説明

排気脱硫装置

【課題】洗浄水や硫酸を活性炭層から速やかに排出できる排気脱硫装置を提供する。
【解決手段】二酸化硫黄と酸素と水とを反応させて硫酸を生成する活性炭層20と、活性炭層20に洗浄水を供給する洗浄水供給手段41〜46と、硫酸回収管60とを備え、硫酸回収管60は、活性炭層20内に設けられ、活性炭層20に含まれる洗浄水や硫酸を回収し、排出するものである。活性炭層20から洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。活性炭層20から短時間で洗浄水や硫酸を洗い出すことができ排気ガス処理能力が高い。活性炭層20を通る排気ガスの流量を保つことができ、排気ガス処理能力の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気脱硫装置に関する。さらに詳しくは、排気ガス中の二酸化硫黄を回収する排気脱硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化硫黄ガス(SO2)の大気中への放出は法により厳しく規制されているため、二酸化硫黄の生成を伴う工程では二酸化硫黄ガスの無害化処理が必要となる。このような生産工程には、排気ガス中の二酸化硫黄を硫酸(H2SO4)として回収する等の種々の排気脱硫装置が設置される。
【0003】
このような排気脱硫装置の一例が非特許文献1に記載されている。
図6に示すように、非特許文献1に記載の排気脱硫装置は、水平に設置された円筒形の反応槽110と、その反応槽110内に設けられた活性炭層120とを有している。反応槽110の内部は活性炭層120によって上下に分けられており、反応槽110には、反応槽110の外部と反応槽110の下部111とを連通する導入管131と、反応槽110の外部と反応槽110の上部112とを連通する排出管132とが設けられている。
そのため、二酸化硫黄を含有する排気ガスは導入管131を通り反応槽110の下部111に供給され、活性炭層120内を上昇する。活性炭層120に排気ガスが通されると、活性炭に酸素と二酸化硫黄が吸着され、二酸化硫黄と酸素とが反応し二酸化硫黄が三酸化硫黄に転化する。そして、三酸化硫黄が水に吸収され硫酸が生成される。二酸化硫黄が除去されたガスは反応槽110の上部112から排出管132を通り排出されるようになっている。
【0004】
活性炭層120は、隔壁で6室121〜126に区切られている。反応槽110の上部112には、各室121〜126内の活性炭に洗浄水を噴射するスプレー141〜146が取り付けられている。このスプレー141〜146は、個別に洗浄水の噴射・停止を制御できるようになっており、1つのスプレー(図6におけるスプレー141)が洗浄水を噴射しているときには、他のスプレー(図6におけるスプレー142〜146)からは洗浄水が噴射しないようになっている。そして、所定時間経過ごとに、洗浄水を噴射するスプレーが循環し、各室121〜126内の活性炭に順番に洗浄水を供給し、かつ、活性炭に付着している硫酸が供給された洗浄水によって洗い流され、回収硫酸として回収されるようになっている。また、活性炭に付着している硫酸を洗い流すことにより、二酸化硫黄の三酸化硫黄への転化能力を保つようになっている。したがって、二酸化硫黄を含有する排気ガスは5室(図6における室122〜126)内の活性炭に通され、他の一つの室(図6における室121)内の活性炭には洗浄水が供給されるようになっている。
【0005】
スプレー141〜146から噴射される洗浄水が活性炭に供給されると、活性炭層120で生成された硫酸は供給された洗浄水と共に活性炭層120の内部を下降し、活性炭層120の底面から反応槽110の下部111に落下していく。その後、反応槽110の下部111に蓄積された硫酸を含んだ洗浄水は、反応槽110の下部111に設けられたドレン133を通じて回収硫酸として回収される。
【0006】
以上の様な構成であるから、上記排気脱硫装置は排気ガス中の二酸化硫黄を除去することができ、かつ硫酸を回収し再利用することができる。さらに、活性炭を洗浄水で洗浄することにより、活性炭層120の二酸化硫黄から三酸化硫黄への転化能力を保つことができ、活性炭層120を再生する工程を別に設置する必要がない。
【0007】
しかるに、排気ガスは活性炭層120に充填された活性炭の隙間を縫うように通されるが、その活性炭は洗浄時の残留水を伴って存在しており、この残留水は通過する排気ガスの押し上げ力により下方移動が妨げられ、この残留水が活性炭の隙間を塞ぎ排気ガスの通過抵抗が生じる。
また、特に活性炭層120の底部では、残留水が溜まりやすく、その影響により排気ガスが通過しにくい状態となり、排気ガスの通過抵抗が生じる。
これらの原因により、圧力損失が起こり、活性炭層120を通る排気ガスの流量が低下し、排気ガス処理能力が低下するという問題がある。ひいては、二酸化硫黄の生成を伴う装置の操業が制約され、運転の安定性を損なうという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】LURGI、「SULFACID-ProcessDesulfurization of SO2-laden Waste Gases with Direst Production ofDilute Sulfuric Acid」、p.5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、洗浄水や硫酸を活性炭層から速やかに排出できる排気脱硫装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の排気脱硫装置は、二酸化硫黄を含有する排気ガスが通され、該二酸化硫黄と酸素と水とを反応させて硫酸を生成する活性炭層と、該活性炭層に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、側面に多数の孔が形成された中空管である硫酸回収管とを備え、前記硫酸回収管は、前記活性炭層内に設けられ、該活性炭層に含まれる洗浄水や硫酸を回収し、該洗浄水や該活性炭層から該硫酸を排出するものであることを特徴とする。
第2発明の排気脱硫装置は、第1発明において、前記硫酸回収管は、前記活性炭層の底に設けられていることを特徴とする。
第3発明の排気脱硫装置は、第2発明において、前記硫酸回収管は、前記活性炭層の底面に沿って設けられ、該硫酸回収管の側面の上側部分は前記活性炭層と接し、該硫酸回収管の側面の下側部分は前記活性炭層と接しないように設けられていることを特徴とする。
第4発明の排気脱硫装置は、第1、第2または第3発明において、前記硫酸回収管は、前記活性炭層内に複数本設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、活性炭層に硫酸回収管が設けられているので、活性炭層から洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。そのため、活性炭層から短時間で硫酸を洗い出すことができ排気ガス処理能力が高い。また、活性炭層から洗浄水や硫酸を速やかに排出できるので、活性炭層を通る排気ガスの流量を保つことができ、排気ガス処理能力の低下を防止することができる。
第2発明によれば、洗浄水や硫酸が溜まりやすい活性炭層の底に硫酸回収管が設けられているので、活性炭層から洗浄水や硫酸を効率よく排出できる。
第3発明によれば、硫酸回収管の側面の下側部分は活性炭層と接していないので、回収した洗浄水や硫酸を硫酸回収管の側面の下側部分からも排出することができる。そのため、活性炭層から洗浄水や硫酸をより速やかに排出できる。
第4発明によれば、硫酸回収管は活性炭層内に複数本設けられているから、活性炭層の広範囲において洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気脱硫装置の正面視断面図である。
【図2】図1におけるII-II線矢視断面図である。
【図3】図1におけるX部分拡大図である。
【図4】他の実施形態に係る硫酸回収管の説明図である。
【図5】さらに他の実施形態に係る硫酸回収管の配置の説明図である。
【図6】従来の排気脱硫装置の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る排気脱硫装置Aは、水平に設置された円筒形の反応槽10と、その反応槽10内に設けられた活性炭層20とを有している。反応槽10は、硫酸や水に腐食されない素材、例えばFRPで形成されている。
【0014】
反応槽10の内部には格子板50が水平に設けられている。この格子板50は、鋼材を格子状に組んだ板状の部材であり、FRP、塩化ビニル、ポリプロピレン等の樹脂で形成されている。この格子板50の上に粒径数mmの粒状の活性炭が充填されることにより活性炭層20が形成されている。
活性炭層20は反応槽10の上下中央に設けられており、反応槽10の内部はその活性炭層20によって上下に分けられている。以下、活性炭層20によって分けられた反応槽10の下側を反応槽下部11、上側を反応槽上部12と称する。
【0015】
反応槽10には、反応槽10の外部と反応槽下部11とを連通する導入管31と、反応槽10の外部と反応槽上部12とを連通する排出管32とが設けられている。
より詳細には、導入管31は反応槽10の上面から反応槽上部12、活性炭層20および格子板50を通り、その一端が反応槽下部11に位置するように設けられている。導入管31の他端は、二酸化硫黄の生成を伴う装置に接続されている。そのため、二酸化硫黄を含有する排気ガスは導入管31を通り反応槽下部11に供給され、活性炭層20内を上昇する。活性炭層20に排気ガスが通されると、活性炭に酸素と二酸化硫黄が吸着され、二酸化硫黄と酸素とが反応し二酸化硫黄が三酸化硫黄に転化する。そして、三酸化硫黄が水に吸収され硫酸が生成される。
また、排出管32は反応槽10の上面を通り、その一端が反応槽上部12に位置するように設けられている。そのため、活性炭層20で二酸化硫黄が除去されたガスが反応槽上部12から排出管32を通り排出されるようになっている。
【0016】
なお、導入管31は反応槽10の外部と反応槽下部11とを連通していればよく、その配置は他の装置との位置関係など、操業上の条件を考慮して最適な配置とすることができる。例えば、反応槽10の側壁から直接反応槽下部11に連通するように導入管31を設けてもよい。同様に、排出管32は反応槽10の外部と反応槽上部12とを連通していればよく、その配置は限定されない。
【0017】
活性炭層20は、隔壁51で6室21〜26に区切られている。反応槽上部12には、各室21〜26内の活性炭に洗浄水を噴射するスプレー41〜46が取り付けられている。このスプレー41〜46が、特許請求の範囲に記載の洗浄水供給手段に相当する。
スプレー41〜46は、個別に洗浄水の噴射・停止を制御できるようになっており、1つのスプレー(図1におけるスプレー41)が洗浄水を噴射しているときには、他のスプレー(図1におけるスプレー42〜46)からは洗浄水が噴射しないようになっている。そして、所定時間経過ごとに、洗浄水を噴射するスプレーが循環し、各室21〜26内の活性炭に順番に洗浄水を供給するようになっている。
したがって、二酸化硫黄を含有する排気ガスは5室(図6における室22〜26)内の活性炭に通され、他の一つの室(図6における室21)内の活性炭には洗浄水が供給されるようになっている。
【0018】
スプレー41〜46から噴射される洗浄水が活性炭に供給されると、活性炭に付着している硫酸が洗浄水の中に回収されて活性炭層20の内部を下降し、活性炭層20の底面から反応槽下部11に落下していく。この、活性炭層20から洗浄水や硫酸を排出する部分に本発明の特徴があるので、後に詳説する。
その後、反応槽下部11に蓄積された回収硫酸は、反応槽下部11に設けられたドレン33を通じて回収される。
【0019】
なお、活性炭に洗浄水を供給することにより、活性炭の表面に生成された硫酸を洗い流し、活性炭層20の二酸化硫黄から三酸化硫黄への転化能力を保つことができる。
【0020】
図3に示すように、格子板50の上には網61が敷かれており、その網61の上に複数本の硫酸回収管60が設けられている。硫酸回収管60は、その長尺方向が反応槽10の長尺方向と直行するように設けられ、反応槽10の長尺方向に複数本並べられている。また、網62が波状となって設けられており、隣り合う硫酸回収管60の上下に交互に配置されている。なお、図1においては省略しているが、硫酸回収管60は、活性炭層20の底面に沿って敷き詰められている。これら、網62および硫酸回収管60の上に活性炭が充填されている。
【0021】
網61,62の目開きは、活性炭の粒径よりも小さくなっており、活性炭が格子板50から下方に落下しないようになっている。また、網62が波状に配置されていることにより、硫酸回収管60の側面の上側部分は活性炭と接し、硫酸回収管60の側面の下側部分は活性炭と接しておらず、反応槽下部11に開放されている。
【0022】
硫酸回収管60は、側面に多数の孔が形成された中空管である。そのため、その孔を通して活性炭層20に含まれる洗浄水や硫酸を硫酸回収管60の中に回収したり、回収した洗浄水や硫酸を排出したりすることができる。より詳細には、活性炭と接している硫酸回収管60の側面の上側部分から洗浄水や硫酸を硫酸回収管60の中に回収し、反応槽下部11に開放されている硫酸回収管60の側面の下側部分から洗浄水や硫酸を反応槽下部11に排出できる。
なお、硫酸回収管60の側面に形成された孔の孔径は、活性炭の粒径よりも小さくなっており、活性炭が硫酸回収管60の中に入らないようになっている。また、硫酸回収管60はポリプロピレン等の樹脂で形成されている。
【0023】
以上のごとく、活性炭層20に硫酸回収管60が設けられているので、活性炭層20から洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。そのため、活性炭層20に洗浄水や硫酸が残留せず、活性炭層20の内部を下降する洗浄水や硫酸の抵抗となるものがなく、活性炭層20から短時間で洗浄水や硫酸を洗い出すことができ排気ガス処理能力が高い。特に、洗浄水や硫酸が溜まりやすい活性炭層20の底部に硫酸回収管60が設けられているので、活性炭層20から洗浄水や硫酸を効率よく排出できる。また、硫酸回収管60の側面の下側部分から洗浄水や硫酸を排出することができるため、活性炭層20から洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。
【0024】
さらに、活性炭層20から洗浄水や硫酸を速やかに排出できるので、活性炭層20に排気ガスが通る隙間が確保でき、排気ガスの通過抵抗が低減できる。そのため、圧力損失を低減でき、活性炭層20を通る排気ガスの流量を保つことができ、排気ガス処理能力の低下を防止することができる。
【0025】
(他の実施形態)
上記実施形態では、硫酸回収管60の側面の上側部分を活性炭と接し、硫酸回収管60の側面の下側部分を反応槽下部11に開放するために、網62を波状に配置しているが、これに代えて、他の方法を用いてもよい。例えば、図4に示すように、隣り合う硫酸回収管60同士を小片63で連結し、活性炭が硫酸回収管60の下側部分に落ちてこないようにしてもよい。
【0026】
また、上記実施形態では、硫酸回収管60を活性炭層20の底面に沿って設けたが、活性炭層20の内部に設けてもよい。
例えば、図5(a)に示すように、活性炭層20内に、硫酸回収管60を垂直、水平方向に所定間隔をあけて複数本設けてもよい。このようすれば、活性炭層20の広範囲において洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。
また、図5(b)に示すように、活性炭層20内に、硫酸回収管60を傾斜させて設けてもよい。この場合、傾斜方向の異なる複数の硫酸回収管60を互い違いに設けてもよい。硫酸回収管60を傾斜させれば、硫酸回収管60に回収された洗浄水や硫酸が下方に流れやすくなり、洗浄水や硫酸を速やかに排出できる。
図5(a)、(b)に示した実施形態以外にも、回収した洗浄水や硫酸が下方に流れやすく、かつ、排気ガスが硫酸回収管60を伝って反応槽上部12に抜けない配置であれば、様々な配置で硫酸回収管60を設けることができる。
【0027】
また、排気脱硫装置Aは、活性炭層20が6室に区切られたものに限らず、より多い室、またはより少ない室に区切られたものでもよい。また、活性炭層20が区切られておらず、洗浄水の供給と排気ガスの導入とを、時間的に交互に行うものでもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 反応槽
20 活性炭層
31 導入管
32 排出管
41〜46 スプレー
50 格子板
60 硫酸回収管
61、62 網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化硫黄を含有する排気ガスが通され、該二酸化硫黄と酸素と水とを反応させて硫酸を生成する活性炭層と、
該活性炭層に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、
側面に多数の孔が形成された中空管である硫酸回収管とを備え、
前記硫酸回収管は、前記活性炭層内に設けられ、該活性炭層に含まれる洗浄水や硫酸を回収し、該活性炭層から該洗浄水や該硫酸を排出するものである
ことを特徴とする排気脱硫装置。
【請求項2】
前記硫酸回収管は、前記活性炭層の底に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の排気脱硫装置。
【請求項3】
前記硫酸回収管は、前記活性炭層の底面に沿って設けられ、該硫酸回収管の側面の上側部分は前記活性炭層と接し、該硫酸回収管の側面の下側部分は前記活性炭層と接しないように設けられている
ことを特徴とする請求項2記載の排気脱硫装置。
【請求項4】
前記硫酸回収管は、前記活性炭層内に複数本設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の排気脱硫装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206101(P2012−206101A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76055(P2011−76055)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】