説明

排気系のための対抗音システムおよびその制御方法

【課題】車両の排気系を伝達する空気伝搬音を該音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に打ち消すための方法を提供する。
【解決手段】排気系の内部で計測された音(S1)を用いて、第1の理想的な制御信号の成分を算出し(S2)、該成分は、互いに90度位相がずれた第1の振幅を含む第1の正弦波振動を含む。第1の振幅から第1の全体振幅を算出し(S3)、所定の参照振幅と比較する(S4)。第1の全体振幅が参照振幅よりも大きい場合、参照振幅と第1の全体振幅とから補正係数を算出し(S5)、第1の振幅を補正係数で重み付けすることにより重み付きの第1の振幅を得て(S6)、重み付きの第1の振幅と、対応する互いに90度位相がずれた第1の正弦波振動との積の和を求め、和を制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力する(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気系のための対抗音システム(anti-sound system)およびその制御方法に関する。特に、本発明は、燃焼機関によって動作する車両の排気系において能動的に音波を打ち消すかまたは音波に影響を与えることに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関(combustion engine)(例えば、レシプロピストンエンジン、ロータリーピストンエンジン、またはフリーピストンエンジン)の設計にかかわらず、連続して行われる作動サイクル(特に、混合気の吸入および圧縮、作動、ならびに燃焼混合気の排出)の結果、騒音が発生する。一方では、これらの騒音は、構造伝搬音(structure-borne sound)として燃焼機関を通過し、空気伝搬音(airborne sound)として燃焼機関の外部に放出される。他方では、これらの騒音は、燃焼混合気と共に空気伝搬音として燃焼機関の排気系を通過する。
【0003】
これらの騒音は不都合なものであると認識されることが多い。一方では、騒音防止に関する法規定が存在し、燃焼機関によって動作する車両の製造会社はこれを遵守しなければならない。これらの法規定は、通常は、車両の動作時の最大許容音圧を規定している。他方では、製造会社は、自社が製造する、各製造会社のイメージに合い、顧客を引き付けるように意図された燃焼機関で動作する車両に、特徴的な音の開発を加えようとしている。容積の小さい最新のエンジンの場合は、この特徴的な騒音の開発を自然には確保できないことが多い。
【0004】
構造伝搬音として燃焼機関を通過する騒音は、良好に遮断できるため、通常は騒音防止に関する問題とはならない。
【0005】
燃焼混合気と共に空気伝搬音として燃焼機関の排気系を通過する騒音は、排気系のオリフィスの手前に配置された消音器を通じて低減され、該消音器は任意の既存の触媒コンバータの下流に接続される。このような消音器は、例えば、吸収および/または反射の原理によって動作可能である。どちらの動作モードも、比較的大きい空間を必要とし、燃焼混合気に対して比較的高い抵抗を示し、その結果、車両の全体効率が低下し、燃料消費が増加する、という欠点を有する。
【0006】
消音器の代替または補完として、いわゆる対抗音システムがしばらく前から開発されている。このシステムは、電気音響的に生成された対抗音を、燃焼機関で生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音に重畳するものである。このようなシステムは、例えば、特許文献1〜18から公知である。
【0007】
このような対抗音システムは、通常、いわゆるフィルタードx最小平均二乗(Filtered-x Least Mean Squares)(FxLMS)アルゴリズムを利用する。このアルゴリズムは、排気系と流体接続(fluidically connect)された少なくとも1つのスピーカ(すなわち、スピーカ内部の流体(気体/空気)が排気系内部の流体(気体/空気)と連通し、スピーカ内部の流体は排気系内部へ向かって流れることが可能であり、逆に、排気系内部の流体はスピーカ内部へ向かって流れることが可能である)を介して音を出力することによって、エラーマイクロホン(error microphone)を用いて計測されるエラー信号をゼロに調節しようとするものである。排気系内を伝達される空気伝搬音の音波とスピーカによって生成される対抗音との相殺的干渉を達成するためには、スピーカから生じる音波は、排気系内を伝達される音波と振幅および周波数が対応していなければならないが、これらの音波に対して180度の位相のずれを有していなければならない。排気管内を伝達される空気伝搬音の周波数帯ごとに、対抗音がFxLMSアルゴリズムを用いて別々に算出され、その際、互いに90度ずれた2つの正弦波振動の適切な周波数および位相位置が決定され、これらの正弦波振動の振幅が算出される。対抗音システムの目標は、音の打消し(sound cancellation)が、排気系の外部で、しかし必要に応じて排気系の内部でも、聞こえ、かつ計測可能であることである。
【0008】
対応する対抗音システムが、ドイツ連邦共和国、73730 エスリンゲン(Esslingen)、エーバーシュペッヒャーシュトラーセ(Ebersp▲a▼cherstrasse) 24、ヨット・エーバーシュペッヒャー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー(J. Ebersp▲a▼cher GmbH & Co. KG)社から入手可能である。
【0009】
対抗音システムを用いることによって、対抗音システムを備えていない従来の排気系と比較して、排気系の構成体積を最大で60%低減することができ、重量を最大で40%低減することができ、排気背圧を最大で150ミリバール低減することができる。当然ながら、対抗音システムを排気系内の従来の消音器と組み合わせてもよい。
【0010】
「対抗音(anti-sound)」という呼称は、排気系内を伝達される空気伝搬音と区別するのに役立つ。「対抗音」自体は従来の空気伝搬音である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,177,874号
【特許文献2】米国特許第5,229,556号
【特許文献3】米国特許第5,233,137号
【特許文献4】米国特許第5,343,533号
【特許文献5】米国特許第5,336,856号
【特許文献6】米国特許第5,432,857号
【特許文献7】米国特許第5,600,106号
【特許文献8】米国特許第5,619,020号
【特許文献9】欧州特許第0 373 188号
【特許文献10】欧州特許出願公開第0 674 097号
【特許文献11】欧州特許第0 755 045号
【特許文献12】欧州特許第0 916 817号
【特許文献13】欧州特許第1 055 804号
【特許文献14】欧州特許第1 627 996号
【特許文献15】独国特許出願公開第197 51 596号
【特許文献16】独国特許第10 2006 042 224号
【特許文献17】独国特許出願公開第10 2008 018 085号
【特許文献18】独国特許出願公開第10 2009 031 848号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
公知の対抗音システムおよびその制御方法では、上記少なくとも1つのスピーカの過負荷が起こり得るという欠点がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つのスピーカに過負荷がかかることを有効に回避する、排気系のための対抗音システムおよびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、独立請求項の特徴の組合せによって解決される。好適なさらなる発展は従属請求項に記載されている。
【0015】
実施形態は、燃焼機関によって動作する車両の排気系のための、計測された音を用いて排気系内に対抗空気伝搬音を生成するための対抗音システムを、燃焼機関で生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を該音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法に関する。この音の打消しは、少なくとも排気系の外部で、しかし好ましくは排気系の内部でも、聞こえ、かつ計測可能なものである。この場合の「音が計測される排気系内の位置の領域において」とは、音が少なくとも部分的に打ち消される位置が、排気ガスの流れに関して下流または上流へ、音が計測される位置における排気系の最大直径の10倍以下、好ましくは5倍以下、より好ましくは2倍以下だけ、排気ガスの流れに沿って離間していることを意味する。最初のステップにおいて、排気系の内部で音の計測が行われる。この次に、計測された音を用いて第1の理想的な制御信号の成分が算出され、ここで、これらの成分は、互いに対して90度位相がずれた第1の振幅を有する2つの第1の正弦波振動を含む。この次に、第1の振幅から第1の全体振幅(overall amplitude)が算出され、次いで、第1の全体振幅を所定の参照振幅(reference amplitude)と比較することにより第1の全体振幅が参照振幅よりも大きいかどうかが確定される。
【0016】
第1の全体振幅が参照振幅よりも大きい場合、上記理想的な制御信号が供給されるスピーカの損傷を排除できないと結論付けられる。このため、参照振幅と第1の全体振幅とから補正係数が算出され、この補正係数で第1の振幅を重み付けすることができ、重み付きの第1の振幅が得られる。重み付きの第1の振幅と、対応する互いに90度位相がずれた第1の正弦波振動との積の和が、少なくとも1つのスピーカへ制御信号として出力される。このようにして導出された少なくとも1つのスピーカへの制御信号によると、少なくとも1つのスピーカの損傷を高い確率で排除できる。
【0017】
しかしながら、第1の全体振幅が参照振幅以下である場合、第1の理想的な制御信号の第1の振幅と、対応する90度位相がずれた第1の正弦波振動との積の和が求められ、少なくとも1つのスピーカへ制御信号として出力される。こうすると少なくとも1つのスピーカの損傷を高い確率で排除できるからである。
【0018】
一実施形態によると、打消しは、量(amount)および位相の点で行われる。
【0019】
この提案する方法により、対抗音を生成するために用いられるスピーカへの容易な適合が可能になる。スピーカの損傷を高い確率で排除できるため、例えば不安定さの結果としてスピーカを理論的な最大可能負荷に適合させる必要がなくなる。むしろ、スピーカを比較的低い平均最大負荷に適合させればよい。この結果、電気負荷容量の低いスピーカを用いることが可能になる。
【0020】
少なくとも1つのスピーカへ出力される制御信号に単に全体として上限が設けられるのではなく、制御信号を形成する正弦波振動の個々の振幅を個別に減衰させるため、対抗音の音質はそのままであり、そのため、燃焼機関によって生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音の打消しの量のみが変化する。
【0021】
一実施形態によると、第1の全体振幅は、第1の振幅の二乗の和から、乗根(root)をとることによって得られる。
【0022】
一実施形態によると、補正係数は、参照振幅と第1の全体振幅との商である。
【0023】
一実施形態によると、第1の理想的な制御信号の成分を算出するステップと並行して、少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分が算出され、これらの成分は、互いに90度位相がずれた第2の振幅を有する第2の正弦波振動を含む。ここで、互いに位相がずれた2つの第1の正弦波振動の周波数は、互いに90度位相がずれた少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なる。よって、第1の全体振幅を算出することと並行して、第2の振幅から第2の全体振幅が算出される。第1の全体振幅を所定の参照振幅と比較するステップよりも前に、第1および第2の全体振幅が互いに比較される。さらに、大きい方の全体振幅が小さい方の全体振幅の大きさの1.5倍、好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍よりも大きい場合は、第1の全体振幅を所定の参照振幅と比較するステップよりも前に、小さい方の全体振幅を有する理想的な制御信号の正弦波振動の振幅がゼロに設定される。
【0024】
具体的には、これは、例えば、第1の全体振幅が第2の全体振幅の大きさの1.5倍よりも大きい場合は少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の第2の正弦波振動の振幅をゼロに設定したり、第2の全体振幅が第1の全体振幅の大きさの1.5倍よりも大きい場合は第1の理想的な制御信号の第1の正弦波振動の振幅をゼロに設定したりすることを意味し得る。
【0025】
このように、このさらなる方法においては、優勢な理想的な制御信号が判断され、それだけが用いられる。このため、必要な計算の手間が低く抑えられる。
【0026】
ここで、一実施形態によると、第1の振幅から第1の全体振幅を算出するステップと、第2の振幅から第2の全体振幅を算出することとは、第1および第2の振幅の二乗の和から乗根をとることを含み得る。
【0027】
さらなる実施形態は、燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムを、燃焼機関で生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を該音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法に関する。この音の打消しは、少なくとも排気系の外部で、しかし好ましくは排気系の内部でも、聞こえ、かつ計測可能なものである。ここで、「音が計測される排気系内の位置の領域において」とは、音が少なくとも部分的に打ち消される位置が、排気流に関して、音が計測される位置における排気系の最大直径の10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは2倍以下だけ、排気ガスの流れに沿って離間していることを意味する。この方法は、排気系の内部で音を計測することと、計測された音を用いて、排気系内に対抗空気伝搬音を生成するための第1および少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分を算出することとを含み、ここで、これらの成分はそれぞれ、互いに90度位相がずれた第1および第2の振幅を有する2つの第1および第2の正弦波振動を含み、90度位相がずれた第1の理想的な制御信号の2つの第1の正弦波振動の周波数は、90度位相がずれた第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なる。この次に、第1の振幅から第1の全体振幅が算出され、第2の振幅から第2の全体振幅が算出される。第1および第2の全体振幅の量(すなわち絶対値)が加算されることにより絶対全体振幅が得られる。この絶対全体振幅を所定の参照振幅と比較することにより絶対全体振幅が参照振幅よりも大きいかどうかが判断される。こうすることによって、上記理想的な制御信号の絶対全体振幅が使用されたスピーカの負荷容量を超えるか否かが判断される。
【0028】
絶対全体振幅が参照振幅よりも大きく、したがって、少なくとも1つのスピーカの過負荷を予測しなければならない場合、参照振幅と絶対全体振幅とから絶対補正係数が算出される。第1および第2の振幅がそれぞれ絶対補正係数で重み付けされることにより重み付きの第1および第2の振幅が得られる。重み付きの第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動とのそれぞれの積の和が、少なくとも1つのスピーカへ制御信号として出力される。
【0029】
しかしながら、絶対全体振幅が参照振幅以下であり、したがって、少なくとも1つのスピーカの過負荷を予測しなくてよい場合は、第1および第2の理想的な制御信号の第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動との積の和が、制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力される。
【0030】
このように、対抗音の複数の周波数を含む制御信号を、それらの周波数間の位相関係が連続的に変化することを考慮する必要なく、簡単に限定することができる。
【0031】
一実施形態によると、打消しは、量(amount)および位相の点で行われる。
【0032】
一実施形態によると、絶対補正係数は、参照振幅と絶対全体振幅との商である。
【0033】
さらなる実施形態は、燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムを、燃焼機関によって生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を該音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法に関する。この音の打消しは、少なくとも排気系の外部で、しかし好ましくは排気系の内部でも、聞こえ、かつ計測可能なものである。ここで、「音が計測される排気系内の位置の領域において」とは、音が少なくとも部分的に打ち消される位置が、排気ガスの流れに関して下流または上流へ、音が計測される位置における排気系の最大直径の10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは2倍以下だけ、排気ガスの流れに沿って離間していることを意味する。この方法は、排気系の内部で音を計測することと、計測された音を用いて、排気系内に対抗空気伝搬音を生成するための第1および少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分を算出することとを含み、ここで、これらの成分はそれぞれ、互いに90度位相がずれた第1および第2の振幅を有する2つの第1および第2の正弦波振動を含み、90度位相がずれた第1の理想的な制御信号の2つの第1の正弦波振動の周波数は、90度位相がずれた第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なる。この次に、第1の理想的な制御信号の成分と少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分との間の現在の位相のずれが判断され、第1の振幅から第1の全体振幅が算出され、第2の振幅から少なくとも1つのさらなる全体振幅が算出される。第1の全体振幅および少なくとも1つのさらなる全体振幅の量(すなわち絶対値)が、位相のずれを考慮して、ベクトルの加法により加算されることにより現在の全体振幅が得られる。この現在の全体振幅(の量)を所定の参照振幅と比較することにより現在の全体振幅が参照振幅よりも大きいかどうかが判断される。こうすることによって、上記理想的な制御信号の現在の全体振幅が使用されたスピーカの負荷容量を超えるか否かが判断される。
【0034】
現在の全体振幅(の量)が参照振幅よりも大きく、したがって、少なくとも1つのスピーカの過負荷を予測しなければならない場合、この異なる参照振幅と現在の全体振幅とから現在の補正係数が算出される。この補正係数を連続的に適合させる必要があることは明らかである。これは、この補正係数が、第1の理想的な制御信号の成分と少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分との間の現在の位相のずれに依存しているためである。第1および第2の振幅をそれぞれ現在の補正係数で重み付けすることにより重み付きの第1および第2の振幅が得られる。重み付きの第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動とのそれぞれの積の和が、制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力される。
【0035】
しかしながら、現在の全体振幅(の量)が参照振幅以下であり、したがって、少なくとも1つのスピーカの過負荷が予測されない場合、第1および第2の理想的な制御信号の第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動との積の和が、制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力される。
【0036】
このように、対抗音の複数の周波数を含む制御信号を、簡単に限定することができ、ここでは、それらの周波数間の位相関係が連続的に変化することも考慮に入れることができる。
【0037】
一実施形態によると、打消しは、量(amount)および位相の点で行われる。
【0038】
一実施形態によると、現在の補正係数は、参照振幅と現在の全体振幅との商から得られる。
【0039】
一実施形態によると、第1の全体振幅は、第1の振幅の二乗の和から乗根をとることによって得られ、第2の全体振幅は、第2の振幅の二乗の和から乗根をとることによって得られる。
【0040】
一実施形態によると、参照振幅は、少なくとも1つのスピーカの最大電気負荷容量に適合される。
【0041】
燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムの実施形態は、対抗音制御器と、少なくとも1つのスピーカと、エラーマイクロホン(error microphone)とを含む。少なくとも1つのスピーカは、制御信号を受信するために対抗音制御器と接続され、対抗音制御器から受信した制御信号の関数としての対抗音を排気系と流体接続可能な音生成器において生成するように設計される。また、エラーマイクロホンは、対抗音制御器と接続され、音生成器と排気系との流体接続の領域内に位置する排気系の位置に配置可能であり、排気系の内部で音を計測し、対応する計測信号を対抗音制御器へ出力するように設計される。ここで、「流体接続(fluid connection)の領域内」とは、エラーマイクロホンが、音生成器と排気系との流体接続箇所から、排気ガスの流れに関して下流または上流へ、排気ガスの流れに沿ったこの流体接続箇所での排気系の最大直径の10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは2倍以下だけ、排気ガスの流れに沿って離間していることを意味する。対抗音制御器は、制御信号を少なくとも1つのスピーカへ出力することによって信号(ひいては、排気系内を伝達される空気伝搬音)を少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために、上記の方法を実施するように設計される。この音の打消しは、少なくとも排気系の外部で、しかし好ましくは排気系の内部でも、聞こえ、かつ計測可能なものである。
【0042】
一実施形態によると、打消しは、量(amount)および位相の点で行われる。
【0043】
自動車の実施形態は、燃焼機関と、該燃焼機関と流体接続された排気系と、上記の対抗音システムとを含み、音生成器は排気系と接続され、エラーマイクロホンは排気系内または排気系上に配置される。
【0044】
ちなみに、本明細書においては、詳細な別段の明記がない限り、用語「制御する(controlling)」は、全体を通して用語「調節する(regulating)」と同じ意味で使われ、ドイツ語の用法からは外れていることに言及する。これは、両用語のすべての文法的変化にも関する。したがって、本明細書において、用語「制御(control)」は、用語「調節(regulation)」が単純な制御鎖(control chain)に関し得るのと同様に、調節変数またはその計測値を戻すことを含み得る。
【0045】
さらに、用語「包含する(encompass)」、「含む(comprise)」、「含有する(contain)」、「含む(include)」、および「備える(with)」ならびにそれらの文法的変化は、概して、例えば方法の工程、装置、領域、変数などのような特徴の非制限的な列挙として理解されなければならず、他のもしくは追加の特徴または他のもしくは追加の特徴のグループが存在することを除外するものではないことを指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲および図面と共に、以下の代表的な実施形態の説明から明らかになる。図面において、同一または類似の要素には、同一または類似の参照符号を付す。本発明は、記載された代表的な実施形態の実施形態に限定されるわけではなく、添付の請求項の範囲によって定められることを指摘する。特に、本発明に係る実施形態の個々の特徴は、以下に述べる例とは別の数量および組合せで実現され得る。以下の本発明のいくつかの代表的な実施形態の説明においては、次の添付の図面を参照する。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係る対抗音システムの概略斜視図である。
【0048】
図2は、燃焼機関の排気系と相互作用する図1の対抗音システムの概略ブロック図である。
【0049】
図3A、図3Bは、第1の実施形態に係る、図1および図2の排気系のための対抗音システムの制御方法のフローチャートを示す。
【0050】
図4は、第2の実施形態に係る、図1および図2の排気系のための対抗音システムの制御方法のフローチャートを示す。
【0051】
図5は、第3の実施形態に係る、図1および図2の排気系のための対抗音システムの制御方法のフローチャートを示す。
【0052】
図6は、図2の対抗音システムを含む自動車を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の一実施形態に係る対抗音システムについて、図1および図2を参照しながら説明する。
【0054】
対抗音システムは、遮音された筐体としての音生成器3を含み、該音生成器は、スピーカ12を内蔵し、テールパイプ1の領域で排気系4と流体接続される。
【0055】
テールパイプ1は、排気系4内を伝達される排気ガスを外部へ排出するために、オリフィス2を含む。
【0056】
テールパイプ1には、圧力センサとしてのエラーマイクロホン5が設けられる。エラーマイクロホン5は、排気系4と音生成器3との流体接続が提供される領域の下流の部分でテールパイプ1の内部の圧力変動、したがって音を計測する。しかしながら、本発明がエラーマイクロホンのこのような配置に限定されるわけではないことを強調する。概して、エラーマイクロホンが、音生成器と排気系との流体接続箇所から、排気ガスの流れに関して下流または上流へ、この流体接続箇所における排気系の最大直径の10倍以下、好ましくは5倍以下、さらに好ましくは2倍以下だけ、当該排気ガスの流れに沿って離間されていると適切である。
【0057】
スピーカ12およびエラーマイクロホン5は、対抗音制御器10と電気的に接続される。対抗音制御器10とスピーカ12との間に増幅器11が接続される。
【0058】
図示した実施形態において、排気系4は、燃焼機関6とテールパイプ1との間に配置された、燃焼機関6によって放射されて排気系4内を伝達される排気ガスを浄化するための触媒コンバータ7をさらに含む。
【0059】
以下、上記対抗音システムの動作モードについて、図3A、図3B、図4、および図5のフローチャートを用いて、より詳細に説明する。
【0060】
1.図3Aおよび図3Bに係る第1の実施形態の説明
1.1 図3Aおよび図3Bに示すフローチャートの幹の説明
最初のステップS1において、エラーマイクロホン5によって排気系4のテールパイプ1の内部で音が計測され、対応する値が対抗音制御器10へ出力される。
【0061】
ステップS2において、対抗音制御器10は、エラーマイクロホン5によって計測された値を用いて、第1の理想的な制御信号の成分と少なくともの第2の理想的な制御信号の成分とを算出する。これらの理想的な制御信号の成分は各々、互いに90度位相がずれた対応する振幅を有する2つの正弦波振動を含む。
【0062】
図3Aに示す実施形態においては(そして、図4および図5に示す実施形態においても)、2つの理想的な制御信号のそれぞれの成分が算出される。第1の理想的な制御信号の成分は、第1の振幅A1およびA2を有し互いに90度位相がずれた2つの第1の正弦波振動
【0063】
【数1】

を含む。第2の理想的な制御信号の成分は、第2の振幅A1’およびA2’を有し互いに90度位相がずれた2つの第2の正弦波振動
【0064】
【数2】

を含む。ここで、第1の理想的な制御信号の互いに90度位相がずれた2つの第1の正弦波振動
【0065】
【数3】

の周波数は、第2の理想的な制御信号の90度位相がずれた2つの第2の正弦波振動
【0066】
【数4】

の周波数と異なる。その結果、第1の制御信号の成分と第2の制御信号の対応する成分との間の位相のずれが、連続的に変化する。
【0067】
明らかに、互いに90度位相がずれた2つの正弦波振動を各々が有する複数の第2の理想的な制御信号を算出することも可能であり、ここで、異なる理想的な制御信号の正弦波振動は各々異なる周波数を有する。1つの理想的な制御信号の成分のみを算出することも可能である。最後に述べた場合においては、生成される対抗音によって打ち消すかまたは低減させることができるのは、燃焼機関6によって放射されて排気系4内を伝達される排気ガスの主な周波数のみである。
【0068】
次のステップS3において、第1の理想的な制御信号の第1の振幅A1およびA2から第1の全体振幅Agesが算出され、第2の理想的な制御信号の第2の振幅A1’およびA2’から第2の全体振幅Ages’が算出される。
【0069】
図示した実施形態において、これは、第1の振幅A1およびA2の二乗の和から乗根をとることにより第1の全体振幅Ages
【0070】
【数5】

を得ることと、第2の振幅A1’およびA2’の二乗の和から乗根をとることにより第2の全体振幅Ages
【0071】
【数6】

を得ることとによって行われる。しかしながら、本発明がこの手順に限定されるわけではない。
【0072】
この次に、ステップS32において、第1および第2の全体振幅AgesおよびAges’が互いに比較されることにより上記理想的な制御信号のうちの1つの全体振幅が少なくとも1つの他の理想的な制御信号の全体振幅の1.5倍(好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍)よりも大きいかどうかが判断される。
【0073】
そうである場合、ステップS35において、小さい方の全体振幅となる理想的な制御信号の振幅がゼロに設定される。このように、このさらなる方法は、優勢な理想的な制御信号に焦点を置くことができる。
【0074】
具体的には、すなわち、本実施形態において、第1の全体振幅が第2の全体振幅の大きさの1.5倍(好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍)よりも大きいときは(Ages>1.5・Ages’またはAges>2・Ages’またはAges>5・Ages’)、少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の第2の正弦波振動の振幅がゼロに設定される。よって、第2の全体振幅が第1の全体振幅の大きさの1.5倍(好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍)よりも大きいときは(Ages’>1.5・AgesまたはAges’>2・AgesまたはAges’>5・Ages)、第1の理想的な制御信号の第1の正弦波振動の振幅がゼロに設定される。
【0075】
全体振幅が少なくとも1つの他の理想的な制御信号の全体振幅の1.5倍(好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍)よりも大きい理想的な制御信号がない場合、本方法は、図3Aおよび図3Bのフローチャートの「A」へ分岐する。この分岐については後でより詳細に説明する。
【0076】
なお、ステップS32およびS35は任意である。これらのステップは、特に、ステップS2において1つの理想的な制御信号の成分のみが算出される場合に、省略可能である。
【0077】
この次に、ステップS4において、残りの全体振幅Ages(振幅がゼロに設定されなかった信号の全体振幅)が、所定の参照振幅Amaxと比較されることによりこの全体振幅Agesが参照振幅Amaxよりも大きいかどうかが判断される。
【0078】
参照振幅Amaxは、この場合はスピーカ12の最大電気負荷容量に適合されたパラメータである。
【0079】
全体振幅Agesが参照振幅Amaxよりも大きい場合(Ages>Amax)、参照振幅Amaxと全体振幅Agesの商を算出することによって、補正係数Qkorr
【0080】
【数7】

が算出される。
【0081】
しかしながら、全体振幅Agesが参照振幅Amax以下である場合(Ages≦Amax)、本方法は、図3Aおよび図3Bのフローチャートの「B」へ分岐する。この分岐については後でより詳細に説明する。
【0082】
この次に、ステップS6で、ゼロに設定されていない振幅A1およびA2が補正係数Qkorrで重み付けされ、重み付きの振幅A1gewおよびA2gew(A1gew=Qkorr・A1、A2gew=Qkorr・A2)を得る。
【0083】
ステップS7で、これらの重み付き振幅A1gewおよびA2gewに、対応する互いに90度位相がずれた第1の正弦波振動
【0084】
【数8】

が乗算され、得られた積が加算され
【0085】
【数9】

少なくとも1つのスピーカ12へ出力される制御信号Zが求められ、その後、本方法は始めから再開する。
【0086】
1.2 図3Aおよび図3Bに示すフローチャートの分岐「A」の説明
全体振幅が少なくとも1つの他の理想的な制御信号の全体振幅の大きさの1.5倍(好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍)よりも大きい理想的な制御信号がない場合、全体振幅AgesおよびAges’を算出するステップS3の次にステップS37’で第1および第2の全体振幅AgesおよびAges’の量(すなわち絶対値)が足し合わされ、絶対全体振幅(Agesabsol=|Ages|+|Ages’|)が求められる。
【0087】
ステップS4’で、このようにして得られた絶対全体振幅Agesabsolが所定の参照振幅Amaxと比較されることにより絶対全体振幅Agesabsolが参照振幅Amaxよりも大きいかどうかが判断される。
【0088】
絶対全体振幅Agesabsolが参照振幅Amaxよりも大きい場合(Agesabsol>Amax)、ステップS5’で、参照振幅Amaxと絶対全体振幅Agesabsolとから絶対補正係数Qkorrabsolが算出される。
【0089】
ここで、絶対補正係数Qkorrabsolの算出も、参照振幅Amaxと絶対全体振幅Agesabsolとの商を求めることにより絶対補正係数Qkorrabsol
【0090】
【数10】

を得ることによって行われる。
【0091】
しかしながら、絶対全体振幅Agesabsolが参照振幅Amax以下である場合(Agesabsol≦Amax)、本方法はフローチャートの「C」へ分岐する。この分岐については後でより詳細に説明する。
【0092】
この次に、ステップS6’で、第1および第2の振幅A1、A2、A1’、A2’が絶対補正係数Qkorrabsolで重み付けされ、重み付きの第1および第2の振幅A1gew、A2gew、A1gew’、A2gew’(A1gew=Qkorrabsol・A1、A2gew=Qkorrabsol・A2、A1gew’=Qkorrabsol・A1’、A2gew’=Qkorrabsol・A2’)を得る。
【0093】
この次に、ステップS7’で、重み付きの第1および第2の振幅A1gew、A2gew、A1gew’、A2gew’と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動
【0094】
【数11】

との積の和
【0095】
【数12】

が求められ、制御信号として少なくとも1つのスピーカ12へ出力され、その後、本方法は始めから再開する。
【0096】
1.3 図3Aおよび図3Bに示すフローチャートの分岐「C」の説明
絶対全体振幅Agesabsolが参照振幅Amax以下である場合(Agesabsol≦Amax)、ステップS8’で、第1および第2の理想的な制御信号の第1および第2の振幅A1gew、A2gew、A1gew’、A2gew’と、対応する90度位相がずれた第1および第2の正弦波振動
【0097】
【数13】

との積の和が、重み付けなしで求められ
【0098】
【数14】

制御信号として少なくとも1つのスピーカ12へ出力され、その後、本方法は始めから再開する。
【0099】
1.4 図3Aおよび図3Bのフローチャートの分岐「B」の説明
しかしながら、全体振幅Agesが参照振幅Amax以下である、すなわちAges≦Amaxである場合、ステップS8で、ゼロに設定されていないそれぞれの理想的な制御信号の振幅A1、A2と、90度位相がずれた正弦波振動
【0100】
【数15】

との積の和が求められることにより、少なくとも1つのスピーカ12へ出力される制御信号Zが得られ
【0101】
【数16】

その後、本方法は始めから再開する。
【0102】
2.図4に係る第2の実施形態の説明
第2の実施形態のステップS1*乃至S3*は、上記に図3Aおよび図3Bを参照しながら説明した第1の実施形態のステップS1乃至S3に対応する。ステップS37*乃至S8*は、上記に図3Aおよび図3Bを参照しながら説明した第1の実施形態のステップS37’乃至S8’に対応する。したがって、繰返しを避けるために、上記の実施形態を参照する。
【0103】
第2の実施形態は、特に、ステップS2*において、どんな場合でも2つ以上の理想的な制御信号の成分が対抗音制御器10によって算出される点で、第1の実施形態と異なる。さらに、方法の焦点を優勢な理想的な制御信号に置き、少なくとも1つの他の理想的な制御信号の振幅をゼロに設定することも、第2の実施形態では省略される。この次に、第2の実施形態では、少なくとも1つのスピーカ12に過負荷をかけることを回避するために必要であれば、すべての理想的な制御信号の成分が重み付けされる。
【0104】
3.図5に係る第3の実施形態の説明
第3の実施形態のステップS1〜、S2〜、S3〜、およびS4〜乃至S8〜は、原則的に、上記に図4を参照しながら説明した第2の実施形態のステップS1*、S2*、S3*、およびS4*乃至S8*に対応する。したがって、繰返しを避けるために、上記実施形態を参照する。
【0105】
第3の実施形態は、特に、ステップS25〜において、リアルタイムで第1の理想的な制御信号の成分と第2の(および、あればさらなる)理想的な制御信号の成分との間の現在の位相のずれを判断する点で、第2の実施形態と異なる。この位相のずれは、ステップS37〜において、現在の全体振幅を求めるための第1および第2の全体振幅の加算で考慮される。実際上は、これは、第1および第2の全体振幅がベクトルと考えられるために行われ、位相のずれを考慮に入れるために、ベクトルの加法が実施される。あるいは、第1および第2の全体振幅を複素数と考えることもでき、加算は複素数の範囲で位相のずれを考慮に入れて実施される。
【0106】
第3の実施形態では理想的な制御信号間の現在の位相のずれが考慮されるため、ステップS4〜以降で現在の全体振幅(の量)が参照振幅と比較され、現在の補正係数が算出される。現在の全体振幅と現在の補正係数とが常時経時変化することは明らかである。
【0107】
この次に、第3の実施形態では、少なくとも1つのスピーカ12に過負荷をかけることを回避するために必要であれば、すべての理想的な制御信号の成分がリアルタイムで重み付けされる。
【0108】
図6に、図1および図2に示した対抗音システムを内蔵する、燃焼機関によって動作する自動車を示す。図1および図2の説明を参照する。
【0109】
明瞭化のために、本発明の理解を促進する要素、部品および機能のみを示している。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの要素に限定されるものではなく、それらの用途またはそれらの機能の範囲に必要とされる限りにおいて、さらなる要素、部品および機能を含む。
【0110】
上記においては、本発明を最大で2つの理想的な制御信号を用いて説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明は任意の数の理想的な制御信号に拡張可能である。
【図1】

【図2】

【図3A】

【図3B】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関によって動作する車両の排気系のための、計測された音を用いて排気系内に空気伝搬音を生成するための対抗音システムを、燃焼機関によって生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を前記音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法であって、
(S1)前記排気系の内部で音を計測するステップと、
(S2)前記計測された音を用いて第1の理想的な制御信号の成分を算出するステップであって、前記成分は、互いに90度位相がずれた第1の振幅を有する2つの第1の正弦波振動を含むステップと、
(S3)前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出するステップと、
(S4)前記第1の全体振幅を所定の参照振幅と比較することにより前記第1の全体振幅が前記参照振幅よりも大きいかどうかを判断するステップと、
(S5)前記第1の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記参照振幅と前記第1の全体振幅とから補正係数を算出するステップと、
(S6)前記第1の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記第1の振幅を前記補正係数で重み付けすることにより重み付きの第1の振幅を得るステップと、
(S7)前記第1の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記重み付きの第1の振幅と、対応する互いに90度位相がずれた第1の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力するステップ、または、
(S8)前記第1の全体振幅が前記参照振幅以下である場合、前記第1の理想的な制御信号の前記第1の振幅と、対応する90度位相がずれた第1の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として前記少なくとも1つのスピーカへ出力するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出するステップ(S3)が、前記第1の振幅の二乗の和から乗根をとることにより前記第1の全体振幅を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照振幅と第1の全体振幅とから補正係数を算出するステップ(S5)が、前記参照振幅と前記第1の全体振幅との商を算出することにより前記補正係数を得ることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の理想的な制御信号の成分を算出するステップ(S2)が、互いに90度位相がずれた第2の振幅を含む第2の正弦波振動を含む少なくとも1つの第2の理想的な制御信号を算出することを含み、互いに90度位相がずれた前記第1の理想的な制御信号の2つの第1の正弦波振動の周波数は、互いに90度位相がずれた前記第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なり、
前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出するステップ(S3)が、前記第2の振幅から第2の全体振幅を算出することを含み、
前記第1の全体振幅を所定の参照振幅と比較するステップ(S4)の前に、
(S32)前記第1および第2の全体振幅を互いに比較するステップと、
(S35)前記第1の全体振幅が前記第2の全体振幅の大きさの1.5倍、好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍よりも大きい場合は、前記少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の第2の正弦波振動の振幅をゼロに設定し、前記第2の全体振幅が前記第1の全体振幅の大きさの1.5倍、好ましくは2倍、さらに好ましくは5倍よりも大きい場合は、前記第1の理想的な制御信号の第1の正弦波振動の振幅をゼロに設定するステップとをさらに含む、請求項1、2、または3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出し、第2の振幅から第2の全体振幅を算出するステップ(S3)が、前記第1および第2の振幅のそれぞれの二乗の和から乗根をとることにより前記第1および第2の全体振幅を得ることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムを、燃焼機関によって生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を前記音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法であって、
(S1*)排気系の内部で音を計測するステップと、
(S2*)前記計測された音を用いて、前記排気系内に対抗空気伝搬音を生成するための第1および少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分を算出するステップであって、前記成分がそれぞれ、互いに90度位相がずれた第1および第2の振幅を含む2つの第1および第2の正弦波振動を含み、90度位相がずれた前記第1の理想的な制御信号の2つの第1の正弦波振動の周波数が、90度位相がずれた前記第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なるステップと、
(S3*)前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出し、前記第2の振幅から第2の全体振幅を算出するステップと、
(S35*)前記第1および第2の全体振幅の絶対値を加算し、絶対全体振幅を求めるステップと、
(S4*)前記絶対全体振幅を所定の参照振幅と比較することにより前記絶対全体振幅が前記参照振幅よりも大きいかどうかを判断するステップと、
(S5*)前記絶対全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記参照振幅と前記絶対全体振幅とから絶対補正係数を算出するステップと、
(S6*)前記絶対全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記第1および第2の振幅を前記絶対補正係数で重み付けすることにより重み付きの第1および第2の振幅を得るステップと、
(S7*)前記絶対全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記重み付きの第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた前記第1および第2の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力するステップ、または、
(S8*)前記絶対全体振幅が前記参照振幅以下である場合、前記第1および第2の理想的な制御信号の第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた前記第1および第2の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として前記少なくとも1つのスピーカへ出力するステップと
を含む方法。
【請求項7】
前記参照振幅と絶対全体振幅とから絶対補正係数を算出するステップ(S5*)が、前記参照振幅と前記絶対全体振幅との商を求めることにより前記絶対補正係数を得ることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムを、燃焼機関によって生成されて排気系内を伝達される空気伝搬音を前記音が計測される排気系内の位置の領域において少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために制御するための方法であって、
(S1〜)排気系の内部で音を計測するステップと、
(S2〜)前記計測された音を用いて、前記排気系内に対抗空気伝搬音を生成するための第1および少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分を算出するステップであって、前記成分がそれぞれ、互いに90度位相がずれた第1および第2の振幅を含む2つの第1および第2の正弦波振動を含み、90度位相がずれた前記第1の理想的な制御信号の2つの第1の正弦波振動の周波数が、90度位相がずれた前記第2の理想的な制御信号の2つの第2の正弦波振動の周波数と異なるステップと、
(S25〜)前記第1の理想的な制御信号の成分と前記少なくとも1つの第2の理想的な制御信号の成分との間の現在の位相のずれを判断するステップと、
(S3〜)前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出し、前記第2の振幅から少なくとも1つのさらなる全体振幅を算出するステップと、
(S35〜)ベクトルの加法によって、前記位相のずれを考慮して、前記第1の全体振幅の絶対値と前記少なくとも1つのさらなる全体振幅の絶対値とを加算し、現在の全体振幅を求めるステップと、
(S4〜)前記現在の全体振幅を所定の参照振幅と比較することにより前記現在の全体振幅が前記参照振幅よりも大きいかどうかを判断するステップと、
(S5〜)前記現在の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記参照振幅と前記現在の全体振幅とから現在の補正係数を算出するステップと、
(S6〜)前記現在の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記第1および第2の振幅を前記現在の補正係数で重み付けすることにより重み付きの第1および第2の振幅を得るステップと、
(S7〜)前記現在の全体振幅が前記参照振幅よりも大きい場合、前記重み付きの第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた前記第1および第2の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として少なくとも1つのスピーカへ出力するステップ、または、
(S8〜)前記現在の全体振幅が前記参照振幅以下である場合、前記第1および第2の理想的な制御信号の第1および第2の振幅と、対応する90度位相がずれた前記第1および第2の正弦波振動との積の和を求め、前記和を制御信号として前記少なくとも1つのスピーカへ出力するステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記参照振幅と現在の全体振幅とから現在の補正係数を算出するステップ(S5〜)が、前記参照振幅と前記現在の全体振幅との商を求めることにより前記現在の補正係数を得ることを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の振幅から第1の全体振幅を算出し、第2の振幅から第2の全体振幅を算出するステップ(S3*;S3〜)が、前記第1の振幅の二乗の和の乗根をとることにより前記第1の全体振幅を得、前記第2の振幅の二乗の和の乗根をとることにより前記第2の全体振幅を得ることを含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記参照振幅が、前記少なくとも1つのスピーカの最大電気負荷容量に適合している、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
燃焼機関によって動作する車両の排気系のための対抗音システムであって、
対抗音制御器(10)と、
制御信号を受信するために前記対抗音制御器(10)と接続された少なくとも1つのスピーカ(12)であって、前記対抗音制御器(10)から受信した制御信号の関数としての対抗音を前記排気系(4)と流体接続可能な音生成器(3)において生成するように設計されたスピーカ(12)と、
前記対抗音制御器(10)と接続され、排気ガスの流れに関して前記音生成器(3)と前記排気系(4)との流体接続の領域内に位置する前記排気系(4)の位置に配置可能なエラーマイクロホン(5)であって、前記排気系(4)の内部で音を計測し、対応する計測信号を前記対抗音制御器(10)へ出力するように設計されたエラーマイクロホン(5)とを含み、
前記対抗音制御器(10)は、前記制御信号を前記少なくとも1つのスピーカ(12)へ出力することにより、前記エラーマイクロホン(5)から得られた信号を少なくとも部分的に、好ましくは完全に、打ち消すために、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するように設計されている対抗音システム。
【請求項13】
燃焼機関と、
前記燃焼機関と流体接続された排気系(4)と、
請求項12に記載の対抗音システムとを含む自動車であって、
前記音生成器(3)および前記エラーマイクロホン(5)が前記排気系(4)に接続されている自動車。

【公開番号】特開2013−15839(P2013−15839A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−148598(P2012−148598)
【出願日】平成24年7月2日(2012.7.2)
【出願人】(505261612)ヨット・エーバーシュペッヒャー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (53)
【Fターム(参考)】