排ガス触媒装置の製造方法並びにこの方法によって製造された排ガス触媒装置
【課題】 外筒体に収容するコアピースを一枚の単板から形成しながらも、できる限り広い表面積を獲得できるようにした排ガス触媒装置の製造手法の開発を課題とする。
【解決手段】 本発明は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体2の内部にコアピース3を設けて成る排ガス触媒装置を製造する手法であって、コアピース3としては、一枚の単板Aを出発素材とし、この単板Aに深さの異なるヒダ30を規則的に組み合わせて形成した後、このヒダ付板A1を円柱状に丸め、隣り合うヒダ30が互いにほぼ外接する状態として外筒体2の内部に挿着するようにしたことを特徴とする。また、コアピース3は、ヒダ30を外筒体2の周方向に適宜蛇行させて成り、更に、単板Aからヒダ付板A1を形成するにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴とする。
【解決手段】 本発明は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体2の内部にコアピース3を設けて成る排ガス触媒装置を製造する手法であって、コアピース3としては、一枚の単板Aを出発素材とし、この単板Aに深さの異なるヒダ30を規則的に組み合わせて形成した後、このヒダ付板A1を円柱状に丸め、隣り合うヒダ30が互いにほぼ外接する状態として外筒体2の内部に挿着するようにしたことを特徴とする。また、コアピース3は、ヒダ30を外筒体2の周方向に適宜蛇行させて成り、更に、単板Aからヒダ付板A1を形成するにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の内燃機関から排出される燃焼ガスを浄化するための装置に関するものであって、特にコアピースを一枚の単板から形成しながらも、広い表面積を獲得できるようにした新規な排ガス触媒装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に石油をシリンダ内で爆発燃焼させて機械的な動力を得るエンジンにあっては、排気ガス中にCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOX (窒素酸化物)等の有害物質が含まれるため、マフラーやエキゾーストパイプ等、排気ガスの放出経路には、この種の有害物質を低減させる触媒装置(浄化装置)が組み込まれる。
この触媒装置1′としては、例えば図18(a)に示すように、断面が蜂の巣状に形成されたコアピース3′を外筒体2′に嵌め込む、モノリスタイプのものがあり、このものは排気ガスをコアピース3′に沿って流す間に、流路壁面に予め付着形成した白金やロジウム等の触媒金属と接触させて排気ガスを浄化するものである。なおコアピース3′をハニカム状に形成するのは、排気ガスとの接触面積(表面積)を大きくし、浄化性能を高めるための構成である。
【0003】
しかしながら、ハニカム状のコアピース3′を製造するにあたっては、以下のような問題があった。すなわち上記図18(a)のようなコアピース3′を製造するには、例えば平板と波板の金属板材を重ね合わせた後、これを適宜の大きさになるまでコイル状に巻回して所望のコアピース3′を得るものであるが、このような手法ではコアピース3′を製造するだけでも、複数の構成部材を要し、また部材が多い分、工程数も増える傾向にあり、これが排ガス触媒装置のコスト高や重量アップにつながることがあった。
【0004】
このようなことから本出願人は、一例として図18(b)に示すように、パイプ状部材を出発素材とし、このものをプレス加工して複数のヒダ30′を有するヒダ付管Fに形成し、これをコアピース3′とする手法を開発し、特許取得に至っている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、主にパイプ状部材をコアピース3′の出発素材とすることから比較的簡単にコアピース3′が製造でき、また複数のヒダ付管Fを用いてコアピース3′を形成する場合であっても、同一径のパイプ状部材を出発素材とすることが可能であるため、コスト低減等において相応の効果が達成されている。
しかしながら、この種の自動車関連部品業界にあっては、コスト面や軽量化等に対する要求は、常に求められる現状があり、触媒装置にあっても高い浄化性能はもちろん、より一層、軽量化や低コスト化等を実現するための製造手法が日々鋭意研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−113711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような研究開発の一環としてなされたものであって、外筒体に収容するコアピースを一枚の単板から形成しながらも、できる限り広い表面積を獲得できるようにした新規な排ガス触媒装置の製造手法の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず請求項1記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する排ガス触媒装置を製造する方法において、前記コアピースは、一枚の単板を出発素材とし、この単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成した後、このヒダ付板を円柱状に丸め、隣り合うヒダが互いにほぼ外接するように、外筒体の内部に挿着するようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記コアピースは、複数のヒダのうち、少なくとも一つが外筒体の周方向に蛇行するように形成されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記排ガス触媒装置は、両方の開口端部の大きさが異なり、テーパ状を成すことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記コアピースの出発素材である単板にヒダ付加工を施すにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダと浅底ヒダとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記コアピースの出発素材である単板に施すヒダ付加工は、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンを1ショットのプレス加工とし、この1ショットのプレス加工を、単板を順送りしながら繰り返し行うことで、深さの異なるヒダを複数組、単板に形成するものであり、また1ショット毎のプレス加工を行う際には、既にヒダ付加工が終了したヒダ形成済部に、プレス加工と同時にアール癖を付与し、その後のヒダ付板の円柱状の丸め作業が容易に行えるようにしたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記コアピースは、ヒダの内側と外側とを連通させる内外連通孔を有するものであって、この内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の段階で開口形成されるものであることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記ヒダ付板が挿着される外筒体は、事前に一枚の単板が丸められて筒状に形成されて成るものであり、この単板には、前記コアピースの出発素材となる単板をそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用するようにしたことを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項8記載の排ガス触媒装置は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する装置であって、前記コアピースは、外筒体の内部において、深さの異なるヒダが放射状に設けられて成り、且つ互いに隣り合うヒダが、ほぼ外接状態に設置されて成るものであり、装置の製造にあたっては、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法によって製造されたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0015】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、一枚の単板からでも、数多くのヒダを持ち、大きな表面積を有するコアピースが形成できるため、高い浄化性能(浄化効率)を具備した排ガス触媒装置を能率的に製造することができる。また、一枚の単板を出発素材とするため、材料費、加工費等において大幅なコストダウンを可能なものとする。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、コアピースのヒダは、少なくとも一つが蛇行状態に形成されるため、コアピース自体の強度向上ひいては高温・排ガスに晒される触媒装置の耐久性をも向上させ得る。また、ヒダは外筒体内において排気ガスの流路となるため、ヒダが蛇行状態に形成されている部位については、排気ガスも蛇行しながら流れることになり、これが排気ガスと触媒との接触面を増加させることになり、排気ガスの浄化促進につながると考えられる。
【0017】
また請求項3記載の発明によれば、排ガス触媒装置をテーパ状に形成するため、一基の排ガス触媒装置で構成できる。すなわち、通常の排気システムにおける排気ガスの流れは、小径側から大径側へと流れ、従来は、両開口端の大きさがほぼ等しいストレート状の排ガス触媒装置であったため、これを複数基用い、小径の排ガス触媒装置から大径の排ガス触媒装置に連接していたが、これが本発明では一基でまとめることができ、シンプルな構成が採り得る。
【0018】
また請求項4記載の発明によれば、コアピースのヒダは、深さの異なる二種類のヒダが交互に繰り返して形成されるため、コアピースとしてシンプル且つ現実的な構成となり、このようなヒダをプレスで形成する場合にも、より実情に則したものとなる。すなわち、深さの異なるヒダの種類を多くすれば、表面積をより増大させることはできるが、ヒダ形状を忠実に再現する正確なプレスや、ヒダ付板を綺麗な円柱状に丸める作業が難しくなり、このようなことを考慮すると、ヒダを二種類で構成することが現実的と考えられる。
【0019】
また請求項5記載の発明によれば、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンで1ショットのプレス加工を行い、これを何回か繰り返すことで、全てのヒダをプレス成形するため、1ショット毎のプレス加工に要する圧力が小さくて済み、またプレス機に掛かる負荷も抑えられ、プレス機の大型化等も避けられるものである。また、1ショット毎のプレス加工時には、既にヒダが形成された部位にアール癖を付与するため、別途アール付けを行う工程が不要となり、その作業工程(手間)が省ける。また、その後に行うヒダ付板の丸め作業が行い易く、綺麗に丸めることができる。
【0020】
また請求項6記載の発明によれば、コアピースにはヒダ内外連通孔が形成されるため、排気ガスは、この連通孔によってヒダの内外を縫うように通り抜けることができ、これにより触媒との接触面が一層増加することになり、排気ガスの浄化もより一層促進され得る。特に、ヒダが蛇行状態に形成されている部位については、排気ガスもこれに沿って蛇行して流れるため、排気ガスの浄化効率はより一層高まると考えられる。また、ヒダ内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の板材の段階で開口形成されるため、所望のヒダ内外連通孔を正確に開口することができる。また、例えば単板をブランク取りする際に併せてヒダ内外連通孔を開口することも可能であり、その場合には特に工程を増やすことなく、ヒダ内外連通孔を開口することができる。
【0021】
また請求項7記載の発明によれば、外筒体についても、コアピースと同様の単板を出発素材として流用するため、排ガス触媒装置の素材コストをより一層、安価に抑えることができる。
【0022】
また請求項8記載の発明によれば、外筒体に収容するコアピースを一枚の単板から形成しながらも、できる限り広い表面積を現実に獲得できるため、コアピースひいては排ガス触媒装置の徹底したコスト低減を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の排ガス触媒装置を適用して成る排気消音ユニットを示す断面図、並びにこの排ガス触媒装置を示す斜視図である。
【図2】単板に深さの異なるヒダを順次形成して行き、所望のヒダ付板(コアピース)を得るプレス工程(ヒダ付加工)を段階的に示す説明図である。
【図3】深さの異なるヒダを形成したヒダ付板を、円柱状に丸めながら、外筒体に嵌め込む様子を示す斜視図である。
【図4】プレス工程(ヒダ付加工)の他の実施例と、これにより得られるコアピース(ヒダ付板)を示す説明図である。
【図5】プレス工程(ヒダ付加工)の更に他の実施例と、これにより得られるコアピース(ヒダ付板)を示す説明図である。
【図6】ヒダの深さ寸法を異ならせることに加え、ヒダの幅寸法も異ならせるようにしたコアピース(ヒダ付板)の実施例を示す説明図である。
【図7】上型もしくは下型に嵌まり込んだプレス成形品を、型部材から抜け易くするようにしたプレス加工機を示す説明図である。
【図8】ヒダ蛇行タイプのコアピースを外筒体に挿着して、排ガス触媒装置を構成する実施例を示す斜視図である。
【図9】ヒダが蛇行状態に形成されたヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面図である。
【図10】図9のヒダ付板を円柱状に丸めて形成したコアピースを示す説明図、並びに断面図である。
【図11】単板から図9のヒダ付板を形成するためのプレス加工機(下型)の一例を示す斜視図である。
【図12】深底ヒダをストレート状態に形成しながら、もう一方の浅底ヒダのみを蛇行状態に形成したヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面図である。
【図13】ヒダ内外連通孔が形成されたヒダ付板を示す斜視図である。
【図14】蛇行状態に形成されるヒダのバリエーションをヒダ付板の状態で示す平面図(一部断面で図示)、並びに正面図である。
【図15】蛇行状態に形成されるヒダの更なるバリエーションをヒダ付板の状態で示す平面図(部分的に断面で図示)、並びに正面図である。
【図16】両開口端部の大きさを異ならせたテーパ型の排ガス触媒装置を適用して成る排気消音ユニットを示す断面図、並びにこの排ガス触媒装置を示す斜視図である。
【図17】テーパ型の排ガス触媒装置を製作する際のヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面から視た端面図である。
【図18】従来の排ガス触媒装置を示す二種の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、説明にあたっては、本発明において製造対象となる排ガス触媒装置1について説明しながら、併せて排ガス触媒装置1の製造方法について説明する。
【実施例】
【0025】
まず排ガス触媒装置1の概略について説明する。排ガス触媒装置1は、一例として図1に示すように、排気消音ユニットUに組み込まれ、燃焼後エンジンから吐き出された排気ガスGを、大気中に放出する以前に浄化するものであり、このため排ガス触媒装置1の流路壁面には、有害物質を低減させる触媒(キャタライザ物質)が付着形成されており、排気ガスGは排ガス触媒装置1の内部を通過する間に、このキャタライザ物質と接触し、浄化される。
【0026】
このような排ガス触媒装置1は、前後に開口された外筒体2と、この内部に設けられるコアピース3とを具えて成るものである。なお、コアピース3は、排気ガスGとの接触面積を極力大きく確保すべく、一例として図2(d)に示すように、深さ(高さ/長さ)の異なるヒダ30が外筒体2の内部において放射状を成すように形成されるものであり、また隣り合うヒダ30同士が互いにほぼ外接する状態で挿着される。ここでヒダ30の深さとは、図2(d)に併せて示すL方向の寸法であり、ヒダ長さもしくはヒダ高さとも言えるが、本明細書では、深さという名称で統一する。因みに、同図に併せて示すW方向の寸法は、ヒダ30の幅寸法を示すものとし、これについては後述する。
ここで、図中符号の「3A」について説明しておく。上述したように符号「3」はコアピースを示すが、例えば図1では全てのヒダ30の形成方向を、外筒体2の長手方向に沿って、ほぼ真っ直ぐに形成している(これをヒダストレートタイプとする)。しかし、ヒダ30の形成方向は、必ずしも外筒体2の長手方向に揃えなくてもよく、外筒体2の周方向に蛇行させることも可能であり(これをヒダ蛇行タイプとし、これについては後述する)、これらのコアピース3を区別する際の符号として、ヒダストレートタイプのコアピースに「3A」と符したものである。
【0027】
また、図1・2に示すコアピース3は、深さの異なる二種類のヒダ30を規則的に、より具体的には交互に配置して成るが、このヒダ30は、必ずしも二種類に限定されるものではない。また、これら深さの異なる複数のヒダ30を区別して示す場合には、30a、30b、30c・・・と符すものであり、例えば図1・2では、深底ヒダを30a、浅底ヒダを30bと符号を付している。因みに上述したキャタライザ物質は、これら深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bの内外表面(すなわちコアピース3の内外表面)と、外筒体2の内側とに付着形成されるものである。
【0028】
そして、本発明では、このような深さの異なるヒダ30を有するコアピース3を、一枚の金属板材(これを単板Aとする)から形成するものであり、具体的には、一例として図2(a)・(b)・(c)に示すように、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPを一回のプレスアクションとして加工を行うものであり(この一回のプレス加工を本明細書では「ショット」と称する)、この1ショットのプレス加工を、単板Aを順送りしながら繰り返し行うことで、単板Aに必要組数のヒダ30(深さの異なるヒダ30)を形成するものである。すなわち、図2では、1ショットのプレス加工で深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bを各一個ずつプレス成形するものであり、これを7ショット繰り返すことにより、ヒダ付板A1(単板Aに全てのヒダ30が形成されたものを示す)を得るものであり、これを円柱状に丸め、外筒体2に挿着したものが図2(d)に示すコアピース3である。
【0029】
また、ヒダ付板A1を円柱状に丸める際には、ヒダ付板A1の両端部、例えば図2では1ショット目のプレス加工の最先端部と、7ショット目のプレス加工の最終端部とを重ね合わせ状態にするものであり、ここを重合部31とする(図2(d)参照)。なお、この重合部31には、通常、外筒体2への挿着後に溶接等の接合が施されるものであり、このような重合部31を敢えて設けるのは、比較的大きな接合代を確保するためである。また、このようなことから、図2では重合部31をほぼフラットな面で形成したが、この重合部31については、必ずしもフラットな状態に形成される必要はなく、例えば外筒体2のほぼ内径に沿ったR面状等に形成されても構わない。
【0030】
以下、上記1ショットのプレス加工を行う装置(これをプレス加工機6とする)について説明する。
プレス加工機6は、単板Aにヒダ付加工を施す装置であり、一例として図2に示すように、ほぼ単板Aの板厚分程度の間隔を隔てて嵌まり合う二種の型部材を主な構成部材とし、これを上型61、及び下型62とする。ここで上型61とは、概ね凹陥状を成し、ヒダ30の内周表面を形成する(形作る)作用を担い、一方、下型62とは概ね凸状を成し、ヒダ30の外周表面を形成する(形作る)作用を担うものとする。因みに上記「ヒダ30の内周表面/外周表面」とは、コアピース3を外筒体2に挿着した状態において、外筒体2の中心側に面する方を内周表面とし、その反対側を外周表面としたものである。
また、上型61においてヒダ30の内周表面を形成する部位をヒダ加工部61aとし、下型62においてヒダ30の外周表面を形成する部位をヒダ加工部62aとするものであり、例えば図1に示すコアピース3(ヒダストレートタイプのコアピース3A)を形成する際には、これらヒダ加工部61a・62aが外筒体2の長手方向(ヒダ30の奥行き方向)に対し、ほぼ真っ直ぐに形成された型部材(プレス加工機6)を適用するものである。
【0031】
更に、これら上型61と下型62とには、前記重合部31を形成するためのフラット部63が形成され、これは上述したように、ヒダ付板A1の接合代(重合代)を比較的広く確保し、ヒダ付板A1の両端部を接合し易くするためである。すなわち図2の型構造では、最終の7ショット目のプレス加工を終えた段階で、ヒダ付板A1の最終端部にはフラット部63による加工面(フラット面)がそのまま残るものであり、ここを1ショット目の最先端部と接合する際の重合部31とすることにより(図2(d)参照)、比較的大きな接合面を獲得し、溶接などの接合が確実に行えるものである。もちろん、型部材に形成されるフラット部63は、上述したように適宜のR面状(例えば外筒体2のほぼ内径R)に形成することも可能であり、要はヒダ付板A1を丸める際の接合が確実に行えれば、当該部位については、種々の形状に形成できるものである。
また、上記下型62には、適宜のR面もしくは傾斜面を成すアール癖付与部64が形成されるものであり、これは既にヒダ付加工が終了した部分(ヒダ形成済部)に、ヒダ付加工(1ショットのプレス加工)と同時にアール癖を付与し、その後の丸め加工、すなわちヒダ付板A1を円柱状に丸める作業(加工)を行い易くするものである。
【0032】
なお、上記図2の実施例では、重合部31を比較的広く獲得すべくフラット部63が形成され、型構造として観た場合に、上型61が全体的に凹んだイメージとなるため、上記説明でも「上型61が凹陥状を成す」と記載したが、型部材としてはフラット部63が形成されないことも考えられ(例えば後述する図4・5参照)、その場合には、型部材の凹凸が必ずしも明確でなく、厳格なものではない。
また、上記説明における上型61と下型62という名称も絶対的なものではなく、あくまでも一対の型部材を区別するためのものである。すなわち、上記説明における上型61/下型62という名称は、ヒダ付加工のプレス方向が上下方向であることに因んだ名称(言わば便宜上の名称)であって、プレス方向は水平方向に設定することも可能であり、その場合には、上記上型61/下型62は、例えば右型/左型に相当する。
【0033】
以下、本図2のプレス加工機6によるプレス態様(ヒダ付加工の態様)について説明する。
例えば図2では、上述したように、1ショット毎のプレス加工により、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとが一個ずつ形成される。このため、1ショット目のプレス加工が終了したプレス成形品A(単板Aと同じ符号を付す)は、上型61もしくは下型62に密着状態に嵌まり込むものであり、これを例えばエジェクタピン等による突き出しによって型部材から取り外す。その後、プレス成形品Aに形成された二つ分のヒダ30を順送りし(先送りし)、次のショットのプレス加工を行うものである(図2(a)〜(b)参照)。
また、このようなプレス形態であるため、単板(プレス成形品)Aにおいて、その直後にヒダ付加工を受ける部位は、事前にフラット部63による押圧を受けることとなる。また、既にプレス成形がなされたヒダ形成済部(二山分のヒダ30)には、下型62に形成されたアール癖付与部64によってアール癖が付与されるため、ヒダ付板A1を最終的に円柱状に丸める作業が行い易くなり、また綺麗に丸めることができるものである。
このように、図2に示すプレス加工機6では、1ショット毎のプレス加工によって、フラット部63による押圧(重合部31の形成)、ヒダ付加工、アール癖付与が、単板Aの各部位に同時に行われるようになっており、単板Aの一カ所に注目すると、順送りによって、これらの加工が順次、なされて行くものである。
【0034】
そして、最終ショットのプレス加工でフラット部63による押圧が施された部位は、そのまま残るので(この部位にはヒダ付加工が施されないため)、図2(d)に示すように、ヒダ付板A1を円柱状に丸めた状態では、この部分が、1ショット目のプレス加工が行われた最先端部と重ね合わせられる。この重合部31は、円形コアピース3の最外周部に位置し、しかもフラットに近い状態で重なり代(接合代)としても比較的広く獲得できるため、上述したように、この部位に施す溶接などの接合が確実となり、また、その作業も行い易くなるものである。
なお、図2のヒダ付加工では、重合部31を比較的広く獲得するようにしたため(フラット部63を設けているため)、円柱状に丸めた段階で(コアピース3とした段階で)必ずしも全ての隣り合うヒダ30が外接していない。すなわち、図2(d)では、最終ショットのプレス加工で形成された深底ヒダ30aと、1ショット目のプレス加工で形成された浅底ヒダ30bとが外接していないが、このような状態も請求項1、8に記載した「(ほぼ)外接」に包含されるものである。
【0035】
次に、ヒダ付板A1を外筒体2に挿着する態様について説明する。ヒダ付板A1を外筒体2に挿着するには、一例として図3に示すように、テーパ状の円孔71が開口されたガイド治具7を用いる。
ここでは、外筒体2の上にガイド治具7を載せるように設置するものであり、この際、まずガイド治具7の向きは、円孔71の径寸法が下方に向かって徐々に狭まるように設定するものであり、また円孔71の小径側を外筒体2の内径に合致させるようにガイド治具7をセットする。その後、ガイド治具7の上方から、円柱状に丸めたヒダ付板A1を挿入する(圧入する)ものであり、ヒダ付板A1は、円孔71を通過する際に、外筒体2の内径寸法以下に狭められ、外筒体2への挿着がスムーズに行われるものである。
なお、この実施例では、外筒体2を縦置きし、その上方からヒダ付板A1を挿着するように説明したが、これは圧入途中のヒダ付板A1は、外側からの規制力を弱めれば、当然、外側に広がろうとする(戻ろうとする)ことから、外側から押さえながらも、重力によってヒダ付板A1の挿入(圧入)が極力容易に行えるように意図したためである。しかしながら、ヒダ付板A1の挿着方向は、必ずしもこのような鉛直方向に設定される必要はなく、圧入が無理なく行えるのであれば、水平方向等に設定しても構わない。
【0036】
また、ヒダ付板A1が挿着される外筒体2としては、適宜の径寸法のパイプ材を出発素材とし、これを適宜の長さにカットして適用することが可能であるが、図3に併せて示すように、コアピース3の出発素材となる単板Aをそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用することが好ましい。それは、このような流用形態を採ることにより、排ガス触媒装置1の素材コスト(製造コスト)をより安価に抑えることができるためである。なお、このような形態では、事前に一枚の単板Aを筒状に丸めておき、その端部同士を重ね合わせ、ここを溶接などで接合し、筒状の外筒体2を得るものである。
【0037】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先の図2に示した実施例では、単板Aに、まず比較的広い重合部31を確保するための押圧を施した後、この部位にヒダ付加工(ヒダ形成)を施すプレス形態(ヒダ付加工)を示したが、1ショット目の最先端部と、最終ショットの最終端部との重ね合わせ(接合)が確実に行えれば、必ずしも重合部31を広く確保する必要はない。このようなプレス形態としては、例えば図4(a)に示すように、1ショットのプレス加工で、単板(プレス成形品)Aに対し、ヒダ付加工とアール癖付与のみを施すようにしたプレス形態が挙げられる。
【0038】
なお、図4(a)では1ショットのプレス加工で、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを一個ずつ形成するヒダ付加工を示しており、これを6ショット繰り返して得られたヒダ付板A1を、円柱状に丸めたものが図4(b)に示すコアピース3である。また、図4(b)中の符号「P」は、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンを示しており、ここでは図4(a)と比較しても分かるように、「1ショットのプレス加工」と一致させている。しかし、1ショットのプレス加工で行うヒダ30の組み合わせ数は、必ずしも最小パターンPで行う必要はなく、全ショット数の約数、例えば図4の実施例では計6ショットのプレス加工であるため、1ショットのプレス加工で、6の約数である2パターンずつ、つまり深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bを共に2個ずつ形成して行くことも可能である。なお、図4(b)中の「P×2」は、このような加工形態(2パターンずつプレス加工する形態)を採った場合に、1ショットのプレス加工で形成されるヒダ30の範囲(領域)を示している。
【0039】
もちろん、1ショットのプレス加工で形成するヒダ30のパターン数(組み合わせ数)を増やせば、一つのコアピース3を製作するために行う全ショット数としては減るため、プレス成形に要する総トータル時間は短縮できるかも知れないが、一回のプレス加工に要する圧力(パワー)や、型部材に掛かる負荷等が増大するため、1ショットのプレス加工を行うプレス加工機6の大型化や補強(強化)等を考慮しなければならない。従って通常は、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPで、1ショットのプレス加工を実施するのが現実的と考えられる。因みに、図1・3に示すコアピース3も、本図4と同様のプレス加工(広い重合部31を獲得しないヒダ付加工)を行ったものを示している。
【0040】
また、先に述べた実施例は、いずれも深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを交互に、もしくは隣り合わせで規則的に配設したコアピース3であったが、ヒダ30は、必ずしもこのような配置形態に限定されるものではなく、例えば5(b)に示すように、二つの深底ヒダ30aの間に、複数(ここでは二つ)の浅底ヒダ30bを介在させる規則的な配置形態も採り得る。この場合、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPは、一個の深底ヒダ30a及びその両側の二個の浅底ヒダ30bの組み合わせとなるため(図5(a)参照)、1ショットのプレス加工で、これらの加工を行い、これを6ショット繰り返すことにより、全てのプレス加工が完了し、図5(b)のようなコアピース3(円柱状に丸めたヒダ付板A1)が得られる。なお、本実施例においても、1ショットのプレス加工で、最小パターンPの二倍(図5(b)中の「P×2」)のプレス加工、すなわち深底ヒダ30aを二個と、浅底ヒダ30bを四個(合計六個のヒダ30)を一挙にプレス成形することにより、所望のコアピース3(ヒダ付板A1)を得ることは可能である。
【0041】
また、先に述べた実施例では、ヒダ30の組み合わせについて、深底ヒダ30a、浅底ヒダ30b等、深さ寸法のみを異ならせた組み合わせを想定していたが、排気ガスGとの接触面積をより大きく獲得するという観点から言えば、例えば図6に示すように、ヒダ30の深さ方向(L方向)の寸法の差異に加え、ヒダ30の幅方向(W方向)の寸法を異ならせることも考えられる。すなわち、図6の実施例では、ヒダ30は、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bの他に、更に中底ヒダ30cを加えた合計三種類であり、このうち深底ヒダ30aと中底ヒダ30cとが同じヒダ幅寸法に形成され、浅底ヒダ30bはこれらよりもヒダ幅寸法が狭く形成されるものである。
なお、図6に示すコアピース3(ヒダ付板A1)の場合、例えば1ショットのプレス加工で、組み合わせの最小パターンPのプレス加工を行えば、1ショットで四個のヒダ30(深底ヒダ30aが一個、中底ヒダ30cが一個、浅底ヒダ30bが二個)が形成されるものであり、このプレス加工を6ショット繰り返すことにより、所望のコアピース3が得られるものである。
【0042】
また、上述したように1ショットのプレス加工で形成するヒダ30の数が多くなればなるほど、1ショットのプレス加工に要する圧力(パワー)や、型に掛かる負荷も大きくなる。更に、1ショットのプレス加工毎に上型61もしくは下型62に嵌まり込むプレス成形品A(単板A)を、取り出す作業も行い難くなる(密着面積が増大するため)。このため、1ショットのプレス加工で形成するヒダ30の数が多い場合や、ヒダ30の深さ寸法が比較的長い場合などには、例えば図7に示すように、ヒダ30の内・外周表面を形成するヒダ加工部61a・62aを双方ともテーパ状に形成し、上型61もしくは下型62に密着状態に嵌まり込むプレス成形品Aを取り出し易くすることが可能である。
【0043】
ここで、請求項1の「単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成する」という記載について説明する。この記載、特に「規則的に(組み合わせて)」という記載は、単板Aに対し深さの異なるヒダ30が、ある決まりに従って繰り返し形成されること(配置形態)を意味するものである。具体的には、例えば上記図2・4では、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとが、交互に(隣り合わせに)繰り返し形成されており、上記図5では、深底ヒダ30aの両側に常に浅底ヒダ30bが形成されており、ヒダ30の並びとしては、浅底ヒダ30b、深底ヒダ30a、浅底ヒダ30bという順で繰り返し形成されている。更に、上記図6では、中底ヒダ30c、浅底ヒダ30b、深底ヒダ30が、この順序で繰り返し形成されている。
【0044】
また、先に述べた実施例は、どれもコアピース3のヒダ30を、外筒体2の長手方向に対して、ほぼ真っ直ぐに形成したものであるが、上述したようにヒダ30の形成方向は必ずしもこのようなストレート方向に限定されるものではない。すなわち、コアピース3のヒダ30は、例えば図8に示すように、外筒体2の周方向に蛇行するように(曲がりくねるように)形成することも可能である。なお、「蛇行」とは言うものの、上記図8では、ヒダ30を外筒体2の周方向に対し、軽くウェーブさせた状態(いわゆる波打ち状態)に形成しており、ヒダ30の蛇行程度(曲がりくねり度合い)は種々の設定が採り得るものである。
このような構成(ヒダ30を蛇行状態に形成する構成)を採ることにより、コアピース3自体の強度アップ、ひいては排ガス・高温環境に晒される排ガス触媒装置1としての耐久性をも向上させ得る利点が挙げられる。もちろん、コアピース3を外筒体2に挿着した状態では、ヒダ30が排気ガスGの流路となることから、ヒダ30を蛇行状態に形成する本実施例は、排気ガスGも蛇行しながら流れることになり、触媒との接触面を増加させ得、排気ガスGの浄化促進が期待できるものである。
【0045】
ここで、既に述べたように、ヒダ30の形成状況によってコアピース3を区別したい場合に、上記図1・2で示したものを「ヒダストレートタイプのコアピース3A」とする一方、図8で示したものを「ヒダ蛇行タイプのコアピース3B」として区別するが、ヒダ30やプレス加工機6等については同一の符号を用いるものとする。
そして、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得るにあっては、例えば図9に示すように平面展開状態で深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとをほぼ一定の間隔で蛇行させた(波打たせた)ヒダ付板A1を、図10のように円柱状に丸めることにより得ることができる。
もちろん、その前段階では、図9に示すヒダ付板A1(深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとをほぼ同じ間隔でウェーブさせたヒダ付板A1)を、単板Aから形成するものであり、これにはヒダストレートタイプのコアピース3Aを得る場合と同様のプレス手法(ヒダ付加工)が適用できる。すなわち、図9に示すヒダ付板A1を得るには、例えば図11に示すようなプレス加工機6を適用するものであり、その特徴は、上型61及び下型62においてヒダ加工部61a・62aを予めほぼ同じ間隔で蛇行させた点である。もちろん、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得る本プレス加工機6においても、ヒダ30の最小組み合わせパターンPで1ショットのプレス加工を行うことを想定し、型部材(下型62)には、蛇行状態の深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを一個ずつ形成したものである(図11では下型61のみを示している)。
【0046】
このような型構造を採ることにより、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを製造する場合であっても、型部材の肉厚(ヒダ加工部61a・62aの間隔)を常にほぼ一定に維持することができ、型部材の耐久性や強度においても好ましい形態が採り得る。
逆に言えば、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得るには、例えば図12に示すように、深底ヒダ30aをほぼストレート状態で形成しながら、もう一方の浅底ヒダ30bのみを蛇行状態に形成することも可能であるが、この場合には深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとの間隔が狭くなる部分が存在するため、この部位での型部材の強度や耐久性を考慮する必要があると考えられる。
【0047】
更にまた、コアピース3には、例えば図13〜図15に示すように、ヒダ30の側面部分にヒダ30の内外を連通させる貫通孔を形成することが可能であり(これをヒダ内外連通孔32とする)、これは特にヒダ蛇行タイプのコアピース3Bの場合に好適と考えられる。それは、ヒダ30が蛇行状態に形成されたコアピース3Bであれば、排気ガスGも蛇行しながら外筒体2の中を流れることから、例えば図14に併せ示すように、排気ガスGがヒダ内外連通孔32によってヒダ30の内外を縫うように流れることができ、これにより触媒との接触面がより増大し、浄化効率の向上が見込めるためである。もちろん、ヒダ内外連通孔32は、ヒダストレートタイプのコアピース3Aに形成することも可能であり、この場合も排気ガスGがヒダ内外連通孔32を通り抜けるように流れ得るため、触媒との接触効率向上が見込めるものである。
なお、ヒダ内外連通孔32は、例えば図14に示すように、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとに形成するものを平面から視てヒダ付板A1(コアピース3)の端部からほぼ同じ距離(位置)に形成することも可能であるが(端部からの距離を揃えた形成状態)、例えば図13・15に示すように、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとのヒダ内外連通孔32を、平面から視てヒダ付板A1(コアピース3)の端部から互い違い状に形成することも可能である(端部からの距離を異ならせた形成状態)。
【0048】
また、ヒダ内外連通孔32をコアピース3に形成するにあたっては、コアピース3がまだヒダ付加工を受ける前の段階、例えば単板Aの段階で開口形成することが好ましく、これによりヒダ内外連通孔32が正確に開口できるものである。また、コアピース3の単板Aを一枚の大きな板材からブランク取りする場合には、このブランク取りに併せて、ヒダ内外連通孔32を同時に開口することが可能であり、この場合には、全体の工程数を全く増やさずに、ヒダ内外連通孔32を形成することができるものである。
【0049】
なお、本明細書で使用した「蛇行」という用語は、単に波型の曲がりくねりだけを意味するものではなく、例えば図14に示すように、(波打ち状の)波に相当する部位が台形状であるもの、あるいは図15に示すように、波に相当する部位全体が比較的大きなジグザグ状を成すもの等、排気ガスGが外筒体2の周方向にうねりながら流れ得る種々の状態を含むものである。
【0050】
更にまた、上述した実施例はどれも両方の開口端部がほぼ同じ大きさ(径寸法)の排ガス触媒装置1を示したが(これをストレート型(の排ガス触媒装置)と称する)、例えば図16に示すように、外筒体2及びコアピース3共に開口端部の大きさを異ならせた排ガス触媒装置1を適用することも可能である(これをテーパ型(の排ガス触媒装置)と称して、ストレート型と区別する)。なお、テーパ型の排ガス触媒装置1を実際に排気消音ユニットU内に収容するにあたっては、上記図16に併せ示すように、排ガス触媒装置1の小径側を排気ガスGの入口側に向け、大径側を排気ガスGの出口側に向けて取り付けるものである。これは、排気ガスGの流れに応じた配置であって、通常、排気消音ユニットUを含めた排気システムにあって排気ガスGは、小径側から大径側に流れる構造となっているためである。
【0051】
また、従来の排ガス触媒装置にあっては、ストレート型の排ガス触媒装置1がほとんどであったため、例えば径寸法の異なる二本の排ガス触媒装置を用い、小径のものの後段に大径のものを直列状に配置することが多かった(図1の断面図参照)。しかしながら、テーパ型の排ガス触媒装置1を用いれば、上記図16の断面図に併せ示すように、これら複数基の排ガス触媒装置1を一基にまとめることができ、排気消音ユニットUひいては排気システム全体をシンプルに構成し得る点や取付性等の点で効果を奏するものである。もちろん、テーパ型の場合には、コアピース3を外筒体2に挿着する際、コアピース3の小径側を、外筒体2の大径側から嵌め込んで行く挿着形態となるため、このような挿着作業もより行い易くなるものと考えられる。
【0052】
因みに、上記図16に示すテーパ型の排ガス触媒装置1においては、ヒダ30が外筒体2の長手方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されたヒダストレートタイプのコアピース3Aを図示したが、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを用いて、テーパ型の排ガス触媒装置1を形成することも可能である。もちろん、このテーパ型の排ガス触媒装置1にヒダ内外連通孔32を設けることも可能である。
【0053】
また、図17は、上記テーパ型の排ガス触媒装置1(ヒダストレートタイプ)を得る場合に、ヒダ付板A1を平面展開形状で示した一実施例であり、先の実施例と比べて大きな特徴は、その形状が略扇形(先端中心側がない扇形)を呈する点である。もちろん、テーパ型の場合には、プレス加工を受ける前の単板Aの状態から、既にこのような略扇形に形成されるものである。また、ヒダ付板A1(単板A)が、このような形状であることから、テーパ型の排ガス触媒装置1は、個々のヒダ30の大きさが、小径開口端側→大径開口端側に向かって徐々に大きく形成されるのが一般的である(一定でないものである)。更に、プレス加工時の送り(順送り時の移送)は、厳密には、加工を受ける単板Aが円状(略扇形の中心を円とする円状)を描くように送ることが好ましいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、種々の内燃機関から排出される燃焼ガスを浄化する排ガス触媒装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 排ガス触媒装置
2 外筒体
3 コアピース
6 プレス加工機
7 ガイド治具
3 コアピース
3A ヒダストレートタイプのコアピース
3B ヒダ蛇行タイプのコアピース
30 ヒダ
30a 深底ヒダ
30b 浅底ヒダ
30c 中底ヒダ
31 重合部
32 ヒダ内外連通孔
6 プレス加工機
61 上型
61a ヒダ加工部
62 下型
62a ヒダ加工部
63 フラット部
64 アール癖付与部
7 ガイド治具
71 円孔
A 単板(プレス成形品)
A1 ヒダ付板
F ヒダ付管
G 排気ガス
L 長さ方向(ヒダの)
P パターン(深さの異なるヒダの最小組み合わせパターン)
U 排気消音ユニット
W 幅方向(ヒダの)
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の内燃機関から排出される燃焼ガスを浄化するための装置に関するものであって、特にコアピースを一枚の単板から形成しながらも、広い表面積を獲得できるようにした新規な排ガス触媒装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に石油をシリンダ内で爆発燃焼させて機械的な動力を得るエンジンにあっては、排気ガス中にCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOX (窒素酸化物)等の有害物質が含まれるため、マフラーやエキゾーストパイプ等、排気ガスの放出経路には、この種の有害物質を低減させる触媒装置(浄化装置)が組み込まれる。
この触媒装置1′としては、例えば図18(a)に示すように、断面が蜂の巣状に形成されたコアピース3′を外筒体2′に嵌め込む、モノリスタイプのものがあり、このものは排気ガスをコアピース3′に沿って流す間に、流路壁面に予め付着形成した白金やロジウム等の触媒金属と接触させて排気ガスを浄化するものである。なおコアピース3′をハニカム状に形成するのは、排気ガスとの接触面積(表面積)を大きくし、浄化性能を高めるための構成である。
【0003】
しかしながら、ハニカム状のコアピース3′を製造するにあたっては、以下のような問題があった。すなわち上記図18(a)のようなコアピース3′を製造するには、例えば平板と波板の金属板材を重ね合わせた後、これを適宜の大きさになるまでコイル状に巻回して所望のコアピース3′を得るものであるが、このような手法ではコアピース3′を製造するだけでも、複数の構成部材を要し、また部材が多い分、工程数も増える傾向にあり、これが排ガス触媒装置のコスト高や重量アップにつながることがあった。
【0004】
このようなことから本出願人は、一例として図18(b)に示すように、パイプ状部材を出発素材とし、このものをプレス加工して複数のヒダ30′を有するヒダ付管Fに形成し、これをコアピース3′とする手法を開発し、特許取得に至っている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1では、主にパイプ状部材をコアピース3′の出発素材とすることから比較的簡単にコアピース3′が製造でき、また複数のヒダ付管Fを用いてコアピース3′を形成する場合であっても、同一径のパイプ状部材を出発素材とすることが可能であるため、コスト低減等において相応の効果が達成されている。
しかしながら、この種の自動車関連部品業界にあっては、コスト面や軽量化等に対する要求は、常に求められる現状があり、触媒装置にあっても高い浄化性能はもちろん、より一層、軽量化や低コスト化等を実現するための製造手法が日々鋭意研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−113711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような研究開発の一環としてなされたものであって、外筒体に収容するコアピースを一枚の単板から形成しながらも、できる限り広い表面積を獲得できるようにした新規な排ガス触媒装置の製造手法の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
まず請求項1記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する排ガス触媒装置を製造する方法において、前記コアピースは、一枚の単板を出発素材とし、この単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成した後、このヒダ付板を円柱状に丸め、隣り合うヒダが互いにほぼ外接するように、外筒体の内部に挿着するようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1記載の要件に加え、前記コアピースは、複数のヒダのうち、少なくとも一つが外筒体の周方向に蛇行するように形成されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記排ガス触媒装置は、両方の開口端部の大きさが異なり、テーパ状を成すことを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記コアピースの出発素材である単板にヒダ付加工を施すにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダと浅底ヒダとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記コアピースの出発素材である単板に施すヒダ付加工は、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンを1ショットのプレス加工とし、この1ショットのプレス加工を、単板を順送りしながら繰り返し行うことで、深さの異なるヒダを複数組、単板に形成するものであり、また1ショット毎のプレス加工を行う際には、既にヒダ付加工が終了したヒダ形成済部に、プレス加工と同時にアール癖を付与し、その後のヒダ付板の円柱状の丸め作業が容易に行えるようにしたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記コアピースは、ヒダの内側と外側とを連通させる内外連通孔を有するものであって、この内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の段階で開口形成されるものであることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載の、排ガス触媒装置の製造方法は、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加え、前記ヒダ付板が挿着される外筒体は、事前に一枚の単板が丸められて筒状に形成されて成るものであり、この単板には、前記コアピースの出発素材となる単板をそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用するようにしたことを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項8記載の排ガス触媒装置は、排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する装置であって、前記コアピースは、外筒体の内部において、深さの異なるヒダが放射状に設けられて成り、且つ互いに隣り合うヒダが、ほぼ外接状態に設置されて成るものであり、装置の製造にあたっては、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法によって製造されたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0015】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、一枚の単板からでも、数多くのヒダを持ち、大きな表面積を有するコアピースが形成できるため、高い浄化性能(浄化効率)を具備した排ガス触媒装置を能率的に製造することができる。また、一枚の単板を出発素材とするため、材料費、加工費等において大幅なコストダウンを可能なものとする。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、コアピースのヒダは、少なくとも一つが蛇行状態に形成されるため、コアピース自体の強度向上ひいては高温・排ガスに晒される触媒装置の耐久性をも向上させ得る。また、ヒダは外筒体内において排気ガスの流路となるため、ヒダが蛇行状態に形成されている部位については、排気ガスも蛇行しながら流れることになり、これが排気ガスと触媒との接触面を増加させることになり、排気ガスの浄化促進につながると考えられる。
【0017】
また請求項3記載の発明によれば、排ガス触媒装置をテーパ状に形成するため、一基の排ガス触媒装置で構成できる。すなわち、通常の排気システムにおける排気ガスの流れは、小径側から大径側へと流れ、従来は、両開口端の大きさがほぼ等しいストレート状の排ガス触媒装置であったため、これを複数基用い、小径の排ガス触媒装置から大径の排ガス触媒装置に連接していたが、これが本発明では一基でまとめることができ、シンプルな構成が採り得る。
【0018】
また請求項4記載の発明によれば、コアピースのヒダは、深さの異なる二種類のヒダが交互に繰り返して形成されるため、コアピースとしてシンプル且つ現実的な構成となり、このようなヒダをプレスで形成する場合にも、より実情に則したものとなる。すなわち、深さの異なるヒダの種類を多くすれば、表面積をより増大させることはできるが、ヒダ形状を忠実に再現する正確なプレスや、ヒダ付板を綺麗な円柱状に丸める作業が難しくなり、このようなことを考慮すると、ヒダを二種類で構成することが現実的と考えられる。
【0019】
また請求項5記載の発明によれば、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンで1ショットのプレス加工を行い、これを何回か繰り返すことで、全てのヒダをプレス成形するため、1ショット毎のプレス加工に要する圧力が小さくて済み、またプレス機に掛かる負荷も抑えられ、プレス機の大型化等も避けられるものである。また、1ショット毎のプレス加工時には、既にヒダが形成された部位にアール癖を付与するため、別途アール付けを行う工程が不要となり、その作業工程(手間)が省ける。また、その後に行うヒダ付板の丸め作業が行い易く、綺麗に丸めることができる。
【0020】
また請求項6記載の発明によれば、コアピースにはヒダ内外連通孔が形成されるため、排気ガスは、この連通孔によってヒダの内外を縫うように通り抜けることができ、これにより触媒との接触面が一層増加することになり、排気ガスの浄化もより一層促進され得る。特に、ヒダが蛇行状態に形成されている部位については、排気ガスもこれに沿って蛇行して流れるため、排気ガスの浄化効率はより一層高まると考えられる。また、ヒダ内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の板材の段階で開口形成されるため、所望のヒダ内外連通孔を正確に開口することができる。また、例えば単板をブランク取りする際に併せてヒダ内外連通孔を開口することも可能であり、その場合には特に工程を増やすことなく、ヒダ内外連通孔を開口することができる。
【0021】
また請求項7記載の発明によれば、外筒体についても、コアピースと同様の単板を出発素材として流用するため、排ガス触媒装置の素材コストをより一層、安価に抑えることができる。
【0022】
また請求項8記載の発明によれば、外筒体に収容するコアピースを一枚の単板から形成しながらも、できる限り広い表面積を現実に獲得できるため、コアピースひいては排ガス触媒装置の徹底したコスト低減を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の排ガス触媒装置を適用して成る排気消音ユニットを示す断面図、並びにこの排ガス触媒装置を示す斜視図である。
【図2】単板に深さの異なるヒダを順次形成して行き、所望のヒダ付板(コアピース)を得るプレス工程(ヒダ付加工)を段階的に示す説明図である。
【図3】深さの異なるヒダを形成したヒダ付板を、円柱状に丸めながら、外筒体に嵌め込む様子を示す斜視図である。
【図4】プレス工程(ヒダ付加工)の他の実施例と、これにより得られるコアピース(ヒダ付板)を示す説明図である。
【図5】プレス工程(ヒダ付加工)の更に他の実施例と、これにより得られるコアピース(ヒダ付板)を示す説明図である。
【図6】ヒダの深さ寸法を異ならせることに加え、ヒダの幅寸法も異ならせるようにしたコアピース(ヒダ付板)の実施例を示す説明図である。
【図7】上型もしくは下型に嵌まり込んだプレス成形品を、型部材から抜け易くするようにしたプレス加工機を示す説明図である。
【図8】ヒダ蛇行タイプのコアピースを外筒体に挿着して、排ガス触媒装置を構成する実施例を示す斜視図である。
【図9】ヒダが蛇行状態に形成されたヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面図である。
【図10】図9のヒダ付板を円柱状に丸めて形成したコアピースを示す説明図、並びに断面図である。
【図11】単板から図9のヒダ付板を形成するためのプレス加工機(下型)の一例を示す斜視図である。
【図12】深底ヒダをストレート状態に形成しながら、もう一方の浅底ヒダのみを蛇行状態に形成したヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面図である。
【図13】ヒダ内外連通孔が形成されたヒダ付板を示す斜視図である。
【図14】蛇行状態に形成されるヒダのバリエーションをヒダ付板の状態で示す平面図(一部断面で図示)、並びに正面図である。
【図15】蛇行状態に形成されるヒダの更なるバリエーションをヒダ付板の状態で示す平面図(部分的に断面で図示)、並びに正面図である。
【図16】両開口端部の大きさを異ならせたテーパ型の排ガス触媒装置を適用して成る排気消音ユニットを示す断面図、並びにこの排ガス触媒装置を示す斜視図である。
【図17】テーパ型の排ガス触媒装置を製作する際のヒダ付板を、平面展開状態で示す平面図、並びに正面から視た端面図である。
【図18】従来の排ガス触媒装置を示す二種の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、説明にあたっては、本発明において製造対象となる排ガス触媒装置1について説明しながら、併せて排ガス触媒装置1の製造方法について説明する。
【実施例】
【0025】
まず排ガス触媒装置1の概略について説明する。排ガス触媒装置1は、一例として図1に示すように、排気消音ユニットUに組み込まれ、燃焼後エンジンから吐き出された排気ガスGを、大気中に放出する以前に浄化するものであり、このため排ガス触媒装置1の流路壁面には、有害物質を低減させる触媒(キャタライザ物質)が付着形成されており、排気ガスGは排ガス触媒装置1の内部を通過する間に、このキャタライザ物質と接触し、浄化される。
【0026】
このような排ガス触媒装置1は、前後に開口された外筒体2と、この内部に設けられるコアピース3とを具えて成るものである。なお、コアピース3は、排気ガスGとの接触面積を極力大きく確保すべく、一例として図2(d)に示すように、深さ(高さ/長さ)の異なるヒダ30が外筒体2の内部において放射状を成すように形成されるものであり、また隣り合うヒダ30同士が互いにほぼ外接する状態で挿着される。ここでヒダ30の深さとは、図2(d)に併せて示すL方向の寸法であり、ヒダ長さもしくはヒダ高さとも言えるが、本明細書では、深さという名称で統一する。因みに、同図に併せて示すW方向の寸法は、ヒダ30の幅寸法を示すものとし、これについては後述する。
ここで、図中符号の「3A」について説明しておく。上述したように符号「3」はコアピースを示すが、例えば図1では全てのヒダ30の形成方向を、外筒体2の長手方向に沿って、ほぼ真っ直ぐに形成している(これをヒダストレートタイプとする)。しかし、ヒダ30の形成方向は、必ずしも外筒体2の長手方向に揃えなくてもよく、外筒体2の周方向に蛇行させることも可能であり(これをヒダ蛇行タイプとし、これについては後述する)、これらのコアピース3を区別する際の符号として、ヒダストレートタイプのコアピースに「3A」と符したものである。
【0027】
また、図1・2に示すコアピース3は、深さの異なる二種類のヒダ30を規則的に、より具体的には交互に配置して成るが、このヒダ30は、必ずしも二種類に限定されるものではない。また、これら深さの異なる複数のヒダ30を区別して示す場合には、30a、30b、30c・・・と符すものであり、例えば図1・2では、深底ヒダを30a、浅底ヒダを30bと符号を付している。因みに上述したキャタライザ物質は、これら深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bの内外表面(すなわちコアピース3の内外表面)と、外筒体2の内側とに付着形成されるものである。
【0028】
そして、本発明では、このような深さの異なるヒダ30を有するコアピース3を、一枚の金属板材(これを単板Aとする)から形成するものであり、具体的には、一例として図2(a)・(b)・(c)に示すように、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPを一回のプレスアクションとして加工を行うものであり(この一回のプレス加工を本明細書では「ショット」と称する)、この1ショットのプレス加工を、単板Aを順送りしながら繰り返し行うことで、単板Aに必要組数のヒダ30(深さの異なるヒダ30)を形成するものである。すなわち、図2では、1ショットのプレス加工で深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bを各一個ずつプレス成形するものであり、これを7ショット繰り返すことにより、ヒダ付板A1(単板Aに全てのヒダ30が形成されたものを示す)を得るものであり、これを円柱状に丸め、外筒体2に挿着したものが図2(d)に示すコアピース3である。
【0029】
また、ヒダ付板A1を円柱状に丸める際には、ヒダ付板A1の両端部、例えば図2では1ショット目のプレス加工の最先端部と、7ショット目のプレス加工の最終端部とを重ね合わせ状態にするものであり、ここを重合部31とする(図2(d)参照)。なお、この重合部31には、通常、外筒体2への挿着後に溶接等の接合が施されるものであり、このような重合部31を敢えて設けるのは、比較的大きな接合代を確保するためである。また、このようなことから、図2では重合部31をほぼフラットな面で形成したが、この重合部31については、必ずしもフラットな状態に形成される必要はなく、例えば外筒体2のほぼ内径に沿ったR面状等に形成されても構わない。
【0030】
以下、上記1ショットのプレス加工を行う装置(これをプレス加工機6とする)について説明する。
プレス加工機6は、単板Aにヒダ付加工を施す装置であり、一例として図2に示すように、ほぼ単板Aの板厚分程度の間隔を隔てて嵌まり合う二種の型部材を主な構成部材とし、これを上型61、及び下型62とする。ここで上型61とは、概ね凹陥状を成し、ヒダ30の内周表面を形成する(形作る)作用を担い、一方、下型62とは概ね凸状を成し、ヒダ30の外周表面を形成する(形作る)作用を担うものとする。因みに上記「ヒダ30の内周表面/外周表面」とは、コアピース3を外筒体2に挿着した状態において、外筒体2の中心側に面する方を内周表面とし、その反対側を外周表面としたものである。
また、上型61においてヒダ30の内周表面を形成する部位をヒダ加工部61aとし、下型62においてヒダ30の外周表面を形成する部位をヒダ加工部62aとするものであり、例えば図1に示すコアピース3(ヒダストレートタイプのコアピース3A)を形成する際には、これらヒダ加工部61a・62aが外筒体2の長手方向(ヒダ30の奥行き方向)に対し、ほぼ真っ直ぐに形成された型部材(プレス加工機6)を適用するものである。
【0031】
更に、これら上型61と下型62とには、前記重合部31を形成するためのフラット部63が形成され、これは上述したように、ヒダ付板A1の接合代(重合代)を比較的広く確保し、ヒダ付板A1の両端部を接合し易くするためである。すなわち図2の型構造では、最終の7ショット目のプレス加工を終えた段階で、ヒダ付板A1の最終端部にはフラット部63による加工面(フラット面)がそのまま残るものであり、ここを1ショット目の最先端部と接合する際の重合部31とすることにより(図2(d)参照)、比較的大きな接合面を獲得し、溶接などの接合が確実に行えるものである。もちろん、型部材に形成されるフラット部63は、上述したように適宜のR面状(例えば外筒体2のほぼ内径R)に形成することも可能であり、要はヒダ付板A1を丸める際の接合が確実に行えれば、当該部位については、種々の形状に形成できるものである。
また、上記下型62には、適宜のR面もしくは傾斜面を成すアール癖付与部64が形成されるものであり、これは既にヒダ付加工が終了した部分(ヒダ形成済部)に、ヒダ付加工(1ショットのプレス加工)と同時にアール癖を付与し、その後の丸め加工、すなわちヒダ付板A1を円柱状に丸める作業(加工)を行い易くするものである。
【0032】
なお、上記図2の実施例では、重合部31を比較的広く獲得すべくフラット部63が形成され、型構造として観た場合に、上型61が全体的に凹んだイメージとなるため、上記説明でも「上型61が凹陥状を成す」と記載したが、型部材としてはフラット部63が形成されないことも考えられ(例えば後述する図4・5参照)、その場合には、型部材の凹凸が必ずしも明確でなく、厳格なものではない。
また、上記説明における上型61と下型62という名称も絶対的なものではなく、あくまでも一対の型部材を区別するためのものである。すなわち、上記説明における上型61/下型62という名称は、ヒダ付加工のプレス方向が上下方向であることに因んだ名称(言わば便宜上の名称)であって、プレス方向は水平方向に設定することも可能であり、その場合には、上記上型61/下型62は、例えば右型/左型に相当する。
【0033】
以下、本図2のプレス加工機6によるプレス態様(ヒダ付加工の態様)について説明する。
例えば図2では、上述したように、1ショット毎のプレス加工により、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとが一個ずつ形成される。このため、1ショット目のプレス加工が終了したプレス成形品A(単板Aと同じ符号を付す)は、上型61もしくは下型62に密着状態に嵌まり込むものであり、これを例えばエジェクタピン等による突き出しによって型部材から取り外す。その後、プレス成形品Aに形成された二つ分のヒダ30を順送りし(先送りし)、次のショットのプレス加工を行うものである(図2(a)〜(b)参照)。
また、このようなプレス形態であるため、単板(プレス成形品)Aにおいて、その直後にヒダ付加工を受ける部位は、事前にフラット部63による押圧を受けることとなる。また、既にプレス成形がなされたヒダ形成済部(二山分のヒダ30)には、下型62に形成されたアール癖付与部64によってアール癖が付与されるため、ヒダ付板A1を最終的に円柱状に丸める作業が行い易くなり、また綺麗に丸めることができるものである。
このように、図2に示すプレス加工機6では、1ショット毎のプレス加工によって、フラット部63による押圧(重合部31の形成)、ヒダ付加工、アール癖付与が、単板Aの各部位に同時に行われるようになっており、単板Aの一カ所に注目すると、順送りによって、これらの加工が順次、なされて行くものである。
【0034】
そして、最終ショットのプレス加工でフラット部63による押圧が施された部位は、そのまま残るので(この部位にはヒダ付加工が施されないため)、図2(d)に示すように、ヒダ付板A1を円柱状に丸めた状態では、この部分が、1ショット目のプレス加工が行われた最先端部と重ね合わせられる。この重合部31は、円形コアピース3の最外周部に位置し、しかもフラットに近い状態で重なり代(接合代)としても比較的広く獲得できるため、上述したように、この部位に施す溶接などの接合が確実となり、また、その作業も行い易くなるものである。
なお、図2のヒダ付加工では、重合部31を比較的広く獲得するようにしたため(フラット部63を設けているため)、円柱状に丸めた段階で(コアピース3とした段階で)必ずしも全ての隣り合うヒダ30が外接していない。すなわち、図2(d)では、最終ショットのプレス加工で形成された深底ヒダ30aと、1ショット目のプレス加工で形成された浅底ヒダ30bとが外接していないが、このような状態も請求項1、8に記載した「(ほぼ)外接」に包含されるものである。
【0035】
次に、ヒダ付板A1を外筒体2に挿着する態様について説明する。ヒダ付板A1を外筒体2に挿着するには、一例として図3に示すように、テーパ状の円孔71が開口されたガイド治具7を用いる。
ここでは、外筒体2の上にガイド治具7を載せるように設置するものであり、この際、まずガイド治具7の向きは、円孔71の径寸法が下方に向かって徐々に狭まるように設定するものであり、また円孔71の小径側を外筒体2の内径に合致させるようにガイド治具7をセットする。その後、ガイド治具7の上方から、円柱状に丸めたヒダ付板A1を挿入する(圧入する)ものであり、ヒダ付板A1は、円孔71を通過する際に、外筒体2の内径寸法以下に狭められ、外筒体2への挿着がスムーズに行われるものである。
なお、この実施例では、外筒体2を縦置きし、その上方からヒダ付板A1を挿着するように説明したが、これは圧入途中のヒダ付板A1は、外側からの規制力を弱めれば、当然、外側に広がろうとする(戻ろうとする)ことから、外側から押さえながらも、重力によってヒダ付板A1の挿入(圧入)が極力容易に行えるように意図したためである。しかしながら、ヒダ付板A1の挿着方向は、必ずしもこのような鉛直方向に設定される必要はなく、圧入が無理なく行えるのであれば、水平方向等に設定しても構わない。
【0036】
また、ヒダ付板A1が挿着される外筒体2としては、適宜の径寸法のパイプ材を出発素材とし、これを適宜の長さにカットして適用することが可能であるが、図3に併せて示すように、コアピース3の出発素材となる単板Aをそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用することが好ましい。それは、このような流用形態を採ることにより、排ガス触媒装置1の素材コスト(製造コスト)をより安価に抑えることができるためである。なお、このような形態では、事前に一枚の単板Aを筒状に丸めておき、その端部同士を重ね合わせ、ここを溶接などで接合し、筒状の外筒体2を得るものである。
【0037】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先の図2に示した実施例では、単板Aに、まず比較的広い重合部31を確保するための押圧を施した後、この部位にヒダ付加工(ヒダ形成)を施すプレス形態(ヒダ付加工)を示したが、1ショット目の最先端部と、最終ショットの最終端部との重ね合わせ(接合)が確実に行えれば、必ずしも重合部31を広く確保する必要はない。このようなプレス形態としては、例えば図4(a)に示すように、1ショットのプレス加工で、単板(プレス成形品)Aに対し、ヒダ付加工とアール癖付与のみを施すようにしたプレス形態が挙げられる。
【0038】
なお、図4(a)では1ショットのプレス加工で、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを一個ずつ形成するヒダ付加工を示しており、これを6ショット繰り返して得られたヒダ付板A1を、円柱状に丸めたものが図4(b)に示すコアピース3である。また、図4(b)中の符号「P」は、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンを示しており、ここでは図4(a)と比較しても分かるように、「1ショットのプレス加工」と一致させている。しかし、1ショットのプレス加工で行うヒダ30の組み合わせ数は、必ずしも最小パターンPで行う必要はなく、全ショット数の約数、例えば図4の実施例では計6ショットのプレス加工であるため、1ショットのプレス加工で、6の約数である2パターンずつ、つまり深底ヒダ30a及び浅底ヒダ30bを共に2個ずつ形成して行くことも可能である。なお、図4(b)中の「P×2」は、このような加工形態(2パターンずつプレス加工する形態)を採った場合に、1ショットのプレス加工で形成されるヒダ30の範囲(領域)を示している。
【0039】
もちろん、1ショットのプレス加工で形成するヒダ30のパターン数(組み合わせ数)を増やせば、一つのコアピース3を製作するために行う全ショット数としては減るため、プレス成形に要する総トータル時間は短縮できるかも知れないが、一回のプレス加工に要する圧力(パワー)や、型部材に掛かる負荷等が増大するため、1ショットのプレス加工を行うプレス加工機6の大型化や補強(強化)等を考慮しなければならない。従って通常は、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPで、1ショットのプレス加工を実施するのが現実的と考えられる。因みに、図1・3に示すコアピース3も、本図4と同様のプレス加工(広い重合部31を獲得しないヒダ付加工)を行ったものを示している。
【0040】
また、先に述べた実施例は、いずれも深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを交互に、もしくは隣り合わせで規則的に配設したコアピース3であったが、ヒダ30は、必ずしもこのような配置形態に限定されるものではなく、例えば5(b)に示すように、二つの深底ヒダ30aの間に、複数(ここでは二つ)の浅底ヒダ30bを介在させる規則的な配置形態も採り得る。この場合、深さの異なるヒダ30の最小組み合わせパターンPは、一個の深底ヒダ30a及びその両側の二個の浅底ヒダ30bの組み合わせとなるため(図5(a)参照)、1ショットのプレス加工で、これらの加工を行い、これを6ショット繰り返すことにより、全てのプレス加工が完了し、図5(b)のようなコアピース3(円柱状に丸めたヒダ付板A1)が得られる。なお、本実施例においても、1ショットのプレス加工で、最小パターンPの二倍(図5(b)中の「P×2」)のプレス加工、すなわち深底ヒダ30aを二個と、浅底ヒダ30bを四個(合計六個のヒダ30)を一挙にプレス成形することにより、所望のコアピース3(ヒダ付板A1)を得ることは可能である。
【0041】
また、先に述べた実施例では、ヒダ30の組み合わせについて、深底ヒダ30a、浅底ヒダ30b等、深さ寸法のみを異ならせた組み合わせを想定していたが、排気ガスGとの接触面積をより大きく獲得するという観点から言えば、例えば図6に示すように、ヒダ30の深さ方向(L方向)の寸法の差異に加え、ヒダ30の幅方向(W方向)の寸法を異ならせることも考えられる。すなわち、図6の実施例では、ヒダ30は、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bの他に、更に中底ヒダ30cを加えた合計三種類であり、このうち深底ヒダ30aと中底ヒダ30cとが同じヒダ幅寸法に形成され、浅底ヒダ30bはこれらよりもヒダ幅寸法が狭く形成されるものである。
なお、図6に示すコアピース3(ヒダ付板A1)の場合、例えば1ショットのプレス加工で、組み合わせの最小パターンPのプレス加工を行えば、1ショットで四個のヒダ30(深底ヒダ30aが一個、中底ヒダ30cが一個、浅底ヒダ30bが二個)が形成されるものであり、このプレス加工を6ショット繰り返すことにより、所望のコアピース3が得られるものである。
【0042】
また、上述したように1ショットのプレス加工で形成するヒダ30の数が多くなればなるほど、1ショットのプレス加工に要する圧力(パワー)や、型に掛かる負荷も大きくなる。更に、1ショットのプレス加工毎に上型61もしくは下型62に嵌まり込むプレス成形品A(単板A)を、取り出す作業も行い難くなる(密着面積が増大するため)。このため、1ショットのプレス加工で形成するヒダ30の数が多い場合や、ヒダ30の深さ寸法が比較的長い場合などには、例えば図7に示すように、ヒダ30の内・外周表面を形成するヒダ加工部61a・62aを双方ともテーパ状に形成し、上型61もしくは下型62に密着状態に嵌まり込むプレス成形品Aを取り出し易くすることが可能である。
【0043】
ここで、請求項1の「単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成する」という記載について説明する。この記載、特に「規則的に(組み合わせて)」という記載は、単板Aに対し深さの異なるヒダ30が、ある決まりに従って繰り返し形成されること(配置形態)を意味するものである。具体的には、例えば上記図2・4では、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとが、交互に(隣り合わせに)繰り返し形成されており、上記図5では、深底ヒダ30aの両側に常に浅底ヒダ30bが形成されており、ヒダ30の並びとしては、浅底ヒダ30b、深底ヒダ30a、浅底ヒダ30bという順で繰り返し形成されている。更に、上記図6では、中底ヒダ30c、浅底ヒダ30b、深底ヒダ30が、この順序で繰り返し形成されている。
【0044】
また、先に述べた実施例は、どれもコアピース3のヒダ30を、外筒体2の長手方向に対して、ほぼ真っ直ぐに形成したものであるが、上述したようにヒダ30の形成方向は必ずしもこのようなストレート方向に限定されるものではない。すなわち、コアピース3のヒダ30は、例えば図8に示すように、外筒体2の周方向に蛇行するように(曲がりくねるように)形成することも可能である。なお、「蛇行」とは言うものの、上記図8では、ヒダ30を外筒体2の周方向に対し、軽くウェーブさせた状態(いわゆる波打ち状態)に形成しており、ヒダ30の蛇行程度(曲がりくねり度合い)は種々の設定が採り得るものである。
このような構成(ヒダ30を蛇行状態に形成する構成)を採ることにより、コアピース3自体の強度アップ、ひいては排ガス・高温環境に晒される排ガス触媒装置1としての耐久性をも向上させ得る利点が挙げられる。もちろん、コアピース3を外筒体2に挿着した状態では、ヒダ30が排気ガスGの流路となることから、ヒダ30を蛇行状態に形成する本実施例は、排気ガスGも蛇行しながら流れることになり、触媒との接触面を増加させ得、排気ガスGの浄化促進が期待できるものである。
【0045】
ここで、既に述べたように、ヒダ30の形成状況によってコアピース3を区別したい場合に、上記図1・2で示したものを「ヒダストレートタイプのコアピース3A」とする一方、図8で示したものを「ヒダ蛇行タイプのコアピース3B」として区別するが、ヒダ30やプレス加工機6等については同一の符号を用いるものとする。
そして、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得るにあっては、例えば図9に示すように平面展開状態で深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとをほぼ一定の間隔で蛇行させた(波打たせた)ヒダ付板A1を、図10のように円柱状に丸めることにより得ることができる。
もちろん、その前段階では、図9に示すヒダ付板A1(深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとをほぼ同じ間隔でウェーブさせたヒダ付板A1)を、単板Aから形成するものであり、これにはヒダストレートタイプのコアピース3Aを得る場合と同様のプレス手法(ヒダ付加工)が適用できる。すなわち、図9に示すヒダ付板A1を得るには、例えば図11に示すようなプレス加工機6を適用するものであり、その特徴は、上型61及び下型62においてヒダ加工部61a・62aを予めほぼ同じ間隔で蛇行させた点である。もちろん、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得る本プレス加工機6においても、ヒダ30の最小組み合わせパターンPで1ショットのプレス加工を行うことを想定し、型部材(下型62)には、蛇行状態の深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとを一個ずつ形成したものである(図11では下型61のみを示している)。
【0046】
このような型構造を採ることにより、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを製造する場合であっても、型部材の肉厚(ヒダ加工部61a・62aの間隔)を常にほぼ一定に維持することができ、型部材の耐久性や強度においても好ましい形態が採り得る。
逆に言えば、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを得るには、例えば図12に示すように、深底ヒダ30aをほぼストレート状態で形成しながら、もう一方の浅底ヒダ30bのみを蛇行状態に形成することも可能であるが、この場合には深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとの間隔が狭くなる部分が存在するため、この部位での型部材の強度や耐久性を考慮する必要があると考えられる。
【0047】
更にまた、コアピース3には、例えば図13〜図15に示すように、ヒダ30の側面部分にヒダ30の内外を連通させる貫通孔を形成することが可能であり(これをヒダ内外連通孔32とする)、これは特にヒダ蛇行タイプのコアピース3Bの場合に好適と考えられる。それは、ヒダ30が蛇行状態に形成されたコアピース3Bであれば、排気ガスGも蛇行しながら外筒体2の中を流れることから、例えば図14に併せ示すように、排気ガスGがヒダ内外連通孔32によってヒダ30の内外を縫うように流れることができ、これにより触媒との接触面がより増大し、浄化効率の向上が見込めるためである。もちろん、ヒダ内外連通孔32は、ヒダストレートタイプのコアピース3Aに形成することも可能であり、この場合も排気ガスGがヒダ内外連通孔32を通り抜けるように流れ得るため、触媒との接触効率向上が見込めるものである。
なお、ヒダ内外連通孔32は、例えば図14に示すように、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとに形成するものを平面から視てヒダ付板A1(コアピース3)の端部からほぼ同じ距離(位置)に形成することも可能であるが(端部からの距離を揃えた形成状態)、例えば図13・15に示すように、深底ヒダ30aと浅底ヒダ30bとのヒダ内外連通孔32を、平面から視てヒダ付板A1(コアピース3)の端部から互い違い状に形成することも可能である(端部からの距離を異ならせた形成状態)。
【0048】
また、ヒダ内外連通孔32をコアピース3に形成するにあたっては、コアピース3がまだヒダ付加工を受ける前の段階、例えば単板Aの段階で開口形成することが好ましく、これによりヒダ内外連通孔32が正確に開口できるものである。また、コアピース3の単板Aを一枚の大きな板材からブランク取りする場合には、このブランク取りに併せて、ヒダ内外連通孔32を同時に開口することが可能であり、この場合には、全体の工程数を全く増やさずに、ヒダ内外連通孔32を形成することができるものである。
【0049】
なお、本明細書で使用した「蛇行」という用語は、単に波型の曲がりくねりだけを意味するものではなく、例えば図14に示すように、(波打ち状の)波に相当する部位が台形状であるもの、あるいは図15に示すように、波に相当する部位全体が比較的大きなジグザグ状を成すもの等、排気ガスGが外筒体2の周方向にうねりながら流れ得る種々の状態を含むものである。
【0050】
更にまた、上述した実施例はどれも両方の開口端部がほぼ同じ大きさ(径寸法)の排ガス触媒装置1を示したが(これをストレート型(の排ガス触媒装置)と称する)、例えば図16に示すように、外筒体2及びコアピース3共に開口端部の大きさを異ならせた排ガス触媒装置1を適用することも可能である(これをテーパ型(の排ガス触媒装置)と称して、ストレート型と区別する)。なお、テーパ型の排ガス触媒装置1を実際に排気消音ユニットU内に収容するにあたっては、上記図16に併せ示すように、排ガス触媒装置1の小径側を排気ガスGの入口側に向け、大径側を排気ガスGの出口側に向けて取り付けるものである。これは、排気ガスGの流れに応じた配置であって、通常、排気消音ユニットUを含めた排気システムにあって排気ガスGは、小径側から大径側に流れる構造となっているためである。
【0051】
また、従来の排ガス触媒装置にあっては、ストレート型の排ガス触媒装置1がほとんどであったため、例えば径寸法の異なる二本の排ガス触媒装置を用い、小径のものの後段に大径のものを直列状に配置することが多かった(図1の断面図参照)。しかしながら、テーパ型の排ガス触媒装置1を用いれば、上記図16の断面図に併せ示すように、これら複数基の排ガス触媒装置1を一基にまとめることができ、排気消音ユニットUひいては排気システム全体をシンプルに構成し得る点や取付性等の点で効果を奏するものである。もちろん、テーパ型の場合には、コアピース3を外筒体2に挿着する際、コアピース3の小径側を、外筒体2の大径側から嵌め込んで行く挿着形態となるため、このような挿着作業もより行い易くなるものと考えられる。
【0052】
因みに、上記図16に示すテーパ型の排ガス触媒装置1においては、ヒダ30が外筒体2の長手方向に沿ってほぼ真っ直ぐに形成されたヒダストレートタイプのコアピース3Aを図示したが、ヒダ蛇行タイプのコアピース3Bを用いて、テーパ型の排ガス触媒装置1を形成することも可能である。もちろん、このテーパ型の排ガス触媒装置1にヒダ内外連通孔32を設けることも可能である。
【0053】
また、図17は、上記テーパ型の排ガス触媒装置1(ヒダストレートタイプ)を得る場合に、ヒダ付板A1を平面展開形状で示した一実施例であり、先の実施例と比べて大きな特徴は、その形状が略扇形(先端中心側がない扇形)を呈する点である。もちろん、テーパ型の場合には、プレス加工を受ける前の単板Aの状態から、既にこのような略扇形に形成されるものである。また、ヒダ付板A1(単板A)が、このような形状であることから、テーパ型の排ガス触媒装置1は、個々のヒダ30の大きさが、小径開口端側→大径開口端側に向かって徐々に大きく形成されるのが一般的である(一定でないものである)。更に、プレス加工時の送り(順送り時の移送)は、厳密には、加工を受ける単板Aが円状(略扇形の中心を円とする円状)を描くように送ることが好ましいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、種々の内燃機関から排出される燃焼ガスを浄化する排ガス触媒装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 排ガス触媒装置
2 外筒体
3 コアピース
6 プレス加工機
7 ガイド治具
3 コアピース
3A ヒダストレートタイプのコアピース
3B ヒダ蛇行タイプのコアピース
30 ヒダ
30a 深底ヒダ
30b 浅底ヒダ
30c 中底ヒダ
31 重合部
32 ヒダ内外連通孔
6 プレス加工機
61 上型
61a ヒダ加工部
62 下型
62a ヒダ加工部
63 フラット部
64 アール癖付与部
7 ガイド治具
71 円孔
A 単板(プレス成形品)
A1 ヒダ付板
F ヒダ付管
G 排気ガス
L 長さ方向(ヒダの)
P パターン(深さの異なるヒダの最小組み合わせパターン)
U 排気消音ユニット
W 幅方向(ヒダの)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する排ガス触媒装置を製造する方法において、
前記コアピースは、一枚の単板を出発素材とし、この単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成した後、
このヒダ付板を円柱状に丸め、隣り合うヒダが互いにほぼ外接するように、外筒体の内部に挿着するようにしたことを特徴とする排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項2】
前記コアピースは、複数のヒダのうち、少なくとも一つが外筒体の周方向に蛇行するように形成されることを特徴とする請求項1記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項3】
前記排ガス触媒装置は、両方の開口端部の大きさが異なり、テーパ状を成すことを特徴とする請求項1または2記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項4】
前記コアピースの出発素材である単板にヒダ付加工を施すにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダと浅底ヒダとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項5】
前記コアピースの出発素材である単板に施すヒダ付加工は、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンを1ショットのプレス加工とし、この1ショットのプレス加工を、単板を順送りしながら繰り返し行うことで、深さの異なるヒダを複数組、単板に形成するものであり、
また1ショット毎のプレス加工を行う際には、既にヒダ付加工が終了したヒダ形成済部に、プレス加工と同時にアール癖を付与し、その後のヒダ付板の円柱状の丸め作業が容易に行えるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項6】
前記コアピースは、ヒダの内側と外側とを連通させる内外連通孔を有するものであって、この内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の段階で開口形成されるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項7】
前記ヒダ付板が挿着される外筒体は、事前に一枚の単板が丸められて筒状に形成されて成るものであり、この単板には、前記コアピースの出発素材となる単板をそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、45または6記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項8】
排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する装置であって、
前記コアピースは、外筒体の内部において、深さの異なるヒダが放射状に設けられて成り、且つ互いに隣り合うヒダが、ほぼ外接状態に設置されて成るものであり、
装置の製造にあたっては、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする排ガス触媒装置。
【請求項1】
排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する排ガス触媒装置を製造する方法において、
前記コアピースは、一枚の単板を出発素材とし、この単板に深さの異なるヒダを規則的に組み合わせて形成した後、
このヒダ付板を円柱状に丸め、隣り合うヒダが互いにほぼ外接するように、外筒体の内部に挿着するようにしたことを特徴とする排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項2】
前記コアピースは、複数のヒダのうち、少なくとも一つが外筒体の周方向に蛇行するように形成されることを特徴とする請求項1記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項3】
前記排ガス触媒装置は、両方の開口端部の大きさが異なり、テーパ状を成すことを特徴とする請求項1または2記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項4】
前記コアピースの出発素材である単板にヒダ付加工を施すにあたっては、深さの異なる二種の深底ヒダと浅底ヒダとを交互に繰り返し形成するようにしたことを特徴とする請求項1、2または3記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項5】
前記コアピースの出発素材である単板に施すヒダ付加工は、深さの異なるヒダの最小組み合わせパターンを1ショットのプレス加工とし、この1ショットのプレス加工を、単板を順送りしながら繰り返し行うことで、深さの異なるヒダを複数組、単板に形成するものであり、
また1ショット毎のプレス加工を行う際には、既にヒダ付加工が終了したヒダ形成済部に、プレス加工と同時にアール癖を付与し、その後のヒダ付板の円柱状の丸め作業が容易に行えるようにしたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項6】
前記コアピースは、ヒダの内側と外側とを連通させる内外連通孔を有するものであって、この内外連通孔は、コアピースがまだヒダ付加工を受ける前の段階で開口形成されるものであることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項7】
前記ヒダ付板が挿着される外筒体は、事前に一枚の単板が丸められて筒状に形成されて成るものであり、この単板には、前記コアピースの出発素材となる単板をそのまま、もしくは適宜の長さにカットして流用するようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、45または6記載の排ガス触媒装置の製造方法。
【請求項8】
排気ガスが送り込まれてくる外筒体の内部にコアピースを設けて成り、流路面に付着形成した触媒によって、排気ガスを浄化する装置であって、
前記コアピースは、外筒体の内部において、深さの異なるヒダが放射状に設けられて成り、且つ互いに隣り合うヒダが、ほぼ外接状態に設置されて成るものであり、
装置の製造にあたっては、前記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする排ガス触媒装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−69472(P2010−69472A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115322(P2009−115322)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(500573761)サクラ工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(500573761)サクラ工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]