説明

排尿情報測定装置

【課題】便器で尿流を直接測定することによって、衛生性は確保しながら尿流率等の排尿情報を高精度に測定することである。
【解決手段】本発明では、使用者が排泄を行なう洋式大便器と、前記洋式大便器に設置され、被験者の排泄する尿流に向けてマイクロ波を発射して反射されてくる反射波の反射波情報を計測するマイクロ波反射情報計測手段と、前記反射波情報から被験者の排泄する尿流を構成する尿滴の移動速度と断面積とを求めて単位時間当たりの尿流量である尿流率を演算する尿流率演算手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の尿を衛生的に処理できる洋式大便器を使用しつつ、直接、尿流率等の排尿情報を取得可能とする排尿情報測定装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来の排尿情報を測定する大便器ユニットでは、大便器のボウル部を計測容器として使用して、ボウル部の溜水量を適切に設定した状態で排尿による溜水水位変化を計測し、溜水水位と溜水量との関係を予め求めた検量関係を利用して、排尿情報である尿量・尿流率を算出することで、洋風大便器に排泄しただけで尿量・尿流率等を自動測定している(例えば、特許文献1参照。)。
このような場合、ボウル部の溜水量を適切に設定するために給排水を制御する手段を予め大便器に設置しておくことが必要であった。従って、既設の大便器に尿流率測定機能を後から付加する、いわゆる、後付けすることは困難という問題もあった。さらに、大便器にはボウル部の形状に個体差があるため前記検量関係は個別に設定・記憶される必要がるため、個々の大便器毎にこの検量関係を作成することが必要であるいう問題もあった。
【0003】
また、マイクロ波帯の波長の電波のドップラー効果を利用した電波センサーで尿流を検出して、その尿流検知時間から排尿量を推定しているものもある(例えば、特許文献2参照。)。しかし、この場合は実際に測定しているのは尿流速(L/T)であり、医学的に臨床活用される尿流率(L/T)や尿量(L)を推定するために必要な尿流の断面積(L)は仮定している。従って、臨床活用できる被験者毎の尿流率情報は精度的に得ることはできないという問題があった。なお、前記で使用したL、Tは物理量の次元で、各々長さ及び時間を表すものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許03876919号公報
【特許文献2】特開2004−100357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、便器で尿流を直接測定することによって、衛生性は確保しながら尿流率等の排尿情報を高精度に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、使用者が排泄を行なう洋式大便器と、前記洋式大便器に設置され、被験者の排泄する尿流に向けてマイクロ波を発射して反射されてくる反射波の反射情報を計測するマイクロ波反射情報計測手段と、前記反射波情報から被験者の排泄する尿流を構成する尿滴の移動速度と断面積とを求めて単位時間当たりの尿流量である尿流率を演算する尿流率演算手段と、を有することを特徴とすることにより、便器ボウル面形状に依存する検量関係なども使用せずに尿流自体を計測対象として計測するため、便器で測定する衛生性は確保しながら便器の固体間差に影響を受けずに尿流率等の排尿情報を測定することを可能とした。
【0007】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明によれば、少なくとも前記マイクロ波計測手段を既設の洋式大便器に着脱可能に係止する便器固定手段を有する、ことを特徴とすることにより、通常の便器に排尿情報測定装置を取り付けられるため、被験者の使用する便器にも後付することが出来るため、少なくとも排尿情報測定装置として必須な測定容器に便器を利用することを可能とした。そのため、装置の構成が簡略されることとなる。
【0008】
また、請求項3記載の発明のよれば、前記マイクロ波計測手段の計測結果から尿量を算出する尿量演算手段を有することにより、臨床的に泌尿器科が検査対象としている尿の出具合だけでなく、被験者の全身代謝状態も測定を可能とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既設の大便器に、後付けして尿流率測定装置として機能させることが、容易となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の排尿情報測定装置を組み付けた便器の全体像を示す斜視図である。
【図2】本発明の排尿情報測定装置を組み付けた便器の断面図である。
【図3】本発明の排尿情報測定装置の全体構成を示すシステムブロック図である。
【図4】本発明の排尿情報測定装置で得られるマイクロ波反射情報を示す概念図である。
【図5】本発明の排尿情報測定装置で得られるマイクロ波反射情報を排尿情報に換算した状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態における排尿情報測定装置1を示す図である。本実施形態では通常の便器に着脱可能として構成されている。即ち、排尿情報測定装置1は、本発明における便器固定手段に相当する装置固定具15によって、洋式大便器31に固定されている。便器固定具15は図示しない吸盤等の吸着手段を備え、洋式大便器31の外表面に着脱可能に取り付けられている。洋式大便器31は、衛生洗浄装置や便器機能部をキャビネット35や本体ケース部36に収納し、使用者の着座する便座装置を形成する便座37及び便蓋38を備えている。
【0012】
図2は、本発明の排尿情報測定装置を組み付けた便器を示す断面図である。図1、図2を使用して、洋風水洗大便器に組みつけられた各構成部材の配置と動作について詳説する。
被験者10は便座37に座って、洋式大便器31に対して排尿する。尿流20はボウル32に向けて排泄され、溜水33に流れ込む。溜水33はトラップ34を介して図示しない建物の排水配管に連通しており、図示しない便器洗浄手段から供給される洗浄水によって、排泄物混じりの溜水33は排水配管に対して洗浄動作が実施されるようになっている。
【0013】
洋式大便器31の便器前方外側には、排尿情報測定装置1が設けられている。被験者の排尿に関する検査を行なう場合、検査終了後に使用した尿の排出や容器を清掃・洗浄する作業が発生する。本発明では排尿情報測定装置1が便器に取り付けられてボウル32を容器としているため、検査後の排出・洗浄が便器本来の機能である便器洗浄機能を利用できるため、検査の省力化が図られている。
【0014】
排尿情報測定装置1は、広範囲の便器前部の外表面の形状に沿ってフレキシブルに変形する素材で形成されベース部材となる装置固定具15を有し、この装置固定具15に、マイクロ波の送信及びマイクロ波が尿流に当って反射した反射波の周波数変化や強度等をマイクロ波反射情報として検出するマイクロ波反射情報検出手段2と、これらのマイクロ波反射情報からの尿流率や尿量等の排尿情報の算出や、排尿情報測定装置1の動作制御等の装置全体の制御を行なう測定装置制御部50と、後述する排尿情報測定装置1の操作を被験者が行なうための動作スイッチや測定結果を表示する操作表示部60と無線で情報をやり取りする通信手段を構成する送受信部55が配設されている。
【0015】
図3は、本発明の排尿情報測定装置の全体構成及びそれらの関係を示すを示すシステムブロック図である。図3を使用して、各部の連係動作について詳説する。
【0016】
洋式大便器31には通常の便器洗浄機能として排泄物を搬出するための便器洗浄手段40が接続されており、市水を所定のタイミングでリム吐水流路41とゼット吐水流路42から供給されるようになっている。洋式大便器31の便器外側前方には装置固定具15によってマイクロ波反射情報検出手段2がそのマイクロ波送受信部を尿流に対向するように設けられており、便器を介して照射したマイクロ波が尿滴に当って反射してきたものを検出するようになっている。
【0017】
マイクロ波反射情報検出手段2の検出結果は、測定装置制御部50に内蔵された尿滴サイズ/尿流速演算手段51によって尿滴サイズと尿流速の基礎情報として検出された後、勘案情報記憶手段52に記憶された情報を利用して、尿流率推定手段53によって臨床で使用される尿流率情報に換算される。
【0018】
測定結果は赤外線や電波等の無線通信を利用して送受信部55を介して操作・表示部60に送られ所定の表示形態で、被験者や医療関係者に開示されることになる。また、操作・表示部60には、排尿情報測定装置1の操作を行なうスイッチ類が配設され、その操作情報も送受信部55を介して測定装置制御部50に送られる。
【0019】
図4は、本発明の排尿情報測定装置のマイクロ波反射情報を示す概念図である。図4を使用して、洋風水洗大便器の外側に設けられたマイクロ波の発信・受信によって得られるマイクロ波反射情報について詳説する。
マイクロ波反射情報検出手段2は、ある時刻tにおいて受信周波数fn毎に受信エネルギーEnを検出する。受信周波数fnは本図に示すとおり離散的であり、受信エネルギーEnは大きさが様々な値を示す。
【0020】
図5は、本発明の排尿情報測定装置1によって得られるマイクロ波反射情報を排尿情報に換算した状態を示す概念図である。図4で示したマイクロ波反射情報を、医療・臨床に活用する排尿情報に換算する考え方について詳説する。
マイクロ波反射情報検出手段2が検出した受信周波数fnは、尿滴の速度を示す情報であり、尿流速度vnに換算することができる。また受信エネルギーEnは尿滴の大きさを示す情報であり、尿滴サイズAnに換算することができる。各々の換算係数をK1,K2とすると、所定時刻tにおける尿流率は(数1)(数2)で演算されることになる。
【0021】
【数1】

【0022】
【数2】

【0023】
従って、例えば全身代謝の管理指標に使用される尿量Qは(数3)で演算されることになる。
【0024】
【数3】

【0025】
以上述べたように、臨床的に泌尿器科が検査対象としている尿の出具合だけでなく、被験者の全身代謝状態の測定についても、排尿情報測定装置1によって行なうことが出来る。また、排尿情報測定装置1のように便器に外付けする場合は、入院病棟のトイレであったり、予後の管理を自宅で実施している場合のトイレなど、既設の大便器に対して尿量測定機能を後付けして尿流率測定装置として機能させることが容易となるという効果がある。
【0026】
以上述べた第1実施形態における排尿情報測定装置1は便器に外付けする形態であったが、本発明においては、少なくともマイクロ波反射情報検出手段2を便器に組み込むことも可能であり、その場合においても、尿流を直接計測対象にして高精度の排尿情報の測定が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…排尿情報測定装置
2…マイクロ波反射情報検出手段
3…動作スイッチ
5…マイクロ波
10…被験者
15…装置固定具
20…尿流
31…洋式大便器
32…ボウル
33…溜水
34…トラップ
35…キャビネット
36…本体ケース部
37…便座
38…便蓋
40…便器洗浄手段
41…リム吐水流路
42…ゼット吐水流路
50…測定装置制御部
51…尿滴サイズ/尿流速演算手段
52…尿量推定手段
53…勘案情報記憶手段
55…送受信部
60…操作・表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が排泄を行なう洋式大便器と、
前記洋式大便器に設置され、被験者の排泄する尿流に向けてマイクロ波を発射して反射されてくる反射波の反射波情報を計測するマイクロ波反射情報計測手段と、
前記反射波情報から被験者の排泄する尿流を構成する尿滴の移動速度と断面積とを求めて単位時間当たりの尿流量である尿流率を演算する尿流率演算手段と、を有することを特徴とする排尿情報測定装置。
【請求項2】
さらに、少なくとも前記マイクロ波計測手段を既設の洋式大便器に着脱可能に係止する便器固定手段を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の排尿情報測定装置。
【請求項3】
さらに、前記マイクロ波計測手段の計測結果から尿量を算出する尿量演算手段を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排尿情報測定装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−223772(P2010−223772A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71598(P2009−71598)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】