排気ガス浄化用触媒
【課題】酸化鉄を有効に利用して触媒の排気ガス浄化性能を高める。
【解決手段】触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子に、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、この微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下である。
【解決手段】触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子に、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、この微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジンの排気通路には、Pt、Pd、Rh等の触媒金属を有する排気ガス浄化用触媒が設けられている。この触媒には、エンジン始動時のような排気ガス温度が低いときから排気ガスを浄化できるように早期に活性化することが求められ、また、高速走行等によって排気ガス温度が高い状態が続いた後でも、排気ガスの浄化率が大きく低下しないことが求められる。このような要求を満たすべく、触媒には比較的多量の触媒金属が使用され、例えば三元触媒にあっては、触媒金属の使用量は触媒担体1L当たり1〜2gとされることが多い。
【0003】
しかし、上記触媒金属の多くは希少金属であることから、資源保護等の観点より、触媒の性能を落とすことなく、触媒金属の使用量を少なくする研究開発が進められている。その手法としては大別して2つあり、その一つは、触媒貴金属をサポート材に固定化することであり、他の一つは、触媒貴金属のシンタリングを抑制するために、立体障害となる酸化物を触媒貴金属と共にサポート材に担持することである。
【0004】
前者の一例は特許文献1に記載されている。その例では、酸素吸蔵放出能を有しサポート材となるCe含有酸化物粒子の結晶格子又は結晶格子間に触媒貴金属であるRhが配置され、さらにサポート材表面にRhが後担持されている。これによれば、RhはCe含有酸化物粒子の内部及び表面に固定化され、Rhを有しないCe含有酸化物粒子に比べて、酸素吸蔵放出能(酸素吸蔵放出量及び吸蔵吸蔵放出速度)が飛躍的に高まり、排気ガス浄化性能の向上に大きく寄与することができる。
【0005】
また、後者の例が特許文献2に記載されている。すなわち、この文献2には、CeO2−ZrO2複合酸化物よりなる担体と、該担体に担持されたAl、Ni及びFeから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子と、該担体に担持された貴金属とからなる排気ガス浄化用触媒が開示されている。担体上での貴金属の移動を金属酸化物粒子によって規制することにより、貴金属のシンタリングを抑制するというものである。但し、実施例として開示されている金属酸化物粒子はAl2O3のみであり、CeO2−ZrO2複合酸化物と硝酸Al水溶液とを混合し、これにアンモニア水を滴下・中和して沈殿を析出させ、濾過・洗浄・乾燥・焼成を行ない、得られた粉末にPt溶液を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行なうことにより触媒粉末を得るとされている。Ni及びFeについての実施例はない。
【0006】
また、触媒金属量を増大させることなく、酸素吸蔵材の酸素吸蔵放出能を向上させるようにした触媒の一例が特許文献3に記載されている。それは、セリウム酸化物を含む担体と、この担体に担持された遷移金属及び貴金属からなる触媒金属とよりなり、セリウム原子及び貴金属各々に対する遷移金属の原子比を所定の範囲にするというものである。遷移金属としては、Co、Ni及びFeの少なくとも一種が好ましいとされている。但し、実施例として開示されているのはCo及びNiだけであり、Feについての実施例はない。
【0007】
また、特許文献3では、セリアジルコニア固溶体粉末に硝酸Ni(又は硝酸Co)を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行ない、得られた粉末にPt溶液を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行なうことにより触媒粉末を得るとされている。そして、この触媒粉末とRh/ZrO2粉末とAl2O3粉末とアルミナゾルとイオン交換水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーをハニカム担体にウォッシュコートして触媒層を形成するとされている。
【特許文献1】特開2005−161143号公報
【特許文献2】特開2003−126694号公報
【特許文献3】特開2003−220336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2,3から明らかなように、排ガス浄化用触媒にFe成分を含ませること自体は知られているということができる。そこで、本願発明者は、特許文献3に記載されているNiやCoの担持方法に倣って、特許文献1に記載されているRhを粒子内及び粒子表面に固定してなるCe含有酸化物粒子に、硝酸鉄を含浸・乾燥・焼成する手法によって、酸化鉄を担持させた。しかし、得られた触媒は、硝酸鉄による酸化鉄の担持を行わない触媒に比べて、酸素吸蔵放出能及び排気ガス浄化性能が悪い、という結果になった。その原因は、Ce含有酸化物粒子表面に付着した硝酸鉄が、焼成に伴って酸化鉄に変化しながら凝集し、粒径の大きな酸化鉄粒子に成長してしまうこと(本願発明者はその粒径が500nm以上になることを確認している。)、並びにその凝集・粒成長の過程でCe含有酸化物粒子表面のRhが当該酸化鉄粒子に埋没することにあると考えられる。
【0009】
かかる点に鑑み、本発明は、特許文献1に記載されているような排気ガス浄化用触媒に関し、酸化鉄を有効に利用して排気ガス浄化性能を高めることを課題とする。
【0010】
また、別の本発明の課題は、酸化鉄を、上記排気ガスの浄化に利用するだけでなく、担体に触媒層を形成するためのバインダとしても利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために、粒径の小さな微細酸化鉄粒子を上述の如きCe含有酸化物粒子に組み合わせるようにした。
【0012】
すなわち、本発明は、ハニカム担体上に設けられた触媒層内に、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記CeZr系複合酸化物粒子に粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、
上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であることを特徴とする。
【0013】
ここに、上記CeZr系複合酸化物粒子はその二次粒子径が数μmの粒子であるのが通常であるから、このCeZr系複合酸化物粒子に接触している上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子は、CeZr系複合酸化物粒子表面に担持されている触媒貴金属が凝集しようとするときの立体障害となり、該触媒貴金属のシンタリングが抑制される(触媒の耐熱性向上)。
【0014】
また、上記微細酸化鉄粒子の粒径が小さいことにより、該微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との相互作用を生じ易く、この両者が相俟って、触媒の酸素吸蔵放出能が高まる。すなわち、微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との接触点では各々の粒子内酸素が不安定な状態になるため、各々の酸素吸蔵放出能が高くなると考えられる。その結果、触媒貴金属量が少ない場合でも、優れた酸素吸蔵放出能が得られ、当該触媒による排気ガスのHC(炭化水素)やCOの酸化反応が効率良く進む(触媒の早期活性化,排気ガス浄化性能の向上)。また、触媒の使用期間が多少長くなっても(触媒が高温の排気ガスに度々晒されても)、上記酸素吸蔵放出能が低いレベルにまで低下することが避けられる(耐熱性の向上)。
【0015】
また、上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率については、後に実験データで明らかにするが、2質量%未満になると、或いは45質量%を越えると、排気ガス浄化性能が悪化する。2質量%未満では、上述の効果を発現するには微細酸化鉄粒子が不足し、また、45質量%を越えると、酸化鉄の比熱はCeZr系複合酸化物の数倍であるから、触媒の昇温が遅くなるためと考えられる。
【0016】
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率については、後に実験データで明らかにするが、2質量%以下になると、或いは98質量%を越えると、排気ガス浄化性能が悪化する。触媒反応には表面担持触媒貴金属の存在が必要であるところ、2質量%以下では所期の触媒反応を得るのに不足し、98質量%を越えると、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出能が低下するためと考えられる。すなわち、当該比率が98質量%を越えるということは、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出能を高めるためのドープ触媒貴金属量が少なくないことを意味する。
【0017】
上記微細酸化鉄粒子は、上記触媒層において上記CeZr系複合酸化物粒子等を上記担体に保持するバインダの少なくとも一部を構成するものとすることができる。すなわち、触媒一般におけるバインダについては次のように定義することができる。
A.バインダは、担体にウォッシュコートするスラリーに粘性を与えることにより、触媒金属を担持する酸素吸蔵材、その他の助触媒粒子をスラリー中に均一に分散させるとともに、乾燥・焼成前のウォッシュコート層を担体に安定した状態に保持する。
【0018】
そのため、粒径が1nm〜50nm程度のコロイド粒子(水酸化物、含水物、酸化物等)が分散したコロイド溶液(市販のアルミナゾルやコロイダルシリカではコロイド粒子の粒径は10nm〜30nm程度)がバインダとして一般に使用される。
B.バインダは、上記乾燥・焼成後は微粒子となって触媒層に略均一に分散し、上記助触媒粒子間に介在して該助触媒粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにする(アンカー効果)。
【0019】
そのため、乾燥・焼成後において、助触媒粒子よりも粒径が小さな酸化物粒子となって助触媒粒子や担体に固着するものがバインダとして一般に使用される。
C.触媒層に、触媒金属やNOx吸蔵材、HC吸着材等が後から含浸担持されるケースでは、バインダはそれら触媒成分を担持するサポート材となる。
D.バインダ粒子間、バインダ粒子と助触媒粒子との間には排気ガスが通る微細孔が形成される。
E.触媒層におけるバインダ量は、一般には触媒層全体の5質量%〜20質量%とされる。
【0020】
本発明の場合、上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子は、上記CeZr系複合酸化物粒子の平均粒径(数μm程度)よりも小さく、上記触媒層に略均一に分散し、上記CeZr系複合酸化物粒子間に介在して該CeZr系複合酸化物粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにする。このため、当該酸化鉄粒子は上記触媒層においてバインダとしての機能も発揮するものである。
【0021】
上記触媒層のバインダは、上記微細酸化鉄粒子のみで構成するようにしてよいが、安定な触媒層を得るために、この微細酸化鉄粒子の他に、遷移金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物粒子(例えば、アルミナ粒子、ZrO2粒子、CeO2粒子等)をバインダとして含ませるようにすることができる。このようなバインダ粒子(上記微細酸化鉄粒子及び上記金属酸化物粒子)は、担体にウォッシュコートするスラリーに粘性を与えることにより、触媒成分をスラリー中に均一に分散させるとともに、乾燥・焼成前のウォッシュコート層を担体に安定した状態で保持することができるように、前駆体である金属化合物がそれぞれコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることが好ましい。
【0022】
上記微細酸化鉄粒子の少なくとも一部はヘマタイトであることが好ましく、また、上記酸化鉄粒子は、マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイトがコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることが好ましい。
【0023】
上記触媒貴金属としては、Pt、Pd及びRhから選ばれる少なくとも1種を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子に、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、この微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であるから、触媒貴金属量が少ない場合でも、優れた酸素吸蔵放出能が得られ、触媒の早期活性化、排気ガス浄化性能の向上、並びに触媒の耐熱性の向上に有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒の一例として、自動車の排気ガスの浄化に適した三元触媒を模式的に示す。同図において、1は無機酸化物によるハニカム担体のセル壁、2はセル壁1に形成された触媒層である。触媒層2は、酸素吸蔵放出能を持つCeZr系複合酸化物粒子3と、バインダ粒子4と、Fe以外の触媒金属5とを有し、図例では、CeZr系複合酸化物粒子3以外の助触媒粒子として、さらにアルミナ粒子6を有する。なお、触媒層2には、CeZr系複合酸化物粒子3及びアルミナ粒子6以外に、HC吸着材、NOx吸蔵材など他の助触媒粒子を含ませることができる。バインダ粒子4は、CeZr系複合酸化物粒子3及びアルミナ粒子6各々の平均粒径よりも小さな金属酸化物粒子よりなり、少なくとも一部のバインダ粒子4は粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子で構成されている。すなわち、当該微細酸化鉄粒子と他の金属酸化物粒子とを組み合わせてバインダとすることもできる。
【0027】
上記微細酸化鉄粒子を含むバインダ粒子4は、触媒層2の全体にわたって略均一に分散していて、助触媒粒子(CeZr系複合酸化物粒子3、アルミナ粒子6等)間に介在し該助触媒粒子同士を結合している。従って、少なくとも一部の微細酸化鉄粒子はCeZr系複合酸化物粒子3に接触している。また、上記バインダ粒子4は、担体セル壁1の表面ポア(微小凹部ないし細孔)7に充填され、アンカー効果によって触媒層2をセル壁1に保持している。触媒金属5は助触媒粒子(CeZr系複合酸化物粒子3、アルミナ粒子6等)に担持されている。
【0028】
図2は上記CeZr系複合酸化物粒子と微細酸化鉄粒子との関係を示す。このCeZr系複合酸化物粒子は、触媒貴金属がドープされているとともに、その粒子表面にも触媒貴金属が担持されている。そして、このCeZr系複合酸化物粒子に上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接している。ここに、「ドープ」とは、触媒貴金属がCeZr系複合酸化物粒子の結晶格子、結晶格子間、或いは酸素欠損部に配置されていることを意味する。
【0029】
<触媒の調製>
エタノール100mL当たり硝酸第二鉄40.4gを溶かし、90℃から100℃の温度で2時間から3時間の還流を行なうことによって、スラリー状の液体、すなわち、酸化鉄ゾル(バインダ)を得る。CeZr系複合酸化物粉末に酸化鉄ゾル及びイオン交換水を適量混合したスラリーを調製する。必要に応じて、他のバインダを添加する。上記スラリーを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を施す。担体上のコーティング層に触媒金属溶液を含浸させ、乾燥及び焼成を行なう。以上により排気ガス浄化用触媒が得られる。
【0030】
上記スラリーにはアルミナ粉末など他の助触媒材料を加えてもよい。また、触媒金属溶液と共に、NOx吸蔵材となるアルカリ土類金属、希土類金属等の溶液を上記コーティング層に含浸させて当該NOx吸蔵材を担持させるようにしてもよい。また、触媒金属は予めCeZr系複合酸化物粒子等のサポート材に担持させておいてもよい。
【0031】
<酸化鉄粒子の粒径等>
上記酸化鉄ゾルによって得られる微細酸化鉄粒子の粒径を調べるために、上述の触媒貴金属のドープ及び表面担持がなされていないCeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))を準備した。
【0032】
上記酸化鉄ゾルとCeZrNd複合酸化物とイオン交換水とを混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを基材にコーティングし、乾燥(150℃)及び焼成(大気中において500℃の温度に2時間保持)を行なうことにより、触媒材を得た。酸化鉄ゾルとCeZrNd複合酸化物粉末とは、上記焼成後における質量比で、酸化鉄とCeZrNd複合酸化物とが2:8となるように混合した。
【0033】
図3は得られた触媒材の透過電子顕微鏡を用いたSTEM(走査透過)像、図4乃至図6はFe、Zr及びCe各原子の相対濃度分布をマッピングしたものである。図3乃至図6から、CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であること、酸化鉄粒子は粒径が300nm以下であり、50nm以上300nm以下の大きさの複数個の酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子に接触(粒子上に分布)していることがわかる。この場合、当該顕微鏡観察において、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子の酸化鉄粒子総面積に占める面積比率は100%である(つまり、全ての酸化鉄粒子が粒径300nm以下である)ということができる。
【0034】
図7乃至図10は上記触媒材のエージング(酸素を2%、水蒸気を10%含む窒素ガス中で900℃の温度に24時間保持)後でのSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であり、酸化鉄粒子の粒径は300nm以下であり、50nm以上300nm以下の大きさの酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子に複数個接触(粒子上に分布)している。エージング後においても、当該電子顕微鏡観察によれば、全ての酸化鉄粒子の粒径が300nm以下になっている。
【0035】
図11は酸化鉄ゾルを150℃で乾燥したもの(乾燥品)、上記エージング前の触媒材(焼成品)、並びに上記エージング後の触媒材(焼成・エージング品)各々のX線回折チャートである。なお、同図の「OSC」は上記CeZrNd複合酸化物のことを意味する(この点は他の図面でも同様である。)。酸化鉄ゾルは、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、ゲータイト(Fe3+O(OH))及びウスタイト(FeO)がコロイド粒子として分散したものであることがわかる。そして、酸化鉄ゾルのコロイド粒子は焼成によってヘマタイト(α-Fe2O3)になっている。
【0036】
上記エージング前の焼成品におけるヘマタイトの、結晶面(104)のピーク強度を100とする各結晶面の相対ピーク強度は表1に示す通りである。また、上記エージング後のヘマタイトの、結晶面(104)のピーク強度を100とする各結晶面の相対ピーク強度は表2に示す通りである。なお、表中「−」はピーク重複や、ピーク小のために、正確な数値が得られなかったものである。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
エージング後において、X線回折測定によって得られるヘマタイトの各結晶面のピーク強度は、結晶面(104)、結晶面(110)、結晶面(116)の順で小さくなっている。
【0040】
一方、比較のために、上記酸化鉄ゾルに代えて、硝酸第二鉄水溶液を上記CeZrNd複合酸化物粉末に含浸させ、同様の乾燥及び焼成を行なった。硝酸第二鉄とCeZrNd複合酸化物粉末とは、上記焼成後における質量比で、酸化鉄とCeZrNd複合酸化物とが2:8となるように混合した。
【0041】
図12乃至図15は得られた上記硝酸第二鉄による触媒材のSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であるが、酸化鉄粒子の粒径は600〜700nm程度になっている。
【0042】
図16乃至図19は上記硝酸第二鉄による触媒材のエージング(酸化鉄ゾルの場合と同じ条件)後でのSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1.5〜2μm程度であるが、酸化鉄粒子としては、粒径が600〜700nm程度の粒子が1個と、100nm程度の粒子が3個見られる。当該電子顕微鏡観察において、粒径300nm以下の酸化鉄粒子の酸化鉄粒子総面積に占める面積比率は10%未満である。
【0043】
上記酸化鉄ゾルの場合、焼成によって酸化鉄粒子となるコロイド粒子(マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイト)が比較的安定なFe化合物であり、そのために、酸化鉄粒子の粒成長を生じ難い。これに対して、上記硝酸第二鉄の場合は、反応性が高いFeイオンから酸化鉄粒子を生ずるから、粒成長し易い。このことが、上記酸化鉄ゾルから得られる酸化鉄粒子と上記硝酸第二鉄から得られる酸化鉄粒子の粒径の差違となっていると考えられる。
【0044】
<酸素吸蔵放出能>
上記酸化鉄ゾルを用いて調製した触媒サンプルAと、上記硝酸第二鉄を用いて調製した触媒サンプルBと、鉄成分を含まない触媒サンプルCとについて、各々の酸素吸蔵放出能を調べた。但し、いずれのサンプルも触媒金属量は零とした。
【0045】
−触媒サンプルAの調製−
上記CeZrNd複合酸化物と上記酸化鉄ゾルとZrO2バインダとイオン交換水とを混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを担体にコーティングし、乾燥(150℃)及び焼成(大気中において500℃の温度に2時間保持)を行なった。上記スラリーは、上記CeZrNd複合酸化物の担持量が80g/L、上記酸化鉄ゾルによる酸化鉄の担持量が20g/L、上記ZrO2バインダによるZrO2の担持量が10g/Lとなるように調製した。なお、各担持量は上記焼成後における上記担体1L当たりの各成分の量である。担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量25mL)を採用した。
【0046】
−触媒サンプルBの調製−
上記酸化鉄ゾルに代えて硝酸第二鉄水溶液を採用し、他は触媒サンプルAと同じ条件で第2触媒サンプル2を調製した。硝酸第二鉄水溶液による酸化鉄担持量は触媒サンプルAの上記酸化鉄ゾルによる酸化鉄担持量と同じく、20g/Lである。
【0047】
−触媒サンプルCの調製−
上記酸化鉄ゾルを用いず(酸化鉄担持量=0g/L)、上記CeZrNd複合酸化物担持量が100g/L、上記ZrO2バインダによるZrO2の担持量が10g/Lとなるようにする他は、触媒サンプルAと同じ条件で触媒サンプルCを調製した。
【0048】
−酸素吸蔵放出能の評価−
図20は、酸素吸蔵放出量を測定するための試験装置の構成を示す。同図において、符号11は触媒サンプル12を保持するガラス管であり、触媒サンプル12はヒータ13によって所定温度に加熱保持される。ガラス管11の触媒サンプル12よりも上流側には、ベースガスN2を供給しながらO2及びCOの各ガスをパルス状に供給可能なパルスガス発生装置14が接続され、ガラス管11の触媒サンプル12よりも下流側には排気部18が設けられている。ガラス管11の触媒サンプル12よりも上流側及び下流側にはA/Fセンサ(酸素センサ)15,16が設けられている。ガラス管11のサンプル保持部には温度制御用の熱電対19が取付けられている。
【0049】
測定にあたっては、ガラス管11内の触媒サンプル温度を所定値に保ち、ベースガスN2を供給して排気部18から排気しながら、図21に示すようにO2パルス(20秒)とCOパルス(20秒)とを交互に且つ間隔(20秒)をおいて発生させることにより、リーン→ストイキ→リッチ→ストイキのサイクルを繰り返すようにした。ストイキからリッチに切り換えた直後から、図22に示すように、触媒サンプル前後のA/Fセンサ15,16によって得られるA/F値出力差(前側A/F値−後側A/F値)がなくなるまでの時間における、当該出力差をO2量に換算し、これを触媒サンプルのO2放出量(酸素吸蔵放出量)とした。このO2放出量を200℃から600℃までの50℃刻みの各温度で測定した。
【0050】
結果を図23に示す。触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)及び触媒サンプルB(硝酸第二鉄+OSC)のいずれも、酸化鉄を含まない触媒サンプルC(OSCのみ)よりも酸素放出量が多くなっている。(酸化鉄ゾル+OSC)と(硝酸第二鉄+OSC)とを比較すると、250℃〜600℃において、酸化鉄ゾルの方が硝酸第二鉄よりも酸素放出量が多くなっている。
【0051】
図24は(酸化鉄ゾル+OSC)及び(硝酸第二鉄+OSC)の各触媒サンプルのエージング(酸素を2%、水蒸気を10%含む窒素ガス中で900℃の温度に24時間保持)後の酸素放出量を測定した結果を示す。いずれもエージング後は酸素放出量が少なくなっているが、それでも、酸化鉄ゾルの方が硝酸第二鉄よりも酸素放出量が多い。
【0052】
触媒サンプルAの場合は、酸化鉄ゾルによる複数の粒径300nm以下の酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物(OSC)粒子に分散して接触しており(図3乃至図6参照)、そのため、それら酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子と相俟って触媒の酸素吸蔵放出能の向上に有効に働いているものと認められる。これに対して、触媒サンプルBの場合は、硝酸第二鉄による酸化鉄粒子の粒径が大きく(図12乃至図15参照)、そのため、酸化鉄粒子による酸素吸蔵放出能の向上が酸化鉄ゾルによるものに比べて低いものと認められる。
【0053】
図25は上記エージング後の触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)及び触媒サンプルB(硝酸第二鉄+OSC)の酸素放出量(測定温度500℃)を、従来触媒及び実施例触媒各々の当該エージング後の酸素放出量(測定温度500℃)と共に示すグラフである。従来触媒は、上記触媒サンプルC(OSCのみ)においてそのCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属としてPtを1g/L担持させたものである。実施例触媒は、上記触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)においてそのCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属としてPtを1g/L担持させたものである。
【0054】
触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)は、触媒金属PtをCeZrNd複合酸化物粒子に担持させていないにも拘わらず、CeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属Ptを担持させた従来触媒と同程度の酸素放出量になっている。また、触媒サンプルAにおいてCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属Ptを担持させた実施例触媒は、従来触媒に比べて酸素放出量が格段に多くなっている。これらから、酸化鉄ゾルによる粒径の小さな酸化鉄粒子が酸素吸蔵放出能の向上に大きな効果を示すことがわかる。
【0055】
<排気ガス浄化性能>
触媒貴金属としてのRhドープ量及びRh表面担持量が異なる複数種類のCeZrNd複合酸化物粉末を調製し、このCeZrNd複合酸化物粒子量と酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子量との配合比が異なる各種触媒を調製し、排気ガス浄化性能を調べた。
【0056】
−供試触媒の調製方法−
オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸第一セリウム、硝酸ネオジム(III)含水、及び硝酸ロジウム溶液各々の所定量と水とを混合して合計300mLとし、この混合溶液を室温で約1時間撹拌した。この混合溶液を80℃まで加熱昇温させた後、これと28%アンモニア水50mLとを混合した。この混合は、上記混合溶液及びアンモニア水をそれぞれチューブから高速ディスパーザのカップ内に落とし、回転力及びせん断力によって混合攪拌することにより、1秒以内に完了させた。アンモニア水の混合により白濁した溶液を一昼夜放置し、生成したケーキを遠心分離器にかけ、十分に水洗した。この水洗したケーキを約150℃の温度で乾燥させた後、400℃の温度に5時間保持し、次いで500℃の温度に2時間保持するという条件で焼成した。
【0057】
以上により得られた複合酸化物は、Rhを添加して生成され、このRhが複合酸化物の結晶格子、原子間又は酸素欠損部に配置された構造となるので、以下ではRhドープ複合酸化物という。このRhドープ複合酸化物のRhを除く組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比)となるようにした。
【0058】
上記Rhドープ複合酸化物の所定量にイオン交換水及び硝酸ロジウム溶液の所定量を加え、加熱して溶媒を飛ばした(蒸発乾固)。そうして、乾燥後、500℃で2時間の焼成を行なうことによって、Rhドープ複合酸化物の表面にRhを担持させた。そうして、上記Rhドープ複合酸化物を調製するときの硝酸ロジウム溶液の添加量及びRhを表面担持するときの硝酸ロジウム溶液の添加量を適宜調節することにより、Rhドープ量及びRh表面担持量が異なる各種のCeZrNd複合酸化物粉末を得た。
【0059】
得られたCeZrNd複合酸化物粉末に酸化鉄ゾル及びイオン交換水を混合したスラリーを調製し、これをハニカム担体にコーティングし、乾燥及び焼成を施すことにより、CeZrNd複合酸化物粒子の担持量と酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子の担持量が異なる各種の供試触媒を得た。
【0060】
いずれの供試触媒も、Rhドープ量とRh表面担持量との合計量は担体1L当たりが0.15g/Lとなるようにした。また、ハニカム担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を採用した。
【0061】
−排気ガス浄化性能の評価−
各供試触媒にベンチエージング処理を施した。これは、各供試触媒をエンジン排気系に取り付け、(1)A/F=14の排気ガスを15秒間流す→(2)A/F=17の排気ガスを5秒間流す→(3)A/F=14.7の排気ガスを40秒間流す、というサイクルが合計120時間繰り返されるように、且つ触媒入口ガス温度が900℃となるように、エンジンを運転するというものである。
【0062】
しかる後、各供試触媒から担体容量25mLのコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h−1、昇温速度は30℃/分である。
【0063】
結果を表3に示す。この表において、「乾固Rh」は複合酸化物表面に担持されたRhを、「Fe2O3」は酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子を、「CZO」は複合酸化物を、それぞれ意味する。「乾固Rh/総Rh比率」はドープRhと表面担持Rhとの総量に対する表面担持Rhの比率を意味する。
【0064】
【表3】
【0065】
比較例1〜3及び実施例1〜9は、乾固Rh/総Rh比率が同じく33.33質量%で、微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の比率を変化させたケースである(表の「Fe2O3」と「CZO」との比率欄参照)。微細酸化鉄粒子の比率が2質量%以上45質量%以下であれば、T50が280℃以下になって、ライトオフ性能が良いことがわかる。
【0066】
比較例4,5及び実施例10〜13は、上記微細酸化鉄粒子の比率を44.44質量%に固定して、乾固Rh/総Rh比率を変化させたケースである。該比率が2質量%超98質量%以下であれば、T50が280℃以下になって、ライトオフ性能が良いことがわかる。比較例6,7及び実施例14〜17は、上記微細酸化鉄粒子の比率を14.29質量%に固定して、乾固Rh/総Rh比率を変化させたケースである。この場合も、該比率が2質量%超98質量%以下であれば、T50が280℃以下になっている。
【0067】
また、上記実施例1〜17はトータルRh量が0.15g/Lであり、本発明によれば、少ない触媒貴金属量で優れた排気ガス浄化性能が得られるということができる。このトータルの触媒貴金属量は0.1g/L以上3g/L以下とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る排気ガス浄化用触媒を模式的に示す断面図である。
【図2】CeZr系複合酸化物粒子と微細酸化鉄粒子との関係を模式的に示す図である。
【図3】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のSTEM像図である。
【図4】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図5】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図6】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図7】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のSTEM像図である。
【図8】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図9】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図10】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図11】酸化鉄ゾル乾燥品、触媒材(焼成品)及び触媒材エージング品各々のX線回折チャート図である。
【図12】硝酸第二鉄を用いた触媒材のSTEM像図である。
【図13】硝酸第二鉄を用いた触媒材のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図14】硝酸第二鉄を用いた触媒材のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図15】硝酸第二鉄を用いた触媒材のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図16】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のSTEM像図である。
【図17】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図18】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図19】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図20】酸素吸蔵放出量測定装置の構成図である。
【図21】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F及び触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図22】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図23】各触媒サンプルのフレッシュ時における酸素放出量の温度による変化を示すグラフ図である。
【図24】各触媒サンプルのエージング後における酸素放出量の温度による変化を示すグラフ図である。
【図25】各触媒サンプルのエージング後の酸素放出量を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ハニカム担体のセル壁
2 触媒層
3 CeZr系複合酸化物粒子
4 バインダ粒子(酸化鉄粒子)
5 触媒金属
6 アルミナ粒子
7 ポア
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エンジンの排気通路には、Pt、Pd、Rh等の触媒金属を有する排気ガス浄化用触媒が設けられている。この触媒には、エンジン始動時のような排気ガス温度が低いときから排気ガスを浄化できるように早期に活性化することが求められ、また、高速走行等によって排気ガス温度が高い状態が続いた後でも、排気ガスの浄化率が大きく低下しないことが求められる。このような要求を満たすべく、触媒には比較的多量の触媒金属が使用され、例えば三元触媒にあっては、触媒金属の使用量は触媒担体1L当たり1〜2gとされることが多い。
【0003】
しかし、上記触媒金属の多くは希少金属であることから、資源保護等の観点より、触媒の性能を落とすことなく、触媒金属の使用量を少なくする研究開発が進められている。その手法としては大別して2つあり、その一つは、触媒貴金属をサポート材に固定化することであり、他の一つは、触媒貴金属のシンタリングを抑制するために、立体障害となる酸化物を触媒貴金属と共にサポート材に担持することである。
【0004】
前者の一例は特許文献1に記載されている。その例では、酸素吸蔵放出能を有しサポート材となるCe含有酸化物粒子の結晶格子又は結晶格子間に触媒貴金属であるRhが配置され、さらにサポート材表面にRhが後担持されている。これによれば、RhはCe含有酸化物粒子の内部及び表面に固定化され、Rhを有しないCe含有酸化物粒子に比べて、酸素吸蔵放出能(酸素吸蔵放出量及び吸蔵吸蔵放出速度)が飛躍的に高まり、排気ガス浄化性能の向上に大きく寄与することができる。
【0005】
また、後者の例が特許文献2に記載されている。すなわち、この文献2には、CeO2−ZrO2複合酸化物よりなる担体と、該担体に担持されたAl、Ni及びFeから選ばれる少なくとも一種の金属酸化物粒子と、該担体に担持された貴金属とからなる排気ガス浄化用触媒が開示されている。担体上での貴金属の移動を金属酸化物粒子によって規制することにより、貴金属のシンタリングを抑制するというものである。但し、実施例として開示されている金属酸化物粒子はAl2O3のみであり、CeO2−ZrO2複合酸化物と硝酸Al水溶液とを混合し、これにアンモニア水を滴下・中和して沈殿を析出させ、濾過・洗浄・乾燥・焼成を行ない、得られた粉末にPt溶液を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行なうことにより触媒粉末を得るとされている。Ni及びFeについての実施例はない。
【0006】
また、触媒金属量を増大させることなく、酸素吸蔵材の酸素吸蔵放出能を向上させるようにした触媒の一例が特許文献3に記載されている。それは、セリウム酸化物を含む担体と、この担体に担持された遷移金属及び貴金属からなる触媒金属とよりなり、セリウム原子及び貴金属各々に対する遷移金属の原子比を所定の範囲にするというものである。遷移金属としては、Co、Ni及びFeの少なくとも一種が好ましいとされている。但し、実施例として開示されているのはCo及びNiだけであり、Feについての実施例はない。
【0007】
また、特許文献3では、セリアジルコニア固溶体粉末に硝酸Ni(又は硝酸Co)を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行ない、得られた粉末にPt溶液を含浸させ、蒸発乾固、乾燥及び焼成を行なうことにより触媒粉末を得るとされている。そして、この触媒粉末とRh/ZrO2粉末とAl2O3粉末とアルミナゾルとイオン交換水とを混合してスラリーを調製し、このスラリーをハニカム担体にウォッシュコートして触媒層を形成するとされている。
【特許文献1】特開2005−161143号公報
【特許文献2】特開2003−126694号公報
【特許文献3】特開2003−220336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2,3から明らかなように、排ガス浄化用触媒にFe成分を含ませること自体は知られているということができる。そこで、本願発明者は、特許文献3に記載されているNiやCoの担持方法に倣って、特許文献1に記載されているRhを粒子内及び粒子表面に固定してなるCe含有酸化物粒子に、硝酸鉄を含浸・乾燥・焼成する手法によって、酸化鉄を担持させた。しかし、得られた触媒は、硝酸鉄による酸化鉄の担持を行わない触媒に比べて、酸素吸蔵放出能及び排気ガス浄化性能が悪い、という結果になった。その原因は、Ce含有酸化物粒子表面に付着した硝酸鉄が、焼成に伴って酸化鉄に変化しながら凝集し、粒径の大きな酸化鉄粒子に成長してしまうこと(本願発明者はその粒径が500nm以上になることを確認している。)、並びにその凝集・粒成長の過程でCe含有酸化物粒子表面のRhが当該酸化鉄粒子に埋没することにあると考えられる。
【0009】
かかる点に鑑み、本発明は、特許文献1に記載されているような排気ガス浄化用触媒に関し、酸化鉄を有効に利用して排気ガス浄化性能を高めることを課題とする。
【0010】
また、別の本発明の課題は、酸化鉄を、上記排気ガスの浄化に利用するだけでなく、担体に触媒層を形成するためのバインダとしても利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために、粒径の小さな微細酸化鉄粒子を上述の如きCe含有酸化物粒子に組み合わせるようにした。
【0012】
すなわち、本発明は、ハニカム担体上に設けられた触媒層内に、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記CeZr系複合酸化物粒子に粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、
上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であることを特徴とする。
【0013】
ここに、上記CeZr系複合酸化物粒子はその二次粒子径が数μmの粒子であるのが通常であるから、このCeZr系複合酸化物粒子に接触している上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子は、CeZr系複合酸化物粒子表面に担持されている触媒貴金属が凝集しようとするときの立体障害となり、該触媒貴金属のシンタリングが抑制される(触媒の耐熱性向上)。
【0014】
また、上記微細酸化鉄粒子の粒径が小さいことにより、該微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との相互作用を生じ易く、この両者が相俟って、触媒の酸素吸蔵放出能が高まる。すなわち、微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との接触点では各々の粒子内酸素が不安定な状態になるため、各々の酸素吸蔵放出能が高くなると考えられる。その結果、触媒貴金属量が少ない場合でも、優れた酸素吸蔵放出能が得られ、当該触媒による排気ガスのHC(炭化水素)やCOの酸化反応が効率良く進む(触媒の早期活性化,排気ガス浄化性能の向上)。また、触媒の使用期間が多少長くなっても(触媒が高温の排気ガスに度々晒されても)、上記酸素吸蔵放出能が低いレベルにまで低下することが避けられる(耐熱性の向上)。
【0015】
また、上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率については、後に実験データで明らかにするが、2質量%未満になると、或いは45質量%を越えると、排気ガス浄化性能が悪化する。2質量%未満では、上述の効果を発現するには微細酸化鉄粒子が不足し、また、45質量%を越えると、酸化鉄の比熱はCeZr系複合酸化物の数倍であるから、触媒の昇温が遅くなるためと考えられる。
【0016】
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率については、後に実験データで明らかにするが、2質量%以下になると、或いは98質量%を越えると、排気ガス浄化性能が悪化する。触媒反応には表面担持触媒貴金属の存在が必要であるところ、2質量%以下では所期の触媒反応を得るのに不足し、98質量%を越えると、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出能が低下するためと考えられる。すなわち、当該比率が98質量%を越えるということは、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出能を高めるためのドープ触媒貴金属量が少なくないことを意味する。
【0017】
上記微細酸化鉄粒子は、上記触媒層において上記CeZr系複合酸化物粒子等を上記担体に保持するバインダの少なくとも一部を構成するものとすることができる。すなわち、触媒一般におけるバインダについては次のように定義することができる。
A.バインダは、担体にウォッシュコートするスラリーに粘性を与えることにより、触媒金属を担持する酸素吸蔵材、その他の助触媒粒子をスラリー中に均一に分散させるとともに、乾燥・焼成前のウォッシュコート層を担体に安定した状態に保持する。
【0018】
そのため、粒径が1nm〜50nm程度のコロイド粒子(水酸化物、含水物、酸化物等)が分散したコロイド溶液(市販のアルミナゾルやコロイダルシリカではコロイド粒子の粒径は10nm〜30nm程度)がバインダとして一般に使用される。
B.バインダは、上記乾燥・焼成後は微粒子となって触媒層に略均一に分散し、上記助触媒粒子間に介在して該助触媒粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにする(アンカー効果)。
【0019】
そのため、乾燥・焼成後において、助触媒粒子よりも粒径が小さな酸化物粒子となって助触媒粒子や担体に固着するものがバインダとして一般に使用される。
C.触媒層に、触媒金属やNOx吸蔵材、HC吸着材等が後から含浸担持されるケースでは、バインダはそれら触媒成分を担持するサポート材となる。
D.バインダ粒子間、バインダ粒子と助触媒粒子との間には排気ガスが通る微細孔が形成される。
E.触媒層におけるバインダ量は、一般には触媒層全体の5質量%〜20質量%とされる。
【0020】
本発明の場合、上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子は、上記CeZr系複合酸化物粒子の平均粒径(数μm程度)よりも小さく、上記触媒層に略均一に分散し、上記CeZr系複合酸化物粒子間に介在して該CeZr系複合酸化物粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにする。このため、当該酸化鉄粒子は上記触媒層においてバインダとしての機能も発揮するものである。
【0021】
上記触媒層のバインダは、上記微細酸化鉄粒子のみで構成するようにしてよいが、安定な触媒層を得るために、この微細酸化鉄粒子の他に、遷移金属及び希土類金属から選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物粒子(例えば、アルミナ粒子、ZrO2粒子、CeO2粒子等)をバインダとして含ませるようにすることができる。このようなバインダ粒子(上記微細酸化鉄粒子及び上記金属酸化物粒子)は、担体にウォッシュコートするスラリーに粘性を与えることにより、触媒成分をスラリー中に均一に分散させるとともに、乾燥・焼成前のウォッシュコート層を担体に安定した状態で保持することができるように、前駆体である金属化合物がそれぞれコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることが好ましい。
【0022】
上記微細酸化鉄粒子の少なくとも一部はヘマタイトであることが好ましく、また、上記酸化鉄粒子は、マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイトがコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることが好ましい。
【0023】
上記触媒貴金属としては、Pt、Pd及びRhから選ばれる少なくとも1種を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子に、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、この微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であるから、触媒貴金属量が少ない場合でも、優れた酸素吸蔵放出能が得られ、触媒の早期活性化、排気ガス浄化性能の向上、並びに触媒の耐熱性の向上に有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1に、本発明に係る排気ガス浄化用触媒の一例として、自動車の排気ガスの浄化に適した三元触媒を模式的に示す。同図において、1は無機酸化物によるハニカム担体のセル壁、2はセル壁1に形成された触媒層である。触媒層2は、酸素吸蔵放出能を持つCeZr系複合酸化物粒子3と、バインダ粒子4と、Fe以外の触媒金属5とを有し、図例では、CeZr系複合酸化物粒子3以外の助触媒粒子として、さらにアルミナ粒子6を有する。なお、触媒層2には、CeZr系複合酸化物粒子3及びアルミナ粒子6以外に、HC吸着材、NOx吸蔵材など他の助触媒粒子を含ませることができる。バインダ粒子4は、CeZr系複合酸化物粒子3及びアルミナ粒子6各々の平均粒径よりも小さな金属酸化物粒子よりなり、少なくとも一部のバインダ粒子4は粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子で構成されている。すなわち、当該微細酸化鉄粒子と他の金属酸化物粒子とを組み合わせてバインダとすることもできる。
【0027】
上記微細酸化鉄粒子を含むバインダ粒子4は、触媒層2の全体にわたって略均一に分散していて、助触媒粒子(CeZr系複合酸化物粒子3、アルミナ粒子6等)間に介在し該助触媒粒子同士を結合している。従って、少なくとも一部の微細酸化鉄粒子はCeZr系複合酸化物粒子3に接触している。また、上記バインダ粒子4は、担体セル壁1の表面ポア(微小凹部ないし細孔)7に充填され、アンカー効果によって触媒層2をセル壁1に保持している。触媒金属5は助触媒粒子(CeZr系複合酸化物粒子3、アルミナ粒子6等)に担持されている。
【0028】
図2は上記CeZr系複合酸化物粒子と微細酸化鉄粒子との関係を示す。このCeZr系複合酸化物粒子は、触媒貴金属がドープされているとともに、その粒子表面にも触媒貴金属が担持されている。そして、このCeZr系複合酸化物粒子に上記粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接している。ここに、「ドープ」とは、触媒貴金属がCeZr系複合酸化物粒子の結晶格子、結晶格子間、或いは酸素欠損部に配置されていることを意味する。
【0029】
<触媒の調製>
エタノール100mL当たり硝酸第二鉄40.4gを溶かし、90℃から100℃の温度で2時間から3時間の還流を行なうことによって、スラリー状の液体、すなわち、酸化鉄ゾル(バインダ)を得る。CeZr系複合酸化物粉末に酸化鉄ゾル及びイオン交換水を適量混合したスラリーを調製する。必要に応じて、他のバインダを添加する。上記スラリーを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を施す。担体上のコーティング層に触媒金属溶液を含浸させ、乾燥及び焼成を行なう。以上により排気ガス浄化用触媒が得られる。
【0030】
上記スラリーにはアルミナ粉末など他の助触媒材料を加えてもよい。また、触媒金属溶液と共に、NOx吸蔵材となるアルカリ土類金属、希土類金属等の溶液を上記コーティング層に含浸させて当該NOx吸蔵材を担持させるようにしてもよい。また、触媒金属は予めCeZr系複合酸化物粒子等のサポート材に担持させておいてもよい。
【0031】
<酸化鉄粒子の粒径等>
上記酸化鉄ゾルによって得られる微細酸化鉄粒子の粒径を調べるために、上述の触媒貴金属のドープ及び表面担持がなされていないCeZrNd複合酸化物(CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比))を準備した。
【0032】
上記酸化鉄ゾルとCeZrNd複合酸化物とイオン交換水とを混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを基材にコーティングし、乾燥(150℃)及び焼成(大気中において500℃の温度に2時間保持)を行なうことにより、触媒材を得た。酸化鉄ゾルとCeZrNd複合酸化物粉末とは、上記焼成後における質量比で、酸化鉄とCeZrNd複合酸化物とが2:8となるように混合した。
【0033】
図3は得られた触媒材の透過電子顕微鏡を用いたSTEM(走査透過)像、図4乃至図6はFe、Zr及びCe各原子の相対濃度分布をマッピングしたものである。図3乃至図6から、CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であること、酸化鉄粒子は粒径が300nm以下であり、50nm以上300nm以下の大きさの複数個の酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子に接触(粒子上に分布)していることがわかる。この場合、当該顕微鏡観察において、粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子の酸化鉄粒子総面積に占める面積比率は100%である(つまり、全ての酸化鉄粒子が粒径300nm以下である)ということができる。
【0034】
図7乃至図10は上記触媒材のエージング(酸素を2%、水蒸気を10%含む窒素ガス中で900℃の温度に24時間保持)後でのSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であり、酸化鉄粒子の粒径は300nm以下であり、50nm以上300nm以下の大きさの酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子に複数個接触(粒子上に分布)している。エージング後においても、当該電子顕微鏡観察によれば、全ての酸化鉄粒子の粒径が300nm以下になっている。
【0035】
図11は酸化鉄ゾルを150℃で乾燥したもの(乾燥品)、上記エージング前の触媒材(焼成品)、並びに上記エージング後の触媒材(焼成・エージング品)各々のX線回折チャートである。なお、同図の「OSC」は上記CeZrNd複合酸化物のことを意味する(この点は他の図面でも同様である。)。酸化鉄ゾルは、マグヘマイト(γ-Fe2O3)、ゲータイト(Fe3+O(OH))及びウスタイト(FeO)がコロイド粒子として分散したものであることがわかる。そして、酸化鉄ゾルのコロイド粒子は焼成によってヘマタイト(α-Fe2O3)になっている。
【0036】
上記エージング前の焼成品におけるヘマタイトの、結晶面(104)のピーク強度を100とする各結晶面の相対ピーク強度は表1に示す通りである。また、上記エージング後のヘマタイトの、結晶面(104)のピーク強度を100とする各結晶面の相対ピーク強度は表2に示す通りである。なお、表中「−」はピーク重複や、ピーク小のために、正確な数値が得られなかったものである。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
エージング後において、X線回折測定によって得られるヘマタイトの各結晶面のピーク強度は、結晶面(104)、結晶面(110)、結晶面(116)の順で小さくなっている。
【0040】
一方、比較のために、上記酸化鉄ゾルに代えて、硝酸第二鉄水溶液を上記CeZrNd複合酸化物粉末に含浸させ、同様の乾燥及び焼成を行なった。硝酸第二鉄とCeZrNd複合酸化物粉末とは、上記焼成後における質量比で、酸化鉄とCeZrNd複合酸化物とが2:8となるように混合した。
【0041】
図12乃至図15は得られた上記硝酸第二鉄による触媒材のSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1μm程度であるが、酸化鉄粒子の粒径は600〜700nm程度になっている。
【0042】
図16乃至図19は上記硝酸第二鉄による触媒材のエージング(酸化鉄ゾルの場合と同じ条件)後でのSTEM像及び各原子の相対濃度分布のマッピングである。CeZrNd複合酸化物粒子の粒径は1.5〜2μm程度であるが、酸化鉄粒子としては、粒径が600〜700nm程度の粒子が1個と、100nm程度の粒子が3個見られる。当該電子顕微鏡観察において、粒径300nm以下の酸化鉄粒子の酸化鉄粒子総面積に占める面積比率は10%未満である。
【0043】
上記酸化鉄ゾルの場合、焼成によって酸化鉄粒子となるコロイド粒子(マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイト)が比較的安定なFe化合物であり、そのために、酸化鉄粒子の粒成長を生じ難い。これに対して、上記硝酸第二鉄の場合は、反応性が高いFeイオンから酸化鉄粒子を生ずるから、粒成長し易い。このことが、上記酸化鉄ゾルから得られる酸化鉄粒子と上記硝酸第二鉄から得られる酸化鉄粒子の粒径の差違となっていると考えられる。
【0044】
<酸素吸蔵放出能>
上記酸化鉄ゾルを用いて調製した触媒サンプルAと、上記硝酸第二鉄を用いて調製した触媒サンプルBと、鉄成分を含まない触媒サンプルCとについて、各々の酸素吸蔵放出能を調べた。但し、いずれのサンプルも触媒金属量は零とした。
【0045】
−触媒サンプルAの調製−
上記CeZrNd複合酸化物と上記酸化鉄ゾルとZrO2バインダとイオン交換水とを混合することによりスラリーを調製し、このスラリーを担体にコーティングし、乾燥(150℃)及び焼成(大気中において500℃の温度に2時間保持)を行なった。上記スラリーは、上記CeZrNd複合酸化物の担持量が80g/L、上記酸化鉄ゾルによる酸化鉄の担持量が20g/L、上記ZrO2バインダによるZrO2の担持量が10g/Lとなるように調製した。なお、各担持量は上記焼成後における上記担体1L当たりの各成分の量である。担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量25mL)を採用した。
【0046】
−触媒サンプルBの調製−
上記酸化鉄ゾルに代えて硝酸第二鉄水溶液を採用し、他は触媒サンプルAと同じ条件で第2触媒サンプル2を調製した。硝酸第二鉄水溶液による酸化鉄担持量は触媒サンプルAの上記酸化鉄ゾルによる酸化鉄担持量と同じく、20g/Lである。
【0047】
−触媒サンプルCの調製−
上記酸化鉄ゾルを用いず(酸化鉄担持量=0g/L)、上記CeZrNd複合酸化物担持量が100g/L、上記ZrO2バインダによるZrO2の担持量が10g/Lとなるようにする他は、触媒サンプルAと同じ条件で触媒サンプルCを調製した。
【0048】
−酸素吸蔵放出能の評価−
図20は、酸素吸蔵放出量を測定するための試験装置の構成を示す。同図において、符号11は触媒サンプル12を保持するガラス管であり、触媒サンプル12はヒータ13によって所定温度に加熱保持される。ガラス管11の触媒サンプル12よりも上流側には、ベースガスN2を供給しながらO2及びCOの各ガスをパルス状に供給可能なパルスガス発生装置14が接続され、ガラス管11の触媒サンプル12よりも下流側には排気部18が設けられている。ガラス管11の触媒サンプル12よりも上流側及び下流側にはA/Fセンサ(酸素センサ)15,16が設けられている。ガラス管11のサンプル保持部には温度制御用の熱電対19が取付けられている。
【0049】
測定にあたっては、ガラス管11内の触媒サンプル温度を所定値に保ち、ベースガスN2を供給して排気部18から排気しながら、図21に示すようにO2パルス(20秒)とCOパルス(20秒)とを交互に且つ間隔(20秒)をおいて発生させることにより、リーン→ストイキ→リッチ→ストイキのサイクルを繰り返すようにした。ストイキからリッチに切り換えた直後から、図22に示すように、触媒サンプル前後のA/Fセンサ15,16によって得られるA/F値出力差(前側A/F値−後側A/F値)がなくなるまでの時間における、当該出力差をO2量に換算し、これを触媒サンプルのO2放出量(酸素吸蔵放出量)とした。このO2放出量を200℃から600℃までの50℃刻みの各温度で測定した。
【0050】
結果を図23に示す。触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)及び触媒サンプルB(硝酸第二鉄+OSC)のいずれも、酸化鉄を含まない触媒サンプルC(OSCのみ)よりも酸素放出量が多くなっている。(酸化鉄ゾル+OSC)と(硝酸第二鉄+OSC)とを比較すると、250℃〜600℃において、酸化鉄ゾルの方が硝酸第二鉄よりも酸素放出量が多くなっている。
【0051】
図24は(酸化鉄ゾル+OSC)及び(硝酸第二鉄+OSC)の各触媒サンプルのエージング(酸素を2%、水蒸気を10%含む窒素ガス中で900℃の温度に24時間保持)後の酸素放出量を測定した結果を示す。いずれもエージング後は酸素放出量が少なくなっているが、それでも、酸化鉄ゾルの方が硝酸第二鉄よりも酸素放出量が多い。
【0052】
触媒サンプルAの場合は、酸化鉄ゾルによる複数の粒径300nm以下の酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物(OSC)粒子に分散して接触しており(図3乃至図6参照)、そのため、それら酸化鉄粒子がCeZrNd複合酸化物粒子と相俟って触媒の酸素吸蔵放出能の向上に有効に働いているものと認められる。これに対して、触媒サンプルBの場合は、硝酸第二鉄による酸化鉄粒子の粒径が大きく(図12乃至図15参照)、そのため、酸化鉄粒子による酸素吸蔵放出能の向上が酸化鉄ゾルによるものに比べて低いものと認められる。
【0053】
図25は上記エージング後の触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)及び触媒サンプルB(硝酸第二鉄+OSC)の酸素放出量(測定温度500℃)を、従来触媒及び実施例触媒各々の当該エージング後の酸素放出量(測定温度500℃)と共に示すグラフである。従来触媒は、上記触媒サンプルC(OSCのみ)においてそのCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属としてPtを1g/L担持させたものである。実施例触媒は、上記触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)においてそのCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属としてPtを1g/L担持させたものである。
【0054】
触媒サンプルA(酸化鉄ゾル+OSC)は、触媒金属PtをCeZrNd複合酸化物粒子に担持させていないにも拘わらず、CeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属Ptを担持させた従来触媒と同程度の酸素放出量になっている。また、触媒サンプルAにおいてCeZrNd複合酸化物粒子に触媒金属Ptを担持させた実施例触媒は、従来触媒に比べて酸素放出量が格段に多くなっている。これらから、酸化鉄ゾルによる粒径の小さな酸化鉄粒子が酸素吸蔵放出能の向上に大きな効果を示すことがわかる。
【0055】
<排気ガス浄化性能>
触媒貴金属としてのRhドープ量及びRh表面担持量が異なる複数種類のCeZrNd複合酸化物粉末を調製し、このCeZrNd複合酸化物粒子量と酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子量との配合比が異なる各種触媒を調製し、排気ガス浄化性能を調べた。
【0056】
−供試触媒の調製方法−
オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸第一セリウム、硝酸ネオジム(III)含水、及び硝酸ロジウム溶液各々の所定量と水とを混合して合計300mLとし、この混合溶液を室温で約1時間撹拌した。この混合溶液を80℃まで加熱昇温させた後、これと28%アンモニア水50mLとを混合した。この混合は、上記混合溶液及びアンモニア水をそれぞれチューブから高速ディスパーザのカップ内に落とし、回転力及びせん断力によって混合攪拌することにより、1秒以内に完了させた。アンモニア水の混合により白濁した溶液を一昼夜放置し、生成したケーキを遠心分離器にかけ、十分に水洗した。この水洗したケーキを約150℃の温度で乾燥させた後、400℃の温度に5時間保持し、次いで500℃の温度に2時間保持するという条件で焼成した。
【0057】
以上により得られた複合酸化物は、Rhを添加して生成され、このRhが複合酸化物の結晶格子、原子間又は酸素欠損部に配置された構造となるので、以下ではRhドープ複合酸化物という。このRhドープ複合酸化物のRhを除く組成は、CeO2:ZrO2:Nd2O3=23:67:10(質量比)となるようにした。
【0058】
上記Rhドープ複合酸化物の所定量にイオン交換水及び硝酸ロジウム溶液の所定量を加え、加熱して溶媒を飛ばした(蒸発乾固)。そうして、乾燥後、500℃で2時間の焼成を行なうことによって、Rhドープ複合酸化物の表面にRhを担持させた。そうして、上記Rhドープ複合酸化物を調製するときの硝酸ロジウム溶液の添加量及びRhを表面担持するときの硝酸ロジウム溶液の添加量を適宜調節することにより、Rhドープ量及びRh表面担持量が異なる各種のCeZrNd複合酸化物粉末を得た。
【0059】
得られたCeZrNd複合酸化物粉末に酸化鉄ゾル及びイオン交換水を混合したスラリーを調製し、これをハニカム担体にコーティングし、乾燥及び焼成を施すことにより、CeZrNd複合酸化物粒子の担持量と酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子の担持量が異なる各種の供試触媒を得た。
【0060】
いずれの供試触媒も、Rhドープ量とRh表面担持量との合計量は担体1L当たりが0.15g/Lとなるようにした。また、ハニカム担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm2)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を採用した。
【0061】
−排気ガス浄化性能の評価−
各供試触媒にベンチエージング処理を施した。これは、各供試触媒をエンジン排気系に取り付け、(1)A/F=14の排気ガスを15秒間流す→(2)A/F=17の排気ガスを5秒間流す→(3)A/F=14.7の排気ガスを40秒間流す、というサイクルが合計120時間繰り返されるように、且つ触媒入口ガス温度が900℃となるように、エンジンを運転するというものである。
【0062】
しかる後、各供試触媒から担体容量25mLのコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h−1、昇温速度は30℃/分である。
【0063】
結果を表3に示す。この表において、「乾固Rh」は複合酸化物表面に担持されたRhを、「Fe2O3」は酸化鉄ゾルによる微細酸化鉄粒子を、「CZO」は複合酸化物を、それぞれ意味する。「乾固Rh/総Rh比率」はドープRhと表面担持Rhとの総量に対する表面担持Rhの比率を意味する。
【0064】
【表3】
【0065】
比較例1〜3及び実施例1〜9は、乾固Rh/総Rh比率が同じく33.33質量%で、微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の比率を変化させたケースである(表の「Fe2O3」と「CZO」との比率欄参照)。微細酸化鉄粒子の比率が2質量%以上45質量%以下であれば、T50が280℃以下になって、ライトオフ性能が良いことがわかる。
【0066】
比較例4,5及び実施例10〜13は、上記微細酸化鉄粒子の比率を44.44質量%に固定して、乾固Rh/総Rh比率を変化させたケースである。該比率が2質量%超98質量%以下であれば、T50が280℃以下になって、ライトオフ性能が良いことがわかる。比較例6,7及び実施例14〜17は、上記微細酸化鉄粒子の比率を14.29質量%に固定して、乾固Rh/総Rh比率を変化させたケースである。この場合も、該比率が2質量%超98質量%以下であれば、T50が280℃以下になっている。
【0067】
また、上記実施例1〜17はトータルRh量が0.15g/Lであり、本発明によれば、少ない触媒貴金属量で優れた排気ガス浄化性能が得られるということができる。このトータルの触媒貴金属量は0.1g/L以上3g/L以下とすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る排気ガス浄化用触媒を模式的に示す断面図である。
【図2】CeZr系複合酸化物粒子と微細酸化鉄粒子との関係を模式的に示す図である。
【図3】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のSTEM像図である。
【図4】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図5】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図6】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図7】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のSTEM像図である。
【図8】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図9】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図10】酸化鉄ゾルを用いた触媒材のエージング後のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図11】酸化鉄ゾル乾燥品、触媒材(焼成品)及び触媒材エージング品各々のX線回折チャート図である。
【図12】硝酸第二鉄を用いた触媒材のSTEM像図である。
【図13】硝酸第二鉄を用いた触媒材のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図14】硝酸第二鉄を用いた触媒材のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図15】硝酸第二鉄を用いた触媒材のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図16】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のSTEM像図である。
【図17】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のFe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図18】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のZr原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図19】硝酸第二鉄を用いた触媒材のエージング後のCe原子相対濃度分布のマッピング図である。
【図20】酸素吸蔵放出量測定装置の構成図である。
【図21】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F及び触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図22】酸素吸蔵放出量の測定における触媒前後のA/F差の経時変化を示すグラフ図である。
【図23】各触媒サンプルのフレッシュ時における酸素放出量の温度による変化を示すグラフ図である。
【図24】各触媒サンプルのエージング後における酸素放出量の温度による変化を示すグラフ図である。
【図25】各触媒サンプルのエージング後の酸素放出量を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0069】
1 ハニカム担体のセル壁
2 触媒層
3 CeZr系複合酸化物粒子
4 バインダ粒子(酸化鉄粒子)
5 触媒金属
6 アルミナ粒子
7 ポア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム担体上に設けられた触媒層内に、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記CeZr系複合酸化物粒子に粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、
上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記微細酸化鉄粒子は、上記触媒層においてバインダの少なくとも一部を構成していることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記微細酸化鉄粒子の少なくとも一部はヘマタイトであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記微細酸化鉄粒子は、マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイトがコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項1】
ハニカム担体上に設けられた触媒層内に、触媒貴金属がドープされ、且つその表面に触媒貴金属が担持されてなるCeZr系複合酸化物粒子を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記CeZr系複合酸化物粒子に粒径300nm以下の微細酸化鉄粒子が接しており、
上記微細酸化鉄粒子とCeZr系複合酸化物粒子との合計量に対する上記微細酸化鉄粒子の質量比率が2質量%以上45質量%以下であり、
上記ドープされた触媒貴金属と表面に担持された触媒貴金属との総量に対する表面に担持された触媒貴金属の質量比率が2質量%超98質量%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記微細酸化鉄粒子は、上記触媒層においてバインダの少なくとも一部を構成していることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記微細酸化鉄粒子の少なくとも一部はヘマタイトであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記微細酸化鉄粒子は、マグヘマイト、ゲータイト及びウスタイトがコロイド粒子として分散したゾルを原料とすることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【図1】
【図2】
【図11】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図11】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−285622(P2009−285622A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143525(P2008−143525)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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