説明

排ガス浄化触媒及びその製造方法

【課題】排ガスの酸化活性に優れた排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供する。
【解決手段】担体に担持あるいは非担持の元素モル比Pd:Au=99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%のパラジウムと金を含む合金であり、パラジウム化合物、金化合物、及び、パラジウム元素及び金元素の少なくともいずれか一方の元素に対して配位能を有する高分子化合物を液体中に分散、加熱することにより製造する。得られた分散液に必要であれば担体を加えた後に、加熱してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの酸化活性に優れた排ガス浄化触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる内燃機関からの排出ガスには、一酸化炭素や、未燃焼炭化水素等の、人体にとって有害な成分が含まれている。このため、一般的な車両の排気部分には、有害な成分を分解除去する排ガス浄化装置が設けられており、当該装置には、アルミナ等の金属酸化物に担持された、白金、ロジウム、パラジウム等の白金族元素を主成分とする排ガス浄化触媒が備えられている。
これら白金族元素のうち、パラジウムは、一酸化炭素及び未燃焼炭化水素等の酸化浄化に優れることが知られており、ガソリンエンジン用三元触媒を始めとして、ディーゼルエンジン用酸化触媒、リーンバーンエンジン用触媒として広く使用されている。
【0003】
金属微粒子が均一に分散した金属微粒子担持触媒に関する技術は、これまでにも開発されている。特許文献1には、金(Au)等から選ばれる1種または2種以上の元素と、他の特定の金属から選ばれる1種または2種以上の元素で構成される金属化合物を、酸素を含有する雰囲気で熱処理して製造されることを特徴とする金属微粒子担持酸化物触媒の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−216519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された金属微粒子担持酸化物触媒に関する技術は、触媒自体の酸化による活性低減については、全く考察がされていない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、排ガスの酸化活性に優れた排ガス浄化触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排ガス浄化触媒は、パラジウムと金を含む合金を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成の排ガス浄化触媒は、パラジウムと金とを組み合わせた合金を有することによって、金がパラジウムの酸化を防いでパラジウム0価の状態を保つ結果、パラジウムによる排ガス浄化効果を高く保つことができる。
【0008】
本発明の排ガス浄化触媒は、前記合金内におけるパラジウムと金の元素モル比が、Pd:Au=99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%であることが好ましい。
【0009】
このような構成の排ガス浄化触媒は、パラジウムと金との好ましい組成比を有することによって、パラジウムによる排ガス浄化能、及び、金によるパラジウムの酸化防止能をバランスよく発揮することができる。
【0010】
本発明の排ガス浄化触媒の一形態としては、前記合金が担体に担持されているという構成をとることができる。
【0011】
本発明の排ガス浄化触媒製造方法は、少なくとも、パラジウム元素を含む化合物、金元素を含む化合物、及び、パラジウム元素及び金元素の少なくともいずれか一方の元素に対して配位能を有する高分子化合物を液体に分散させる金属微粒子合成工程、並びに、前記金属微粒子合成工程により得られた分散液に必要であれば担体を加えた後、加熱を行う加熱工程を含むことを特徴とする。
【0012】
このような構成の排ガス浄化触媒製造方法によって、本発明に係る排ガス浄化触媒を製造することができる。また、このような構成の排ガス浄化触媒製造方法は、金属微粒子合成工程において、配位性の前記高分子化合物を混合することによって、パラジウム元素を含む化合物と金元素を含む化合物のみを混合する場合と比較して、金属微粒子の分散度をより高め、より均一な合金を作製することができる。
【0013】
本発明の排ガス浄化触媒製造方法は、前記パラジウム元素を含む化合物と、前記金元素を含む化合物とのモル比が、99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%であることが好ましい。
【0014】
このような構成の排ガス浄化触媒製造方法は、前記パラジウム元素を含む化合物と前記金元素を含む化合物とを好ましいモル比で混合することによって、得られる排ガス浄化触媒が、パラジウムによる排ガス浄化能、及び、金によるパラジウムの酸化防止能をバランスよく発揮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、パラジウムと金とを組み合わせた合金を有することによって、金がパラジウムの酸化を防いでパラジウム0価の状態を保つ結果、パラジウムによる排ガス浄化効果を高く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の金属クラスター及び実施例4の金属クラスター担持触媒に係るSTEM観察像並びに粒径のヒストグラムである。
【図2】実施例2の金属クラスター及び実施例5の金属クラスター担持触媒に係るSTEM観察像並びに粒径のヒストグラムである。
【図3】実施例4の金属クラスター担持触媒の、EDXによる組成分析の6つの測定点を示した図、及び、EDXによる組成分析結果のうち、パラジウムと金の元素組成比を示した棒グラフである。
【図4】実施例1及び2、及び比較例1の金属クラスター、並びに、実施例4及び5、及び比較例3の金属クラスター担持触媒のXRDプロファイルである。
【図5】実施例4及び5、並びに比較例3の金属クラスター担持触媒の昇温評価実験結果を示すグラフである。
【図6】実施例6及び7、並びに比較例5乃至7の金属クラスター担持触媒の昇温評価実験結果を示すグラフである。
【図7】比較例3及び4の金属クラスター担持触媒のXRDプロファイル並びに昇温評価実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.排ガス浄化触媒
本発明の排ガス浄化触媒は、パラジウムと金を含む合金を有することを特徴とする。
【0018】
内燃機関から排出される有害ガスの浄化反応を進行させる白金族元素は、酸化され、その浄化活性が低下することが以前から知られている。
触媒の活性点である白金族元素の酸化を抑制する方法として、従来技術としては、例えば、還元雰囲気運転を利用した内燃機関制御を行うことで、排気中の還元剤成分により触媒を還元する方法が知られているが、このような方法は燃費の悪化に繋がってしまっていた。
一方、排ガス浄化触媒を始めとする担持触媒の活性点に他の第2、第3成分を添加することにより、触媒活性や排ガスの酸化選択性が劇的な向上を示すことがこれまでにも知られている。例えば、触媒成分の作用を促進させたり、安定化させたりするために、鉄、ニッケル等の第VIII族元素等を助触媒成分として添加する技術が過去に提案されている。
【0019】
発明者らは、酸素原子との結合形成能力が弱い金に着目し、鋭意努力の結果、予めパラジウムと金を組み合わせた合金を排ガス浄化触媒として利用することにより、金がパラジウムの酸化を防ぎ、パラジウムの排ガス浄化能の低減を防ぐことができることを見出した。
【0020】
上述した従来技術である、特開平10−216519号公報に開示されたような金属微粒子担持酸化物触媒の技術においては、酸化されやすい金属元素を含む金属化合物を、触媒金属粒子と混合することが記載されている。
本願発明は、このような従来技術とは全く異なり、酸素原子との結合形成能力が弱い金を、触媒となるパラジウムと合金化させる発明である。発明者らは、このように合金化することによって、パラジウムと酸素原子との結合を抑制し、パラジウムのメタル状態(0価金属状態)を維持することができ、そのため、本願発明の排ガス浄化触媒が、長時間にわたりパラジウムによる触媒活性状態を保つことができることを見出した。
【0021】
本発明において排ガスとは、一酸化炭素、窒素酸化物、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素からなる群から選ばれる1又は2以上の気体の混合物を指す。したがって、本発明に係る排ガス浄化触媒は、上記気体のうち少なくとも1種類を酸化し、浄化する能力を有する。
【0022】
本発明の排ガス浄化触媒は、合金内におけるパラジウムと金の元素モル比が、Pd:Au=99mol%:1mol%〜50mol%:50mol%であることが好ましい。仮に合金内におけるパラジウムの元素比が50%未満であると、十分な排ガス酸化作用が得られなくなり、また、仮に合金内における金の元素比が1%未満であると、パラジウムの酸化を十分に抑制することができなくなってしまう。
なお、合金内におけるパラジウムと金の元素モル比が、Pd:Au=99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%であることが特に好ましく、Pd:Au=90mol%:10mol%〜70mol%:30mol%であることが最も好ましい。
【0023】
本発明の排ガス浄化触媒の一形態としては、合金が担体に担持されているという構成をとることができる。
本発明において用いることができる担体は、触媒粒子を担持できる担体であれば特に限定されることはなく、例えば、シリカや、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、イットリア、マグネシア、及び、これらの複合酸化物等を用いることができる。
なお、合金が担体に担持された構成をとる場合には、排ガス浄化触媒の全質量に対する合金の含有割合は0.1〜10.0質量%であるのが好ましい。
【0024】
2.排ガス浄化触媒製造方法
本発明の排ガス浄化触媒製造方法は、少なくとも、パラジウム元素を含む化合物、金元素を含む化合物、及び、パラジウム元素及び金元素の少なくともいずれか一方の元素に対して配位能を有する高分子化合物を液体に分散させる金属微粒子合成工程、並びに、前記金属微粒子合成工程により得られた分散液に必要であれば担体を加えた後、加熱を行う加熱工程を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明の排ガス浄化触媒製造方法は、上記のように金属微粒子合成工程及び加熱工程を含むが、必ずしもこれら2工程のみには限定されない。
以下、金属微粒子合成工程及び加熱工程について、順を追って説明する。
【0026】
本発明でいう金属微粒子合成工程とは、パラジウム元素を含む化合物、金元素を含む化合物、及び、パラジウム元素及び金元素の少なくともいずれか一方の元素に対して配位能を有する高分子化合物を液体に分散させる工程のことである。
パラジウム元素の担体への担持は、一般的に、硝酸塩又は錯塩の溶液を酸化物担体に含浸させて担体表面に金属化合物を分散させ、次いで乾燥及び焼成することにより行われている。しかしながらこのような従来の方法では、熱劣化などで粒子が肥大する過程において部分的に複数の触媒成分が合金を形成することはあるものの、組成が均一な合金粒子を形成させることは困難である。本発明でいう金属微粒子合成工程のように、パラジウム元素及び/又は金元素と配位する高分子化合物をさらに加えることによって、2種類の異なる金属元素を高分散させることができ、これを還元することによって合金微粒子を作製し、後の加熱工程において高分子化合物を除去することにより、均一な組成の合金微粒子担持触媒を形成することができる。
【0027】
パラジウム元素を含む化合物の具体例としては、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、硫酸パラジウム、リン酸パラジウム、塩化パラジン酸、テトラニトロパラジウム酸、硝酸パラジウム、ジクロロジアンミンパラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、テトラアンミンパラジウム塩化物、テトラアンミンパラジウム水銀塩、トランス‐ジアクアジアンミンパラジウム硝酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム、ビス(エチレンジアンミン)パラジウム硝酸塩、ジアクア(エチレンジアンミン)パラジウム硝酸塩、パラジウムベンゾニトリル錯体、パラジウムシクロオクタジエン錯体、パラジウムトリフェニルホスフィン錯体等を用いることができる。
金元素を含む化合物の具体例としては、塩化金酸(HAuCl)及びその水和物、及びその塩、テトラアンミン金硝酸塩、シアン化第二金カリウム、シアン化金カリウム等を用いることができる。
【0028】
上述した金属微粒子分散の役割を果たすために、本発明で用いることのできる高分子化合物は、配位性の高分子化合物であり、パラジウム元素及び金元素のいずれにも配位能を有することが好ましい。本発明で用いることのできる高分子化合物としては、たとえば、親水性高分子、両親媒性高分子が例示される。
親水性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)等の水酸基含有化合物、ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略す)等の環状アミド含有化合物、環状イミド含有化合物、ポリアクリル酸(PAA)、ポリ(アクリル酸ナトリウム)、ポリ(アクリル酸カリウム)、ポリアクリル酸部分水和物架橋体、アクリル酸・イタコン酸アミド共重合体等のカルボキシル基含有化合物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物等のカルボン酸エステル化合物、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリアクリルアミド部分加水分解物のアミド基含有化合物、アクリロニトリル共重合体等のニトリル基含有化合物、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン、ポリアミン、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリアミノ酸、ポリリン酸、ヘテロポリ酸等の水溶性または親水性の高分子及びこれらの共重合体、若しくは、シクロデキストリン、アミノペクチン、メチルセルロース、ゼラチンなどの天然物等が例示できる。この中でも、PVPを用いるのが好ましい。
両親媒性分子としては、溶質分子が親水性基と親油基とを有すればよく、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸アルカリ塩、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩等の陰イオン界面活性剤、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドの高級アミンハロゲン酸塩、ヨウ化メチルピリジニウム等のハロゲン化アルキルピリジニウム、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム等のテトラアンモニウム塩等の陽イオン活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン活性剤、アミノ酸等の両性表面活性剤等が例示できる。
【0029】
本発明でいう金属微粒子合成工程において、分散媒となる液体は、室温(15〜25℃)において液体であれば特に限定されないが、後述する還元工程において還元剤となる液体であることが好ましい。具体的には、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、2−エトキシアルコール、1,2−ヘキサデカンジオール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及びこれらの水溶液等を用いることができる。この中でも、安価で取り扱いの容易なエタノール水溶液を用いるのが好ましい。
また、これらの分散媒となる液体とは別に、還元剤又は金属を還元できる手段を併用してもよい。還元剤としては、水素、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ギ酸、ホルムアルデヒド、ヒドラジンを例示することができる。また、金属を還元できる手段としては、可視光、紫外線、γ線、超音波を例示することができる。
【0030】
本発明でいう加熱工程とは、上述した金属微粒子合成工程により得られた分散液に必要であれば担体を加えた後、加熱を行う工程のことである。本工程において、加熱によって担体に金属粒子を担持させる際には通常は焼成を行うが、必ずしも焼成のみに限定されることはない。
加熱温度は、200〜600℃が好ましく、250〜350℃が最も好ましい。
上記温度で加熱(通常は焼成)を行うことによって、金属原子に配位していた高分子を焼成除去し、且つ、金属微粒子を担体へと担持させることができる。
【0031】
パラジウム元素を含む化合物と金元素を含む化合物とを好ましいモル比で混合することによって、得られる排ガス浄化触媒が、パラジウム元素による排ガス浄化能、及び、金元素によるパラジウム元素の酸化防止能をバランスよく発揮することができるという観点から、本発明の排ガス浄化触媒製造方法は、パラジウム元素を含む化合物と、金元素を含む化合物とのモル比が、99mol%:1mol%〜50mol%:50mol%であることが好ましい。なお、パラジウム元素を含む化合物と、金元素を含む化合物とのモル比が99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%であることが特に好ましく、当該モル比が90mol%:10mol%〜70mol%:30mol%であることが最も好ましい。
【実施例】
【0032】
1.金属クラスターの合成
[実施例1]
反応容器にPVP K−25(関東化学株式会社製。平均分子量35,000)2.75g(24.8mmol)加え、イオン交換水375gで完全に溶解させた。次いで、HAuCl水溶液(Au含有量:30.4質量%)1.60g(2.48mmol)、PdCl水溶液(Pd含有量:14.9質量%)1.77g(2.48mmol)及びエタノール375gを加えた。これをバス温110℃で3時間加熱・還流させ、Au及びPdを還元した後、反応溶液を室温まで放冷した。その後、液量が50ml程度になるまで濃縮し、微粒子分散液(Pd/Au(5/5)クラスター分散液)を得た。
【0033】
[実施例2]
反応容器にPVP K−25(関東化学株式会社製。平均分子量35,000)2.75g(24.8mmol)加え、イオン交換水375gで完全に溶解させた。次いで、HAuCl水溶液(Au含有量:30.4質量%)0.96g(1.49mmol)、PdCl水溶液(Pd含有量:14.9質量%)2.47g(3.46mmol)及びエタノール375gを加えた。これをバス温110℃で3時間加熱・還流させ、Au及びPdを還元した後、反応溶液を室温まで放冷した。その後、液量が50ml程度になるまで濃縮し、微粒子分散液(Pd/Au(7/3)クラスター分散液)を得た。
【0034】
[実施例3]
反応容器にPVP K−25(関東化学株式会社製。平均分子量35,000)2.75g(24.8mmol)加え、イオン交換水375gで完全に溶解させた。次いで、HAuCl水溶液(Au含有量:30.4質量%)0.32g(0.50mmol)、PdCl水溶液(Pd含有量:14.9質量%)3.20g(4.50mmol)及びエタノール375gを加えた。これをバス温110℃で3時間加熱・還流させ、Au及びPdを還元した後、反応溶液を室温まで放冷した。その後、液量が50ml程度になるまで濃縮し、微粒子分散液(Pd/Au(9/1)クラスター分散液)を得た。
【0035】
[比較例1]
反応容器にPVP K−25(関東化学株式会社製。平均分子量35,000)2.75g(24.8mmol)加え、イオン交換水375gで完全に溶解させた。次いでPdCl水溶液(Pd含有量:14.9質量%)3.54g(4.95mmol)及びエタノール375gを加えた。これをバス温110℃で3時間加熱・還流させ、Pdを還元した後、反応溶液を室温まで放冷した。その後、液量が50ml程度になるまで濃縮し、微粒子分散液(Pdクラスター分散液)を得た。
【0036】
[比較例2]
反応容器にPVP K−25(関東化学株式会社製。平均分子量35,000)4.00g(36.0mmol)加え、イオン交換水375gで完全に溶解させた。次いで、HAuCl水溶液(Au含有量:30.4質量%)0.55g(0.86mmol)、PdCl水溶液(Pd含有量:14.9質量%)0.03g(0.05mmol)及びエタノール375gを加えた。これをバス温110℃で3時間加熱・還流させ、Au及びPdを還元した後、反応溶液を室温まで放冷した。その後、液量が50ml程度になるまで濃縮し、微粒子分散液(Pd/Au(5/95)クラスター分散液)を得た。
【0037】
なお、上記実施例1乃至3、並びに、比較例1及び2で採用したような製造方法を応用して、パラジウムを含まず金のみを金属として含む微粒子分散液(Auクラスター分散液)を作製しようと試みた。しかし、当該製造方法によってAuクラスター分散液を製造することは困難であった。
【0038】
2.金属クラスター担持触媒の合成
2−1.球状シリカを担体として用いた担持触媒の合成
[実施例4]
上記実施例1で作製したPd/Au(5/5)クラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A1)。
一方、他の反応容器に所定量の担体粉末(球状シリカ)を加え、水を50mL加えて分散させた(分散液B)。分散液Bを分散液A1に加えて150℃で加熱攪拌することにより分散媒(すなわちエタノール水溶液)を除去した。分散媒除去後の固体を120℃の温度条件下で12時間乾燥させた後、乳鉢で粉砕し、空気中5時間300℃で焼成することにより、担持触媒粉末を得た。これらの粉末を、196MPaで高圧成型することにより、パラジウム含有割合が1質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0039】
[実施例5]
上記実施例2で作製したPd/Au(7/3)クラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A2)。
後は、上記実施例4と同様に、上記分散液Bを分散液A2に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウム含有割合が1質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0040】
[比較例3]
上記比較例1で作製したPdクラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A3)。
後は、上記実施例4と同様に、上記分散液Bを分散液A3に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウム含有割合が1質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0041】
[比較例4]
分散液A3及び分散液Bの調整及び高圧成型によるペレット作製までは上記比較例3と同様である。
得られたペレットを1%水素によって、300℃で10分還元前処理することにより、パラジウム含有割合が1質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0042】
2−2.針状γアルミナを担体として用いた担持触媒の合成
[実施例6]
上記実施例2で作製したPd/Au(7/3)クラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A2)。
一方、他の反応容器に所定量の担体粉末(針状γアルミナ)を加え、水を50mL加えて分散させた(分散液C)。分散液Cを分散液A2に加えた後、150℃で加熱攪拌することにより分散媒(すなわちエタノール水溶液)を除去した。分散媒除去後の固体を120℃の温度条件下で12時間乾燥させた後、乳鉢で粉砕し、空気中5時間300℃で焼成することにより、担持された総金属重量が0.5質量%である担持触媒粉末を得た。これらの粉末を、196MPaで高圧成型することにより、パラジウムと金の合計の含有割合が0.5質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0043】
[実施例7]
上記実施例3で作製したPd/Au(9/1)クラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A4)。
後は、上記実施例6と同様に、上記分散液Cを分散液A4に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウムと金の合計の含有割合が0.5質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0044】
[比較例5]
上記比較例1で作製したPdクラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A3)。
後は、上記実施例6と同様に、上記分散液Cを分散液A3に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウムの含有割合が0.5質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0045】
[比較例6]
上記比較例2で作製したPd/Au(5/95)クラスター分散液を反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A5)。
後は、上記実施例6と同様に、上記分散液Cを分散液A5に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウムと金の合計の含有割合が0.5質量%となるペレット状の試料を作製した。
【0046】
[比較例7]
上記比較例1で作製したPdクラスター分散液、及び上記比較例2で作製したPd/Au(5/95)クラスター分散液を、比較例1の分散液:比較例2の分散液=7:3の比となるように反応容器に加え、水を加えて100mLに希釈した後、攪拌子を容器に入れてマグネチックスターラーで攪拌した(分散液A6)。
後は、上記実施例6と同様に、上記分散液Cを分散液A6に加えて加熱攪拌、乾燥、焼成、高圧成型することにより、パラジウムと金の合計の含有割合が0.5質量%となるペレット状の試料を作製した。
このように作製した比較例7の担持触媒は、パラジウムと金の合金処理を経ず、パラジウムと金とを物理的に混合したにすぎない金属クラスター試料を、針状γアルミナに担持させた担持触媒である。
【0047】
以下、金属クラスター担持触媒の分析及び触媒活性評価を行った。下記表1に、各分析及び評価に用いた試料についてまとめた。なお、実施例3及び比較例2の金属クラスター分散液は、それぞれ実施例7の金属クラスター担持触媒、又は、比較例6及び比較例7の金属クラスター担持触媒の原料であり、実施例3及び比較例2の金属クラスター分散液自体は、分析及び評価には用いなかった。
【0048】
【表1】

【0049】
3.金属クラスター及び金属クラスター担持触媒の分析
3−1.STEM分析
実施例1及び2の金属クラスター、並びに、実施例4及び5の金属クラスター担持触媒について、HD−2000(日立製。加速電圧:200kV)を用いてSTEM分析を行った。
実施例1及び2の微粒子分散液は、エタノールで希釈し、モリブデングリッドに滴下後、乾燥させたものを測定した。測定結果については、画像解析ソフトであるWinROOF(三谷商事株式会社製)を用いて、100個以上の粒子の直径を測定してヒストグラムを作成し、平均径と標準偏差を算出した。
【0050】
図1は、実施例1の金属クラスター及び実施例4の金属クラスター担持触媒に係るSTEM観察像並びに粒径のヒストグラムである。
図1(a)は、実施例1の金属クラスターのSTEM観察像、図1(b)は、実施例4の金属クラスター担持触媒のSTEM観察像である。実施例1の金属クラスター(すなわち担持前)の平均径が3.2nmであったのに対し、実施例4の金属クラスター担持触媒(すなわち担持後)の平均径は3.9nmであった。また、実施例1の金属クラスターの標準偏差は1.2nmであり、実施例4の金属クラスター担持触媒の標準偏差は1.1nmであった。
図1(c)は、実施例1の金属クラスター及び実施例4の金属クラスター担持触媒の粒径のヒストグラムである。上記平均径、標準偏差及び当該ヒストグラムから、担持前後では、粒径は0.7nm増加するものの、粒径のばらつきにほとんど変化がないことが分かる。
【0051】
図2は、実施例2の金属クラスター及び実施例5の金属クラスター担持触媒に係るSTEM観察像並びに粒径のヒストグラムである。
図2(a)は、実施例2の金属クラスターのSTEM観察像、図2(b)は、実施例5の金属クラスター担持触媒のSTEM観察像である。実施例2の金属クラスター(すなわち担持前)の平均径が3.3nmであったのに対し、実施例5の金属クラスター担持触媒(すなわち担持後)の平均径は4.0nmであった。また、実施例2の金属クラスターの標準偏差は1.2nmであり、実施例5の金属クラスター担持触媒の標準偏差は1.1nmであった。
図2(c)は、実施例2の金属クラスター及び実施例5の金属クラスター担持触媒の粒径のヒストグラムである。上記平均径、標準偏差及び当該ヒストグラムから、担持前後では、粒径は0.7nm増加するものの、粒径のばらつきにほとんど変化がないことが分かる。
【0052】
図3(a)は、実施例4の金属クラスター担持触媒の、STEM−EDXによる組成分析の6つの測定点を示した図であり、図3(b)はEDXによる組成分析結果のうち、パラジウムと金の元素組成比を示した棒グラフである。図3(b)に示すように、いずれの測定点においてもパラジウム元素(棒グラフ中の白い領域)と金元素(棒グラフ中の黒い領域)が存在し、且つ、その存在比を平均すると、おおよそ50対50に近い値であることが分かる。
【0053】
3−2.XRD分析
実施例1及び2、及び比較例1の金属クラスター、並びに実施例4及び5、及び比較例3の金属クラスター担持触媒について、RINT2000(リガク製)を用いてXRD分析を行った。詳細な測定条件は以下のとおりである。
X線源:CuKα
サンプリング間隔:0.02deg.
スキャン速度:2.4deg./min
発散スリット(DS):2/3deg.
散乱スリット(SS):2/3deg.
受光スリット(RS):RS(mm)
管電圧:50kV
管電流:300mA
【0054】
図4(a)は、実施例1及び2、並びに比較例1の金属クラスターのXRDプロファイルである。図4(a)の上から、比較例1、実施例2、実施例1のXRDプロファイルをそれぞれ示す。
比較例1のXRDプロファイル(上段)において、Pd(111)面回折ピークが39.9°に現れたのに対し、実施例1(下段)及び実施例2(中段)のXRDプロファイルにおいては、(111)面回折ピークが38.8°付近に現れた。この38.8°の値は、Pd(111)面回折ピークの値(39.9°)と、Au(111)面回折ピークの値(38.2°)の間の値であることから、実施例1及び実施例2の金属クラスターは、いずれもパラジウムと金の合金微粒子であることが示唆される。
【0055】
図4(b)は、実施例4及び5、並びに比較例3の金属クラスター担持触媒のXRDプロファイルである。図4(b)の上から、比較例3、実施例5、実施例4のXRDプロファイルをそれぞれ示す。
比較例3のXRDプロファイル(上段)においては、比較例1のXRDプロファイル(図4(a)上段)には現れていなかったPdO(101)面回折ピークが33.8°に現れたのに対し、実施例4(下段)及び実施例5(中段)のXRDプロファイルにおいては、このようなピークは現れなかった。これらの結果から、比較例3の金属クラスター担持触媒においては、焼成工程においてパラジウムが酸化されてしまったのに対し、実施例4及び実施例5の金属クラスター担持触媒においては、クラスター内に金を含むことにより、いずれもパラジウムの酸化が抑制されたことが示唆される。
【0056】
4.金属クラスター担持触媒の触媒活性評価
4−1.触媒活性評価1
実施例4及び5、並びに比較例3の金属クラスター担持触媒のペレット2gを用いて、一酸化炭素1%+酸素10%(窒素バランス)、総流量10L/minのサンプルガスを流通させ、昇温評価を実施した。このような昇温評価実験は、触媒の一酸化炭素酸化活性を評価するものであり、一酸化炭素が酸化される温度が低いほど、触媒活性が高いものであると評価することができる。
図5は、触媒の昇温評価実験結果を示すグラフであり、縦軸に一酸化炭素浄化率(%)を、横軸に温度(℃)を取ったグラフである。グラフからも分かるように、比較例3(グラフ中の「Pd」)の一酸化炭素酸化開始温度は210℃、50%一酸化炭素酸化温度が300℃以上であったのに対し、実施例4(グラフ中の「Au:Pd=5:5」)及び実施例5(グラフ中の「Au:Pd=3:7」)の一酸化炭素酸化開始温度は、いずれも200℃未満であり、両実施例の50%一酸化炭素酸化温度は250℃未満であった。以上より、パラジウムと金との合金を含む実施例4及び実施例5の触媒は、パラジウムを含んで金を含まない比較例3の触媒と比較して、いずれも、より低い温度から一酸化炭素を酸化できることが確認できた。このことは、金の存在により触媒活性が向上したことを示唆している。
【0057】
4−2.触媒活性評価2
実施例6及び7、並びに比較例5乃至7の金属クラスター担持触媒のペレット2gを用いて、一酸化炭素1%+酸素10%(窒素バランス)、総流量10L/minのサンプルガスを流通させ、昇温評価を実施した。
図6は、触媒の昇温評価実験結果を示すグラフであり、縦軸に一酸化炭素浄化率(%)を、横軸に温度(℃)を取ったグラフである。グラフからも分かるように、実施例7(グラフ中の「Pd:Au=9:1クラスター」)と比較例5(グラフ中の「Pdクラスター」)を比較すると、実施例7の金属クラスター担持触媒の一酸化炭素浄化率は、比較例5の金属クラスター担持触媒の同じ温度における一酸化炭素浄化率よりも高い結果となった。この結果から、パラジウムと金との合金を含む実施例7の触媒は、パラジウムを含んで金を含まない比較例5の触媒と比較して、高い触媒活性を示すことが分かる。
また、実施例6(グラフ中の「Pd:Au=7:3クラスター」)と比較例7(グラフ中の「Pd:Au=7:3物理混合」)を比較すると、実施例6の金属クラスター担持触媒の一酸化炭素浄化率は、比較例7の金属クラスター担持触媒の同じ温度における一酸化炭素浄化率よりも高い結果となった。この結果から、合金触媒クラスターの一酸化炭素酸化活性は、物理的に混合しただけであり合金処理していない金属クラスターの一酸化炭素酸化活性よりも高いことが分かる。
また、比較例6(グラフ中の「Pd:Au=5:95」)が、図6に結果を示した触媒中、最も低い活性を示した。この結果から、金自体の一酸化炭素酸化活性は極めて低いこと、且つ、実施例6及び7の金属クラスター担持触媒は、いずれも金を含むことによってパラジウムの金属状態(0価のパラジウム)を維持し、高い一酸化炭素酸化活性を示したことが分かる。
【0058】
4−3.触媒活性評価3
比較例3及び4の金属クラスター担持触媒のペレット2gを用いて、一酸化炭素1%+酸素10%(窒素バランス)、総流量10L/minのサンプルガスを流通させ、昇温評価を実施した。
図7(a)は、比較例3及び4の金属クラスターのXRDプロファイルである。図7(a)の上から、比較例3、昇温評価実験前の比較例4、昇温評価実験後の比較例4のXRDプロファイルをそれぞれ示す。また、図7(b)は、触媒の昇温評価実験結果を示すグラフであり、縦軸に一酸化炭素浄化率(%)を、横軸に温度(℃)を取ったグラフである。
図7(a)から分かるように、比較例3(上段)のXRDプロファイルには、PdO(101)面回折ピークが33.8°に現れたのに対し、昇温評価実験前の比較例4(中段)のXRDプロファイルにおいては、このようなピークは現れなかった。これらの結果から、比較例3の金属クラスター担持触媒においては、焼成工程においてパラジウムが酸化されてしまったのに対し、昇温評価実験前の比較例4の金属クラスター担持触媒においては、水素で還元したパラジウムクラスターが0価のパラジウムであることが確認できた。
また、図7(b)の比較例3(グラフ中の「空気中で焼成品」)と比較例4(グラフ中の「水素還元品」)を比較すると、比較例3の一酸化炭素浄化開始温度が210℃、50%浄化温度が300℃以上であったのに対し、比較例4の一酸化炭素浄化開始温度は150℃近傍、50%浄化温度が200℃未満の温度であった。これらの結果から、酸化パラジウムよりも0価のパラジウムの方が、一酸化炭素酸化活性が高いことが確認できた。
ただし、図7(a)から分かるように、昇温評価実験後の比較例4(下段)のXRDプロファイルには、PdO(101)面回折ピークが33.8°に現れている。この結果から、昇温評価実験によってパラジウムは酸化されてしまうことが分かり、パラジウム単独ではパラジウム自身の酸化を持続的に防ぐことは困難であることが分かる。
【0059】
5.本実施例のまとめ
本発明に係る製造方法により、平均粒径が3.2〜3.3nmの金属クラスター、及び、平均粒径が3.9〜4.0nmの金属クラスター担持触媒が得られたことが、STEM観察により明らかとなった(図1及び図2)。金属クラスター担持触媒中には、均一にパラジウム及び金が分布していることが、STEM−EDXによる組成分析により確認できた(図3)。
また、XRD分析により、本発明に係る製造方法により得られた金属クラスター中には、パラジウムと金の合金が存在することが確認でき、且つ、当該金属クラスターを担体に担持するために加熱を行っても、パラジウムが酸化されないことが分かった(図4)。
さらに、触媒の昇温評価実験により、パラジウムと金を含む合金を有する本発明の排ガス浄化触媒は、パラジウムのみを含む従来の触媒や、パラジウムと金とを物理的に混合したのみの触媒と比較して、一酸化炭素酸化活性が高いことが分かった(図5及び図6)。金属としてほぼ金のみを含む排ガス浄化触媒がほとんど一酸化炭素酸化活性を示さないこと(図6)、及び、水素で強制的に還元したパラジウムのみを含む触媒が高い一酸化炭素酸化活性を示す一方で、パラジウムのみを含む触媒は加熱により酸化されやすいことを見出し(図7)、これらの結果から、パラジウムと金を含む合金を有する本願発明の排ガス浄化触媒が、金がパラジウムの酸化を防いでパラジウム0価の状態を保つ結果、パラジウムによる排ガス浄化効果を高く保つことができることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムと金を含む合金を有することを特徴とする、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記合金内におけるパラジウムと金の元素モル比が、Pd:Au=99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
前記合金が担体に担持されている、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
少なくとも、パラジウム元素を含む化合物、金元素を含む化合物、及び、パラジウム元素及び金元素の少なくともいずれか一方の元素に対して配位能を有する高分子化合物を液体に分散させる金属微粒子合成工程、並びに、
前記金属微粒子合成工程により得られた分散液に必要であれば担体を加えた後、加熱を行う加熱工程を含むことを特徴とする、排ガス浄化触媒製造方法。
【請求項5】
前記パラジウム元素を含む化合物と、前記金元素を含む化合物とのモル比が、99mol%:1mol%〜70mol%:30mol%である、請求項4に記載の排ガス浄化触媒製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−56379(P2011−56379A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208017(P2009−208017)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】