説明

排泄物乾燥装置

【課題】スクレーパにかかる負荷を分散し、安定した摺動により、乾燥処理後の家畜排泄物を排出することが可能な排泄物乾燥装置を提供することを課題とする。
【解決手段】排泄物乾燥装置1は、第一孔部4が穿設された第一エレメント5及び第一エレメント5の上方に離間して配設され、第二孔部6が穿設された第二エレメント7を備える乾燥装置本体9と、加熱空気12を乾燥装置本体9の第一エレメント5の下方から供給する加熱空気供給部10と、エレメント空隙Wに挿設され、摺動往路側及び摺動復路側にそれぞれ凹状側面部が設けられた摺動スクレーパ2と、摺動スクレーパ2を水平方向に往復摺動させ、第一エレメント5の表面5aに蓄積した排泄物3を水平方向に押出し、第一孔部4から落下させて回収するための摺動機構部Mとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物乾燥装置に関するものであり、特に、鶏糞等の家畜排泄物(以下、単に「排泄物」と称す)を肥料等として使用するために、当該排泄物に含まれる水分を加熱空気で蒸発させる乾燥処理を行うための排泄物乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鶏や豚等の家畜から排泄された鶏糞などの排泄物を肥料や燃料に転用し、再利用することが行われている。ここで、鶏から排泄された直後の鶏糞は、水分を多量に含むペースト状であるため、係る状態で肥料等として使用することは困難であった。そこで、鶏糞等の排泄物から水分を蒸発させ、乾燥させる処理を行うことにより、肥料等として使用することを可能とする試みがなされ、これに関する処理方法及び乾燥装置等が開発及び創作されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。例えば、圧力を利用し、未処理の排泄物から水分を脱気処理して乾燥させるもの(特許文献1参照)、或いは可動するベースを有する通気性の乾燥室から主に構成され、多数のエレメントから構成されたベースを利用し、排泄物の一部のみを流通可能なようにエレメント自体を振動させながら乾燥させるもの(特許文献2等)が知られている。
【0003】
しかしながら、上述した乾燥装置、堆肥化装置は、その構成が大型化または複雑化する傾向が強かった。その結果、設置及び稼働に要するコストが嵩み、全ての鶏舎等に隣接するように設置することは困難であった。また、上記の乾燥装置の場合、排泄物を乾燥させるためのエネルギー(高温の加熱空気等)が多く必要であり、エネルギー効率の点からあまり良好と言えない場合もあった。
【0004】
そこで、本願出願人は、上記問題を克服した新規な排泄物乾燥装置及び方法に係る発明を既に創作している(特許文献3参照)。この新規な発明の構成について詳細に説明すると、通気性を有する素材で形成された板状部材(エレメント)を上下に互いに離間するように配したベースを構築し、それぞれのエレメントに鉛直方向が一致しないように孔部を設けている。そして、二つのエレメントの間にスクレーパ(または、デッキスクレーパ)を挿設し、これを水平方向に摺動させる。これにより、スクレーパは、ベースの一端から他端の間を、下方のエレメントの表面上を掃引しながら移動することができる。
【0005】
その結果、下方のエレメントの表面に蓄積された排泄物をスクレーパのスクレーパ側面で押出すことが可能となり、下方のエレメントに設けた孔部から押出された排泄物を落下させることが可能となる。このとき、排泄物を乾燥させるための高温の加熱空気がベースの下方から供給されている。係る加熱空気は、鶏舎から排出される廃熱を利用している。これにより、通気性を有するベースの下方に存在する鶏糞から徐々に乾燥が行われることになる。そのため、上記スクレーパによってエレメントの間の乾燥済みの鶏糞を押出すことにより、乾燥処理された鶏糞(排泄物)を限定して回収することができる。
【0006】
したがって、上記示した通り、比較的単純な構成で鶏糞等の排泄物を乾燥処理することの可能な乾燥処理装置を構築することができ、乾燥処理に係る設備コストや稼働コストの低減化を図ることができる。また、鶏舎から排出される鶏舎排出廃熱を利用を加熱空気を生成するための一部として利用することができ、エネルギー効率の点からも優れたものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した乾燥処理装置は、下記に掲げる問題点を生じる可能性があった。すなわち、上記乾燥処理装置は、上下に互いに離間するようにそれぞれ配されたエレメントを有するベースを備え、各エレメントに設けられた孔部を通過して徐々に鶏糞が下方に移動し、その過程で排泄物の乾燥処理が行われていた。このとき、下方のエレメント(ベースの底部)の表面に到達した排泄物を摺動可能なスクレーパのスクレーパ側面で水平方向に押出す場合、当該スクレーパには、上方から投入された排泄物の荷重が摺動の負荷として加わり、この負荷に抗する力でスクレーパを摺動させる必要があった。ここで、排泄物と接するスクレーパ側面は、一般に摺動方向に対して直交する一つの平面として形成されていることが多かった。そのため、ベースの上方から投入された排泄物は、ベース中央付近に多くが滞留し、ベースの周囲、換言すればスクレーパの端部側には、それほど多くの排泄物が滞留していることがない。そのため、上述のような一つの平面で構成されたスクレーパ側面では、ベース中央付近に大きな荷重(負荷)が発生し、一方、その周囲ではそれほど大きな荷重が加わらない、負荷の偏重が生じている。これにより、スクレーパを水平方向に安定的に摺動させることができず、上記負荷の偏重によって排泄物を十分に押出すことができないこと、或いはスクレーパ自体が摺動の途中で停止する等の不具合を生じることがあった。
【0008】
一方、排泄物を押出すスクレーパのスクレーパ面は、一般に往復摺動するそれぞれの摺動方向に相対するように設けられていた。ここで、スクレーパは、一般に摺動前後に設けられた一対のスクレーパ部と、当該スクレーパ部の端部同士を連結し、摺動方向に沿って設けられた一対の摺動部とによって四角枠形状に設けられているものが多かった。そのため、排泄物の摺動時には、エレメント表面の排泄物をスクレーパ部で押出したとしても、その上方の第二孔部から順次排泄物が上方から下方に落下して供給され、四角枠形状の内枠側部分に排泄物が溜まることがある。このとき、四角枠形状の内側は、ほぼ長方形状を呈しており、上述の負荷の偏重が当該内枠の部分でも発生する可能性があった。そのため、スクレーパの安定的な摺動ができなくなる可能性がさらに高くなっていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、スクレーパのスクレーパ側面に加わる負荷を分散し、安定したスクレーパの摺動が可能な排泄物乾燥装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の排泄物乾燥装置は、「第一孔部が穿設された第一エレメント及び前記第一エレメントの上方に離間して配設され、前記第一孔部の上方から外れた位置に第二孔部が穿設された第二エレメントを備え、前記第二エレメントの上方から投入された家畜排泄物を収容する通気性を有する乾燥装置本体と、前記家畜排泄物を乾燥させる加熱空気を前記乾燥装置本体の前記第一エレメントの下方から上方に向けて供給する加熱空気供給手段と、前記第一エレメント及び前記第二エレメントの間のエレメント空隙に挿設された摺動スクレーパと、前記エレメント空隙で前記摺動スクレーパを所定の摺動範囲で水平方向に往復摺動させ、前記摺動スクレーパによって前記第一エレメントの上面に蓄積した前記家畜排泄物を押出し、前記第一孔部から落下させる摺動手段とを具備し、前記摺動スクレーパは、摺動往路方向及び摺動復路方向に沿って平行に互いに離間して設けられた一対の摺動部、及び前記摺動部の長手方向に直交して設けられ、一対の前記摺動部同士を連結する一対のスクレーパ部を有し、四角枠形状を呈して構成され、前記スクレーパ部は、スクレーパ中央部がスクレーパ端部に対して凹設された凹状側面部を摺動往路方向側及び摺動復路方向側にそれぞれ備える」ものから主に構成されている。
【0011】
ここで、乾燥装置本体とは、鶏糞等の排泄物を収容可能なように上方に開口した開口部を備え、内部に排泄物を収容し、貯留可能な大型の収容容器が想定される。排泄物(鶏糞)は、鶏舎に設置された鶏糞回収装置によって回収され、ベルトコンベア等の搬送装置を介して係る乾燥装置本体に供給される。そして、乾燥装置本体の最底部には第一エレメントが設けられ、乾燥処理後の排泄物の通過する第一孔部が所定の間隔で複数穿設されている。これに対し、第一エレメントの上方に所定の間隔(エレメント空隙)だけ離間して配された第二エレメントにも同様に第二孔部が複数設けられている。但し、第二孔部の孔位置は、下方の第一孔部の孔位置から外れた位置に設けられてる。そのため、乾燥装置本体の上方から投入された排泄物は、第二孔部を通過しても、直接第一孔部に至ることがなく、第一エレメントの上面に必然的に到達することになる。そのため、第一エレメントの上面に蓄積された状態で乾燥処理がなされることになる。すなわち、乾燥に要する処理時間が十分に確保される。
【0012】
さらに、第一エレメント及び第二エレメントは、後述の加熱空気供給手段によって供給される高温の加熱空気を第一エレメントの下方から第二エレメントの上方に向けて通過させるために通気性を有する素材で形成されている。具体的に説明すると、第一エレメント及び第二エレメントを金属製素材で構成し、当該エレメントを貫通する微細な小孔を設けたり、或いはエレメント全体をメッシュ状素材で形成したものを利用することができる。これにより、加熱空気のみを下方から上方に通過させ、一方、排泄物は係る小孔から落下しないようにすることができる。
【0013】
加熱空気供給手段とは、排泄物を熱の力を利用して乾燥させるものであり、鶏糞等に含まれる水分を蒸発させるための高温の加熱空気を排泄物に当てるものである。ここでは、一般的な送風用のファン及び当該ファンを高速で回転させ、第一エレメントの下方から上方に向かう気流を発生させるためのファン駆動用モータ等の構成を具備している。さらに、高温の加熱空気を供給するために、ファンヒータ等の加熱手段を備えている。本発明では、鶏舎から排出される鶏舎廃熱を利用し、鶏舎内の空気を加熱空気として転用することを行っている。これにより、熱エネルギーを有効に活用し、鶏舎システム全体の省エネルギー化を進めることができる。
【0014】
一方、摺動スクレーパは、第一エレメント及び第二エレメントの間のエレメント空隙に挿設され、水平方向に沿って第一エレメントの上面を移動可能なものであり、一対の摺動部及び一対のスクレーパ部によって四角枠形状に形成されるものである。なお、摺動スクレーパは、一対のスクレーパ部のスクレーパ中央部の間に架渡されたフレームに取設されたワイヤをモータ等の駆動力を利用して引っ張ることにより(摺動手段)、乾燥装置本体のエレメント空隙の間を往復摺動することができる。ここで、本明細書において、摺動スクレーパの一方向への摺動を摺動往路と規定し、エレメント空隙の空隙端に到達し、摺動方向を逆にした場合、摺動復路と規定する。そして、スクレーパ部は、摺動往路側及び摺動復路側のそれぞれに対し、スクレーパ中央部がスクレーパ端部に対して凹設した(凹んだ)凹状側面部を有している。
【0015】
したがって、本発明の排泄物乾燥装置によれば、乾燥装置本体に投入された排泄物が加熱空気供給手段によって供給された加熱空気によって、乾燥装置本体の下方から徐々に乾燥する。このとき、乾燥装置本体に投入された排泄物は、第二エレメントの第二孔部を通過し、一部が第一エレメントの上面に蓄積されている。そこで、加熱空気と接することにより、第一エレメントの上面に滞留した状態で乾燥される。このとき、摺動スクレーパは、所定の場所に待避している。その後、排泄物の乾燥が完了すると、摺動手段を作動させ、エレメント空隙の間を摺動スクレーパを水平方向に摺動させる。このとき、第二孔部を通過した排泄物が第一エレメント上に蓄積している。そのため、摺動スクレーパの摺動によってスクレーパ部の凹状側面部が係る排泄物と当接する。これにより、排泄物が凹状側面部とともに水平方向に押出され、第一エレメントの第一孔部の箇所に到達する。その結果、重力に従って排泄物が第一孔部から落下し、これを回収することが可能となる。
【0016】
ここで、摺動スクレーパのスクレーパ部は、上述の凹状側面部が摺動往路側及び摺動復路側の双方に設けられている。そのため、四角枠形状の摺動スクレーパの内枠側にも凹状側面部が設けられている。上述の摺動スクレーパの水平方向によって第二孔部直下の排泄物は、第一孔部に向かって押出される。このとき、第二孔部からは押出された排泄物の空間を埋めようとしてさらに排泄物が通過しようとする。その結果、上述の内枠部分に排泄物が充填されることになる。そして、摺動スクレーパの摺動を継続することにより、係る内枠部分に充填された排泄物も第一孔部に向かって押出され、落下する。
【0017】
このとき、摺動往路側及び摺動復路側の双方に凹状側面部が設けられていることにより、上方からの荷重の加わった排泄物による負荷を凹状側面部の各部位で分散させた状態で摺動させることが可能となる。特に、内枠側にもそれぞれ凹状側面部が互いに対向するように設けられているため、摺動の往路及び復路において、上方から内枠部分に充填された排泄物を速やかに第一孔部まで移動させられる。
【0018】
さらに、本発明の排泄物乾燥装置は、上記構成に加え、「前記凹状側面部は、前記家畜排泄物と相対する平面四角形状の前記スクレーパ中央部と、前記スクレーパ中央部の中央部端部からそれぞれ斜め方向に前記スクレーパ端部に向かって拡開した一対の平面四角形状の拡開部と」を具備するものであっても構わない。
【0019】
したがって、本発明の排泄物乾燥装置によれば、凹状側面部がスクレーパ中央部及び一対の拡開部から構成されている。これにより、中央付近に蓄積された排泄物を摺動スクレーパの摺動に伴って徐々にスクレーパ端部側に押出しながら第一孔部まで導くことが可能となる。このとき、凹状側面部にかかる負荷が分散し、安定した摺動が行える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の効果として、排泄物を押出すスクレーパ部に凹設された凹状側面部が形成され、さらに係る凹状側面部が摺動往路側及び摺動復路側に向かってそれぞれ相対するように一対ずつ設けられている。これにより、四角枠形状の摺動スクレーパの内枠部分に第二孔部を通過した排泄物が充填された場合、当該排泄物を内枠部分に設けられた凹状側面部によって第一孔部まで押出すことができる。これにより、排泄物の乾燥処理を簡易な構成でかつ安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の排泄物乾燥装置の構成を模式的に示す説明図である。
【図2】摺動スクレーパの構成を示す平面図である。
【図3】摺動スクレーパの構成を示す正面図である。
【図4】摺動スクレーパによる排泄物の押出の一例を模式的に示す側方から見た説明図である。
【図5】摺動スクレーパによる排泄物の押出の一例を模式的に示す上方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である排泄物乾燥装置1(以下、単に「乾燥装置1」と称す)について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の乾燥装置1の構成を模式的に示す説明図であり、図2は摺動スクレーパ2の構成を示す平面図であり、図3は摺動スクレーパ2の構成を示す正面図であり、図4は摺動スクレーパ2による排泄物3の押出の一例を模式的に示す側方から見た説明図であり、図5は摺動スクレーパ2による排泄物3の押出の一例を模式的に示す上方から見た説明図である。
【0023】
ここで、本実施形態の乾燥装置1は、家畜排泄物として鶏舎から排出される鶏糞等を主に含む排泄物3の乾燥処理を行うものであり、複数の鶏が飼育される鶏舎に隣接して設けられた乾燥処理施設内に設置されているものを想定している。そして、鶏舎から回収された鶏糞等の排泄物3をベルトコンベア等の周知の搬送手段を利用して鶏舎から乾燥処理施設まで搬入する。そのため、鶏の飼育システムの一部として本実施形態の乾燥装置1が機能することとなる。
【0024】
さらに、具体的に説明すると、本実施形態の乾燥装置1は、図1乃至図5に示すように、鶏舎(図示しない)から搬送された水分を多量に含む鶏糞を主とする排泄物3の投入される乾燥装置本体9と、排泄物3を乾燥させるための高温の加熱空気12を供給する加熱空気供給部10と、乾燥装置本体9に設置された摺動スクレーパ2と、摺動スクレーパ2を水平方向に往復摺動させる摺動機構部M(摺動手段に相当)とを具備して主に構成されている。
【0025】
乾燥装置本体9は、底部が板状の部材で形成され、板面の表裏を貫通する第一孔部4が穿設されるとともに、板状の部材には排泄物3を通過させることがなく、かつ加熱空気12の通過可能な微細な小孔Hが形成され、通気性を有する第一エレメント5及び第一エレメント5の上方に所定間隔(エレメント空隙W)だけ離間して配設され、第一孔部4の鉛直方向と外れた位置に第二孔部6が板状の部材の板面の表裏を貫通するように穿設され、第一エレメント5と同様に小孔Hによって通気性を有する第二エレメント7と、第一エレメント5及び第二エレメント7の周囲に設けられた装置本体壁18とを具備して主に構成されている。これにより、装置本体壁18等によって囲まれた収容空間8及び第一エレメント5及び第二エレメント7の間のエレメント空隙Wの空間に、乾燥装置本体9の上方に開口した開口部11から投入された鶏糞等の排泄物3を収容し、一時的に貯留することができる。ここで、第一孔部4及び第二孔部6は、乾燥装置本体9の本体幅(図1における紙面奥行方向)に略一致する孔幅を有し、後述する摺動スクレーパ2の摺動方向に沿って所定の間隔でそれぞれ設けられた矩形状を呈している。
【0026】
加熱空気供給部10は、乾燥装置本体9に投入され、貯留された排泄物3を乾燥させるために高温の加熱空気12を、乾燥装置本体9の第一エレメント5の下方から鉛直上方向に向けて供給し、第二エレメント7の上方から排出可能とするものである。このとき、乾燥装置本体9の第一エレメント5及び第二エレメント7には、それぞれ第一孔部4及び第二孔部6が設けられているため、供給された高温の加熱空気12の一部は当該孔部4,6を通じて収容空間8等に収容された排泄物3に接することになる(図1矢印参照)。一方、第一エレメント5及び第二エレメント7は、いずれも小孔Hが形成され、加熱空気12のみを通過させることができる。そのため、加熱空気12の一部は、エレメント5,7を通過してその表面5a,7aの上に貯留している排泄部3に接することができる(図1矢印参照)。これにより、高温の加熱空気12に晒された水分を含む排泄物3は、徐々に水分が蒸発し、乾燥した状態となる。このとき、加熱空気12は、第一エレメント5の下方から供給されているため、上記乾燥は、乾燥装置本体9に投入された排泄物3の下方(下層側)から乾燥が進行する。なお、加熱空気12は、水分を含む排泄物3との接触により、徐々に熱を失いながら乾燥装置本体9の開口部11から上方に抜ける。このとき、加熱された排泄物3から蒸散する水蒸気を多く含むことになる。
【0027】
ここで、加熱空気供給部10は、周知の構成を採用することが可能であり、第一エレメント5の下方に向けて加熱空気12を供給するために、気流を発生させるファン25、当該ファンを駆動するための駆動用モータ、高温の加熱空気12を生成するための空気調和装置(エアーコンディショナ)等の構成を有するものを採用することができる。なお、本実施形態の乾燥装置1では、鶏舎からの鶏舎排気廃熱を再利用し、これを加熱空気12(または、その一部)として使用することにより、省エネルギー効率化を図ったシステムを採用している。また、加熱空気12は、排泄物3の乾燥が主たる目的であるため、予め低湿度になるような調整がされているものであってもよい。
【0028】
一方、摺動スクレーパ2は、摺動往路方向(図1及び図4における紙面左方向に相当)、及び摺動復路方向(図1等における紙面右方向に相当)に沿って水平方向に摺動可能に設けられ、乾燥装置本体9の本体幅に略一致する幅だけ互いに離間して設けられた一対のソリ状の摺動部14と、摺動部14の長手方向(摺動往路または摺動復路方向に相当)と直交するように設けられ、一対の摺動部14の摺動端部14a,14bの近傍をそれぞれ連結する一対のスクレーパ部15と、スクレーパ部15の中央付近同士を連結する中央フレーム16とを主に具備して構成されている。
【0029】
ここで、中央フレーム16には、摺動スクレーパ2を往復摺動させるための摺動力を伝達するためのワイヤ(図示しない)と連結するワイヤ連結部17が設けられている。なお、摺動スクレーパ2を摺動させる摺動機構部Mは、従来から周知の構成を採用し、駆動モータ等の駆動手段、駆動力をワイヤ等の伝達するローラ等の駆動伝達手段等によって構築することが可能であり、ここでは説明を簡略化するため、係る構成のついての説明を省略し、図示を簡略化する。
【0030】
さらに、摺動スクレーパ2のスクレーパ部15の構成について詳述すると、スクレーパ部15は、中央フレーム16の下方に位置する平面長方形状の中央側面19aを有するスクレーパ中央部19と、スクレーパ中央部19の中央部端部20からそれぞれ斜め方向にスクレーパ端部21に向かって直線的に拡開した平面長方形状の拡開側面22aを有する一対の拡開部22によって構成された一対のスクレーパユニット13が互いの背面24同士を相対させるようして摺動部14の間を連結して設けられている。これにより、上方から観察すると、山型(または台形状)に切欠きされ、中央付近が凹設された三つの平面19a,22aから構成される凹状側面部23がスクレーパユニット13に形成されることになる。
【0031】
そして、上述の一対のスクレーパユニット23によって構成されたスクレーパ部15が摺動部14の前後(往路側及び復路側)にそれぞれ一対設けられている。これにより、図2等に示すように、一対の摺動部14及び一対のスクレーパ部15によって構成された摺動スクレーパ2の内側部分は、一対の凹状側面部23及び摺動部14の側面の一部によって略八角形状を呈している。すなわち、本実施形態の乾燥装置1における摺動スクレーパ2は、合計で四つの凹状側面部23を有することとなり、摺動スクレーパ2を一方向(例えば、図2における紙面下方)に摺動させた場合、前側(図2における下側)のスクレーパ15の外側に位置する凹状側面部23と、後側(図2における上側)のスクレーパ15の内側に位置する凹状側面部23との二カ所で排泄物3を押出すことが可能となる。一方、摺動スクレーパ2を多方向(例えば、図2における紙面上方向)に摺動させた場合、後側(図2における上側)のスクレーパ15の外側に位置する凹状側面部23と、前側(図2における下側)のスクレーパ15の内側に位置する凹状側面部23との二箇所で排泄物3を押出すことができる。
【0032】
次に、本実施形態の乾燥装置1による排泄物3の乾燥処理の一例について説明する。ここで、前述したように、本実施形態の乾燥装置1は、鶏舎と隣接した乾燥処理施設内に設けられ、鶏舎から鶏糞等の排泄物3が乾燥処理施設内に搬送されている。そして、乾燥装置1の乾燥装置本体9の上方に開口した開口部11から、搬送された排泄物3を投入する。これにより、乾燥装置本体9の収容空間8に鶏糞等の排泄物3が貯留される。このとき、収容空間8に投入された排泄物3は、その一部が第二エレメント7に穿設された第二孔部6を介して、第一エレメント5の表面5aまで到達し、エレメント空隙Wを埋めるようにして収容空間8に充填されることとなる。ここで、エレメント空隙Wを摺動する摺動スクレーパ2は、往復摺動可能な範囲の一方の摺動限端で待機している。
【0033】
この状態で加熱空気供給部10から加熱空気12を第一エレメント5の下方から第二エレメント7の上方に向かって供給する(図1矢印参照)。なお、加熱空気12の供給等の詳細については上述したため、ここでは説明を省略する。このとき、第一エレメント5及び第二エレメント7には、加熱空気12の通過が可能な小孔Hが設けられ、これにより通気性が確保されている。そのため、供給された加熱空気12は、小孔H及び第一孔部4を通って、乾燥装置本体9の収容空間8に進入し、排泄物3と接することになる。これにより、高温の加熱空気12と接した排泄物3は、包含する水分が徐々に蒸発し、水分率が低下する。その結果、乾燥装置本体9の下方に位置する排泄物3から徐々に乾燥処理が進行することになる。
【0034】
加熱空気12の供給によって収容空間8内の排泄物3が進行し、特に、エレメント空隙Wの間の排泄物3及び第二エレメント7の直近の排泄物3の乾燥が完了する。そして、乾燥装置本体9の第一エレメント5及び第二エレメント7の間のエレメント空隙Wの間に挿設され、第一エレメント5の表面5aに沿って水平方向に摺動(移動)自在に配された摺動スクレーパ2を摺動機構Mによって稼働させる。ここで、第一エレメント5の表面5aには、上方位置の第二エレメント7の第二孔部6から押出された乾燥済みの排泄物3が滞留している。係る状態で摺動スクレーパ2が摺動すると、スクレーパ部15のスクレーパユニット13の凹状側面部23(中央側面19a、拡開側面22a)が排泄物3と接することになる。このとき、スクレーパユニット13の凹状側面部23によって、これらを構成する三面に加わる負荷が一カ所に偏ることがなく、分散した状態での押出が可能となる。特に、拡開部22の拡開側面22aによって排泄物3を乾燥装置本体9の中央付近から両端方向に分散するように押出すことで摺動スクレーパ2が受ける負荷を軽減することができる。さらに、本実施形態の乾燥装置1の摺動スクレーパ2は、摺動方向に対して後側に位置するスクレーパ部15の内側部分に同様の凹状側面部23が形成されている。そのため、摺動スクレーパ2に加わる負荷をさらに軽減した状態で第一孔部4まで排泄物3を押出すことが可能となる(図4及び図5参照)。
【0035】
その結果、第一孔部4まで押出された排泄物3は重力に従って落下し、乾燥した排泄物3を回収することができる。ここで、摺動スクレーパ2が乾燥装置本体2の摺動往路方向の摺動限端(終端)に到達すると、摺動機構部(図示しない)によって摺動方向が切換えられ、摺動スクレーパ2は摺動復路側に向かって摺動を開始する。このとき、同様に摺動復路方向の前側に位置するスクレーパ部15の外側の凹状側面部23及び後側に位置するスクレーパ部15の内側の凹状側面部23によって排泄物3を押出すことができる。これにより、摺動スクレーパ2を一往復させる度に、第二孔部6を通過して、第一エレメント5の表面5aに貯留した排泄物3を適宜落下させ、回収させることができる。これにより、十分な乾燥が完了した排泄物3の部分のみを回収することができる。そして、未だ水分を含む状態の排泄物3が第一エレメント5の表面5aに到達した場合には、摺動機構部Mによる摺動スクレーパ2の摺動を停止し、加熱空気12によって再び十分に乾燥するまで待機をする。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の乾燥装置1によれば、一対の摺動スクレーパ2の各々の前後(摺動往路側及び摺動復路側)に設けられた一対のスクレーパユニット23の合計4カ所の凹状側面部23によって、押出対象となる排泄物3による荷重、負荷を当該凹状側面部23で分散させながら安定した動作で押出すことができる。これにより、摺動スクレーパ2の一部に過大な負荷がかかり、摺動が安定して行えない場合や、エレメント空隙Wの間で摺動スクレーパが停止する等の不具合を生じることがない。その結果、乾燥処理後の鶏糞等の排泄物3を速やかに第一孔部5から回収することができる。
【0037】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0038】
すなわち、本実施形態の乾燥装置1において、加熱空気12を生成する為の熱源として、鶏舎から排出される鶏舎排出廃熱を利用するものを例示したが、これに限定されるものではなく、その他の一般的な空気加熱手段を利用して、高温の加熱空気12を生成するものであっても構わない。しかしながら、鶏舎排出廃熱を利用する方法は、加熱にようする熱量を抑えることができ、低エネルギー効率の観点から特に有用なシステムであると考えられる。
【0039】
さらに、乾燥装置本体9の通気性を確保するために、第一エレメント5等に微小な小孔Hを複数設けたものを例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一エレメント5自体をメッシュの細かい編状素材を使用し、通気性を付与するものであっても構わない。また、乾燥対象となる排泄物3は、例示した鶏糞に限定されるものではなく、その他家畜等として飼育されるウシやウマ等から排泄される家畜排泄物を乾燥処理するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1 乾燥装置(排泄物乾燥装置)
2 摺動スクレーパ
3 排泄物(家畜排泄物)
4 第一孔部
5 第一エレメント
5a 表面
6 第二孔部
7 第二エレメント
7a 表面
8 収容空間
9 乾燥装置本体
10 加熱空気供給部(加熱空気供給手段)
12 加熱空気
13 スクレーパユニット
14 摺動部
14a,14b 摺動端部
15 スクレーパ部
19 スクレーパ中央部
22 拡開部
22a 拡開側面
23 凹状側面部
H 小孔
W エレメント空隙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許第6393722号明細書
【特許文献2】国際公開第97/02222号
【特許文献3】特許第3743766号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一孔部が穿設された第一エレメント及び前記第一エレメントの上方に離間して配設され、前記第一孔部の上方から外れた位置に第二孔部が穿設された第二エレメントを備え、前記第二エレメントの上方から投入された家畜排泄物を収容する通気性を有する乾燥装置本体と、
前記家畜排泄物を乾燥させる加熱空気を前記乾燥装置本体の前記第一エレメントの下方から上方に向けて供給する加熱空気供給手段と、
前記第一エレメント及び前記第二エレメントの間のエレメント空隙に挿設された摺動スクレーパと、
前記エレメント空隙で前記摺動スクレーパを所定の摺動範囲で水平方向に往復摺動させ、前記摺動スクレーパによって前記第一エレメントの上面に蓄積した前記家畜排泄物を押出し、前記第一孔部から落下させる摺動手段と
を具備し、
前記摺動スクレーパは、
摺動往路方向及び摺動復路方向に沿って平行に互いに離間して設けられた一対の摺動部、及び前記摺動部の長手方向に直交して設けられ、一対の前記摺動部同士を連結する一対のスクレーパ部を有し、四角枠形状を呈して構成され、
前記スクレーパ部は、
スクレーパ中央部がスクレーパ端部に対して凹設された凹状側面部を摺動往路方向側及び摺動復路方向側にそれぞれ備えることを特徴とする排泄物乾燥装置。
【請求項2】
前記凹状側面部は、
前記家畜排泄物と相対する平面四角形状の前記スクレーパ中央部と、
前記スクレーパ中央部の中央部端部からそれぞれ斜め方向に前記スクレーパ端部に向かって拡開した一対の平面四角形状の拡開部と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の排泄物乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38744(P2011−38744A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188898(P2009−188898)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(390030661)株式会社ハイテム (22)
【Fターム(参考)】