説明

排気ガスセンサおよびその制御装置

【課題】結露水が排気管の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる排気ガスセンサおよびその制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジンが排気ガスを排出するための排気管9の内部にあるヒータ11と、排気管9の外部にあるヒータ12とを有する排気ガスセンサ10のECU20において、ヒータ12の温度が所定の温度を超えたと判定したときヒータ12の通電を停止し、ヒータ12の通電を停止した時点からヒータ停止時間が経過したときにヒータ12の通電を開始するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが排気ガスを排出するための排気管に設けられた排気ガスセンサおよびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスセンサは、エンジンの排気管などに設けられており、排気管を通る排気ガスの酸素の濃度に応じた電圧を検知するようになっており、ECUは、排気ガスセンサによって検知された電圧から排気ガスの空燃比を測定し、測定した排気ガスの空燃比に基づいてエンジンを制御していた。
【0003】
また、エンジン停止後しばらくして再始動するとき、排気管の温度は周囲の外気温度と同等程度にまで冷却されており、排気ガスセンサを構成する素子は冷えやすいため、排気管の内部に溜まった水蒸気による結露水が、排気管に設けられた排気ガスセンサに付着してしまう。結露水が付着している状態で、エンジンを始動させると、排気管内の温度が急上昇して結露水が付着している排気ガスセンサの部分と排気管内との温度差が過大になって、セラミック等からなる排気ガスセンサの素子が割れてしまう。従って、排気ガスセンサにヒータを設け、ヒータで温度の制御をすることで排気ガスセンサに付着した結露水を蒸発させている。
【0004】
例えば、従来の排気ガスセンサの制御装置としては、排気ガスセンサ素子を加熱するヒータを制御するものであって、エンジンの排気管周囲の外気温度を推定する手段を有しており、外気温度の推定値に応じてヒータの温度を制御することで、排気ガスセンサ素子に付着する結露水を蒸発させて排気ガスセンサ素子の破損を防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、図5に示すように、従来の排気ガスセンサ50には、電圧を検知するための電極54や排気管9の内部の排気ガスセンサ素子にヒータ51が設けられており、ECU60がヒータ51を制御して排気ガスセンサに付着した結露水をヒータ51で蒸発させている。
【特許文献1】特開2003−97323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の排気ガスセンサの制御装置では、排気管にある水蒸気による結露水が、排気管の内部の排気ガスセンサ素子に付着するだけでなく、排気管の外部の排気ガスセンサ素子に付着した場合、排気ガスセンサ素子が破損したり、排気ガスセンサの電極間でリークしたり、正確な電圧を検知することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、結露水が排気管の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる排気ガスセンサおよびその制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排気ガスセンサの制御装置は、エンジンが排気ガスを排出するための排気管の内部にある第1のヒータと、前記排気管の外部にある第2のヒータとを有する排気ガスセンサの制御装置において、前記第1のヒータおよび前記第2のヒータに通電する制御を行う構成を有している。
この構成により、排気管の外部にある第2のヒータとに通電する制御を行うため、結露水が排気管の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる。
【0009】
また、本発明の排気ガスセンサの制御装置は、前記第2のヒータの温度が所定の温度を保つように前記第2のヒータの通電を制御する構成を有している。
この構成により、第2のヒータの温度が所定の温度を保つように第2のヒータの通電を制御するため、第2のヒータの温度と排気ガスセンサの素子の温度との差を急激にせずに、排気ガスセンサの素子の破損を防止できる。
【0010】
また、本発明の排気ガスセンサの制御装置は、前記第2のヒータの温度が前記所定の温度を超えたと判定したとき前記第2のヒータの通電を停止し、前記第2のヒータの通電を停止した時点からヒータ停止時間が経過したときに前記第2のヒータの通電を開始する構成を有している。
この構成により、第2のヒータの温度と排気ガスセンサの素子の温度との差を急激にせずに所定の温度を保つようにすることができる。
【0011】
また、本発明の排気ガスセンサの制御装置における前記ヒータ停止時間は、前記第2のヒータの通電を開始した直後の温度および前回のヒータ停止時間に基づいて今回のヒータ停止時間を求めたものである構成を有している。
この構成により、早く正確に所定の温度を保つようにすることができる。
【0012】
また、本発明の排気ガスセンサの制御装置は、前記第2のヒータの抵抗値は、前記第1のヒータの抵抗値よりも小さい構成を有している。
この構成により、第2のヒータが設けられている排気ガスセンサの部分が、第1のヒータが設けられている部分よりも耐熱が強いものではない場合、排気ガスセンサの素子の破損を防止でき、消費電力を少なくすることができる。
【0013】
本発明の排気ガスセンサは、エンジンが排気ガスを排出するための排気管に設けられた排気ガスセンサにおいて、前記排気管の内部にある第1のヒータと、前記排気管の外部にある第2のヒータとを有する構成を有している。
この構成により、結露水が排気管の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気管の外部にある第2のヒータとに通電されたとき、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明は、結露水が排気管の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる排気ガスセンサおよびその制御装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサおよびその制御装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサが排気管に設けられたエンジンの構成図である。図1に示すように、排気ガスセンサ10は、エンジン1が排気ガスを排出するための排気管9に設けられており、ECU20と接続されている。
【0016】
なお、本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサ10の制御装置は、図1に示したECU20によって構成されている。また、排気ガスセンサ10およびECU20は、例えば、エンジン1を搭載する車両に設置されて使用される。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサの断面図である。排気ガスセンサ10は、エンジンの排気管9に取り付けられており、例えば、酸素濃度を検出する酸素センサ、または空燃比センサとして用いられる。排気ガスセンサ10は、固体電解質基板13、電極14、セラミック板15、および保護カバー16によって構成されている。
【0018】
固体電解質基板13は、酸化ジルコニウム(ZrO2)からなり、電極14は、白金(Pt)からなる。また、セラミック板15は、アルミナ(Al2O3)からなる。また、保護カバー16は、複数の通気孔が開口しており、保護カバー16の外部から内部へ排気ガスなどが通気可能となっている。
【0019】
さらに、排気ガスセンサ10は、図2に示すように、排気管9の内部にヒータ11および排気管9の外部にヒータ12を備えている。ヒータ11およびヒータ12としては、例えば、通電したときに電気抵抗で発熱するものが用いられる。
【0020】
なお、本発明の実施の形態では、ヒータ12が設けられている排気ガスセンサ10の部分は、ヒータ11が設けられている部分よりも耐熱が強いものではないため、ヒータ12の抵抗値は、ヒータ11の抵抗値よりも小さく設定されている。
【0021】
また、電極14およびヒータ11およびヒータ12は、ECU20に接続されている。ECU20は、排気ガスセンサ10やエンジン全体の制御を行うものであり、例えばCPU、メモリ、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成される。
【0022】
ECU20は、排気ガスセンサ10の電極14を介して排気管9を通る排気ガスの酸素の濃度に応じた電圧を検知し、例えば、検知された電圧に基づいて排気ガスの空燃比を測定するようになっている。
【0023】
また、ECU20は、結露水の付着による排気ガスセンサ素子の破損や電極間のリークを防止するため、車両のイグニッションスイッチをONにしたときやエンジンの始動後にヒータ11に通電を開始すると共にヒータ12に通電を開始してそれぞれのヒータを発熱させる。
【0024】
なお、ECU20は、ヒータに通電していたときの電流値とヒータから検知したときの電圧値とからヒータの抵抗値を算出するようになっている。ところで、メモリには、予め記憶されたヒータの抵抗値とヒータの温度とを対応させた対応表が記憶されている。また、ECU20は、抵抗値を算出したときに抵抗値に対応するヒータの温度をこの対応表から求める。
【0025】
また、ECU20は、ヒータ12の温度を急激に上昇して結露水が付着している部分とその周囲との温度差が過大にならないように、ヒータ12の温度が所定の温度を保つようにヒータ12の通電を制御するようになっている。例えば、所定の温度は、水の沸点である100度に設定される。
【0026】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る制御装置の動作の一例について、図面を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0027】
まず、イグニッションスイッチがONになる(S1)と、ECU20は、ヒータ11に通電を開始すると共にヒータ12に一定の電流を通電するように開始してそれぞれのヒータを発熱させる(S2)。なお、ヒータ11を制御するための以降の動作については省略する。
【0028】
次に、ECU20は、ヒータ12に通電していたときの電流値とヒータ12から検知したときの電圧値とからヒータ12の抵抗値を算出し(S3)、算出した抵抗値からヒータ12の温度を求める。このとき、ECU20は、ヒータ12の温度が所定の温度より大きいか否かを判定する(S4)。
【0029】
ヒータ12の温度が所定の温度より大きい場合、ECU20は、ヒータ12の通電を停止し(S5)、その後、所定時間が経過したか否か判定される(S6)。なお、時刻とヒータ12の温度との関係を表したグラフを図4に示す。時刻t1ではステップS5が行われ、所定時間は、図3に示すように、露点温度以下にならない時間T1が設定される。
【0030】
所定時間が経過したとき、ECU20は、再びヒータ12に通電するように開始してヒータ12を発熱させる(S7)。次に、ECU20は、ヒータ12の通電を開始した直後の温度および前回のヒータ停止時間に基づいて、今回のヒータ停止時間を求める(S8)。
【0031】
詳細には、ヒータ12の通電を開始した直後の温度および前回のヒータ停止時間と、今回のヒータ停止時間とを対応させた対応情報が予めメモリに記憶されており、ECU20は、この対応情報に基づいて今回のヒータ停止時間を求める。なお、図4において、前回のヒータ停止時間である時間T1と時刻t2の温度であれば、今回のヒータ停止時間は、T2となる。
【0032】
次に、ECU20は、ヒータ12に通電していたときの電流値とヒータ12から検知したときの電圧値とからヒータ12の抵抗値を算出し(S9)、算出した抵抗値からヒータ12の温度を求める。このとき、ECU20は、ヒータ12の温度が所定の温度より大きいか否かを判定する(S10)。
【0033】
ヒータ12の温度が所定の温度より大きい場合、ECU20は、ヒータ12の通電を停止し(S11)、その後、ヒータ停止時間が経過したか否か判定される(S12)。なお、時刻t3ではステップS11が行われ、ヒータ停止時間は、図4に示すように、時間T2が設定される。
【0034】
以降の動作は、ステップS7から繰返される。エンジンが始動すれば排気管9の内部が時間の経過につれて温まるため、時間T2の次のヒータ停止時間は、時間T2よりも短い時間T3となる。また、時間T3の次のヒータ停止時間は、時間T3よりも短い時間T4となって、ECU20は、ヒータ12の温度が所定の温度を保つよう制御する。
【0035】
なお、以上の説明では、ヒータの温度は、ヒータの電圧値から求められる抵抗値に基づいて測定されているが、ヒータ付近に温度検知センサを設けて温度検知センサの出力結果で測定されてもよい。また、ヒータ停止時間を可変としているが、ヒータ停止時間を一定としてもよい。また、所定の温度を保った後、結露水が蒸発したと推測される時間が経過した場合には、ECU20は、ヒータ12の通電を停止するようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサの制御装置は、排気管9の内部にあるヒータ11と、排気管9の外部にあるヒータ12とに通電する制御を行うため、結露水が排気管9の外部の排気ガスセンサに付着しても、排気ガスセンサの素子の破損を防止すると共に排気ガスセンサを正常に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサが排気管に設けられたエンジンの構成図
【図2】本発明の実施の形態に係る排気ガスセンサの断面図
【図3】本発明の実施の形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャート
【図4】時刻とヒータの温度との関係を表したグラフ
【図5】従来の排気ガスセンサの断面図
【符号の説明】
【0038】
1 エンジン
9 排気管
10、50 排気ガスセンサ
11、12、51 ヒータ
13 固体電解質基板
14、54 電極
15 セラミック板
16 保護カバー
20、60 ECU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが排気ガスを排出するための排気管の内部にある第1のヒータと、前記排気管の外部にある第2のヒータとを有する排気ガスセンサの制御装置において、
前記第1のヒータおよび前記第2のヒータに通電する制御を行うことを特徴とする排気ガスセンサの制御装置。
【請求項2】
前記第2のヒータの温度が所定の温度を保つように前記第2のヒータの通電を制御することを特徴とする請求項1に記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項3】
前記第2のヒータの温度が前記所定の温度を超えたと判定したとき前記第2のヒータの通電を停止し、前記第2のヒータの通電を停止した時点からヒータ停止時間が経過したときに前記第2のヒータの通電を開始することを特徴とする請求項2に記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項4】
前記ヒータ停止時間は、前記第2のヒータの通電を開始した直後の温度および前回のヒータ停止時間に基づいて今回のヒータ停止時間を求めたものであることを特徴とする請求項3に記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項5】
前記第2のヒータの抵抗値は、前記第1のヒータの抵抗値よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の排気ガスセンサの制御装置。
【請求項6】
エンジンが排気ガスを排出するための排気管に設けられた排気ガスセンサにおいて、前記排気管の内部にある第1のヒータと、前記排気管の外部にある第2のヒータとを有することを特徴とする排気ガスセンサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−303370(P2007−303370A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132531(P2006−132531)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】