説明

排気消音装置

【課題】各テールパイプにおける排気圧や排気量のバランスを適正化しつつ、高回転領域における背圧の抑制、エンジン出力の向上、燃費改善、あるいはドライバビリティの向上を図ることが可能な排気消音装置の提供を目的とした。
【解決手段】排気消音装置10は、消音器20に対して接続された第一テールパイプ70と、消音器20に接続され、第一テールパイプ70よりも長い第二テールパイプ80と、第一テールパイプ70側に設けられた開閉弁100とを有する。開閉弁100は、第一テールパイプ70の内径よりも小さい孔を少なくとも一つ備えている。開閉弁100は、エンジン回転数が所定回転数未満の領域において閉状態になり、所定回転数以上の領域において排気圧の影響によって開状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される排気消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されている内燃機関の排気消音装置のようなものが、車両等に搭載されている。下記特許文献1に開示されている排気消音装置においては、長短二本のテールパイプを設けると共に、短い方のテールパイプの開口率を小さくした構成とされている。このような構成とすることにより、消音効果を得つつ、排圧の低下による動力性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭57−103320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、二本設けられたテールパイプの長さ及び開口率を異なるものとした場合、所定の排気圧下において各テールパイプにおける排気圧あるいは排気量が適正なバランスとなるように調整することが可能である。しかしながら、各テールパイプにおける排気圧や排気流量は、排気の発生源であるエンジンの回転数に応じて時々刻々と変化するものである。そのため、従来技術の排気消音装置では、設計時の想定を外れたエンジン回転数領域において、排気圧や排気量のバランスを適正化することができないという問題がある。
【0005】
また、冬場などの低温条件下においては、テールパイプから排出された排気が白煙状態になって視認できる場合がある。このような状況下において、両テールパイプにおける排気圧や排気量のバランスが不均衡であると、排気が正常に行われているにもかかわらず、一般ユーザーが排気不良が生じているのではないかとの懸念を抱いてしまう可能性がある。そのため、このような疑念を一般ユーザーが抱かないように、何らかの方策を講じることが求められている。
【0006】
これに対し、エンジン回転数が高回転数である状況下においては、いかにスムーズに排ガスを排出できるか、すなわち高回転領域における背圧をいかに抑制できるかが、エンジン出力の向上、燃費改善、あるいはドライバビリティの向上を図る上で重要になる。しかしながら、従来技術のようにテールパイプの開口径を相違させた場合、エンジン回転数によらず排気抵抗が一定であるのに加え、一方のテールパイプの開口率を小さくしているため、高回転数領域における排気特性が十分ではない。このように、従来技術の排気消音装置においては、排気圧や排気量のバランスを取りつつ、高回転数領域において排気抵抗を最小限に抑制したいという、いわば二律背反した課題が存在する。
【0007】
そこで、本発明は、各テールパイプにおける排気圧や排気量のバランスを適正化しつつ、高回転領域における背圧の抑制、エンジン出力の向上、燃費改善、あるいはドライバビリティの向上を図ることが可能な排気消音装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決すべく提供される本発明の排気消音装置は、消音器に接続された第一テールパイプと、前記消音器に接続され、前記第一テールパイプよりも長い第二テールパイプと、前記第一テールパイプ側に設けられた開閉弁とを有し、前記開閉弁が、前記第一テールパイプの内径よりも小さい孔を少なくとも一つ有し、エンジン回転数が所定回転数未満の領域において閉状態になり、前記所定回転数以上の領域において排気圧の影響によって開状態になるものであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の排気消音装置においては、第二テールパイプよりも長さの短い第一テールパイプ側に設けられた開閉弁を開閉することにより、各テールパイプ内の排気抵抗を調整することができる。また、本発明の排気消音装置においては、開閉弁に第一テールパイプの内径よりも開口径の小さな孔が設けられている。これにより、開閉弁を閉状態した際に第一テールパイプを完全に閉状態になるのを防止しつつ、排気抵抗を高めることが可能となる。
【0010】
本発明の排気消音装置においては、エンジン回転数が所定回転数未満の領域(低回転数領域)で、排気経路長の短い第一テールパイプ側において開閉弁が閉状態になる。これにより、第一テールパイプにおける通気を確保しつつ排気抵抗を上昇させ、排気経路長が長い第二テールパイプにおける排気抵抗との均衡を図ることが可能となる。従って、本発明の排気消音装置によれば、エンジン回転数が所定回転数未満の領域において、第一テールパイプ及び第二テールパイプにおける排気圧や排気量のバランスを適正化することが可能である。
【0011】
また、第一テールパイプ及び第二テールパイプにおける排気量を均衡させるうるため、冬場などのようにテールパイプから排出された排気が白煙状態になって視認できる状態においても、両テールパイプから略均等に排気がなされていることが視認できる。そのため、本発明の排気消音装置によれば、排気が白煙状態になる状況下において、一般ユーザーにより、排気が正常に行われていないのではないかとの疑念を抱かれててしまうことを防止できる。
【0012】
また、本発明の排気消音装置においては、エンジン回転数が所定回転数以上の領域(高回転数領域)で、開閉弁が開状態になる。これにより、排気消音装置全体として、エンジン回転数が所定回転数未満の場合よりも排気抵抗が低下し、排ガスをスムーズに排出させることが可能となる。従って、本発明の排気消音装置によれば、高回転領域における背圧の抑制、エンジン出力の向上、燃費改善、あるいはドライバビリティの向上を図ることが可能である。
【0013】
ここで、低温条件下において各テールパイプにおける排気流量あるいは排気圧の不均衡が生じている場合には、経路長の長い第二テールパイプにおいて金属収縮音が生じる可能性がある。また、経路長の長い第二テールパイプにおいて、排気中に含まれている不純物や未燃成分に起因する腐食する可能性がある。さらに、経路長の長い第二テールパイプ側が第一テールパイプ側よりも負圧になり、外気と共に雨水や埃を吸引する可能性がある。
【0014】
しかしながら、本発明の排気消音装置においては、第一テールパイプ及び第二テールパイプにおける排気流量や排気圧の不均衡が生じない。そのため、本発明の排気消音装置においては、上述したような金属収縮音の発生、各テールパイプ等の腐食、あるいは雨水や埃の吸引による不具合等、排気流量や排気圧の不均衡に起因して想定される不具合が発生しない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各テールパイプにおける排気圧や排気量のバランスを適正化しつつ、高回転領域における背圧の抑制、エンジン出力の向上、燃費改善、あるいはドライバビリティの向上を図ることが可能な排気消音装置を提供できる。また、各テールパイプにおける排気圧や排気量の不均衡に伴う様々な不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気消音装置を模式的に示した模式図であり、(a)は開閉弁が閉状態である場合、(b)は開閉弁が開状態である場合を示す。
【図2】図1に示す排気消音装置に設置された開閉弁を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、本発明の一実施形態に係る排気消音装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。排気消音装置10は、車両に搭載されるものであり、図1に示すように、消音器20と、排気導入管30と、排気導出管50とを備えている。また、排気導出管50は、分岐管60と、第一テールパイプ70と、第二テールパイプ80との組み合わせによって構成されている。また、第一テールパイプ70内には、開閉弁100が設けられている。本実施形態の排気消音装置10は、消音器20に接続される第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80と、開閉弁100の構成に特徴を有する。
【0018】
さらに詳細に説明すると、消音器20の排気導入側には排気導入管30が接続されている。これにより、エンジンE側において発生した排気を、排気導入管30を介して消音器20内に流入させうる。また、消音器20の排気導出側には、排気導出管50が接続されている。排気導出管50は、消音器20に対して直接接続される分岐管60と、分岐管60に接続された第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80とを有する。すなわち、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80は、分岐管60を介して間接的に消音器20に接続されている。
【0019】
分岐管60は、消音器20の排気導出側に接続される消音器接続部62と、第一接続部64と、第二接続部66とを有し、排気経路を第一接続部64側、及び第二接続部66側の2系統に分割することができる。消音器接続部62は、消音器20に対して接続される。また、第一接続部64には第一テールパイプ70が接続され、第二接続部66には第二テールパイプ80が接続されている。
【0020】
第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80は、それぞれ金属管によって構成されている。第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80は、それぞれ略同一の開口径を有するが、車両に搭載されている他の構造物との干渉を避ける等の目的で長さ及び形状が相違している。
【0021】
具体的には、第一テールパイプ70は、略直線状に延びる金属管によって構成されている。これに対し、第二テールパイプ80は、他の構造物との干渉を回避する等の目的で中間部分において屈曲した形状とされている。また、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80は、オフセットした位置関係にある。そのため、第二テールパイプ80によって構成される排気流路の流路長は、第一テールパイプ70による流路長に比べて長い。第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80の末端部分(排気の流れ方向の最下流端)が略同位置となるように設置されている。また、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80の末端部分には、それぞれマフラカッタ72,82が取り付けられている。
【0022】
第一テールパイプ70には、開閉弁100が設けられている。図1及び図2に示すように、開閉弁100は、弁体102と、ヒンジ104とによって主要部が構成されている。弁体102は、第一テールパイプ70の開口形状に合わせて形成された平面視が略円形の板体である。弁体102には、一又は複数の孔106が弁体102の厚み方向に貫通するように形成されている。本実施形態では、複数の孔106が弁体102の周方向に向けて略等間隔に並ぶように形成されている。
【0023】
図1に示すように、弁体102は、第一テールパイプ70と分岐管60との境界部分、あるいはこの近傍においてヒンジ104により開閉自在なように取り付けられている。ヒンジ104は、第一テールパイプ70の周壁側に設けられている。また、弁体102は、ヒンジ104を中心として第一テールパイプ70における排気の流れ方向上流側から下流側に向けて倒れることにより開状態になる。弁体102は、常時において第一テールパイプ70の開口領域を横断した状態(閉状態)となるように付勢されている(図1(a)参照)。そのため、第一テールパイプ70における排気圧が低圧である場合、言い換えればエンジンEの回転数が閾値(本実施形態では3000回転)となる回転数よりも低回転数である場合には、弁体102は閉状態とされる。
【0024】
ここで、上述したように、弁体102には孔106が形成されている。そのため、弁体102が閉状態である場合であっても、第一テールパイプ70が完全に閉止される訳ではなく、弁体102が開状態である場合よりも第一テールパイプ70の排気抵抗が高くなる。すなわち、弁体102が閉状態になった状態においては、第一テールパイプ70における排気抵抗は高くなるものの、通気性は確保されている。
【0025】
一方、第一テールパイプ70における排気圧が高圧である場合、言い換えればエンジンEの回転数が閾値となる回転数以上の高回転数である場合には、弁体102は排気圧の影響によって開状態となる。これにより、第一テールパイプ70における排気抵抗を低減させることが可能である。また、エンジンEの回転数の低下に伴い、第一テールパイプ70における排気圧が低下すると、弁体102は、開状態から閉状態に切り替わる。このように、開閉弁100は、第一テールパイプ70における排気圧の高低、すなわちエンジンEの回転数の高低に応じて第一テールパイプ70における排気抵抗を切り替えることが可能である。
【0026】
上述したように、開閉弁100は、エンジン回転数が低く第一テールパイプ70における排気圧が低い状況下において閉状態になり、第一テールパイプ70の排気抵抗を高める機能を有する。そのため、エンジン回転数が低い低回転数領域においては、第一テールパイプ70の排気抵抗が、経路長の長い第二テールパイプ80と略同等になる。これにより、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80における排気圧及び排気量が均衡した状態になる。
【0027】
排気消音装置10においては、上述したようにして第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80における排気圧及び排気量を均衡させることが可能であるため、低温時などの排気が白煙状態になって見える状況下において、一般ユーザーが排気不良が発生しているものと誤認することを防止できる。
【0028】
また、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80における排気流量の不均衡が発生しないため、低温条件下においても、経路長の長い第二テールパイプ80において金属収縮音が生じない。さらに、前述したような排気流量の不均衡が発生しないため、経路長の長い第二テールパイプ80において排気中に含まれている不純物や未燃成分に起因して各テールパイプ70,80、及びこれらに付随するマフラカッタ72,82等の部材の腐食が発生しない。
【0029】
また、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80において排気流量や排気圧の不均衡が生じないため、経路長の長い第二テールパイプ80側において負圧になることを防止できる。これにより、排気消音装置10内に雨水や埃を吸引してしまうような現象、及びこのような吸引現象に付随して想定される腐食等の問題を防止できる。
【0030】
また、排気消音装置10では、エンジン回転数が高く第一テールパイプ70における排気圧が高い状況下において開閉弁100が閉状態になる。そのため、エンジン回転数が低回転領域である場合に比べ、消音器20に対して排気の流れ方向下流側の部分全体としての排気抵抗が小さくなり、消音器20から導入された排気を次々とスムーズに排出させることが可能になる。これにより、高回転領域における背圧の抑制、エンジン出力の向上、燃費改善、及びドライバビリティの向上を図ることが可能となる。
【0031】
上述したように、排気消音装置10においては、第一テールパイプ70に設けられた開閉弁100を開閉することにより、各テールパイプ70,80内の排気抵抗を調整することができる。また、排気消音装置10においては、開閉弁100に第二テールパイプ80の内径よりも開口径の小さな孔106が設けられている。そのため、低回転数領域において開閉弁100が閉状態になっている場合であっても、第一テールパイプ70が完全に閉止された状態になることを防止しつつ、排気抵抗を適度に向上させることが可能である。
【0032】
本実施形態においては、弁体102をなす板体に対し周方向に略等間隔に並ぶように孔106を複数形成した構成を例示したが、本発明はこれに限定される訳ではない。具体的には、孔106は単一であっても、複数であっても良い。また、孔106の設置位置、数量、開口面積、開口形状等についても、第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80における排気の流れを均衡させるために適切な範囲であれば、いかなる物であっても良い。
【0033】
また、弁体102は、孔106を有するものであればいかなるものであっても良い。具体的には、弁体102をパンチングメタル、メッシュ(網状体)等の孔を有する部材によって構成し、これらの開口部分(目)を孔106として利用することとしても良い。また、孔106は、板体を穿孔することにより形成したものに限定されず、板体を切り起こすこと、あるいは板体にスリットを設けることにより形成されたものであっても良い。
【0034】
本実施形態においては、消音器20に対して分岐管60を介して第一テールパイプ70及び第二テールパイプ80を間接的に接続した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各テールパイプ70,80をそれぞれ直接的に消音器20に接続した構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の排気消音装置10は、エンジン駆動式の車両に搭載することが可能であり、車両を構成する他部材との関係により第一テールパイプと第二テールパイプの長さを相違させねばならない場合に好適である。
【符号の説明】
【0036】
10 排気消音装置
20 消音器
70 第一テールパイプ
80 第二テールパイプ
100 開閉弁
106 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消音器に接続された第一テールパイプと、
前記消音器に接続され、前記第一テールパイプよりも長い第二テールパイプと、
前記第一テールパイプ側に設けられた開閉弁とを有し、
前記開閉弁が、前記第一テールパイプの内径よりも小さい孔を少なくとも一つ有し、エンジン回転数が所定回転数未満の領域において閉状態になり、前記所定回転数以上の領域において排気圧の影響によって開状態になるものであることを特徴とする排気消音装置。

【図1】
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【図2】
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