説明

排水処理方法

【課題】 油含有排水の処理性能が優れている排水処理方法の提供。
【解決手段】 凝集及び膜分離槽を有する排水処理装置で油含有排水を処理する排水処理方法であり、前記凝集及び膜分離槽が、凝集剤添加装置と撹拌機を備え、槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものであり、前記油含有排水が、COD値が30〜15,000mg/Lで、n−ヘキサン抽出物量が5〜5,000mg/Lのものである、排水処理方法。前記凝集及び膜分離槽が、内部が仕切壁により凝集槽と膜分離槽とに分けられ、前記凝集槽と前記膜分離槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、前記凝集槽に凝集剤添加装置と攪拌機が備えられ、前記膜分離槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油含有排水の処理に適用する排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種施設から、油含有排水が発生するが、油の含有濃度が高い排水の処理方法としては、十分なものは知られていない。
【特許文献1】特開2006−167604号公報
【特許文献2】特開2004−337787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高濃度の油を含む排水の処理方法として優れた排水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明は、課題の解決手段として、
凝集及び膜分離槽を有する排水処理装置で油含有排水を処理する排水処理方法であり、
前記凝集及び膜分離槽が、凝集剤添加装置と撹拌機を備え、槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものであり、
前記油含有排水が、COD値が30〜15,000mg/Lで、n−ヘキサン抽出物量が5〜5,000mg/Lのものである、排水処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の排水処理方法によれば、高濃度の油を含有する排水の処理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
<排水処理装置>
図1により、本発明の排水処理方法に適した排水処理装置について説明する。図1中の丸で囲まれたPは、ポンプを示している。
【0007】
原水槽1は、原水ライン21により供給された原水で満たされており、内部にポンプが浸漬されている。原水槽1は、原水供給ライン22で凝集及び膜分離槽2に接続されている。
【0008】
凝集及び膜分離槽2は、内部が仕切壁13により、凝集槽3と膜分離槽4とに分けられている。凝集槽3と膜分離槽4の容積は、同程度であるか、膜分離槽4の方が大きいことが好ましい。凝集及び膜分離槽2の底面と凝集槽3側の側面の境界は、図示するように傾斜面2aとなっている。
【0009】
仕切壁13は、凝集及び膜分離槽2の対向する壁面に両側面が固定されており、下面13aは凝集及び膜分離槽2の底面から離れており、上面13bは満水状態のときに水面よりも下に位置するように設定されている。このため、凝集槽3と膜分離槽4は、仕切壁13の上面(上端)13b側と下面(下端)13a側にて液の流通が可能なように連通されている。
【0010】
凝集槽3は、所定量の凝集剤を添加するための凝集剤添加装置11、槽内を攪拌するための攪拌機12が備えられており、必要に応じて図示していないpH調整装置も設けることができる。
【0011】
膜分離槽4には、膜分離モジュール15が吊り下げられた状態で浸漬されている。膜分離モジュール15としては、例えば、公知の中空糸膜モジュール(外圧型又は内圧型であるが、好ましくは外圧型)を用いることができる。膜分離モジュール15の直下の槽底面には、必要に応じて、膜面を外側から洗浄するための散気装置を設置することができる。凝集及び膜分離槽2は、ポンプを備えた透過水ライン23で透過水槽5に接続されている。
【0012】
凝集及び膜分離槽2と透過水槽5の間又は透過水槽5の後段には、膜分離処理した処理液を活性炭で処理するための活性炭処理部(公知の活性炭充填塔)を設置することができる。
【0013】
透過水槽5と凝集及び膜分離槽2内の膜分離モジュール15の透過水出口は、ポンプを備えた逆圧洗浄ライン24で接続されている。逆圧洗浄ライン24には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の薬液添加装置7が設置されている。
【0014】
凝集及び膜分離槽2は、傾斜面2aにおいて汚泥引抜ライン25で汚泥貯留槽6に接続されている。汚泥引抜ライン25により、凝集及び膜分離槽2の底面付近に溜まった汚泥を水とともに汚泥含有水として引き抜くことができる。汚泥貯留槽6は、返送ライン26により、原水槽1に接続されている。
【0015】
汚泥貯留槽6内には、汚泥含有水を脱水して、汚泥と水を分離するための図示していない濾過手段が設置されている。この濾過手段としては、例えば、JIS規格で10〜50メッシュ程度の不織布製の濾布が、ステンレス製等の箱枠や籠等の支持体に固定されたものを用いることができる。
【0016】
不織布の材質は特に制限されるものはなく、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等の公知のものを用いることができる。
【0017】
<上記排水処理装置を用いた排水処理方法>
次に、図1により、本発明の浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法について説明する。
【0018】
本発明の被処理液となる原水は、COD値が30〜15,000mg/Lで、n−ヘキサン抽出物量が5〜5,000mg/Lの油含有排水である。
【0019】
このような油含有排水としては、ダイキャスト金型離型剤含有排水、圧延油含有排水又は切削油含有排水を挙げることができ、施設の状況により、前記排水が混合されたものも含まれる。
【0020】
ダイキャスト金型離型剤含有排水は、ダイキャスト製品の製造時に生じる金型の離型剤を含む排水である。一般的には、COD値が約10〜15,000mg/L、n−ヘキサン抽出物量が約5〜5,000mg/Lのものである。
【0021】
圧延油含有排水は、金属圧延工場で生じる、長期使用により劣化した圧延油を含む排水である。一般的には、COD値が約50〜15,000mg/L、n−ヘキサン抽出物量が約10〜5,000mg/Lのものである。
【0022】
切削油含有排水は、自動車部品の加工工場等で発生する、潤滑油、冷却用クーラント油を含む排水である。一般的には、COD値が約100〜15,000mg/L、n−ヘキサン抽出物量が約10〜3,000mg/Lのものである。
【0023】
原水(油含有排水)が満たされた原水槽1内のポンプを作動させ、原水供給ライン22から凝集槽3に原水を供給し、凝集槽3と膜分離槽4内に油含有排水を満たす。
【0024】
凝集槽3では、攪拌機12により槽内を攪拌しながら、凝集剤添加装置11により、所要量の凝集剤を添加する。このとき、必要に応じてpH調整装置により、pH調整剤を添加してpHを9〜10に調整することができる。
【0025】
凝集剤は、例えば、吸着剤、凝結剤、高分子凝集剤等を用いることができる。吸着剤としては、珪藻土、モンモリロナイト、活性白土等の油吸着剤、凝結剤としては、硫酸アルミニウム等の無機化合物、高分子凝集剤としては、アニオン系とカチオン系の高分子凝集剤を挙げることができる。
【0026】
膜分離槽4では、膜分離モジュール15で濾過する。膜分離モジュール15による濾過時には、膜面を外側から洗浄するため、散気装置で散気することができる。また、適当間隔をおいて、逆圧洗浄ライン24により、薬液を含む洗浄液で逆圧洗浄することができる。
【0027】
膜分離槽4内の濾過時において、凝集槽3内が攪拌機12で攪拌されているため、凝集槽3と膜分離槽4内の被処理水は、仕切壁13の下面13aの下を通り、上面13bを越えて互いに流通する。このため、膜分離槽4内の被処理水は、フロックが偏在することなく均一状態になり、分離膜モジュール15の膜面が閉塞され難くなり、分離膜モジュール15による濾過性能が安定する。
【0028】
膜分離槽4で濾過した透過水は、透過水ライン23により、透過水タンク5に送られ、貯水される。透過水タンク5内の透過水は、必要に応じて活性炭処理した後、適宜河川等に放流するほか、膜分離モジュール15の逆圧洗浄水としても用いられる。
【0029】
凝集及び膜分離槽2の底面付近に溜まったフロック(汚泥)は、汚泥引抜ライン25から引き抜き、汚泥貯留槽6に送る。汚泥貯留槽6では、汚泥を脱水して、水は原水槽1に返送し、汚泥は廃棄する。
【実施例】
【0030】
実施例1
<排水処理装置>
図1に示す排水処理装置(但し、活性炭処理部は図示していない)を用いた。
【0031】
槽2は、容積0.73mのもので、傾斜面2aを有している。幅方向のほぼ中央には、高さ0.5mの仕切壁13が、上に0.3m、下に0.2mの間隔をおいて、槽の側壁に固定されている。
【0032】
凝集槽3は、容積0.36m、高さ1.5m、幅0.3m、奥行き0.8mであり、濾過槽4は、容積0.37m、高さ1.2m、幅0.39m、奥行き0.8mである。
【0033】
<排水処理方法>
ダイキャスト製造工程から排出されたダイキャスト金型離型剤含有排水を処理した。この排水は、COD420mg/L、nヘキサン抽出物量580mg/Lであった。
【0034】
前記排水を、間欠的に600L/hの速度で処理槽2に送りながら、濃度が500mg/Lとなるように、凝集剤として商品名メムフロックU002(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製)を仕込み、攪拌機12で攪拌して凝集反応処理を行った。このとき攪拌により、被処理液は仕切壁13の上下を通じて、凝集槽3と膜分離槽4間を流通した。
【0035】
膜分離槽4では、膜分離モジュール15(ポリエーテルスルホン中空糸膜を充填したケーシングフリーの浸漬型膜エレメント2.2mを8ユニット浸漬配置させたもの)により、吸引濾過を行い、185L/hの速さで連続的に透過水を透過水槽5に送った。また、740L/hの速さで20分に45秒間の割合で逆圧洗浄をした。
【0036】
その後、透過水槽5内の透過水を活性炭処理(日本エンバイロケミカルズ製;球状XS−7100H)処理したところ、処理水の水質は、COD4mg/L、nヘキサン抽出物量2mg/L未満であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の排水処理方法に用いる排水処理装置の概念図。
【符号の説明】
【0038】
1 原水槽
2 凝集及び膜分離槽
3 凝集槽
4 膜分離槽
5 透過水槽
6 汚泥貯留槽
11 凝集剤添加装置
12 攪拌機
13 仕切壁
15 膜分離モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集及び膜分離槽を有する排水処理装置で油含有排水を処理する排水処理方法であり、
前記凝集及び膜分離槽が、凝集剤添加装置と撹拌機を備え、槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものであり、
前記油含有排水が、COD値が30〜15,000mg/Lで、n−ヘキサン抽出物量が5〜5,000mg/Lのものである、排水処理方法。
【請求項2】
前記凝集及び膜分離槽が、内部が仕切壁により凝集槽と膜分離槽とに分けられ、前記凝集槽と前記膜分離槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、前記凝集槽に凝集剤添加装置と攪拌機が備えられており、前記膜分離槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものである、請求項1記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記油含有排水が、ダイキャスト金型離型剤含有排水、圧延油含有排水又は切削油含有排水である、請求項1又は2記載の排水処理方法。




【図1】
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【公開番号】特開2009−28616(P2009−28616A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194077(P2007−194077)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】