説明

排気ガス浄化装置

【課題】 浄化装置下流側においても十分なガスの拡散を得ることができるとともに、高価な貴金属の使用量が増えることのない排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】 排気ガスの流れ方向に沿って上流側触媒と下流側触媒とを具備し、各触媒には基材層101、111上に、貴金属を予め担持させた担体粒子をコーティングしたコート層102、112を形成するとともに、上流側触媒の担体粒子の平均粒径を下流側触媒の担体粒子の平均粒径より大きく、単位長さ、単位セルあたりの貴金属量は、上流側触媒と下流側触媒とで同一とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の排気ガス浄化装置は、例えばコージェライトからなるモノリス状の耐熱性担体基材層の表面に、白金等の触媒貴金属を担持した、アルミナ等の耐熱性無機酸化物からなる多孔質の担体を支持する構造を有している。かかる排気ガス浄化装置は、排気ガス中に含まれる有害な一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化して無害な二酸化炭素(CO)と水(HO)に変換すると同時に、窒素酸化物(NOx)を還元して無害な窒素(N)に変換し得るため、三元触媒とも呼ばれている。
【0003】
排気ガス中の上記各有害成分の量は、内燃機関の運転状況に応じて変化する。また、排気ガス中にNOxが発生するのを抑制するため、積極的に空燃比(以下において「A/F比」ということがある。)をストイキ、あるいはリッチに制御する方式も試みられており、排気ガス浄化装置に導入される排気ガスの成分はかかる制御によっても変化する。
【0004】
一方、排気ガス浄化装置の内部では、排気ガスの流れ方向上流側から次第に排気ガスの浄化が行われるので下流側に向かって流れるガスの成分も流れ方向に沿って変化する。
【0005】
さらに温度に関しては、内燃機関の運転状況によって発生する排気ガスの温度が変化し、また、一般には排気ガス浄化装置の流れ方向に沿って、下流側になるほど排気ガスの温度は低下する。
【0006】
かかる変化に対応して、排気ガスの浄化を最適化すべく、特許文献1には、浄化装置の上流側に第一の触媒層、下流側に第二の触媒層を設け、これら第一、第二の触媒層間で貴金属の成分、及び量を変えて触媒浄化能を高めるシステムが開示されている。又、特許文献2では、上流側から下流側に向かって、貴金属と遷移金属酸化物の担持量の勾配を設けることにより、触媒浄化能を高める構成が開示されている。さらに特許文献3では、上流側触媒と下流側触媒との貴金属コート比を 1<前側/後側≦3 とすることにより、又特許文献4では、上流側触媒と下流側触媒とを設け、各触媒における複合酸化物の量を変えることにより、それぞれ高いNOx浄化効果を得ることが可能であるとしている。
【特許文献1】特開2004−283692号公報
【特許文献2】特開平9−122443号公報
【特許文献3】特開2003−245523号公報
【特許文献4】特開2004−267843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記各特許文献に開示されている構成では、基材層上に形成された触媒層(以下において「コート層」という。)中の排気ガスの拡散という観点からは、特に浄化装置下流側において、コート層深部までの拡散距離が長く、コート層内部まで十分にガスが供給されないため、触媒の浄化率が低くなる場合がある。なぜなら、ストイキ状態での排気ガスが長時間排出され続けると、浄化装置上流部で大部分のガス(有害成分)は浄化されるので、下流側のガス(有害成分)濃度が数十ppm程度になる。このため、表面部とコート層内との濃度差が少なくなり、コート層内への拡散量が減少するので、浄化装置下流側では浄化がほとんど行われず、浄化率が低下するからである。一方、この問題を解決せんがため、下流側の触媒担持量を高めてしまうと、高価な貴金属の使用量が増えるため浄化装置のコストが上昇してしまう。
【0008】
そこで本発明は、浄化装置下流側においても十分なガスの拡散を得ることができるとともに、高価な貴金属の使用量が増えることのない排気ガス浄化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは、予め貴金属を担持させた多孔質担体粒子を基材層上にコートして、コート層を立体構造とし、この立体構造を構成する担体の平均粒径を排気ガスの流れ方向上流側を大、下流側を小とすることで、下流側において拡散距離が短くなり、貴金属を有効に活用することができることを見出した。また、単位長さ、単位セルあたりの貴金属量を上流側と下流側とで同一にすることで、高価な貴金属の使用量を増やすことなく、十分なガスの拡散を得る排気ガス浄化装置を構成できることを見出した。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気ガス通路に配設され、排気ガスの流れ方向に沿って上流側触媒と下流側触媒とを備えるとともに、これら各触媒は基材層上に予め貴金属を担持させた担体粒子を有するコート層を具備する排気ガス浄化装置であって、上流側触媒の担体粒子の平均粒径は、下流側触媒の担体粒子の平均粒径より大きく、単位長さ、単位セルあたりの貴金属量は、上流側触媒と下流側触媒とで同一であることを特徴とする排気ガス浄化装置により、前記課題を解決しようとするものである。
【0011】
ここに「平均粒径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒径をいう。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、上流側触媒と下流側触媒とは、一体に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、上流側触媒と下流側触媒とは、離隔して配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の排気ガス浄化装置において、上流側触媒のセル数は、下流側触媒のセル数より多いことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の排気ガス浄化装置において、排気ガスの流れ方向に沿った長さに関して、上流側触媒は下流側触媒より大であるとともに、流れ方向に直交する面方向の断面積に関して上流側触媒は下流側触媒より小であり、セル数に関して、上流側触媒は下流側触媒より小であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、下流側触媒においては担体粒子の平均粒径が小さいため、貴金属までのガス拡散距離が短縮され、ガス濃度が薄くなっても拡散量を多くすることができる。また下流側触媒において担体粒子の平均粒径が小さいので、コート層表面の貴金属の面積密度が増大する。このため、ガス濃度が薄くなっても十分な浄化が確保される。もって、排気ガス浄化装置全体の浄化率を向上させることができる。
【0017】
一方、担体粒子の平均粒径の大きな上流側触媒では、エンジンオイル等に由来するリン等の触媒に対する被毒物質をトラップするので、下流側触媒に達する被毒物質を少なくすることができる。従って、下流側触媒において平均粒径の小さな担体粒子を用いても、被毒によるコート層の目詰まりを少なくすることができる。もって、高い浄化能を長期にわたって維持することが可能となる。
【0018】
加えて、コート層は、予め貴金属を担持させた担体を基材層上にコートして形成しているので、コート後に貴金属を担持させたものと比較した場合、コート層内部にまで均一に貴金属が存在するため、酸素吸蔵能力(以下において「OSC」ということがある。)が大きく、触媒浄化ウインドウを広くすることができる。従ってA/F比が変動しても、良好な浄化率を保持することが可能である。
【0019】
さらに、上流側触媒では担体粒子の平均粒径が大きいため、表層の貴金属担持密度を小さくすることができ、かつ、担体粒子間の隙間が大きくなり、コート層内部側への拡散量が増えるので、表層での反応量が減少し、内部側での反応量が増える。従って、コート層における排気ガス流れ方向に直交する面の中央部側と周辺部側との反応熱の違いによる局所的温度勾配を緩和することができ、熱歪によるコート材の剥離を抑制することができる。
【0020】
また、単位長さ、単位セルあたりの貴金属量を上流側触媒と下流側触媒とで同一にするため、浄化性能を維持しつつ高価な貴金属の使用量を抑えることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、上流側触媒と下流側触媒とが一体に形成されているので、装置の小型化が容易となる。また、排気ガス浄化装置全体が本発明の上流側触媒の構造をとっている場合、すなわち担体粒子の平均粒径の大きな立体構造をとっている場合において触媒にOセンサを付けている場合、低濃度が検出できないという問題があるが、本発明の構成、すなわち粒子径の小さな下流側触媒にOセンサを設けることにより、かかる問題を解決することもできる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、上流側触媒と下流側触媒とが別体に設けられており、上流側触媒の一部のセルが閉塞しても、下流側触媒にはその影響が直接に及ぶことはないので、浄化能の低下や圧力損失の増大を最小限に抑えることが出来る。また、上流側触媒と下流側触媒とが別体に形成されているので車両への搭載スペースが限られている場合でも、分割して搭載することが容易でありスペースを有効に活用することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、下流側触媒のセル数を上流側触媒のセル数より減らしているため、貴金属の使用量を減らすことが容易になる。また下流側触媒の熱容量が下がるので下流側触媒温度の上昇速度が速くなり、始動直後の排気ガス浄化能が向上する。さらにセル数を減らすことにより圧損をさらに減らして背圧を下げ、エンジンの出力を向上させることが可能になる。
【0024】
請求項5に記載の発明によれば、下流側触媒のセル数がさらに増えるので、反応機会が増えて排気ガス浄化率が向上する。さらに浄化率を向上しつつエンジン動力性能の低下を抑えることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を参照しつつ本発明の排気ガス浄化装置について、その最良の実施形態をさらに具体的に説明する。
【0026】
図1は、一般的なガソリンエンジンに本発明の排気ガス浄化装置を用いた場合の概略を示すシステム図である。通常本システム50は車両に搭載されているものである。図1ではエンジン10の左方に混合気供給部20、右方に排気系が表されている。混合気供給部20において、所定のA/F比に混合された燃料及び空気はエンジン10に供給されて燃焼される。エンジン10の各シリンダーにおいて燃焼して生成された排気ガスは、エキゾーストマニホールド11を介し排気管15にまとめられて、排気ガス浄化装置30へと導かれている。なお、図1においては排気ガス浄化装置を示す参照符号として便宜上「30」を使用するが、後に説明する第一実施形態乃至第4実施形態にかかる排気ガス浄化装置に対しては、適宜参照符号を変えて説明を行う。
【0027】
排気ガス浄化装置30にて有害物質が浄化処理された排気は排出管16から大気中に放出される。混合気供給部20にはスロットル弁21が設けられ、その上流側にはエアフローメーター22が、スロットル弁21の近傍にはスロットルセンサ23が設けられている。これらメーター22、センサ23からの出力信号は、原動機電子制御装置(以下において「ECU」という。)40に送られる。
【0028】
排気ガス浄化装置30の前後には、A/Fセンサ24、Oセンサ25がそれぞれ設けられ、浄化装置30に導入される排気ガスの空燃比、浄化装置30により浄化された排気の酸素濃度を検知している。これらA/Fセンサ24、及びOセンサ25による検知信号も、ECU40に送られている。
【0029】
ECU40は、これらエアフローメーター22、スロットルセンサ23、A/Fセンサ24、及びOセンサ25による検知信号を受けて、さらに必要により他のセンサからの信号を加えて、最適な制御条件を演算してエンジン10の制御を司っている。
【0030】
図2は、第一実施形態にかかる排気ガス浄化装置100の構成を概略的に示す図である。図2において、図面左方が排気管15、すなわち排気ガス流れ方向上流側、図面右方が排出管16、すなわち排気ガス流れ方向の下流側である。図示の排気ガス浄化装置100は、上流側から下流側へと貫通する多数のセルc1、c2、c3、…を備えている。一方、排気ガス浄化装置100は、上流側は上流側触媒100A、下流側は下流側触媒100Bとされており、両者は異なる触媒構成を有するとともに、一体に形成されている。
【0031】
第一実施形態の排気ガス浄化装置100によれば、上流側触媒100Aと下流側触媒100Bとが一体に形成されているので、装置の小型化が容易となる。また、排気ガス浄化装置全体が上流側触媒100Aの構造をとっている場合、すなわち担体粒子の平均粒径の大きな立体構造をとっている場合において触媒にOセンサを付けていると、低濃度が検出できないという問題があるが、本実施形態の構成、すなわち粒子径の小さな下流側触媒にOセンサを設けることにより、かかる問題を解決することもできる。
【0032】
いま、上流側触媒100Aの各セルにおける担体の平均粒径をQfとする。一方、下流側触媒100Bの各セルにおける担体の平均粒径をQrとする。
【0033】
第一実施形態の排気ガス浄化装置100においては、これらQf、及びQrとの間には、
Qf>Qr
なる関係が成立する。
【0034】
図3は、上流側触媒100A内の任意の一セルの部位A、および下流側触媒100B内の任意の一セルの部位Bにおいて、貴金属、担体がどのようにコート層を形成しているのかを示す概念図である。図3(A)は上流側触媒100Aの、(B)は下流側触媒100Bのそれぞれの基材層101、111上にコート形成されたコート層102、112の厚さ方向断面を模式的に示す。それぞれの図において、排気ガス通路はコート層102、112の上方に左側から右方向へと向かっている。
【0035】
図3(A)に示される上流側触媒100Aでは、基材層101上に、平均粒径の大きな担体、および貴金属からなるコート層102が形成されている。担体には予め貴金属が含浸担持されており、その貴金属を担持した担体が基材層101上にコーティングされてコート層102が形成されている。したがってコート層102の表層部103から内部の基材層101に近接する部位に至るまで、深さ方向に貴金属が均一に分散されている。かかる構成により、上流側触媒100Aでは担体の平均粒径が大きいため、表層部103の貴金属担持密度が小さくでき、かつ、担体粒子間の隙間が大きくなり、コート層102内部側への拡散量が増えるので、表層部103での反応量が減少し、内部側での反応量が増える。従って、コート層102における排気ガス流れ方向に直交する面の中央部側と周辺部側との反応熱の違いによる局所的温度勾配を緩和することができ、熱歪によるコート材の剥離を抑制することができる。
【0036】
図3(B)に示される下流側触媒100Bでは、基材層111上に、平均粒径の小さな担体、および貴金属からなるコート層112が形成されている。下流側触媒100Bにおいても、担体には予め貴金属が含浸担持されており、その貴金属を担持した担体が基材層111上にコーティングされてコート層112が形成されている。したがって下流側触媒100Bにおいても、コート層112の表層部113から内部の基材層111に近接する部位に至るまで、深さ方向に貴金属が均一に分散されている。したがってかかる構成により、下流側触媒100Bにおいては担体粒子の平均粒径が小さいため、貴金属までのガス拡散距離が短縮され、ガス濃度が薄くなっても拡散量を多くすることができる。また担体粒子の平均粒径が小さいので、コート層表面部113の貴金属の面積密度が増大する。このため、ガス濃度が薄くなっても十分な浄化が確保される。もって、排気ガス浄化装置100全体の浄化率を向上させることができる。
【0037】
さらに、担体の平均粒径を下流側触媒100Bより上流側触媒100Aにおいて大きくしたので、担体粒子の平均粒径の大きな上流側触媒100Aでは、エンジンオイルに由来するリン等の触媒に対する被毒物質をトラップして、下流側触媒100Bに達する被毒物質を少なくすることができる。従って、下流側触媒100Bにおいて平均粒径の小さな担体粒子を用いても、被毒によるコート層の目詰まりを少なくすることができる。もって、高い浄化能を長期にわたって維持することが可能となる。
【0038】
加えて、コート層102、112は、予め貴金属を含浸担持させた担体を基材層101、111上にコートして形成しているので、コート後に貴金属を含浸担持させたものと比較した場合、コート層内部にまで均一に貴金属が存在するため、OSCが大きく、触媒浄化ウインドウを広くすることができる。従ってA/F比が変動しても、良好な浄化率を保持することが可能である。
【0039】
第一実施形態にかかる排気ガス浄化装置100において、貴金属は、上流側触媒100Aと下流側触媒100Bとで、単位長さ単位セルあたり同一量とされている。このようにすることによって、浄化性能を維持しつつ高価な貴金属の使用量を抑えることができる。
【0040】
以上に説明した、図3に示される第一実施形態の排気ガス浄化装置100における上流側触媒100Aと下流側触媒100Bにおける貴金属、担体がコート層101、111を形成する態様、およびそれによる作用効果は、以下に説明する第二実施形態乃至第4実施形態にかかる排気ガス浄化装置200、300、400においても同様である。
【0041】
図4は第二実施形態にかかる排気ガス浄化装置200の構成を概略的に示す図である。図4において、図面左方が排気管15、すなわち排気ガス流れ方向上流側、図面右方が排出管16、すなわち排気ガス流れ方向の下流側である。図示の、排気ガス浄化装置200は、上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとが別体に形成され、両者は離隔して配置されている。また、上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとは、排気ガスの流れ方向の長さが略同一であるとともに、排気ガスの流れ方向に直交する面方向の断面積も略同一となるよう形成されている。これら上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとは、排気管15から排出管16へと連通される外套管250に覆われている。
【0042】
上流側触媒200Aは、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc4、c5、c6、…を備えている。一方、下流側触媒200Bも、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc7、c8、c9、…を備えている。上流側触媒200Aのセルc4、c5、c6、…と、下流側触媒200Bのセルc7、c8、c9、…の数は略同一に構成されている。かかる構成の排気ガス浄化装置200においては、排気管15から上流側触媒200Aの各セルc4、c5、c6、…内に流れ込んだ排気ガスは上流側触媒200Aにより所定の浄化を受ける。その後、一旦外套管250の中間部251においてひとつの流れとして合流し、再び下流側触媒200Bの各セルc7、c8、c9、…内に導かれる。下流側触媒200Bの各セルc7、c8、c9、…内においてさらに所定の浄化を受けた排気ガスは排出管16に送られて、そこから外部に排出される。
【0043】
上流側触媒200A内の任意の点A、下流側触媒200B内の任意の点Bにおける貴金属、担体がコート層を形成する態様、およびそれによる作用効果は、図3において説明した第一実施形態の排気ガス浄化装置100におけるものと同様である。よってその説明はここでは省略する。また、第二実施形態にかかる排気ガス浄化装置200において、貴金属は、上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとで、単位長さ単位セルあたり同一量とされている。このようにすることによって、浄化性能を維持しつつ高価な貴金属の使用量を抑えることができる。
【0044】
第二実施形態にかかる排気ガス浄化装置200によれば、上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとが別体に設けられているので、上流側触媒200Aの一部のセルが閉塞しても、下流側触媒200Bにはその影響が直接に及ぶことはない。従って、浄化能の低下や圧力損失の増大を最小限に抑えることが出来る。また、上流側触媒200Aと下流側触媒200Bとが別体に形成されているので車両への搭載スペースが限られている場合でも、分割して搭載することが容易でありスペースを有効に活用することができる。
【0045】
図5は第三実施形態にかかる排気ガス浄化装置300の構成を概略的に示す図である。図5において、図面左方が排気管15、すなわち排気ガス流れ方向上流側、図面右方が排出管16、すなわち排気ガス流れ方向の下流側である。図示の、排気ガス浄化装置300は、上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとが別体に形成され、両者は離隔して配置されている。また、上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとは、排気ガスの流れ方向の長さが略同一であるとともに、排気ガスの流れ方向に直交する面方向の断面積も略同一となるよう形成されている。これら上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとは、排気管15から排出管16へと連通される外套管350に覆われている。
【0046】
上流側触媒300Aは、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc10、c11、c12、…を備えている。一方、下流側触媒300Bも、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc13、c14、c15、…を備えている。上流側触媒300Aのセルc10、c11、c12、…は、下流側触媒300Bのセルc13、c14、c15、…の数より多く形成されている。換言すれば、排気ガスの流れ方向に直交する面方向の断面について、上流側触媒300Aのセルc10、c11、c12、…の断面積は、下流側触媒300Bのセルc13、c14、c15、…の断面積より小さく形成されている。
【0047】
かかる構成の排気ガス浄化装置300においては、排気管15から上流側触媒300Aの各セルc10、c11、c12、…内に流れ込んだ排気ガスは上流側触媒300Aにより所定の浄化を受ける。その後、一旦外套管350の中間部351においてひとつの流れとして合流し、再び下流側触媒300Bの各セルc13、c14、c15、…内に導かれる。下流側触媒300Bの各セルc13、c14、c15、…内においてさらに所定の浄化を受けた排気ガスは排出管16に送られて、そこから外部に排出される。
【0048】
上流側触媒300A内の任意の点A、下流側触媒300B内の任意の点Bにおける貴金属、担体がコート層を形成する態様、およびそれによる作用効果は、図3において説明した第一実施形態の排気ガス浄化装置100におけるものと同様である。よってその説明はここでは省略する。また、第三実施形態にかかる排気ガス浄化装置300において、貴金属は、上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとで、単位長さ単位セルあたり同一量とされている。ただしセル数が下流側触媒300Bの方が少なくなるので、単位容積当たりの貴金属量では、下流側触媒300Bの方が少ない。このようにすることによって、浄化性能を維持しつつ高価な貴金属の使用量を抑えることができる。
【0049】
第三実施形態にかかる排気ガス浄化装置300によれば、上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとが別体に設けられているので、上流側触媒300Aの一部のセルが閉塞しても、下流側触媒300Bにはその影響が直接に及ぶことはない。従って、浄化能の低下や圧力損失の増大を最小限に抑えることが出来る。また、上流側触媒300Aと下流側触媒300Bとが別体に形成されているので車両への搭載スペースが限られている場合でも、分割して搭載することが容易でありスペースを有効に活用することができる。加えて、下流側触媒300Bのセル数を上流側触媒300Aのセル数より減らしているため、貴金属の使用量を減らすことが容易になる。また下流側触媒300Bの熱容量が下がるので下流側触媒300Bの温度の上昇速度が速くなり、始動直後の排気ガス浄化能が向上する。さらにセル数を減らすことにより圧損をより多く減らして背圧を下げ、エンジンの出力を向上させることが可能になる。
【0050】
図6は第四実施形態にかかる排気ガス浄化装置400の構成を概略的に示す図である。図6において、図面左方が排気管15、すなわち排気ガス流れ方向上流側、図面右方が排出管16、すなわち排気ガス流れ方向の下流側である。図示の、排気ガス浄化装置400は、上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとが別体に形成され、両者は離隔して配置されている。また、上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとは、排気ガスの流れ方向の長さに関し、上流側触媒400Aが下流側触媒400Bより大である。また、排気ガスの流れ方向に直交する面方向の断面積に関しては、上流側触媒400Aが下流側触媒400Bより小さくなるよう形成されている。これら上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとは、排気管15から排出管16へと連通される外套管450に覆われている。
【0051】
上流側触媒400Aは、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc16、c17、c18、…を備えている。一方、下流側触媒400Bも、排気ガスの流れ方向に沿って上流側から下流側へと貫通する多数のセルc19、c20、c21、…を備えている。上流側触媒400Aのセルc16、c17、c18、…は、下流側触媒400Bのセルc19、c20、c21、…の数より少なく形成されている。換言すれば、排気ガスの流れ方向に直交する面方向の断面について、上流側触媒400Aのセルc16、c17、c18、…の断面積は、下流側触媒400Bのセルc19、c20、c21、…の断面積より大きく形成されている。
【0052】
かかる構成の排気ガス浄化装置400においては、排気管15から上流側触媒400Aの各セルc16、c17、c18、…内に流れ込んだ排気ガスは上流側触媒400Aにより所定の浄化を受ける。その後、一旦外套管450の中間部451においてひとつの流れとして合流し、再び下流側触媒400Bの各セルc19、c20、c21、…内に導かれる。下流側触媒400Bの各セルc19、c20、c21、…内においてさらに所定の浄化を受けた排気ガスは排出管16に送られて、そこから外部に排出される。
【0053】
上流側触媒400A内の任意の点A、下流側触媒400B内の任意の点Bにおける貴金属、担体がコート層を形成する態様、およびそれによる作用効果は、図3において説明した第一実施形態の排気ガス浄化装置100におけるものと同様である。よってその説明はここでは省略する。また、第四実施形態にかかる排気ガス浄化装置400において、貴金属は、上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとで、単位長さ単位セルあたり同一量とされている。ただしセル数が上流側触媒400Aの方が少なくなるので、単位容積当たりの貴金属量では、上流側触媒400Aの方が少ない。
【0054】
第四実施形態にかかる排気ガス浄化装置400によれば、上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとが別体に設けられているので、上流側触媒400Aの一部のセルが閉塞しても、下流側触媒400Bにはその影響が直接に及ぶことはない。従って、浄化能の低下や圧力損失の増大を最小限に抑えることが出来る。また、上流側触媒400Aと下流側触媒400Bとが別体に形成されているので車両への搭載スペースが限られている場合でも、分割して搭載することが容易でありスペースを有効に活用することができる。加えて、下流側触媒400Bのセル数を上流側触媒400Aのセル数より減らしているため、貴金属の使用量を減らすことが容易になる。また下流側触媒400Bの熱容量が下がるので下流側触媒400Bの温度の上昇速度が速くなり、始動直後の排気ガス浄化能が向上する。さらにセル数を減らすことにより圧損をより多く減らして背圧を下げ、エンジンの出力を向上させることが可能になる。加えて、下流側触媒400Bのセル数がさらに増えるので、反応機会が増えて排気ガス浄化率が向上する。さらに浄化率を向上しつつエンジン動力性能の低下を抑えることが可能になる。
【0055】
本発明の排気ガス浄化装置100、200、300、400において、貴金属の種類は特に限定されるものではないが、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、およびパラジウム(Pd)のうちのいずれか、またはこれらを組み合わせて使用することができる。これらの中でも、Pt、及び/又はRhを好ましく使用することができる。
【0056】
また、本発明の排気ガス浄化装置100、200、300、400において、担体の種類は特に限定されるものではないが、多孔質で表面積の大きな材料、たとえばセリア/アルミナ、あるいはジルコニア等を好適に使用することができる。
【0057】
上流側触媒100A、200A、300A、400Aの担体粒子径は下流側担体粒子径の2倍以上であることが好ましい。かかる粒子径比を取ることにより、本発明の排気ガス浄化装置100、200、300、400の浄化能をより高めることができる。
【0058】
図7は、本発明の排気ガス浄化装置100、200、300、400の製造工程を模式的に示す図である。平均粒径大である担体粉末Aに貴金属を含浸担持させて上流側に使用する基材上にコーティングする。一方、平均粒径小である担体粉末Bに貴金属を含浸担持させ、下流側に使用する基材上にコーティングする。かかる貴金属を担持した担体をコートされた基材をそれぞれ焼成することにより、排気ガス浄化装置100、200、300、400の上流側、下流側各触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】一般的なガソリンエンジンに本発明の排気ガス浄化装置を用いた場合の概略を示すシステム図である。
【図2】第一実施形態の排気ガス浄化装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】(A)は上流側触媒の、(B)は下流側触媒の基材層上に形成されたコート層の厚さ方向断面を模式的に示す図である。
【図4】第二実施形態の排気ガス浄化装置の構成を概略的に示す図である。
【図5】第三実施形態の排気ガス浄化装置の構成を概略的に示す図である。
【図6】第四実施形態の排気ガス浄化装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】排気ガス浄化装置の触媒製造工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0060】
c1〜c20、c21… セル
10 エンジン
11 エキゾーストマニホールド
15 排気管
16 排出管
20 混合気供給部
21 スロットル弁
22 エアフローメーター
23 スロットルセンサ
24 A/Fセンサ
25 O2センサ
40 ECU
50 システム
101、111 基材層
102、112 コート層
103、113 表層部
30、100、200、300、400 排気ガス浄化装置
100A、200A、300A、400A 上流側触媒
100B、200B、300B、400B 下流側触媒
250、350、450 外套管
251、351、451 (外套管)中間部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガス通路に配設され、前記排気ガスの流れ方向に沿って上流側触媒と下流側触媒とを備えるとともに、これら各触媒は基材層上に予め貴金属を担持させた担体粒子を有するコート層を具備する排気ガス浄化装置であって、
前記上流側触媒の担体粒子の平均粒径は、前記下流側触媒の担体粒子の平均粒径より大きく、
単位長さ、単位セルあたりの前記貴金属量は、前記上流側触媒と下流側触媒とで同一である、ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記上流側触媒と下流側触媒とは、一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記上流側触媒と下流側触媒とは、離隔して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記上流側触媒のセル数は、下流側触媒のセル数より多いことを特徴とする請求項3に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記排気ガスの流れ方向に沿った長さに関して、前記上流側触媒は下流側触媒より大であるとともに、前記流れ方向に直交する面方向の断面積に関して前記上流側触媒は下流側触媒より小であり、
セル数に関して、前記上流側触媒は下流側触媒より小である、ことを特徴とする請求項3に記載の排気ガス浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−231248(P2006−231248A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51831(P2005−51831)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】