説明

排気ガス浄化用触媒

【課題】排気ガス浄化用触媒のライトオフ性能を向上させる。
【解決手段】Ce及びRh8を含有し一部のRhが粒子表面に露出している第1複合酸化物粒子成分4と、Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属を含有する第2複合酸化物粒子成分5とを触媒層に備え、第1複合酸化物粒子成分4は100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、第2複合酸化物粒子成分5は第1複合酸化物粒子成分4よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、第1複合酸化物粒子成分4の少なくとも一部の粒子が第2複合酸化物粒子成分5の少なくとも一部の粒子に付着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガス浄化用触媒では、触媒金属の凝集による性能の低下が従来より問題になっている。この触媒金属の凝集は、触媒が高温の排気ガスに晒されることによって生ずる。例えば、自動車エンジンの排気マニホールドに直結される排気ガス浄化用触媒では、触媒温度が1100℃程度の高温になることがある。触媒金属を活性アルミナのような大きな比表面積を有するサポート材に分散担持させても、その触媒金属が次第に凝集していくことは避けられない。従来の触媒では、触媒金属が凝集してもある程度の触媒性能が得られるように、触媒金属量が多めになっている。しかし、触媒金属として一般に採用されるPt、Pd、Rh等の貴金属は高価であり、しかも、近年はそのようなレアメタル資源の確保が求められている。
【0003】
これに対して、触媒金属を活性アルミナ等の表面に担持するだけでなく、排気ガスの空燃比の変動に応じて酸素を吸蔵・放出する酸素吸蔵放出材として機能するCeZr系複合酸化物に固溶させることが行なわれている。このCeZr系複合酸化物に触媒金属を固溶させると、その酸素吸蔵放出能が大幅に改善される。そのため、この触媒金属を固溶したCeZr系複合酸化物を三元触媒に使用し、理論空燃比を中心として排気ガスの空燃比をリーンとリッチとに繰り返し変化させると、少ない触媒金属量でも優れた排気ガス浄化性能が得られる。
【0004】
例えば、特許文献1には、触媒貴金属をCeZr系複合酸化物の結晶格子、原子間または酸素欠損部に配置するとともに、該複合酸化物の表面に触媒貴金属を担持することが記載されている。特許文献2には、触媒金属を含有しないCeZr系複合酸化物粒子の表面に触媒金属を含有するCeZr系複合酸化物粒子を担持すること、触媒金属を含有するCeZr系複合酸化物粒子では、触媒金属がその複合酸化物の結晶格子点又は格子点間に配置されているとともに、その一部がその複合酸化物粒子表面に露出していることが記載されている。特許文献3には、自動車排ガス浄化用触媒用セリア−ジルコニア固溶体ゾルに関し、そのゾル粒子の平均粒径を5〜100nmにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−161143号公報
【特許文献2】特開2006−334490号公報
【特許文献3】特開2007−31192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記触媒金属を固溶したCeZr系複合酸化物粉末は、Ce、Zr及び触媒金属のイオンを含む酸性溶液に塩基性溶液を添加混合し、得られた沈殿物を乾燥・焼成するという共沈法で得ることができる。このCeZr系複合酸化物粉末の各粒子は、上記乾燥・焼成の過程で生ずる粒径が5〜20nm程度の多数の一次粒子が凝集してなる粒子、つまり二次粒子(凝集粒子)であり、その平均粒径は500〜1000nm程度になっているのが通常である。
【0007】
このCeZr系複合酸化物粒子の場合、触媒金属はCe及びZrと共に上記一次粒子を構成し、一部の触媒金属が該一次粒子の表面に露出している。しかし、個々の一次粒子の表面に露出している触媒金属全てが必ずしも排気ガス浄化に有効に働くわけではない。
【0008】
すなわち、かかる一次粒子が多数凝集してなるCeZr系複合酸化物粒子(二次粒子)では、内部に埋もれている一次粒子の触媒金属は、二次粒子の表面に存在する一次粒子の触媒金属に比べて、排気ガスと接触する機会が少なくなる。また、一次粒子間の界面に存在する触媒金属は排気ガスとの接触することができない。そのため、排気ガスに接触し易い二次粒子表面に存在する一次粒子表面の触媒金属に比べて、内部に埋もれている一次粒子表面の触媒金属は排気ガス浄化にはあまり有効に働かない。従って、CeZr系複合酸化物への触媒金属の固溶による排気ガス浄化能の向上には限界があった。
【0009】
そこで、本発明は、Ce及び触媒金属を含有する複合酸化物粉末を排気ガスの浄化に更に有効に利用できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、Ce及び触媒金属を含有する複合酸化物(Ce及び触媒金属の各イオンを含む酸化物)粒子の粒径の調整によって排気ガス浄化性能が向上することを見出して本発明を完成した。以下、具体的に説明する。
【0011】
本発明は、担体上に、Ceを含有する複数種の複合酸化物粒子成分を有する触媒層が形成されている排気ガス浄化用触媒であって、
上記複数種の複合酸化物粒子成分として、Ce及び触媒金属を含有しその一部の触媒金属が粒子表面に露出している第1複合酸化物粒子成分と、Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属を含有する第2複合酸化物粒子成分とを備え、
上記第1複合酸化物粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記第2複合酸化物粒子成分は、上記第1複合酸化物粒子成分よりも、大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記第1複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子が上記第2複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子に付着していることを特徴とする。
【0012】
上記第1複合酸化物粒子成分が100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつということは、その粒径が相当に小さいこと、従って、その比表面積が大きいことを意味する。このため、第1複合酸化物粒子成分は優れた酸素吸蔵放出能を有する。また、粒径が小さいということは、粒子表面への触媒金属の露出量が多いということである。従って、第1複合酸化物粒子成分の酸素吸蔵放出能がさらに優れたものになるとともに、触媒の活性が高くなる。
【0013】
ところで、従来は、粒子の粒径が小さくなると、それだけ、粒子同士が凝集し易くなり、排気ガス浄化用触媒が高温の排気ガスに晒されたときの劣化が大きくなるとされている。しかし、本発明では、第1複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子が粒径の大きな第2複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子に付着している。このため、第1複合酸化物粒子成分の凝集が抑制される。また、上記付着によって、小径の第1複合酸化物粒子の触媒金属が第2複合酸化物粒子表面に分散した状態になり、酸素吸蔵放出能及び触媒活性の確保に有利になる。
【0014】
このように、本発明によれば、粒子表面に露出する触媒金属が多い小径の第1複合酸化物粒子成分を利用して、排気ガス浄化性能を効率良く高めることができる。
【0015】
上記触媒金属としては、Pd、Pt、Rh、In、Au、Agがあげられる。第2複合酸化物粒子成分に関し、上記Ce以外の希土類金属としては、例えば、Y、Nd、Pr、La等がある。
【0016】
好適な実施形態では、上記第2複合酸化物粒子成分は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつ。
【0017】
また、好適な実施形態では、さらに、上記第2複合酸化物粒子成分は、上記Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属に加えて、上記触媒金属を含有し、且つその一部の触媒金属が粒子表面に露出している。これにより、酸素吸蔵放出能及び触媒活性の確保にさらに有利になる。
【0018】
また、第1複合酸化物粒子成分は、Ce及び触媒金属に加えて、Zrを含有するものであってもよく、或いはCe以外の希土類金属を含有するものであってもよく、或いは第2複合酸化物粒子成分と同じく、Ce、Zr、触媒金属、及びCe以外の希土類金属を含有する構成とすることもできる。この場合、第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分は、その組成が互いに同じであってもよく、或いは異なるものであってもよい。また、Ce、Zr及び触媒金属以外の他の金属成分を添加することができるが、その添加は任意であり、互いに異なる金属成分を添加してもよい。
【0019】
第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分の組成に関し、好ましいのは、ZrOがリッチ(ZrO含有量がCeO含有量よりも多い)である複合酸化物粉末であり、また、Ce、Zr及び触媒金属以外の他の金属成分として好ましいのはNdである。その場合、触媒金属以外の成分の好ましい組成(質量比)は、CeO:ZrO:Nd=(5〜25):(55〜85):(5〜20)である。触媒金属の固溶濃度は0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。Nd以外の他の金属成分としては、例えばPr、Y、La、Hf、Ba、Sr、Ca、K、Mgがあげられる。
【0020】
上記担体上の触媒層は、単層であっても、或いは複数の積層構造であってもよい。積層構造とする場合、触媒金属としてRhを採用するときは、第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分は上層に配置し、触媒金属としてPdを採用するときは、第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分は下層に配置することが好ましい。触媒金属としてPtを採用するときは、第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分は上層及び下層のうちの一方、又は両層に配置することが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態では、上記第1複合酸化物粒子成分は、上記粒度分布において100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有し、この粒径範囲に含まれる少なくとも一部の粒子は、X線光電子分光法による測定で、粒子表面の触媒金属X濃度が0.07原子%以上0.09原子%以下であることを特徴とする。かかる第1複合酸化物粒子成分であれば、高い酸素吸蔵放出性能ないし触媒活性が得られる。
【0022】
また、好ましい実施形態では、上記第2複合酸化物粒子成分は、上記粒度分布において550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有し、この粒径範囲に含まれる少なくとも一部の粒子は、X線光電子分光法による測定で、粒子表面の触媒金属X濃度が0.04原子%以上0.06原子%以下であることを特徴とする。これにより、第1複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子を第2複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子に担持(付着)させて排気ガス浄化性能の向上を図る上で有利になる。
【0023】
また、好ましい実施形態では、上記第1複合酸化物粒子成分の粒子数は上記第2複合酸化物粒子成分の粒子数よりも少ないことを特徴とする。すなわち、第2複合酸化物粒子成分の粒子が担持(付着)することができる第1複合酸化物粒子成分の粒子数には限界があり、第1複合酸化物粒子成分の粒子数が過剰になると、その凝集を招き易くなるだけで、酸素の吸蔵放出ないし排気ガスの浄化には不利になる。よって、第1複合酸化物粒子成分の粒子数は第2複合酸化物粒子成分の粒子数よりも少なくすることが好ましい。
【0024】
本発明の別の観点は、担体上の触媒層が、触媒金属Xが固溶し且つ一部の触媒金属Xが粒子表面に露出しているCeZrX系複合酸化物粉末を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記触媒層に含まれる上記CeZrX系複合酸化物粉末の粒度分布が2つのピークを有し、両ピーク間の谷より小径側の第1粒子群は、該谷より大径側の第2粒子群よりも、単位質量当たりで比較したときの、粒子表面への触媒金属Xの露出量が多く、且つ第1粒子群の少なくとも一部のCeZrX系複合酸化物粒子は第2粒子群のCeZrX系複合酸化物粒子に担持されていることを特徴とする。
【0025】
上記小径側第1粒子群のCeZrX系複合酸化物粉末は、大径側第2粒子群よりも、単位質量当たりで比較したときの、粒子表面への触媒金属Xの露出量が多いから、酸素吸蔵放出能及び触媒活性が高い。また、CeZrX系複合酸化物粒子の径が小さいということは、その比表面積が大きいことを意味し、このことも小径側第1粒子群の方が大径側第2粒子群よりも酸素吸蔵放出能が高い理由になっている。しかし、第1粒子群は小径であるために凝集し易く、そのため、排気ガス浄化用触媒が高温の排気ガスに晒されたときの劣化が大きくなる。
【0026】
そこで、小径第1粒子群の少なくとも一部のCeZrX系複合酸化物粒子を大径第2粒子群のCeZrX系複合酸化物粒子に担持させるようにした。これにより、小径CeZrX系複合酸化物粒子の凝集が抑制されるとともに、大径CeZrX系複合酸化物粒子表面における触媒金属Xの濃度が高くなり、酸素吸蔵放出能及び触媒活性の確保に有利になる。すなわち、粒子表面に露出する触媒金属Xの割合が多い小径のCeZrX系複合酸化物粒子を利用して、排気ガス浄化性能を効率良く高めることができる。
【0027】
上記第1粒子群及び第2粒子群の各々CeZrX系複合酸化物粉末は、CeZr系の複合酸化物に触媒金属Xが固溶し且つ一部の触媒金属Xが粒子表面に露出しているものであれば、その組成比が互いに同じであることは要さず、また、Ce、Zr及び触媒金属X以外の他の金属成分を添加することができるが、その添加は任意であり、互いに異なる金属成分を添加してもよい。
【0028】
上記第1粒子群は先に説明した第1複合酸化物粒子成分に対応し、上記第2粒子群は先に説明した第2複合酸化物粒子成分に対応し、この第1粒子群及び第2粒子群各々は、上記第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分と同様に構成することができる。
【0029】
また、本発明の別の観点は、担体上の触媒層が、触媒金属Xが固溶し且つ一部の触媒金属Xが粒子表面に露出しているCeZrX系複合酸化物粉末を含有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記CeZrX系複合酸化物粉末には、粒径が100nm以上300nm以下であり、X線光電子分光法による測定で、粒子表面の触媒金属X濃度が0.07原子%以上0.09原子%以下である粒子群が含まれていることを特徴とする。
【0030】
このような粒子表面の触媒金属X濃度が高い小粒径のCeZrX系複合酸化物粉末が触媒層に含まれていることにより、高い排気ガス浄化性能が得られる。
【0031】
本発明のさらに別の観点は、担体上の触媒層が、触媒金属Xが固溶し且つ一部の触媒金属Xが粒子表面に露出しているCeZrX系複合酸化物粉末を含有する排気ガス浄化用触媒の製造方法であって、
粒度分布のピーク粒径が相異なる第1CeZrX系複合酸化物粉末及び第2CeZrX系複合酸化物粉末を準備する粉末準備工程と、この両粉末を混合し上記担体にウォッシュコートして触媒層を形成する工程とを有し、
上記粉末準備工程においては、CeZrX系複合酸化物粉末を粒径が小さくなるように粉砕したものを上記第1CeZrX系複合酸化物粉末とし、粉砕前の粒径が大きいものを第2CeZrX系複合酸化物粉末とし、
上記触媒層形成工程において、上記第1及び第2の両CeZrX系複合酸化物粉末を、2つのピークを有する粒度分布となるように混合することを特徴とする。
【0032】
すなわち、CeZrX系複合酸化物粉末(二次粒子)の場合、その粒径が大きいものほど内部に埋もれている一次粒子が多い。そして、このCeZrX系複合酸化物粉末(二次粒子)を粉砕してその粒径を小さくすると、元の二次粒子内部に埋もれていた一次粒子が粉砕によって表面に露出してくるから、それだけ二次粒子の表面に存在する一次粒子の割合が増える。触媒金属Xは一次粒子の表面に露出しているから、粉砕によって二次粒子の表面に存在する一次粒子の割合が増える結果、二次粒子表面に露出する触媒金属Xの割合が増える。
【0033】
つまり、単位質量当たりで比較すると、粉砕前の二次粒子径が大きい第2CeZrX系複合酸化物粉末に比べて、粉砕後の二次粒子径が小さい第1CeZrX系複合酸化物粉末は、粒子表面への触媒金属Xの露出量が多くなる。
【0034】
そうして、粉砕によって得られたピーク粒径が小さい第1CeZrX系複合酸化物粉末とピーク粒径が大きい第2CeZrX系複合酸化物粉末とを、2つのピークを有する粒度分布となるように混合して担体にウォッシュコートすれば、一部の粒径が小さなCeZrX系複合酸化物粒子は粒径の大きなCeZrX系複合酸化物粒子に担持された状態になる。
【0035】
よって、本発明に係る方法により、担体上の触媒層に含まれるCeZrX系複合酸化物粉末の粒度分布が2つのピークを有し、両ピーク間の谷より小径側の第1粒子群は、該谷より大径側の第2粒子群よりも、単位質量当たりで比較したときの、粒子表面への触媒金属Xの露出量が多く、且つ第1粒子群の少なくとも一部のCeZrX系複合酸化物粒子は第2粒子群のCeZrX系複合酸化物粒子に担持されている排気ガス浄化用触媒が得られる。
【0036】
ここに、上記第1CeZrX系複合酸化物粉末を得るための粉砕には湿式粉砕を採用し、得られた第1CeZrX系複合酸化物粉末のゾルと第2CeZrX系複合酸化物粉末とを混合し上記担体にウォッシュコートして触媒層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
以上のように本発明に係る排気ガス浄化用触媒によれば、Ce及び触媒金属を含有し一部の触媒金属が粒子表面に露出している第1複合酸化物粒子成分と、Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属を含有する第2複合酸化物粒子成分とを触媒層に備え、第1複合酸化物粒子成分は100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、第2複合酸化物粒子成分は第1複合酸化物粒子よりも大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、第1複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子が第2複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子に付着しているから、粒子表面に露出する触媒金属が多い小径の第1複合酸化物粒子成分を利用して、排気ガス浄化性能を効率良く高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る排気ガス浄化用触媒の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】同触媒の触媒層に含まれる各種粒子の状態を模式的に示す断面図である。
【図3】第1CeZrRh系複合酸化物粉末及び第2CeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ図である。
【図4】実施例1に係るCeZrX系複合酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ図である。
【図5】実施例2に係るCeZrX系複合酸化物粉末の粒度分布を示すグラフ図である。
【図6】実施例1,2及び比較例1の排気ガス浄化性能を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0040】
[実施形態1]
図1に示す排気ガス浄化用触媒において、1は担体であり、この担体1上に上触媒層2と下触媒層3とが積層されている。この排気ガス浄化用触媒1は、自動車のガソリンエンジンが理論空燃比付近で運転されるときの排気ガスに含まれるHC(炭化水素)、CO及びNOx(窒素酸化物)を同時に浄化する三元触媒としての利用に適する。
【0041】
担体1は例えばコージェライト製のハニカム担体とされる。上触媒層2及び下触媒層3各々は、触媒金属と酸素吸蔵放出材とを含有する。この実施形態では、上触媒層2は、触媒金属XとしてのRhが固溶し且つ一部のRhが粒子表面に露出しているCeZrRh系複合酸化物粉末を酸素吸蔵放出材として含有する。以下では、Rhが固溶し且つ一部のRhが粒子表面に露出している複合酸化物を適宜「Rhドープ複合酸化物」と称する。CeZrRh系複合酸化物粉末は、上触媒層2だけでなく下触媒層3に設けることもできる。
【0042】
図2は上触媒層2の触媒成分の状態を模式的に示す。CeZrRh系複合酸化物粉末には、小径の第1粒子群に属するCeZrRh系複合酸化物粒子(第1複合酸化物粒子成分)4と、大径の第2粒子群に属するCeZrRh系複合酸化物粒子(第2複合酸化物粒子成分)5とが含まれる。さらに、上触媒層は、ZrLa複合酸化物を担持した活性アルミナに、Rhを担持させてなるRh/ZrLa−アルミナ粒子6及びLa含有活性アルミナ粒子7の各粉末を含有する。小径第1粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子4及び大径第2粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子5各々の表面にはRh8が露出している。なお、ZrLa−アルミナ粒子6に担持されているRhの図示は省略している。
【0043】
小径第1粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子4は、上触媒層に略均一に分散して含まれ、一部のCeZrRh系複合酸化物粒子4は、大径第2粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子5、Rh/ZrLa−アルミナ粒子6及びLa含有アルミナ粒子7各々の表面に担持されている。この小径第1粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子4は、触媒成分として機能する一方、触媒粒子5〜6間に介在して該触媒粒子同士を結合するとともに、担体表面の多数の微小凹部ないし細孔に入り、触媒層が担体から剥離しないようにするバインダとしても機能する。
【0044】
以下、実施形態1に係る実施例及び比較例を説明する。
【0045】
<実施例1>
図1に示す二層構造の排気ガス浄化用触媒の上触媒層及び下触媒層を次の方法によって形成した。
【0046】
−CeZrRh系複合酸化物粉末の調製−
Rhドープ複合酸化物成分として、粒度分布のピーク粒径が相異なる第1CeZrRh系複合酸化物粉末(第1複合酸化物粒子成分)及び第2CeZrRh系複合酸化物粉末(第2複合酸化物粒子成分)を調製した。粒度分布のピーク粒径は、第1CeZrX系複合酸化物粉末の方が第2CeZrX系複合酸化物粉末よりも小さい。
【0047】
先にピーク粒径が大きい第2CeZrRh系複合酸化物粉末の調製法を説明する。すなわち、硝酸セリウム6水和物(17.39g)とZrOに換算して25.13質量%のZrを含有するオキシ硝酸ジルコニル溶液(79.90g)と硝酸ネオジム6水和物(7.81g)とRh濃度8.15質量%硝酸ロジウム溶液(0.37g)とをイオン交換水(300mL)に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液(900mL)を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を遠心分離法で水洗した後、空気中において150℃の温度で一昼夜乾燥させ、粉砕した後、空気中において500℃の温度に2時間保持する焼成を行なうことにより、複合酸化物粉末30gを得ることができる。これを第2CeZrRh系複合酸化物粉末とする。この第2CeZrRh系複合酸化物粉末のRhを除く組成は、CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比)であり、Rh固溶濃度は0.1質量%である。
【0048】
ピーク粒径が小さい第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、上記方法によって得られる第2CeZrRh系複合酸化物粉末を湿式粉砕することによって得る。すなわち、第2CeZrRh系複合酸化物粉末にイオン交換水を添加してスラリー(固形分25質量%)とし、このスラリーをボールミルに投入して、0.5mmのジルコニアビーズによって粉砕する(約3時間)ことにより、粒径が小さくなった第1CeZrRh系複合酸化物粉末が分散したRhドープCeZrNdゾルを得ることができる。この第1CeZrRh系複合酸化物粉末のRhを除く組成及びRh固溶濃度は第2CeZrRh系複合酸化物粉末と同じである。
【0049】
図3は第1CeZrRh系複合酸化物粉末及び第2CeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布(頻度分布)を示す。粒度分布の測定には、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。両CeZrRh系複合酸化物粉末は互いの粒度分布のピーク粒径が相異なり、第1CeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布は100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有し、第2CeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布は550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する。
【0050】
第1CeZrRh系複合酸化物粉末の場合、累積分布10質量%粒径が107nm、累積分布50質量%粒径が184nm、累積分布90質量%粒径が287nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は100nm以上であり、累積分布90質量%粒径は300nm以下である。第2CeZrRh系複合酸化物粉末の場合、累積分布10質量%粒径が576nm、累積分布50質量%粒径が848nm、累積分布90質量%粒径が1160nmである。すなわち、累積分布10質量%粒径は550nm以上であり、累積分布90質量%粒径は1200nm以下である。
【0051】
粒径100nm以上300nm以下の第1CeZrRh系複合酸化物粉末について、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy;X線光電子分光法)により、5箇所の測定領域(直径数μm)を選んで各測定領域に存する粒子の粒子表面(深さ数nmの範囲)のRh濃度を測定した。粒径550nm以上1200nm以下の第2CeZrRh系複合酸化物粉末についても、同様に5箇所の測定領域を選んで、XPSにより、粒子表面のRh濃度を測定した。すなわち、当該測定領域から放射されるCe、Zr、Nd、Rh及びO各々の元素に固有の波長のピーク面積を算出し、Rh濃度(全元素のピーク面積値に対するRhのピーク面積の割合)を求めた。結果は、表1に示すとおりである。
【0052】
【表1】

【0053】
第1CeZrRh系複合酸化物粉末は粒子表面のRh濃度が0.07原子%以上0.09原子%以下であり、第2CeZrRh系複合酸化物粉末は粒子表面のRh濃度が0.04原子%以上0.06原子%以下である。すなわち、粉砕によって粒径が小さくなった第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、粉砕前の第2CeZrRh系複合酸化物粉末よりも粒子表面のRh濃度が高くなっている。
【0054】
このRh濃度について検討すると、第2CeZrRh系複合酸化物粒子は第1CeZrRh系複合酸化物粒子よりも粒径が大であるから、粒子内部に埋もれているRhの量が多い。この第2CeZrRh系複合酸化物粒子が粉砕されると、粒子内部に埋もれていた一部のRhが粉砕粒子(第1CeZrRh系複合酸化物粒子)の表面に露出する。この粉砕によって露出したRhのうちの少なくとも一部はXPSの測定領域において当該元素固有の波長を放射するRhとして検出される。その影響により、第1CeZrRh系複合酸化物粉末では、第2CeZrRh系複合酸化物粉末よりも、XPSで得られる粒子表面のRh濃度が高くなっていると考えられる。
【0055】
そうして、第1CeZrRh系複合酸化物粉末の上記Rh濃度が第2CeZrRh系複合酸化物粉末の上記Rh濃度よりも高いということは、粒子内部に埋もれていたRhが粉砕によって粒子表面に露出したことを意味するから、単位質量当たりで比較したときの、粒子表面へのRhの露出量は、第1CeZrRh系複合酸化物粉末の方が第2CeZrRh系複合酸化物粉末よりも多いと云うことができる。
【0056】
−下触媒層の形成−
CeZrNd複合酸化物(CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比))粉末と、Laを4質量%含有するAlにPdを担持させたPd/La含有アルミナ粉末と、CeZrNd複合酸化物(CeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比))粉末にPdを担持させたPd/CeZrNd複合酸化物粉末と、硝酸ジルコニル(バインダ)とをイオン交換水と共に混合してスラリー化し、担体にウォッシュコートして下触媒層を形成した。上記Pdの担持には蒸発乾固法を採用した。Pd等の触媒金属の担持に蒸発乾固法を採用している点は、後述の他の実施例及び比較例も同じである。
【0057】
担体としては、セル壁厚さ3.5mil(8.89×10−2mm)、1平方インチ(645.16mm)当たりのセル数600のコージェライト製ハニカム担体(容量1L)を用いた。この担体に関しては、後述の他の実施例及び比較例も同じである。触媒成分等の配合量(担体1L当たりの質量)については表2に記載した。
【0058】
−上触媒層の形成−
上記第1CeZrRh系複合酸化物粉末が分散したRhドープCeZrNdゾルと、Rh/第2CeZrRh系複合酸化物粉末と、Rh/ZrLa−アルミナ粉末と、La含有アルミナ(Laを4質量%含有)粉末とをイオン交換水と共に混合してスラリー化し、下触媒層の上にウォッシュコートして上下触媒層を形成した。
【0059】
Rh/第2CeZrRh系複合酸化物粉末は、第2CeZrRh系複合酸化物粉末に硝酸Rh溶液を含浸させて、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、Rhドープ型の第2CeZrRh系複合酸化物粉末にRhを担持させたものである。
【0060】
Rh/ZrLa−アルミナ粉末は次のようにして調製した。すなわち、硝酸ジルコニウム及び硝酸ランタンの混合溶液に活性アルミナ粉末を分散させ、これにアンモニア水を加えて沈殿を生成した。得られた沈殿物を濾過、洗浄し、200℃で2時間保持する乾燥、並びに500℃に2時間保持する焼成を行なうことにより、表面がZrLa複酸化物で被覆された活性アルミナ粒子を得た。これに硝酸ロジウム水溶液を混合し、蒸発乾固を行なうことにより、Rh/ZrLa−アルミナ粉末を得た。ZrLa−アルミナの組成はZrO:La:Al=38:2:60(質量比)である。
【0061】
触媒成分等の配合量については表2に記載した。上触媒層では、RhドープCeZrNdゾルがバインダとして機能するため、専用のバインダ原料(硝酸ジルコニル)は配合していない。なお、表2の各成分の配合量は乾燥重量である。
【0062】
【表2】

【0063】
−上触媒層のCeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布−
上触媒層のCeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布(第1CeZrRh系複合酸化物粉末と第2CeZrRh系複合酸化物粉末との混合状態での粒度分布)は図4のとおりである。同粒度分布は、100nm以上300nm以下の粒径範囲と550nm以上1200nm以下の粒径範囲の2ヶ所にピークを有する。すなわち、両ピーク間の谷(450nm(0.45μm)付近)より小径側の第1粒子群は200nm(0.2μm)付近にピークを有し、該谷より大径側の第2粒子群は850nm(0.85μm)付近にピークを有する。
【0064】
図3及び図4から、第1粒子群の多くは第1CeZrRh系複合酸化物粉末によって構成され、第2粒子群の多くは第2CeZrRh系複合酸化物粉末によって構成されていることがわかる。
【0065】
第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、上触媒層に略均一に分散して含まれており、従って、一部の第1CeZrRh系複合酸化物粒子は、大径のRh/第2CeZrRh系複合酸化物粒子、Rh/ZrLa−アルミナ粒子及びLa含有アルミナ粒子各々の表面に担持されている。また、第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、上触媒層においてバインダとして機能している。
【0066】
<実施例2>
下触媒層については、実施例1の硝酸ジルコニル(バインダ)に代えて第1CeZrRh系複合酸化物粉末(10.000g/L)を配合し、他は実施例1と同じ構成にした。上触媒層については、Rh/第2CeZrRh系複合酸化物粉末量を50.012g/L(第2CeZrRh系複合酸化物粉末50.000g/L,Rh含浸担持量0.012g/L)とした。上触媒層の他の構成は実施例1と同じである。
【0067】
上触媒層のCeZrRh系複合酸化物粉末の粒度分布(第1CeZrRh系複合酸化物粉末と第2CeZrRh系複合酸化物粉末との混合状態での粒度分布)は図5のとおりである。同粒度分布は、100nm以上300nm以下の粒径範囲と550nm以上1200nm以下の粒径範囲の2ヶ所にピークを有する。両ピーク間の谷(450nm(0.45μm)付近)より小径側の第1粒子群は200nm(0.2μm)付近にピークを有し、該谷より大径側の第2粒子群は850nm(0.85μm)付近にピークを有する。
【0068】
実施例2においては、第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、上触媒層及び下触媒層の双方に含まれ、各層において略均一に分散している。従って、実施例1と同じく、上触媒層においては、一部の第1CeZrRh系複合酸化物粒子は、大径のRh/第2CeZrRh系複合酸化物粒子、Rh/ZrLa−アルミナ粒子及びLa含有アルミナ粒子各々の表面に担持されている。さらに第1CeZrRh系複合酸化物粉末は上触媒層においてバインダとして機能している。下触媒層においても、第1CeZrRh系複合酸化物粉末の一部は、CeZrNd複合酸化物粒子、Pd/La含有アルミナ粒子及びPd/CeZrNd複合酸化物粒子に担持され、さらに、この第1CeZrRh系複合酸化物粉末は下触媒層においてバインダとして機能している。
【0069】
<比較例1>
下触媒層は実施例1と同じ構成とした。上触媒層については、実施例1の第1CeZrRh系複合酸化物粉末に代えて硝酸ジルコニル(バインダ)(10.000g/L)を配合するとともに、Rh/第2CeZrRh系複合酸化物粉末量を70.012g/L(第2CeZrRh系複合酸化物粉末70.000g/L,Rh含浸担持量0.012g/L)とし、他は実施例1と同じ構成にした。なお、比較例1では、上触媒層の第2CeZrRh系複合酸化物粉末量が、実施例1の上触媒層の第1CeZrRh系複合酸化物粉末と第2CeZrRh系複合酸化物粉末との合計量と同量になっている。
【0070】
(排気ガス浄化性能)
実施例1,2及び比較例1の各触媒にベンチエージング処理を施した。これは、各触媒をエンジン排気系に取り付け、(1)A/F=14の排気ガスを15秒間流す→(2)A/F=17の排気ガスを5秒間流す→(3)A/F=14.7の排気ガスを40秒間流す、というサイクルが合計50時間繰り返されるように、且つ触媒入口ガス温度が900℃となるように、エンジンを運転するというものである。
【0071】
しかる後、各触媒から担体容量約25mL(直径25.4mm,長さ50mm)のコアサンプルを切り出し、これをモデルガス流通反応装置に取り付け、HC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)を測定した。T50(℃)は、触媒に流入するモデルガス温度を常温から漸次上昇させていき、浄化率が50%に達したときの触媒入口のガス温度である。モデルガスは、A/F=14.7±0.9とした。すなわち、A/F=14.7のメインストリームガスを定常的に流しつつ、所定量の変動用ガスを1Hzでパルス状に添加することにより、A/Fを±0.9の振幅で強制的に振動させた。空間速度SVは60000h−1、昇温速度は30℃/分である。A/F=14.7、A/F=13.8及びA/F=15.6のときのガス組成を表3に示し、ライトオフ温度T50の測定結果を図6に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
図6によれば、HC、CO及びNOxのいずれに関しても、実施例1,2は比較例1よりもライトオフ温度T50が低く、優れた排気ガス浄化性能を有することがわかる。実施例1,2の触媒層に含まれている粒径の小さな第1CeZrRh系複合酸化物粉末は、粒径が大きい第2CeZrRh系複合酸化物粉末に比べて、粒子表面に露出する触媒金属Rhの割合が多く、従って、その酸素吸蔵放出能及び触媒活性は第2CeZrRh系複合酸化物粉末よりも高い。このことが、実施例1,2の排気ガス浄化性能が高い一因になっていると考えられる。
【0074】
また、実施例1,2の粒径の小さな第1CeZrRh系複合酸化物粉末の一部は、大径のRh/第2CeZrRh系複合酸化物粒子、Rh/ZrLa−アルミナ粒子、La含有アルミナ粒子等に担持されているから、高温の排気ガスに晒された場合でも、凝集し難い。そして、酸素吸蔵放出能が高い第1CeZrRh系複合酸化物粒子が、Rh/ZrLa−アルミナ粒子など他の触媒成分に担持されているため、それら触媒成分の活性も高くなる。このことも、実施例1,2の排気ガス浄化性能に寄与していると考えられる。
【0075】
また、実施例1の方が実施例2よりもライトオフ温度は低い。これは、実施例2では上触媒層の第2CeZrRh系複合酸化物粉末の量が実施例1よりも少なくなっているためと考えられる。すなわち、実施例2では、下触媒層にも第1CeZrRh系複合酸化物粉末を添加しているが、この添加による排気ガス浄化性能の向上はそれほど大きくなく、この添加効果よりも、上触媒層の第2CeZrRh系複合酸化物粉末量の減少による触媒性能の低下の方が効果としては大きくなっていると考えられる。この実施例1,2との比較から、第1CeZrRh系複合酸化物粉末は下触媒層よりも上触媒層に添加した方が、排気ガスの浄化性能を効率良く高めることができることがわかる。
【0076】
[実施形態2]
実施形態1は、第1複合酸化物粒子成分及び第2複合酸化物粒子成分が共に触媒金属XとしてRhを含有するRhドープ型であるケースである。これに対して、本実施形態2は、第1複合酸化物粒子成分をRhドープ型とし、第2複合酸化物粒子成分をRhドープ型ではなく、Rh後担持型としたケースである。
【0077】
(実施形態2−1)
この実施形態は、触媒層が単層である。第1複合酸化物粒子成分としてのRhドープ複合酸化物粒子をバインダ材として触媒層を形成し、その触媒層が第2複合酸化物粒子成分としてRh/CeZrNd材を含有する。以下、その実施例3〜6及び比較例2〜5を述べる。
【0078】
<実施例3>
RhドープCeZrゾルとRh/CeZrNd材とイオン交換水とを混合してスラリーとし、ハニカム担体にコーティングして触媒層を形成した。
【0079】
RhドープCeZrゾルは、CeZr複合酸化物(CeO:ZrO=25:75(質量比))にRhがドープされてなるRhドープCeZr複合酸化物粉末(Rh濃度0.05質量%)が水中に分散したものである。このゾルは、硝酸塩溶液として、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かしたものを用いる他は、実施例1のRhドープCeZrNdゾルと同じ方法によって調製した。RhドープCeZrゾルの粒度分布(頻度分布)は、RhドープCeZrNdゾルと同じく、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0080】
Rh/CeZrNd材は、ZrリッチのCeZrNd複合酸化物粒子にRhを担持させたものである。CeZrNd複合酸化物粒子の組成はCeO:ZrO:Nd=10:80:10(質量比)であり、Rh濃度は0.12質量%である。CeZrNd複合酸化物粒子の粒度分布(頻度分布)は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0081】
触媒層の各成分の担持量(担体1L当たりの量)は、RhドープCeZr複合酸化物粉末(バインダ)が12g/L、Rh/CeZrNd材が70g/Lである。
【0082】
<実施例4>
RhドープCeZrゾルに代えてRhドープCeZrNdYゾルを採用し、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。RhドープCeZrNdYゾルは、CeZrNdY複合酸化物(CeO:ZrO:Nd:Y=10:80:5:5(質量比))にRhがドープされてなるRhドープCeZrNdY複合酸化物粉末(Rh濃度0.05質量%)が水中に分散したものである。このゾルは、硝酸塩溶液として、硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸イットリウム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かしたものを用いる他は、実施例1のRhドープCeZrNdゾルと同じ方法によって調製した。RhドープCeZrNdYゾルの粒度分布(頻度分布)は、RhドープCeZrNdゾルと同じく、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0083】
<実施例5>
RhドープCeZrゾルに代えてRhドープCeOゾルを採用し、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。RhドープCeOゾルは、CeOにRhがドープされてなるRhドープCeO複合酸化物粉末(Rh濃度0.05質量%)が水中に分散したものである。このゾルは、硝酸塩溶液として、硝酸セリウム6水和物と硝酸ロジウム溶液とをイオン交換水に溶かしたものを用いる他は、実施例1のRhドープCeZrNdゾルと同じ方法によって調製した。RhドープCeOゾルの粒度分布(頻度分布)は、RhドープCeZrNdゾルと同じく、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0084】
<実施例6>
RhドープCeZrゾルに代えてRhドープCeZrNdゾルを採用し、ZrリッチのRh/CeZrNd材に代えて、CeリッチのRh/CeZrNd材を採用し、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。
【0085】
RhドープCeZrNdゾルは、実施例1のRhドープCeZrNdゾルとは異なり、CeZrNd複合酸化物の組成は、CeO:ZrO:Nd=10:80:10(質量比)であり、Rh濃度は0.05質量%である。このゾルは、実施例1のRhドープCeZrNdゾルと同様の方法によって調製した。この実施例のRhドープCeZrNdゾルの粒度分布(頻度分布)も、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0086】
CeリッチのRh/CeZrNd材は、CeリッチのCeZrNd複合酸化物粒子にRhを担持させたものである。CeZrNd複合酸化物粒子の組成はCeO:ZrO:Nd=65:25:10(質量比)であり、Rh濃度は0.12質量%である。CeZrNd複合酸化物粒子の粒度分布(頻度分布)は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する構成になっている。
【0087】
<比較例2>
RhドープCeZrゾルに代えてZrOゾル(Rhドープなし)を採用し、Rh担持量を実施例3と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。ZrOゾルはZrO粉末が水中に分散したものである。
【0088】
<比較例3>
RhドープCeZrゾルに代えてCeZrゾル(Rhドープなし)を採用し、Rh担持量を実施例3と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。CeZrゾルは、CeZr複合酸化物粉末(CeO:ZrO=25:75(質量比))が水中に分散したものである。
【0089】
<比較例4>
RhドープCeZrゾルに代えてCeOゾル(Rhドープなし)を採用し、Rh担持量を実施例3と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。CeOゾルはCeO粉末が水中に分散したものである。
【0090】
<比較例5>
RhドープCeZrゾルに代えて比較例2と同じZrOゾルを採用し、ZrリッチのRh/CeZrNd材に代えて、CeリッチのRh/CeZrNd材を採用し、Rh担持量を実施例3と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例3と同じ構成の触媒を調製した。
【0091】
(実施形態2−2)
この実施形態は、実施形態2−1と同じく単一触媒層において、第1複合酸化物粒子成分としてのRhドープ複合酸化物粒子(バインダ材)と、第2複合酸化物粒子成分としてZrリッチのRh/CeZrNd材と、さらに、Rh/ZrLa−アルミナとを含有する。以下、その実施例7〜10及び比較例6〜9を述べる。
【0092】
<実施例7>
実施例3において、触媒層がさらにRh/ZrLa−アルミナを含有する構成とした。ZrLa−アルミナの組成はZrO:La:Al=38.5:2:59.5(質量比)であり、Rh濃度は0.1質量%である。各成分の担持量は、RhドープCeZrゾルに係るRhドープCeZr複合酸化物粉末(バインダ)が12g/L、Rh/CeZrNd材が70g/L、Rh/ZrLa−アルミナが30g/Lである。
【0093】
<実施例8>
RhドープCeZrゾルに代えて実施例4と同じRhドープCeZrNdYゾルを採用し、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0094】
<実施例9>
RhドープCeZrゾルに代えて実施例5と同じRhドープCeOゾルを採用し、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0095】
<実施例10>
RhドープCeZrゾルに代えて実施例6と同じRhドープCeZrNdゾルを採用し、ZrリッチのRh/CeZrNd材に代えて、実施例6と同じCeリッチのRh/CeZrNd材を採用し、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0096】
<比較例6>
RhドープCeZrゾルに代えて比較例2と同じZrOゾルを採用し、Rh担持量を実施例7と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0097】
<比較例7>
RhドープCeZrゾルに代えて比較例3と同じCeZrゾルを採用し、Rh担持量を実施例7と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0098】
<比較例8>
RhドープCeZrゾルに代えて比較例4と同じCeOゾルを採用し、Rh担持量を実施例7と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0099】
<比較例9>
RhドープCeZrゾルに代えて比較例2と同じZrOゾルを採用し、ZrリッチのRh/CeZrNd材に代えて、実施例6と同じCeリッチのRh/CeZrNd材を採用し、Rh担持量を実施例7と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例7と同じ構成の触媒を調製した。
【0100】
[実施形態3]
この実施形態は、図1に示す二層構造の触媒において、上触媒層及び下触媒層を次のように構成した。
【0101】
<実施例11>
上触媒層は、バインダとしての実施例4と同じRhドープCeZrNdYゾルに係るRhドープCeZrNdY、実施例4と同じZrリッチのRh/CeZrNd材、実施例7と同じRh/ZrLa−アルミナ、並びにLa−アルミナ(触媒金属非担持)を混合して含有する構成とした。下触媒層は、Pd/CeZrNd材、Pd/La−アルミナ、CeZrNd材(触媒金属非担持)、並びにバインダとしてのZrOゾルに係るZrOを混合して含有する構成とした。
【0102】
上触媒層のLa−アルミナ(触媒金属非担持)はLaを4質量%含有する活性アルミナである。下触媒層のPd/CeZrNd材は、CeとZrとNdとを含有するCeZrNd複合酸化物粒子にPdを担持させたものである。その複合酸化物の組成はCeO:ZrO:Nd=23:67:10(質量比)であり、Pd担持量は0.55質量%である。Pd/La−アルミナは、Laを4質量%含有するLa−アルミナにPdを担持させたものであり、Pd濃度は0.86質量%である。CeZrNd材(触媒金属非担持)はPd/CeZrNd材のCeZrNd材と同じものである。
【0103】
担体に対する担持量は、上触媒層のRhドープCeZrNdYが12g/L、ZrリッチのRh/CeZrNd材が70g/L、Rh/ZrLa−アルミナが30g/L、La−アルミナ(触媒金属非担持)が10g/Lである。下触媒層のPd/CeZrNd材が35g/L、Pd/La−アルミナが45g/L、CeZrNd材(触媒金属非担持)が20g/L、ZrOバインダが11g/Lである。
【0104】
<比較例10>
上触媒層のバインダとしてRhドープCeZrNdYに代えてZrOバインダを採用し、Rh担持量を実施例11と同じにするために、Rh/CeZrNd材の担持量を75g/Lとし、他は実施例11と同じ構成の触媒とした。
【0105】
(排気ガス浄化性能)
実施形態2及び実施形態3の各触媒に実施形態1の場合と同じベンチエージング処理を施した後、各触媒から担体容量約25mL(直径25.4mm,長さ50mm)のコアサンプルを切り出し、実施形態1と場合と同じ条件でHC、CO及びNOxの浄化に関するライトオフ温度T50(℃)及び排気ガス浄化率C400を測定した。排気ガス浄化率C400は、触媒入口でのモデル排気ガス温度が400℃であるときのHC、CO及びNOx各々の浄化率である。結果を表4に示す。
【0106】
【表4】

【0107】
実施例3〜5と比較例2〜3との比較から、触媒層のRh量は同じでも、バインダ材としてRhドープCe含有酸化物ゾルを用いると、触媒のライトオフ性能が良くなり、また、排気ガス浄化率も高くなることがわかる。実施例3〜5のうちでもRhドープCeZrNdYゾルを採用した実施例4が特に優れている。RhドープCe含有酸化物ゾルが有利であることは、実施例7〜9と比較例6〜8との比較からもわかる。また、RhドープCeZrNdYゾルが特に優れていることは、実施例7〜9からも認められる。
【0108】
実施例6と比較例5との比較、並びに実施例10と比較例9との比較から、他の成分がCeリッチのRh/CeZrNd材であるケースでも、RhドープCe含有酸化物ゾルの有利性がわかる。また、実施例11と比較例10との比較から、二層構造においても、RhドープCe含有酸化物ゾルの有利性がわかる。
【符号の説明】
【0109】
1 担体
2 上触媒層
3 下触媒層
4 第1粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子
5 第2粒子群のCeZrRh系複合酸化物粒子
6 Rh/ZrLa−アルミナ粒子
7 La含有アルミナ粒子
8 Rh

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体上に、Ceを含有する複数種の複合酸化物粒子成分を有する触媒層が形成されている排気ガス浄化用触媒であって、
上記複数種の複合酸化物粒子成分として、Ce及び触媒金属を含有しその一部の触媒金属が粒子表面に露出している第1複合酸化物粒子成分と、Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属を含有する第2複合酸化物粒子成分とを備え、
上記第1複合酸化物粒子成分は、100nm以上300nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記第2複合酸化物粒子成分は、上記第1複合酸化物粒子成分よりも、大きな粒径範囲にピークを有する粒度分布をもち、
上記第1複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子が上記第2複合酸化物粒子成分の少なくとも一部の粒子に付着していることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項2】
請求項1において、
上記第2複合酸化物粒子成分は、550nm以上1200nm以下の粒径範囲にピークを有する粒度分布をもつことを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項2において、
上記第2複合酸化物粒子成分は、上記Ce、Zr、及びCe以外の希土類金属に加えて、上記触媒金属を含有し、且つその一部の触媒金属が粒子表面に露出していることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記第1複合酸化物粒子成分は、上記Ce及び触媒金属に加えて、Ce以外の希土類金属を含有することを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記第1複合酸化物粒子成分の100nm以上300nm以下の粒径範囲に含まれる少なくとも一部の粒子は、X線光電子分光法による測定で、粒子表面の触媒金属X濃度が0.07原子%以上0.09原子%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記第2複合酸化物粒子成分の550nm以上1200nm以下の粒径範囲に含まれる少なくとも一部の粒子は、X線光電子分光法による測定で、粒子表面の触媒金属X濃度が0.04原子%以上0.06原子%以下であることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62683(P2011−62683A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70930(P2010−70930)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】