説明

排水機能を有する組合せ鋼矢板および該鋼矢板を用いた壁体構造

【課題】地震時に液状化の発生が懸念される地盤に施工される壁体や護岸等に用いられる、優れた排水機能と高い断面性能とを備える排水機能付き組合せ鋼矢板およびこれを用いた壁体を提供する。
【解決手段】ハット形鋼矢板12のウェブ部12aの内面側に、H形鋼13を一方のフランジ部13bの外面が対峙するように組み合わせた組合せ鋼矢板11aについて、他方のフランジ部13cの外面に排水部材14を設ける。継手部12b、12cの嵌合により地盤中に壁体1aを構成する。排水部材14を地中構造物2のより近くに位置させることができるので、地震時に、組合せ鋼矢板11aと地中構造物2との間の、液状化した地盤の変形を効果的に抑制することができ、地盤の変形に伴う地中構造物の変形抑制という点でも効果が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に液状化の発生が懸念される地盤に施工される壁体や護岸等に用いられるハット形鋼矢板またはU形鋼矢板とH形鋼を組み合わせた排水機能を有する組合せ鋼矢板および該組合せ鋼矢板を連続して設置してなる壁体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱な砂層地盤など地震時に液状化の発生が懸念される地盤上に構造物を構築する場合、もしくは既存の構造物に液状化対策を施す場合には、従来から各種工法が開発されている。
【0003】
例えば、地盤が液状化しないように地盤強度(密度)を増大させる締固め工法(サンドコンパクションパイル工法など)、薬液注入などによる地盤改良工法などが幅広く適用されている。
【0004】
しかし、これらの工法では周辺地盤をかなり広い領域にわたって対策する必要があるため、用地確保が必要であり、また確実に効果を発揮させるためには構造物直下地盤を改良することが肝要である。
【0005】
既設構造物への適用を考えた場合、一旦構造物を撤去し、地盤を改良した後に再び構造物を設置するか、構造物周辺地盤から構造物直下地盤の改良を施す必要がある。しかし、施工スペースの制限や、低騒音・低振動施工が求められるなど適用の制限を受けることが考えられる。さらに、対策工法や地盤の改良範囲によっては多大な工期、工費が必要となり、非合理的となることも考えられる。
【0006】
一方、ドレーン工法など地震時に発生する過剰間隙水圧の発生を低減し液状化を抑制する工法、鋼材などを用いて構造的に地盤の変形を抑制する工法、さらにはこれらの技術要素を組み合わせて、より合理的かつ効果的な対策を可能にする工法も開発されている。
【0007】
その代表例としては、矢板や杭、H型鋼のような鋼材に排水材を取り付けた排水機能付き鋼(管)矢板、鋼管杭、H型鋼を地中に連続して打設し壁体を構築する工法が挙げられる。これらの工法は、主として水路や共同溝、盛土といった線状構造物の両側に設置される場合や、建築物をはじめ各種施設を取り囲むように設置される場合が多い。
【0008】
これら構造物の周囲に壁体を構築することで、鋼材の強度・剛性に優れるといった特徴を活かして液状化した地盤の変形を抑制するとともに、鋼材表面もしくは近傍に設置された排水部材の効果により、地震時に発生する過剰間隙水圧を低減し液状化が抑制され、構造物に生じる有害な変形や損傷が抑制されることが期待できる。
【0009】
矢板近傍の過剰間隙水圧の発生が抑制されると、矢板近傍の地盤強度が保持され鋼材自体の変形に抵抗する地盤からの反力が十分に期待でき、かつ鋼材に作用する地盤からの荷重が低減されるため、必要な鋼材の断面を低減することができコスト面での合理化も期待できる。
【0010】
また、このような排水・集水機能が付与された鋼(管)矢板などの鋼材は、護岸や道路擁壁などの擁壁構造物の構築にも適用することが可能で、擁壁構造物背面の水を効果的に排水することで静水圧を低減し擁壁構造物の変形を抑制することが期待される。これにより、擁壁構造物に適用する鋼材の断面が低減され、材料コストの縮減が可能となり合理的となる。
【0011】
排水機能付き鋼矢板の例として、特許文献1には、矢板本体の長手方向に沿った所定区間に、多数の開口部と該開口部からの地盤の土砂の浸入を防ぐためのフィルターを備えた排水用部材を1条または複数条、少なくとも前記矢板本体の片面に設けたことを特徴とする排水機能付き鋼矢板が記載されている。特許文献1に記載された発明は、排水用部材を取り付けた鋼矢板を打設するようにしているため施工時間の短縮が可能である。
【0012】
また、高い断面性能と排水機能を両立させようとすれば、排水機能付き鋼管矢板を使用することが考えられる。しかし、鋼管矢板を使用すると、鋼矢板を使用する場合と比較して鋼材の使用量が多くなりコスト高になる。
【0013】
そこで近年、鋼矢板をH形鋼等で補剛した、いわゆる組合せ鋼矢板が開発されている(例えば、特許文献2〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平02−225712号公報
【特許文献2】特開2002−212943号公報
【特許文献3】特許4074271号公報
【特許文献4】特開2005−299202号公報
【特許文献5】特開2008−267069号公報
【特許文献6】特開平11−117284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特に、近年、適用が広がりつつあるハット形鋼矢板の場合、現状では製造面の制約で形状のバリエーションが少ないため、鋼矢板単体での断面性能の向上に限界があることから、H形鋼等と組み合わせた組合せ鋼矢板の適用は有効であると考えられる。
【0016】
しかし、上記のような組合せ鋼矢板の場合、排水機能を備えるための適切な態様については知られていない。
【0017】
本発明は、上述のような背景のもとに開発されたものであり、優れた排水機能と高い断面性能とを備える排水機能付き組合せ鋼矢板およびこれを用いた壁体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願の請求項1に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板は、ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の内面側に、H形鋼を該H形鋼の一方のフランジ部の外面が対峙するように組み合わせ、前記H形鋼の他方のフランジ部の外面に排水部材を設けたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、壁体を構築する組合せ鋼矢板が排水機能と高い断面性能とを備え、地震時の地盤の液状化対策として特に有効である。さらに、鋼矢板のウェブ部の内面側に組み合わせたH形鋼のフランジ部の外面に排水部材が設けられていることで、構造物のより近くに位置させることができるため、地震時に液状化の恐れがある地盤の変形に伴う地中構造物の変形抑制という点で有利である。
【0020】
本願の請求項2に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板は、上記請求項1に係る組合せ鋼矢板において、前記ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の外面側にも排水部材を設けてあることを特徴とするものである。
【0021】
壁体の両面に排水部材が備えられることになり、液状化対策の点では請求項1よりもさらに有効である。
【0022】
本願の請求項3に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板は、ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の内面側に、H形鋼を該H形鋼の一方のフランジ部の外面が対峙するように組み合わせ、前記ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の外面側に排水部材を設けてあることを特徴とするものである。
【0023】
請求項1は、組合せ鋼矢板を構成するH形鋼を地中構造物側に向ける場合等を想定しているのに対し、請求項3は、組合せ鋼矢板を構成するハット形鋼矢板またはU形鋼矢板を地中構造物側に向ける場合等を想定したものである。
【0024】
本願の請求項4に係る発明は、複数の組合せ鋼矢板どうしまたは複数の鋼矢板と組合せ鋼矢板を連続して設置して構築される壁体構造であって、前記組合せ鋼矢板の一部または全部として請求項1〜3のいずれか一項に記載の排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、壁体を構築する組合せ鋼矢板が排水機能と高い断面性能とを備え、地震時の地盤の液状化対策として特に有効である。さらに、鋼矢板のウェブ部の内面側に組み合わせたH形鋼のフランジ部の外面に排水部材が設けられていることで、構造物のより近くに位置させることができるため、地震時に液状化の恐れがある地盤の変形に伴う地中構造物の変形抑制という点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】比較のための排水機能を有するハット形鋼矢板を用いた壁体構造の態様例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造の他の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明を堤防等の盛土構造物の法尻に構築された壁体に適用する場合の説明図である。
【図7】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板の排水部材として、溝型鋼に複数の孔が長手方向に分散してあけられたもの用いた場合の実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いた壁体構造の一実施形態を図1に示す。図1では、ハット形鋼矢板12のウェブ部12aの内面側に、H形鋼13を一方のフランジ部13bの外面が対峙するように組み合わせ、他方のフランジ部13cの外面に排水部材14を設けてある組合せ鋼矢板11aが、継手部12b、12cの嵌合により連結されて、壁体1aが構成されている。
【0028】
このとき、排水部材14が共同溝等の地中構造物2に面するように構成されている。排水部材14としては、後述する市販品に例示されるようなフィルターで被覆された樹脂製排水材料が適用されている。
【0029】
一方、比較のため、排水機能を備えるハット形鋼矢板12で壁体1xを構築した態様例を図2に示す。図1の構造と図2の構造とを比較すれば、図1の方がH形鋼13で補剛された組合せ鋼矢板11aを用いているので、断面性能は格段に有利である。
【0030】
加えて、図1の構造の方が、地中構造物2のより近くに位置させることができるので、地震時に、組合せ鋼矢板11aと地中構造物2との間の、液状化した地盤の変形を効果的に抑制することができ、地盤の変形に伴う地中構造物の変形抑制という点でも有利である。
【0031】
本発明に係る壁体構造の他の実施形態を図3に示す。この例は、ハット形鋼矢板12のウェブ部12aの外面側にも排水部材14を備えているほかは、図1と同様である。壁体1bの両面に排水部材14を備えていることで、液状化対策の点では図1よりもさらに有効である。
【0032】
本発明のさらに他の実施形態を図4に示す。図4では、ハット形鋼矢板12のウェブ部12aの内面側に、H形鋼13をその一方のフランジ部13bの外面が対峙するように組み合わせ、ハット形鋼矢板12のウェブ部12aの外面側に排水部材14を設けた排水機能を有する組合せ鋼矢板11cが連結されて、壁体1cが構成されている。このとき、排水部材14が共同溝等の地中構造物2に面するように構成されている。
【0033】
図4の壁体1cも組合せ鋼矢板11cが用いられることで、高い断面性能を備える。加えて、排水部材14を地中構造物2の近くに位置させることができるので、地震時における構造物の変形抑制という点でも有利である。さらに、図5のように、H形鋼13のフランジ13c面にも排水部材14を備え、壁体11d両面の液状化防止を図ることとしてもよい。
【0034】
ここで、図1と図4の構造を比較する。
【0035】
仮に、構造物に液状化対策が施されていない場合、地震時に地盤が液状化すると、共同溝等の比重の軽い地中構造物2は、周辺地盤から構造物下へ向かう地盤の変形に伴って押し上げられるように浮き上がりが生じる。
【0036】
また、液状化対策が施されていない一般的な鋼矢板のような壁体が構造物周辺に設置される場合は、周辺地盤からの回り込みを鋼矢板が抑止することが可能である。ただし、壁体と構造物との間の地盤には、規模は小さいが同様の変形パターンが生じ、地盤の変形に伴って構造物には変形が生じる。この時、壁体に作用する土圧は、構造物のない締切り外側の面から、構造物のある締切り内面側に向けて働く。
【0037】
そこで、図1や図4のように地中構造物2側(のできるだけ構造物の近く)に排水部材14を位置させる方が有利である。さらに、締切り外側からの土圧に抵抗する上では、図1のようにH形鋼13を地中構造物2側に向ける方が、矢板12が受け持つ土圧をH形鋼13に伝達するため有利である。
【0038】
ただし、ハット形鋼矢板12とH形鋼13が一体梁として機能する場合、すなわち、例えば、その長手方向で全長溶接されている場合等は、同等である。図3のように、ハット形鋼矢板12のウェブ12aの外面にも排水部材14を設ければ、壁体1bに作用する力を低減できるので、より効果的である。
【0039】
一方、堤防等の盛土構造物の法尻に構築された壁体(例として図6を示す)の場合、地震時に地盤の液状化が生じると、堤防等が沈下しようとするとともに、壁体には、堤防側から締切り外側(堤内側および/または堤外側)に向けて土圧がかかる。
【0040】
したがって、この場合は、排水部材は堤内側および/または堤外側に位置する方が好ましい。また堤防等の盛土側に矢板を配置するほうが、前述の理由と同様に、土圧をH形鋼に伝達できるため、その配置が望ましい。図3のように、H形鋼13のフランジ部13c外面にも排水部材14を設ければ、壁体1cに作用する力を低減できるので、より効果的である。
【0041】
次に、本発明に係る組合せ鋼矢板について、さらに説明する。
【0042】
本発明に係る組合せ鋼矢板は、ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板(以下、まとめて「鋼矢板基体」という。)のウェブ部の内面にH形鋼のH形鋼を該H形鋼の一方のフランジ部の外面が対峙するように組み合わせられている。
【0043】
この方が、H形鋼をウェブの外面側に対峙させる構造と比較して、後述する一体梁として機能する場合には断面性能は劣るものの、打設に要するスペースが圧倒的に小さくて済む。また、打設もしやすい。
【0044】
鋼矢板基体としては、ハット形鋼矢板、特に600mm幅以上の鋼矢板を用いると、鋼材コストと打設コストの点で有利である。またハット形鋼矢板は、鋼矢板(基体)の向きが同じままで連続して打設できるため、施工法線幅(壁体としての幅)が小さくて済み、施工用地に制限がある場合にも適用しやすい。
【0045】
一方で、ハット形鋼矢板は、U型鋼矢板と比較して形状のバリエーションが少ないことから、鋼矢板単体では断面性能が十分でない状況も予想されるので、その意味でハット形鋼矢板を鋼矢板基体とする本発明に係る組合せ鋼矢板はその適用範囲が広いと考えられる。
【0046】
H形鋼と鋼矢板基体とは、断面性能を重視する場合は、例えばH形鋼と鋼矢板基体とが接している長手方向全長にわたってこれらを溶接する等により、両者を一体化する。このような構造の場合、土圧に対して一体ものの梁(一体梁)のように機能するため、高レベルの断面性能が得られる。
【0047】
ただし、施工現場でこのような全長溶接のような一体化をするのは難しく、通常は工場で一体化された組合せ鋼矢板を施工現場に搬入して打設することになるため、運搬性や打設性にやや難があると考えられる。
【0048】
一方、H形鋼と鋼矢板基体とが固定されていなくても、これらが土圧に対していわゆる重ね梁として機能することで、一体梁には及ばないものの、断面性能が向上する。この場合、組合せ鋼矢板の断面性能は、H形鋼と鋼矢板基体それぞれの断面性能の和として表わされる。
【0049】
この構造の場合は、H形鋼と鋼矢板基体とを打設時にバラバラにならない程度に一体化(例えば、一か所または数か所で点状溶接やボルト止めする等)してから打設することができる。あるいは、鋼矢板基体とH形鋼を別々に打設してもよい。この場合は、例えば先に打設する方に特許文献4のようなガイドとなるような部材を設けおくと打設しやすい。
【0050】
これらの打設方法をとり得ることから、鋼矢板基体とH形鋼とを施工現場まで別々に搬入できるので、運搬に係るコストおよび効率の面で大幅に有利である。
【0051】
なお、圧入パイラーでの圧入施工を考えると、鋼矢板基体がU形鋼矢板の場合は、打設時のパイラーの把持位置が矢板ウェブ部であることから、H形鋼と同時に打設しにくいので、別々に打設する方法が有効である。ハット形鋼矢板の場合は、打設時の把持位置は腕部なので、予め一体化しておいてもよくまた別々に打設してもよい。
【0052】
H形鋼と鋼矢板基体とは、略同じ長さで長手方向全長で対峙しているのが通常であるが、性能面で許容範囲であればいずれか一方を短くすることもできる。排水部材が設けられるH形鋼および/または鋼矢板基体は、排水機能を発揮できる程度の長さが必要である。
【0053】
本発明に係る組合せ鋼矢板は、H形鋼のフランジ面および/または鋼矢板基体のウェブ部の外面に排水部材を備える。排水部材としては、例えば、特許文献1に示されるような、溝型鋼に複数の孔が長手方向に分散してあけられたもの(図7の排水部材16参照)や、フィルターで被覆された樹脂製排水材料を使用することができる。
【0054】
溝型鋼を使用する場合は、排水経路や孔に土砂が詰まらないように、孔がフィルターで覆われているのがよい。また、溝型鋼をH形鋼および/または鋼矢板基体に溶接等で取り付けてから打設する。
【0055】
一方、樹脂製排水材料としては、例えば、市販品である「エンドレンマット(登録商標)」、「エンドレンマット(登録商標)リブ型」、「モノドレン(登録商標)」、「もやい(登録商標)ドレーンマット」などを用いることができる。
【0056】
上述の溝型鋼との比較では、打設時に樹脂やフィルターが損傷しないような工夫(例えば特許文献6のような保護部材の適用)を要する一方で、H形鋼および/または鋼矢板基体に密着・固定する必要がない(例えば、排水材料の下端部で、打設時にバラバラにならない程度に治具等で接合しておけばよい。)ので、運搬コストや効率に優れる。
【0057】
本発明に係る組合せ鋼矢板を用いた壁体構造は、本発明に係る組合せ鋼矢板を連続して設置してもよく、あるいは性能的に許容範囲であれば離散的に設置してもよい。
【0058】
図1、図3〜図5の壁体構造は、本発明に係る組合せ鋼矢板を連続して設置した例であるが、離散的(例えば1〜数枚おき)に設置して、その間は通常のハット形鋼矢板でつないだ構造としてもよい。
【0059】
また、図8および図9は、鋼矢板基体がU形鋼矢板15の場合の本発明に係る壁体構造の例であり、図8は、本発明に係る2つの態様の組合せ鋼矢板11f、11f´を交互に設置した例、図9は本発明に係る組合せ鋼矢板11gと通常のU形鋼矢板15を交互に設置した例である。
【0060】
他の実施形態についても、本発明に係る組合せ鋼矢板を連続して設置する方が断面性能や排水性能に優れる一方、性能的に許容範囲であれば、通常の鋼矢板と混合して使用することで鋼材コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g…壁体、
2…地中構造物、3…盛土構造物
11a、11b、11c、11d、11e、11f、11f´、11g…組合せ鋼矢板、
12…ハット形鋼矢板、12a…ウェブ部、12b、12c…継手部、
13…H形鋼、13a…ウェブ部、13b、13c…フランジ部、
14…排水部材、
15…U形鋼矢板、15a…ウェブ部、15b…継手部、
16…排水部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の内面側に、H形鋼を該H形鋼の一方のフランジ部の外面が対峙するように組み合わせ、前記H形鋼の他方のフランジ部の外面に排水部材を設けたことを特徴とする排水機能を有する組合せ鋼矢板。
【請求項2】
前記ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の外面側にも排水部材を設けてあることを特徴とする排水機能を有する請求項1記載の組合せ鋼矢板。
【請求項3】
ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の内面側に、H形鋼を該H形鋼の一方のフランジ部の外面が対峙するように組み合わせ、前記ハット形鋼矢板またはU形鋼矢板のウェブ部の外面側に排水部材を設けてあることを特徴とする排水機能を有する組合せ鋼矢板。
【請求項4】
複数の組合せ鋼矢板どうしまたは複数の鋼矢板と組合せ鋼矢板を連続して設置して構築される壁体構造であって、前記組合せ鋼矢板の一部または全部として請求項1〜3のいずれか一項に記載の排水機能を有する組合せ鋼矢板を用いたことを特徴とする壁体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−202042(P2012−202042A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65251(P2011−65251)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】