説明

排気冷却用管体

【課題】カバーを利用することなく、冷却水が流路接続部から漏れ出したとしても内燃機関の外観汚れを防止できる排気冷却用管体の提供。
【解決手段】冷却アダプタ2における鉛直方向上向きの外周面2bには段差26b,26cが形成され、冷却水導出部24から外周面2bに漏出する冷却水の流れを垂直溝30の上端部分へ誘導する。垂直溝30内を流下した冷却水は下側で冷却アダプタ2から分離する。したがって冷却アダプタ2上にて漏出冷却水が自由に広がって流れるのを阻止できる。このことにより内燃機関の外観汚れを防止することができる。しかも排気マニホールド6の先端が2つに分かれていることにより、漏出冷却水は排気マニホールド6側には接触しないで冷却アダプタ2から分離でき、排気マニホールド6の耐久性上の問題を生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ポートと排気マニホールドとの間に配置され、外部から供給される冷却液を管壁内に形成された冷却液流路に導入して管内を通過する排気を冷却する排気冷却用管体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドと排気マニホールドとの間に排気冷却用管体に相当する冷却アダプタを配置することにより、内燃機関排気系での熱害を防止する技術が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
触媒コンバータの周りを覆うことでエンジンルームの昇温を防止する遮熱カバーが知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭64−15718号公報(第1頁、図2〜5)
【特許文献2】特開2005−16364号公報(第11頁、図10)
【特許文献3】特開平08−334021号公報(第6頁、図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2の構成では冷却アダプタには冷却水が供給されることにより、内部の排気経路を通過する排気が冷却される。したがって冷却アダプタには冷却水の入出口が設けられて、外部の冷却水路とボルト締結などにより接続されることになる。
【0006】
このような冷却水路の接続部においては、何らかの原因で冷却水が接続部から外部に漏れ出すおそれがある。冷却水が漏れ出した場合には、冷却水流が広がって、その成分が析出して水冷アダプタ全体に付着したり、あるいはエンジン側や排気マニホールド側に付着して外観汚れを生じるおそれがある。
【0007】
特許文献3の構成では、単に外部からの冷却水の付着を防止するためのカバーであるので、冷却アダプタに適用した場合には冷却アダプタ以外の構成を全て覆う必要があり現実的ではない。又、水冷アダプタの全体を覆うことも、水冷アダプタ全体として大型化の問題を生じる。
【0008】
本発明は、このようにカバーを利用することなく、管壁内に外部から供給される冷却液が接続部から漏れ出したとしても、内燃機関の外観汚れを防止できる排気冷却用管体の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の排気冷却用管体は、内燃機関の排気ポートと排気マニホールドとの間に配置され、外部から供給される冷却液を管壁内に形成された冷却液流路に導入して管内を通過する排気を冷却する排気冷却用管体であって、管体外周面に形成され、前記冷却液流路を外部の冷却液経路に接続する接続部と、前記接続部から管体外周面に流出する冷却液の液流を、この液流が管体から分離する冷却液分離位置へ誘導するガイド部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
排気冷却用管体の管体外周面にはガイド部が形成されている。このガイド部は接続部から管体外周面に流出する冷却液の液流を冷却液分離位置へ誘導するものである。したがって接続部から何らかの原因で冷却液が外部に漏れ出したとしても、この冷却液の液流が冷却液分離位置へ流れるように誘導することで、冷却液が自由に広がって流れるのを阻止して迅速に管体から分離させることができる。このことにより周辺を汚すことを最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0011】
請求項2に記載の排気冷却用管体では、請求項1に記載の排気冷却用管体において、前記冷却液分離位置は、この冷却液分離位置から分離した冷却液が、排気マニホールドにて排気経路を形成する部分に対する接触が回避される位置であることを特徴とする。
【0012】
特に排気マニホールドの排気経路を形成する部分は内燃機関運転時に高温となることから、冷却液が接触することは排気マニホールドの耐久性上好ましくない。このため冷却液分離位置を排気マニホールドの排気経路を形成する部分に対する冷却液の接触が回避される位置とすることで、排気マニホールドの耐久性を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の排気冷却用管体では、請求項1又は2に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、前記接続部とはスペースを間に設けて配置された溝、突条又は外側が高い段差として形成されていることを特徴とする。
【0014】
このように溝、突条又は外側が高い段差を、接続部に対してスペースを介して設けることで、接続部から流出する冷却液は、スペースが緩衝機構として機能して一旦蓄積される。そして、溝、突条又は外側が高い段差において特に接続部に向いている面が、これ以上、冷却液が外側へ拡大して流れ出すのを阻止すると共に、冷却液の液流を冷却液分離位置へ誘導する。
【0015】
このことにより周辺を汚すことを最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止することができる。
請求項4に記載の排気冷却用管体では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部から流出する冷却液は、前記接続部から漏出した冷却液であることを特徴とする。
【0016】
このように接続部から漏出すべきではない冷却液が何らかの原因で漏出したとしても、ガイド部が冷却液分離位置へ流れるように誘導することで内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0017】
請求項5に記載の排気冷却用管体では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記冷却液分離位置は、鉛直方向下向きのピーク位置と鉛直方向下方の管体外周面との一方又は両方であることを特徴とする。
【0018】
このような鉛直方向下向きのピーク位置や鉛直方向下方の管体外周面では冷却液は自重により管体から分離して内燃機関上から排出される。このことにより、周辺を汚すことを最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0019】
請求項6に記載の排気冷却用管体では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部として、冷却液が外部の冷却液経路から導入される導入用接続部と、冷却液が外部の冷却液経路へ排出される排出用接続部とを備え、前記ガイド部は、前記導入用接続部と前記排出用接続部との内で、鉛直方向上向きの管体外周面に設けられた接続部に対して配置されていることを特徴とする。
【0020】
このように上向きの管体外周面に設けられた接続部では、流出した冷却液は管体の外周面の上側から流れることにより、その流れは管体外周面全体に拡大し易い。このため特に上向きの管体外周面に設けられた接続部に対して前述したごとくのガイド部を配置することで、周辺を汚すことを最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止する機能を十分に果たさせることができる。
【0021】
請求項7に記載の排気冷却用管体では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部として、鉛直方向下向きの管体外周面に設けられて冷却液が外部の冷却液経路から導入される導入用接続部と、鉛直方向上向きの管体外周面に設けられて冷却液が外部の冷却液経路へ排出される排出用接続部とを備え、前記ガイド部は前記排出用接続部に対して配置されていることを特徴とする。
【0022】
このように導入用接続部と排出用接続部とを備えることで管体の冷却を実行する場合に、排出用接続部から管体外周面に流出した冷却液は前述したごとく管体外周面全体を広く汚し易いが、ガイド部の配置により周辺を汚すことを最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止する機能を十分に果たさせることができる。
【0023】
請求項8に記載の排気冷却用管体では、請求項6又は7に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、前記冷却液分離位置は鉛直方向下向きの管体外周面に配置され、管体と排気マニホールドとの間には鉛直方向上向きの管体外周面から鉛直方向下向きの管体外周面へ通過する間隙が設けられていると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記間隙の上端部分に向けて誘導するものであることを特徴とする。
【0024】
接続部側から鉛直方向上向きの傾斜面へ流出する冷却液はガイド部により前記間隙の上端部分に向けて誘導される。このことにより傾斜面の冷却液は間隙を通過して、鉛直方向下向きの管体外周面側へと流下する。そしてこの鉛直方向下向きの管体外周面における冷却液分離位置にて管体から分離する。
【0025】
このようにガイド部は、前記間隙に冷却液の流れを誘導して、管体の外周下部側へ流れを迅速に移行させている。このことにより冷却液の流れの拡大を防止して内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0026】
請求項9に記載の排気冷却用管体では、請求項8に記載の排気冷却用管体において、前記管体と前記排気マニホールドとの間において、前記管体と前記排気マニホールドとのいずれか一方又は両方に鉛直上下方向の溝が形成されていることにより、前記間隙が形成されていることを特徴とする。
【0027】
このように管体と排気マニホールドとの間を全て完全に接触させずに、いずれか一方又は両方に鉛直上下方向の溝を形成していることで、前記間隙を構成できる。
このようにして容易に前記間隙が形成でき、内燃機関の外観汚れを防止できる排気冷却用管体を容易に実現できる。
【0028】
請求項10に記載の排気冷却用管体では、請求項6又は7に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、前記冷却液分離位置は鉛直方向下向きの管体外周面に配置され、管体には鉛直方向上向きの管体外周面から鉛直方向下向きの管体外周面へ管体内部の排気及び冷却液とは隔離された状態で貫通する貫通孔を備えると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記貫通孔の上端部分に向けて誘導するものであることを特徴とする。
【0029】
接続部側から流出する冷却液はガイド部により前記貫通孔へ向けて誘導される。このことにより鉛直方向上向きの管体外周面の冷却液は、貫通孔を通過して、鉛直方向下向きの管体外周面へ流下する。そしてこの鉛直方向下向きの管体外周面における冷却液分離位置にて管体から分離する。
【0030】
このようにガイド部は、前記貫通孔に冷却液の流れを誘導して、鉛直方向下向きの管体外周面側へ流れを迅速に移行させている。このことにより冷却液の流れの拡大を効果的に防止して管体における外観汚れを目立たなくでき、かつ管体外周面から冷却液を分離できるので、内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0031】
請求項11に記載の排気冷却用管体では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、排気マニホールドは内部の排気経路とは隔離されて排気マニホールドを鉛直上下方向に貫通する貫通空間を備えると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記貫通空間の上端方向へ向けて誘導するものであることを特徴とする。
【0032】
ガイド部は、排気マニホールドの貫通空間へ冷却液の流れを誘導することにより、管体から冷却液を分離させると共に、貫通空間を通過させることで排気マニホールドの下方へ迅速に流下させることができる。このことにより、効果的に管体における外観汚れを目立たなくできるので、内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0033】
更に貫通空間を通過させることで、排気マニホールドに対して、冷却液の接触が極力防止されることから、排気マニホールドの耐久性上の問題を生じない。
請求項12に記載の排気冷却用管体では、請求項11に記載の排気冷却用管体において、前記貫通空間は前記排気マニホールドの上流側が排気経路の配列方向で分割されていることにより形成された空間であることを特徴とする。
【0034】
このような冷却液が通過できる貫通空間は、排気マニホールドの上流側を排気経路の配列方向で分割させた構成とすることで、容易に空間として確保できる。
請求項13に記載の排気冷却用管体では、請求項11又は12に記載の排気冷却用管体において、前記排気マニホールドの排気経路を形成する部分及び前記貫通空間を形成する部分は、厚さ方向で分割して形成したシェルの接合体からなることを特徴とする。
【0035】
排気マニホールドの排気経路を形成する部分及び貫通空間を形成する部分をシェルの接合体として形成している場合、この接合体に形成している貫通空間により、ガイド部に誘導された冷却液が管体から分離できると共に、シェルの接合体に阻止されずに排気マニホールドの下方へ冷却液を迅速に流下させることができる。このため管体における汚れを目立たなくでき、内燃機関の外観汚れを防止することができる。
【0036】
そしてこのようなシェルからなる接合体であっても排気マニホールドの排気経路を形成する部分に対して、冷却液の接触が極力防止されるので、排気マニホールドの耐久性上の問題を生じない。
【0037】
請求項14に記載の排気冷却用管体では、請求項11〜13のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部は、鉛直方向上向きの管体外周面の内で、排気経路の配列方向にて前記貫通空間と重複する位置に配置されていることを特徴とする。
【0038】
排気経路の配列方向で、このような位置関係とすることにより、接続部側から流出する冷却液を貫通空間に誘導する経路が短くなることから、ガイド部の構成が簡素となり、排気冷却用管体の成形が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態1の冷却アダプタの構成とその適用状態を示す斜視図。
【図2】(a),(b)実施の形態1の冷却アダプタの構成説明図。
【図3】(a)〜(c)実施の形態1の冷却アダプタの構成説明図。
【図4】実施の形態1の排気マニホールドにおける要部斜視図。
【図5】実施の形態1の冷却アダプタの縦断斜視図。
【図6】実施の形態2の冷却アダプタの縦断斜視図。
【図7】実施の形態3の排気マニホールドにおける要部斜視図。
【図8】実施の形態3の冷却アダプタの構成とその適用状態を示す斜視図。
【図9】冷却アダプタの他の実施の形態を示す要部斜視図。
【図10】冷却アダプタの他の実施の形態を示す要部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[実施の形態1]
図1の斜視図は、上述した排気冷却用管体としての冷却アダプタ2が内燃機関のシリンダヘッド4に開口する排気ポートと排気マニホールド6との間に適用された状態を示している。図2,3は冷却アダプタ2の構成を示している。図2の(a)は正面図、(b)は背後側から見た斜視図、図3の(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は左側面図である。
【0041】
冷却アダプタ2は、内燃機関の排気ポートから排出される排気を冷却し、排気マニホールド6側に排出するものであり、このことにより触媒7などの排気系の熱害を防止するものである。
【0042】
このような冷却アダプタ2は、排気上流側に排気導入口8が開口するシリンダヘッド側接続面10を形成している。排気導入口8は、ここで内燃機関が直列4気筒であるので、これに対応して4つが直線状に配列して設けられている。
【0043】
排気下流側は排気排出口12が開口する排気マニホールド側接続面14を形成している。排気排出口12は排気導入口8に対応して4つが直線状に配列して設けられている。
これら排気導入口8と排気排出口12とはそれぞれ冷却アダプタ2内に形成された4つの排気経路16にて接続されている。
【0044】
シリンダヘッド側接続面10は、図1に示したごとくシリンダヘッド4のポート接続面4aに対して、ボルトBaにより締結用挿通孔2aを介してボルト締結される。この締結によりシリンダヘッド4のポート接続面4aにシリンダヘッド側接続面10が密着して、内燃機関の排気ポートと冷却アダプタ2内の排気経路16とが接続される。
【0045】
そして排気マニホールド側接続面14には、図4に示すフランジ18,20を先端形状とする排気マニホールド6が取り付けられる。フランジ18,20の周りには締結用挿通孔18a,20aが設けられ、この締結用挿通孔18a,20aを介して冷却アダプタ2側の排気マニホールド側接続面14に開口しているボルト穴14aに、ボルトBbが螺入されることにより、排気マニホールド6が冷却アダプタ2にボルト締結される。この締結によりフランジ18,20の接続面18b,20bは冷却アダプタ2側の排気マニホールド側接続面14に密着して、冷却アダプタ2内の排気経路16と排気マニホールド6内の排気経路6aとが接続される。
【0046】
冷却アダプタ2には、図5の縦断面図に示すごとく、排気経路16の周りの管壁内に冷却水が流れるウォータジャケット28が形成されている。冷却アダプタ2の下端に形成されている冷却水導入部22(導入用接続部に相当)に対して、外部、例えば内燃機関のシリンダヘッド4内に存在するウォータジャケットから分岐した経路が接続されていることにより、冷却水が、下端面22aに開口する冷却水導入口22bから冷却アダプタ2内のウォータジャケット28に導入される。
【0047】
冷却アダプタ2の上端に形成されている冷却水導出部24には外部の導出経路が接続される。このことにより冷却水導入部22から導入されて冷却アダプタ2のウォータジャケット28を流れた冷却水は、冷却水導出部24の前端面24aに開口する冷却水導出口24bを介して外部の冷却水経路(外部の冷却液経路に相当)へ排出される。
【0048】
冷却水導出部24は、冷却アダプタ2の上部、ここでは鉛直方向上向きの外周面2b(管体外周面に相当)に配置されており、この冷却水導出部24の前端面24aの下方において、冷却アダプタ2の外周面2bには凹部26が形成されている。すなわち冷却アダプタ2の外周面2bに設けられている冷却水導出部24に対して、凹部26内のスペース26aを間に設けて、外側が高い段差26b,26cが形成されている。
【0049】
冷却水導出部24は排出用接続部であり、この冷却水導出部24は冷却液である冷却水を外部の冷却水経路へ排出する機能を果たしている。このため冷却水導出部24では、何らかの原因で、前端面24aとこれに接続された冷却水経路の端面との間から冷却水が漏出した場合には冷却アダプタ2の全体に広がるおそれがある。
【0050】
しかし本実施の形態ではこのような冷却水の漏出が生じた場合には、図1,5に矢線で示したごとく、まず漏出冷却水は、凹部26のスペース26aに入る。そして自重により流下する際に段差26b,26cに流下方向が規制される。すなわち漏出冷却水は、段差26b,26cをガイド部として、広がることなく中央の垂直溝30の上端部分へ誘導される。
【0051】
そして更に垂直溝30の側壁30aにより広がるのが阻止されつつ、漏出冷却水は冷却アダプタ2の下方へ自重にて流れ下る。垂直溝30の途中には締結用挿通孔2aに挿通されたボルトBaの頭部が配置されているが、漏出冷却水は、このボルトBa周りあるいは上を越えて、冷却アダプタ2の鉛直方向下方でありかつ鉛直方向下向きの外周面2cに達し、ここから漏出冷却水は冷却アダプタ2から分離して流下することになる。あるいは冷却水導入部22の下端面22a(鉛直方向下向きのピーク位置に相当)に到達してここから漏出冷却水は自重により冷却アダプタ2から分離して流下する。更に冷却アダプタ2の鉛直方向下向きの外周面2cと冷却水導入部22の下端面22aとの両方から冷却水が冷却アダプタ2から分離する場合もある。
【0052】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(1)冷却アダプタ2における鉛直方向上向きの外周面2bには、ガイド部として段差26b,26cが形成されている。この段差26b,26cは冷却水導出部24から外周面2bに漏出する冷却水の流れを垂直溝30の上端部分へ誘導するものである。このことにより、垂直溝30内を流下した冷却水は、鉛直方向下向きの外周面2cと下端面22aとの一方又は両方から分離してゆく。
【0053】
したがって何らかの原因で、外部の冷却水経路から導入される冷却水が冷却水導出部24から外部に漏れ出したとしても、上述のごとく段差26b,26cにより漏出冷却水が自由に広がって流れるのを阻止できる。
【0054】
しかも段差26b,26cにて誘導された後にも、漏出冷却水は側壁30aに囲まれた垂直溝30を流下するので、流れを広げることなく迅速に冷却アダプタ2の下部に漏出冷却水を移行できる。
【0055】
このことにより周辺、ここでは内燃機関のシリンダヘッド4及びその周りを広域で汚すような状態を最小限に止めて内燃機関の外観汚れを防止することができる。
(2)漏出冷却水を迅速に冷却アダプタ2の下部に移行させるために冷却アダプタ2と排気マニホールド6との間に形成された間隙は、冷却アダプタ2側に垂直溝30を形成することにより実現されている。このため上記機能の間隙を容易に形成でき、内燃機関の外観汚れを防止できる冷却アダプタ2を容易に実現できる。
【0056】
(3)漏出冷却水は排気マニホールド6側には接触しないで冷却アダプタ2から分離される。特に排気マニホールド6はフランジ18,20が2つに分かれていると共に、更に排気経路を形成している部分自体も先端が2つに分割されて排気マニホールド6を鉛直上下方向に貫通する貫通空間6bを形成している。このため排気経路を形成している部分に対する漏出冷却水の接触は確実に回避されるので、排気マニホールド6の耐久性上の問題を生じない。
【0057】
(4)冷却水導出部24は、排気マニホールド6側の貫通空間6bよりも、鉛直方向の上方に位置するが、排気経路の配列方向で見ると貫通空間6bとは重複する位置に配置されている。このような配置関係では、冷却水導出部24側から漏出する冷却水を貫通空間6bに誘導する経路が短くなる。したがってガイド部である凹部26や垂直溝30の構成が簡素となり、冷却アダプタ2の成形が容易となる。
【0058】
[実施の形態2]
本実施の形態では、図6の縦断面図に示すごとく、冷却水導出部124の前端面124aから漏出した冷却水が、冷却アダプタ102の鉛直方向上向きの外周面102bに形成された凹部126内のスペース126aに流れ込み、そして段差126b,126cにより誘導される点については前記実施の形態1と同じである。
【0059】
ただし段差126b,126cに誘導されて流れ込むのは、冷却アダプタ102に形成された貫通孔130の上端部分である。
この貫通孔130は、凹部126が形成されている鉛直方向上向きの外周面102bから、冷却アダプタ102における鉛直方向下向きの外周面102cへ貫通している。この貫通孔130は、冷却アダプタ102内部の排気及びウォータジャケット128内の冷却水とは隔離された状態で貫通している。
【0060】
図6では、貫通孔130は、中心のボルトBaが貫通する締結用挿通孔102aとは交叉している。したがってボルトBaを避けるために、貫通孔130は、締結用挿通孔102a部分で、締結用挿通孔102a周りに大径部130aを形成している。このことでボルトBaが締結用挿通孔102a内に存在しても、漏出冷却水は、貫通孔130にて鉛直方向上向きの外周面102bから鉛直方向下向きの外周面102cへ自重により円滑に流下できる。尚、図6では中心のボルトBaは外した状態で示している。
【0061】
このように交叉させるのではなく、貫通孔130の位置をずらしたり、締結用挿通孔102aの位置をずらしたりすることにより、貫通孔130と締結用挿通孔102aとが交叉しないようにしても良い。
【0062】
冷却アダプタ102のその他の構成は前記実施の形態1と同じである。排気マニホールド6については前記実施の形態1と同一の構成であるので、同一の符号にて示している。
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
【0063】
(1)冷却アダプタ102の外周面に溝を形成することで冷却アダプタ102と排気マニホールド6との間で間隙を設けなくても、冷却アダプタ102側に貫通孔130を設けることで、前記実施の形態1の(1)〜(3)と同様な効果を生じさせることができる。
【0064】
[実施の形態3]
本実施の形態では図7に示すごとく排気マニホールド206のフランジ217は4気筒分が一体で形成されている。したがってフランジ217の内の第1フランジ部218と第2フランジ部220との間には、図8に示すごとく冷却アダプタ2の中心のボルトBaを、締結用挿通孔へ挿入するためと、冷却水導出部24の前端面24aから漏出した冷却水が通過するための開口217aが形成されている。
【0065】
排気マニホールド206の他の構成は前記実施の形態1と同じである。冷却アダプタ2については前記実施の形態1と同一の構成であるので同一の符号で示している。
上述したごとく、冷却水導出部24の前端面24aから漏出する冷却水は、図8に示した矢線のごとく、凹部26内のスペース26aに入った後、段差26b,26cと垂直溝30の側壁30aとをガイド部として、フランジ217の開口217aへ誘導される。
【0066】
このことにより漏出冷却水はフランジ217の開口217aを通過して、排気マニホールド206の排気経路を形成する部分である接合体208側へ流下する。この接合体208は、厚さ方向に2つに分かれたシェル208a,208bとから構成されており、その縁部208c,208d,208eを接合して、中空でかつ先端が2つに分かれた管状体を形成し、先端にフランジ217を接合したものである。
【0067】
このように排気マニホールド206の外形は先端側が2つに分岐してそれぞれ第1フランジ部218と第2フランジ部220とに接合されている。このため、排気マニホールド206にはフランジ217に隣接して貫通空間210が形成されている。すなわち排気マニホールド206は、鉛直方向上向きの外周面(上側のシェル208aの外周面)から鉛直方向下向きの外周面(下側のシェル208bの外周面)へ、接合体208内部の排気とは隔離された状態で貫通するの貫通空間210を備えている。
【0068】
したがって段差26b,26cと垂直溝30の側壁30aとをガイド部とし、フランジ217の開口217aを介して貫通空間210の上端方向へ誘導された漏出冷却水は、流下により迅速に貫通空間210内を通過することで直ちに接合体208の下側へ移動する。すなわちフランジ217から迅速に排気マニホールド206の下方へ流下する。
【0069】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(1)このように段差26b,26cと垂直溝30の側壁30aとをガイド部として排気マニホールド206側へ冷却水を流下させても、排気マニホールド206側に貫通空間210を設けていることで、前記実施の形態1と同様な効果を生じさせることができる。
【0070】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、ガイド部としては、スペースを介して外側が高い段差として形成されていた。これ以外に、図9に示す冷却アダプタ302のごとく溝326を段差の位置に設けても良い。冷却水導出部324から漏出した冷却水は、スペース327を通過して溝326まで広がった場合に、この溝326に落ち込む。このため、その後、漏出冷却水は溝326に誘導されて、垂直溝330側(実施の形態2の構成では貫通孔)へ流れる。このことによっても前記各実施の形態の効果を生じさせることができる。
【0071】
・図9に示した溝326の代わりに図10に示す冷却アダプタ402のごとく突条426を段差の位置に設けても良い。冷却水導出部424から漏出した冷却水は、スペース427を通過して突条426まで広がり、この突条426の前面426aに流れが阻止される。その後、漏出冷却水は、突条426に誘導されて、垂直溝430側(実施の形態2の構成では貫通孔)へ流れる。このことによっても前記各実施の形態の効果を生じさせることができる。
【0072】
・前記実施の形態1あるいは図9,10に示したごとくの垂直溝30,330,430については、排気マニホールドのフランジが1枚からなる場合には、このフランジ側に設けることもできる。あるいは冷却アダプタ側とフランジ側との両方に設けても良い。
【0073】
・前記各実施の形態では、排気導入口8は、内燃機関が直列4気筒であるので、これに対応して4つが直線状に配列して設けられていたが、V型6気筒内燃機関のごとく、各バンクに排気ポートが3つ直線状に配列されている場合には、それぞれのバンクに対して、排気導入口が3つ直線状に配列して設けられた冷却アダプタを用いる。この場合には、垂直溝や貫通孔の位置は、いずれかの隣接する排気排出口の間となる。これに対応して排気マニホールド側のフランジも形成されることになる。
【0074】
・前記各実施の形態では、排出用接続部である冷却水導出部が鉛直方向上向きの管体外周面に設けられていることから、この冷却水導出部から冷却水が漏出した場合に、冷却アダプタ全体に広がって流れ易いために、特に冷却水導出部に対して、ガイド部が配置されていた。この代わりに、導入用接続部である冷却水導入部側が鉛直方向上向きの管体外周面に設けられている構成とした場合には、この冷却水導入部に対して、同様な構成のガイド部を配置することにより、前記各実施の形態と同様な効果を生じさせることができる。
【0075】
更に、冷却水導入部と冷却水導出部とが共に、鉛直方向上向きの管体外周面に設けられている構成とした場合には、冷却水導入部と冷却水導出部との両方に対して、同様な構成のガイド部を配置することにより、前記各実施の形態と同様な効果を生じさせることができる。
【符号の説明】
【0076】
2…冷却アダプタ、2a…締結用挿通孔、2b,2c…外周面、4…内燃機関のシリンダヘッド、4a…ポート接続面、6…排気マニホールド、6a…排気経路、6b…貫通空間、7…触媒、8…排気導入口、10…シリンダヘッド側接続面、12…排気排出口、14…排気マニホールド側接続面、14a…ボルト穴、16…排気経路、18,20…フランジ、18a,20a…締結用挿通孔、18b,20b…接続面、22…冷却水導入部、22a…下端面、22b…冷却水導入口、24…冷却水導出部、24a…前端面、24b…冷却水導出口、26…凹部、26a…スペース、26b,26c…段差、28…ウォータジャケット、30…垂直溝、30a…側壁、102…冷却アダプタ、102a…締結用挿通孔、102b,102c…外周面、124…冷却水導出部、124a…前端面、126…凹部、126a…スペース、126b,126c…段差、128…ウォータジャケット、130…貫通孔、130a…大径部、206…排気マニホールド、208…接合体、208a,208b…シェル、208c,208d,208e…縁部、210…貫通空間、217…フランジ、217a…開口、218…第1フランジ部、220…第2フランジ部、302…冷却アダプタ、324…冷却水導出部、326…溝、327…スペース、330…垂直溝、402…冷却アダプタ、424…冷却水導出部、426…突条、426a…前面、427…スペース、430…垂直溝、Ba,Bb…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ポートと排気マニホールドとの間に配置され、外部から供給される冷却液を管壁内に形成された冷却液流路に導入して管内を通過する排気を冷却する排気冷却用管体であって、
管体外周面に形成され、前記冷却液流路を外部の冷却液経路に接続する接続部と、
前記接続部から管体外周面に流出する冷却液の液流を、この液流が管体から分離する冷却液分離位置へ誘導するガイド部と、
を備えたことを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項2】
請求項1に記載の排気冷却用管体において、前記冷却液分離位置は、この冷却液分離位置から分離した冷却液が、排気マニホールドにて排気経路を形成する部分に対する接触が回避される位置であることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、前記接続部とはスペースを間に設けて配置された溝、突条又は外側が高い段差として形成されていることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部から流出する冷却液は、前記接続部から漏出した冷却液であることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記冷却液分離位置は、鉛直方向下向きのピーク位置と鉛直方向下方の管体外周面との一方又は両方であることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部として、冷却液が外部の冷却液経路から導入される導入用接続部と、冷却液が外部の冷却液経路へ排出される排出用接続部とを備え、
前記ガイド部は、前記導入用接続部と前記排出用接続部との内で、鉛直方向上向きの管体外周面に設けられた接続部に対して配置されていることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部として、鉛直方向下向きの管体外周面に設けられて冷却液が外部の冷却液経路から導入される導入用接続部と、鉛直方向上向きの管体外周面に設けられて冷却液が外部の冷却液経路へ排出される排出用接続部とを備え、
前記ガイド部は前記排出用接続部に対して配置されていることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、前記冷却液分離位置は鉛直方向下向きの管体外周面に配置され、管体と排気マニホールドとの間には鉛直方向上向きの管体外周面から鉛直方向下向きの管体外周面へ通過する間隙が設けられていると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記間隙の上端部分に向けて誘導するものであることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項9】
請求項8に記載の排気冷却用管体において、前記管体と前記排気マニホールドとの間において、前記管体と前記排気マニホールドとのいずれか一方又は両方に鉛直上下方向の溝が形成されていることにより、前記間隙が形成されていることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、前記冷却液分離位置は鉛直方向下向きの管体外周面に配置され、管体には鉛直方向上向きの管体外周面から鉛直方向下向きの管体外周面へ管体内部の排気及び冷却液とは隔離された状態で貫通する貫通孔を備えると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記貫通孔の上端部分に向けて誘導するものであることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記ガイド部は、鉛直方向上向きであって排気マニホールド側に傾斜した管体外周面に配置され、排気マニホールドは内部の排気経路とは隔離されて排気マニホールドを鉛直上下方向に貫通する貫通空間を備えると共に、前記ガイド部は前記鉛直方向上向きの管体外周面にて前記接続部側から流出する冷却液を前記貫通空間の上端方向へ向けて誘導するものであることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項12】
請求項11に記載の排気冷却用管体において、前記貫通空間は前記排気マニホールドの上流側が排気経路の配列方向で分割されていることにより形成された空間であることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の排気冷却用管体において、前記排気マニホールドの排気経路を形成する部分及び前記貫通空間を形成する部分は、厚さ方向で分割して形成したシェルの接合体からなることを特徴とする排気冷却用管体。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか一項に記載の排気冷却用管体において、前記接続部は、鉛直方向上向きの管体外周面の内で、排気経路の配列方向にて前記貫通空間と重複する位置に配置されていることを特徴とする排気冷却用管体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208604(P2011−208604A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79107(P2010−79107)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】