排ガス浄化用触媒及びその製造方法
【課題】使用環境温度が高温化した場合であっても貴金属粒子の凝集を抑制し、排気ガス浄化性能を維持することができる排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子を担持したアンカー粒子を含む複数の触媒ユニットと、複数の触媒ユニットを内包し、かつ、触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、を有する。そして、アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。
【解決手段】本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子を担持したアンカー粒子を含む複数の触媒ユニットと、複数の触媒ユニットを内包し、かつ、触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、を有する。そして、アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、高耐熱性を有し、さらに排気ガス中の有害物質を高効率で浄化することができる排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される排ガス浄化用触媒として、排気ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))を酸化又は還元する三元触媒が知られている。そして、近年の環境意識の高まりから、自動車等から排出される排気ガス規制がより一層強化されており、それに伴い三元触媒の改良が進められている。
【0003】
従来の三元触媒としては、貴金属粒子を金属酸化物に担持した粒子を、多孔質酸化物により覆った排ガス浄化用触媒が開示されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この排ガス浄化用触媒では、金属酸化物に希土類元素やアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有している。その結果、高温条件下においても貴金属粒子が金属酸化物上から移動し、凝集することが抑制されるため、数nm程度の粒子径を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、特許文献1の排ガス浄化用触媒をハニカム担体に担持し、比較的使用温度が低い床下触媒や、エキゾーストマニホールド長が長いマニホールド触媒として使用した場合、貴金属粒子の凝集を効果的に抑制することができる。しかし、近年、排気規制が強化され、早期活性化のため、エキゾーストマニホールド長が短いマニホールド触媒として使用することが増加している。この場合、触媒の使用環境温度が高温化し、900℃を超える場合もある。その結果、たとえ特許文献1の排ガス浄化用触媒を使用したとしても、貴金属粒子の凝集を抑制することが難しくなる場合が生じてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、使用環境温度が高温化した場合であっても貴金属粒子の凝集を抑制し、排気ガス浄化性能を維持することができる排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子を担持したアンカー粒子を含む複数の触媒ユニットと、複数の触媒ユニットを内包し、かつ、触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、を有する。そして、アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、前記貴金属粒子とアンカー粒子との複合粒子を粉砕する工程を有する。さらに、粉砕された複合粒子を、包接材の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化用触媒は、アンカー粒子だけでなく、包接材にもアルカリ元素やアルカリ土類元素を含有させる。その結果、アンカー粒子及び包接材の表面での貴金属粒子の移動及び凝集を抑制できることから、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子を微細状態に維持し、製造直後の高い浄化性能を維持することができる。また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、このような排ガス浄化用触媒を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す概略図である。図1(a)は、排ガス浄化用触媒構造体を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)の符号Bの部分を拡大した概略図である。図1(c)は、図1(b)の符号Cの部分を拡大した概略図である。
【図2】図2は、貴金属粒子が凝集するメカニズムを示す概略図である。図2(a)及び図2(b)は、従来の排ガス浄化用触媒における貴金属粒子の凝集状態を説明する概略図である。図2(c)及び図2(d)は、本実施形態の排ガス浄化用触媒における貴金属粒子の凝集状態を説明する概略図である。
【図3】図3は、排気耐久試験前の複合粒子の平均粒子径Daと包接材の平均細孔径Dbの比Da/Dbを横軸に、排気耐久試験後のCeO2の結晶成長比及びPtの表面積を縦軸にして、これらの関係を示すグラフである。
【図4】図4は、貴金属の粒子径と表面積との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、貴金属の粒子径と原子数及び表面積との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化用触媒を示す概略図である。
【図7】図7は、第二実施形態の排ガス浄化用触媒におけるアンカー粒子と第一助触媒粒子との間の距離を示した顕微鏡写真である。
【図8】図8は、触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の中心間距離と、出現頻度との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、分散度が異なる排ガス浄化用触媒の例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す概略図である。図10(a)は、排ガス浄化用触媒構造体のセルを示す断面図である。図10(b)は、図10(a)の符号Bの部分を拡大した概略図である。図10(c)は、図10(b)の符号Cの部分を拡大した概略図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムを示す概略図である。
【図12】図12は、実施例1の排ガス浄化用触媒の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
[排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体]
<第一実施形態>
図1では、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す。なお、本明細書において、排ガス浄化用触媒を単に触媒といい、排ガス浄化用触媒構造体を単に触媒構造体という場合がある。
【0013】
触媒構造体1は、図1(a)に示すように、複数のセル2aを有するハニカム担体(耐火性無機担体)2を備えている。排気ガスは、排気ガス流通方向Fに沿って各セル2a内を流通し、そこで触媒層と接触することにより浄化される。
【0014】
触媒構造体1では、担体2の内表面に触媒層が形成されている。具体的には、図1(b)に示すように、担体2の内表面上に触媒層3及びアンダーコート層4が形成されている。そして、触媒層3は、図1(c)に示すように、複数の触媒粒子(排ガス浄化用触媒)5により形成されている。
【0015】
触媒層3を構成する触媒粒子5は、貴金属粒子6と、アンカー粒子7とを含有している。アンカー粒子7は、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を表面に担持している。さらに触媒粒子5は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8を包接し、隣接する複合粒子8の間を互いに隔てる包接材9を含有する。
【0016】
触媒粒子5では、貴金属粒子6とアンカー粒子7とが接触して担持することにより、アンカー粒子7が化学的結合によるアンカー材として作用し、貴金属粒子6の移動を抑制する。また、貴金属粒子6が担持されたアンカー粒子7を包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子6が包接材9により隔てられた区画を越えて移動することを物理的に抑制する。さらに、包接材9により隔てられた区画内にアンカー粒子7を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えてアンカー粒子7同士が接触し凝集することを抑制する。これによって、アンカー粒子7が凝集することを防止するだけでなく、アンカー粒子7に担持された貴金属粒子6同士が凝集することも防止できる。その結果、触媒粒子5は、製造コストや環境負荷を大きくすることなく、貴金属粒子6の凝集による触媒活性の低下を抑制することができる。また、アンカー粒子7による貴金属粒子6の活性向上効果を維持することができる。
【0017】
ここで、図1(c)に示した触媒粒子5において、包接材9により隔てられた領域内では、貴金属粒子6と、アンカー粒子7の一次粒子が凝集した二次粒子とを含有した触媒ユニット10が包接されている。しかし、アンカー粒子7は、包接材9により隔てられた領域内において一次粒子として存在しても良い。つまり、触媒ユニット10は、貴金属粒子6とアンカー粒子7の一次粒子とを含有したものであっても良い。
【0018】
このように、貴金属粒子6及びアンカー粒子7の両方が包接材9で内包されることにより、貴金属粒子6の凝集を抑制することが可能となる。ただ、触媒の使用温度が高温化し、900℃を超える場合には、貴金属粒子の凝集が発生する場合がある。このような包接構造を有していてもなお貴金属粒子が凝集するメカニズムとしては、次のステップが考えられる。
【0019】
ステップ1:アンカー粒子の熱凝集及び結晶成長により、アンカー粒子の表面に貴金属粒子が押出され、貴金属粒子がアンカー粒子上で粒成長する(図2(a)参照)。
ステップ2:粒成長し、アンカー粒子の周縁部に押出された貴金属粒子が、アンカー粒子と包接材との界面から包接材上に移動する(図2(b)参照)。
ステップ3:包接材上に移動した貴金属粒子同士が包接材の結晶成長に伴い移動し、さらに粒成長する(図2(b)参照)。
【0020】
ステップ1では、図2(a)に示すように、触媒ユニット10の内部で貴金属粒子6Aの凝集が発生する。ただ、後述のように、単一の触媒ユニット10内に存在する貴金属の量は少ないため、たとえ凝集したとしても貴金属粒子6Aの直径を10nm程度に維持し、浄化性能の低下を抑えることができる。しかし、触媒温度が900℃を超える場合、熱振動等により貴金属粒子6Aとアンカー粒子7Aとの間の化学的結合が弱くなる。その結果、図2(b)に示すように、触媒ユニット10内で粒成長した貴金属粒子6Aが、アンカー粒子7Aと包接材9Aとの界面から包接材9A上に移動しやすくなる。特に触媒温度が950℃以上で、貴金属がパラジウムの場合、酸化パラジウム(PdO)からPdメタルへの還元反応が進行し易くなる。そして、触媒温度が960℃以上になるとPdメタルが包接材9Aに移動し、包接材9Aで凝集し、粒子径が大きい貴金属粒子6Bが生じる可能性が高くなる。
【0021】
このため本発明は、ステップ3での貴金属粒子の粒成長を抑制するために、これまでアンカー粒子に付与していた貴金属粒子に対するアンカー機能を包接材にも付与することを特徴とする。包接材にアンカー機能を付与することにより、たとえ包接材上に貴金属粒子が移動してきたとしても、包接材表面での貴金属粒子の移動を抑え、貴金属粒子同士のシンタリングを抑制することができる。
【0022】
そして、包接材にアンカー機能を付与させるために、包接材はアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することにより、包接材と貴金属粒子との間に化学結合が生じ、貴金属粒子の移動を抑制することができる。具体的には、後述する密度汎関数法よるシミュレーションの結果、包接材にアルカリ元素及びアルカリ土類元素を含有しなかった場合には比べ、これらを含有した場合には、貴金属粒子の包接材への吸着安定化エネルギーが小さくなる結果が得られた。このことから、包接材にアルカリ元素又はアルカリ土類元素を含有ことにより、貴金属粒子と包接材との間に化学的相互作用が発生し、安定化するため、包接材表面での貴金属粒子の移動が抑えられると推測される。なお、以下、アルカリ元素やアルカリ土類元素を「アルカリ元素等」ともいう。
【0023】
さらに、本実施形態の触媒粒子では、包接材中にアルカリ元素等が含有されているだけでなく、アンカー粒子にもアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方が含有されている必要がある。上述のように、包接材にアルカリ元素等を含有ことにより、包接材上での貴金属粒子の移動が抑えられるが、アンカー粒子にもアルカリ元素等を含有することにより、アンカー粒子上での貴金属粒子の移動が抑制される。つまり、アンカー粒子中にアルカリ元素等を含有させない場合でもアンカー粒子と貴金属粒子との相互作用により、貴金属粒子の移動及び凝集を抑制することができる。本実施形態では、このアンカー粒子中にさらにアルカリ元素等を含有させることにより、アンカー粒子と貴金属粒子との間の相互作用をさらに増加させる。その結果、上記ステップ2における貴金属粒子の包接材上への移動を抑制することができる。
【0024】
このように、本実施形態の触媒(触媒粒子)5では、図2(b)に示すように、アンカー粒子7及び包接材9の両方に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させる。これにより、アンカー粒子7のアンカー効果が増大し、貴金属粒子6がアンカー粒子7から包接材9に移動することを抑制する。そして、たとえ貴金属粒子6が包接材9の表面に移動したとしても包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6Cの凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6Cを微細状態に維持し、製造直後の高い浄化性能を維持することができる。
【0025】
なお、アルカリ元素及びアルカリ土類元素は、包接材やアンカー粒子中に含有されていれば貴金属粒子の凝集を抑制することが可能となる。つまり、アルカリ元素及びアルカリ土類元素が包接材やアンカー粒子の表面に担持されていても良く、包接材やアンカー粒子の内部に混合物として存在していても良い。また、包接材やアンカー粒子を構成する元素とアルカリ元素及びアルカリ土類元素とが固溶し、固溶体を形成していても良い。つまり、包接材やアンカー粒子中にアルカリ元素等を含有することによって、貴金属粒子との間の化学的相互作用が増加するため、アルカリ元素等の混合状態は如何なるものであっても良い。
【0026】
包接材及びアンカー粒子に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらのアルカリ元素等を含有することにより、包接材やアンカー粒子と貴金属粒子との間のアンカー効果が増加するため、貴金属粒子の凝集を抑制することができる。これらの中でも特に、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも1つが包接材及びアンカー粒子に含有されることが好ましい。これらの元素は、密度汎関数法よるシミュレーションの結果、貴金属粒子の吸着安定化エネルギーが特に小さくなる結果が得られ、包接材及びアンカー粒子のアンカー効果の更なる増大が期待できる。なお、アルカリ元素及びアルカリ土類元素は、酸化物の状態で包接材及びアンカー粒子に含有されていることが好ましい。
【0027】
前記包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.5から2.0の範囲であることが好ましい。つまり、(排ガス浄化用触媒中の貴金属粒子の含有量)/(排ガス浄化用触媒中の包接材におけるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量)がモル比で0.5から2.0の範囲であることが好ましい。排ガス浄化用触媒の単位質量あたりのアルカリ元素等の含有量がこの範囲内であることにより、包接材表面での貴金属粒子の移動を抑え、貴金属粒子同士のシンタリングを抑制することができる。また、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.8から1.5の範囲であることがより好ましい。この範囲内であることにより、貴金属粒子のシンタリングをより抑制することができる。なお、包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量がこの範囲外であっても、本発明の効果を発揮することができる。しかし、含有量が多すぎる場合、包接材の比表面積の減少による包接能力の低下や、包接材の細孔の減少によるガス拡散性の低下を招き、触媒性能が低下する虞がある。また、含有量が少なすぎる場合、十分なアンカー効果が得られず、包接材上で貴金属粒子の粒成長を抑制できずに、触媒性能が低下する虞がある。
【0028】
貴金属粒子6としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)及びルテニウム(Ru)の中から選ばれる少なくとも一つを使用することができる。この中でも特に白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)が高い浄化性能を発揮することができる。
【0029】
貴金属粒子6としては、上記の中でも特にパラジウム(Pd)が好ましい。パラジウムは高温での浄化性能に優れる。加えて、パラジウムは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)との間の吸着安定化エネルギーが特に小さくなる傾向がある。そのため、アルカリ元素等としてこれらが包接材及びアンカー粒子に含有された場合、包接材及びアンカー粒子の表面におけるパラジウムのシンタリングを極めて抑制することができる。その結果、高温でもパラジウムを微細状態で維持することができるため、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0030】
また、アンカー粒子7としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)及び酸化ネオジム(Nd2O3)の中から選ばれる少なくとも一つを主成分とすることができる。この中でも、Al2O3やZrO2は高温耐熱性に優れ、高い比表面積を維持できるため、アンカー粒子7としてAl2O3やZrO2を主成分とすることが好ましい。なお、本明細書において、主成分とは粒子中の含有量が50モルパーセント以上の成分のことをいう。
【0031】
包接材9は、アルミニウム(Al)及びケイ素(Si)の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。包接材9としては、アンカー粒子を包接でき、かつ、ガス透過性を確保できる材料が好ましい。このような観点から、Al及びSiの少なくとも一つを含む化合物、例えばAl2O3及びSiO2などは細孔容積が大きく、高いガス拡散性を確保することができる。そのため、包接材9は、Al2O3及びSiO2を主成分とし、さらにアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。なお、包接材は、Al及びSiの複合化合物であっても良い。
【0032】
ここで、触媒粒子5で使用される包接材9は、触媒ユニット10の周囲を完全に包囲するわけではない。つまり、包接材9は、触媒ユニット10の物理的移動を抑制する程度に覆いつつも、排気ガスや活性酸素が透過できる程度の細孔を有している。具体的には、図1(c)に示すように、包接材9は、触媒ユニット10を適度に包接し、触媒ユニット同士の凝集を抑制している。さらに、包接材9は、複数の細孔9aを有しているため、排気ガスや活性酸素が通過することができる。この細孔9aの細孔径は、30nm以下が好ましく、10nm〜30nmがより好ましい。なお、この細孔径は、ガス吸着法により求めることができる。
【0033】
上述のように、このような包接材9としては、アルミナやシリカを使用することができる。包接材がアルミナを主成分とする場合、前駆体としてベーマイト(AlOOH)を使用することが好ましい。つまり、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を、ベーマイトを水等の溶媒に分散させたスラリーに投入し、攪拌する。これにより、アンカー粒子7の周囲にベーマイトが付着する。そして、この混合スラリーを乾燥及び焼成することにより、アンカー粒子7の周囲でベーマイトが脱水縮合し、ベーマイト由来のγアルミナからなる包接材が形成される。このようなベーマイト由来のアルミナからなる包接材は、アンカー粒子7を覆いつつも、30nm以下の細孔を多く有しているため、ガス透過性にも優れている。
【0034】
同様に、包接材がシリカを主成分とする場合には、前駆体としてシリカゾルとゼオライトを使用することが好ましい。つまり、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を、シリカゾル及びゼオライトを溶媒に分散させたスラリーに投入し、攪拌し、乾燥及び焼成することにより、シリカからなる包接材が形成される。このようなシリカゾル及びゼオライト由来のシリカからなる包接材も、アンカー粒子7を覆いつつも、30nm以下の細孔を多く有しているため、ガス透過性に優れている。
【0035】
なお、包接材9により隔てられた区画内に含まれる触媒ユニット10の平均粒子径は300nm以下であることが好ましい。そのため、触媒ユニット10に含まれるアンカー粒子7の平均二次粒子径も300nm以下であることが好ましい。この場合には、貴金属を微粒子状態に維持することができる。より好ましい触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子の平均二次粒子径は200nm以下である。これにより、アンカー粒子の二次粒子上に担持される貴金属量がさらに減るため、貴金属の凝集を抑制することができる。なお、触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子7の平均二次粒子径の下限は特に限定されないが、例えば5nmとすることができる。ただ、後述するように、触媒ユニット10の平均粒子径が包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径より大きいことが好ましい。そのため、触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子7の平均二次粒子径は、30nmを超えることがより好ましい。
【0036】
アンカー粒子の平均二次粒子径は、触媒粒子の製造過程における、この粒子を含有するスラリーを、レーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。なお、この場合の平均二次粒子径とは、メジアン径(D50)をいう。また、得られた触媒粉末の透過型電子顕微鏡(TEM)の写真より、アンカー粒子の平均二次粒子径や後述する貴金属粒子の粒子径を測定することもできる。さらに、触媒ユニット10の平均粒子径もTEM写真より測定することができる。
【0037】
また、貴金属粒子6の平均粒子径は2nm以上10nm以下の範囲内にあることが望ましい。貴金属粒子6の平均粒子径が2nm以上である場合には、貴金属粒子6自身の移動によるシンタリングを低減することができる。また、貴金属粒子6の平均粒子径が10nm以下である場合には、排気ガスとの反応性の低下を抑えることができる。
【0038】
ここで、貴金属粒子6とアンカー粒子7とを含有した触媒ユニット10に関し、その触媒ユニット10の平均粒子径Daと、触媒ユニット10を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Daの関係を満たすことが好ましい。つまり、図1(c)に示すように、Db<Daは、触媒ユニット10の平均粒子径Daが、包接材9の細孔9aの平均径Dbよりも大きいことを意味している。Db<Daであることにより、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8が、包接材9に形成されている細孔9aを通して移動することが抑制される。したがって、他の区画に包接される複合粒子8との凝集を低減することができる。
【0039】
なお、上記不等式Db<Daの効果は、本発明者らの実験により確認されている。図3は、排気耐久試験前の複合粒子8の平均粒子径Daと包接材の平均細孔径Dbの比Da/Dbを横軸に、排気耐久試験後のアンカー粒子7としてのセリアの結晶成長比及び貴金属粒子6としての白金の表面積を縦軸にして、これらの関係を示すグラフである。図3から、Da/Dbが1を超える場合にはCeO2の結晶成長比が顕著に低下し、CeO2の焼結が少ないことが分かる。また、耐久試験後でもPtの表面積が高い状態で維持され、Ptの凝集が抑制されていることが分かる。
【0040】
さらに、貴金属粒子6の80%以上はアンカー粒子7に接触していることが望ましい。アンカー粒子7と接触している貴金属粒子6の割合が80%未満であると、アンカー粒子7上に存在しない貴金属粒子6が増加するため、貴金属粒子6の移動によってシンタリングが進むことがある。
【0041】
また、アンカー粒子7は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びネオジム(Nd)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。つまり、上述のように、アンカー粒子7はアルミナやジルコニアを主成分としている。そして、アンカー粒子は、上記遷移金属を添加物として含有することが望ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つを含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO及びNOx浄化率を向上させることができる。
【0042】
また、包接材9により隔てられた区画内には、貴金属粒子6を合計で8×10−20モル以下の量で含有することが好ましい。つまり、一つの触媒ユニット10内において、貴金属粒子6のモル数は8×10−20モル以下であることが好ましい。包接材9により隔てられた区画内では、高温状態において複数個の貴金属粒子6が移動し、互いに凝集する場合がある。この場合、アンカー粒子7の表面で一つ又は複数個の貴金属粒に凝集する。
【0043】
ここで、一つの触媒ユニット10内で貴金属粒子6が凝集した場合に、凝集した貴金属粒子6の粒径が10nm以下であれば、充分な触媒活性を示し、凝集による劣化を抑制することができる。図4は、貴金属としての白金やパラジウムに関し、粒子径と表面積との関係を示すグラフである。なお、図4では白金とパラジウムの場合でほぼ同じ曲線を示すので、一つの曲線として示している。図4から明らかなように、貴金属の粒子径が10nm以下であれば表面積が大きいため、凝集による触媒活性の劣化を抑制することができる。
【0044】
そして、図5は、貴金属としての白金やパラジウムに関し、粒子径と原子数との関係を示すグラフである。なお、図5では白金とパラジウムの場合でほぼ同じ曲線を示すので、一つの曲線として示している。図5から明らかなように、粒子径が10nmであるとき、貴金属の原子数は約48000であり、この値をモル数に換算すると約8×10−20モルとなる。これらの観点から、触媒ユニット10内の貴金属量を制限し、8×10−20モル以下とすることで、たとえ触媒ユニット10内で貴金属が1個に凝集しても、触媒活性の劣化を抑制することができる。なお、触媒ユニット10内に含まれる貴金属量を8×10−20モル以下にする方法としては、貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7の粒径を小さくすることが挙げられる。
【0045】
さらに、図1(c)に示す触媒粒子5において、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーがEaであり、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーがEbであるとき、EaがEbよりも小さい値であること(Ea<Eb)が好ましい。貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaが、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbよりも小さいことにより、貴金属粒子6が包接材9に移動することを抑制できる。その結果、貴金属粒子6の凝集をさらに低減することができる。
【0046】
また、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaと、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbとの差(Eb−Ea)が、10.0cal/molを超えることがより好ましい。吸着安定化エネルギー差が10.0cal/molを超えることにより、貴金属粒子6が包接材9に移動することをより確実に抑制することができる。
【0047】
なお、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaや、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbは、いずれも密度汎関数法を用いたシミュレーションにより算出することができる。この密度汎関数法は、多電子間の相関効果を取り入れたハミルトニアンを導入して、結晶の電子状態を予測する方法である。その原理は、系の基底状態の全エネルギーを電子密度汎関数法で表すことができるという数学的定理に基づいている。そして、密度汎関数法は、結晶の電子状態を計算する手法として信頼性が高い。
【0048】
このような密度汎関数法は、アンカー粒子7や包接材9と貴金属粒子6との界面における電子状態を予測するのに適している。そして、実際のシミュレーション値を基に選択した貴金属粒子、アンカー粒子及び包接材の組み合わせを基に設計した本実施形態の触媒は、貴金属粒子の粗大化が生じにくく、高温耐久後も高い浄化性能を維持することが確認されている。このような密度汎関数法を用いたシミュレーションのための解析ソフトウェアは市販されており、解析ソフトの計算条件の一例としては、以下のものが挙げられる。
【0049】
プリ/ポスト:Materials studio 3.2 (Accelrys社製)、ソルバ:DMol3 (Accelrys社製)、温度:絶対零度、近似:GGA近似
【0050】
また、本実施形態の触媒構造体1は、図1(b)のように、触媒5からなる触媒層3の下層に耐熱性の無機酸化物からなるアンダーコート層4を設けることができる。アンダーコート層4は、主として、ハニカム担体2のセル2aの角に配置されている。これにより、アンダーコート層4の上に被覆される触媒層中の触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができる。アンダーコート層における耐熱性無機酸化物としては、アルミナなどを使用することができる。
【0051】
このように、本実施形態の排ガス浄化用触媒5は、貴金属粒子6と、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7とを含む複数の触媒ユニット10を備える。さらに触媒5は、複数の触媒ユニット10を内包し、かつ、触媒ユニット10同士を互いに隔てる包接材9を備える。そして、アンカー粒子7及び包接材9は、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。これにより、アンカー粒子7及び包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の移動及び凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の排ガス浄化用触媒構造体1は、排ガス浄化用触媒5を含有した触媒層3と、触媒層3を担持する耐火性無機担体2とを備える。上述のように、本実施形態の排ガス浄化用触媒5は、900℃以上でも貴金属粒子の微細状態を維持することができる。そして、このような触媒5を耐火性無機担体2に塗布して、触媒層3を形成することにより、触媒層3の圧力損失が低減され、熱安定性・耐熱衝撃性及び機械的強度を高くすることができる。
【0053】
<第二実施形態>
以下、図面を用いて第二実施形態の触媒について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、繰り返しの説明は省略する。
【0054】
本実施形態の排ガス浄化用触媒(触媒粒子)15は、図6に示すように、貴金属粒子6と、アンカー粒子7と、第一助触媒粒子11とを含有している。アンカー粒子7は、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を表面に担持している。また、第一助触媒粒子11は、貴金属粒子6と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有している。さらに触媒粒子15は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8及び第一助触媒粒子11を共に包接し、複合粒子8と第一助触媒粒子11を互いに隔てる包接材9を含有する。
【0055】
触媒粒子15では、第一実施形態の触媒粒子5と同様に、貴金属粒子6とアンカー粒子7とが接触して担持することにより、貴金属粒子6の移動を抑制する。また、貴金属粒子6が担持されたアンカー粒子7を包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子6が包接材9により隔てられた区画を越えて移動することを物理的に抑制する。さらに、包接材9により隔てられた区画内にアンカー粒子7を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えてアンカー粒子7同士が接触し凝集することを抑制する。
【0056】
さらに、触媒粒子15では、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11も包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、第一助触媒粒子11の物理的移動をも抑制する。つまり、包接材9により隔てられた区画内に第一助触媒粒子11を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えて第一助触媒粒子11同士が接触し凝集することを抑制する。その結果、耐熱性が比較的低い第一助触媒粒子11が900℃を超える高温状態に曝されたとしても、第一助触媒粒子11が凝集し、比表面積が低下することを抑制することができる。
【0057】
そして、第一実施形態と同様に、アンカー粒子7及び包接材9の両方に、上記アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させる。これにより、アンカー粒子7のアンカー効果が増大し、貴金属粒子6がアンカー粒子7から包接材9に移動することを抑制する。そして、たとえ貴金属粒子6が包接材9の表面に移動したとしても包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。
【0058】
第一助触媒粒子11は、酸素吸蔵放出能を有するセリウム(Ce)及びプラセオジム(Pr)のうちの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。特に第一助触媒粒子としては、酸化セリウム(CeO2)や酸化プラセオジム(Pr6O11)のような酸素吸蔵放出能が高い化合物を主成分とすることが好ましい。Ce及びPrはいずれも複数の価数を取り、排ガス雰囲気変動により酸化数が変化するため、活性酸素の吸蔵及び放出が可能な材料である。
【0059】
また、包接材9により隔てられた区画内に含まれる助触媒ユニット12の平均粒子径は1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。そのため、助触媒ユニット12に含まれる第一助触媒粒子11の平均二次粒子径も1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。これによって第一助触媒粒子11の表面積が大きく向上するため、活性酸素の供給速度が向上し、触媒性能を高めることができる。なお、助触媒ユニット12の平均粒子径及び第一助触媒粒子11の平均二次粒子径の下限は、特に限定されない。ただ、後述するように、助触媒ユニット12の平均粒子径が包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径より大きいことが好ましい。そのため、助触媒ユニット12の平均粒子径及び第一助触媒粒子11の平均二次粒子径は、30nmを超えることが好ましい。なお、第一助触媒粒子の平均二次粒子径は、触媒粒子の製造過程における、この粒子を含有するスラリーを、レーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。なお、この場合の平均二次粒子径とは、メジアン径(D50)をいう。
【0060】
ここで、上述のように、貴金属粒子6とアンカー粒子7を含有した触媒ユニット10に関し、触媒ユニット10の平均粒子径Daと、触媒ユニット10を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Daの関係を満たすことが好ましい。さらに、触媒ユニット10と同様に、助触媒ユニット12の平均粒子径Dcと、助触媒ユニット12を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Dcの関係を満たすことが好ましい。つまり、図6に示すように、Db<Dcは、助触媒ユニット12の平均粒子径Dcが、包接材9の細孔9aの平均径Dbよりも大きいことを意味している。Db<Dcであることにより、第一助触媒粒子11が、包接材9に形成されている細孔9aを通して移動することが抑制される。したがって、他の区画に包接される第一助触媒粒子との凝集を低減することができる。その結果、第一助触媒粒子の表面積が高い状態で維持されるため、粒子表面における活性酸素の吸蔵及び放出を効率的に行うことができる。
【0061】
また、第一助触媒粒子の少なくとも一方は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。つまり、第一助触媒粒子は、酸化セリウムや酸化プラセオジムを主成分としている。そして、第一助触媒粒子の少なくとも一方に上記遷移金属を添加物として含有することが望ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つを含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO,NO浄化率を向上させることができる。
【0062】
ここで、触媒粒子15では、貴金属粒子6をロジウム(Rh)とし、アンカー粒子7が少なくともジルコニウム(Zr)を含む酸化物とすることができる。Rhは高酸化状態において触媒性能が低下しやすいが、アンカー粒子と第一助触媒粒子との距離を適切に調整することにより、Rhの高酸化化及び凝集を抑制することができる。
【0063】
このRhの高酸化化は、X線光電子分光法(XPS)によるRhの結合エネルギー分析により測定することができる。一般に、Rhの3d5軌道結合エネルギーは、メタル状態のRhが307.2eVであり、高酸化状態のRhが310.2eV付近であることが知られている。そして、アンカー材としてAl2O3やZrO2など酸化物を用いた場合には、Rhの3d5軌道結合エネルギーが308.8eV以上で触媒性能の低下が起こることから、3d5軌道結合エネルギーが308.8eV以下であることが望ましい。そして、アンカー粒子と第一助触媒粒子との距離を適切に調整することにより、Rhの3d5軌道結合エネルギーを308.8eV以下にすることができる。なお、結合エネルギーの測定時にはある元素を用いて帯電補正を行うことが一般的であり、含有量の多い元素の結合エネルギーを文献値に対して補正している。例えば、X線光電子分光装置内を高真空に保つためのポンプに由来するオイルミストなどに含有される炭化水素を利用し、この炭化水素のC1sピークを文献値と比較して補正を行う。
【0064】
上述のように、貴金属粒子6がロジウムの場合、アンカー粒子7はジルコニウムを主成分とする酸化物であることが好ましい。アンカー粒子7がアルミナなどを主成分としたものである場合には、ロジウムとアルミナが固溶し、ロジウムが高酸化化し、触媒活性が低下する場合がある。これに対して、Zrを含む酸化物、より好ましくはアンカー粒子中においてZrを原子パーセントで50%以上含む場合、Rhの高酸化化と凝集を抑制することができる。このようなZrを主成分とする酸化物としては、ジルコニア(ZrO2)やランタン添加ジルコニア(Zr−La−Ox)及びランタン−セリウム添加ジルコニア(Zr−La−Ce−Ox)などを挙げることができる。
【0065】
ここで、自動車用の排ガス浄化用触媒では、貴金属へ活性酸素を供給することが排気ガスの浄化にとって極めて重要である。そのために、貴金属の近傍に配設され、排気ガス雰囲気の変動時に活性酸素の吸蔵及び脱離を行う酸素吸蔵放出材(OSC材)は、触媒の浄化性能を向上させるために重要な材料である。
【0066】
このOSC材を添加させた排ガス浄化用触媒では、(1)触媒中のOSC材量(酸素吸放出量)、(2)OSC材の酸素吸放出速度、及び(3)貴金属−OSC材間の距離の三条件が極めて重要である。
【0067】
上記(1)に関し、触媒中のOSC材量が少なすぎると、リッチ雰囲気の場合に貴金属に充分な活性酸素を供給することができず、HC,COの浄化性能が低下する。逆にOSC材量が多すぎると、リーン雰囲気からストイキあるいはリッチ雰囲気へと大きく変動する際に、OSC材が吸蔵した活性酸素が過剰に放出され、NOx浄化性能が低下する。そのため、触媒中のOSC材量には適正値が存在し、このような適正値は実験から求めることができる。一般的なOSC材量は、触媒中の貴金属種及び貴金属使用量により異なるが、単位容量当たりCeO2換算で5〜100g/Lである。
【0068】
ここで、排ガス浄化用触媒中のOSC材量が同じである場合、貴金属−OSC材間の距離が近いほど、活性酸素の供給効率は上がる。そのため、雰囲気変動時においては、より短時間で貴金属に活性酸素を供給することができる。したがって、貴金属−OSC材間の距離が近いことは、上述した三条件のうちの(2)酸素吸放出速度の向上と同様の性能向上効果があると考えられる。
【0069】
貴金属−OSC材間の距離を近くする具体的手段については、貴金属をOSC材上に担持する方法が考えられる。しかし、貴金属をOSC材上に担持した構造は、以下の理由から必ずしも最適ではない場合がある。まず、OSC材は、アルミナ等と比較して、高温の排ガス雰囲気下では比表面積の低下が大きい。そのため、貴金属がOSC材上に担持された場合には、貴金属の凝集による比表面積の低下を招き易い。また、貴金属のうちロジウム(Rh)は、触媒活性が還元状態で高く、高酸化状態で低下する傾向がある。そして、OSC材上にロジウムが直接担持された場合には、Rh−OSC材界面を中心に活性酸素の供給が行われるため、ロジウムが高酸化状態となり、触媒性能の低下を招く虞がある。
【0070】
これに対し、OSC材上に貴金属が直接担持されない構造において、OSC材と貴金属との距離が離れすぎている場合には、貴金属への活性酸素の供給が遅れてしまう。そのため、加速時など、急激に排ガス流量が変化し、触媒雰囲気が変動する場合には、浄化反応が追随できず、浄化性能が低下してしまう。
【0071】
そのため、触媒粒子15は、貴金属粒子6及びアンカー粒子7を含有した触媒ユニット10の中心点と、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11を含有した助触媒ユニット12の中心点との間の平均距離を5nm〜300nmとすることが好ましい。平均距離をこの範囲とすることにより、貴金属へ活性酸素を効率的に供給しつつも、過剰な活性酸素の供給による触媒性能の低下を防止することができる。特に、触媒ユニット10の中心点と助触媒ユニット12の中心点との間の平均距離を40nm〜300nmとすることがより好ましい。
【0072】
上記触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の距離測定は、
(1)触媒粒子15のTEM−EDX分析又はHAADF−STEM分析、
(2)画像からのアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭抽出、
(3)抽出した輪郭を基に表面積から円近似及び中心点を設定、
(4)最近接中心点の検索と距離測定、
の手順で行うことができる。なお、上記距離測定方法はこのような方法に限られず、他の方法であっても客観的かつ再現性が得られる分析方法であれば良い。
【0073】
(1)触媒粒子15のTEM−EDX分析又はHAADF分析について
触媒粒子15をエポキシ樹脂にて包埋処理し、硬化後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作成する。その切片を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)又はHAADF−STEM(High−Angle Annular Dark−Field Scanning Transmission Electron Microscopy)により共包接粒子を観察し、アンカー粒子及び第一助触媒粒子、さらには包接材の判別を行う。具体例として、TEM−EDXを用いた場合の分析条件を説明すると、まず、得られた映像の中でコントラスト(影)の部分に焦点を当て、その部分の元素種を分析し、その元素を含む化合物粒子を特定する。
【0074】
なお、アンカー粒子と第一助触媒粒子は元素種が重複する場合があるが、貴金属を担持したアンカー粒子については、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により貴金属種の有無を検出することで、第一助触媒粒子と区別することができる。ただし、EDXのX線ビーム径に対し貴金属粒径が小さい場合には、貴金属の検出ができない場合がある。その場合、アンカー粒子と第一助触媒粒子がOSC材としてのCe又はPrを含有しているときには、予め求めておいたアンカー粒子及び第一助触媒粒子内の含有量と、Ce又はPrの検出強度比とを用いて判別を行うことが好ましい。HAADF−STEM像の場合はコントラストにより判別することができる。
【0075】
(2)画像からのアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭抽出について
上記(1)の分析で得られた像よりアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭を抽出する。抽出方法は画像処理ソフトを用い、コントラストにより自動で抽出しても良い。また、画像をOHPシートなどに写し取って、手動で抽出しても良い。
【0076】
(3)抽出した輪郭を基に表面積から円近似及び中心点を設定、及び(4)最近接中心点の検索と距離測定について
これら(3)及び(4)の手順については、いずれも市販の画像処理ソフトにより行うことができる。つまり、抽出した輪郭によりアンカー粒子及び第一助触媒粒子の面積を算出し、その面積と同じ面積の円を仮定する。そして、特定のアンカー粒子に最も近接している第一助触媒粒子を検索し、それぞれの円の中心距離を測定することにより、粒子間距離を求めることができる。
【0077】
図7は、触媒粒子15のTEM−EDX写真の一例を示す。図7に示すように、TEM−EDXを用いて得られた写真に画像処理を施して、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11について、それぞれの粒子の輪郭を抽出する。次に、それぞれの粒子の面積を求め、この面積と同じ面積の円を仮定する。そして、特定のアンカー粒子7(触媒ユニット10)に最も近接している第一助触媒粒子11(助触媒ユニット12)を検索し、それぞれの円の中心距離を測定する。なお、図7では、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11とを結ぶ直線を実線で示し、アンカー粒子7同士又は第一助触媒粒子11同士を結ぶ直線を破線で示す。
【0078】
さらに、触媒粒子15は、共包接粒子中における触媒ユニット10及び助触媒ユニット12の分散度が40%以上であることが好ましい。分散度は、次式1より求めることができる。
【0079】
【数1】
【0080】
ここで、σは、触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との中心間距離の分布の標準偏差である。また、Av.は、触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との平均中心間距離である。
【0081】
図8は、触媒粒子15中における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離と、その距離の出現頻度との関係を示すグラフである。図8に示すように、触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離を測定した結果のグラフにおいて、頻度分布が正規分布になると仮定した場合、任意の試料がσの範囲内に入る確率として分散度は表される。なお、標準偏差がσであるとは、触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離の68.27%が平均中心間距離Av(nm)±σ(nm)以内に分布していることを意味する。
【0082】
図9に、分散度が高い触媒粉末例の模式図(同図(a))と、分散度が低い触媒粉末例の模式図(同図(b))を示す。TEMなどによって実測した触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の距離が、仮に全て等しい距離である場合には、その触媒の分散度は100%である(これは、距離のばらつきが0であることを意味する)。また、この距離のばらつきが大きい場合には、その触媒の分散度は0%に近づく。つまり、触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の距離が全て幾何学的に均等に配置された場合はσが0となり、分散度は100%となる。
【0083】
そして、上述したように、このように定義した分散度は40%以上であることが好ましい。分散度40%以上であれば、互いの粒子間距離が十分に維持されており、偏りも少ないため、耐久後の化合物同士の凝集が抑制される。特に、分散度は50%以上であることがより好ましい。
【0084】
この分散度は、触媒粒子15を製造する過程において、アンカー粒子及び第一助触媒粒子、さらには包接材の前駆体を混合したスラリーの、乾燥直前におけるアンカー粒子及び第一助触媒粒子の凝集度合いと相関がある。そして、この凝集度合いはスラリーの攪拌力に依存するため、上記スラリーを激しく攪拌することにより、分散度を向上させることができる。
【0085】
このように、本実施形態の排ガス浄化用触媒15は、貴金属粒子6と貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7とを含む触媒ユニット10を備える。また、触媒15は、貴金属粒子6と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11を含む助触媒ユニット12を備える。さらに、触媒15は、触媒ユニット10及び助触媒ユニット12を共に内包し、かつ、触媒ユニット10における貴金属粒子6及びアンカー粒子7と助触媒ユニット12における第一助触媒粒子11とを互いに隔てる包接材9を備える。そして、アンカー粒子7及び包接材9は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。これにより、アンカー粒子7及び包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の移動及び凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。さらに、触媒15は、酸素吸蔵能を有する第一助触媒粒子11を、触媒作用を有する貴金属粒子6と非接触状態に置き、かつ、貴金属粒子6と接触しているアンカー粒子7と第一助触媒粒子11との間隔を所定の範囲に調整する。これにより、貴金属粒子6の過剰な酸化や酸素供給不足に由来した浄化性能の低下を防止できる。
【0086】
<第三実施形態>
以下、図面を用いて第三実施形態の触媒について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、繰り返しの説明は省略する。
【0087】
本実施形態の排ガス浄化用触媒25は、図10(a)に示すように、排ガス浄化用触媒構造体1の触媒層3Aを構成している。そして、触媒層3Aは、図10(b)及び(c)に示すように、複数の第二実施形態の触媒粒子15と、複数の第二助触媒粒子16とを含有した触媒粉末25により形成されている。
【0088】
従来の排ガス浄化用触媒としては、特開2008−93496号公報に示すように、貴金属粒子を担持した金属酸化物が高耐熱性酸化物により覆われた触媒活性種包接体と、助触媒粒子が高耐熱性酸化物により覆われた助触媒包接体とを含む粉末が開示されている。この触媒粉末では、助触媒粒子が耐熱性酸化物で覆われているため、助触媒粒子の凝集及び比表面積の低下が抑制され、高い耐久性を発揮することができる。
【0089】
ここで、特開2008−93496号公報の触媒粉末をハニカム担体の内部にコーティングし、触媒層を形成した際、触媒層内における触媒粉末の粒子間の細孔径は、助触媒粒子を覆う高耐熱性酸化物の細孔径よりもはるかに大きい。そのため、ハニカム担体の入口から触媒層内に流入する排気ガスは、高耐熱性酸化物の細孔よりも触媒粉末間の細孔を通過しやすい。したがって、例えば排気ガスが酸素過剰時の場合、高耐熱性酸化物により包接された助触媒成分が酸素を吸収しきるより先に触媒層の深部まで酸素が到達する。そのため、触媒層の深部における触媒粉末の周囲には酸素が過剰に存在することから、窒素酸化物の還元が行われにくい場合があった。また、排気ガスの空燃比(A/F)が変動する場合において、触媒層上部のみではA/F変動を吸収しきれず、排気ガスの浄化率が低下する場合があった。
【0090】
そこで、本実施形態の排ガス浄化用触媒(触媒粉末)25では、図10(b)に示すように、第二助触媒粒子16が触媒粒子15と共に触媒層3A内に分散されている。そして、第二助触媒粒子16は、複数の触媒粒子15の間に形成される細孔15aの中に配置されているため、この細孔内を通過する排気ガス中の酸素を効率的に吸蔵することができる。このため、触媒層の深部まで酸素が到達しにくくなることから、触媒粉末の周囲には酸素が過剰に存在し難くなり、窒素酸化物の還元が効率的に行われるようになる。また、リーン雰囲気からストイキあるいはリッチ雰囲気へと大きく変動する際には、第一助触媒粒子11及び第二助触媒粒子16が吸蔵した活性酸素を放出するため、HC、COの酸化も効率的に行うことができる。
【0091】
なお、本実施形態の排ガス浄化用触媒において、第一助触媒粒子及び第二助触媒粒子の総重量に対する第一助触媒粒子の重量の比は、0.3以上であることが好ましく、0.4〜0.8であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、第一助触媒粒子によりアンカー粒子上の貴金属粒子に対する酸素の吸蔵及び放出が効果的に行われつつ、第二助触媒粒子により過剰な酸素を吸蔵することができるため、NOx浄化性能をより向上させることができる。
【0092】
第二助触媒粒子16としては、第一助触媒粒子11と同様に、酸素吸蔵放出能を有するセリウム(Ce)及びプラセオジム(Pr)のうちの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。特に第二助触媒粒子16としては、酸化セリウム(CeO2)や酸化プラセオジム(Pr6O11)のような酸素吸蔵放出能が高い化合物を主成分とすることが好ましい。
【0093】
また、第二助触媒粒子16は、第一助触媒粒子11と同様に、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つ含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO,NO浄化率を向上させることができる。
【0094】
なお、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16は、平均粒子径(D50)が6μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、図10(b)に示すように、触媒層3内における、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径のことである。これらの平均粒子径が6μmを超える場合、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の外周部からの粒子の中心部までの距離が大きくなり、粒子中心部へのガス拡散性が著しく低下するため、浄化性能が低下する虞がある。また、6μmを超える場合、ハニカム担体へのコート時に剥離や偏りなどが起き易くなる。触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径は、適切な粒子間空隙が形成でき、さらに剥離を抑制できる1μm〜4μmの範囲であることがより好ましい。なお、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径は、これらの粒子を含有するスラリーをレーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。
【0095】
本実施形態の排ガス浄化用触媒は、第二実施形態の触媒粒子15により形成される細孔間に酸素吸蔵放出能を有する助触媒粒子を配設する。そのため、排気ガスの空燃比が変動する場合においても過剰な酸素を吸蔵でき、触媒層の内部においても高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0096】
[排ガス浄化用触媒の製造方法]
<第一実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第一実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8を粉砕する工程と、粉砕された複合粒子8を、包接材9の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程とを有する。
【0097】
具体的には、まず、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有したアンカー粒子7を準備する。このようなアンカー粒子7は、上述のようなAl2O3、CeO2、ZrO2、Y2O3及びNd2O3などアンカー粒子の主成分となる粉末を、アルカリ元素等の水溶液に混合し、攪拌及び乾燥することにより調製することができる。アルカリ元素等の水溶液としては、アルカリ元素等の硝酸塩及び酢酸塩などをイオン交換水等に溶解したものを使用することができる。アルカリ元素等の硝酸塩及び酢酸塩としては、酢酸ナトリウム(CH3CO2Na)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、酢酸カリウム(CH3CO2K)、硝酸カリウム(KNO3)、酢酸ルビジウム(CH3CO2Rb)、硝酸ルビジウム(RbNO3)、酢酸セシウム(CH3CO2Cs)、硝酸セシウム(CsNO3)、酢酸マグネシウム(Mg(CH3CO2)2)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、酢酸カルシウム(Ca(CH3CO2)2)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)酢酸ストロンチウム(Sr(CH3CO2)2)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)酢酸バリウム(Ba(CH3CO2)2)及び硝酸バリウム(Ba(NO3)2)などを使用することができる。なお、アルカリ元素等を含有したアンカー粒子としては、共沈法等で調製した従来公知のものを用いても良い。
【0098】
次に、アンカー粒子7に貴金属粒子6を担持する。このとき、貴金属粒子6は含浸法により担持することができる。そして、貴金属粒子6を表面に担持したアンカー粒子7をビーズミル等を用いて粉砕し、所望の粒子径とする。アンカー粒子7の粒子径としては、上述のように、例えば300nmとすることができる。なお、アンカー粒子7の原料として、酸化物コロイド等の微細な原料を用いることにより、破砕工程を省略することができる。
【0099】
その後、包接材9の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有した包接材スラリーを調製する。包接材9の前駆体としては、上述のように、包接材がアルミナを主成分とする場合、ベーマイト(AlOOH)を使用することが好ましく、シリカを主成分とする場合には、シリカゾルとゼオライトを使用することが好ましい。そして、上記包接材スラリーは、包接材9の前駆体を水等の溶媒に混合した後、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体を混合して攪拌することにより調製することができる。アルカリ元素及びアルカリ土類元素の前駆体としては、上述のように、これらの元素の酢酸塩や硝酸塩を使用することができる。
【0100】
次に、上記包接材スラリーに、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を粉砕したものを投入し、攪拌する。上記スラリーを攪拌することにより、アンカー粒子7の周囲にアルカリ元素等を含有した包接材9の前駆体が付着する。その後、このスラリーを乾燥及び焼成することにより、貴金属を担持したアンカー粒子7の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子(排ガス浄化用触媒)5を得ることができる。
【0101】
<第二実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第二実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず、第一実施形態の触媒の製造方法と同様に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有したアンカー粒子7を準備する。次に、アンカー粒子7に貴金属粒子6を担持する。貴金属の担持も上述のように含浸法を使用ことができる。そして、貴金属粒子6を表面に担持したアンカー粒子7を上述のように粉砕し、所望の粒子径とする。さらに第一助触媒粒子11もビーズミル等を用いて粉砕し、所望の粒子径とする。この際、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11は混合した状態で粉砕しても良いし、個別に粉砕しても良い。なお、上述と同様に、第一助触媒粒子11の原料として、酸化物コロイド等の微細な原料を用いることにより、破砕工程を省略することができる。
【0102】
次に、上記粉砕後、複合粒子8と第一助触媒粒子11を包接材9で包接するに際しては、複合粒子8を包接したものと第一助触媒粒子11を包接したものとを混合するのではなく、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを同時に包接材9で包接することが好ましい。これにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを均一にかつ偏りなく分散させることができる。
【0103】
具体的には、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを、アルカリ元素等及び包接材9の前駆体を分散させた包接材スラリーに投入し、攪拌する。そして、このスラリーを攪拌することにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9の前駆体が付着する。この際、スラリーの攪拌を激しくすることにより、それぞれの粒子がスラリー中で分散し、その結果、上記分散度を向上させることができる。その後、この混合スラリーを乾燥及び焼成することにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子15(排ガス浄化用触媒15)を得ることができる。
【0104】
<第三実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第三実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず、第二実施形態の触媒の製造方法と同様に、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子15を調製する。次に、触媒粒子15と、第二助触媒粒子16とを混合することにより、触媒粉末25(排ガス浄化用触媒25)を得ることができる。
【0105】
[排ガス浄化用触媒構造体の製造方法]
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず上述のように調製した排ガス浄化用触媒5,15,25を粉砕する。この粉砕は湿式でも乾式でも良いが、通常は排ガス浄化用触媒5,15,25をイオン交換水等の溶媒に混合し攪拌した後、ボールミル等を用いて粉砕する。これにより、排ガス浄化用触媒5,15,25が溶媒中で分散した触媒スラリーを得る。この際、必要に応じて触媒スラリーにバインダを添加する。なお、触媒スラリーにおける排ガス浄化用触媒5,15,25の平均粒子径(D50)は、6μm以下であることが好ましい。
【0106】
その後、上記触媒スラリーを耐火性無機担体(ハニカム担体)の内面に塗布し、乾燥及び焼成することにより、排ガス浄化用触媒構造体を得ることができる。
【0107】
[排ガス浄化システム]
本実施形態の排ガス浄化システム30は、図11に示すように、内燃機関31の排気ガス流路32に、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bを配置した構成とすることができる。そして、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bの少なくともいずれか一方に排ガス浄化用触媒5,15,25を有した触媒構造体を使用することが好ましい。
【0108】
本実施形態の排ガス浄化システム30をこのような構成とすることにより、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bを早期に活性化させ、低温域においても排ガスを浄化することができる。特に、本発明の排ガス浄化用触媒構造体は、極めて高温状態でも貴金属粒子の凝集を抑制することができるため、エキゾーストマニホールド34の直下に設けることも可能である。そして、エキゾーストマニホールド34の直下に設けることにより触媒構造体を早期に活性化することができるため、排気ガスを低温から効率的に浄化することが可能となる。なお、本実施形態の排ガス浄化システムは、図11に示す構成に限られない。例えば、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bの前後にさらに三元触媒やNOx吸着触媒を設けても良い。また、本実施形態の排ガス浄化システム30は、ガソリンエンジン、リーンバーンエンジン、直噴エンジン及びディーゼルエンジンなどを様々な内燃機関に用いることができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。なお、本実施例及び比較例での平均粒子径の測定には、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いた。
【0111】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Ca含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸カルシウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0112】
そして、Ca含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、実施例1のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、図1(c)に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をアルミナ及びカルシアからなる包接材で包接したものである。
【0113】
(Rh粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gのジルコニア粉末(ZrO2)に、硝酸ロジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Rhを担持したZrO2粉末を得た。次に、Rhを担持したZrO2粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0114】
次に、ベーマイトと、硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌した。そして、この溶液中に、粉砕したRh担持ZrO2粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃、3時間空気中で焼成し、実施例1のRh粉末を得た。なお、このRh粉末は、Rh担持ZrO2をアルミナからなる包接材で包接したものである。
【0115】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、CeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。なお、CeO2−ZrO2粉末におけるCeO2とZrO2の質量比は、20:80である。
【0116】
次に、上記Rh粉末200g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりRh触媒スラリーを調製した。
【0117】
そして、Rh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた実施例1の触媒構造体を調製した。
【0118】
[実施例2及び4〜8]
アンカー材種と、包接材中へ添加するアルカリ金属種とを表1の化合物に変更し、さらに触媒中のアンカー材、アルカリ金属、包接材及びPdの量を表1の値に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2及び4〜8の触媒構造体を調製した。
【0119】
[実施例3]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約65m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0120】
さらに、比表面積が約50m2/gの活性セリア粉末も同様に粉砕し、平均粒子径(D50)を200nmとした。
【0121】
次に、ベーマイトと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Sr含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸ストロンチウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0122】
そして、Sr含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃、3時間空気中で焼成し、実施例3のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、図6に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方を、アルミナ及び酸化ストロンチウムからなる包接材で共包接したものである。
【0123】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0124】
そして、まず、実施例1のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた実施例3の触媒構造体を調製した。なお、上記Pd触媒層は、図10に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方を、アルミナ及び酸化ストロンチウムからなる包接材で共包接した触媒粒子と、第二助触媒粒子たるCeO2−ZrO2粉末とを含有する。
【0125】
[比較例1]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0126】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌してベーマイト水溶液を調製した。そして、ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、比較例1のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をアルミナからなる包接材で包接したものである。
【0127】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0128】
そして、まず、実施例1のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、上記Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例1の触媒構造体を調製した。
【0129】
[比較例2]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0130】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Ca含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸カルシウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0131】
そして、Ca含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、比較例2のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、Pd担持ZrO2−CeO2粉末をアルミナ及びカルシアからなる包接材で包接したものである。
【0132】
(Rh粉末の調製)
硝酸ロジウム水溶液に比表面積が約150m2/gの活性アルミナ粉末を含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成することにより、Rh粉末を得た。
【0133】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0134】
次に、上記Rh粉末200g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりRh触媒スラリーを調製した。
【0135】
そして、Rh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例2の触媒構造体を調製した。
【0136】
[比較例3]
(Pd粉末の調製)
硝酸パラジウム水溶液に比表面積が約150m2/gの活性アルミナ粉末を含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成することにより、Pd粉末を得た。
【0137】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0138】
そして、まず、比較例2のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、上記Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例3の触媒構造体を調製した。
【0139】
[耐久試験方法]
排気量3500ccのガソリンエンジンの排気系に上記実施例1〜8及び比較例1〜3の各触媒を装着し、触媒入口の排気ガス温度を920℃として、50時間運転し、各触媒を劣化させた。なお、触媒入口の排気ガス温度を920℃とした場合、触媒内部の温度は約960℃になる。その後、排気量3500ccのガソリンエンジンの排気系に劣化後の各触媒を装着し、触媒入口温度を480℃とし、触媒の入口及び出口の炭化水素濃度から、次式2より炭化水素の転化率(HC転化率)を測定した。
【0140】
【数2】
【0141】
実施例1〜8及び比較例1〜3の貴金属種、貴金属担持基材種、パラジウムに対するアルカリ金属等のモル比、触媒粉末の粒径、触媒中の貴金属量及び耐久試験後のHC転化率を表1に示す。また、貴金属担持基材における各酸化物の質量比も表1の括弧内に記載した。
【0142】
【表1】
【0143】
実施例及び比較例より、アンカー粒子及び包接材の両方にアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させることにより、HC転化率が向上することがわかる。特に、実施例1と比較例1を比べると、比較例1の方が若干Pd量が少ないが、包接材にカルシウムを添加することにより、HC転化率が5%向上している。また、実施例7と比較例1を比べると、実施例7の方がPd量が少ないにもかかわらず、HC転化率が4%向上している。さらに、アルカリ元素等として、CaだけでなくMg,Sr,Ba,K及びNaを包接材に含有させることにより、HC転化率が向上している。
【0144】
さらに、実施例1及び比較例1におけるPd粒子の粒子径を、TEMを用いて測定した。図12には、実施例1のPd触媒層における耐久試験後のTEM写真を示す。図12より、実施例1では、耐久試験後における包接材上でのPd粒子径は80nmであり、アンカー粒子上でのPd粒子径は9nmであった。これに対し、比較例1では、耐久試験後における包接材上でのPd粒子径は150nmであり、アンカー粒子上でのPd粒子径は8nmであった。つまり、比較例1は実施例1より若干Pd含有量が少ないにも関わらず、包接材上でPd粒子が凝集し、粒成長していた。このことから、アンカー粒子だけでなく、包接材にもアルカリ元素等を含有させることにより、Pdの移動及び凝集を抑制できることがわかる。
【0145】
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、実施例では、触媒層として、Pt触媒層とRh触媒層の二層を形成したが、触媒層は一層であっても良く、三層以上であっても良い。また、図1(b)に示すアンダーコート層4を設けなくとも高い浄化性能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 排ガス浄化用触媒構造体
2 耐火性無機担体
3 触媒層
4 アンダーコート層
5,15,25 排ガス浄化用触媒
6 貴金属粒子
7 アンカー粒子
8 複合粒子
9 包接材
10 触媒ユニット
11 第一助触媒粒子
12 助触媒ユニット
16 第二助触媒粒子
30 排ガス浄化システム
31 内燃機関
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。詳細には、本発明は、高耐熱性を有し、さらに排気ガス中の有害物質を高効率で浄化することができる排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される排ガス浄化用触媒として、排気ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))を酸化又は還元する三元触媒が知られている。そして、近年の環境意識の高まりから、自動車等から排出される排気ガス規制がより一層強化されており、それに伴い三元触媒の改良が進められている。
【0003】
従来の三元触媒としては、貴金属粒子を金属酸化物に担持した粒子を、多孔質酸化物により覆った排ガス浄化用触媒が開示されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この排ガス浄化用触媒では、金属酸化物に希土類元素やアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有している。その結果、高温条件下においても貴金属粒子が金属酸化物上から移動し、凝集することが抑制されるため、数nm程度の粒子径を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−284534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに、特許文献1の排ガス浄化用触媒をハニカム担体に担持し、比較的使用温度が低い床下触媒や、エキゾーストマニホールド長が長いマニホールド触媒として使用した場合、貴金属粒子の凝集を効果的に抑制することができる。しかし、近年、排気規制が強化され、早期活性化のため、エキゾーストマニホールド長が短いマニホールド触媒として使用することが増加している。この場合、触媒の使用環境温度が高温化し、900℃を超える場合もある。その結果、たとえ特許文献1の排ガス浄化用触媒を使用したとしても、貴金属粒子の凝集を抑制することが難しくなる場合が生じてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、使用環境温度が高温化した場合であっても貴金属粒子の凝集を抑制し、排気ガス浄化性能を維持することができる排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属粒子を担持したアンカー粒子を含む複数の触媒ユニットと、複数の触媒ユニットを内包し、かつ、触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、を有する。そして、アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。
【0008】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、前記貴金属粒子とアンカー粒子との複合粒子を粉砕する工程を有する。さらに、粉砕された複合粒子を、包接材の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排ガス浄化用触媒は、アンカー粒子だけでなく、包接材にもアルカリ元素やアルカリ土類元素を含有させる。その結果、アンカー粒子及び包接材の表面での貴金属粒子の移動及び凝集を抑制できることから、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子を微細状態に維持し、製造直後の高い浄化性能を維持することができる。また、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、このような排ガス浄化用触媒を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す概略図である。図1(a)は、排ガス浄化用触媒構造体を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)の符号Bの部分を拡大した概略図である。図1(c)は、図1(b)の符号Cの部分を拡大した概略図である。
【図2】図2は、貴金属粒子が凝集するメカニズムを示す概略図である。図2(a)及び図2(b)は、従来の排ガス浄化用触媒における貴金属粒子の凝集状態を説明する概略図である。図2(c)及び図2(d)は、本実施形態の排ガス浄化用触媒における貴金属粒子の凝集状態を説明する概略図である。
【図3】図3は、排気耐久試験前の複合粒子の平均粒子径Daと包接材の平均細孔径Dbの比Da/Dbを横軸に、排気耐久試験後のCeO2の結晶成長比及びPtの表面積を縦軸にして、これらの関係を示すグラフである。
【図4】図4は、貴金属の粒子径と表面積との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、貴金属の粒子径と原子数及び表面積との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化用触媒を示す概略図である。
【図7】図7は、第二実施形態の排ガス浄化用触媒におけるアンカー粒子と第一助触媒粒子との間の距離を示した顕微鏡写真である。
【図8】図8は、触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の中心間距離と、出現頻度との関係を示すグラフである。
【図9】図9は、分散度が異なる排ガス浄化用触媒の例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す概略図である。図10(a)は、排ガス浄化用触媒構造体のセルを示す断面図である。図10(b)は、図10(a)の符号Bの部分を拡大した概略図である。図10(c)は、図10(b)の符号Cの部分を拡大した概略図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態に係る排ガス浄化システムを示す概略図である。
【図12】図12は、実施例1の排ガス浄化用触媒の透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
[排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体]
<第一実施形態>
図1では、本実施形態に係る排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用触媒構造体を示す。なお、本明細書において、排ガス浄化用触媒を単に触媒といい、排ガス浄化用触媒構造体を単に触媒構造体という場合がある。
【0013】
触媒構造体1は、図1(a)に示すように、複数のセル2aを有するハニカム担体(耐火性無機担体)2を備えている。排気ガスは、排気ガス流通方向Fに沿って各セル2a内を流通し、そこで触媒層と接触することにより浄化される。
【0014】
触媒構造体1では、担体2の内表面に触媒層が形成されている。具体的には、図1(b)に示すように、担体2の内表面上に触媒層3及びアンダーコート層4が形成されている。そして、触媒層3は、図1(c)に示すように、複数の触媒粒子(排ガス浄化用触媒)5により形成されている。
【0015】
触媒層3を構成する触媒粒子5は、貴金属粒子6と、アンカー粒子7とを含有している。アンカー粒子7は、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を表面に担持している。さらに触媒粒子5は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8を包接し、隣接する複合粒子8の間を互いに隔てる包接材9を含有する。
【0016】
触媒粒子5では、貴金属粒子6とアンカー粒子7とが接触して担持することにより、アンカー粒子7が化学的結合によるアンカー材として作用し、貴金属粒子6の移動を抑制する。また、貴金属粒子6が担持されたアンカー粒子7を包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子6が包接材9により隔てられた区画を越えて移動することを物理的に抑制する。さらに、包接材9により隔てられた区画内にアンカー粒子7を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えてアンカー粒子7同士が接触し凝集することを抑制する。これによって、アンカー粒子7が凝集することを防止するだけでなく、アンカー粒子7に担持された貴金属粒子6同士が凝集することも防止できる。その結果、触媒粒子5は、製造コストや環境負荷を大きくすることなく、貴金属粒子6の凝集による触媒活性の低下を抑制することができる。また、アンカー粒子7による貴金属粒子6の活性向上効果を維持することができる。
【0017】
ここで、図1(c)に示した触媒粒子5において、包接材9により隔てられた領域内では、貴金属粒子6と、アンカー粒子7の一次粒子が凝集した二次粒子とを含有した触媒ユニット10が包接されている。しかし、アンカー粒子7は、包接材9により隔てられた領域内において一次粒子として存在しても良い。つまり、触媒ユニット10は、貴金属粒子6とアンカー粒子7の一次粒子とを含有したものであっても良い。
【0018】
このように、貴金属粒子6及びアンカー粒子7の両方が包接材9で内包されることにより、貴金属粒子6の凝集を抑制することが可能となる。ただ、触媒の使用温度が高温化し、900℃を超える場合には、貴金属粒子の凝集が発生する場合がある。このような包接構造を有していてもなお貴金属粒子が凝集するメカニズムとしては、次のステップが考えられる。
【0019】
ステップ1:アンカー粒子の熱凝集及び結晶成長により、アンカー粒子の表面に貴金属粒子が押出され、貴金属粒子がアンカー粒子上で粒成長する(図2(a)参照)。
ステップ2:粒成長し、アンカー粒子の周縁部に押出された貴金属粒子が、アンカー粒子と包接材との界面から包接材上に移動する(図2(b)参照)。
ステップ3:包接材上に移動した貴金属粒子同士が包接材の結晶成長に伴い移動し、さらに粒成長する(図2(b)参照)。
【0020】
ステップ1では、図2(a)に示すように、触媒ユニット10の内部で貴金属粒子6Aの凝集が発生する。ただ、後述のように、単一の触媒ユニット10内に存在する貴金属の量は少ないため、たとえ凝集したとしても貴金属粒子6Aの直径を10nm程度に維持し、浄化性能の低下を抑えることができる。しかし、触媒温度が900℃を超える場合、熱振動等により貴金属粒子6Aとアンカー粒子7Aとの間の化学的結合が弱くなる。その結果、図2(b)に示すように、触媒ユニット10内で粒成長した貴金属粒子6Aが、アンカー粒子7Aと包接材9Aとの界面から包接材9A上に移動しやすくなる。特に触媒温度が950℃以上で、貴金属がパラジウムの場合、酸化パラジウム(PdO)からPdメタルへの還元反応が進行し易くなる。そして、触媒温度が960℃以上になるとPdメタルが包接材9Aに移動し、包接材9Aで凝集し、粒子径が大きい貴金属粒子6Bが生じる可能性が高くなる。
【0021】
このため本発明は、ステップ3での貴金属粒子の粒成長を抑制するために、これまでアンカー粒子に付与していた貴金属粒子に対するアンカー機能を包接材にも付与することを特徴とする。包接材にアンカー機能を付与することにより、たとえ包接材上に貴金属粒子が移動してきたとしても、包接材表面での貴金属粒子の移動を抑え、貴金属粒子同士のシンタリングを抑制することができる。
【0022】
そして、包接材にアンカー機能を付与させるために、包接材はアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することにより、包接材と貴金属粒子との間に化学結合が生じ、貴金属粒子の移動を抑制することができる。具体的には、後述する密度汎関数法よるシミュレーションの結果、包接材にアルカリ元素及びアルカリ土類元素を含有しなかった場合には比べ、これらを含有した場合には、貴金属粒子の包接材への吸着安定化エネルギーが小さくなる結果が得られた。このことから、包接材にアルカリ元素又はアルカリ土類元素を含有ことにより、貴金属粒子と包接材との間に化学的相互作用が発生し、安定化するため、包接材表面での貴金属粒子の移動が抑えられると推測される。なお、以下、アルカリ元素やアルカリ土類元素を「アルカリ元素等」ともいう。
【0023】
さらに、本実施形態の触媒粒子では、包接材中にアルカリ元素等が含有されているだけでなく、アンカー粒子にもアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方が含有されている必要がある。上述のように、包接材にアルカリ元素等を含有ことにより、包接材上での貴金属粒子の移動が抑えられるが、アンカー粒子にもアルカリ元素等を含有することにより、アンカー粒子上での貴金属粒子の移動が抑制される。つまり、アンカー粒子中にアルカリ元素等を含有させない場合でもアンカー粒子と貴金属粒子との相互作用により、貴金属粒子の移動及び凝集を抑制することができる。本実施形態では、このアンカー粒子中にさらにアルカリ元素等を含有させることにより、アンカー粒子と貴金属粒子との間の相互作用をさらに増加させる。その結果、上記ステップ2における貴金属粒子の包接材上への移動を抑制することができる。
【0024】
このように、本実施形態の触媒(触媒粒子)5では、図2(b)に示すように、アンカー粒子7及び包接材9の両方に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させる。これにより、アンカー粒子7のアンカー効果が増大し、貴金属粒子6がアンカー粒子7から包接材9に移動することを抑制する。そして、たとえ貴金属粒子6が包接材9の表面に移動したとしても包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6Cの凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6Cを微細状態に維持し、製造直後の高い浄化性能を維持することができる。
【0025】
なお、アルカリ元素及びアルカリ土類元素は、包接材やアンカー粒子中に含有されていれば貴金属粒子の凝集を抑制することが可能となる。つまり、アルカリ元素及びアルカリ土類元素が包接材やアンカー粒子の表面に担持されていても良く、包接材やアンカー粒子の内部に混合物として存在していても良い。また、包接材やアンカー粒子を構成する元素とアルカリ元素及びアルカリ土類元素とが固溶し、固溶体を形成していても良い。つまり、包接材やアンカー粒子中にアルカリ元素等を含有することによって、貴金属粒子との間の化学的相互作用が増加するため、アルカリ元素等の混合状態は如何なるものであっても良い。
【0026】
包接材及びアンカー粒子に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらのアルカリ元素等を含有することにより、包接材やアンカー粒子と貴金属粒子との間のアンカー効果が増加するため、貴金属粒子の凝集を抑制することができる。これらの中でも特に、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも1つが包接材及びアンカー粒子に含有されることが好ましい。これらの元素は、密度汎関数法よるシミュレーションの結果、貴金属粒子の吸着安定化エネルギーが特に小さくなる結果が得られ、包接材及びアンカー粒子のアンカー効果の更なる増大が期待できる。なお、アルカリ元素及びアルカリ土類元素は、酸化物の状態で包接材及びアンカー粒子に含有されていることが好ましい。
【0027】
前記包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.5から2.0の範囲であることが好ましい。つまり、(排ガス浄化用触媒中の貴金属粒子の含有量)/(排ガス浄化用触媒中の包接材におけるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量)がモル比で0.5から2.0の範囲であることが好ましい。排ガス浄化用触媒の単位質量あたりのアルカリ元素等の含有量がこの範囲内であることにより、包接材表面での貴金属粒子の移動を抑え、貴金属粒子同士のシンタリングを抑制することができる。また、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.8から1.5の範囲であることがより好ましい。この範囲内であることにより、貴金属粒子のシンタリングをより抑制することができる。なお、包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量がこの範囲外であっても、本発明の効果を発揮することができる。しかし、含有量が多すぎる場合、包接材の比表面積の減少による包接能力の低下や、包接材の細孔の減少によるガス拡散性の低下を招き、触媒性能が低下する虞がある。また、含有量が少なすぎる場合、十分なアンカー効果が得られず、包接材上で貴金属粒子の粒成長を抑制できずに、触媒性能が低下する虞がある。
【0028】
貴金属粒子6としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)及びルテニウム(Ru)の中から選ばれる少なくとも一つを使用することができる。この中でも特に白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びロジウム(Rh)が高い浄化性能を発揮することができる。
【0029】
貴金属粒子6としては、上記の中でも特にパラジウム(Pd)が好ましい。パラジウムは高温での浄化性能に優れる。加えて、パラジウムは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)との間の吸着安定化エネルギーが特に小さくなる傾向がある。そのため、アルカリ元素等としてこれらが包接材及びアンカー粒子に含有された場合、包接材及びアンカー粒子の表面におけるパラジウムのシンタリングを極めて抑制することができる。その結果、高温でもパラジウムを微細状態で維持することができるため、排気ガスを効率的に浄化することができる。
【0030】
また、アンカー粒子7としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)及び酸化ネオジム(Nd2O3)の中から選ばれる少なくとも一つを主成分とすることができる。この中でも、Al2O3やZrO2は高温耐熱性に優れ、高い比表面積を維持できるため、アンカー粒子7としてAl2O3やZrO2を主成分とすることが好ましい。なお、本明細書において、主成分とは粒子中の含有量が50モルパーセント以上の成分のことをいう。
【0031】
包接材9は、アルミニウム(Al)及びケイ素(Si)の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。包接材9としては、アンカー粒子を包接でき、かつ、ガス透過性を確保できる材料が好ましい。このような観点から、Al及びSiの少なくとも一つを含む化合物、例えばAl2O3及びSiO2などは細孔容積が大きく、高いガス拡散性を確保することができる。そのため、包接材9は、Al2O3及びSiO2を主成分とし、さらにアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することが好ましい。なお、包接材は、Al及びSiの複合化合物であっても良い。
【0032】
ここで、触媒粒子5で使用される包接材9は、触媒ユニット10の周囲を完全に包囲するわけではない。つまり、包接材9は、触媒ユニット10の物理的移動を抑制する程度に覆いつつも、排気ガスや活性酸素が透過できる程度の細孔を有している。具体的には、図1(c)に示すように、包接材9は、触媒ユニット10を適度に包接し、触媒ユニット同士の凝集を抑制している。さらに、包接材9は、複数の細孔9aを有しているため、排気ガスや活性酸素が通過することができる。この細孔9aの細孔径は、30nm以下が好ましく、10nm〜30nmがより好ましい。なお、この細孔径は、ガス吸着法により求めることができる。
【0033】
上述のように、このような包接材9としては、アルミナやシリカを使用することができる。包接材がアルミナを主成分とする場合、前駆体としてベーマイト(AlOOH)を使用することが好ましい。つまり、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を、ベーマイトを水等の溶媒に分散させたスラリーに投入し、攪拌する。これにより、アンカー粒子7の周囲にベーマイトが付着する。そして、この混合スラリーを乾燥及び焼成することにより、アンカー粒子7の周囲でベーマイトが脱水縮合し、ベーマイト由来のγアルミナからなる包接材が形成される。このようなベーマイト由来のアルミナからなる包接材は、アンカー粒子7を覆いつつも、30nm以下の細孔を多く有しているため、ガス透過性にも優れている。
【0034】
同様に、包接材がシリカを主成分とする場合には、前駆体としてシリカゾルとゼオライトを使用することが好ましい。つまり、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を、シリカゾル及びゼオライトを溶媒に分散させたスラリーに投入し、攪拌し、乾燥及び焼成することにより、シリカからなる包接材が形成される。このようなシリカゾル及びゼオライト由来のシリカからなる包接材も、アンカー粒子7を覆いつつも、30nm以下の細孔を多く有しているため、ガス透過性に優れている。
【0035】
なお、包接材9により隔てられた区画内に含まれる触媒ユニット10の平均粒子径は300nm以下であることが好ましい。そのため、触媒ユニット10に含まれるアンカー粒子7の平均二次粒子径も300nm以下であることが好ましい。この場合には、貴金属を微粒子状態に維持することができる。より好ましい触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子の平均二次粒子径は200nm以下である。これにより、アンカー粒子の二次粒子上に担持される貴金属量がさらに減るため、貴金属の凝集を抑制することができる。なお、触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子7の平均二次粒子径の下限は特に限定されないが、例えば5nmとすることができる。ただ、後述するように、触媒ユニット10の平均粒子径が包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径より大きいことが好ましい。そのため、触媒ユニット10の平均粒子径及びアンカー粒子7の平均二次粒子径は、30nmを超えることがより好ましい。
【0036】
アンカー粒子の平均二次粒子径は、触媒粒子の製造過程における、この粒子を含有するスラリーを、レーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。なお、この場合の平均二次粒子径とは、メジアン径(D50)をいう。また、得られた触媒粉末の透過型電子顕微鏡(TEM)の写真より、アンカー粒子の平均二次粒子径や後述する貴金属粒子の粒子径を測定することもできる。さらに、触媒ユニット10の平均粒子径もTEM写真より測定することができる。
【0037】
また、貴金属粒子6の平均粒子径は2nm以上10nm以下の範囲内にあることが望ましい。貴金属粒子6の平均粒子径が2nm以上である場合には、貴金属粒子6自身の移動によるシンタリングを低減することができる。また、貴金属粒子6の平均粒子径が10nm以下である場合には、排気ガスとの反応性の低下を抑えることができる。
【0038】
ここで、貴金属粒子6とアンカー粒子7とを含有した触媒ユニット10に関し、その触媒ユニット10の平均粒子径Daと、触媒ユニット10を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Daの関係を満たすことが好ましい。つまり、図1(c)に示すように、Db<Daは、触媒ユニット10の平均粒子径Daが、包接材9の細孔9aの平均径Dbよりも大きいことを意味している。Db<Daであることにより、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8が、包接材9に形成されている細孔9aを通して移動することが抑制される。したがって、他の区画に包接される複合粒子8との凝集を低減することができる。
【0039】
なお、上記不等式Db<Daの効果は、本発明者らの実験により確認されている。図3は、排気耐久試験前の複合粒子8の平均粒子径Daと包接材の平均細孔径Dbの比Da/Dbを横軸に、排気耐久試験後のアンカー粒子7としてのセリアの結晶成長比及び貴金属粒子6としての白金の表面積を縦軸にして、これらの関係を示すグラフである。図3から、Da/Dbが1を超える場合にはCeO2の結晶成長比が顕著に低下し、CeO2の焼結が少ないことが分かる。また、耐久試験後でもPtの表面積が高い状態で維持され、Ptの凝集が抑制されていることが分かる。
【0040】
さらに、貴金属粒子6の80%以上はアンカー粒子7に接触していることが望ましい。アンカー粒子7と接触している貴金属粒子6の割合が80%未満であると、アンカー粒子7上に存在しない貴金属粒子6が増加するため、貴金属粒子6の移動によってシンタリングが進むことがある。
【0041】
また、アンカー粒子7は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びネオジム(Nd)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。つまり、上述のように、アンカー粒子7はアルミナやジルコニアを主成分としている。そして、アンカー粒子は、上記遷移金属を添加物として含有することが望ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つを含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO及びNOx浄化率を向上させることができる。
【0042】
また、包接材9により隔てられた区画内には、貴金属粒子6を合計で8×10−20モル以下の量で含有することが好ましい。つまり、一つの触媒ユニット10内において、貴金属粒子6のモル数は8×10−20モル以下であることが好ましい。包接材9により隔てられた区画内では、高温状態において複数個の貴金属粒子6が移動し、互いに凝集する場合がある。この場合、アンカー粒子7の表面で一つ又は複数個の貴金属粒に凝集する。
【0043】
ここで、一つの触媒ユニット10内で貴金属粒子6が凝集した場合に、凝集した貴金属粒子6の粒径が10nm以下であれば、充分な触媒活性を示し、凝集による劣化を抑制することができる。図4は、貴金属としての白金やパラジウムに関し、粒子径と表面積との関係を示すグラフである。なお、図4では白金とパラジウムの場合でほぼ同じ曲線を示すので、一つの曲線として示している。図4から明らかなように、貴金属の粒子径が10nm以下であれば表面積が大きいため、凝集による触媒活性の劣化を抑制することができる。
【0044】
そして、図5は、貴金属としての白金やパラジウムに関し、粒子径と原子数との関係を示すグラフである。なお、図5では白金とパラジウムの場合でほぼ同じ曲線を示すので、一つの曲線として示している。図5から明らかなように、粒子径が10nmであるとき、貴金属の原子数は約48000であり、この値をモル数に換算すると約8×10−20モルとなる。これらの観点から、触媒ユニット10内の貴金属量を制限し、8×10−20モル以下とすることで、たとえ触媒ユニット10内で貴金属が1個に凝集しても、触媒活性の劣化を抑制することができる。なお、触媒ユニット10内に含まれる貴金属量を8×10−20モル以下にする方法としては、貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7の粒径を小さくすることが挙げられる。
【0045】
さらに、図1(c)に示す触媒粒子5において、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーがEaであり、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーがEbであるとき、EaがEbよりも小さい値であること(Ea<Eb)が好ましい。貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaが、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbよりも小さいことにより、貴金属粒子6が包接材9に移動することを抑制できる。その結果、貴金属粒子6の凝集をさらに低減することができる。
【0046】
また、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaと、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbとの差(Eb−Ea)が、10.0cal/molを超えることがより好ましい。吸着安定化エネルギー差が10.0cal/molを超えることにより、貴金属粒子6が包接材9に移動することをより確実に抑制することができる。
【0047】
なお、貴金属粒子6のアンカー粒子7への吸着安定化エネルギーEaや、貴金属粒子6の包接材9への吸着安定化エネルギーEbは、いずれも密度汎関数法を用いたシミュレーションにより算出することができる。この密度汎関数法は、多電子間の相関効果を取り入れたハミルトニアンを導入して、結晶の電子状態を予測する方法である。その原理は、系の基底状態の全エネルギーを電子密度汎関数法で表すことができるという数学的定理に基づいている。そして、密度汎関数法は、結晶の電子状態を計算する手法として信頼性が高い。
【0048】
このような密度汎関数法は、アンカー粒子7や包接材9と貴金属粒子6との界面における電子状態を予測するのに適している。そして、実際のシミュレーション値を基に選択した貴金属粒子、アンカー粒子及び包接材の組み合わせを基に設計した本実施形態の触媒は、貴金属粒子の粗大化が生じにくく、高温耐久後も高い浄化性能を維持することが確認されている。このような密度汎関数法を用いたシミュレーションのための解析ソフトウェアは市販されており、解析ソフトの計算条件の一例としては、以下のものが挙げられる。
【0049】
プリ/ポスト:Materials studio 3.2 (Accelrys社製)、ソルバ:DMol3 (Accelrys社製)、温度:絶対零度、近似:GGA近似
【0050】
また、本実施形態の触媒構造体1は、図1(b)のように、触媒5からなる触媒層3の下層に耐熱性の無機酸化物からなるアンダーコート層4を設けることができる。アンダーコート層4は、主として、ハニカム担体2のセル2aの角に配置されている。これにより、アンダーコート層4の上に被覆される触媒層中の触媒活性成分がセル角へ局所的に偏在したり、セル平坦部(セル壁部分)にコートされるべき触媒活性成分量が低減したり、触媒層が担体上から脱落することを防ぐことができる。アンダーコート層における耐熱性無機酸化物としては、アルミナなどを使用することができる。
【0051】
このように、本実施形態の排ガス浄化用触媒5は、貴金属粒子6と、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7とを含む複数の触媒ユニット10を備える。さらに触媒5は、複数の触媒ユニット10を内包し、かつ、触媒ユニット10同士を互いに隔てる包接材9を備える。そして、アンカー粒子7及び包接材9は、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。これにより、アンカー粒子7及び包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の移動及び凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。
【0052】
さらに、本実施形態の排ガス浄化用触媒構造体1は、排ガス浄化用触媒5を含有した触媒層3と、触媒層3を担持する耐火性無機担体2とを備える。上述のように、本実施形態の排ガス浄化用触媒5は、900℃以上でも貴金属粒子の微細状態を維持することができる。そして、このような触媒5を耐火性無機担体2に塗布して、触媒層3を形成することにより、触媒層3の圧力損失が低減され、熱安定性・耐熱衝撃性及び機械的強度を高くすることができる。
【0053】
<第二実施形態>
以下、図面を用いて第二実施形態の触媒について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、繰り返しの説明は省略する。
【0054】
本実施形態の排ガス浄化用触媒(触媒粒子)15は、図6に示すように、貴金属粒子6と、アンカー粒子7と、第一助触媒粒子11とを含有している。アンカー粒子7は、貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を表面に担持している。また、第一助触媒粒子11は、貴金属粒子6と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有している。さらに触媒粒子15は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8及び第一助触媒粒子11を共に包接し、複合粒子8と第一助触媒粒子11を互いに隔てる包接材9を含有する。
【0055】
触媒粒子15では、第一実施形態の触媒粒子5と同様に、貴金属粒子6とアンカー粒子7とが接触して担持することにより、貴金属粒子6の移動を抑制する。また、貴金属粒子6が担持されたアンカー粒子7を包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、貴金属粒子6が包接材9により隔てられた区画を越えて移動することを物理的に抑制する。さらに、包接材9により隔てられた区画内にアンカー粒子7を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えてアンカー粒子7同士が接触し凝集することを抑制する。
【0056】
さらに、触媒粒子15では、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11も包接材9で覆い、内包する形態とすることにより、第一助触媒粒子11の物理的移動をも抑制する。つまり、包接材9により隔てられた区画内に第一助触媒粒子11を含むことにより、包接材9により隔てられた区画を越えて第一助触媒粒子11同士が接触し凝集することを抑制する。その結果、耐熱性が比較的低い第一助触媒粒子11が900℃を超える高温状態に曝されたとしても、第一助触媒粒子11が凝集し、比表面積が低下することを抑制することができる。
【0057】
そして、第一実施形態と同様に、アンカー粒子7及び包接材9の両方に、上記アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させる。これにより、アンカー粒子7のアンカー効果が増大し、貴金属粒子6がアンカー粒子7から包接材9に移動することを抑制する。そして、たとえ貴金属粒子6が包接材9の表面に移動したとしても包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。
【0058】
第一助触媒粒子11は、酸素吸蔵放出能を有するセリウム(Ce)及びプラセオジム(Pr)のうちの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。特に第一助触媒粒子としては、酸化セリウム(CeO2)や酸化プラセオジム(Pr6O11)のような酸素吸蔵放出能が高い化合物を主成分とすることが好ましい。Ce及びPrはいずれも複数の価数を取り、排ガス雰囲気変動により酸化数が変化するため、活性酸素の吸蔵及び放出が可能な材料である。
【0059】
また、包接材9により隔てられた区画内に含まれる助触媒ユニット12の平均粒子径は1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。そのため、助触媒ユニット12に含まれる第一助触媒粒子11の平均二次粒子径も1000nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。これによって第一助触媒粒子11の表面積が大きく向上するため、活性酸素の供給速度が向上し、触媒性能を高めることができる。なお、助触媒ユニット12の平均粒子径及び第一助触媒粒子11の平均二次粒子径の下限は、特に限定されない。ただ、後述するように、助触媒ユニット12の平均粒子径が包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径より大きいことが好ましい。そのため、助触媒ユニット12の平均粒子径及び第一助触媒粒子11の平均二次粒子径は、30nmを超えることが好ましい。なお、第一助触媒粒子の平均二次粒子径は、触媒粒子の製造過程における、この粒子を含有するスラリーを、レーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。なお、この場合の平均二次粒子径とは、メジアン径(D50)をいう。
【0060】
ここで、上述のように、貴金属粒子6とアンカー粒子7を含有した触媒ユニット10に関し、触媒ユニット10の平均粒子径Daと、触媒ユニット10を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Daの関係を満たすことが好ましい。さらに、触媒ユニット10と同様に、助触媒ユニット12の平均粒子径Dcと、助触媒ユニット12を内包する包接材9に形成されている細孔9aの平均細孔径Dbとが、Db<Dcの関係を満たすことが好ましい。つまり、図6に示すように、Db<Dcは、助触媒ユニット12の平均粒子径Dcが、包接材9の細孔9aの平均径Dbよりも大きいことを意味している。Db<Dcであることにより、第一助触媒粒子11が、包接材9に形成されている細孔9aを通して移動することが抑制される。したがって、他の区画に包接される第一助触媒粒子との凝集を低減することができる。その結果、第一助触媒粒子の表面積が高い状態で維持されるため、粒子表面における活性酸素の吸蔵及び放出を効率的に行うことができる。
【0061】
また、第一助触媒粒子の少なくとも一方は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。つまり、第一助触媒粒子は、酸化セリウムや酸化プラセオジムを主成分としている。そして、第一助触媒粒子の少なくとも一方に上記遷移金属を添加物として含有することが望ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つを含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO,NO浄化率を向上させることができる。
【0062】
ここで、触媒粒子15では、貴金属粒子6をロジウム(Rh)とし、アンカー粒子7が少なくともジルコニウム(Zr)を含む酸化物とすることができる。Rhは高酸化状態において触媒性能が低下しやすいが、アンカー粒子と第一助触媒粒子との距離を適切に調整することにより、Rhの高酸化化及び凝集を抑制することができる。
【0063】
このRhの高酸化化は、X線光電子分光法(XPS)によるRhの結合エネルギー分析により測定することができる。一般に、Rhの3d5軌道結合エネルギーは、メタル状態のRhが307.2eVであり、高酸化状態のRhが310.2eV付近であることが知られている。そして、アンカー材としてAl2O3やZrO2など酸化物を用いた場合には、Rhの3d5軌道結合エネルギーが308.8eV以上で触媒性能の低下が起こることから、3d5軌道結合エネルギーが308.8eV以下であることが望ましい。そして、アンカー粒子と第一助触媒粒子との距離を適切に調整することにより、Rhの3d5軌道結合エネルギーを308.8eV以下にすることができる。なお、結合エネルギーの測定時にはある元素を用いて帯電補正を行うことが一般的であり、含有量の多い元素の結合エネルギーを文献値に対して補正している。例えば、X線光電子分光装置内を高真空に保つためのポンプに由来するオイルミストなどに含有される炭化水素を利用し、この炭化水素のC1sピークを文献値と比較して補正を行う。
【0064】
上述のように、貴金属粒子6がロジウムの場合、アンカー粒子7はジルコニウムを主成分とする酸化物であることが好ましい。アンカー粒子7がアルミナなどを主成分としたものである場合には、ロジウムとアルミナが固溶し、ロジウムが高酸化化し、触媒活性が低下する場合がある。これに対して、Zrを含む酸化物、より好ましくはアンカー粒子中においてZrを原子パーセントで50%以上含む場合、Rhの高酸化化と凝集を抑制することができる。このようなZrを主成分とする酸化物としては、ジルコニア(ZrO2)やランタン添加ジルコニア(Zr−La−Ox)及びランタン−セリウム添加ジルコニア(Zr−La−Ce−Ox)などを挙げることができる。
【0065】
ここで、自動車用の排ガス浄化用触媒では、貴金属へ活性酸素を供給することが排気ガスの浄化にとって極めて重要である。そのために、貴金属の近傍に配設され、排気ガス雰囲気の変動時に活性酸素の吸蔵及び脱離を行う酸素吸蔵放出材(OSC材)は、触媒の浄化性能を向上させるために重要な材料である。
【0066】
このOSC材を添加させた排ガス浄化用触媒では、(1)触媒中のOSC材量(酸素吸放出量)、(2)OSC材の酸素吸放出速度、及び(3)貴金属−OSC材間の距離の三条件が極めて重要である。
【0067】
上記(1)に関し、触媒中のOSC材量が少なすぎると、リッチ雰囲気の場合に貴金属に充分な活性酸素を供給することができず、HC,COの浄化性能が低下する。逆にOSC材量が多すぎると、リーン雰囲気からストイキあるいはリッチ雰囲気へと大きく変動する際に、OSC材が吸蔵した活性酸素が過剰に放出され、NOx浄化性能が低下する。そのため、触媒中のOSC材量には適正値が存在し、このような適正値は実験から求めることができる。一般的なOSC材量は、触媒中の貴金属種及び貴金属使用量により異なるが、単位容量当たりCeO2換算で5〜100g/Lである。
【0068】
ここで、排ガス浄化用触媒中のOSC材量が同じである場合、貴金属−OSC材間の距離が近いほど、活性酸素の供給効率は上がる。そのため、雰囲気変動時においては、より短時間で貴金属に活性酸素を供給することができる。したがって、貴金属−OSC材間の距離が近いことは、上述した三条件のうちの(2)酸素吸放出速度の向上と同様の性能向上効果があると考えられる。
【0069】
貴金属−OSC材間の距離を近くする具体的手段については、貴金属をOSC材上に担持する方法が考えられる。しかし、貴金属をOSC材上に担持した構造は、以下の理由から必ずしも最適ではない場合がある。まず、OSC材は、アルミナ等と比較して、高温の排ガス雰囲気下では比表面積の低下が大きい。そのため、貴金属がOSC材上に担持された場合には、貴金属の凝集による比表面積の低下を招き易い。また、貴金属のうちロジウム(Rh)は、触媒活性が還元状態で高く、高酸化状態で低下する傾向がある。そして、OSC材上にロジウムが直接担持された場合には、Rh−OSC材界面を中心に活性酸素の供給が行われるため、ロジウムが高酸化状態となり、触媒性能の低下を招く虞がある。
【0070】
これに対し、OSC材上に貴金属が直接担持されない構造において、OSC材と貴金属との距離が離れすぎている場合には、貴金属への活性酸素の供給が遅れてしまう。そのため、加速時など、急激に排ガス流量が変化し、触媒雰囲気が変動する場合には、浄化反応が追随できず、浄化性能が低下してしまう。
【0071】
そのため、触媒粒子15は、貴金属粒子6及びアンカー粒子7を含有した触媒ユニット10の中心点と、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11を含有した助触媒ユニット12の中心点との間の平均距離を5nm〜300nmとすることが好ましい。平均距離をこの範囲とすることにより、貴金属へ活性酸素を効率的に供給しつつも、過剰な活性酸素の供給による触媒性能の低下を防止することができる。特に、触媒ユニット10の中心点と助触媒ユニット12の中心点との間の平均距離を40nm〜300nmとすることがより好ましい。
【0072】
上記触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の距離測定は、
(1)触媒粒子15のTEM−EDX分析又はHAADF−STEM分析、
(2)画像からのアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭抽出、
(3)抽出した輪郭を基に表面積から円近似及び中心点を設定、
(4)最近接中心点の検索と距離測定、
の手順で行うことができる。なお、上記距離測定方法はこのような方法に限られず、他の方法であっても客観的かつ再現性が得られる分析方法であれば良い。
【0073】
(1)触媒粒子15のTEM−EDX分析又はHAADF分析について
触媒粒子15をエポキシ樹脂にて包埋処理し、硬化後、ウルトラミクロトームにより超薄切片を作成する。その切片を用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)又はHAADF−STEM(High−Angle Annular Dark−Field Scanning Transmission Electron Microscopy)により共包接粒子を観察し、アンカー粒子及び第一助触媒粒子、さらには包接材の判別を行う。具体例として、TEM−EDXを用いた場合の分析条件を説明すると、まず、得られた映像の中でコントラスト(影)の部分に焦点を当て、その部分の元素種を分析し、その元素を含む化合物粒子を特定する。
【0074】
なお、アンカー粒子と第一助触媒粒子は元素種が重複する場合があるが、貴金属を担持したアンカー粒子については、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により貴金属種の有無を検出することで、第一助触媒粒子と区別することができる。ただし、EDXのX線ビーム径に対し貴金属粒径が小さい場合には、貴金属の検出ができない場合がある。その場合、アンカー粒子と第一助触媒粒子がOSC材としてのCe又はPrを含有しているときには、予め求めておいたアンカー粒子及び第一助触媒粒子内の含有量と、Ce又はPrの検出強度比とを用いて判別を行うことが好ましい。HAADF−STEM像の場合はコントラストにより判別することができる。
【0075】
(2)画像からのアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭抽出について
上記(1)の分析で得られた像よりアンカー粒子及び第一助触媒粒子の輪郭を抽出する。抽出方法は画像処理ソフトを用い、コントラストにより自動で抽出しても良い。また、画像をOHPシートなどに写し取って、手動で抽出しても良い。
【0076】
(3)抽出した輪郭を基に表面積から円近似及び中心点を設定、及び(4)最近接中心点の検索と距離測定について
これら(3)及び(4)の手順については、いずれも市販の画像処理ソフトにより行うことができる。つまり、抽出した輪郭によりアンカー粒子及び第一助触媒粒子の面積を算出し、その面積と同じ面積の円を仮定する。そして、特定のアンカー粒子に最も近接している第一助触媒粒子を検索し、それぞれの円の中心距離を測定することにより、粒子間距離を求めることができる。
【0077】
図7は、触媒粒子15のTEM−EDX写真の一例を示す。図7に示すように、TEM−EDXを用いて得られた写真に画像処理を施して、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11について、それぞれの粒子の輪郭を抽出する。次に、それぞれの粒子の面積を求め、この面積と同じ面積の円を仮定する。そして、特定のアンカー粒子7(触媒ユニット10)に最も近接している第一助触媒粒子11(助触媒ユニット12)を検索し、それぞれの円の中心距離を測定する。なお、図7では、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11とを結ぶ直線を実線で示し、アンカー粒子7同士又は第一助触媒粒子11同士を結ぶ直線を破線で示す。
【0078】
さらに、触媒粒子15は、共包接粒子中における触媒ユニット10及び助触媒ユニット12の分散度が40%以上であることが好ましい。分散度は、次式1より求めることができる。
【0079】
【数1】
【0080】
ここで、σは、触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との中心間距離の分布の標準偏差である。また、Av.は、触媒粒子15における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との平均中心間距離である。
【0081】
図8は、触媒粒子15中における触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離と、その距離の出現頻度との関係を示すグラフである。図8に示すように、触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離を測定した結果のグラフにおいて、頻度分布が正規分布になると仮定した場合、任意の試料がσの範囲内に入る確率として分散度は表される。なお、標準偏差がσであるとは、触媒ユニット10と助触媒ユニット12との間の中心間距離の68.27%が平均中心間距離Av(nm)±σ(nm)以内に分布していることを意味する。
【0082】
図9に、分散度が高い触媒粉末例の模式図(同図(a))と、分散度が低い触媒粉末例の模式図(同図(b))を示す。TEMなどによって実測した触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の距離が、仮に全て等しい距離である場合には、その触媒の分散度は100%である(これは、距離のばらつきが0であることを意味する)。また、この距離のばらつきが大きい場合には、その触媒の分散度は0%に近づく。つまり、触媒ユニットと助触媒ユニットとの間の距離が全て幾何学的に均等に配置された場合はσが0となり、分散度は100%となる。
【0083】
そして、上述したように、このように定義した分散度は40%以上であることが好ましい。分散度40%以上であれば、互いの粒子間距離が十分に維持されており、偏りも少ないため、耐久後の化合物同士の凝集が抑制される。特に、分散度は50%以上であることがより好ましい。
【0084】
この分散度は、触媒粒子15を製造する過程において、アンカー粒子及び第一助触媒粒子、さらには包接材の前駆体を混合したスラリーの、乾燥直前におけるアンカー粒子及び第一助触媒粒子の凝集度合いと相関がある。そして、この凝集度合いはスラリーの攪拌力に依存するため、上記スラリーを激しく攪拌することにより、分散度を向上させることができる。
【0085】
このように、本実施形態の排ガス浄化用触媒15は、貴金属粒子6と貴金属粒子6のアンカー材として貴金属粒子6を担持するアンカー粒子7とを含む触媒ユニット10を備える。また、触媒15は、貴金属粒子6と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子11を含む助触媒ユニット12を備える。さらに、触媒15は、触媒ユニット10及び助触媒ユニット12を共に内包し、かつ、触媒ユニット10における貴金属粒子6及びアンカー粒子7と助触媒ユニット12における第一助触媒粒子11とを互いに隔てる包接材9を備える。そして、アンカー粒子7及び包接材9は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有する。これにより、アンカー粒子7及び包接材9のアンカー効果により、貴金属粒子6の移動及び凝集を抑制することができる。その結果、触媒温度が900℃を超える高温状態になったしても、貴金属粒子6を微細状態に維持し、高い浄化性能を維持することができる。さらに、触媒15は、酸素吸蔵能を有する第一助触媒粒子11を、触媒作用を有する貴金属粒子6と非接触状態に置き、かつ、貴金属粒子6と接触しているアンカー粒子7と第一助触媒粒子11との間隔を所定の範囲に調整する。これにより、貴金属粒子6の過剰な酸化や酸素供給不足に由来した浄化性能の低下を防止できる。
【0086】
<第三実施形態>
以下、図面を用いて第三実施形態の触媒について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、繰り返しの説明は省略する。
【0087】
本実施形態の排ガス浄化用触媒25は、図10(a)に示すように、排ガス浄化用触媒構造体1の触媒層3Aを構成している。そして、触媒層3Aは、図10(b)及び(c)に示すように、複数の第二実施形態の触媒粒子15と、複数の第二助触媒粒子16とを含有した触媒粉末25により形成されている。
【0088】
従来の排ガス浄化用触媒としては、特開2008−93496号公報に示すように、貴金属粒子を担持した金属酸化物が高耐熱性酸化物により覆われた触媒活性種包接体と、助触媒粒子が高耐熱性酸化物により覆われた助触媒包接体とを含む粉末が開示されている。この触媒粉末では、助触媒粒子が耐熱性酸化物で覆われているため、助触媒粒子の凝集及び比表面積の低下が抑制され、高い耐久性を発揮することができる。
【0089】
ここで、特開2008−93496号公報の触媒粉末をハニカム担体の内部にコーティングし、触媒層を形成した際、触媒層内における触媒粉末の粒子間の細孔径は、助触媒粒子を覆う高耐熱性酸化物の細孔径よりもはるかに大きい。そのため、ハニカム担体の入口から触媒層内に流入する排気ガスは、高耐熱性酸化物の細孔よりも触媒粉末間の細孔を通過しやすい。したがって、例えば排気ガスが酸素過剰時の場合、高耐熱性酸化物により包接された助触媒成分が酸素を吸収しきるより先に触媒層の深部まで酸素が到達する。そのため、触媒層の深部における触媒粉末の周囲には酸素が過剰に存在することから、窒素酸化物の還元が行われにくい場合があった。また、排気ガスの空燃比(A/F)が変動する場合において、触媒層上部のみではA/F変動を吸収しきれず、排気ガスの浄化率が低下する場合があった。
【0090】
そこで、本実施形態の排ガス浄化用触媒(触媒粉末)25では、図10(b)に示すように、第二助触媒粒子16が触媒粒子15と共に触媒層3A内に分散されている。そして、第二助触媒粒子16は、複数の触媒粒子15の間に形成される細孔15aの中に配置されているため、この細孔内を通過する排気ガス中の酸素を効率的に吸蔵することができる。このため、触媒層の深部まで酸素が到達しにくくなることから、触媒粉末の周囲には酸素が過剰に存在し難くなり、窒素酸化物の還元が効率的に行われるようになる。また、リーン雰囲気からストイキあるいはリッチ雰囲気へと大きく変動する際には、第一助触媒粒子11及び第二助触媒粒子16が吸蔵した活性酸素を放出するため、HC、COの酸化も効率的に行うことができる。
【0091】
なお、本実施形態の排ガス浄化用触媒において、第一助触媒粒子及び第二助触媒粒子の総重量に対する第一助触媒粒子の重量の比は、0.3以上であることが好ましく、0.4〜0.8であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、第一助触媒粒子によりアンカー粒子上の貴金属粒子に対する酸素の吸蔵及び放出が効果的に行われつつ、第二助触媒粒子により過剰な酸素を吸蔵することができるため、NOx浄化性能をより向上させることができる。
【0092】
第二助触媒粒子16としては、第一助触媒粒子11と同様に、酸素吸蔵放出能を有するセリウム(Ce)及びプラセオジム(Pr)のうちの少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。特に第二助触媒粒子16としては、酸化セリウム(CeO2)や酸化プラセオジム(Pr6O11)のような酸素吸蔵放出能が高い化合物を主成分とすることが好ましい。
【0093】
また、第二助触媒粒子16は、第一助触媒粒子11と同様に、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選ばれる少なくとも一つをさらに含む酸化物であることが好ましい。これらの遷移金属を少なくとも一つ含有することで、遷移金属が有する活性酸素により触媒性能、特にCO,NO浄化率を向上させることができる。
【0094】
なお、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16は、平均粒子径(D50)が6μm以下であることが好ましい。この平均粒子径は、図10(b)に示すように、触媒層3内における、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径のことである。これらの平均粒子径が6μmを超える場合、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の外周部からの粒子の中心部までの距離が大きくなり、粒子中心部へのガス拡散性が著しく低下するため、浄化性能が低下する虞がある。また、6μmを超える場合、ハニカム担体へのコート時に剥離や偏りなどが起き易くなる。触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径は、適切な粒子間空隙が形成でき、さらに剥離を抑制できる1μm〜4μmの範囲であることがより好ましい。なお、触媒粒子15及び第二助触媒粒子16の平均粒子径は、これらの粒子を含有するスラリーをレーザー回折式粒度分布測定装置にかけることにより求めることができる。
【0095】
本実施形態の排ガス浄化用触媒は、第二実施形態の触媒粒子15により形成される細孔間に酸素吸蔵放出能を有する助触媒粒子を配設する。そのため、排気ガスの空燃比が変動する場合においても過剰な酸素を吸蔵でき、触媒層の内部においても高いNOx浄化性能を発揮することができる。
【0096】
[排ガス浄化用触媒の製造方法]
<第一実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第一実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、貴金属粒子6とアンカー粒子7との複合粒子8を粉砕する工程と、粉砕された複合粒子8を、包接材9の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程とを有する。
【0097】
具体的には、まず、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有したアンカー粒子7を準備する。このようなアンカー粒子7は、上述のようなAl2O3、CeO2、ZrO2、Y2O3及びNd2O3などアンカー粒子の主成分となる粉末を、アルカリ元素等の水溶液に混合し、攪拌及び乾燥することにより調製することができる。アルカリ元素等の水溶液としては、アルカリ元素等の硝酸塩及び酢酸塩などをイオン交換水等に溶解したものを使用することができる。アルカリ元素等の硝酸塩及び酢酸塩としては、酢酸ナトリウム(CH3CO2Na)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、酢酸カリウム(CH3CO2K)、硝酸カリウム(KNO3)、酢酸ルビジウム(CH3CO2Rb)、硝酸ルビジウム(RbNO3)、酢酸セシウム(CH3CO2Cs)、硝酸セシウム(CsNO3)、酢酸マグネシウム(Mg(CH3CO2)2)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、酢酸カルシウム(Ca(CH3CO2)2)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)酢酸ストロンチウム(Sr(CH3CO2)2)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)酢酸バリウム(Ba(CH3CO2)2)及び硝酸バリウム(Ba(NO3)2)などを使用することができる。なお、アルカリ元素等を含有したアンカー粒子としては、共沈法等で調製した従来公知のものを用いても良い。
【0098】
次に、アンカー粒子7に貴金属粒子6を担持する。このとき、貴金属粒子6は含浸法により担持することができる。そして、貴金属粒子6を表面に担持したアンカー粒子7をビーズミル等を用いて粉砕し、所望の粒子径とする。アンカー粒子7の粒子径としては、上述のように、例えば300nmとすることができる。なお、アンカー粒子7の原料として、酸化物コロイド等の微細な原料を用いることにより、破砕工程を省略することができる。
【0099】
その後、包接材9の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有した包接材スラリーを調製する。包接材9の前駆体としては、上述のように、包接材がアルミナを主成分とする場合、ベーマイト(AlOOH)を使用することが好ましく、シリカを主成分とする場合には、シリカゾルとゼオライトを使用することが好ましい。そして、上記包接材スラリーは、包接材9の前駆体を水等の溶媒に混合した後、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体を混合して攪拌することにより調製することができる。アルカリ元素及びアルカリ土類元素の前駆体としては、上述のように、これらの元素の酢酸塩や硝酸塩を使用することができる。
【0100】
次に、上記包接材スラリーに、貴金属粒子6を担持したアンカー粒子7を粉砕したものを投入し、攪拌する。上記スラリーを攪拌することにより、アンカー粒子7の周囲にアルカリ元素等を含有した包接材9の前駆体が付着する。その後、このスラリーを乾燥及び焼成することにより、貴金属を担持したアンカー粒子7の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子(排ガス浄化用触媒)5を得ることができる。
【0101】
<第二実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第二実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず、第一実施形態の触媒の製造方法と同様に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有したアンカー粒子7を準備する。次に、アンカー粒子7に貴金属粒子6を担持する。貴金属の担持も上述のように含浸法を使用ことができる。そして、貴金属粒子6を表面に担持したアンカー粒子7を上述のように粉砕し、所望の粒子径とする。さらに第一助触媒粒子11もビーズミル等を用いて粉砕し、所望の粒子径とする。この際、アンカー粒子7と第一助触媒粒子11は混合した状態で粉砕しても良いし、個別に粉砕しても良い。なお、上述と同様に、第一助触媒粒子11の原料として、酸化物コロイド等の微細な原料を用いることにより、破砕工程を省略することができる。
【0102】
次に、上記粉砕後、複合粒子8と第一助触媒粒子11を包接材9で包接するに際しては、複合粒子8を包接したものと第一助触媒粒子11を包接したものとを混合するのではなく、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを同時に包接材9で包接することが好ましい。これにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを均一にかつ偏りなく分散させることができる。
【0103】
具体的には、複合粒子8と第一助触媒粒子11とを、アルカリ元素等及び包接材9の前駆体を分散させた包接材スラリーに投入し、攪拌する。そして、このスラリーを攪拌することにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9の前駆体が付着する。この際、スラリーの攪拌を激しくすることにより、それぞれの粒子がスラリー中で分散し、その結果、上記分散度を向上させることができる。その後、この混合スラリーを乾燥及び焼成することにより、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子15(排ガス浄化用触媒15)を得ることができる。
【0104】
<第三実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法>
次に、第三実施形態の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず、第二実施形態の触媒の製造方法と同様に、複合粒子8と第一助触媒粒子11の周囲に、アルカリ元素等を含有した包接材9が形成された触媒粒子15を調製する。次に、触媒粒子15と、第二助触媒粒子16とを混合することにより、触媒粉末25(排ガス浄化用触媒25)を得ることができる。
【0105】
[排ガス浄化用触媒構造体の製造方法]
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本製造方法は、まず上述のように調製した排ガス浄化用触媒5,15,25を粉砕する。この粉砕は湿式でも乾式でも良いが、通常は排ガス浄化用触媒5,15,25をイオン交換水等の溶媒に混合し攪拌した後、ボールミル等を用いて粉砕する。これにより、排ガス浄化用触媒5,15,25が溶媒中で分散した触媒スラリーを得る。この際、必要に応じて触媒スラリーにバインダを添加する。なお、触媒スラリーにおける排ガス浄化用触媒5,15,25の平均粒子径(D50)は、6μm以下であることが好ましい。
【0106】
その後、上記触媒スラリーを耐火性無機担体(ハニカム担体)の内面に塗布し、乾燥及び焼成することにより、排ガス浄化用触媒構造体を得ることができる。
【0107】
[排ガス浄化システム]
本実施形態の排ガス浄化システム30は、図11に示すように、内燃機関31の排気ガス流路32に、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bを配置した構成とすることができる。そして、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bの少なくともいずれか一方に排ガス浄化用触媒5,15,25を有した触媒構造体を使用することが好ましい。
【0108】
本実施形態の排ガス浄化システム30をこのような構成とすることにより、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bを早期に活性化させ、低温域においても排ガスを浄化することができる。特に、本発明の排ガス浄化用触媒構造体は、極めて高温状態でも貴金属粒子の凝集を抑制することができるため、エキゾーストマニホールド34の直下に設けることも可能である。そして、エキゾーストマニホールド34の直下に設けることにより触媒構造体を早期に活性化することができるため、排気ガスを低温から効率的に浄化することが可能となる。なお、本実施形態の排ガス浄化システムは、図11に示す構成に限られない。例えば、排ガス浄化用触媒構造体33A,33Bの前後にさらに三元触媒やNOx吸着触媒を設けても良い。また、本実施形態の排ガス浄化システム30は、ガソリンエンジン、リーンバーンエンジン、直噴エンジン及びディーゼルエンジンなどを様々な内燃機関に用いることができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0110】
[実施例1]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。なお、本実施例及び比較例での平均粒子径の測定には、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いた。
【0111】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Ca含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸カルシウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0112】
そして、Ca含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、実施例1のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、図1(c)に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をアルミナ及びカルシアからなる包接材で包接したものである。
【0113】
(Rh粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gのジルコニア粉末(ZrO2)に、硝酸ロジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Rhを担持したZrO2粉末を得た。次に、Rhを担持したZrO2粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0114】
次に、ベーマイトと、硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌した。そして、この溶液中に、粉砕したRh担持ZrO2粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃、3時間空気中で焼成し、実施例1のRh粉末を得た。なお、このRh粉末は、Rh担持ZrO2をアルミナからなる包接材で包接したものである。
【0115】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、CeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。なお、CeO2−ZrO2粉末におけるCeO2とZrO2の質量比は、20:80である。
【0116】
次に、上記Rh粉末200g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりRh触媒スラリーを調製した。
【0117】
そして、Rh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた実施例1の触媒構造体を調製した。
【0118】
[実施例2及び4〜8]
アンカー材種と、包接材中へ添加するアルカリ金属種とを表1の化合物に変更し、さらに触媒中のアンカー材、アルカリ金属、包接材及びPdの量を表1の値に調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2及び4〜8の触媒構造体を調製した。
【0119】
[実施例3]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約65m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0120】
さらに、比表面積が約50m2/gの活性セリア粉末も同様に粉砕し、平均粒子径(D50)を200nmとした。
【0121】
次に、ベーマイトと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Sr含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸ストロンチウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0122】
そして、Sr含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃、3時間空気中で焼成し、実施例3のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、図6に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方を、アルミナ及び酸化ストロンチウムからなる包接材で共包接したものである。
【0123】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0124】
そして、まず、実施例1のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた実施例3の触媒構造体を調製した。なお、上記Pd触媒層は、図10に示すように、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末及び活性セリア粉末の両方を、アルミナ及び酸化ストロンチウムからなる包接材で共包接した触媒粒子と、第二助触媒粒子たるCeO2−ZrO2粉末とを含有する。
【0125】
[比較例1]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア−カルシア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2−CaO)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0126】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌してベーマイト水溶液を調製した。そして、ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、比較例1のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、Pd担持ZrO2−CeO2−CaO粉末をアルミナからなる包接材で包接したものである。
【0127】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0128】
そして、まず、実施例1のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、上記Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例1の触媒構造体を調製した。
【0129】
[比較例2]
(Pd粉末の調製)
まず、比表面積が約70m2/gの活性ジルコニア−セリア複合酸化物粉末(ZrO2−CeO2)に硝酸パラジウム溶液を担持した。この溶液を150℃で一昼夜乾燥後、400℃で1時間焼成して、Pd担持ZrO2−CeO2粉末を得た。次に、Pd担持ZrO2−CeO2粉末を粉砕し、平均粒子径(D50)を150nmとした。
【0130】
次に、ベーマイト(包接材前駆体)と、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)と、10%硝酸と、水とを混合し、1時間攪拌して、Ca含有ベーマイト水溶液を調製した。なお、硝酸カルシウムの混合量は、表1中に示すようなパラジウムに対するアルカリ金属等のモル比(アルカリ金属等/パラジウム)となるように調整した。
【0131】
そして、Ca含有ベーマイト水溶液中に粉砕したPd担持ZrO2−CeO2粉末をゆっくりと投入し、高速攪拌機を用いてさらに2時間攪拌した。得られたスラリーを急速乾燥し、150℃で一昼夜さらに乾燥させて水分を除去した。その後、550℃で3時間、空気中で焼成し、比較例2のPd粉末を得た。なお、このPd粉末は、Pd担持ZrO2−CeO2粉末をアルミナ及びカルシアからなる包接材で包接したものである。
【0132】
(Rh粉末の調製)
硝酸ロジウム水溶液に比表面積が約150m2/gの活性アルミナ粉末を含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成することにより、Rh粉末を得た。
【0133】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0134】
次に、上記Rh粉末200g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりRh触媒スラリーを調製した。
【0135】
そして、Rh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例2の触媒構造体を調製した。
【0136】
[比較例3]
(Pd粉末の調製)
硝酸パラジウム水溶液に比表面積が約150m2/gの活性アルミナ粉末を含浸し、150℃で12時間乾燥した後、400℃で1時間焼成することにより、Pd粉末を得た。
【0137】
(触媒層の調製)
上記Pd粉末175g、実施例1と同様のCeO2−ZrO2粉末25g、アルミナゾル25g、水230g及び硝酸10gを磁性ボールミルに投入し、混合し粉砕することによりPd触媒スラリーを調製した。
【0138】
そして、まず、比較例2のRh触媒スラリーをコーデェライト質モノリス担体(0.12L,900セル)に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。その後、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Rh触媒層を作成した。さらに、上記Pd触媒スラリーをRh触媒層が担持されたモノリス担体に付着させて、空気流にてセル内の余剰のスラリーを取り除いた。そして、スラリー付き担体を130℃で乾燥した後、400℃で1時間焼成して、Pd触媒層を調製した。このようにして、表層としてPd触媒層を設け、内層としてRh触媒層を設けた比較例3の触媒構造体を調製した。
【0139】
[耐久試験方法]
排気量3500ccのガソリンエンジンの排気系に上記実施例1〜8及び比較例1〜3の各触媒を装着し、触媒入口の排気ガス温度を920℃として、50時間運転し、各触媒を劣化させた。なお、触媒入口の排気ガス温度を920℃とした場合、触媒内部の温度は約960℃になる。その後、排気量3500ccのガソリンエンジンの排気系に劣化後の各触媒を装着し、触媒入口温度を480℃とし、触媒の入口及び出口の炭化水素濃度から、次式2より炭化水素の転化率(HC転化率)を測定した。
【0140】
【数2】
【0141】
実施例1〜8及び比較例1〜3の貴金属種、貴金属担持基材種、パラジウムに対するアルカリ金属等のモル比、触媒粉末の粒径、触媒中の貴金属量及び耐久試験後のHC転化率を表1に示す。また、貴金属担持基材における各酸化物の質量比も表1の括弧内に記載した。
【0142】
【表1】
【0143】
実施例及び比較例より、アンカー粒子及び包接材の両方にアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有させることにより、HC転化率が向上することがわかる。特に、実施例1と比較例1を比べると、比較例1の方が若干Pd量が少ないが、包接材にカルシウムを添加することにより、HC転化率が5%向上している。また、実施例7と比較例1を比べると、実施例7の方がPd量が少ないにもかかわらず、HC転化率が4%向上している。さらに、アルカリ元素等として、CaだけでなくMg,Sr,Ba,K及びNaを包接材に含有させることにより、HC転化率が向上している。
【0144】
さらに、実施例1及び比較例1におけるPd粒子の粒子径を、TEMを用いて測定した。図12には、実施例1のPd触媒層における耐久試験後のTEM写真を示す。図12より、実施例1では、耐久試験後における包接材上でのPd粒子径は80nmであり、アンカー粒子上でのPd粒子径は9nmであった。これに対し、比較例1では、耐久試験後における包接材上でのPd粒子径は150nmであり、アンカー粒子上でのPd粒子径は8nmであった。つまり、比較例1は実施例1より若干Pd含有量が少ないにも関わらず、包接材上でPd粒子が凝集し、粒成長していた。このことから、アンカー粒子だけでなく、包接材にもアルカリ元素等を含有させることにより、Pdの移動及び凝集を抑制できることがわかる。
【0145】
以上、本発明を実施例及び比較例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、実施例では、触媒層として、Pt触媒層とRh触媒層の二層を形成したが、触媒層は一層であっても良く、三層以上であっても良い。また、図1(b)に示すアンダーコート層4を設けなくとも高い浄化性能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0146】
1 排ガス浄化用触媒構造体
2 耐火性無機担体
3 触媒層
4 アンダーコート層
5,15,25 排ガス浄化用触媒
6 貴金属粒子
7 アンカー粒子
8 複合粒子
9 包接材
10 触媒ユニット
11 第一助触媒粒子
12 助触媒ユニット
16 第二助触媒粒子
30 排ガス浄化システム
31 内燃機関
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属粒子と、前記貴金属粒子のアンカー材として貴金属粒子を担持するアンカー粒子と、を含む複数の触媒ユニットと、
前記複数の触媒ユニットを内包し、かつ、前記触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、
を有し、
前記アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
貴金属粒子と前記貴金属粒子のアンカー材として貴金属粒子を担持するアンカー粒子とを含む触媒ユニットと、前記貴金属粒子と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子を含む助触媒ユニットと、前記触媒ユニット及び前記助触媒ユニットを共に内包し、かつ、前記触媒ユニットにおける貴金属粒子及びアンカー粒子と前記助触媒ユニットにおける第一助触媒粒子とを互いに隔てる包接材と、を含有する触媒粒子を有し、
前記アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
酸素吸蔵放出能を有し、前記包接材によって前記触媒粒子中に内包されない第二助触媒粒子をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記包接材におけるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、前記貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.5から2.0の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記アンカー粒子及び包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記アンカー粒子及び包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記貴金属粒子は、パラジウムを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法において、
前記貴金属粒子とアンカー粒子との複合粒子を粉砕する工程と、
粉砕された前記複合粒子を、前記包接材の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程と、
を有することを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒を含有した触媒層と、
前記触媒層を担持する耐火性無機担体と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒構造体。
【請求項10】
前記触媒層の下層に設けられ、耐熱性無機酸化物を含有するアンダーコート層をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の排ガス浄化用触媒構造体。
【請求項11】
内燃機関と、
前記内燃機関の排気系に装着される、請求項9又は10に記載の排ガス浄化用触媒構造体と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化システム。
【請求項1】
貴金属粒子と、前記貴金属粒子のアンカー材として貴金属粒子を担持するアンカー粒子と、を含む複数の触媒ユニットと、
前記複数の触媒ユニットを内包し、かつ、前記触媒ユニット同士を互いに隔てる包接材と、
を有し、
前記アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
貴金属粒子と前記貴金属粒子のアンカー材として貴金属粒子を担持するアンカー粒子とを含む触媒ユニットと、前記貴金属粒子と非接触に配設され、酸素吸蔵放出能を有する第一助触媒粒子を含む助触媒ユニットと、前記触媒ユニット及び前記助触媒ユニットを共に内包し、かつ、前記触媒ユニットにおける貴金属粒子及びアンカー粒子と前記助触媒ユニットにおける第一助触媒粒子とを互いに隔てる包接材と、を含有する触媒粒子を有し、
前記アンカー粒子及び包接材は共に、アルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
酸素吸蔵放出能を有し、前記包接材によって前記触媒粒子中に内包されない第二助触媒粒子をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記包接材におけるアルカリ元素及びアルカリ土類元素の合計含有量は、前記貴金属粒子の含有量に対し、モル比で0.5から2.0の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記アンカー粒子及び包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記アンカー粒子及び包接材に含有されるアルカリ元素及びアルカリ土類元素は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記貴金属粒子は、パラジウムを含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法において、
前記貴金属粒子とアンカー粒子との複合粒子を粉砕する工程と、
粉砕された前記複合粒子を、前記包接材の前駆体とアルカリ元素及びアルカリ土類元素の少なくともいずれか一方の前駆体とを含有したスラリーに混合し、乾燥する工程と、
を有することを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒を含有した触媒層と、
前記触媒層を担持する耐火性無機担体と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化用触媒構造体。
【請求項10】
前記触媒層の下層に設けられ、耐熱性無機酸化物を含有するアンダーコート層をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の排ガス浄化用触媒構造体。
【請求項11】
内燃機関と、
前記内燃機関の排気系に装着される、請求項9又は10に記載の排ガス浄化用触媒構造体と、
を備えることを特徴とする排ガス浄化システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−63404(P2013−63404A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204416(P2011−204416)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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