない。例えば、内燃機関の排気管の途中に上記排ガス浄化用触媒を設置することによって、上記排ガス浄化用触媒を上記ガスに曝すことができる。
【0058】
また、上記ガスは、特に限定されるものではないが、内燃機関の排ガスであることが好ましい。内燃機関の排ガスの成分としては、例えば、窒素酸化物(例えば、NO、NO、NO)、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素、水素、アンモニア、水、二酸化硫黄、炭化水素全般を挙げることができる。
【0059】
内燃機関としては、特に限定されるものではない。例えば、ガソリンエンジン、ハイブリッドエンジン、天然ガス、エタノール、ジメチルエーテル等を燃料として用いるエンジンなどを用いることができる。中でもガソリンエンジンであることが好ましい。
【0060】
ここで、本明細書において「ガスに曝す」とは、排ガス浄化用触媒がガスと接触することをいい、触媒表面の全部分がガスと接触する場合だけでなく、触媒表面の一部分がガスと接触する場合も含まれる。
【0061】
上記「シンタリング」とは、高温に曝されることで粒子同士が結合して粗大化することを指す。触媒成分である貴金属がシンタリングを起こすと、貴金属粒子の表面積が減少するため、触媒活性が低下するため好ましくない。
【0062】
貴金属粒子のシンタリング抑制の観点から考えると、温度が950℃〜1000℃であるガソリンエンジン車からの排ガスに曝された後の露出貴金属表面積が、上記排ガスに曝される前の露出貴金属表面積に対して0%〜87%減少していることが好ましく、0%〜40%減少していることがより好ましい。
【0063】
なお、上記「露出貴金属表面積」とは、排ガス浄化用触媒1gに吸着したCO分子数×(貴金属の格子定数)で表される値であり、上記「CO分子数」はCOパルス吸着法(触媒、1986年,vol.28,No.1を参照)によって求めることができる。例えば、当該貴金属がロジウムである場合、格子定数は3.8030である。
【0064】
上記「露出貴金属表面積」は、触媒学会参照触媒委員会により提案されたCOパルス吸着法(触媒, 1986年,vol.28,No.1)に従い測定することができる。一般的に、高温耐久処理によって担体に担持された貴金属はシンタリングが進行するため、COパルス吸着法では耐久処理前よりも耐久処理後の方がCO吸着量は少なくなると考えられる。露出貴金属表面積の減少率は、下記の式(1)で定義することができる。
【0065】
【数1】

【0066】
上記露出貴金属の表面積の減少率が0%より小さな値となれば、高温耐久処理後に露出貴金属表面積が増大していることを意味する。このとき、固溶貴金属の形成や、貴金属を被覆していたアルミナが高温耐久処理による熱収縮などによって被覆構造を保持しなくなることが考えられるため好ましくない。一方、露出貴金属表面積の減少率が87%より大きな値となれば、高温耐久処理によって貴金属粒子が著しくシンタリングし、触媒反応に寄与する貴金属原子数が減少していることが考えられるため好ましくない。
【0067】
また、本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、ランタン含有アルミナにより被覆された、貴金属と酸化セリウムとの複合体のみを含んでいてもよいし、それ以外の成分を含んでいてもよい。例えば、耐火性無機酸化物、セリア−ジルコニア複合酸化物等を適宜含んでいてもよい。これらの成分は、ランタン含有アルミナにより被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。また、ランタン含有アルミナにより被覆されない酸化セリウム;ランタン含有アルミナにより被覆されない白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を含んでいてもよい。さらに、本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、三次元構造体上に担持されていてもよいし、担持されていなくてもよい。
【0068】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒では、酸素吸収率が30〜100%であることが好ましく、40〜100%であることがより好ましく、50〜100%であることがさらに好ましく、80〜100%であることが最も好ましい。ここで、「酸素吸収率」とは、後述する実施例に記載の方法により決定される値をいい、排気ガス浄化用触媒の浄化性能と密接な関係にある。一般に、上記酸素吸収率が高いほど、いわゆる酸素吸蔵放出能が高いために排気ガスの浄化性能が高く、一方、上記酸素吸収率が低いほど酸素吸蔵放出能が低いために排気ガスの浄化性能が低いと考えられる。
【0069】
上記酸素吸収率が100%であれば、排ガス浄化用触媒に導入された酸素が全て利用されたことを意味し、排ガス浄化用触媒の排気ガス浄化性能が非常に高いことを意味する。一方、上記酸素吸収率が30%よりも低下すると、吸収できなかった酸素が貴金属周囲に存在する。そのため、特に、貴金属周囲に存在する酸素濃度が理論空燃比以上となる場合では、ロジウム上での排ガス触媒反応が進行しにくい場合があるため好ましくない。
【0070】
〔2.排ガス浄化用触媒の製造〕
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されていればよく、排ガス浄化用触媒の製造方法としては特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を用いることができる。例えば、ゾルゲル法、アルコキシド法、逆ミセル法、水熱合成法などを用いることができる。
【0071】
上記貴金属としては、例えば、金、銀、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、これらの2種類以上の組み合わせ等を用いることができ、触媒活性を有する貴金属である限り、特に限定されるものではない。中でも、であることから、貴金属としてロジウムを用いることが好ましい。
【0072】
上記貴金属の原料としては、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、有機塩等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記ロジウムの原料としては、硝酸ロジウム、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、ヘキサアンミンロジウム等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0074】
上記酸化セリウムの原料としては、酸化セリウムの他、乾燥、焼成することで酸化セリウムとするものであってもよい。例えば、硝酸セリウム(III)六水和物、酢酸セリウム(III)一水和物、セリアゾル等を挙げることができ、特に限定されるものではない。
【0075】
上記ランタンの原料としては、酢酸ランタン(III)n水和物、硝酸ランタン六水和物、塩化ランタン七水和物、硫酸ランタン(III)n水和物、酸化ランタン等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0076】
上記アルミナの原料としては、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、硝酸アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナゾル等を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0077】
本発明において、ランタン含有アルミナで貴金属と酸化セリウムとからなる複合体を被覆する方法は、特に限定されるものではなく、各アルミナ原料に合った被覆法を用いることが好ましい。例えば、アルミニウムのアルコキシドのアルコール溶液に、貴金属を含む水溶液と、酸化セリウムの水溶液との混合水溶液を添加した後、ランタンを含む水を添加し、乾燥、必要に応じて焼成する方法により好適に製造することができる。
【0078】
以下に、ランタンを含むアルミニウムイソプロポキシドを用いてロジウムおよび酸化セリウムを被覆する場合について一例を記す。
【0079】
まず、アルミニウムイソプロポキシドと同程度の質量のイソプロパノール溶液にアルミニウムイソプロポキシドを添加し、約10分攪拌する。次に、硝酸ロジウムおよび酢酸セリウムを所定の担持量となるように秤量し、硝酸ロジウム−酢酸セリウム混合水溶液を作製し、上記10分間攪拌したアルミニウムイソプロポキシド−イソプロパノールの混合溶液中に上記所定の担持量となるように硝酸ロジウム−酢酸セリウム混合水溶液を添加する。アルミニウムイソプロポキシドは弱酸性〜酸性で加水分解反応が進行し、アルミニウム水酸化物となる。この場合、添加した硝酸ロジウム−酢酸セリウム混合水溶液に含まれる水によって加水分解反応が進行することが好ましい。硝酸ロジウム水溶液に含まれる水によって加水分解反応が進行するため、ロジウムと酸化セリウムとからなる複合体がアルミナによって被覆された状態で担持される。
【0080】
酢酸ランタンは、硝酸ロジウム−酢酸セリウム混合水溶液を添加後、アルミニウムイソプロポキシドの一部が加水分解反応を起こした後に添加することが好ましい。また、このとき、同時にアルミニウムイソプロポキシドが全て加水分解するのに必要な水を添加し、アルミニウムイソプロポキシドの加水分解が完結するまで攪拌を継続する。当該加水分解反応は、発熱反応であるため、発熱がなくなった時点を加水分解反応が完結した時点とする。加水分解反応が完結した状態では、試料はゲル状であり、当該ゲルを好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは70℃〜150℃で乾燥し、続いて、好ましくは300℃〜950℃、さらに好ましくは400℃〜600℃で酸素過剰雰囲気下において焼成する。これらの工程を経て、ランタン含有アルミナによって被覆された貴金属−酸化セリウム複合体を含む排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0081】
ここで、上記排ガス洗浄用触媒中の貴金属の含有量(貴金属換算)は、ランタン含有アルミナ粉体あたり、0.2〜20重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。貴金属の含有量が0.2重量%以上であることにより、ランタン含有アルミナによる貴金属の被覆率が高くなりすぎず、その結果、気相に露出した貴金属粒子が少なくなりすぎないため、排ガス洗浄用触媒の触媒性能低下を防止することができる。一方、20重量%以下であることにより、ランタン含有アルミナによって被覆しきれなかった貴金属粒子の割合が大きくなりすぎないため好ましい。
【0082】
上記排ガス浄化用触媒中の酸化セリウムの含有量については、上記〔1.排ガス浄化用触媒〕で説明したとおりである。
【0083】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、特に限定されるものではないが、三次元構造体上に担持されてなることが好ましい。三次元構造体としては特に限定されるものではない。例えばハニカム担体などの耐熱性担体を挙げることができる。また、三次元構造体としては一体成形型のもの(一体構造体)が好ましく、例えばモノリス担体、メタルハニカム担体、ディーゼルパティキュレートフィルターなどのプラグドハニカム担体、パンチングメタルなどが好ましく用いられる。なお、必ずしも三次元一体構造体である必要はなく、例えばペレット担体などを用いることもできる。
【0084】
モノリス担体としては、通常、セラミックハニカム担体と称されるものであればよく、特に、コージェライト、ムライト、α−アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを材料とするものが好ましく、中でもコージェライト質のものが特に好ましい。その他、ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金などを含む酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて一体構造体としたものなどが用いられる。
【0085】
これらモノリス担体は、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法等によって製造される。そのガス通気口(セル形状)の形は、六角形、四角形、三角形またはコルゲーション形の何れであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は100〜1200セル/平方インチであれば十分に使用可能であり、好ましくは200〜900セル/平方インチである。
【0086】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒を三次元構造体上に担持する場合、貴金属の量は、三次元構造体1リットル当たり0.01〜10gであることが好ましく、0.01〜3gであることがより好ましい。なお、三次元構造体への担持法は特に限定されるものではない。例えば、ウォッシュコートなどの方法を用いることができる。
【0087】
貴金属の量が三次元構造体1リットル当たり0.01g以上であることにより、触媒性能に優れるため好ましく、3g以下であると使用量に対する触媒性能への寄与度が大きく、コストパフォーマンスが良いため好ましい。
【0088】
また、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体をランタン含有アルミナによって被覆した粉体は、三次元構造体1リットル当たり30〜300gであることが好ましく、70〜150gであることがより好ましい。
【0089】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない、白金および/またはパラジウムを含んでいてもよい。白金の原料としては、例えば、硝酸白金等を用いることができる。白金の量は、三次元構造体1リットル当たり0.1〜5gであることが好ましく、0.5〜1gであることがより好ましい。白金の量が三次元構造体1リットル当たり0.1g以上であることにより、触媒性能に優れるため好ましく、5g以下であると、使用量に対する触媒性能への寄与度が大きく、コストパフオ−マンスが良いため好ましい。
【0090】
パラジウムの原料としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、テトラアンミンパラジウムなどを用いることができる。パラジウムの量は、三次元構造体1リットル当たり0.5〜10gであることが好ましく、1〜8gであることがより好ましい。パラジウムの量が三次元構造体1リットル当たり0.5g以上であることにより、触媒性能に優れるため好ましく、10g以下であると、使用量に対する触媒性能への寄与度が大きく、コストパフオ−マンスが良いため好ましい。
【0091】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、さらに耐火性無機酸化物を含んでなることが好ましい。耐火性無機酸化物としては、通常、排気ガス用の触媒担体として用いられるものであれば特に限定されない。例えば、γアルミナ(Al)、シリカ(SiO)、シリカ−アルミナ(SiO−Al)、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)、ゼオライトなどを用いることができる。当該耐火性無機酸化物には、鉄、ニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはランタンなどの希土類元素の酸化物を添加することもできる。当該耐火性無機酸化物の使用量は、三次元構造体1リットル当たり30〜300gであることが好ましく、70〜150gであることがより好ましい。
【0092】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物を含んでなることが好ましい。ここで、セリア−ジルコニア複合酸化物はランタン含有アルミナにより被覆されていてもいなくてもよいが、ランタン含有アルミナにより被覆されていないことがより好ましい。これによって、排ガスを一層効率よく浄化することができる。ランタン含有アルミナにより被覆されていない酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物の使用量は、三次元構造体1リットル当たり5〜100gであることが好ましく、20〜80gであることがより好ましい。なお、「ランタン含有アルミナにより被覆されていない」とは、ロジウム粒子とアルミナ粒子との接触部において、ロジウム粒子とアルミナ粒子との間に上記酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物が存在しない状態をいう。
【0093】
上記「セリア−ジルコニア複合酸化物」とは、セリアにジルコニアが固溶した状態の複合酸化物のことであり、同時にランタン、イットリウム、プラセオジムなどを含むことができる。セリアとジルコニアとの比は、重量比で90:10〜10:90であることが好ましく、その他の成分の含有量はセリア−ジルコニア複合酸化物あたり20重量%以下であることが好ましい。なお、セリア−ジルコニア複合酸化物は、例えば共沈法(触媒の事典、194頁、朝倉書店)によって調製することができる。
【0094】
以下に、排ガス浄化用触媒を調製する方法について説明する。排ガス浄化用触媒を調製する方法としては、特に限定されるものではないが、触媒組成物自体を排ガス浄化用触媒とする場合は、触媒組成物を十分に混合した後、円柱、球状等に成形して、排ガス浄化用触媒とする方法等が挙げられる。なお、触媒組成物とは、排ガス浄化用触媒を構成しうる成分の集合体の他、上記した耐火性無機酸化物、セリア−ジルコニア複合酸化物、ランタン含有アルミナにより被覆されない酸化セリウム、ランタン含有アルミナにより被覆されない貴金属などが含まれたものをも指す。
【0095】
上記三次元構造体を用いる場合は、触媒組成物を一括してボールミル等に投入し、湿式粉砕して水性スラリーとし、上記三次元構造体を上記水性スラリーに浸漬し、乾燥、焼成する方法等を挙げることができる。
【0096】
〔3.排ガス浄化方法〕
本発明にかかる排ガス浄化方法は、本発明にかかる排ガス浄化用触媒を、内燃機関の排ガスに曝す工程を含む。
【0097】
上記排ガス浄化用触媒を上記排ガスに曝す方法は特に限定されるものではない。例えば、排ガス浄化用触媒を内燃機関の排気ポートの排気流路中に設置し、排ガスを排気流路に流入させることによって行うことができる。上記排ガス浄化用触媒を上記排ガスに曝す時間は特に限定されるものではなく、上記排ガス浄化用触媒の少なくとも一部分が上記排ガスと接触することができる時間が確保されればよい。上記排ガスの温度は、特に限定されるものではないが、0℃〜750℃、つまり通常運転時の排ガスの温度であることが好ましい。
【0098】
また、一実施形態において、本発明にかかる排ガス浄化方法は、本発明にかかる排ガス浄化用触媒が、内燃機関の排ガス(排ガスの温度;0℃〜750℃)に曝される前に、温度が950℃〜1000℃である空燃比が、好ましくは、14.1〜15.1の排ガスに曝されていてもよい。
【0099】
この場合、上記排ガス浄化用触媒の少なくとも一部分が、温度が0℃〜750℃の上記排ガスと接触することができる時間が確保されればよいので、上記排ガス浄化用触媒を温度が0℃〜750℃の上記排ガスに曝す時間は特に限定されるものではない。また、上記排ガス浄化用触媒を温度が950℃〜1000℃の酸素過剰の排ガスに曝す時間も、特に限定されるものではない。全く曝されていなくてもよいし、例えば、高温耐久処理時間として好ましい時間である5〜100時間曝されていてもよい。
【0100】
前述のように、本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、耐熱性と酸素吸蔵放出能とを併せ持つ。それゆえ、通常運転時の排ガスの浄化中に、温度が950℃〜1000℃の排ガスのように、通常運転時に発生する排ガスよりも著しく高温の排ガスが排気流路に流入した場合でも、その後、通常運転時の排ガスの浄化を引き続き行うことができる。
【0101】
なお、上記「0℃〜750℃」は、触媒入口部における排ガスの温度であることが好ましく、「950℃〜1000℃」は触媒床部における排ガスの温度であることが好ましい。「触媒入口部」とは、排ガス浄化用触媒が設置された排ガス流入側の触媒端面から20cm内燃機関側までで、かつ、排気管垂直方向に対して中心の箇所をいう。また、「触媒床部」とは、排ガス流入側端面から排ガス流出側端面までの距離の中央で、かつ、排気管垂直方向に対して中心の箇所(排気管が円形でない場合は、排気管垂直方向の断面に対して重心の箇所)をいう。
【0102】
上記「通常運転時」とは、内燃機関を搭載する自動車や二輪車等を著しい高速および低速で運転する状態を除いた状態をいう。例えば、LA−4モードによる運転時等が該当する。
【0103】
また、上記内燃機関の排ガス(排ガスの温度;0℃〜750℃)の空燃比は、14.1〜15.1であることが好ましい。
【0104】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0105】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
なお、本発明にかかる排ガス洗浄用触媒の性能は、NOx浄化率が50%に達する時の温度(以下、T50とも言う)、および酸素吸収率を測定することにより評価した。以下に、T50および酸素吸収率の測定方法について説明する。
【0107】
<T50の測定方法>
T50とは、NOx浄化率が50%に達する時の温度を指す。T50の測定方法としては、3.0L、6気筒のMPIエンジンの排気孔から30cm下流側に排ガス浄化用触媒を設置し、50℃/分の昇温速度で、MPIエンジンをA/Fが14.1〜15.1、周波数1.0Hzで変動させながら、触媒入口部の温度を200℃から500℃まで昇温した。このときのCO、THC(Total Hydrocarbon、メタン換算)、NOxのそれぞれの浄化率を求め、NOx浄化率が50%に達する時の温度をT50とした。なお、上記「触媒入口部」とは、排ガス浄化用触媒が設置された排ガス流入側の触媒端面から20cm内燃機関側までで、かつ、排気管垂直方向に対して中心の箇所をいう。なお、上記「触媒入口部の温度」とは、熱電対を用いて上記触媒入口部の位置を測定した温度をいう。T50の値が低いほど、触媒性能が高い排ガス浄化用触媒であると言える。
【0108】
<酸素吸収率の測定方法>
酸素吸収率は、排ガス浄化用触媒の出口部の酸素曲線の全長に対する排ガス浄化用触媒の入口部の酸素曲線の全長の比を1から減じ、さらに100を乗じた値のことをいい、式(2)を用いて求めることができる。
【0109】
【数2】

【0110】
上記「排ガス浄化用触媒の出口部の酸素曲線」と上記「排ガス浄化用触媒の入口部の酸素曲線」と求める方法について以下に詳細を説明する。上述した、T50の測定後、触媒入口部の温度を400℃に設定し、MPIエンジンをA/Fが14.1〜15.1で周波数0.5Hzで変動させたときの触媒入口部の酸素濃度および触媒出口部の酸素濃度を0.1秒毎に測定した。続いて、触媒入口部の温度を400℃に設定し、MPIエンジンをA/Fが13.6〜15.6で周波数0.5Hzで変動させたときの触媒入口部の酸素濃度および触媒出口部の酸素濃度を0.1秒毎に測定した。同様に、触媒入口部の温度を500℃に設定し、MPIエンジンをA/Fが14.1〜15.1または13.6〜15.6で周波数0.5Hzで変動させたときの触媒入口部の酸素濃度および触媒出口部の酸素濃度を0.1秒毎に測定し。上記で得られたそれぞれの条件における触媒入口部の酸素濃度を最小二乗法により曲線化した。同様に、触媒出口部の酸素濃度についても最小二乗法により曲線化した。得られた曲線を以下、酸素曲線という。それぞれの酸素曲線について、測定開始20秒後から180秒後までの間の長さを求めた。
【0111】
具体的には、測定開始20秒後の触媒入口部の酸素濃度をO20とし、測定開始20.1秒後の触媒入口部の酸素濃度をO20.1とすると、測定開始20秒後から測定開始20.1秒後までの間の酸素曲線の長さL20は、三平方の定理により、式(3)で表すことができる。なお、酸素曲線の長さL20は正の値である。
【0112】
【数3】

【0113】
同様にして、0.1秒ごとに酸素曲線の長さを求めL20からL179.9を合計することで、測定開始20秒後から180秒後までの酸素曲線の全長を求めることができる。すなわち、触媒入口部における測定開始20秒後から180秒後までの酸素曲線の全長は、式(4)で表すことができる。
【0114】
【数4】

【0115】
同様の方法を用いて、触媒出口部における測定開始20秒後から180秒後までの酸素曲線の全長を求め、上記式(2)を用いて、酸素吸収率を求めることができる。
【0116】
触媒入口部の酸素濃度の変化を表す酸素曲線の測定開始20秒後から180秒後までの間の全長に対する触媒出口部の酸素濃度の変化を表す酸素曲線の測定開始20秒後から180秒後までの間の全長は、酸素吸収率が高い排ガス浄化用触媒ほど短くなる。その結果、得られる酸素吸収率の値は高くなる。
【0117】
〔1.排ガス浄化用触媒の製造〕
〔実施例1〕
アルミナ原料としてはアルミニウムイソプロポキシドを用い、ロジウム原料としては硝酸ロジウム水溶液を用い、ランタン原料としては酢酸ランタンを用い、酸化セリウム原料としては酢酸第一セリウム(III)を用いた。
【0118】
アルミナ:ロジウム:酸化ランタン:酸化セリウムの重量比が82.5:4.5:3:10となるように各原料を評量した。評量したアルミニウムイソプロポキシドと等量のエタノールとを10分間攪拌した後、酢酸セリウムと硝酸ロジウム水溶液との混合溶液をアルミニウムイソプロポキシド/エタノール溶液に添加した。
【0119】
次に、アルミニウムイソプロポキシドの加水分解反応に必要な量の水に、酢酸ランタンを分散させた後、当該分散液をアルミニウムイソプロポキシド/エタノール/硝酸ロジウム/酢酸セリウム溶液に加え、2時間攪拌した。得られたゲルを120℃で8時間乾燥させた後、得られた乾燥物を、500℃で1時間、空気雰囲気下において焼成することにより酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体が酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Aを得た。
【0120】
〔実施例2〕
アルミナ:ロジウム:酸化ランタン:酸化セリウムの重量比が87.5:4.5:3:5となるよう各原料を評量した以外は、実施例1と同様の方法により、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体が酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Bを得た。
【0121】
〔比較例1〕
アルミナ原料としてはアルミニウムイソプロポキシドを用い、ロジウム原料としては硝酸ロジウム水溶液を用い、ランタン原料としては酢酸ランタンを用いた。
【0122】
アルミナ:ロジウム:酸化ランタンの重量比が、92.5:4.5:3となるよう各原料を評量した。評量したアルミニウムイソプロポキシドと等量のエタノールとを10分間攪拌した後、硝酸ロジウム水溶液をアルミニウムイソプロポキシド/エタノール溶液に添加した。
【0123】
次に、アルミニウムイソプロポキシドの加水分解反応に必要な量の水に、酢酸ランタンを分散させた後、アルミニウムイソプロポキシド/エタノール/硝酸ロジウム溶液に加え、2時間攪拌した。得られたゲルを120℃で8時間乾燥させた後、得られた乾燥物を、500℃で1時間、空気雰囲気下において焼成することにより、ロジウムが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Cを得た。
【0124】
〔比較例2〕
アルミナおよびランタン原料としては酸化ランタン含有アルミナを用い、ロジウム原料としては硝酸ロジウムを用いた。
【0125】
アルミナ:ロジウム:酸化ランタンの重量比が92.5:4.5:3となるよう各原料を評量した。次いで、ポアフィリング法(触媒の事典、174頁、朝倉書店、を参照)にて、上記評量した酸化ランタン含有アルミナに硝酸ロジウムを担持した。120℃で8時間乾燥させた後、500℃で1時間空気雰囲気下において焼成し、酸化ランタン含有アルミナにロジウムを含浸担持した粉体Dを得た。
【0126】
〔比較例3〕
アルミナ原料としてはアルミニウムイソプロポキシドを用い、ロジウム原料としては硝酸ロジウム水溶液を用い、ランタン原料としては酢酸ランタンを用い、酸化セリウム原料としては酸化セリウムを用いた。
【0127】
アルミナ:ロジウム:酸化ランタン:酸化セリウムの重量比が82.5:4.5:3:10となるよう各原料を評量した。評量したアルミニウムイソプロポキシドと等量のエタノールとを10分間攪拌した後、硝酸ロジウム水溶液をアルミニウムイソプロポキシド/エタノール溶液に添加した。
【0128】
次に、アルミニウムイソプロポキシドの加水分解反応に必要な量の水に、酢酸ランタンを分散させた後、当該分散液をアルミニウムイソプロポキシド/エタノール/硝酸ロジウム溶液に加え、2時間攪拌した。反応物を120℃で8時間乾燥させた後、得られた乾燥物を、500℃で1時間空気雰囲気下において焼成した後、評量した酸化セリウムを混合し、乳鉢にて粉砕することで、酸化セリウムを含み、ロジウムが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Eを得た。当該粉体Eは、酸化セリウムを含むが、当該酸化セリウムは、酸化ランタン含有アルミナにより被覆されていない。
【0129】
〔比較例4〕
アルミナ:ロジウム:酸化ランタン:酸化セリウムの重量比が87.5:4.5:3:5となるよう各原料を評量した以外は、比較例3と同様の方法により、酸化セリウムを含み、ロジウムが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Fを得た。当該粉体Fは、比較例3の粉体と同様、酸化セリウムを含むが、当該酸化セリウムは、酸化ランタン含有アルミナにより被覆されていない。
【0130】
〔2.粉体成分の確認〕
<X線回折分析>
実施例および比較例で得られた粉体の成分をX線回折により分析し、CeO2およびCeRhの存在を確認した。X線回折装置としてはスペクトリス株式会社製、X‘Pert PROを用いた。X線源としてCuKαを用いて、X線出力を40mA、45kV、ステップ角度、0.017°で測定した。
【0131】
得られたX線回折パターンにおいて、CeOおよびCeRhはJCPDSファイル00−034−0394および00−019−0296にそれぞれ示された角度にピークを有する。CeOおよびCeRhが測定サンプル中に含まれていれば、上記JCPDSファイルに示された角度にピークが検出されるが、本発明ではCeOおよびRh以外に、AlおよびLaも含むため、それらのピークにより、強度比の低い回折角では明確なピ−クとして検出されない場合もある。よって、本明細書の実施例において、CeOおよびCeRhの最大強度を示す回折角(CeOは28.5547°±0.017°、CeRhは32.7652°±0.017°)におけるピークの強度を求めた。
【0132】
実施例1または実施例2で作製した、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体がランタン含有アルミナによって被覆された粉体A、Bは、図1(a)の模式図に示すように、貴金属2と酸化セリウム3とが近接して担持されて複合体を形成している。これらの粉体を高温耐久処理後にX線回折分析によって定性分析を行った結果、CeRhに帰属するピークが検出された。酸化セリウム粒子とロジウム粒子との接触面にCeRh化合物の形成がされていることから、酸化セリウムとロジウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されていることを確認した。
【0133】
一方、比較例3または比較例4で作製した、ランタン含有アルミナによってロジウムを被覆した後に、酸化セリウムを物理的に混合した粉体EまたはFは、図2の模式図に示すように、酸化セリウム3が貴金属2とは近接して担持されていない。これらの粉体を高温耐久処理後にX線回折分析によって定性分析を行った結果、CeRhに帰属するピークは検出されず、CeOのピークの強度が相対的に強く検出された。これは、ロジウムと酸化セリウムとが近接した状態で担持されていないため、CeRh化合物としてではなく、大部分がCeOとして存在しているためであると考えられた。
【0134】
なお、比較例2で作製した、含浸法などのように、既成の担体を貴金属溶液に浸漬させることにより貴金属を担持した粉体Dは、図3の模式図に示すように、大部分の貴金属粒子は、担体表面に担持される。これらの粉体を高温耐久処理後にX線回折分析によって定性分析を行った結果、酸化セリウムに帰属するピークがより明確に検出されるため、CeRhに帰属するピークを検出することは難しかった。
【0135】
また、CeRhのピークの強度に対するCeOのピークの強度の比を求めた。結果を表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
表1に示されるように、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体がランタン含有アルミナによって被覆された粉体A、Bでは、酸化セリウムがランタン含有アルミナにより被覆されていない粉体E、Fと比較して、CeOに対するCeRhの割合が多いことがわかる。
【0138】
〔3.露出貴金属表面積の測定〕
<露出貴金属表面積の測定法>
露出貴金属表面積は基本的には触媒学会参照触媒委員会により提案されたCOパルス法(触媒, 1986年,vol.28,No.1)に従い測定した。ただし、本実施例においては貴金属をアルミナにより被覆しているため、貴金属の還元処理前処理を充分進行させるため還元処理温度を500℃とした。
【0139】
<露出貴金属表面積の測定>
高温耐久処理前後における、粉体A、B、C、およびDの露出貴金属表面積を、上記露出貴金属表面積の測定法により測定した結果と、高温耐久処理前後における露出貴金属表面積の減少率を〔発明を実施するための最良の形態〕の〔1.排ガス浄化用触媒〕で上述した式(1)に従って求めた結果とを表2に示す。
【0140】
【表2】

【0141】
表2に示すとおり、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体が酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体AおよびBと、ロジウムが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Cとは、ポアフィリング法にてロジウムを含浸担持した粉体Dよりも露出ロジウム表面積が小さいことがわかった。
【0142】
ここで、粉体A、BおよびCは、粉体Dと担持ロジウム量は同じであり、シンタリングによりロジウム粒子が粗大化する温度での耐久を行っていない状態で、ロジウムを含浸担持した粉体Dより露出ロジウム表面積が顕著に小さいことから、粉体A、B、およびCではロジウム粒子がアルミナによって被覆されていることがわかる。
【0143】
一方、粉体A、B、C、およびDを空気雰囲気下950℃で50時間、高温耐久処理に供した後では、表2に示すとおり、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体が酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体AおよびBと、ロジウムのみが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Cと比較して、ポアフィリング法にてロジウムを酸化ランタン含有アルミナに含浸担持した粉体Dでは、露出ロジウム表面積が小さかった。
【0144】
酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体が酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体AおよびBと、ロジウムが酸化ランタン含有アルミナによって被覆された粉体Cとは、高温耐久処理後に露出貴金属表面積が減少したが、減少率としてはポアフィリング法にてロジウムをランタン含有アルミナに含浸担持した粉体Dよりも小さく、ロジウム粒子のシンタリングが抑制され、露出貴金属表面積を保持していることがわかった。
【0145】
一方、ロジウムをランタン含有アルミナに含浸担持した粉体Dは、高温耐久処理前後での露出貴金属表面積の減少率が87%より大きく、ロジウム粒子が著しくシンタリングしていることが考えられた。
【0146】
〔4.排ガス浄化用触媒の製造〕
上記実施例1〜2および比較例1〜4で製造した排ガス浄化用触媒(粉体A〜F)を用いて、さらなる成分を含む排ガス浄化用触媒を製造した。
【0147】
〔実施例3〕
白金原料としてジニトロジアンミン白金水溶液、パラジウム原料として硝酸パラジウム、アルミナ原料としてランタン3重量%を含むアルミナ、CeO−ZrO複合酸化物、および上記粉体Aを用いて、Pt:Pd:La−Al:CeO−ZrO:La:粉体Aの重量比が0.06:0.2:31.2:30:5.04:4となるよう各原料を評量した。次に、各原料を混合後、2時間攪拌した後、湿式粉砕しスラリーAを得た。得られたスラリーAを0.92Lのコージェライトに、500℃で1時間の焼成後にコージェライト1Lあたり70.5gとなるようウォッシュコートした。次に、150℃で15分間乾燥した後、500℃で1時間空気焼成を行いPt:Pd:Rhを1Lあたり0.06:0.2:0.24(g)含む排ガス浄化用触媒Aを得た。
【0148】
〔実施例4〕
粉体Aの代わりに粉体Bを用いて実施例3と同様の原料比、および方法により排ガス浄化用触媒Bを作製した。
【0149】
〔比較例5〕
粉体Aの代わりに粉体Cを用いて実施例3と同様の原料比、および方法により排ガス浄化用触媒Cを作製した。
【0150】
〔比較例6〕
粉体Aの代わりに粉体Dを用いて実施例3と同様の原料比、および方法により排ガス浄化用触媒Dを作製した。
【0151】
〔5.排ガス浄化用触媒の性能評価〕
排気ガス浄化用触媒の性能を、CO、THCおよびNOの浄化率がそれぞれ50%に達する時の温度(以下、T50とも言う)、並びに酸素吸収率を測定することにより評価した。以下に、T50および酸素吸収率の測定方法について説明する。
【0152】
<耐久処理>
実施例3および実施例4、並びに比較例5および比較例6で作製した各触媒を直列6気筒、2.4Lエンジンの排気口から40cm下流側に設置し、触媒床部の温度を950℃とした。触媒入口部のA/Fが14.6に対して±4.0で50時間運転し、耐久処理を行った。
【0153】
<50%浄化温度(T50)の測定>
昇温評価における50%浄化温度(T50)を測定した結果を図4に示す。図4に示されるように、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体がランタン含有アルミナによって被覆された粉体AまたはBを含む排ガス浄化用触媒は、ランタン含有アルミナによってロジウムのみが被覆された粉体Cや、酸化ランタン含有アルミナに硝酸ロジウムを担持したロジウム含浸アルミナ粉体Dを含む排ガス浄化用触媒より、50%浄化温度が低く、触媒性能が高い排ガス浄化用触媒であると言える。
【0154】
<酸素吸収率の測定>
排ガス浄化用触媒の酸素吸収率を測定した結果を、図5に示す。図5中、横軸は触媒入口部の温度(400℃,500℃)および空燃比変動範囲(±0.5:A/F=14.1〜15.1,±1.0:A/F=13.6〜15.6)を示し、縦軸は酸素吸収率(%)を示す。
【0155】
図5に示されるように、酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体がランタン含有アルミナによって被覆された粉体Aまたは粉体Bを含む排ガス浄化用触媒は、ランタン含有アルミナによってロジウムのみが被覆された粉体Cを含む排ガス浄化用触媒より、酸素吸収率(%)が高いことが判る。これに対し、粉体Cと同様に酸化セリウムおよびロジウムからなる複合体を含まない構成であっても、酸化ランタン含有アルミナに硝酸ロジウムを担持したロジウム含浸アルミナ粉体Dを含む排ガス浄化用触媒は、高い酸素吸収率(%)を示し、酸素吸収率が高い排ガス浄化用触媒であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明にかかる排ガス浄化用触媒は、少なくとも、ランタン含有アルミナにより被覆された、貴金属と酸化セリウムとからなる複合体を含んできるため、高温に曝されてもロジウムの被覆状態を保持し、且つ酸素吸蔵放出能を効率良く発現させることが可能となり、高温下でも内燃機関からの排出ガスを効率良く浄化することができる。したがって、本発明は、内燃機関を用いる産業全般、例えば自動車、鉄道、船舶、航空、各種産業機械などに幅広く応用することが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1 ランタン含有アルミナ
2 貴金属
3 酸化セリウム
4 化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属と酸化セリウムとからなる複合体が、ランタン含有アルミナによって被覆されており、上記貴金属がロジウムであり、ロジウムと酸化セリウムとの接触面にCeRhが形成され、X線回折分析において、上記CeRhに帰属するピークの強度の値に対する酸化セリウムに帰属するピークの強度の値が、1.0より大きく3.3未満であることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
上記複合体における上記酸化セリウムの含有量が上記CeRhの含有量に比して大きいことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
上記酸化セリウムの含有量が、貴金属と酸化セリウムとランタンとアルミナとの合計量に対して1重量%〜30重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
温度が950℃〜1000℃である内燃機関の排ガスに曝された後においても、ランタン含有アルミナによって被覆された上記複合体を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
温度が950℃〜1000℃である内燃機関の排ガスに曝された後の露出貴金属表面積が、当該排ガスに曝される前の露出貴金属表面積に対して0%〜87%減少していることを特徴とする、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
酸素吸収率が30〜100%であることを特徴とする、請求項5に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
三次元構造体上に担持されてなることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない、白金および/またはパラジウムを含んでなることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
さらに、耐火性無機酸化物を含んでなることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項10】
さらに、ランタン含有アルミナにより被覆されていない酸化セリウムおよび/またはセリア−ジルコニア複合酸化物を含んでなることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒を、内燃機関の排ガスに曝す工程を含むことを特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項12】
上記内燃機関の排ガスの温度は0℃〜750℃であり、
上記排ガス浄化用触媒は、上記内燃機関の排ガスに曝される前に、温度が950℃〜1000℃である空燃比が14.1〜15.1の排ガスに曝されていることを特徴とする、請求項11に記載の排ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−6181(P2013−6181A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184390(P2012−184390)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2009−270788(P2009−270788)の分割
【原出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(593024380)株式会社アイシーティー (22)
【出願人】(395016659)インターナショナル キャタリスト テクノロジー インコーポレイテッド (22)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL CATALYST TECHNOLOGY,INC.
【Fターム(参考)】