説明

排気マニホールド

【課題】内管を外管に相対スライド可能に支持する際、排気ガスへの流れ抵抗の増大を抑制しながら、異音の発生を防止できるようにした排気マニホールドを提供する。
【解決手段】エンジンの各気筒側に接続される内管1と、内管1の排気ガス下流側で内管1をこの外周面と半径方向に隙間4を隔てて覆う外管3と、外管3の内周面に固着されて周まわりの少なくとも一部に内管1の外周面に向けて突出し弾性力により密着状態を維持するばね部82を有する内管支持部材8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に取り付けられた複数のブランチ管を通じて内燃機関の各気筒から排出された排気ガスを1本の管にまとめて外気側へ排出する排気マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気マニホールドにあっては、内燃機関の各気筒にフランジ部を介してブランチ管(枝管)の排気ガス上流側が接続され、これら枝管の排気ガス下流側で排気ガスが合流するように1本の内管でまとめられて、これらの下流に配置された外管内に相対変位可能に入れられて保持・支持される。このように内管と外管とが軸方向に相対スライド可能とされることで、高熱の排気ガスが流れる内管の長さ方向の熱膨張により内管と外管の間で発生する熱応力を抑制するようにしている。
【0003】
すなわち、特許文献1〜4に記載された従来技術にあっては、外管内に挿入された内管の一部分に形成された半径方向へ拡径されたビード部分を、外管の内周面に押圧させるようにして、内管を外管に保持している。
【0004】
また、特許文献5に記載された従来技術にあっては、エキマニパイプ(内管)をエキマニケース(外管)で隙間を有して覆うとともに、これらの間で排気ガス下流側にエキマニチャンバー(内管支持部材)が配置されてエキマニケースとエキマニチャンバーとの一部が互いに接触するようにして半径方向内側へ湾曲されてエキマニチャンバーの湾曲部がエキマニパイプの外周部分に相対スライド可能に密着されることで、エキマニパイプがエキマニチャンバーを介してエキマニケースに保持・支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3433096号公報
【特許文献2】特許第3999382号公報
【特許文献3】特許第4515816号公報
【特許文献4】特許第4232709号公報
【特許文献5】特許第3649307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の排気マニホールドには以下に説明するような問題がある。
特許文献1〜4に記載された従来技術にあっては、内管にビード部分が形成されているため、安価に保持機能を持たせることができるものの、排気ガスが流れる内管の内周面がビード部分で凹み、その結果、この凹み部分が内燃機関の各気筒から高速で流れ出た排気ガスに流れ抵抗を与えたり、異音を発生させたりするといった問題が生じる。
【0007】
一方、特許文献5に記載された従来技術にあっては、高熱の排気ガスが内部を流れることで内管の熱膨張が繰り返されるが、この場合、支持側の外管が内管よりより板厚で高剛性となっているため、内管が変形して外管との間に隙間が発生し、内管が振動したときに異音が生じるといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、内管を外管に相対スライド可能に支持する際、排気ガスへの流れ抵抗の増大を抑制しながら、異音の発生を防止できるようにした排気マニホールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、請求項1に記載の本発明による排気マニホールドは、
内燃機関の各気筒側に接続される内管と、
内管の排気ガス下流側でこの内管をこの外周面と半径方向に隙間を隔てて覆う外管と、
外管の内周面に固着されて周まわりの少なくとも一部に内管の外周面に向けて突出し弾性力により密着するばね部を有する内管支持部材と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明による排気マニホールドは、
請求項1の発明の排気マニホールドにおいて、
ばね部の板厚が前記内管の板厚より薄い、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明による排気マニホールドは、
請求項1又は請求項2に記載の発明の排気マニホールドにおいて、
ばね部が、内管に面接触し、この内管の板厚以上の軸方向長さを有する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明の排気マニホールドにあっては、外管の内周面に固着されて周まわりの少なくとも一部に内管の外周面に向けて突出し弾性力により密着するばね部を有する内管支持部材を設けたことで、熱膨張の繰り返しによる内管の膨張・収縮が内管支持部材のばね部の弾性力で吸収されるため、内管の変形が防止され、ばね部の内管に対する当接状態が維持される。
これにより、内管の振動による異音の発生を防止することができる。
また、内管の内周面に窪みや凸部は形成されないので、内燃機関の各気筒から高速で流れ出た排気ガスに流れ抵抗を与えたり、異音を発生させたりすることもない。
【0013】
請求項2に記載の本発明の排気マニホールドにあっては、ばね部の板厚が前記内管の板厚より薄いため、内管の変形防止効果が高くなる。
【0014】
請求項3に記載の本発明の排気マニホールドにあっては、ばね部が、内管に面接触し、この内管の板厚以上の軸方向長さを有するので、内管に損傷を与えることなく内管を安定して支持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施例1の排気マニホールドの一部切欠平面図である。
【図2】実施例1の排気マニホールドの要部拡大断面図である。
【図3】実施例1の排気マニホールドにおける内管支持部材を示す斜視図である。
【図4】実施例1の排気マニホールドの作用説明図である。
【図5】本発明に係る実施例2の排気マニホールドの要部拡大断面図である。
【図6】実施例2の排気マニホールドで用いる内管支持部材を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る実施例3の排気マニホールドで用いる内管支持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
まず、本発明に係る実施例1の排気マニホールドの全体構成を説明する。
この実施例1の排気マニホールドは、図1、図2に示すように、その排気ガス上流側が図示を省略したエンジン(本実施例では4気筒内燃機関)のシリンダヘッドに上流側フランジ部6を介して取り付けられ、その下流側が図示を省略した触媒コンバータ側に下流側フランジ部7により取り付けられる。
上流側フランジ部6には、エンジンの2つ気筒に接続されて下流側で排気ガスをまとめる枝管2が2組接続され、これら2組の枝管2の下流側部分は、1本の内管1に一体に固着されて、ここで排気ガスをさらに1本の内管1にまとめて下流へ流すように構成されている。
【0018】
内管1の下流側端部は、下流側フランジ部7に固着された外管3内へこれと半径方向に隙間を有した状態で挿入されている。
このため外管3の内径は、内管1の外径より大きく形成されるが、さらに外管3の板厚は内管1の板厚より肉厚に形成されている。
なお、枝管2、内管1、外管3の外側は、いわゆる最中状に組みつけられる2分割のカバー部材5にて覆われている。
【0019】
内管1の外周面と外管3の内周面との隙間4には、図2に示すように、外管3の内周面に固着されて隙間4を防ぎながら内管1を弾性支持する内管支持部材8が配置される。
【0020】
この内管支持部材8は、図2、図3に示すように、本体部81とこれから突出するばね部82を有する。
本体部81は、外径が外管2の内径と略同じで、かつ内管1の外径より大きく内管1との間に半径方向隙間が確保されるような大きさの内径とを有する円筒状に形成されている。本体部81は外管3に挿入されて、これら両者の下流側端同士が溶接にて固着されて、ここでこれら間の隙間が外気からシールされる。
ばね部82は、本体部81の上流側端部の周方向に等距離間された4か所から、本体部81の軸方向へ突出延在し、その先端側部分が内側にU字状に曲げられている。
【0021】
内管支持部材8が外管3内に挿入される前にあっては、ばね部82の先端側部分の最内側部分が内径1の外径円の内側にくるようにして、内管支持部材8が外管3内に挿入された後は、ばね部82の最内側部分が半径方向外側へ弾性変形した状態で内管1の外周面に面接触し、内管1を弾性支持する。
なお、ばね部82の板厚は、内管1の板厚より肉薄に形成されるとともに、ばね部82の軸方向長さが内管1の板厚より長く形成されている。
【0022】
次に、実施例1の排気マニホールドの作用を図4に基づいて説明する。
エンジンの気筒から排出された排気ガスは、それぞれ枝管2に入り、ここで2本の枝管2に通った排気ガスが1本の管にまとめられ、さらに2組の枝管で1本の管にそれぞれまとめられた排気ガスは、内管1を通り、触媒コンバータ側へと流れていく。ここで、高温の排気ガスに直接晒される内管1は大きく熱膨張するが、上流側フランジ部6はエンジンで、また流側フランジ部7は触媒コンバータ等の排気系部品にて、それぞれ位置がある程度規制されているため、内管1の上記熱膨張を吸収する必要がある。そこで、内管支持部材8を用いて以下のように作用させて、上記問題を解決するようにしている。
【0023】
[内管1の変形防止および内管1の振動による異音の発生防止作用]
エンジンが停止し、排気マニホールドに排気ガスが流れていない状態にあっては、図4(イ)に示すように、内管支持部材8に設けた4本のばね部82の排気ガス下流側へ向けた部分が弾性力により内管1の外周面に当接した状態に維持され、内管1を外管3に弾性支持している。
【0024】
エンジンが始動し、高温の排気ガスが排気マニホールドにおける内管1内を流れ、内管1が高温になってくると、図4(ロ)に示すように、排気ガスの熱で内管1が径方向に膨張し、かつ軸方向に伸びる。その際、内管1の外周面に当接した各ばね部82が弾性力で縮むことで、内管1の径方向膨張分が吸収される。また、内管1がばね部82の弾性力に抗して外管3に対し位置がずれることで、内管1の軸方向の軸方向膨張分が吸収される。これらの結果、内管1の変形が防止される。
【0025】
その後、エンジンが停止して排気ガスが内管1内を流れなくなると、図4(イ)に示すように、内管1が冷えて径方向に収縮および軸方向に縮むが、その際、ばね部82の弾性復元力で内管1の外周面に当接状態を維持し、また内管1もばね部82に対し熱膨張時とは逆方向にすべって元の状態に復帰する。
【0026】
以上のように、内管1が径方向に膨張・伸縮および軸方向に伸縮しても、ばね部82が常に内管1の外周面に当接した状態に維持されているため、内管1と外管3との間にガタが発生して内管1の振動による異音が発生するのが防止される。
また、ばね部82は内管1の外周面に当接しているだけなので、内管1の外観3に対する軸方向のずれが許容される。これにより、内管1の軸方向に過度の応力を作用させることもない。
【0027】
[排気ガスへの流れ抵抗の発生防止および異音発生防止作用]
内管支持部材8は内管1の外側に配置され、内管1の内周面に窪みや凸部が形成されないので、エンジンの各気筒から高速で流れ出た排気ガスに流れ抵抗を与えたり、異音を発生させたりすることもない。
【0028】
[内管1の変形防止作用]
ばね部82の板厚が内管1の板厚より薄いため、内管1の変形防止効果が高くなる。
また、ばね部82が、内管1に面接触し、この内管1の板厚以上の軸方向長さを有するので、内管1が膨張した際にばね部の反発応力が広い面積に分散され、これにより、内管1の変形をより防止することができる。
【0029】
次に、実施例1の排気マニホールドの効果を説明する。
本発明実施例1の排気マニホールドにあっては、外管3の内周面に固着されて少なくとも周まわりの一部に内管1の外周面に向けて突出し弾性力により密着状態を維持するばね部82を有する内管支持部材8を設けたことで、熱膨張の繰り返しによる内管1の膨張・収縮を内管支持部材8のばね部82の弾性力で吸収することができるため、内管1の変形が防止され、ばね部82の内管1に対する当接状態を維持することができる。
これにより、内管1の振動による異音の発生を防止することができる。
また、内管1の内周面に窪みや凸部が形成されないので、エンジンの各気筒から高速で流れ出た排気ガスに流れ抵抗を与えたり、異音を発生させたりすることもない。
【0030】
また、ばね部82の板厚を内管1の板厚より肉薄にすることで、内管1の変形防止効果が高くなる。
また、ばね部82が、内管1に面接触し、この内管1の板厚以上の軸方向長さを有する形状とすることで、内管1に損傷を与ええることなく、またばね部82自身の強度も十分保ちながら、内管1を安定して保持することができるようになる。
なお、外管と内管の隙間部に保持メッシュを設けるようにした従来技術も知られているが、保持メッシュが内管1と外管3との間のずれ運動に起因して下流側に流れ出て下流部品である触媒担体などを破損させる虞がある。これに対し、本発明実施例1の内管支持部材8は、本体部81が外管3にスポット溶接などで固定されているため、そのような不具合を生じさせることもない。
【0031】
次に、他の実施例について説明する。この他の実施例の説明にあたっては、前記実施例1と同様の構成部分については図示を省略し、もしくは同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明に係る実施例2の排気マニホールドにつき以下に説明する。
実施例2の排気マニホールドは、内管支持部材8におけるばね部の形状が上記実施例1のものとは相違したものである。
【0033】
すなわち、この実施例2のばね部83は、図5、図6に示すように、内管支持部材8における本体部81の排気ガス上流側端部から内管1の外周面に向けて半円弧状に突出し、半円弧の凸側面が内管1の外周面に弾性力をもって面接触するような形状としたものである。
このばね部83の板厚も、内管1の板厚より肉薄に形成されるとともに、ばね部83の軸方向長さが内管1の板厚より長く形成されている。
その他の構成は、実施例1のものと同様である。
【0034】
次に、実施例2の排気マニホールドの作用を説明する。
実施例2の排気マニホールドの場合にも、形状は異なるものの、ばね部83は実施例1のばね部82と同様に作用する結果、実施例1と同様の作用、効果を得ることができる。
【実施例3】
【0035】
次に、本発明に係る実施例3の排気マニホールドにつき以下に説明する。
実施例3の排気マニホールドは、内管支持部材8におけるばね部の形状が上記実施例1および実施例2のものとは相違したものである。
【0036】
すなわち、図7に示すように、内管支持部材8は、円筒状の本体部81と、この上流側部分を本体部81より薄肉で内側へ凸となる断面弧状の環状部分となるように形成したばね部84と、を有する。この環状の凸部は、内管1の外周面に接触される。
なお、このばね部84の板厚も、内管1の板厚より肉薄に形成されるとともに、ばね部84の軸方向長さが内管1の板厚より長く形成されている。
その他の構成は、実施例1のものと同様である。
【0037】
実施例3の排気マニホールドにあっても、実施例1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0038】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0039】
たとえば、実施例ではばね部82、83を本体部81の周まわりに4箇所設けたが、本数は任意である。
また、ばね部の形状は任意であり、要は、外管3の内周面に固着されて少なくとも内管1の外周面に弾性力を作用するように密着する形状であればよい。
【0040】
また、実施例では、1本の主管1に2本の枝管2を合流させる構造の排気マニホールドに適用した例を示したが、各気筒数に応じた複数本の枝管2を1本の主管(集合管)に集合させるタイプのもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 内管
2 枝管
3 外管
4 隙間
5 カバー部材
6 上流側フランジ部
7 下流側フランジ部
8 内管支持部材
81 本体部
82〜84 ばね部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の各気筒側に接続される内管と、
該内管の排気ガス下流側で該内管をこの外周面と半径方向に隙間を隔てて覆う外管と、
該外管の内周面に固着されて周まわりの少なくとも一部に前記内管の外周面に向けて突出し弾性力により密着するばね部を有する内管支持部材と、
を備えたことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載の排気マニホールドにおいて、
前記ばね部の板厚は前記内管の板厚より薄い、
ことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気マニホールドにおいて、
前記ばね部は、前記内管に面接触し、該内管の板厚以上の軸方向長さを有する、
ことを特徴とする排気マニホールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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