説明

排水処理方法

【課題】浮遊物(SS)及び油を含む排水から、これら浮遊物(SS)及び油を効率よく除去する方法を提供する。
【解決手段】実施形態の排水処理方法は、磁性体の1次凝集体と分散媒とを混合して懸濁液を調整するステップと、前記懸濁液をフィルターに通水し、前記フィルター上に前記1次凝集体を残留させて、前記1次凝集体が凝集してなる2次凝集体を形成するステップとを具える。さらに、前記2次凝集体に対して排水を通水し、前記排水中の浮遊物及び油分を除去するステップと、前記2次凝集体を分散媒中に分散させ、前記2次凝集体を前記1次凝集体に分解するとともに、前記1次凝集体を洗浄するステップと、前記1次凝集体を磁気分離を用いて回収するステップとを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、工業排水などの廃液の再利用が非常に重要である。これらを達成するためには廃液の浄化、すなわち廃液中から他の物質を分離することが必要である。
【0003】
液体からほかの物質を分離する方法としては、各種の方法が知られており、たとえば膜分離、遠心分離、活性炭吸着、オゾン処理、凝集、さらには所定の吸着材による浮遊物質の除去などが挙げられる。このような方法によって、水に含まれるリンや窒素などの環境に影響の大きい化学物質を除去したり、水中に分散した油類、クレイなどを除去したりすることができる。
【0004】
これらのうち、膜分離はもっとも一般的に使用されている方法のひとつであるが、水中に分散した油類を除去する場合には膜の細孔に油が詰まり易く、膜の寿命が短くなりやすいという問題がある。このため、水中の油類を除去するには膜分離は適切でない場合が多い。
【0005】
このような油分を含有する排水の処理方法としては、例えば特許文献1に示すような磁性体のろ過助剤を用いて油分などを含有する難ろ過性排液の処理方法が開示されている。また水中の油を吸着させる方法として、例えば特許文献2などに開示されている吸着ポリマーを用いて油を吸着させ、その後その吸着ポリマーを水から除去する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−327611号
【特許文献2】特開平07−102238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、浮遊物(SS)及び油を含む排水から、これら浮遊物(SS)及び油を効率よく除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の排水処理方法は、磁性体の1次凝集体と分散媒とを混合して懸濁液を調整するステップと、前記懸濁液をフィルターに通水し、前記フィルター上に前記1次凝集体を残留させて、前記1次凝集体が凝集してなる2次凝集体を形成するステップとを具える。さらに、前記2次凝集体に対して排水を通水し、前記排水中の浮遊物及び油分を除去するステップと、前記2次凝集体を分散媒中に分散させ、前記2次凝集体を前記1次凝集体に分解するとともに、前記1次凝集体を洗浄するステップと、前記1次凝集体を磁気分離を用いて回収するステップとを具える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0010】
(1次凝集体及び2次凝集体)
最初に、実施形態の排水処理方法で用いる1次凝集体及び2次凝集体について説明する。
【0011】
本実施形態における1次凝集体である磁性体の凝集体は、磁性体コア粒子がバインダーで接着して凝集しているか、磁性体コア粒子が一部溶融することにより自己接着することにより形成される。バインダーを用いる場合は、例えば溶液中に磁性体コア粒子とバインダー成分とを混合し、噴霧乾燥することによって上記1次凝集体を得ることができる。
【0012】
なお、1次凝集体は、磁性体コア粒子がバインダーで接着されて凝縮し、あるいは一部が溶融することによって接着されて凝集しているため、バインダーあるいは磁性体コア粒子間には、表面に開口した複数のポーラスが形成されている。なお、以下に説明するように、排水中の油分の吸着除去は、このポーラスを介して行われる。
【0013】
磁性体コア粒子を構成する磁性体としては、以下に説明する排水処理方法の磁気分離による1次凝集体の回収を容易にすべく、室温領域において強磁性を示す物質であることが望ましい。しかしながら、本実施形態に当ってはこれらに限定されるものではなく、強磁性物質を全般的に用いることができ、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライトなどが挙げられる。
【0014】
フェライト系化合物は、水中での安定性に優れているので、本実施形態のように、廃液から有機高分子を回収するような操作においては好適に用いることができる。特に、磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすいので好ましい。
【0015】
なお、磁性体コア粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、好ましくは1次凝集体に形成される表面に開口したポーラスの平均ポーラス径が0.01μm〜1μmになるような粒子径のものがよい。例えば、上述のようにバインダーを用いて凝集させる場合や、自己接着によって凝集させる場合においては、0.05〜10μm程度の平均粒子径とする。
【0016】
また、上述のように、1次凝集体に形成されたポーラスが、0.01μm〜1μmの平均ポーラス径を有することによって、以下に説明するように排水中の油分の吸着をより効果的かつ効率的に行うことができる。
【0017】
ここで、平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。また平均ポーラス径は、島津細孔分布測定装置 オートポア 9520 形(商品名)などにより測定することができる。
【0018】
磁性体コア粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、多面体、不定形など任意の形状とすることができる。望ましい磁性体コア粒子の粒径や形状は、製造コストなどを鑑みて適宜選択すればよく、特に球状または角が丸い多面体構造が好ましい。磁性体コア粒子が鋭角な角を持つと、例えば、バインダーを用いて1次凝集体を形成する際に、このバインダーを傷つけてしまい、目的とする1次凝集体の形状を維持しにくくなってしまうことがある。
【0019】
なお、磁性体コア粒子に対しては、必要に応じてCuメッキ、Niメッキなど、通常のメッキ処理を施すことができる。また、表面の腐食防止などの観点から表面処理することもできる。
【0020】
1次凝集体をバインダーを用いて形成する場合、前記バインダーとしては、スチレン樹脂、水添加スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキルアクリレート樹脂、フェノール樹脂及びアルキルメタアクリレート樹脂等を用いることが好ましい。これらの樹脂は親油性に優れるとともに、耐油性にも優れる。したがって、このようなバインダー(樹脂)を含む1次凝集体は、排水中の油分をより効果的及び効率的に吸着除去することができるとともに、前記排水に対して耐性を有するようになる。
【0021】
また、上記同様の理由から、前記バインダーは、カップリング剤の縮合物とすることができる。この場合、磁性体コア粒子の表面をカップリング剤で処理する。
【0022】
処理は、乾式及び湿式のいずれであってもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、すなわち、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、ドデカトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン、フェニルトリメトキシシラン、ナフタレントリメトキシシラン等の芳香族シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシメトキシシラン等のビニルシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランを挙げることができる。その他、チタネート,アルミキレート,ジルコアルミネート等のカップリング剤をも用いることができる。
【0023】
磁性体コア粒子の融解で1次凝集体を作製する方法は、例えばフェライトの原料を有機系のバインダーを用いて仮に凝集させたあと、高温に熱してフェライトを合成する際に一部融解するのを利用して得ることができる。このようなフェライトとしては、例えばCu-Zn系、Li-MG-Ca系、Mn-Mg-Sr系などが挙げられる。
【0024】
一方、本実施形態における2次凝集体は、上述した1次凝集体が以下に説明する排水処理方法の過程において、密に配列及び積層されてなるものであって、特に1次凝集体が物理的及び化学的に結合して形成されたものではない。具体的には、1次凝集体を砂あるいは石に例えた場合に、これを所定の容器に充填することによって、砂あるいは石が互いに横方向に密に配列し、縦方向に積層されたような状態をいう。
【0025】
したがって、2次凝集体は、所定の外力が作用することによってのみ凝集体を保持し得るものであって、このような外力が作用しなくとも、バインダー等で自ずから凝集してなる1次凝集体とは構成上異なるものである。
【0026】
(排水処理方法)
次に実施形態における排水処理方法について説明する。なお、実施形態における排水処理方法は2通り存在するので、以下それぞれについて説明する。
【0027】
<第1の排水処理方法>
第1の排水処理方法は、いわゆるプレコート法と呼ばれるものであり、特に以下に説明するように、排水中の浮遊物(SS)及び/又は油濃度が低い場合に有効である。
【0028】
最初に、磁性体の1次凝集体と分散媒とを混合し懸濁液を調整する。1次凝集体は上述したようにして構成することができる。分散媒は主に水を用いるが、適宜その他の分散媒を用いることができる。懸濁液中の1次凝集体濃度は以下の操作によってプレコート層、すなわち2次凝集体が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0029】
次いで、懸濁液をフィルターに通水し、懸濁液中の1次凝集体をろ別して、フィルター上に残留させ、1次凝集体が凝集してなる2次凝集体、すなわち上記プレコート層を形成する。なお、通水は加圧下で行われる。
【0030】
また、2次凝集体は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルターを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルター上に1次凝集体が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置する1次凝集体の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記2次凝集体は形成及び保持されることになる。
【0031】
なお、2次凝集体、すなわちプレコート層の厚さは処理する液の濃度で変わってくるが、概ね1〜100mm程度である。
【0032】
次いで、上述のようにして形成した2次凝集体(プレコート層)に対して排水を通水して排水中の除去対象成分である浮遊物(SS)及び油分を除去する。通水は主に加圧下で行われる。
【0033】
このとき、浮遊物(SS)は、2次凝集体(プレコート層)、具体的には2次凝集体を構成する1次凝集体の表面に吸着することによって除去される。一方、油分は以下のエマルジョンの破壊によって、2次凝集体を構成する1次凝集体のポーラス中に吸着され、除去される。詳細には、以下に説明する作用効果によって吸着除去される。
【0034】
2次凝集体に対して排水を通水させる場合、この排水は2次凝集体を構成する1次凝集体間の空隙と1次凝集体内の空隙とのどちらかを流れるが、前者の空隙は後者の空隙に比較して十分に大きいため、上記排水は、一般には圧力損失の少ない1次凝集体間の空隙を流れる。ここで、界面活性剤と油が水中に共存するエマルジョンの場合を考えると、水中にエマルジョン状態で分散する油分が上記空隙を通る時、水流によりエマルジョンが変形して、水/油界面の界面活性剤の量が足らなくなり、一時的にエマルジョンが破壊される。この時に1次凝集体内のポーラスに油分が吸着され、1次凝集体内に蓄積されることにより油分の除去が可能になる。
【0035】
なお、1次凝集体間の空隙が、0.05μm〜10μmの平均孔径を有することによって、上述したエマルジョンの変形及び破壊が促進され、これによって、1次凝集体のポーラス内への吸着が進行する。平均孔径が10μmよりも大きくなると、上述したエマルジョンの変形及び破壊の度合いが低下し、1次凝集体のポーラス内への油分の吸着量が低下する。一方、平均孔径が0.05μよりも小さくなると、通水速度が低下し、油分が孔の間に詰まりやすくなりため、メンテナンス頻度の増大等を引き起こし、実用性に欠ける。さらに、一次凝集体に形成されたポーラスが、0.01μm〜1μmの平均ポーラス径を有することによって、一次凝集体間の空隙で破壊されたエマルジョンの油分を一次凝集体内のポーラスに吸着が促進され、一次凝集体間の孔の油分がなくなり、通水速度が回復する。
【0036】
また、油分がエマルジョンを形成することなく浮遊している場合は、2次凝集体に対して排水を通水させる際に、浮遊物(SS)の場合と同様に油分の一部は、2次凝集体を構成する1次凝集体の表面に吸着されるとともに、1次凝集体間の空隙内にそのまま吸着される。
【0037】
上述のようにして排水中の浮遊物(SS)及び油分を除去した後は、2次凝集体を分散媒中に分散させ、2次凝集体を1次凝集体に分解するとともに、1次凝集体を洗浄する。この洗浄はフィルターの設置されている容器内で行っても、他の容器で行っても構わない。他の容器で行う場合は、逆洗などの手段を用いて2次凝集体を1次凝集体に分解した後、輸送する。洗浄には水を使用するが、界面活性剤や有機溶媒を用いて洗浄することも可能である。
【0038】
次いで、洗浄後の1次凝集体を磁気分離を用いて回収する。磁気分離の方法は特に問わないが、容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。
【0039】
なお、第1の排水処理方法では、フィルター上に予め2次凝集体(プレコート層)を形成しておき、その後、排水を通水するので、処理時間とともに、1次凝集体の表面に吸着する浮遊物(SS)の量が増大する。その結果、特に過剰に吸着した浮遊物(SS)が、1次凝集体間の空隙を埋設してしまうようになるので、当該空隙によるエマルジョンの変形及び破壊の度合いが低下してしまい、油分の除去効率が劣化するようになる。したがって、上述したように、第1の排水処理方法は、排水中の浮遊物(SS)及び/又は油濃度が低い場合に有効である。
【0040】
<第2の排水処理方法>
第2の排水処理方法は、いわゆるボディーフィード法と呼ばれるものであり、以下に説明するように、排水中の浮遊物(SS)濃度が高い場合に有効である。
【0041】
本方法においても、最初に磁性体の1次凝集体と分散媒とを混合し懸濁液を調整するが、この場合に使用する分散媒は、排水とする。すなわち、本方法では排水中に直接1次凝集体を投入して排水から懸濁液を調整する。懸濁液中の1次凝集体濃度は以下の操作によって2次凝集体が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0042】
次いで、懸濁液(排水)をフィルターに通水し、懸濁液(排水)中の1次凝集体をろ別して、フィルター上に残留させ、1次凝集体が凝集してなる2次凝集体を形成する。なお、通水は加圧下で行われる。
【0043】
また、2次凝集体は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルターを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルター上に1次凝集体が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置する1次凝集体の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記2次凝集体は形成及び保持されることになる。
【0044】
次いで、上述のようにして形成した2次凝集体に対して排水(懸濁液)を通水して排水(懸濁液)中の除去対象成分である浮遊物(SS)及び油分を除去する。通水は主に加圧下で行われる。
【0045】
なお、上述したように、浮遊物(SS)は、2次凝集体、具体的には2次凝集体を構成する1次凝集体の表面に吸着することによって除去される。一方、油分はエマルジョンの変形及び破壊によって、2次凝集体を構成する1次凝集体間の空隙中に吸着され、除去される。但し、本方法では、1次凝集体を予め排水中に投入するので、浮遊物(SS)は、この投入の段階で1次凝集体の表面にある程度の割合で吸着されることになる。また、エマルジョンを構成しない油分についても、同じく1次凝集体の投入の段階で1次凝集体の表面及び空隙内に吸着されるようになる。
【0046】
上記第1の方法の場合と同様に、1次凝集体間に形成された空隙が、0.05μm〜10μmの平均孔径を有することによって、上述したエマルジョンの変形及び破壊が促進され、これによって、1次凝集体間の空隙内への吸着がより促進されるようになる。
【0047】
上述のようにして排水中の浮遊物(SS)及び油分を除去した後は、2次凝集体を分散媒中に分散させ、2次凝集体を1次凝集体に分解するとともに、1次凝集体を洗浄する。この洗浄はフィルターの設置されている容器内で行っても、他の容器で行っても構わない。他の容器で行う場合は、逆洗などの手段を用いて2次凝集体を1次凝集体に分解した後、輸送する。洗浄には水を使用するが、界面活性剤や有機溶媒を用いて洗浄することも可能である。
【0048】
次いで、洗浄後の1次凝集体を磁気分離を用いて回収する。磁気分離の方法は特に問わないが、容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。
【0049】
なお、第2の排水処理方法では、2次凝集体を構成する1次凝集体は上記排水、すなわちこの排水を利用して調整した懸濁液中に含まれているので、除去すべき浮遊物(SS)及び油分(を含む排水(懸濁液))とともに、常に1次凝集体が供給されることになる。
【0050】
したがって、特に排水(懸濁液)中の浮遊物(SS)の量が多い場合においても、浮遊物(SS)の供給と1次凝集体の供給とは同時に行われることになるので、第1の排水処理方法のように、過剰に吸着した浮遊物(SS)が、1次凝集体間の空隙を埋設してしまうことがない。このため、当該空隙によるエマルジョンの変形及び破壊の度合いが低下することなく、油分の除去効率の劣化を抑制することができる。結果として、上述したように、第2の排水処理方法は、排水中の浮遊物(SS)濃度が高い場合に有効である。
【0051】
なお、本方法では、除去すべき浮遊物(SS)及び油分(を含む排水(懸濁液))とともに、1次凝集体が供給されるので、2次凝集体の形成と、通水による浮遊物(SS)及び油分の除去とは同時に行われることになる。
【実施例】
【0052】
<磁性体を含有する1次凝集体の製造>
(1次凝集体1)
ポリメチルメタクリレート138重量部を2400mlのアセトン中に溶解させて溶液とし、その溶液中に平均粒子径2000nmのマグネタイト粒子1500重量部を分散させて溶液とした。この溶液をミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いて噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が60μmの磁性体の1次凝集体を作製した。
【0053】
(1次凝集体2)
平均粒子径が200nmの磁性体を用いたこと以外は、1次凝集体1の作製方法と同様に1次凝集体を作製した。凝集体の平均粒子径は10μmであった。
【0054】
(1次凝集体3)
平均粒子径が10μmの磁性体を用いたこと以外は、1次凝集体1の作製方法と同様に1次凝集体を作製した。凝集体の平均粒子径は120μmであった。この凝集体を回転造粒機に投入し、ポリメチルメタクリレート20重量%のアセトン溶液を噴霧して再造粒した。この得られた造粒体を650μm以上1.18mm以下に分級して、平均粒子径990μmの凝集体を得た。
【0055】
(1次凝集体4)
フェニルトリエトキシシラン100重量部を3000mlの水と10重量部の酢酸とに溶解させ、その溶液中に平均粒子径2000nmのマグネタイト粒子1500重量部を分散させて溶液とした。この溶液をミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いて噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が40μmの磁性体の凝集体を作製した。
【0056】
(1次凝集体5)
Feが49モル%、ZnOが27モル%、CuOが11モル%、NiOが13モル%となるように秤量し、ボールミルで混合後、700℃で仮焼成した。その後、仮焼後の粉体をボールミルで湿式粉砕して、平均粒子径3μmの粒子を得た。この粒子200重量部に対し、3重量部のポリビニルアルコールと2500重量部の水とを混合して得た溶液を、アドマイザ型スプレードライヤーを用いて噴霧し、球状に凝集した粒子径が100μmの磁性体の1次凝集体を作製した。この1次凝集体を900℃で短時間焼成することで、球状でポーラス構造を有する1次凝集体を作製した。
【0057】
これら凝集体の平均細孔径を島津細孔分布測定装置オートポア9520 形で測定した。まとめたものを表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例1)
1次凝集体1の10gと水100ccとの懸濁液を調整した。この懸濁液を減圧状態に保った桐山ロート(ろ紙:60mm,5B)上でろ過して、ろ紙上に1次凝集体を堆積した2次凝集体を形成した。次に、ポリエチレングリコールモノラウレート500mg/Lとギア油1000mg/Lとを含有する模擬排液を準備して、減圧状態を保ったまま1Lの模擬排液を2次凝集体に通水した。通水後の液は泡立ったことから、界面活性剤と油が分離し、油のみが除去されていることが確認できた。次に、2次凝集体が堆積したろ紙を取り出し、ビーカーに入れて100mlのヘキサンで洗浄した。次に、このヘキサン中から棒磁石を用いて1次凝集体を取り出した。真空デシケータで乾燥後、もう一度排水の吸着を行ったところ、目視で油が取れていることを確認した。
【0060】
(実施例2〜5)
1次凝集体1に代えて、1次凝集体2〜5を用いた以外は実施例1と同様に吸着試験を行った。実施例1と共に表2にまとめる。いずれの1次凝集体を用いた場合でも、水中のギア油を除去できることがわかった。
【0061】
(比較例1)
凝集体ではなく平均粒子径2000nmのマグネタイト粒子を用いたこと以外は実施例1と同様に吸着試験を行った。模擬廃液を通水したところ、500ml通水したところで、ほとんど通水量がなくなり、目詰まりを起こしていることがわかった。
【0062】
(実施例6)
ポリエチレングリコールモノラウレート500mg/Lとギア油1000mg/Lとを含有する模擬排液を準備して、この模擬排水100ccと1次凝集体1の10gを混合して懸濁液を調整した。この懸濁液を減圧状態に保った桐山ロート(ろ紙:60mm,5B)上でろ過し、ろ紙上に1次凝集体を堆積した2次凝集体を形成するとともに、模擬排液を2次凝集体に通水した。通水後の液は泡立ったことから、界面活性剤と油が分離し、油のみが除去されていることが確認できた。
【0063】
次に、この凝集体が堆積したろ紙を取り出し、ビーカーに入れて100mlのヘキサンで洗浄した。次に、このヘキサン中から棒磁石を用いて凝集体を取り出した。真空デシケータで乾燥後、もう一度排水の吸着を行ったところ、目視で油が取れていることを確認した。
【0064】
【表2】

【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体の1次凝集体と分散媒とを混合して懸濁液を調整するステップと、
前記懸濁液をフィルターに通水し、前記フィルター上に前記1次凝集体を残留させて、前記1次凝集体が凝集してなる2次凝集体を形成するステップと、
前記2次凝集体に対して排水を通水し、前記排水中の浮遊物及び油分を除去するステップと、
前記2次凝集体を分散媒中に分散させ、前記2次凝集体を前記1次凝集体に分解するとともに、前記1次凝集体を洗浄するステップと、
前記1次凝集体を磁気分離を用いて回収するステップと、
を具えることを特徴とする、排水処理方法。
【請求項2】
前記分散媒は、前記排水であることを特徴とする、請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
前記1次凝集体を構成するバインダー樹脂が、スチレン樹脂、水添加スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、イソプレン樹脂、アクリロニトリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アルキルアクリレート樹脂、フェノール樹脂及びアルキルメタアクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
前記1次凝集体を構成するバインダー樹脂が、カップリング剤の縮合物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排水処理方法。
【請求項5】
前記1次凝集体の平均凝集径が10μm以上1mm以下であり、前記1次凝集体の表面に開口したポーラスの平均ポーラス径が0.01μm〜1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の排水処理方法。

【公開番号】特開2012−55784(P2012−55784A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198264(P2010−198264)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】