説明

排気ガス浄化用触媒

【課題】少ない触媒金属量で高い排気ガス浄化性能を得るとともに、高温下での触媒活性の低下を抑える。
【解決手段】排気ガス浄化用触媒は、各々触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなり且つその触媒金属含有率が異なるA−1粒子成分とA−2粒子成分を含有する触媒層を備える。触媒金属含有率が低いA−1粒子成分が、Zr系酸化物担持アルミナ粉末よりなるB粒子成分に担持され、触媒金属含有率が高いA−2粒子成分が、触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末よりなるC粒子成分に担持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン排気ガス中のHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)及びNOx(窒素酸化物)を浄化する排気ガス浄化用触媒(三元触媒)には、一般にPt、Pd、Rh等の触媒金属に加えて、活性アルミナ、Ce含有酸化物等が含まれている。活性アルミナは、耐熱性が高く、且つ比表面積が大であるため、触媒金属のサポート材として従来より利用されており、高温の排気ガスに晒されても、触媒金属を比較的高分散に担持した状態を保つことができる。また、Ce含有酸化物は、排気ガスの酸素濃度の変動に応じて酸素を吸蔵・放出することから、A/Fウインドウ(触媒がHC、CO及びNOxを同時に浄化することができる空燃比の範囲)を拡げる酸素吸蔵放出材として利用されている。
【0003】
上記Ce含有酸化物に関しては、Ce及びZrを含有するCeZr系複合酸化物が知られている。このCeZr系複合酸化物は、セリアに比べて耐熱性が高く、また、Zrの固溶によって結晶が歪み、酸素欠陥が増えるため、セリアに比べても遜色ない酸素吸蔵放出能を発揮する。さらに、CeZr系複合酸化物にNd、Y、La等の希土類金属を固溶したものも知られている。
【0004】
ところで、上記CeZr系複合酸化物としては、一般に粒径が1μm前後のものが触媒に利用されている。このCeZr系複合酸化物粒子表面に触媒金属を蒸発乾固法、含浸担持法等によって物理的に担持すると、酸素吸蔵放出量が増大する。その触媒金属が、CeZr系複合酸化物による酸素の吸蔵・放出が促す媒介になるためと考えられる。その場合でも、CeZr系複合酸化物の酸素吸蔵放出量は理論値からみるとかなり少ない。粒径1μm前後の粒子表層部しか酸素の吸蔵に利用されていないためと考えられる。
【0005】
この点を改善した酸素吸蔵放出材として、CeZr系複合酸化物に触媒金属を固溶させた触媒金属ドープCeZr系複合酸化物が知られている(例えば特許文献1参照)。ここに、ドープとは、触媒金属が当該複合酸化物に固溶して、その結晶格子又は原子間に配置されていることを意味する。この触媒金属ドープCeZr系複合酸化物は、触媒金属をドープしていないCeZr系複合酸化物に比べて、酸素吸蔵放出量及び酸素吸蔵放出速度が飛躍的に向上する。これは、一部の触媒金属は粒子内部にあって、該粒子内部での酸素原子の移動を促すためであると考えられる。すなわち、粒子の表層部だけでなく、粒子内部も酸素の吸蔵・放出に利用されるためであると考えられる。
【0006】
上記触媒金属ドープ複合酸化物によれば、酸素吸蔵放出性能が向上するたけでなく、触媒の触媒金属量を大幅に削減できるメリットをも有する。この触媒金属ドープCeZr系複合酸化物は、上記三元触媒に限らず、希薄燃焼ガソリンエンジンから排出されるNOxを浄化するリーンNOx触媒、或いはディーゼルパティキュレートフィルタに捕集されたPM(パティキュレートマター)を効率的に酸化燃焼させるPM燃焼触媒等に利用することができる。
【0007】
しかし、上記触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粒子の場合、全ての触媒金属が粒子表面に存在するのではなく、一部の触媒金属が粒子表面に露出しているにすぎない。そのため、触媒金属と排気ガスとが接触する機会が少なく、触媒金属のドープによる排気ガス浄化性能の向上にも限界がある。
【0008】
これ対して、本出願人は、一つの解決策を特許文献2で提案している。それは、触媒金属をドープしていない第1複合酸化物(CeZr系複合酸化物)粒子表面に、それよりも粒径が小さな触媒金属ドープ型の第2複合酸化物(CeZr系複合酸化物)粒子を担持するというものである。このような触媒粒子によれば、その内部よりも表面側の触媒金属濃度が高くなるから、触媒金属量が少なくても比較的高い触媒活性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−174490号公報
【特許文献2】特開2006−334490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記触媒金属ドープCeZr系複合酸化物を利用した排気ガス浄化用触媒に関し、さらに排気ガス浄化性能を高めるとともに、高温下での触媒活性の低下も抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、触媒金属の含有率が異なる2種類の触媒金属ドープCeZr系複合酸化物を用い、各々を異なるサポート材に担持させるようにした。
【0012】
すなわち、ここに開示する排気ガス浄化用触媒は、担体上に、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなるA粒子成分と、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末よりなるB粒子成分と、触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末よりなるC粒子成分とを含有する触媒層を備えている。そして、上記A粒子成分として、上記触媒金属ドープCeZr系複合酸化物における触媒金属の含有率が相異なるA−1粒子成分とA−2粒子成分とを有し、A−1粒子成分が上記B粒子成分に担持され、A−2粒子成分が上記C粒子成分に担持されており、上記触媒金属の含有率は、上記A−1粒子成分の方が上記A−2粒子成分よりも低い。
【0013】
かかる構成によれば、B粒子成分(Zr系酸化物担持アルミナ粉末)に担持された触媒金属含有率が低いA−1粒子成分(触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末)と、C粒子成分(触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末)に担持された触媒金属含有率が高いA−1粒子成分(触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末)とが相俟って、優れた排気ガス浄化性能が得られる。
【0014】
上記触媒金属含有率は、上記A−1粒子成分については0.05質量%以上0.3質量%以下程度とし、上記A−2粒子成分については0.4質量%以上1.0質量%以下程度とすることが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態では、上記A粒子成分(A−1粒子成分及びA−2粒子成分)は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布を有する構成とし、上記B粒子成分の個数平均粒径は10μm以上50μmであり、上記C粒子成分の個数平均粒径は0.5μm以上5.0μmである。
【0016】
A粒子成分が100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつということは、その粒径が相当に小さいこと、従って、その比表面積が大きいことを意味する。このため、A粒子成分は、従来の粒径1μm前後のものに比べて優れた酸素吸蔵放出性能を示す。また、粒径が小さいということは、粒子表面への触媒金属の露出量が多いということである。従って、A粒子成分の酸素吸蔵放出性能がさらに優れたものになるとともに、触媒金属が排気ガスと接触し易くなり、排気ガスの浄化に有利になる。
【0017】
また、上記A粒子成分は、上記B粒子成分又はC粒子成分に担持されているため、高温の排気ガスに晒された場合でも、凝集し難い。そのため、触媒の排気ガス浄化性能の低下も軽度になる。この点に関し、特許文献2に記載された触媒粒子の場合も、その触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粒子は大きな粒径のCeZr系複合酸化物粒子に担持されているが、上記A粒子成分が上記粒度分布をもつときは、特許文献2の触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粒子とは違って、上記凝集防止にさらに有利になる。
【0018】
すなわち、特許文献2の触媒粒子は、Ce、Zr及び触媒金属の各硝酸塩が溶解した水溶液に第1複合酸化物粉末を分散させ、これにアンモニア水を添加することにより、第1複合酸化物粒子表面に触媒金属ドープCeZr系複合酸化物の前駆体を析出させ、その後に乾燥及び焼成処理を行なうことによって得られている。この製法の場合、第1複合酸化物粒子表面に担持される触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粒子は、例えば粒径が数十nm以下の極めて小さい微粒子となり、表面エネルギーが高くなる。その結果、高温下では当該触媒粒子表面の触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粒子同士が凝集し、触媒活性が低下すると考えられる。
【0019】
これに対して、上記のような粒度分布をA粒子成分では、表面エネルギーが過度に高くなることがなく、高温の排気ガスに晒されたときの凝集も軽度になる。
【0020】
好ましい実施形態では、上記触媒層が、さらに、Laを含有する活性アルミナ粉末よりなるD粒子成分を含有し、該D粒子成分に上記A−1粒子成分及び上記A−2粒子成分の少なくとも一方が担持されている。これにより、触媒の排気ガス浄化性能の向上にさらに有利になる。D粒子成分の個数平均粒径は、5μm以上30μm以下とすることが好ましい。
【0021】
また、上記A−1粒子成分及び上記A−2粒子成分は共に、CeOとZrOとの合計量に占めるCeO量の割合が30質量%以上75質量%以下であることが好ましい。これにより、高い排気ガス浄化性能を得ることができる。上記CeO量の割合は40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
上述の如く、触媒金属をドープしてなるA粒子成分がB粒子成分やC粒子成分、或いはD粒子成分に担持されているから、B粒子成分ないしD粒子成分に触媒金属を別途担持させることは不要になる。すなわち、当該触媒層の触媒金属としては、上記A粒子成分のCeZr系複合酸化物粒子に固溶している触媒金属のみとすることができ、B粒子成分ないしD粒子成分に触媒金属を別途担持しなくても、高い触媒活性が得られる。よって、触媒層全体としての触媒活性を落とすことなく、触媒金属量を削減することができる。
【0023】
また、上記A粒子成分を、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ構成とすると、B粒子成分等の他の粒子成分同士を結合し、さらに、触媒層を担体に結合するバインダとしても機能する。従って、好ましい実施形態では、上記A粒子成分が上記触媒層においてバインダの少なくとも一部を構成している。
【0024】
上記A粒子成分のCeZr系複合酸化物については、さらに、Ce以外の希土類金属を固溶させることができ、そのような希土類金属としては、例えば、Y、Nd、Pr、La等がある。また、上記触媒金属としては、例えば、Pd、Pt、Rh、In、Au、Agがあげられる。
【0025】
上記担体上には、上記A粒子成分ないしC粒子成分を含有する上記触媒層の他に、或いはA粒子成分ないしC粒子成分に加えてD粒子成分を含有する上記触媒層の他に、活性アルミナ等のサポート材にPt等の触媒金属を担持させた別の触媒層を1層又は複数層設け、該触媒層と上記触媒層とを積層した構造とすることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明に係る排気ガス浄化用触媒によれば、触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなるA粒子成分と、Zr系酸化物担持アルミナ粉末よりなるB粒子成分と、触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末よりなるC粒子成分とを含有する触媒層を備え、A粒子成分として、触媒金属の含有率が相異なるA−1粒子成分とA−2粒子成分とを有し、A−1粒子成分が上記B粒子成分に担持され、A−2粒子成分が上記C粒子成分に担持されており、上記触媒金属の含有率は、上記A−1粒子成分の方が上記A−2粒子成分よりも低いから、優れた排気ガス浄化性能が得られるとともに、高温の排気ガスに晒されたとの触媒性能の低下も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】Rhドープ材の粒度分布を示すグラフ図である。
【図2】A−1粒子成分を含有する触媒及び比較触媒のHC浄化に関するライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図3】A−1粒子成分を含有する触媒及び比較触媒のCeO/(CeO+ZrO)質量比が25%であるときのHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図4】同質量比が50%であるときのHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図5】A−2粒子成分を含有する触媒及び比較触媒のHC浄化に関するライトオフ温度を示すグラフ図である。
【図6】A−2粒子成分を含有する触媒のCeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるときのHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
本実施形態に係る排気ガス浄化用触媒は、自動車のガソリンエンジンが理論空燃比付近で運転されるときの排気ガスに含まれるHC、CO及びNOxを同時に浄化する三元触媒としての利用に適したものであり、例えばコージェライト製のハニカム担体(ハニカム担体としては公知のメタル担体であってもよい。)のセル壁に触媒層が形成されてなる。その触媒層はA粒子成分、B粒子成分及びC粒子成分を含有し、場合によってはD粒子成分をさらに含有する。
【0030】
A粒子成分は、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなる。B粒子成分は、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末よりなる。C粒子成分は、触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末よりなる。D粒子成分は活性アルミナ粉末よりなる。
【0031】
A粒子成分としては、上記触媒金属ドープCeZr系複合酸化物における触媒金属の含有率が相異なるA−1粒子成分及びA−2粒子成分の2種類があり、上記触媒金属含有率は、上記A−1粒子成分の方が上記A−2粒子成分よりも低い。そして、触媒金属含有率が低いA−1粒子成分が上記B粒子成分に担持され、触媒金属含有率が高いA−2粒子成分が上記C粒子成分に担持されている。上記D粒子成分を触媒層に設ける場合には、A−1粒子成分及びA−2粒子成分の少なくとも一方がD粒子成分に担持されるようにすることができる。
【0032】
A粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、且つ上記CeZr系複合酸化物のCeOとZrOとの合計量に占めるCeO量の割合が30質量%以上75質量%以下である。B粒子成分の個数平均粒径は10μm以上50μm以下、C粒子成分の個数平均粒径は0.5μm以上5.0μm以下、D粒子成分の個数平均粒径は5μm以上30μm以下である。
【0033】
上記触媒層においては、A粒子成分は、触媒成分として機能する一方、B粒子成分乃至D粒子成分間に介在してそれら粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにするバインダとしても機能する。
【0034】
<粒子成分の組み合わせ効果>
種々の粒子成分を準備し、粒子成分の組み合わせが排気ガス浄化性能に与える効果を調べた。
【0035】
[A粒子成分の調製]
硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なう。これにより、A粒子成分の上記粒径範囲よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ従来型RhドープCeZr系複合酸化物粉末が得られる。その粒度分布については後述する。以下では、「RhドープCeZr系複合酸化物粉末」を適宜「Rhドープ材」という。
【0036】
そうして、上記A粒子成分(ピーク粒径が小さいRhドープ材)は、上記従来型Rhドープ材を湿式粉砕することによって得る。すなわち、従来型Rhドープ材にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)。これにより、粒径が小さくなったA粒子成分が分散したRhドープCeZrNdゾルを得ることができる。
【0037】
図1はA粒子成分(ピーク粒径小のRhドープ材)とピーク粒径大の従来型Rhドープ材の粒度分布(頻度分布)を示す。いずれのRhドープ材も、Rhを除く組成は、CeO:ZrO:Nd=45:45:10(質量比)であり、Rh含有率は0.6質量%である。粒度分布の測定には、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。
【0038】
A粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有し、従来型Rhドープ材は550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する。A粒子成分の場合、累積分布10質量%粒径が107nm、累積分布50質量%粒径が184nm、累積分布90質量%粒径が287nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は100nm以上であり、累積分布90質量%粒径は300nm以下である。従来型Rhドープ材の場合、累積分布10質量%粒径が576nm、累積分布50質量%粒径が848nm、累積分布90質量%粒径が1160nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は550nm以上であり、累積分布90質量%粒径は1200nm以下である。
【0039】
上記調製法により、Rh含有率が0.1質量%である6種類のA−1粒子成分のゾルと、Rh含有率が0.6質量%である6種類のA−2粒子成分のゾルとを調製した。それら6種類は、CeO/(CeO+ZrO)質量比が相異なるものであり、当該質量比が25%、30%、40%、50%、60%及び75%の6種類である。いずれも、Rhを除く組成は、(CeO+ZrO):Nd=90:10(質量比)である。
【0040】
[A−1とB、C又はDとの組み合わせ]
−A−1/B触媒の調製−
A−1/B触媒は、A−1粒子成分とB粒子成分とを組み合わせてなる触媒である。
【0041】
B粒子成分として、個数平均粒径33μmのZr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al)を採用した。このZrLa/Alは、ZrとLaとを含有するZrLa複合酸化物が活性アルミナ粒子の表面に担持されてなるものであり、次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、ZrLa/Alを得た。その組成は、ZrO:La:Al=38:2:60(質量比)である。
【0042】
上記6種類のA−1粒子成分のゾル各々と上記B粒子成分(ZrLa/Al)とをイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、6種類のA−1/B触媒(A−1ゾル/(ZrLa/Al))を得た。この触媒の触媒層では、触媒成分であるA−1粒子成分がバインダとしても機能している。
【0043】
各成分の担体1L当たりの担持量は、A−1粒子成分が40g/L、B粒子成分が70g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内にドープされた量)である。担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いた。この担体に関しては、後述の他の触媒も同じである。
【0044】
−A−1/C触媒の調製−
A−1/C触媒は、A−1粒子成分とC粒子成分とを組み合わせてなる触媒である。
【0045】
C粒子成分として、触媒金属が固溶していない個数平均粒径2.5μmの触媒金属非ドープ型CeZr系複合酸化物粉末(CeZrNdO)を採用した。このCeZrNdOは、硝酸ロジウム溶液を原料溶液に添加しないことを除いては従来型Rhドープ材と同様の方法によって調製した。その組成は、CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比)である。
【0046】
そうして、上記6種類のA−1粒子成分(ゾル)各々とC粒子成分としての上記CeZrNdOとを用い、A−1/B触媒と同じ方法で、6種類のA−1/C触媒(A−1ゾル/CeZrNdO)を得た。各成分の担持量は、A−1粒子成分が40g/L、C粒子成分が70g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内にドープされた量)である。
【0047】
−A−1/D触媒の調製−
A−1/D触媒は、A−1粒子成分とD粒子成分とを組み合わせてなる触媒である。
【0048】
D粒子成分として、Laを4質量%含有する個数平均粒径13.8μmの活性アルミナ粉末(La−Al)を採用した。すなわち、上記6種類のA−1粒子成分(ゾル)各々とD粒子成分としてのLa−Alとを用い、A−1/B触媒と同じ方法で、6種類のA−1/D触媒(A−1ゾル/La−Al)を得た。各成分の担持量は、A−1粒子成分が40g/L、D粒子成分が70g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内にドープされた量)である。
【0049】
−比較触媒1−
この比較触媒1は、ピーク粒径小のA−1粒子成分ではなく、上記ピーク粒径大の従来型Rhドープ材を硝酸ジルコニルバインダと共に担体に担持させて触媒層を形成したものである。この触媒層には、先に説明した触媒とは違って、B、C及びDの各粒子成分は含まれていない。
【0050】
すなわち、CeO/(CeO+ZrO)質量比がそれぞれ25%、30%、40%、50%、60%及び75%である6種類の従来型Rhドープ材を調製した。いずれも、Rh含有率は0.1質量%であり、Rhを除く組成は、(CeO+ZrO):Nd=90:10(質量比)である。そして、この6種類の従来型Rhドープ材各々と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、6種類の比較触媒1(従来型Rhドープ)を得た。従来型Rhドープ材の担持量は40g/L、バインダ担持量は5g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=従来型Rhドープ材内にドープされた量)である。
【0051】
[排気ガス浄化性能]
上記A−1/B、A−1/C及びA−1/Dの各触媒及び比較触媒1にベンチエージング処理を施した。これは、各触媒をエンジン排気系に取り付け、(1)A/F=14の排気ガスを1分間流す→(2)A/F=13.5の排気ガスを1分間流す→(3)A/F=14.7の排気ガスを2分間流す、というサイクルが合計50時間繰り返されるように、かつ触媒入口ガス温度が900℃となるように、エンジンを運転するというものである。
【0052】
しかる後、各触媒から担体容量約25mL(直径25.4mm,長さ50mm)のコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HCの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h−1、昇温速度は30℃/分である。A/F=14.7、A/F=13.8及びA/F=15.6のときのガス組成を表1に示し、ライトオフ温度T50の測定結果を図2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
図2によれば、A−1/B触媒(A−1ゾル/(ZrLa/Al))は、CeO/(CeO+ZrO)質量比が30%以上75%以下の範囲で優れたライトオフ性能を示している。また、同質量比が30%以上60%以下の範囲では、A−1/B触媒及びA−1/D触媒(A−1ゾル/La−Al)は、A−1/C触媒(A−1ゾル/CeZrNdO)及び比較触媒(従来型Rhドープ)よりも、ライトオフ温度が低くなっている。A−1/C触媒(A−1ゾル/CeZrNdO)は、ピーク粒子径小のRhドープ材を用いているにも拘わらず、A−1/B触媒及びA−1/D触媒とは違って、ライトオフ性能が芳しくない。
【0055】
また、A−1/B触媒、A−1/C触媒、及びA−1/D触媒は比較触媒1よりも触媒層質量が大きい、つまり熱容量が大きく、この点でライトオフ性能としては不利と考えられるが、それとは逆の結果が得られたことは、A−1/B触媒、A−1/C触媒、及びA−1/D触媒それぞれが優れたライトオフ性能を示していると云うことができる。
【0056】
図3はCeO/(CeO+ZrO)質量比が25%であるときの上記各触媒のHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示し、図4はCeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるときの上記各触媒のHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示す。ライトオフ温度の測定条件は図2のケースと同じである。
【0057】
上記質量比が25%であるとき(図3)は各触媒の性能に大差はないが、上記質量比が50%になると(図4)、HCだけでなく、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ性能に関しても、A−1/C触媒(A−1ゾル/CeZrNdO)は芳しくない。
【0058】
[A−2とB、C又はDとの組み合わせ]
次にRh含有率0.1質量%のA−1粒子成分(ゾル)に代えて、Rh含有率0.6質量%のA−2粒子成分(ゾル)を採用し、これとB、C又はDの各粒子成分とを組み合わせたときの排気ガス浄化性能をみる。なお、以下のA−2/B触媒、A−2/C触媒、A−2/D触媒、及びA−2/(B+C+D)触媒では、比較触媒2〜5の担持質量を同じにするために硝酸ジルコニルバインダを加えた。
【0059】
−A−2/B触媒の調製−
A−1粒子成分(ゾル)に代えて、CeO/(CeO+ZrO)質量比が相異なる6種類のA−2粒子成分(ゾル)を採用し、A−1/B触媒と同じ方法で、6種類のA−2/B触媒(A−2ゾル/(ZrLa/Al))を得た。但し、担体1L当たりのRh担持量を0.04g/Lとするために、A−2粒子成分の担持量は6.7g/Lとした。B粒子成分の担持量は70g/Lである。バインダ量は8g/Lである。
【0060】
−A−2/C触媒の調製−
A−1粒子成分(ゾル)に代えて、上記6種類のA−2粒子成分(ゾル)を採用し、A−1/C触媒と同じ方法で、6種類のA−2/C触媒(A−2ゾル/CeZrNdO)を得た。この場合も、A−2粒子成分の担持量は6.7g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−2粒子成分内にドープされた量)であり、C粒子成分担持量は70g/L、バインダ量は8g/Lである。
【0061】
−A−2/D触媒の調製−
A−1粒子成分(ゾル)に代えて、上記6種類のA−2粒子成分(ゾル)を採用し、A−1/D触媒と同じ方法で、6種類のA−2/D触媒(A−2ゾル/La−Al)を得た。この場合も、A−2粒子成分の担持量は6.7g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A粒子成分内にドープされた量)であり、D粒子成分担持量は70g/L、バインダ量は8g/Lである。
【0062】
−A−2/(B+C+D)触媒の調製−
A−2/(B+C+D)触媒は、A−2粒子成分と上記B粒子成分、C粒子成分及びD粒子成分の3種とを組み合わせてなる触媒である。すなわち、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−2粒子成分(ゾル)と上記3種の粒子成分とを用い、A−2/B触媒と同じ方法で、A−2/(B+C+D)触媒を得た。各成分の担持量は、A−2粒子成分が6.7g/L、B粒子成分、C粒子成分及びD粒子成分の3種合計が70g/L(3種の割合は1:1:1(質量比))であり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−2粒子成分内にドープされた量)、バインダ量は8g/Lである。
【0063】
−比較触媒2−
この比較触媒は、ピーク粒径小のA−2粒子成分に代えて、ピーク粒径大の上記従来型Rhドープ材を採用し、B粒子成分としてA−2/B触媒と同じくZr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al)を採用したものである。
【0064】
すなわち、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%である従来型Rhドープ材とB粒子成分(ZrLa/Al)と硝酸ジルコニルバインダとをイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、比較触媒2(従来型Rhドープ/(ZrLa/Al))を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、従来型Rhドープ材が6.7g/L、B粒子成分が70g/L、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=従来型Rhドープ材内にドープされた量)である。
【0065】
−比較触媒3−
この比較触媒は、C粒子成分として、A−2/C触媒と同じく触媒金属非ドープ型CeZr系複合酸化物粉末(CeZrNdO)を採用したものであり、他は比較触媒2と同様にして比較触媒3(従来型Rhドープ/CeZrNdO)を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、従来型Rhドープ材が6.7g/L、C粒子成分が70g/L、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=従来型Rhドープ材内にドープされた量)である。
【0066】
−比較触媒4−
この比較触媒は、D粒子成分として、A−2/D触媒と同じく活性アルミナ粉末(La−Al)を採用したものであり、他は比較触媒2と同様にして比較触媒4(従来型Rhドープ/La−Al)を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、従来型Rhドープ材が6.7g/L、D粒子成分が70g/L、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=従来型Rhドープ材内にドープされた量)である。
【0067】
−比較触媒5−
この比較触媒は、従来型Rhドープ材と、活性アルミナ粉末(La−Al)、Zr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al)及び触媒金属非ドープ型CeZr系複合酸化物粉末(CeZrNdO)の3種混合とを組み合わせたものであり、他は比較触媒2と同様にして比較触媒5(従来型Rhドープ/(B+C+D))を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、従来型Rhドープ材が6.7g/L、B粒子成分、C粒子成分及びD粒子成分の3種合計が70g/L(3種の割合は1:1:1(質量比))であり、バインダが8g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=従来型Rhドープ材内にドープされた量)である。
【0068】
[排気ガス浄化性能]
上記A−2/B、A−2/C、A−2/D及びA−2/(B+C+D)の各触媒及び比較触媒2〜5について、図2のケースと同じ条件でHCの浄化に関するライトオフ温度を測定した。結果を図5に示す。
【0069】
A−2/B、A−2/C、A−2/D及びA−2/(B+C+D)の各触媒は、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるとき、同じ質量比の比較触媒2〜5よりもライトオフ温度が低くなっている。これは、A−2粒子成分(ピーク粒径小のRhドープ材)がピーク粒径大の従来型Rhドープ材に比べて優れた酸素吸蔵放出性能を有すること、粒径が小さいA−2粒子成分が触媒層内で広く均一にに分散され、しかも一部のA−2粒子成分が粒径が大きなB、C又はDの粒子成分に付着しその分散性が高いため、排気ガスと接触し易いこと、そして、シンタリングを生じ難いことによると考えられる。
【0070】
注目すべきはA−2/C触媒である。すなわち、先に説明したRh含有率が0.1質量%であるA−1粒子成分の場合は、触媒金属非ドープ型CeZr系複合酸化物粉末(CeZrNdO)と組み合わせたとき(A−1/C触媒)、ライトオフ性能が良くなかった。これに対して、図5に示すRh含有率が0.6質量%であるケース(A−2/C触媒)では、A−2/B及びA−2/Dの各触媒と同様に優れたライトオフ性能を示している。
【0071】
次にCeO/(CeO+ZrO)質量比の違いが触媒性能に及ぼす影響をみると、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるときにライトオフ温度が最も低くなっており、当該質量比が30%以上75%以下であるとき、特に40質量%以上60質量%以下であるときに良好な排気ガス浄化性能が得られることがわかる。
【0072】
図6はCeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるときのA−2/B、A−2/C及びA−2/D各触媒のHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を示す。ライトオフ温度の測定条件は図2のケースと同じである。これによれば、HCだけでなく、CO及びNOxの浄化に関しても、それら触媒は優れたライトオフ性能を示すことがわかる。
【0073】
<本発明に係る実施例及び比較例>
次に上述の粒子成分の組み合わせ効果に関する知見を踏まえて構成した実施例及び比較例の排気ガス浄化用触媒について説明する。
【0074】
−実施例1−
この実施例は、A−1/B触媒成分とA−2/C触媒成分とを組み合わせてなる排気ガス浄化用触媒である。
【0075】
すなわち、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−1粒子成分(Rh含有率が0.1質量%であるピーク粒径小のRhドープ材)のゾルと、B粒子成分(Zr系酸化物担持アルミナ粉末(ZrLa/Al))とを、上記A−1/B触媒と同じ質量比(A−1粒子成分40g,B粒子成分70g)で混合し、その水分を蒸発させ、粉砕することにより、A−1/B触媒成分を得た。A−1粒子成分の一部がB粒子成分に担持され、A−1粒子成分の残りはB粒子成分に担持されることなく粉末状態になった。
【0076】
同様にCeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−2粒子成分(Rh含有率が0.6質量%であるピーク粒径小のRhドープ材)のゾルと、C粒子成分(触媒金属非ドープ型CeZr系複合酸化物粉末(CeZrNdO))とを、上記A−2/C触媒と同じ質量比(A−2粒子成分6.7g,C粒子成分70g)で混合し、その水分を蒸発させ、粉砕することにより、A−2/C触媒成分を得た。A−2粒子成分の殆どがC粒子成分に担持された状態になった。
【0077】
上記A−1/B触媒成分とA−2/C触媒成分とをイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、実施例1に係る排気ガス浄化用触媒を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、A−1粒子成分が20g/L、B粒子成分が35g/L、A−2粒子成分が3.35g/L、C粒子成分が35g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内及びA−2粒子成分内にドープされた量)である。実施例1では、B粒子成分に担持されていないA−1粒子成分、並びにC粒子成分に担持されていないA−2粒子成分が触媒層のバインダ機能を果たしている。
【0078】
−比較例1−
CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−1粒子成分のゾル、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−2粒子成分のゾル、B粒子成分及びC粒子成分をイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、比較例1に係る排気ガス浄化用触媒を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、実施例1と同じく、A−1粒子成分が20g/L、B粒子成分が35g/L、A−2粒子成分が3.35g/L、C粒子成分が35g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内及びA−2粒子成分内にドープされた量)である。
【0079】
−実施例2−
CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−1粒子成分のゾルと、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−2粒子成分のゾルと、D粒子成分とを、A−1粒子成分6.7g、A−2粒子成分1.12g、D粒子成分23.4gの質量比で混合し、その水分を蒸発させ、粉砕することにより、(A−1,A−2)/D触媒成分を得た。そして、上記A−1/B触媒成分、A−2/C触媒成分及び(A−1,A−2)/D触媒成分をイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、実施例2に係る排気ガス浄化用触媒を得た。
【0080】
各成分の担体1L当たりの担持量は、A−1粒子成分が20g/L、A−2粒子成分が3.35g/L、B粒子成分が23.3g/L、C粒子成分が23.3g/L、D粒子成分が23.4g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内及びA−2粒子成分内にドープされた量)である。A−1粒子成分20g/L中、A−1/B触媒成分によるA−1粒子成分量は13.3g/L、(A−1,A−2)/D触媒成分によるA−1粒子成分量が6.7g/Lである。A−2粒子成分3.35g/L中、A−2/C触媒成分によるA−2粒子成分量は2.23g/L、(A−1,A−2)/D触媒成分によるA−2粒子成分量が1.12g/Lである。
【0081】
この実施例2においても、B粒子成分等に担持されていないA−1粒子成分、並びにC粒子成分等に担持されていないA−2粒子成分が触媒層のバインダ機能を果たしている。
【0082】
−比較例2−
CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−1粒子成分のゾル、CeO/(CeO+ZrO)質量比が50%であるA−2粒子成分のゾル、B粒子成分、C粒子成分及びD粒子成分をイオン交換水と共に混合してスラリー化した。これを担体にコーティングし、乾燥及び焼成を行なうことにより、比較例2に係る排気ガス浄化用触媒を得た。各成分の担体1L当たりの担持量は、実施例2と同じく、A−1粒子成分が20g/L、A−2粒子成分が3.35g/L、B粒子成分が23.3g/L、C粒子成分が23.3g/L、D粒子成分が23.4g/Lであり、当該触媒層内のRh含有量は0.04g/L(=A−1粒子成分内及びA−2粒子成分内にドープされた量)である。
【0083】
[排気ガス浄化性能]
実施例1,2及び比較例1,2の各触媒について、図2のケースと同じ条件でHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
実施例1と比較例1との比較、並びに実施例2と比較例2との比較から、A−1粒子成分、A−2粒子成分、B粒子成分及びC粒子成分を単に混在させるのではなく、A−1粒子成分をB粒子成分に担持させ、A−2粒子成分をC粒子成分に担持させる構成(A−1/B触媒成分+A−2/C触媒成分)にすると、触媒のライトオフ性能が高くなることがわかる。また、実施例1と実施例2との比較から、A−1粒子成分及びA−2粒子成分各々一部をD粒子成分に担持させると、ライトオフ性能がさらに向上することがわかる。
【0086】
ところで、Rh含有率0.1質量%のA−1粒子成分と、Rh含有率0.6質量%のA−2粒子成分とを比較すると、図2乃至図6から明らかなように、触媒のRh担持量を同じにするのであれば、Rh含有率が高いA−2粒子成分を用いる方が排気ガス浄化性能の向上に有利である。しかし、A粒子成分としてA−2粒子成分のみを用いるのであれば、そのRh含有率が高いため、触媒のA−2粒子成分の担持量が少なくなる。例えば、触媒のRh担持量を0.04g/Lにするときは、上述の如くA−2粒子成分の担持量が6.7g/Lである。従って、A−2粒子成分をB粒子成分やC粒子成分、或いはD粒子成分に担持させると、バインダとして利用できるA−2粒子成分量が非常に少なくなる。
【0087】
これに対して、A−1粒子成分の場合、Rh含有率が低い分、触媒における当該成分の担持量が多くなる。すなわち、A−1粒子成分をB粒子成分やC粒子成分、或いはD粒子成分に担持させる場合でも、それらB粒子成分等に担持しきれない余剰のA−1粒子成分が得られ、これをバインダとして利用することができる。ここに本発明がRh含有率が異なるA−1粒子成分とA−2粒子成分とを用いる利点の一つがある。
【0088】
しかし、A−1粒子成分をC粒子成分に担持させた場合、余剰A−1粒子成分をバインダとして利用することができるものの、図2及び図4から明らかなように、排気ガス浄化性能の点で不利になる。そこで、C粒子成分に対しては排気ガス浄化性能の向上に有利なRh含有率が高いA−2粒子成分を担持させ、B粒子成分にA−粒子成分を担持させるようにしている。
【0089】
よって、上述の如き構成の採用により、一部のA粒子成分をバインダとして利用しながら、触媒の排気ガス浄化性能を高めることができることになる。
【0090】
なお、触媒層には、A−2粒子成分をB粒子成分に担持させてなるA−2/B触媒成分を含ませるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上に、CeZr系複合酸化物に触媒金属が固溶している触媒金属ドープCeZr系複合酸化物粉末よりなるA粒子成分と、活性アルミナ粒子にZr系酸化物が担持されたZr系酸化物担持アルミナ粉末よりなるB粒子成分と、触媒金属が固溶していないCeZr系複合酸化物粉末よりなるC粒子成分とを含有する触媒層を備えている排気ガス浄化用触媒であって、
上記A粒子成分として、上記触媒金属ドープCeZr系複合酸化物における触媒金属の含有率が相異なるA−1粒子成分とA−2粒子成分とを有し、A−1粒子成分が上記B粒子成分に担持され、A−2粒子成分が上記C粒子成分に担持されており、
上記触媒金属の含有率は、上記A−1粒子成分の方が上記A−2粒子成分よりも低いことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記触媒層は、さらに、Laを含有する活性アルミナ粉末よりなるD粒子成分を含有し、該D粒子成分に上記A−1粒子成分及び上記A−2粒子成分の少なくとも一方が担持されていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記A−1粒子成分及び上記A−2粒子成分は共に、CeOとZrOとの合計量に占めるCeO量の割合が30質量%以上75質量%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
上記A−1粒子成分及び上記A−2粒子成分は共に、CeOとZrOとの合計量に占めるCeO量の割合が40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記触媒層に含まれている触媒金属は、上記A粒子成分の上記CeZr系複合酸化物に固溶している触媒金属のみであることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−255273(P2011−255273A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130169(P2010−130169)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】