説明

排気管用封止システム

特に内燃機関のための多部分構成の排気管を封止するための封止システムであって、熱流(5)をガイドする少なくとも第1及び第2のフランジ部(9,11)を備え、これらフランジ部(9,11)間に、少なくとも1個のシール素子(31)のための収容空間(33)を画定する該封止システムにおいて、互いに隣接するフランジ部(9,11)は、熱流(5)に直交して熱流(5)から離れる外方に突出するリングフランジ(13)を構成し、このリングフランジ(13)内には、少なくとも一方のフランジ部(11)の端面(17)に開口するよう端面から軸線方向に窪ませて設けた環状溝(45)によって、シール素子(31)のための収容空間(33)であるチャンバを形成し、また、環状溝(45)内に少なくとも1個のカバー素子(47)を配置し、このカバー素子は、少なくとも1個のシール素子(31)の少なくともフランジ部(11)の端面(17)側で断熱体を構成するものとしたことを特徴とする封止システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、内燃機関に用いられる、多部分構成とした排気管を封止する封止システムに関し、この封止システムは、熱流をガイド(放熱)する少なくとも第1および第2のフランジ部を備え、これらフランジ部間に少なくとも1個のシール素子を収容するための受容空間を画定する。
【背景技術】
【0002】
このような封止システムは既知である。例えば、特許文献1(独国特許出願公開102004060845号)は、ピストンエンジンの排気管用の封止システムを記載している。この封止システムは、シール素子として、C字状の断面輪郭を有する金属製のシールリングを備える。排気管路のシール素子は、場合によっては600゜Cを超えるような極度の高温に晒される。作動温度が通常高温である場合、シール素子は、たとえ耐熱性に関して特別な性質を有する材料を使用したとしても、封止に必要とされる機能特性を失う。特に、シール素子の弾性は、過度の熱応力により生じるクリープ過程を経ることで劣化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開102004060845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、高温ガス領域で使用しても、また、封止すべき排気管が高温に晒されても、確実に封止を保証できる封止システムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載する特徴を備えた封止システムにより達成される。
【発明の効果】
【0006】
この構成により、本発明封止システムは、互いに隣接してシールし合うフランジ部が、熱流に直交してこれから離れる外方に突出するリング状フランジを形成し、このリングフランジに、シール素子のためのチャンバを形成し、リング状フランジの材料自体が、熱流からシール素子を確実に保護することを特徴とする。さらに本発明によれば、リング溝内に収容したシール素子を、カバー素子により保護し、このカバー素子は、リング溝内でシール素子の少なくともフランジ部材の端面側において断熱体を構成する。このように、シール素子は、最も熱負荷が過酷なリング溝の開口側において、特に効果的に熱負荷に対して保護する。このため、本発明に係る封止システムは、大きな熱負荷に晒される排気管に適用しても、確実に機能する。
【0007】
好適には、カバー素子として金属製のリング体を設ける。
【0008】
平坦リングの形態をとるリング体を用いる場合、好適には、リング体は、シール素子とフランジ部の端面との間に延在するように配設して、シール素子が収容されるリング溝のうち、最も大きな熱負荷に晒される領域を保護する断熱体を構成するようにする。
【0009】
カバー素子は、平坦リング体でなく、断面輪郭がアーチ状または山形を成すリングにより構成してもよい。
【0010】
好適には、この種の実施形態においてリング体は、リング溝内で、シール素子をその端面側と収容空間の他の壁側とにおいて保護するように配設する。
【0011】
特に好適にシール素子を断熱保護するのに適した実施形態において、カバー素子は、シール素子の熱流に最も近い側、つまり、リング溝の半径方向内方の壁側も保護する。
【0012】
好適には、シール素子として、特に断面輪郭がC字状またはV字状である金属製の成形リングシールを用いる。このとき、断面輪郭がC字状のシール素子の開口部は、リング溝内で半径方向内方、つまり封止システムのスラスト面に向かって開口するように配設する。
【0013】
シール素子の断面輪郭を、V字状またはC字状とする代わりに、ベローズ体ような互いに重なり合う折り畳み片が断面輪郭をなすような蛇行形状としてもよい。
【0014】
代案として、収容空間内には、金属製の波形シールをもることができる。いずれにせよ、本発明は、それぞれのシール素子に断熱保護を与えることが可能であり、このため、高熱での適用が可能な材料からなる金属製のシール素子によって、高温ガス領域でも確実に封止可能となる。シール素子のリング形状は、円形、またはほぼ円形とすることができる。さらに、楕円や、好適には角を丸めた長方形とすることも考えられる。このときリング溝の形状は、好適には、各シール素子のリング形状に従うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】排気管の互いに隣接する管部分が本発明による第1実施例の封止システムにより互いに封止されている様子を表す、片側のみの略縦断面図である。
【図2】本発明による第2実施例の封止システムを備えた、2つの管部分の互いに隣接するフランジ部分の接合面のみの片側略縦断面図である。
【図3】本発明に係る第3実施例の封止システムを備えた、2つの管部分の互いに隣接するフランジ部材の接合面のみの片側略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図面において、排気管の第1管部分および第2管部分を、それぞれ参照符号1または3で示す。当該内燃機関の作動時、排気管は、相応の排気温度を伴う排気熱流5をガイドする。互いに連結し、また本発明封止システムによって互いにシールした管部分1,3は、管軸線7に対して半径方向外方に突出するフランジ部9または11をそれぞれ備える。これらのフランジ部9,11は、共同して1個のリング状のフランジ13を形成し、フランジ部9,11は、それぞれ互いに対向する端面15または17を備える。管部分1,3を互いに連結するために、リング状フランジ13のフランジ部9,11は、適当な締め付け手段により互いにクランプする。この締め付け手段は通常の方法で構成され得るので図示しない。例えば、締め付け手段としては、フランジ部9,11の周方向面取り部25に適用する締め付けリングを使用することができる。
【0017】
各図面において、フランジ部9,11間を封止するシール素子として、C字状の断面輪郭を有する金属製の成形リングシール31を示す。上述のように、他の断面輪郭を有する金属製の成形リングシールまたは波形シール等を使用することができる。いずれにせよ、このようなシール素子は、フランジ部9,11間に構成した収容空間33内に、少なくとも部分的に収容する。図1〜3の各実施形態において、収容空間33は、フランジ部11の端面17から軸線方向に窪ませて形成したリング溝45によって構成し、このリング溝45は、フランジ部9の端面15に連結した際に、成形リングシール31のためのチャンバを構成する。
【0018】
本発明による封止システムにおいては、収容空間33内に配置した成形リングシール31のための付加的な断熱体として、各リング溝45にカバー素子47を配設する。カバー素子47は、成形リングシール31と、収容空間33の最も熱負荷に晒される領域との間に断熱体を構成するように形成する。
【実施例1】
【0019】
図1に示す実施例においては、カバー素子47を、金属製の平坦リングとして構成し、この平坦リングは、成形リングシール31と、対向するフランジ部材9の端面15に接する端面17との間に配設する。矢印49によって示すように、この接合面は熱流5の影響を最も受ける箇所であり、カバー素子47がここに位置することで保護効果が最大になる。
【実施例2】
【0020】
図2に示す第2実施例においては、カバー素子47を、平坦リングの代わりにアーチ状のリング体を設ける。このリング体はリング溝45内で、成形リングシール31に対して、リング溝45の開口側に隣接し、図1に示す実施例と同様に断熱体を構成する側を保護するだけでなく、さらに、リング溝45の半径方向内方の壁、つまりを部分的に保護する。
【実施例3】
【0021】
図3に示す第3実施例においては、カバー素子47は、成形リングシール31の2側面に対する遮蔽体を成す。そのために、カバー素子47は、角を有する断面輪郭を有するものとして形成され、断面輪郭の一方の辺は、図1の平坦リング体に対応するように、端面17,15の間の接合面に沿って延在する。他方の辺は、図2のカバー素子47のアーチ状断面輪郭部分に対応するように、収容空間33の熱流5に最も近い壁5からの遮蔽体を構成する。
【0022】
上述したカバー素子47の形態以外にも、例えば、シール素子を3側面で包囲するようなU字状断面輪郭を使用できること勿論である。いずれにせよ、リング溝45内のカバー素子47は、成形リングシール31の、少なくともフランジ部9,11の端面15,17側の部分を覆うように組み込む。また、好適には、さらに、成形リングシール31の少なくとも熱に侵される危険性のある側面を、対応する形状のカバー素子47により保護する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とくに内燃機関のための多部分構成の排気管を封止するための封止システムであって、熱流(5)をガイド(放熱)する少なくとも第1及び第2のフランジ部(9,11)を備え、これらのフランジ部(9,11)の間に、少なくとも1個のシール素子(31)のための収容空間(33)を有する該封止システムにおいて、
互いに隣接する前記フランジ部(9,11)は、熱流(5)に直交して前記熱流(5)から離れる外方に突出するリング状フランジ(13)を構成し、このリング状フランジ(13)に、少なくとも一方の前記フランジ部材(11)の端面(17)に開口するようこの端面から軸線方向に窪ませて形成したリング溝(45)によって、前記シール素子(31)のための前記収容空間(33)であるチャンバを形成し、また、前記リング溝(45)内に少なくとも1個のカバー素子(47)を配設し、このカバー素子は、少なくとも1個のシール素子(31)の少なくとも前記フランジ部材(11)の前記端面(17)側で断熱体を構成するものとしたことを特徴とする封止システム。
【請求項2】
請求項1記載の封止システムにおいて、前記カバー素子として、金属製のリング体(47)を備えたことを特徴とする封止システム。
【請求項3】
請求項2記載の封止システムにおいて、前記カバー素子として、平坦リング体(47)を設け、この平坦リング体(47)を、前記シール素子(31)と前記端面(17)との間に配設したことを特徴とする封止システム。
【請求項4】
請求項2記載の封止システムにおいて、前記カバー素子として、断面輪郭がアーチ状であるリング体(47)を備えたことを特徴とする封止システム。
【請求項5】
請求項2記載の封止システムにおいて、前記カバー素子として、断面輪郭が山形であるリング体(47)を備えたことを特徴とする封止システム。
【請求項6】
請求項4または5記載の封止システムにおいて、前記リング体(47)は、前記リング溝(45)内に配設されている、前記シール素子(31)の、前記端面(17)側、および、前記収容空間(33)の付加的な壁側において断熱体を構成することを特徴とする封止システム。
【請求項7】
請求項6記載の封止システムにおいて、前記リング体(47)は、前記シール素子(31)の、前記熱流(5)に最も近い側においても断熱体を構成することを特徴とする封止システム。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の封止システムにおいて、前記シール素子として、C字状またはV字状の形状断面を有する成形リングシール(31)を備えたことを特徴とする封止システム。
【請求項9】
請求項8記載の封止システムにおいて、前記成形リングシール(31)は前記リング溝(45)内において、C字状形状の開口部が半径方向内方に指向するように配設したことを特徴とする封止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505069(P2010−505069A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529554(P2009−529554)
【出願日】平成19年9月1日(2007.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007644
【国際公開番号】WO2008/037330
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(509016830)エルリングクリンガー アーゲー (6)
【Fターム(参考)】