排ガス浄化触媒用メタル担体
【課題】十分な強度を有し通気抵抗も小さなハニカム体を有する排ガス浄化触媒用メタル担体を提供する。
【解決手段】金属製外筒1内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体Hを収納したメタル担体において、外筒1内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブ2を互いに密接させて配設してハニカム体Hを構成する。上記多数の円筒チューブ2は、円筒形とした上記外筒1の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域Z1に収束させて配設されている。上記領域Z1の正六角形の各辺に沿って仕切板3が配設され、これら仕切板3と外筒1の間に形成された円弧領域Z2に、仕切板3と外筒1とに内外方向でそれぞれ接する円筒チューブ41,42が配設される。
【解決手段】金属製外筒1内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体Hを収納したメタル担体において、外筒1内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブ2を互いに密接させて配設してハニカム体Hを構成する。上記多数の円筒チューブ2は、円筒形とした上記外筒1の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域Z1に収束させて配設されている。上記領域Z1の正六角形の各辺に沿って仕切板3が配設され、これら仕切板3と外筒1の間に形成された円弧領域Z2に、仕切板3と外筒1とに内外方向でそれぞれ接する円筒チューブ41,42が配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化触媒用メタル担体に関し、特にそのハニカム構造体の新規な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化触媒用メタル担体は従来、特許文献1に示すように、平板と波板とを互いに重ね合わせた状態で巻き付けてハニカム体を構成し、該ハニカム体を円筒状の外筒内に圧入して、拡散接合やロウ付け等によって平板と波板とを接合している。そして、ハニカム体を構成する各セルの表面に触媒が担持される。
【特許文献1】特開2008−104990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、平板と波板を拡散接合で接合する場合には両者が十分な接触圧で圧接されている必要があり、従来はこれを、巻き付け時の後方引張り力と外筒の縮管による締め付け力で保証している。ところが、平板と波板ではその接触圧を十分大きく保つことが難しいため、接合強度が不足して破損することがあった。なお、上記特許文献1ではこの問題を解決するために、ハニカム体を内側ハニカム体と外側ハニカム体とに分け、それぞれに後方引張り力と縮径力を付与するようにしている。
【0004】
また、平板と波板を接合して構成されるハニカム体の各セルの断面形状は、通常、三角形あるいは台形になるため、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は円形に比して長くなり、この結果、通気抵抗が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、十分な強度を有し通気抵抗も小さなハニカム体を有する排ガス浄化触媒用メタル担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明の触媒コンバータのメタル担体では、金属製外筒(1)内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体(H)を収納したメタル担体において、外筒(1)内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブ(2)を互いに密接させて配設してハニカム体(H)を構成する。
【0007】
本第1発明のメタル担体においては、ハニカム体を、多数の金属製円筒チューブを互いに密接させて配設することによって構成しているから、平板と波板でハニカム体を構成した従来のメタル担体に比して十分な強度を発揮する。また、ハニカム体の各セルの断面形状が円形となるから、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は最も短くなり、通気抵抗も十分小さくなる。
【0008】
本第2発明では、上記多数の円筒チューブ(2)を、円筒形とした上記外筒(1)の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域(Z1)に収束させて配設し、領域(Z1)と外筒(1)の間に形成された円弧領域(Z2)に、正六角形領域(Z1)に配設された円筒チューブ(2)と外筒(1)とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブ(43)を配設する。本第2発明においては、多数の円筒チューブを円筒形の外筒内に収まり良く収束配置することができる。
【0009】
本第3発明では、上記領域(Z1)の正六角形の各辺に沿って仕切板(3)を配設し、これら仕切板(3)と外筒(1)の間に形成された円弧領域(Z2)に、仕切板(3)と外筒(1)とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブ(41,42)を配設する。本第3発明においては、特に比較的大径の外筒内で、仕切板によって多数の円筒チューブを正六角形領域に規制し収束させることができる。
【0010】
本第4発明の排ガス浄化触媒用メタル担体の製造方法では、治具(5)に形成された正六角形の開口(521)内に多数の円筒チューブ(2)を挿入してこれら円筒チューブ(2)を正六角形の領域(Z1)に収束させ、収束させた円筒チューブ(2)を外筒(1)内に挿入した後、さらに他の円筒チューブ(41,42,43)を外筒(1)内に挿入し、外筒(1)を縮管して円筒チューブ(2)および他の円筒チューブ(41,42,43)を外筒(1)内に保持させる。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の排ガス浄化触媒用メタル担体は十分な強度を有し通気抵抗も小さなハニカム体を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1には本発明の排ガス浄化触媒用メタル担体の正面図を示し、図2にはその縦断面図を示す。各図において、メタル担体は金属製の外筒1を備えている。本実施形態では外筒1は円筒体としてある。一例として、外筒1はSUS304のステンレス鋼製で、外径が65mm(呼び径)、肉厚が1.0mm、長さ86mmである。
【0014】
外筒1内には多数の金属製円筒チューブ2が配設されてハニカム体Hを構成している。これら円筒チューブ2は外筒1の筒長よりやや短くしてあり、外筒1の両端開口11,12から一定寸法L(例えば5mm)の溶接代を確保して内方に位置して、筒軸方向へ配置されている。円筒チューブ2はシームレス管あるいはセミシームレス管を使用し、例えばフェライト系ステンレス鋼製とする。コスト的な面と薄肉のチューブを得ることが可能な点でセミシームレス管を使用するのが好ましい。円筒チューブ2の外径は外筒1の内径に対して整数で割り切れる値で、かつハニカムHの必要なセル数(例えば一般的に100セル/平方インチ)を考慮して決定する。円筒チューブ2の一例としては、外径が3mm、肉厚が0.1mmである。
【0015】
円形の外筒1内に多数の円筒チューブ2を筒軸方向へ収束配置する場合に最も自然なのは、外筒1の内周に接する正六角形の領域Z1に配置するものである。そこで、本実施形態では図1に示すように、外筒1内に平板状の仕切板3が設けられている。これら仕切板3は外筒1の内周に接する正六角形の各辺よりもやや小さい幅で、上記円筒チューブ2の長さに等しい長さであり、これら仕切板3によって囲まれた正六角形領域Z1内に円筒チューブ2が互いに密接して配置されている。仕切板3の一例は、板幅が26mm、板厚が0.8mmである。なお、正六角形領域Z1の対角線上には仕切板3は無く、全て円筒チューブ2で満たされている。これは、隣接した仕切板3が互いに接していると、外筒1の後述する縮管がスムーズに行えないからである。したがって、外筒1および円筒チューブ2の寸法の一例として上記値を採用すると、正六角形領域Z1の対角線上には図1に示すように21個の円筒チューブ2が並ぶ。
【0016】
各仕切板3と外筒1の間に形成される6箇所の円弧領域Z2内にはそれぞれ、中央部に上記円筒チューブ2と同径の3本の他の円筒チューブ41が、左右端部には例えば外径2.2mm、肉厚0.1mmの各2本の他の円筒チューブ42が互いに密接して配設されて、これら他の円筒チューブ41,42が仕切板3と外筒1に内外方向で接する。なお、外径公差を適当に設定することによって上記他の円筒チューブとして円筒チューブ2と同径のものを4本配置するようにしても良く、これによれば径の異なる円筒チューブを用意する必要が無いからコストを低減することができる。いずれにしても、上記他の円筒チューブの外径や本数は設計的に種々変更することができる。
【0017】
上記構造のメタル担体の製造過程の一例を以下に説明する。メタル担体を組み立てる場合には、例えば図3に示すような治具5を使用する。図3において、治具5は四隅に支持柱51を備え、支持柱51にはその長手方向へ間隔をおいて3枚の保持板52が各コーナ部で支持されて配置されている。そして、各保持板52には板面に、上記領域Z1と同形の正六角形の開口521が形成されている。このような治具5を、図4に示すように横倒し状態にし、この状態で円筒チューブ2を保持板52の開口521内に挿入し積層していく。開口521内が円筒チューブ2で満たされたら治具5を起立させて(図5)、治具の最上位置の保持板を取り去り(図6)、正六角形に集束させられて露出した円筒チューブ2に外径65mmの円筒外筒1を被せて(図7)、集束された円筒チューブ2を囲むように当該外筒1内に仕切板3を挿入する(図8)。なお、図7、図8は図6のA矢印方向から外筒1を被せ、当該外筒1の開口11から内方を覗いた正面図である。
【0018】
続いて仕切板3と外筒1の間に円筒チューブ41,42を挿入し(図9)、仕切板を介して内部の円筒チューブ2を押圧する。このようにして外筒1と一体化した円筒チューブ2を外筒1と共に治具5から抜き出し(図10)、次に、適当な押込み具を使用して、外筒1の開口12から突出している円筒チューブ2を外筒1内の所定位置へ押し込む(図11)。そして、円筒チューブ2の抜け止めとして、外筒1の開口11,12の内径と同径の、グラスウール等の変形可能な円形押え板51,52をこれら開口11,12から挿入し(図12)、この状態で公知の方法で外筒1を縮管加工する。
【0019】
外筒1内の円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、これらと外筒1を互いに良好に拡散接合するためには縮管加工によって円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、外筒1を一定圧以上で互いに圧接させる必要がある。そこで、縮管加工の際の絞り率と、当該絞り率で縮管したものを拡散接合した後の最大荷重との関係を調べた。これを図13に示す。図13中の最大荷重は、上記メタル担体を20mm幅で輪切りにし、アムスラー試験機を使用してそのφ20のシャフトでハニカム体Hを押して測定したものである。図13より明らかなように、絞り率が0.8%より小さいと最大荷重が24KNより低下して圧接力が不足することを示している。一方、絞り率を1.5%より大きくすると円筒チューブ2,41,42が潰れ始めるために圧接力が不足し、最大荷重はやはり24KNより小さくなってしまう。したがって、円筒チューブ2同士を十分な圧力で圧接させるには絞り率は0.8〜1.5%の範囲とするのが良く、この中でも、最大荷重が25KNを示す1.2%程度が最適である。1.2%の縮管を行った場合は、外筒1の外径は64.2mm(呼び径65mm)程度となる。縮管加工した後は拡散接合によって円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、これらと外筒1を互いに接合する。なお、拡散接合に代えて、又はこれに追加してロウ付け等で接合しても良い。
【0020】
このようにして製造された本発明のメタル担体は従来のものに比して十分な強度を有する。この強度測定は上記最大荷重の測定と同様であり、メタル担体を20mmの輪切りにして、アムスラー試験機でφ20のシャフトでハニカム体Hを押してこの時の最大荷重を測定する。これによると、サンプルによってある程度のバラツキはあるものの、本発明のメタル担体の最大荷重は既述のように24〜25KN程度の値を示すのに対して、平板と波板でハニカム体を構成した従来のメタル担体では、最大荷重は9KNと半分以下である。これは、本発明のメタル担体を構成する円筒チューブが閉断面であるため、拡散接合を行う際に十分な圧接力を付与しておくことができるからである。このように、本発明のメタル担体は十分な強度を有することが知られた。
【0021】
また、本発明のメタル担体はハニカム体の各セルの断面形状が円形であることから、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は最も短くなり、この結果、通気抵抗が十分小さくなる。これを図14に示す。図14はメタル担体を通過する整流された圧縮空気流の流速Vmとこの時の損失水頭h2(メタル担体の前後における空気圧の水頭差)の関係を測定したもので、本発明のメタル担体(図14の線X)と従来のメタル担体(図14の線Y)とでは、空気流速が大きくなるほど両者の損失水頭(通気抵抗)の差が大きくなっている。したがって、一般に排ガス流速が大きい(50m/s以上)高性能車両に対して本発明のメタル担体を使用するメリットは大きい。
【0022】
(第2実施形態)
図15に示すように、外筒が比較的小径(例えば外径35mm、肉厚1.0mm)のものである場合には、第1実施形態で説明した仕切板3は必ずしも必要としない。正六角形領域Z1の円筒チューブ2(例えば外径3mm、肉厚0.1mm)の、正六角形の各辺と外筒1の間に形成される円弧領域Z2内の左右位置に、内外方向で上記円筒チューブ2と外筒1に接する円筒チューブ43(例えば外径2.2mm、肉厚0.1mm)を配置して、これら円筒チューブ43によって円筒チューブ2を押圧する。
【0023】
なお、上記各実施形態において、円筒チューブ2は必ずしも正六角形領域Z1に収束させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態におけるメタル担体の正面図である。
【図2】メタル担体の縦断面図である。
【図3】製造治具の斜視図である。
【図4】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図5】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図6】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図7】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図8】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図9】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図10】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図11】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図12】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図13】外筒縮管加工時の絞り率と最大荷重の関係を示すグラフである。
【図14】メタル担体を通過する空気流の流速と損失水頭の関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第2実施形態におけるメタル担体の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…外筒、2…円筒チューブ、3…仕切板、Z2…円弧領域、41,42,43…円筒チューブ(他の円筒チューブ)、5…治具、52…保持板、521…開口、H…ハニカム体、Z1…正六角形領域、Z2…円弧領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は排ガス浄化触媒用メタル担体に関し、特にそのハニカム構造体の新規な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス浄化触媒用メタル担体は従来、特許文献1に示すように、平板と波板とを互いに重ね合わせた状態で巻き付けてハニカム体を構成し、該ハニカム体を円筒状の外筒内に圧入して、拡散接合やロウ付け等によって平板と波板とを接合している。そして、ハニカム体を構成する各セルの表面に触媒が担持される。
【特許文献1】特開2008−104990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、平板と波板を拡散接合で接合する場合には両者が十分な接触圧で圧接されている必要があり、従来はこれを、巻き付け時の後方引張り力と外筒の縮管による締め付け力で保証している。ところが、平板と波板ではその接触圧を十分大きく保つことが難しいため、接合強度が不足して破損することがあった。なお、上記特許文献1ではこの問題を解決するために、ハニカム体を内側ハニカム体と外側ハニカム体とに分け、それぞれに後方引張り力と縮径力を付与するようにしている。
【0004】
また、平板と波板を接合して構成されるハニカム体の各セルの断面形状は、通常、三角形あるいは台形になるため、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は円形に比して長くなり、この結果、通気抵抗が大きいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、十分な強度を有し通気抵抗も小さなハニカム体を有する排ガス浄化触媒用メタル担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明の触媒コンバータのメタル担体では、金属製外筒(1)内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体(H)を収納したメタル担体において、外筒(1)内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブ(2)を互いに密接させて配設してハニカム体(H)を構成する。
【0007】
本第1発明のメタル担体においては、ハニカム体を、多数の金属製円筒チューブを互いに密接させて配設することによって構成しているから、平板と波板でハニカム体を構成した従来のメタル担体に比して十分な強度を発揮する。また、ハニカム体の各セルの断面形状が円形となるから、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は最も短くなり、通気抵抗も十分小さくなる。
【0008】
本第2発明では、上記多数の円筒チューブ(2)を、円筒形とした上記外筒(1)の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域(Z1)に収束させて配設し、領域(Z1)と外筒(1)の間に形成された円弧領域(Z2)に、正六角形領域(Z1)に配設された円筒チューブ(2)と外筒(1)とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブ(43)を配設する。本第2発明においては、多数の円筒チューブを円筒形の外筒内に収まり良く収束配置することができる。
【0009】
本第3発明では、上記領域(Z1)の正六角形の各辺に沿って仕切板(3)を配設し、これら仕切板(3)と外筒(1)の間に形成された円弧領域(Z2)に、仕切板(3)と外筒(1)とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブ(41,42)を配設する。本第3発明においては、特に比較的大径の外筒内で、仕切板によって多数の円筒チューブを正六角形領域に規制し収束させることができる。
【0010】
本第4発明の排ガス浄化触媒用メタル担体の製造方法では、治具(5)に形成された正六角形の開口(521)内に多数の円筒チューブ(2)を挿入してこれら円筒チューブ(2)を正六角形の領域(Z1)に収束させ、収束させた円筒チューブ(2)を外筒(1)内に挿入した後、さらに他の円筒チューブ(41,42,43)を外筒(1)内に挿入し、外筒(1)を縮管して円筒チューブ(2)および他の円筒チューブ(41,42,43)を外筒(1)内に保持させる。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の排ガス浄化触媒用メタル担体は十分な強度を有し通気抵抗も小さなハニカム体を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1には本発明の排ガス浄化触媒用メタル担体の正面図を示し、図2にはその縦断面図を示す。各図において、メタル担体は金属製の外筒1を備えている。本実施形態では外筒1は円筒体としてある。一例として、外筒1はSUS304のステンレス鋼製で、外径が65mm(呼び径)、肉厚が1.0mm、長さ86mmである。
【0014】
外筒1内には多数の金属製円筒チューブ2が配設されてハニカム体Hを構成している。これら円筒チューブ2は外筒1の筒長よりやや短くしてあり、外筒1の両端開口11,12から一定寸法L(例えば5mm)の溶接代を確保して内方に位置して、筒軸方向へ配置されている。円筒チューブ2はシームレス管あるいはセミシームレス管を使用し、例えばフェライト系ステンレス鋼製とする。コスト的な面と薄肉のチューブを得ることが可能な点でセミシームレス管を使用するのが好ましい。円筒チューブ2の外径は外筒1の内径に対して整数で割り切れる値で、かつハニカムHの必要なセル数(例えば一般的に100セル/平方インチ)を考慮して決定する。円筒チューブ2の一例としては、外径が3mm、肉厚が0.1mmである。
【0015】
円形の外筒1内に多数の円筒チューブ2を筒軸方向へ収束配置する場合に最も自然なのは、外筒1の内周に接する正六角形の領域Z1に配置するものである。そこで、本実施形態では図1に示すように、外筒1内に平板状の仕切板3が設けられている。これら仕切板3は外筒1の内周に接する正六角形の各辺よりもやや小さい幅で、上記円筒チューブ2の長さに等しい長さであり、これら仕切板3によって囲まれた正六角形領域Z1内に円筒チューブ2が互いに密接して配置されている。仕切板3の一例は、板幅が26mm、板厚が0.8mmである。なお、正六角形領域Z1の対角線上には仕切板3は無く、全て円筒チューブ2で満たされている。これは、隣接した仕切板3が互いに接していると、外筒1の後述する縮管がスムーズに行えないからである。したがって、外筒1および円筒チューブ2の寸法の一例として上記値を採用すると、正六角形領域Z1の対角線上には図1に示すように21個の円筒チューブ2が並ぶ。
【0016】
各仕切板3と外筒1の間に形成される6箇所の円弧領域Z2内にはそれぞれ、中央部に上記円筒チューブ2と同径の3本の他の円筒チューブ41が、左右端部には例えば外径2.2mm、肉厚0.1mmの各2本の他の円筒チューブ42が互いに密接して配設されて、これら他の円筒チューブ41,42が仕切板3と外筒1に内外方向で接する。なお、外径公差を適当に設定することによって上記他の円筒チューブとして円筒チューブ2と同径のものを4本配置するようにしても良く、これによれば径の異なる円筒チューブを用意する必要が無いからコストを低減することができる。いずれにしても、上記他の円筒チューブの外径や本数は設計的に種々変更することができる。
【0017】
上記構造のメタル担体の製造過程の一例を以下に説明する。メタル担体を組み立てる場合には、例えば図3に示すような治具5を使用する。図3において、治具5は四隅に支持柱51を備え、支持柱51にはその長手方向へ間隔をおいて3枚の保持板52が各コーナ部で支持されて配置されている。そして、各保持板52には板面に、上記領域Z1と同形の正六角形の開口521が形成されている。このような治具5を、図4に示すように横倒し状態にし、この状態で円筒チューブ2を保持板52の開口521内に挿入し積層していく。開口521内が円筒チューブ2で満たされたら治具5を起立させて(図5)、治具の最上位置の保持板を取り去り(図6)、正六角形に集束させられて露出した円筒チューブ2に外径65mmの円筒外筒1を被せて(図7)、集束された円筒チューブ2を囲むように当該外筒1内に仕切板3を挿入する(図8)。なお、図7、図8は図6のA矢印方向から外筒1を被せ、当該外筒1の開口11から内方を覗いた正面図である。
【0018】
続いて仕切板3と外筒1の間に円筒チューブ41,42を挿入し(図9)、仕切板を介して内部の円筒チューブ2を押圧する。このようにして外筒1と一体化した円筒チューブ2を外筒1と共に治具5から抜き出し(図10)、次に、適当な押込み具を使用して、外筒1の開口12から突出している円筒チューブ2を外筒1内の所定位置へ押し込む(図11)。そして、円筒チューブ2の抜け止めとして、外筒1の開口11,12の内径と同径の、グラスウール等の変形可能な円形押え板51,52をこれら開口11,12から挿入し(図12)、この状態で公知の方法で外筒1を縮管加工する。
【0019】
外筒1内の円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、これらと外筒1を互いに良好に拡散接合するためには縮管加工によって円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、外筒1を一定圧以上で互いに圧接させる必要がある。そこで、縮管加工の際の絞り率と、当該絞り率で縮管したものを拡散接合した後の最大荷重との関係を調べた。これを図13に示す。図13中の最大荷重は、上記メタル担体を20mm幅で輪切りにし、アムスラー試験機を使用してそのφ20のシャフトでハニカム体Hを押して測定したものである。図13より明らかなように、絞り率が0.8%より小さいと最大荷重が24KNより低下して圧接力が不足することを示している。一方、絞り率を1.5%より大きくすると円筒チューブ2,41,42が潰れ始めるために圧接力が不足し、最大荷重はやはり24KNより小さくなってしまう。したがって、円筒チューブ2同士を十分な圧力で圧接させるには絞り率は0.8〜1.5%の範囲とするのが良く、この中でも、最大荷重が25KNを示す1.2%程度が最適である。1.2%の縮管を行った場合は、外筒1の外径は64.2mm(呼び径65mm)程度となる。縮管加工した後は拡散接合によって円筒チューブ2,41,42同士や仕切板3、これらと外筒1を互いに接合する。なお、拡散接合に代えて、又はこれに追加してロウ付け等で接合しても良い。
【0020】
このようにして製造された本発明のメタル担体は従来のものに比して十分な強度を有する。この強度測定は上記最大荷重の測定と同様であり、メタル担体を20mmの輪切りにして、アムスラー試験機でφ20のシャフトでハニカム体Hを押してこの時の最大荷重を測定する。これによると、サンプルによってある程度のバラツキはあるものの、本発明のメタル担体の最大荷重は既述のように24〜25KN程度の値を示すのに対して、平板と波板でハニカム体を構成した従来のメタル担体では、最大荷重は9KNと半分以下である。これは、本発明のメタル担体を構成する円筒チューブが閉断面であるため、拡散接合を行う際に十分な圧接力を付与しておくことができるからである。このように、本発明のメタル担体は十分な強度を有することが知られた。
【0021】
また、本発明のメタル担体はハニカム体の各セルの断面形状が円形であることから、排ガスが流通する断面積を一定にするとその周長は最も短くなり、この結果、通気抵抗が十分小さくなる。これを図14に示す。図14はメタル担体を通過する整流された圧縮空気流の流速Vmとこの時の損失水頭h2(メタル担体の前後における空気圧の水頭差)の関係を測定したもので、本発明のメタル担体(図14の線X)と従来のメタル担体(図14の線Y)とでは、空気流速が大きくなるほど両者の損失水頭(通気抵抗)の差が大きくなっている。したがって、一般に排ガス流速が大きい(50m/s以上)高性能車両に対して本発明のメタル担体を使用するメリットは大きい。
【0022】
(第2実施形態)
図15に示すように、外筒が比較的小径(例えば外径35mm、肉厚1.0mm)のものである場合には、第1実施形態で説明した仕切板3は必ずしも必要としない。正六角形領域Z1の円筒チューブ2(例えば外径3mm、肉厚0.1mm)の、正六角形の各辺と外筒1の間に形成される円弧領域Z2内の左右位置に、内外方向で上記円筒チューブ2と外筒1に接する円筒チューブ43(例えば外径2.2mm、肉厚0.1mm)を配置して、これら円筒チューブ43によって円筒チューブ2を押圧する。
【0023】
なお、上記各実施形態において、円筒チューブ2は必ずしも正六角形領域Z1に収束させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態におけるメタル担体の正面図である。
【図2】メタル担体の縦断面図である。
【図3】製造治具の斜視図である。
【図4】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図5】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図6】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図7】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図8】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図9】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図10】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図11】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図12】メタル担体の製造過程を示す斜視図である。
【図13】外筒縮管加工時の絞り率と最大荷重の関係を示すグラフである。
【図14】メタル担体を通過する空気流の流速と損失水頭の関係を示すグラフである。
【図15】本発明の第2実施形態におけるメタル担体の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…外筒、2…円筒チューブ、3…仕切板、Z2…円弧領域、41,42,43…円筒チューブ(他の円筒チューブ)、5…治具、52…保持板、521…開口、H…ハニカム体、Z1…正六角形領域、Z2…円弧領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製外筒内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体を収納したメタル担体において、前記外筒内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブを互いに密接させて配設して前記ハニカム体を構成した触媒コンバータのメタル担体。
【請求項2】
前記多数の円筒チューブを、円筒形とした前記外筒の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域に収束させて配設し、前記領域と外筒の間に形成された円弧領域に、前記正六角形領域に配設された前記円筒チューブと前記外筒とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブを配設した請求項1に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体。
【請求項3】
前記領域の正六角形の各辺に沿って仕切板を配設し、これら仕切板と前記外筒の間に形成された円弧領域に、前記仕切板と前記外筒とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブを配設した請求項2に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体。
【請求項4】
治具に形成された正六角形の開口内に多数の前記円筒チューブを挿入してこれら円筒チューブを前記正六角形領域に収束させ、収束させた前記円筒チューブを前記外筒内に挿入した後、さらに他の円筒チューブを前記外筒内に挿入し、前記外筒を縮管して前記円筒チューブおよび前記他の円筒チューブを前記外筒内に保持させた請求項2又は3に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体の製造方法。
【請求項1】
金属製外筒内に排気ガス浄化触媒を担持する金属製ハニカム体を収納したメタル担体において、前記外筒内にその筒軸方向へ多数の金属製円筒チューブを互いに密接させて配設して前記ハニカム体を構成した触媒コンバータのメタル担体。
【請求項2】
前記多数の円筒チューブを、円筒形とした前記外筒の筒内でこれの内周に接する正六角形の領域に収束させて配設し、前記領域と外筒の間に形成された円弧領域に、前記正六角形領域に配設された前記円筒チューブと前記外筒とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブを配設した請求項1に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体。
【請求項3】
前記領域の正六角形の各辺に沿って仕切板を配設し、これら仕切板と前記外筒の間に形成された円弧領域に、前記仕切板と前記外筒とに内外方向でそれぞれ密接する他の円筒チューブを配設した請求項2に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体。
【請求項4】
治具に形成された正六角形の開口内に多数の前記円筒チューブを挿入してこれら円筒チューブを前記正六角形領域に収束させ、収束させた前記円筒チューブを前記外筒内に挿入した後、さらに他の円筒チューブを前記外筒内に挿入し、前記外筒を縮管して前記円筒チューブおよび前記他の円筒チューブを前記外筒内に保持させた請求項2又は3に記載の排ガス浄化触媒用メタル担体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−297674(P2009−297674A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156821(P2008−156821)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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