説明

排気ガス浄化装置

【課題】排気ガスの流れ分布を均一にし、かつ小型化できる排気ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】排気ガス浄化装置1は、筒状の流入側ボディ22と排気ガスが流入する流入管21、および筒状の流出側ボディ42と排気ガスが流出する流出管41を備える。また、流入管21には、流入側ボディ22における排気ガス流れ方向上流側の開口を覆うルーバー部材24が設けられている。そして、ルーバー部材24には、スリット2411と、このスリット2411を通過した排気ガスの流れ方向を所望の方向に変更可能な傾斜板2412とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の排気管途中に排気ガス浄化装置を設けることで、黒煙のもととなる排気ガス中のパーティキュレート・マター(PM(Particulate Matter):粒子状物質)を捕集し、PMが大気中に排出されるのを防止することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1における排気ガス浄化装置は、入口ユニット、排気ガス中のPM捕集用のフィルタが内蔵された処理ユニット、および出口ユニットを備え、各ユニットは筒状に形成されている。また、入口ユニットおよび出口ユニットは、処理ユニットの両端部にそれぞれ接続されている。
【0003】
この入口ユニットは、エンジンからの排気管に接続される入口管部と、処理ユニットの端部に接続されて格子状の整流部材が内蔵された第1本体管部とを備える。入口管部は、第1本体管部の外面に設けられた切欠部分に径方向に突出して接続される。これにより、入口ユニットの入口管部から第1本体管部に流入した排気ガスは、第1本体管部内の整流部材で整流された後、処理ユニット内のフィルタで浄化されて出口ユニットから流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/139333号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の排気ガス浄化装置では、排気ガスの一部が第1本体管部に対して径方向から流入するため、排気ガスの流れ分布が入口ユニットの底側に偏り易いのであるが、このような排気ガスの流れを格子状の整流部材により整流しても、排気ガスの流れ分布を均一にするには限界があり、十分に均一化できない場合がある。これにより、フィルタのある特定の部分のみが使用されてしまい、フィルタを効率的に使用できない。
そこで、整流部材とフィルタとの間の距離を長く確保して、整流部材で整流された排気ガスの流れ分布を均一にしてから排気ガスをフィルタに流入することが考えられる。
しかしながら、整流部材とフィルタとの間の距離を長く確保しようとすると、入口ユニット等が大型化して、ひいては排気ガス浄化装置が大型化するという問題がある。
【0006】
また、従来の排気ガス浄化装置では、出口ユニットに設けられた出口管の径寸法が小さいことから、スーツフィルタから流出した排気ガスの抜けが良好とはいえず、効率的に排気できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、排気ガスの流れ分布を均一にし、かつ装置全体を小型化できる排気ガス浄化装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、排気効率を向上させることができる排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガスが流通する筒状の流入側ボディ、前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向の上流側に配置されて排気ガスが流入する流入管、排気ガスが流通する筒状の流出側ボディ、前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向の下流側に配置されて排気ガスが流出する流出管、前記流入側ボディおよび前記流出側ボディの間に設けられてスーツフィルタが収容されたフィルタケースを備える排気ガス浄化装置であって、前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向上流側の開口および前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向下流側の開口のうち、少なくともいずれか一方のボディの開口を覆うルーバー部材を備え、前記ルーバー部材には、複数のスリットと、前記スリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材は、少なくとも前記流入管に設けられ、前記ルーバー部材の下流側には、排気ガスが通過する多数の開口を有した整流部材が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材は、少なくとも前記流入管に設けられ、前記流入管は、排気ガスが前記流入側ボディの径方向に沿って流れて該流入側ボディの上流側の端部に達した後、この端部から前記流入側ボディ内に流入する形状に設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材の複数のスリットは、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びており、前記スリットの開口面積は、径方向に流れる排気ガスの上流側のスリットで大きく下流側に設けられたスリットほど小さいことを特徴とする。
【0012】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材の複数のスリットは、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びており、前記方向変更板の傾斜角度は、径方向に流れる排気ガスの上流側の方向変更板で大きく下流側に設けられた方向変更板ほど小さいことを特徴とする。
なお、ここでの傾斜角度とは、板状に形成されるルーバー部材の面内方向に対する傾斜角度をいう。
【0013】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材は、少なくとも前記流出管に設けられ、前記ルーバー部材の上流側には、前記流出管から流入した水が前記フィルタケース内に浸入するのを防止する堰き止め板が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の排気ガス浄化装置では、前記ルーバー部材は、前記流入管および前記流出管の両方に設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の排気ガス浄化装置は、排気ガスが流通する筒状の流入側ボディ、前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向の上流側に配置されて排気ガスが流入する流入管、排気ガスが流通する筒状の流出側ボディ、前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向の下流側に配置されて排気ガスが流出する流出管、前記流入側ボディおよび前記流出側ボディの間に設けられてスーツフィルタが収容されたフィルタケースを備える排気ガス浄化装置であって、前記流入管は、排気ガスが前記流入側ボディの径方向に沿って流れて該流入側ボディの上流側の端部に達した後、この端部から前記流入側ボディ内に流入する形状に設けられ、前記流出管は、前記流出側ボディの下流側の端部から流出した排気ガスが、この端部から前記流出側ボディの径方向に沿って流れる形状に設けられ、前記流入管には、前記流入側ボディの前記上流側の開口を覆う第1ルーバー部材が設けられ、前記流出管には、前記流出側ボディの前記下流側の開口を覆う第2ルーバー部材が設けられ、前記流入側ボディには、ドージング燃料を酸化、発熱させるための酸化触媒が収容されるとともに、前記第1ルーバー部材の下流側において、排気ガスが通過する多数の開口を有した整流部材が設けられ、前記流出側ボディには、前記第2ルーバー部材の上流側において、前記流出管から流入した水が前記フィルタケース内に浸入するのを防止する堰き止め板が設けられ、前記第1ルーバー部材には、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びた複数のスリットと、これらのスリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられ、前記第2ルーバー部材には、前記排気ガスの前記流出側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びた複数のスリットと、これらのスリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排気ガス浄化装置によれば、流入側ボディの排気ガス流れ方向上流側の開口および流出側ボディの排気ガス流れ方向下流側の開口の少なくともいずれか一方の開口をルーバー部材で覆っている。このルーバー部材は、スリットと方向変更板と備えて、スリットを通過した排気ガスの流れ方向を所望の方向に変更する。
例えば、ルーバー部材により流入側ボディの開口を覆うことで、流入管から流入した排気ガスの流れ分布が不均一であっても、排気ガスの流れがルーバー部材で変更され、排気ガスの流れ分布を強制的に均一化できる。すなわち、流入側ボディ内での排気ガスの流れ分布が均一化され、排気ガスはこの状態を維持したまま、流入側ボディの下流側に配置されるスーツフィルタに対して流入するため、スーツフィルタに対して特定の箇所に集中して排気ガスが流入することがなく、スーツフィルタの寿命を長くできる。
また、従来では、整流部材とスーツフィルタとの間の距離を長く確保して、整流部材で整流された排気ガスの流れ分布を均一化させていたが、本発明によれば、ルーバー部材により排気ガス流れ方向を矯正することで流れ分布を均一化するので、整流部材とスーツフィルタとの間の距離を従来よりも短縮でき、排気ガス浄化装置を小型化できる。
【0017】
一方、ルーバー部材が流出側ボディの開口を覆う場合では、ルーバー部材によりスーツフィルタを通過した排気ガスの流れ方向が、流出管における排気ガスの流出方向に変更される。
これによれば、排気ガスは流出管を通って外部に流出し易くなり、流出側ボディおよび流出管内での背圧上昇が抑制され、この結果、流入側ボディおよび流入管側と、流出側ボディおよび流出管側との両方での排気ガスの流れもスムーズになり、装置全体での排気効率を向上させることができる。
【0018】
本発明において、ルーバー部材の下流側に整流部材を設ける場合には、排気ガスの流れの分布が一層均一化され、スーツフィルタのさらなる寿命延長が期待できる。
【0019】
本発明において、流入管としては、排気ガスを流入側ボディの径方向に沿って流して該流入側ボディの端部に導き、この端部から流入側ボディの軸線方向に沿って流入側ボディ内に流入させる形状にするので、流入管を流入側ボディに対して径方向に延出させることができ、軸線方向に沿って延出させるよりも占有スペースを小さくでき、エンジンルームの省スペース化に対応できる。
【0020】
この際、ルーバー部材のスリットの開口面積や方向変更板の傾斜角度を、排気ガスの流れ方向に対して変化させることで、ルーバー部材を通過する排気ガスの流量を好適に調整でき、流れ分布の均一化をより促進できる。
【0021】
本発明において、ルーバー部材を流出管に設けるとともに、このルーバー部材の上流側に堰き止め板を設ける場合には、この堰き止め板によって排気ガスの流れに偏りが生じることになるが、その下流にあるルーバー部材にて、偏った流れの排気ガスをもスムーズに排出でき、排気効率を良好に維持できる。また、堰き止め板により、雨水等がフィルタケース内に浸入するのを防止でき、スーツフィルタの耐候性を向上させることができる。
【0022】
なお、ルーバー部材を流入管および流出管の両方に設ける場合には、本発明の前述した両方の目的を達成できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気ガス浄化装置の外観を示す全体斜視図。
【図2】前記排気ガス浄化装置の入口ケースの分解斜視図。
【図3】前記入口ケースの断面図。
【図4】前記排気ガス浄化装置の出口ケースの分解斜視図。
【図5】前記出口ケースの断面図。
【図6】前記出口ケースを排気ガス流れ方向の上流側から見た平面図。
【図7】前記排気ガス浄化装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る排気ガス浄化装置1の外観を示す全体斜視図である。
なお、以下の説明で使用する「上流側」とは、排気ガスの流れ方向の上流側をいい、「下流側」とは、排気ガス流れ方向の下流側をいう。
排気ガス浄化装置1は、図示しないディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと称する)からの排気管途中に設けられて、排気ガス中に含まれるPMを捕集するものである。この排気ガス浄化装置1は、該排気管と接続されて排気ガスを流入する有底円筒状の入口ケース2と、入口ケース2の下流側に配置された円筒状のフィルタケース3と、フィルタケース3の下流側に配置されて排気ガスを排出する有底円筒状の出口ケース4とを備える。各ケース2〜4は、それぞれの開口側の端縁に設けられたフランジ継手5を介してボルト等により接続されている。
【0025】
図2は、入口ケース2の分解斜視図であり、図3は、入口ケース2の断面図である。
入口ケース2の下流側は開口しており、この開口側の端縁にはフランジ継手5が一体的に形成されている。また、入口ケース2は、円筒状の流入側ボディ22と、当該円筒状の流入側ボディ22の軸線Nに沿った方向に膨出し、かつ径方向に突出して排気管に接続される流入管21とを備え、流入側ボディ22の上流側の開口を流入管21が閉塞することで構成される。
【0026】
流入管21はさらに、上流側の上流閉塞部材23と、下流側の第1ルーバー部材24とが一体化されて構成される。
上流閉塞部材23は、流入側ボディ22の上流側の端部を形成する端面2313を有するとともに、この端面2313から膨出した排気ガス流路形成用の側壁部231を有している。側壁部231の上流側には、流入側ボディ22に対して径方向に突出した半円筒状の第1入口部232が連続して形成されている。
ここで、側壁部231は、鉛直面2311と、鉛直面2311の下端から下流側に向けて拡開するように傾斜する傾斜面2312とで形成されている。すなわち、図3に示すように、軸線Nに垂直なA1−A1断面、A2−A2断面、A3−A3断面に沿って断面視したとき、傾斜面2312の傾斜方向により上流閉塞部材23の内部空間の断面積は、矢印A1から矢印A3に向かうに従って増加していく。
【0027】
第1ルーバー部材24は、流入した排気ガスの流れ方向を矯正して、後述するスーツフィルタ31の上流側端面に排気ガスを均一に流入させるものである。この第1ルーバー部材24は、排気ガスが通過する板状のルーバー部241を有している。ルーバー部241の上流側には、流入側ボディ22に対して径方向に突出した半円筒状の第2入口部242が連続して形成されている。
【0028】
ルーバー部241は、それぞれ水平方向(第1、第2入口部232,242内を流れる排気ガスの流れ方向に対して直交する方向)を長さ方向として延びる複数のスリット2411と、各スリット2411に形成されて該スリット2411を通過する排気ガスの流れ方向を変更する傾斜板(方向変更板)2412と、上流閉塞部材23の端面2313が当接される当接面2413とを備える。
【0029】
複数のスリット2411のうち、第2入口部242側のスリット2411Aでは、スリット開口面積が最大になっている。他のスリット2411では、それぞれの開口高さがH1〜H6となっており、図中の下側のスリット2411ほど小さく(H1>H2>H3>H4>H5>H6)、スリット2411Bが最も小さい。また、スリット2411の開口長さは、図2からも分かるように、ルーバー部241の中央付近のスリット2411ほど大きく、離れるほど小さくなるので、結果として上流側ほど開口面積が大きくなる。
【0030】
また、傾斜板2412は、流入側ボディ22に対してその端部側から流れ込もうとする排気ガスの流れ分布を、後述する下流側の整流部材221も併せて用いることで所定の状態に均一化するものである。本実施形態では、排気ガスは、流入側ボディ22の端部側に達するまでは、径方向に沿って流れていることから、端部に近接して設けられた第1ルーバー部材24の傾斜板2412としては、スリット2411Aに近い上流側の傾斜板2412の傾斜角度が最も大きく、下流側にあるスリット2411Bに近づくにつれて傾斜板2412の傾斜角度が小さくなっている。
【0031】
なお、ここでの傾斜角度とは、板状であるルーバー部241の面内方向に対する傾斜角度をいう。そして、その傾斜方向は、排気ガスの流れが大きく阻害されないよう、上流閉塞部材23の傾斜面2312と同じである。
【0032】
つまり、流入管21内を流入側ボディ22の径方向に沿って流れる排気ガスの多くは従来、傾斜面2312付近を通過し易いが、そのような排気ガスの流れ方向の上流側に対応したスリット2411ほど大きく開口させ、また、上流側ほど傾斜板2412の傾斜角度をより大きくしたことで、上流側のスリット2411を通過する排気ガスの流量が増加する。これにより、傾斜面2312付近を通過する排気ガスの流量を少なくでき、流入管21から流入側ボディ22に流入した排気ガスの流れ分布を均一にできる。
【0033】
第2入口部242は、排気ガスの入口側が半円形状に形成されているが、側面から見ると、下流側に向かうに従って絞られており、最終的に板状のルーバー部241と連続するように形成されている。この第2入口部242が第1入口部232に接合されることで、排気管に接続される円筒状の入口部20を構成する。さらに、第1ルーバー部材24が流入側ボディ22の上流側端縁に接合される他、上流閉塞部材23の側壁部231の開口端縁が第1ルーバー部材24と接合されることで流入管21が構成される。これにより、流入管21全体の形状としては、排気ガスの入口側が円筒状とされ、流入側ボディ22の上流の端部側では、偏平した箱状に形成される。
【0034】
流入側ボディ22の内部には、上流側に排気ガスの流れを整流する整流部材221が設けられ、その下流側に燃料供給装置(図示略)によって供給されたドージング燃料(例えば、軽油)を酸化、発熱させるための酸化触媒222が設けられる。また、流入側ボディ22の内面と酸化触媒222の外周面との間には、流入側ボディ22の表面温度の上昇を抑制し、かつ酸化触媒222をボディ22内に保持するセラミックス繊維製の断熱材兼保持材223が設けられる。さらに、流入側ボディ22の外周面には、断熱材2232が設けられている。
整流部材221は、円板部分に排気ガスが通過する多数の開口を有した網状または格子状に形成されている。
酸化触媒222は、ドージング燃料を酸化、発熱することで排気ガスの温度を上昇させる。温度上昇した排気ガスにより、下流側の後述するスーツフィルタ31に堆積したPMを自己燃焼させて焼却除去し、スーツフィルタ31を再生させる。
【0035】
フィルタケース3は、上流側および下流側が開口しており、この開口側の端縁にフランジ継手5が一体的に形成されている。このフィルタケース3の内部には、排気ガス中のPMを捕集するためのスーツフィルタ31(図1に示す破線部分)が収容されている。スーツフィルタ31の外周面とフィルタケース3の内面との間には、セラミックス繊維製の断熱材兼保持材311(図7参照)が設けられている。さらに、フィルタケース3の外周面には、断熱材3112が(図7参照)が設けられている。
【0036】
図4は、出口ケース4の分解斜視図、図5は、出口ケース4の断面図、図6は、出口ケース4の上流側から見た平面図である。
出口ケース4の上流側は開口しており、この開口側の端縁にはフランジ継手5が一体的に形成されている。また、出口ケース4は、円筒状の流出側ボディ42と、当該円筒状の流出側ボディ42の軸線Nに沿った方向に膨出し、かつ径方向に突出して排気用のテールパイプに接続される流出管41とを備え、流出側ボディ42の下流側の開口を流出管41が閉塞することで構成される。
【0037】
流出管41はさらに、下流側の下流閉塞部材43と、上流側の第2ルーバー部材44とが一体化されて構成される。なお、流出管41の下流閉塞部材43および第2ルーバー部材44は、流入管21の上流閉塞部材23および第1ルーバー部材24と同一構成である。以下には、それらを具体的に説明する。
【0038】
下流閉塞部材43は、流出側ボディ42の下流側の端部を形成する端面4313を有するとともに、この端面4313から膨出した排気ガス流路形成用の側壁部431を有している。側壁部431の下流側には、流出側ボディ42に対して径方向に突出した半円筒状の第1出口部432が連続して形成されている。
ここで、側壁部431は、鉛直面4311と、鉛直面4311の下端から上流側に向けて拡開するように傾斜する傾斜面4312とで形成されている。この場合、図5に示すように、軸線Nに垂直なB1−B1断面、B2−B2断面、B3−B3断面に沿って断面視したとき、傾斜面4312の傾斜方向により下流閉塞部材43の内部空間の断面積は、矢印B1から矢印B3に向かうに従って減少していく。
【0039】
第2ルーバー部材44は、スーツフィルタ31で浄化された排気ガスを後述する出口部40に導くものであり、その構成は、入口ケース2に設けられる第1ルーバー部材24と同様である。従って、第2ルーバー部材44も、排気ガスが通過する板状のルーバー部441を有している。ルーバー部441の下流側には、流出側ボディ42に対して径方向に突出した半円筒状の第2出口部442が連続して形成されている。
【0040】
ルーバー部441は、それぞれ水平方向(第1、第2出口部432,442を流れる排気ガスの流れ方向に対して直交する方向)に延びる複数のスリット4411と、各スリット4411に形成されて該スリット4411を通過する排気ガスの流れ方向を変更する傾斜板(方向変更板)4412と、下流閉塞部材43の端面4313が当接される当接面4413とを備える。
【0041】
各スリット4411および各傾斜板4412の態様は、第1ルーバー部材24の各スリット2411および各傾斜板2412と同様である。つまり、複数のスリット4411のうち、第2入出口部42側のスリット4411Aでは、スリット開口面積が最大になっている。他のスリット4411では、それぞれの開口高さがH1〜H6となっており、図中の下側のスリット4411ほど小さく(H1>H2>H3>H4>H5>H6)、スリット4411Bが最も小さい。また、スリット4411の開口長さは、図4からも分かるように、ルーバー部441の中央付近のスリット4411ほど大きく、離れるほど小さくなるので、結果として後述の通気孔4211に近いほど開口面積が大きくなる。
【0042】
つまり、各スリット4411および各傾斜板4412は、流出側ボディ42の端部側から軸線Nに沿って偏った流れ分布で流れ出ようとする排気ガスを、より確実に径方向に沿った流れに変更するものであり、第2ルーバー部材44により排気ガスの流れを変更することで、排気をスムーズに行い、背圧の上昇を抑えて排気効率を向上させている。本実施形態では、流出側ボディ42の内部に後述する堰き止め板421が設けられ、この堰き止め板421から排気ガスが偏って流出することになるが、各スリット4411および各傾斜板4412は、そのような排気ガスの流れを効率的に排気できるようにしている。
【0043】
第2出口部442は、排気ガスの出口側が半円形状に形成されているが、側面から見ると、上流側に向かうに従って絞られており、最終的に板状のルーバー部441と連続するように形成されている。この第2出口部442が第1出口部432接合されることで、排気管に接続される円筒状の出口部40を構成する。さらに、第2ルーバー部材44が流出側ボディ42の下流側端縁に接合される他、下流閉塞部材43の側壁部431の開口端縁が第2ルーバー部材44と接合され、下流閉塞部材43の端面4313の外周が流出側ボディ42の外周と接合されることで流出管41が構成される。これにより、流出管41全体の形状としても、排気ガスの出口側が円筒状とされ、流出側ボディ42の下流の端部側では、偏平した箱状に形成される。
【0044】
流出側ボディ42の内部には、上流側に堰き止め板421が設けられる。
堰き止め板421は、排気ガスを通過させつつ、雨水等がフィルタケース3内に浸入することを防止するものである。このため、堰き止め板421は、図6に示すように、図中の上方に円形状に開口形成された通気孔4211を備え、浸入した雨水を底側で堰き止める。これにより、フィルタケース3の下流側端面から略満遍なく流出した排気ガスは、堰き止め板421の通気孔4211を通過することで流れ分布に偏りが生じるが、通気孔4211を通過した多くの排気ガスは、大きく開口したスリット4411Aからスムーズに排出されることとなり、その他の排気ガスに関しても、他のスリット4411を通過することで、その流れを出口部40に向けて径方向に確実に変更でき、スムーズに排出できる。
【0045】
次に、排気ガス浄化装置1内の排気ガスの流れについて、図7に示す排気ガス浄化装置1の断面図を参照して説明する。
まず、排気ガスは、エンジンの排気管から入口ケース2の入口部20へ流入し、流入管21内を流入側ボディ22に対して径方向に流れる(矢印A1)。排気ガスは、他のスリット2411を通過することで、傾斜板2412にて向きが変更され、流入管21を出る。そして流入側ボディ22内に流入し、整流部材221に向かう(矢印A3)。この際、排気ガスの一部は、傾斜面231近傍に到達し、滞留することなく、流入側ボディ22の上流の端部側から最も大きく開口したスリット2411Aや、その近傍のスリット2411を通過して、傾斜板2412で向きが変更され、流入管21を出る。そして流入側ボディ22内に流入し、整流部材221に向かう(矢印A2)。この結果、排気ガスの流れは、整流部材221の上流側で均一に近い状態まで分散する。
そして、排気ガスは、整流部材221を通過することで、その流れ分布が一層均一化され、酸化触媒222に流入する(矢印A4)。
【0046】
酸化触媒222に流入した排気ガスは、必要に応じてドージング燃料を燃焼させることにより温度が高められて酸化触媒222から流出し、フィルタケース3のスーツフィルタ31の端面に対して分布が均一に維持された状態でフィルタケース3に流入する(矢印A5)。
その後、排気ガスは、スーツフィルタ31でPMが捕集されてスーツフィルタ31の下流側に流出し、出口ケース4内の堰き止め板421の通気孔4211を通過する(矢印A6)。通気孔4211を通過した排気ガスは、流出側ボディ42から出る。そして流出管41内に流入する。排気ガスは、通気孔4211にほぼ相対する位置にある流出管41の最も大きく開口したスリット4411Aや、その近傍のスリット4411を主に通過する。一方、スリット4411A等を通過しきれなかった排気ガスも、他のスリット4411を通過することで傾斜板4412にて向きが変更され、出口部40からスムーズに排出される(矢印A7)。
【0047】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、流入管21および流出管41は、入口ケース2および出口ケース4の各端部から径方向に沿って設けられていたが、流入管21および流出管41のいずれか一方または両方は、軸線方向に沿って設けられていてもよい。
また、前記実施形態では、入口ケース2および出口ケース4の双方にルーバー部材24,44を設けたが、いずれか一方のケースに設ける構成であってもよい。
さらに、前記実施形態では、流入管21および流出管41は、同一の径方向を向いているが、異なっていてもよい。例えば、流入管21に対し、流出管41をフィルタケース3の軸線Nを中心に180度回転させて配置することも可能である。
【0048】
前記実施形態では、ルーバー部材24,44における上方のスリット2411A,4411Aが他のスリット2411,4411よりも大きい開口面積を有していたが、他のスリット2411,4411と同一の開口面積であってもよい。
前記実施形態では、出口ケース4に堰き止め板421を設けたが、堰き止め板421を設けない構成であってもよく、この場合にはスーツフィルタ31を通過した排気ガスが第2ルーバー部材44全体に対して流入するため、排気ガスの流れがよりスムーズになる。
【0049】
前記実施形態の排気ガス浄化装置1には、酸化触媒222が設けられたが、スーツフィルタ31の再生方法の違いによっては省略してもよい。
前記各実施形態での断熱材はセラミックス繊維製であったが、ガラス繊維製の断熱材であってもよく、材質は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、建設機械、土木機械、農業機械、発電装置、輸送車両等に搭載される内燃機関の排気ガス浄化装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1…排気ガス浄化装置、3…フィルタケース、21…流入管、22…流入側ボディ、24…第1ルーバー部材(ルーバー部材)、31…スーツフィルタ、41…流出管、42…流出側ボディ、44…第2ルーバー部材(ルーバー部材)、221…整流部材、222…酸化触媒、421…堰き止め板、2411,2411A,4411,4411A…スリット、2412,4412…傾斜板(方向変更板)、4211…通気孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する筒状の流入側ボディ、前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向の上流側に配置されて排気ガスが流入する流入管、排気ガスが流通する筒状の流出側ボディ、前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向の下流側に配置されて排気ガスが流出する流出管、前記流入側ボディおよび前記流出側ボディの間に設けられてスーツフィルタが収容されたフィルタケースを備える排気ガス浄化装置であって、
前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向上流側の開口および前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向下流側の開口のうち、少なくともいずれか一方のボディの開口を覆うルーバー部材を備え、
前記ルーバー部材には、複数のスリットと、前記スリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材は、少なくとも前記流入管に設けられ、
前記ルーバー部材の下流側には、排気ガスが通過する多数の開口を有した整流部材が設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材は、少なくとも前記流入管に設けられ、
前記流入管は、排気ガスが前記流入側ボディの径方向に沿って流れて該流入側ボディの上流側の端部に達した後、この端部から前記流入側ボディ内に流入する形状に設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材の複数のスリットは、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びており、
前記スリットの開口面積は、径方向に流れる排気ガスの上流側のスリットで大きく下流側に設けられたスリットほど小さい
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材の複数のスリットは、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びており、
前記方向変更板の傾斜角度は、径方向に流れる排気ガスの上流側の方向変更板で大きく下流側に設けられた方向変更板ほど小さい
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1に記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材は、少なくとも前記流出管に設けられ、
前記ルーバー部材の上流側には、前記流出管から流入した水が前記フィルタケース内に浸入するのを防止する堰き止め板が設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の排気ガス浄化装置において、
前記ルーバー部材は、前記流入管および前記流出管の両方に設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項8】
排気ガスが流通する筒状の流入側ボディ、前記流入側ボディにおける排気ガス流れ方向の上流側に配置されて排気ガスが流入する流入管、排気ガスが流通する筒状の流出側ボディ、前記流出側ボディにおける排気ガス流れ方向の下流側に配置されて排気ガスが流出する流出管、前記流入側ボディおよび前記流出側ボディの間に設けられてスーツフィルタが収容されたフィルタケースを備える排気ガス浄化装置であって、
前記流入管は、排気ガスが前記流入側ボディの径方向に沿って流れて該流入側ボディの上流側の端部に達した後、この端部から前記流入側ボディ内に流入する形状に設けられ、
前記流出管は、前記流出側ボディの下流側の端部から流出した排気ガスが、この端部から前記流出側ボディの径方向に沿って流れる形状に設けられ、
前記流入管には、前記流入側ボディの前記上流側の開口を覆う第1ルーバー部材が設けられ、
前記流出管には、前記流出側ボディの前記下流側の開口を覆う第2ルーバー部材が設けられ、
前記流入側ボディには、ドージング燃料を酸化、発熱させるための酸化触媒が収容されるとともに、前記第1ルーバー部材の下流側において、排気ガスが通過する多数の開口を有した整流部材が設けられ、
前記流出側ボディには、前記第2ルーバー部材の上流側において、前記流出管から流入した水が前記フィルタケース内に浸入するのを防止する堰き止め板が設けられ、
前記第1ルーバー部材には、前記排気ガスの前記流入側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びた複数のスリットと、これらのスリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられ、
前記第2ルーバー部材には、前記排気ガスの前記流出側ボディの径方向に沿った流れ方向に対して直交する向きに延びた複数のスリットと、これらのスリットに形成されて該スリットを通過する排気ガスの流れ方向を変更する方向変更板とが設けられている
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193719(P2012−193719A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60067(P2011−60067)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】