説明

排ガス浄化用触媒

【課題】触媒性能が高く、貴金属使用量を抑えることができる排ガス浄化用触媒を提供すること。
【解決手段】触媒基材3と、貴金属及び耐火性無機酸化物を含み、前記触媒基材3上に形成された触媒コート層5、7と、を有する排ガス浄化用触媒1であって、前記触媒コート層5、7は、A層5及びB層7を含む層構造を有し、前記A層5は、前記貴金属として、PdとPtとを、それらの重量比が3:1〜20:1となるように含み、前記B層7は、前記貴金属としてRhを含み、前記Α層5に含まれるPd及びPtのうち、70wt%以上は、前記Α層5の表面から深さ20μmまでの領域9に含まれることを特徴とする排ガス浄化用触媒1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、二輪車等の内燃機関からの排ガス中に含まれる有害成分を除去する排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化用触媒は、セラミックス等の基材上に、耐火性無機酸化物と、Pd、Pt、Rh等の貴金属とを含む触媒コート層をコートして形成される。この排ガス浄化用触媒において、触媒コート層を、Pdを含む内層と、Rhを含む外層とからなる2層構造とすることで、触媒性能を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−60117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、排ガス規制値が一層厳しくなってきているため、より優れた性能の排ガス浄化用触媒が求められている。また、貴金属は高価であるため、触媒性能は確保しつつ、貴金属使用量を抑えることができる排ガス浄化用触媒が求められている。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、触媒性能が高く、貴金属使用量を抑えることができる排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明は、
触媒基材と、貴金属及び耐火性無機酸化物を含み、前記触媒基材上に形成された触媒コート層と、を有する排ガス浄化用触媒であって、前記触媒コート層は、A層及びB層を含む層構造を有し、前記A層は、前記貴金属として、PdとPtとを、それらの重量比が3:1〜20:1となるように含み、前記B層は、前記貴金属としてRhを含み、前記Α層に含まれるPd及びPtのうち、70wt%以上は、前記Α層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれることを特徴とする排ガス浄化用触媒を要旨とする。
【0007】
本発明の排ガス浄化用触媒は、上記の構成を有することにより、触媒性能が非常に優れている。特に、A層におけるPdとPtとの重量比が3:1〜20:1の範囲にあることにより、その範囲外である場合に比べて、触媒性能が顕著に優れている。
【0008】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、貴金属の量が少なくとも触媒性能が高いので、貴金属の使用量を抑えることができる。そのため、排ガス浄化用触媒の製造コストを低減することができる。
【0009】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、A層に含まれるPd及びPtのうち、70wt%以上がΑ層の表面から深さ20μm(より好ましくは10μm)までの領域に含まれることにより、触媒性能が一層高い。
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、A層に含まれるPdのうちの70wt%以上がA層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれ、且つA層に含まれるPtのうちの70wt%以上がΑ層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれるものとすることができる。
【0011】
本発明において、Α層にPd及びPt以外の貴金属を含む場合は、その貴金属についても、その70wt%以上が、Α層の表面から深さ20μm(好ましくは10μm)までの領域に含まれることが一層好ましい。
【0012】
本発明において、A層でのPdとPtとの重量比は、5:1〜10:1の範囲が一層好ましい。
本発明において、耐火性無機酸化物としては、例えば、アルミナ(特に活性アルミ)、Zr酸化物、Ce酸化物、セリウム・ジルコニウム複合酸化物、シリカ、チタニア等が挙げられる。セリウム・ジルコニウム複合酸化物としては、ZrO2の組成比が40〜95wt%(特に好ましくは50〜95wt%)であるセリウム・ジルコニウム複合酸化物(Zrリッチ複合酸化物)や、CeO2の組成比が50〜95wt%であるセリウム・ジルコニウム複合酸化物(Ceリッチ複合酸化物)がある。B層に用いる耐火性無機酸化物としては、Zrリッチ複合酸化物が好ましい。耐火性無機酸化物の量は、触媒1Lあたり、100〜300gが好ましい。
【0013】
触媒基材としては、通常、排ガス浄化触媒に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、ハニカム型、コルゲート型、モノリスハニカム型等が挙げられる。触媒基材の材質は、耐火性を有するものであればいずれのものであっても良く、例えば、コージェライト等の耐火性を有するセラミックス製、フェライト系ステンレス等金属製の一体構造型を用いることができる。
【0014】
貴金属としては、例えば、Rh、Pd、Pt等が挙げられる。B層に配合する貴金属は、Rh単独であってもよく、Rhとその他の貴金属(例えばPt)との組み合わせであってもよい。また、Α層に配合する貴金属としては、PdとPtのみであってもよく、その他の貴金属をさらに加えてもよい。
【0015】
触媒コート層(Α層のみ、B層のみ、あるいはその両方)は、Ba、La、Nd、Pr、Yを含んでいてもよい。特にBa、Laを含むことが好ましい。Ba、Laの量は、触媒1Lあたり、0〜30gが好ましい。
【0016】
本発明における触媒コート層は、A層、B層の2層のみから構成されていてもよいし、それ以外の層を、例えば、それら2層より外側、A層とB層との間、それら2層より内側に含んでいてもよい。A層、B層の位置関係は、例えば、図1〜9に示すように、A層を内層5とし、B層を外層7としてもよいし、あるいは、図10に示すように、B層を内層5とし、A層を外層7としてもよい。
【0017】
前記A層は、前記耐火性無機酸化物として、(a)アルミナと、(b)ZrO2の組成比が40〜95wt%であるセリウム・ジルコニウム複合酸化物とを含み、前記(a)と(b)との重量比が1:1〜1:5の範囲にあることが好ましい。この場合、触媒性能が一層高い。
(2)請求項2の発明は、
前記B層に含まれるRhのうち、70wt%以上は、前記B層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒を要旨とする。
【0018】
本発明の排ガス浄化用触媒は、B層に含まれるRhのうち、70wt%以上がB層の表面から深さ20μm(より好ましくは10μm)までの領域に含まれることにより、触媒性能が一層高い。
【0019】
本発明において、B層にRh以外の貴金属(例えばPt)を含む場合は、その貴金属についても、その70wt%以上が、B層の表面から深さ20μm(より好ましくは10μm)までの領域に含まれることが一層好ましい。
(3)請求項3の発明は、
前記B層は、前記耐火性無機酸化物として、セリウム・ジルコニウム複合酸化物を含み、前記セリウム・ジルコニウム複合酸化物におけるZrO2の組成比が50〜95wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒を要旨とする。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒は、B層に、ZrO2の組成比が50〜95wt%のセリウム・ジルコニウム複合酸化物を含むことにより、触媒性能が一層高い。
(4)請求項4の発明は、
前記B層が、前記貴金属として、Rhに加えてPtを含むとともに、前記B層において、Ptの重量は、Rhの重量の1/3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒を要旨とする。
【0021】
本発明の排ガス浄化用触媒は、Rhの重量の1/3以下の重量のPtをB層に含むことにより、触媒性能が一層高い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】参考例1の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図2】参考例2の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図3】参考例3の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図4】参考例4の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図5】参考例5の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図6】参考例6の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図7】参考例7の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図8】参考例8の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図9】実施例9の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図10】参考例10の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図11】比較例1の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図12】比較例2の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図13】比較例3の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【図14】比較例4の排ガス浄化用触媒の構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施例により具体的に説明する。
(参考例1)
a)まず、本参考例1の排ガス浄化用触媒1の構成を図1を用いて説明する。尚、図1及び後述する図2〜15において、ZCはZrO2の組成比が80wt%であるセリウム・ジルコニウム複合酸化物(Zrリッチ複合酸化物)を意味し、Alはアルミナを意味し、Subは基材を意味する。
【0024】
排ガス浄化用触媒1は、基材(触媒基材)3の表面に内層(Α層)5を形成し、さらにその上に外層(B層)7を形成したものである。内層5と外層7とは、触媒コート層として機能する。内層5と外層7の厚みは、それぞれ、100μmである。基材3は、容積1.0L、セル数900セル/in2のモノリスハニカム担体であり、内層5及び外層7は、基材3のセルの内面に形成されている。
【0025】
内層5は、貴金属としてのPd(0.835g)とPt(0.165g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
外層7は、貴金属としてのRh(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
【0026】
b)次に、本参考例1の排ガス浄化用触媒1を製造する方法を説明する。
まず、以下のようにしてスラリーS1A、S1Bを製造した。
(スラリーS1A)
次の成分(固体については微粉のものを使用、以下同様)を混合することによりスラリーS1Aを製造した。
【0027】
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.835gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.165gとなる量
(スラリーS1B)
次の成分を混合することによりスラリーS1Bを製造した。
【0028】
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Rh溶液:Rhで1.0gとなる量
次に、スラリーS1Aの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成した。この工程により内層5が形成された。
【0029】
次に、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成した。この工程により外層7が形成され、排ガス浄化用触媒1が完成した。
(参考例2)
本参考例2の排ガス浄化用触媒1の構成は、図2に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.91gとPt0.091gである点で相違する。
【0030】
本参考例2の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS2を用いた。
(スラリーS2)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.91gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.091gとなる量
本参考例2では、スラリーS2の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。なお、本参考例2、後述する参考例3〜8、実施例9及び比較例1〜4において、乾燥及び焼成の条件は前記参考例1と同様である。
(参考例3)
本参考例3の排ガス浄化用触媒1の構成は、図3に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.75gとPt0.25gである点で相違する。
【0031】
本参考例3の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS3を用いた。
(スラリーS3)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.75gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.25gとなる量
本参考例3では、スラリーS3の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(参考例4)
本参考例4の排ガス浄化用触媒1の構成は、図4に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.96gとPt0.048gである点で相違する。
【0032】
本参考例4の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS4を用いた。
(スラリーS4)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.96gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.048gとなる量
本参考例4では、スラリーS4の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(参考例5)
本参考例5の排ガス浄化用触媒1の構成は、図5に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.91gとPt0.091gである点で相違する。また、外層7に含まれる貴金属がRh0.75gとPt0.25gである点で相違する。
【0033】
本参考例5の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、スラリーS2を用いた。また、スラリーS1Bの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS5を用いた。
(スラリーS5)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Rh溶液:Rhで0.75gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.25gとなる量
本参考例5では、スラリーS2の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS5の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(参考例6)
本参考例6の排ガス浄化用触媒1の構成は、図6に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれるアルミナ(Al)とZrリッチ複合酸化物(ZC)との重量比が1:2である点で相違する。
【0034】
本参考例6の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS6を用いた。
(スラリーS6)
アルミナ:33g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):67g
硝酸Pd溶液:Pdで0.835gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.165gとなる量
本参考例6では、スラリーS6の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(参考例7)
本参考例7の排ガス浄化用触媒1の構成は、図7に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれるアルミナ(Al)とZrリッチ複合酸化物(ZC)との重量比が1:5である点で相違する。
【0035】
本参考例7の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS7を用いた。
(スラリーS7)
アルミナ:17g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):85g
硝酸Pd溶液:Pdで0.835gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.165gとなる量
本参考例7では、スラリーS7の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(参考例8)
本参考例8の排ガス浄化用触媒1の構成は、図8に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれるPdの重量が1.110gであり、Ptの重量が0.222gである点で相違する。また、外層7に含まれるRhの重量が0.666gである点で相違する。
【0036】
本参考例8の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、スラリーS1Aの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS8Aを用いた。
(スラリーS8A)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで1.110gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.222gとなる量
また、スラリーS1Bの代わりに、下記の各成分を混合したスラリーS8Bを用いた。(スラリーS8B)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Rh溶液:Rhで0.666gとなる量
本参考例8では、スラリーS8Aの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS8Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(実施例9)
本実施例9の排ガス浄化用触媒1の構成は、図9に示すように、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属の全てが、内層5の表面(外層7との境界面)から深さ20μmまでの領域(表層領域)9に担持されているという点で相違する。また、外層7に含まれる貴金属の全てが、外層7の表面から深さ20μmまでの領域(表層領域)11に担持されているという点で相違する。なお、内層5全体の厚み、及び外層7全体の厚みは、それぞれ、100μmである。
【0037】
本実施例9の排ガス浄化用触媒1は、以下のように製造した。まず、下記の各成分を混合したスラリーS9A、及びスラリーS9Bをそれぞれ製造した。
(スラリーS9A)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
(スラリーS9B)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
次に、スラリーS9Aの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥後、500℃で1時間焼成し、内層5(ただし、この時点で貴金属を担持しないもの)を形成した。その後、硝酸Pt溶液(Ptで0.165g)に浸漬し、内層5のうちの表層領域9にPtを担持した。その後さらに、硝酸Pd溶液(Pdで0.835g)に浸漬し、内層5のうちの表層領域9にPdを担持した。
【0038】
次に、スラリーS9Bの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥後、500℃で1時間焼成し、外層7(ただし、この時点で貴金属を担持しないもの)を形成した。その後、硝酸Rh溶液(Rhで1.0g)に浸漬し、外層7のうちの表層領域11にRhを担持した。
(参考例10)
a)まず、本参考例10の排ガス浄化用触媒1の構成を図10を用いて説明する。排ガス浄化用触媒1は、基材(触媒基材)3の表面に内層(B層)5を形成し、さらにその上に外層(Α層)7を形成したものである。内層5と外層7とは、触媒コート層として機能する。内層5と外層7の厚みは、それぞれ、100μmである。基材3は、前記参考例1と同様のものである。
【0039】
内層5は、貴金属としてのRh(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
外層7は、貴金属としてのPd(0.835g)とPt(0.165g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
【0040】
b)次に、本参考例10の排ガス浄化用触媒1を製造する方法を説明する。
まず、前記参考例1と同様にして、スラリーS1A、S1Bを製造した。
次に、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成した。この工程により内層5が形成された。
【0041】
次に、スラリーS1Aの全量を基材3全体にコートし、250℃で1時間乾燥させた後、500℃で1時間焼成した。この工程により外層7が形成され、排ガス浄化用触媒1が完成した。
(参考例11)
本参考例11の排ガス浄化用触媒1の構成は、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5に含まれるZrリッチ複合酸化物におけるZrO2の組成比が40wt%である点で相違する。
【0042】
本参考例11の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記参考例1と同様であるが、内層5を形成するためのスラリーに含まれるZrリッチ複合酸化物におけるZrO2の組成比が40wt%である点で相違する。
(比較例1)
本比較例1の排ガス浄化用触媒1の構成を図11を用いて説明する。排ガス浄化用触媒1は、前記参考例1と同様の基材3のセル表面に内層5及び外層7を備える。内層5は、貴金属としてのPd(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。外層7は、貴金属としてのRh(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
【0043】
次に、本比較例1の排ガス浄化用触媒1を製造する方法を説明する。まず、下記の各成分を混合したスラリーSP1を製造した。
(スラリーSP1)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで1.0gとなる量
次に、スラリーSP1の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(比較例2)
本比較例2の排ガス浄化用触媒1の構成は、図12に示すように、基本的には前記比較例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.666gとPt0.333gである点で相違する。
【0044】
本比較例2の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記比較例1と同様であるが、スラリーSP1の代わりに、下記の各成分を混合したスラリーSP2を用いた。
(スラリーSP2)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.666gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.333gとなる量
本比較例2では、スラリーSP2の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(比較例3)
本比較例3の排ガス浄化用触媒1の構成は、図13に示すように、基本的には前記比較例1と同様であるが、内層5に含まれる貴金属が、Pd0.97gとPt0.03gである点で相違する。
【0045】
本比較例3の排ガス浄化用触媒1の製造方法は、基本的には前記比較例1と同様であるが、スラリーSP1の代わりに、下記の各成分を混合したスラリーSP3を用いた。
(スラリーSP3)
アルミナ:50g
Zrリッチ複合酸化物(ZrO2の組成比が80wt%):50g
硝酸Pd溶液:Pdで0.97gとなる量
硝酸Pt溶液:Ptで0.03gとなる量
本比較例3では、スラリーSP3の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
(比較例4)
本比較例4の排ガス浄化用触媒1の構成を図14を用いて説明する。排ガス浄化用触媒1は、前記参考例1と同様の基材3のセル表面に内層5及び外層7を備える。内層5は、貴金属としてのRh(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。外層7は、貴金属としてのPd(1.0g)、アルミナ、及びZrリッチ複合酸化物から成る。
【0046】
次に、本比較例4の排ガス浄化用触媒1を製造する方法を説明する。まず、前記参考例1と同様にして、スラリーS1Bを製造するとともに、前記比較例1と同様にして、スラリーSP1を製造した。
【0047】
次に、スラリーS1Bの全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成して内層5を形成した後、スラリーSP1の全量を基材3全体にコートし、乾燥、焼成することで外層7を形成した。
【0048】
上記参考例1〜8、10〜11、実施例9、及び比較例1〜4の排ガス浄化用触媒について、触媒性能を試験した。
(試験方法)
各実施例及び比較例の排ガス浄化用触媒を、8万Km相当の耐久試験を行ってから、排気量2.0Lのエンジンを有する実機車両に搭載した。そして、日本の11モードを走行した時点でのHC、CO、NOxエミッションを測定した。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すように、参考例1〜8、10〜11、実施例9の排ガス浄化用触媒は、比較例1〜4に比べて、HC、CO、NOxエミッションが顕著に少ない。特に、実施例9の排ガス浄化用触媒は、内層5のPd及びPtが表層領域9に含まれ、外層7のRhが表層領域11に含まれることにより、エミッションが一層少ない。また、参考例6、7の排ガス浄化用触媒は、内層5に含まれるアルミナとZrリッチ複合酸化物との重量比が、それぞれ、1:2、1:5であることにより、エミッションが一層少ない。以上の実験から、本参考例1〜8、10〜11、実施例9の排ガス浄化用触媒の触媒性能が優れていることが確認できた。
【0051】
また、参考例1〜8、10〜11、実施例9と比較例1〜4とでは、貴金属の使用量が同じであるのに、参考例1〜8、10〜11、実施例9の方が触媒性能が優れている。よって、本発明を用いれば、触媒性能を確保しつつ、貴金属の使用量を抑えることができる。
【0052】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1・・・排ガス浄化用触媒
3・・・基材
5・・・内層
7・・・外層
9、11・・・表層領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒基材と、
貴金属及び耐火性無機酸化物を含み、前記触媒基材上に形成された触媒コート層と、
を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層は、A層及びB層を含む層構造を有し、
前記A層は、前記貴金属として、PdとPtとを、それらの重量比が3:1〜20:1となるように含み、
前記B層は、前記貴金属としてRhを含み、
前記Α層に含まれるPd及びPtのうち、70wt%以上は、前記Α層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記B層に含まれるRhのうち、70wt%以上は、前記B層の表面から深さ20μmまでの領域に含まれることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記B層は、前記耐火性無機酸化物として、セリウム・ジルコニウム複合酸化物を含み、
前記セリウム・ジルコニウム複合酸化物におけるZrO2の組成比が50〜95wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記B層が、前記貴金属として、Rhに加えてPtを含むとともに、
前記B層において、Ptの重量は、Rhの重量の1/3以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−255378(P2011−255378A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174167(P2011−174167)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【分割の表示】特願2007−538781(P2007−538781)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】