説明

排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法および製造システム

【課題】工場などの燃焼設備で発生する排ガスと、再生可能なエネルギによって得られる水素とを利用して、燃焼設備近傍で、DMEなどを合成して燃料などとして利用することを可能にする。
【解決手段】再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備(水電解装置3)で生成される水素と、燃焼設備(加熱炉1)で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素とを、前記水電解設備および前記燃焼設備からの移送ラインに連ねて、前記排ガスの排熱を利用して触媒存在下で反応させ、該反応によってジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を得ることで、CO削減を行い、かつ製造した燃料を従来の燃料の一部などとして利用することでエネルギコストの削減を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排熱と再生可能な自然エネルギを有効利用した反応物製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、製造工場で発生する排熱を有効利用して、工場から排出されるCOと水素とからジメチルエーテル(DME)やメタノール等を製造するシステムが提案されている。
従来のこの種の装置としては特許文献1で示されたものがある。同文献におけるシステム概念図を図3に示す。
該システムでは、CO発生源30で発生した二酸化炭素を液化炭酸施設31に移送して液化炭酸として一旦貯蔵し、車、船などの輸送手段32で貯蔵した液化炭酸をCO原料施設33に移送する。CO発生源30は、発電所など、COが発生する施設であり、液化炭酸施設31で二酸化炭素が冷却などにより液化炭酸として回収される。
液化炭酸は、CO原料施設33で一旦貯蔵し、必要に応じて合成施設34に供給する。また、当該システムでは、水電気分解施設35を備えており、該水電気分解施設35では電解によって水素を生成し、前記合成施設34に供給する。合成施設34では、前記二酸化炭素と該水素とを、メタノールやDMEの合成反応に利用する。
すなわち、合成施設34では、二酸化炭素と水素とが原料になってメタノールやDMEが生成される。
【0003】
メタノール合成施設34で生成したメタノール、DMEは、車、船などの輸送手段36によって燃料受入施設37に移送し一旦貯蔵し、必要に応じて前記したCO発生源30に燃料として供給する。
また、水電気分解施設35で水素と同時に生成する酸素は、液体酸素施設40で液化回収して一旦貯蔵し、車、船などの輸送手段41を経て液体酸素受入施設42に移送し一旦貯蔵する。また、液体酸素受入施設42には、空気液化施設43からも液体酸素を供給する。液体酸素受入施設42からは、必要に応じて前記液体酸素を前記したCO発生源30に供給する。
上記のように該システムでは、燃料消費地45側と燃料供給地46側とが地域を隔てて位置し、この地域間で、二酸化炭素と水素とが移動しつつ上記システムが稼働している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来までの工場内CO回収とそれを原料としたDME製造プロセスは、以上のように構成されているので、COを液化するエネルギが必要となり、かつそれを輸送するための燃料消費によりCOが排出され、また合成施設内でもメタノールやDMEを製造するためのエネルギが必要であるなど、ライフサイクルアセスメント(LCA)的に考えて、それほど大きなCO削減効果が得られていないものである。
【0006】
この発明は上記のような従来のものの課題を解決するためになされたもので、COを発生する場所とメタノールやDMEを製造する場所を同一工場内などに設置可能にし、COの直接排熱を利用してメタノールやDMEなどの炭化水素系燃料を得ることができる方法とシステムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法は、再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備で生成される水素と、燃焼設備で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素とを、前記水電解設備および前記燃焼設備からの移送ラインに連ねて、前記排ガスの排熱を利用して触媒存在下で反応させ、該反応によってジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を得ることを特徴とする。
【0008】
本発明の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システムは、再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備と、該水電解設備で生成された水素を移送する水素移送ラインと、燃焼設備で発生する二酸化炭素を含む排ガスを移送する排ガス移送ラインと、前記水素移送ラインおよび前記排ガス移送ラインが接続され、前記水素移送ラインから供給される前記水素と前記排ガス移送ラインから移送される前記排ガスとを触媒存在下で反応させてジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を生成する反応器と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記本発明によれば、再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備で生成される水素と、燃焼設備で発生する排ガスとを、移送ラインが配置されているエリア内で、排ガスの排熱を利用して合成し、燃料などとして利用することができるジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を得ることができる。
本発明の構成により、工場内などで排出されるCOは自然エネルギなどを利用して製造される水素と一緒にメタノールやDME等の炭化水素系燃料製造のための原料とすることができ、製造に必要なエネルギの大半は燃焼設備からの排熱を利用し、かつ既存のインフラを最大限活かした燃料供給システムを構築できるようになり、低コストで容易にCO削減を達成することが可能となる。得られた合成物は、液体の状態で既存のA重油,軽油などの燃料輸送用の配管で各工場の燃料貯蔵施設まで輸送・貯蔵して利用することができる。また、液相または気相の状態で前記燃焼設備の燃料の一部または全部として使用することができる。
【0010】
前記燃焼設備は、燃料を燃焼させて加熱する加熱炉などが例示されるが、本発明としては、特定のものに限定されるものではなく、燃料の種別も特定のものに限定されるものではない。例えば、天然ガスやLPG、COG、ダイリュートガスなどが挙げられる。
前記燃焼設備で生成される排ガスとしては、二酸化炭素を含むものであればよく、主成分として、窒素65〜95体積%,二酸化炭素5〜35体積%を含むものを例示することができる。該排ガスは、例えば、天然ガスなどの炭化水素ガスの燃焼によって発生する。
【0011】
また、前記排ガスは、温度が200℃〜500℃の低温工場排熱であってもよい。これにより、比較的低温の燃焼設備で発生する排ガスを対象にすることができ、適用範囲が拡大する。
【0012】
前記排ガスは、成分濃度が安定しているものの他、前記燃焼設備の操業条件などによって成分濃度が変動するものであってもよい。すなわち、燃料の成分や操業条件によって排ガスの成分濃度が変動する燃焼設備を利用対象とすることができ、適法範囲が拡大する。
【0013】
燃焼設備で成分濃度が変動する場合、排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度に応じて、前記反応に供する水素の量を調整するようにしてもよい。これにより排ガスの成分濃度に応じて適正な量の水素量を供給することができ、反応効率を上げるとともに、無駄な水素供給を回避する。
【0014】
水素の供給量の調整は、排ガス移送ラインで移送される排ガス中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素測定手段と、前記水素移送ラインに介設され、前記二酸化炭素測定手段による測定結果に基づいて水素流量を調整する水素流量調整手段と、によって実行することができる。すなわち、二酸化炭素測定手段で測定される二酸化炭素濃度が高くなれば、水素供給量を増加させ、二酸化炭素測定手段で測定される二酸化炭素濃度が低くなれば、水素供給量を減少させて、両者のバランスを図ることができる。また、二酸化炭素濃度の閾値を1または複数設定しておき、閾値を越えた場合に予め定めた所定の水素量を供給するようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明で用いられる水素は、工場内に設置された風力発電などの自然エネルギを用いた水電解施設で水などの電解によって生成される。該水電解施設を稼働させる再生可能なエネルギとしては、風力発電、太陽光発電、バイオガスエンジンなどが例示されるが、本発明としては、再生可能なエネルギであればよく、上記例示のものに限定されるものではない。また、水電解施設は、再生可能なエネルギのみで稼働するものが望ましいが、再生可能なエネルギの利用が一部によるものであってもよい。
【0016】
水電解施設で生成された水素は、水素移送ラインで独立して移送することも可能であるが、前記燃焼設備に移送される燃料ガスに合流させ、前記燃焼設備の上流側で前記燃料ガスから分離して移送するようにしてもよい。例えば、近年工場内の燃料はCO排出が少ないと言われる天然ガスに切り替えられており、この配管内に製造した水素を混入し、一般的にハイタンと呼ばれる燃料として燃焼設備まで輸送し、そこで分離して利用することができる。
【0017】
すなわち、水素移送ラインを該燃料ガス供給ラインの一部で合流させ、燃焼設備の上流側で該燃料ガス供給ラインから水素移送ラインを分岐させる。分岐地点上流側には、燃料ガスから水素を分離して分岐後の水素移送ラインに水素を導く水素分離器を備えることで水素を容易に分離することができる。水素分離器としては、水素分離膜などを用いた既知のものを用いることができ、要は水素を効果的に分離できるものであればよい。
上記によれば、燃焼設備に移送する燃料ガスの供給ラインを利用して水素を移送することができ、輸送のための燃料消費によるCO排出がなく、かつ既存のインフラを利用することで、安価に水素輸送を行うことが可能となり、トータル的に既存の施設を可能な限り生かした低コストのCO削減エネルギ供給システム構築を可能とする。
【0018】
上記水素と二酸化炭素とは、排ガスの熱を利用して合成反応によってジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を得ることができる。好適には少なくともジメチルエーテルを含む。
上記反応物は、一部または全部を前記燃焼設備の燃料として使用することができ、この場合、合成燃料供給ラインを設けて燃焼設備に供給する。また、製造した炭化水素燃料は既存のLPGガス配管や燃料ガス供給ライン等を利用して移送することもできる。
【0019】
また、前記合成反応によって得られた反応物の一部を水蒸気改質し、改質によって得られた水素と二酸化炭素とを分離し、前記水素を前記反応前の水素に加え、前記二酸化炭素を前記反応前の二酸化炭素に加えることも可能である。この場合、前記反応物の一部と水蒸気とによって前記反応物の水蒸気改質を行う改質器と、該改質器で得られた改質物中から水素と二酸化炭素とをそれぞれ分離する分離器と、該分離器で分離された水素を前記燃焼設備に直接または間接的に供給する改質後水素移送ラインと、前記分離器で分離された二酸化炭素を前記反応器に直接または間接的に供給する改質後二酸化炭素移送ラインと、を備えるものとすることができる。
上記によれば、反応物から得られる水素、二酸化炭素を原料側の水素量、二酸化炭素量の調整に用いることができる。例えば、上記水電解水素が不足する場合に上記改質によって得られる水素を補助として利用することができ、上記燃焼設備で発生する二酸化炭素の濃度が低い場合に上記改質によって得られる二酸化炭素を補助として利用することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、CO発生源である加熱炉などの燃焼設備から排出されるCOを直接排熱を利用し、自然エネルギを利用して製造した水素と反応させることでDMEなどの炭化水素系燃料などとして回収することでCO削減を行い、かつ製造した燃料は従来の燃料の一部として利用することでエネルギコストの削減も可能になる効果がある。
必要な水素は、風力発電などの再生可能なエネルギに基づく電力を利用して水電解により製造され、既存のインフラである燃料配管を利用して必要な場所まで貯蔵・輸送できるため、CO回収のための原料としてのみならず、燃料電池などの分散型電源への燃料としても利用でき、エネルギの多様化を進め、セキュリティー向上に貢献できる。本システムは近年注目が集まっている分散型電源を利用したマイクログリッドのエネルギー版であると言うことができ、CO回収サスティナブル工場エネルギーシステムを構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システムを示す図である。
【図2】同じく、前記製造システムの変更例を示す図である。
【図3】従来のCO回収と利用システムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の一実施形態の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システムを図1に基づいて説明する。
工場内には、燃焼設備として加熱炉1を備えており、該加熱炉1は、CO排出源となる。加熱炉では、通常、天然ガスやLPG、A重油などが燃料として用いられるが、この実施形態では、燃料として天然ガスが使用されており、該加熱炉1に天然ガスを供給する燃料ガス供給ライン1aが接続されている。また、加熱炉1には、燃焼後の排ガスを移送する排ガス移送ライン1bが接続されている。
【0023】
該システムでは、再生可能エネルギとして風力を利用した風車4によって得られる電力で稼働する水電解装置3が備えられている。該水電解装置3で生成された水素は、水素移送ライン3aで移送される。水素移送ライン3aは、前記燃料ガス供給ライン1aの中途に合流している。燃料ガス供給ライン1aは、水素移送ライン3aの合流地点の下流側でガス圧縮機10が介設され、加熱炉1の直前上流で水素分離器11を介して下流側の水素移送ライン3aが分岐している。したがって、燃料ガス供給ライン1aの一部は、水素移送ライン3aを兼用している。
水素分離器11は、水素分離膜を備え、分離された水素を下流の水素移送ライン3aに導き、その他の燃料ガスは、下流の燃料ガス供給ライン1aに導く。水素分離膜等、水素分離器には既知のものを用いることができ、本発明としては特に限定されるものではない。
また、加熱炉1には、燃焼用空気を供給する空気供給ライン1cが接続されている。
【0024】
水素分離器11の下流側の水素移送ライン3aは、水素吸蔵合金タンク12、流量調整器13が介設されており、下流端は加熱炉1の排ガスが移送される排ガス移送ライン1bに合流している。なお、排ガス移送ライン1bでは、該合流位置の上流側で、熱交換器21が介設され、該ラインを流れるガス中の二酸化炭素濃度を測定するCO濃度測定器15が設けられている。該CO濃度測定器15の測定結果は、制御部9に出力されている。制御部9は、CPUとこれを動作させるプログラム、データを不揮発に記憶する不揮発メモリ、RAM、ROMなどによって構成されたDCS(Distributed Control System:分散制御システム)等により、前記流量調整器13の制御が可能になっている。制御部9では、CO濃度測定器15の測定結果に基づいて流量調整器13における水素流量を調整することができる。
上記排ガス移送ライン1bと上記水素移送ライン3aが合流した排ガス・水素混合移送ライン14aには、ガス圧縮機14が介設され、ガス圧縮機14の下流側で、前記熱交換器21を通過して、本発明の反応器に相当するDME合成反応器2に接続されている。
【0025】
DME合成反応器2の反応物取り出し側には、反応物移送ライン2aが接続されており、該反応物移送ライン2aは、熱交換器5を介してDME分離回収器6に接続されている。DME分離回収器6は、分離回収された液相のDMEなどを移送する分離反応物移送ライン6aとオフガス排出ライン6bとが接続されている。オフガス排出ライン6bには、圧力調整弁7が介設されている。
分離合成物移送ライン6aには、熱交換器5、流量調整器8を介して、合成物供給ライン8aが接続されている。該合成物供給ライン8aは、加熱炉側合成物供給ライン8bと、反応器側合成物供給ライン8cに分岐しており、加熱炉側合成物供給ライン8bは加熱炉1に接続され、反応器側合成物供給ライン8cは前記排ガス・水素混合移送ライン14aに接続されている。加熱側合成物供給ライン8b、反応器側合成物供給ライン8cでは、流量調整器8や、それぞれの流量を調整可能な分配弁(図示しない)などによって合成物の分配量、分配比を調整することができる。
上記システムは、CO回収サスティナブル工場エネルギーシステムを構成している。
【0026】
次に、上記システムの動作について説明する。
燃料ガス供給ライン1aに供給された天然ガスは、後述する水素と混合され、ガス圧縮機10で圧縮されて下流側に移送される。
また、風車4では、再生可能な風力によって発電がなされ、その電力によって水電解装置3で水の電解がされて、水素および酸素が生成される。生成された水素は、水素移送ライン3aで移送されて燃料ガス供給ライン1aに合流する。なお、水電解装置3で生成された酸素は、適宜の用途に利用したり廃棄したりすることができる。
【0027】
なお、一般的に製造工場内の燃料ガス供給ラインは低圧配管であり、0.5〜0.6MPa程度の圧力であるため、水電解装置3からの水素放出圧力をこれ以上に設定すれば、水電解装置3からの水素は、燃料ガス供給ライン1aに問題なく混入される。ただ、水素分離器11では1MPa以上の圧力が必要となり、また、DME合成反応器2での反応も同様であるため、水素分離器11の上流側に設置したガス圧縮機10によって、混合ガスの圧力を1MPa以上、例えば1〜2MPaに加圧する。燃料ガス移送ライン1aに混合された水素は、ライン内で天然ガスに数%混入することで、燃料ガス移送ライン1aが貯蔵としての機能と輸送としての機能とを兼ねることになる。
【0028】
燃料ガス供給ライン1aで加熱炉1の入口近傍まで輸送された水素は、水素分離器11の水素分離膜により、透過水素と燃料天然ガスに分離される。透過水素は、水素分離器11の下流側の水素移送ライン3aに送られ、燃料ガスは、下流側の燃料ガス供給ライン1aに送られる。
【0029】
加熱炉1では、水素分離後の燃料ガス供給ライン1aによって燃料ガスが供給され、空気供給ライン1cから燃焼用空気が供給され、これらが混合されて燃焼する。燃焼の結果生成される排ガスは、200℃〜500℃、好適には400℃程度の温度を有している。また、排ガス中の成分は一般的には窒素が大部分の割合を占め、通常の操業条件では、その他は酸素10〜15%,COは5〜10%程度の濃度であると考えられる。
上記排ガスは、排ガス移送ライン1bで移送され、後述する水素の混合がなされる。なお、排ガス移送ライン1aで移送される排ガスには、前記水素の混合前に、熱交換器21でガス圧縮機14を出たガスと熱交換させることで、温度を一旦下げ、ガス圧縮機14での高熱による破損を防ぐ。また、水素は熱交換器21通過後の排ガス中の過剰酸素を全てCOとした場合に必要な水素量を流量調整器13で調整して添加することで、排ガス・水素混合移送ライン14aにおける排ガス温度を下げる効果もある。ガス圧縮機14で圧縮された後のガスは、再度熱交換器21で熱交換して温度上昇し、製造したDMEの一部を反応器側合成物供給ライン8cによって供給することで、該DMEが燃料として過剰酸素で燃焼し、所定のCO量としてDME合成反応器2でDMEを製造する。尚、反応器側合成物供給ライン8cでDMEの燃焼により副生する水はDME合成反応器2での反応がメタノールの脱水反応により水が発生することから、DME反応器2の前では反応に影響しないとして、考慮しない。
排ガスは加熱炉1からの排熱とその後のDME等の反応物と酸素の燃焼熱により、反応に必要な温度(一般的には300℃〜400℃)以上になっている。
【0030】
一方、水素分離器11で透過分離された水素は、水素移送ライン3aに介設した水素吸蔵合金タンク12に一旦貯留され、制御部9によって制御される流量調整器13によって所定量の水素が下流側に供給される。水素を水素吸蔵合金タンク12で一旦貯留して供給することで水素精製を行うことができる。
水素分離器11で分離した透過水素の圧力は透過側であるので、そのままであれば大気圧まで低下することから、上記流量調整器で流量を調整し、その後、排ガスと混合した後、圧縮機14で濃度が調製される。
前記排ガスと上記水素との混合によって、混合ガスは、大凡、50%N、12.5%CO、37.5%Hの成分となる。
【0031】
DME合成反応器2内には触媒が収納されており、混合ガスが触媒下で合成反応する。排ガスは、高温の排ガスに水素を混合しても300℃程度以上で反応に必要な温度以上になっており追加の燃料は必要としない。ただし、本発明としては、追加の燃料の使用を排除するものではない。
【0032】
合成物は200〜280℃程度の温度を有しており、DME合成反応器2から取り出され、合成物移送ライン2aを通して移送されて熱交換器5を授熱側として通過し、DME分離回収器6に至る。DME分離回収器6では、合成物が冷却されてDMEを主とする液相の合成物が得られ、分離されたオフガスはオフガスライン6bを通してDME分離回収器6から排出される。液相の合成物は圧力調整弁7によって取り出し量を調整してDME分離回収器6から取り出され、分離合成物移送ライン6aを通して移送され、熱交換器5で受熱して気相化される。
【0033】
気相化された合成物は、流量調整器8で流量が調整され、合成物供給ライン8aで移送され、分岐した加熱炉側合成物供給ライン8bによって分配された合成物が加熱炉1に供給され、同じく分岐した反応器側合成物供給ライン8cによって分配された合成物が排ガス・水素混合移送ライン14aの排ガスに混合される。この際の流量調整、分配比は、燃料ガス供給ライン1aにおける燃料の供給量や、排ガスの二酸化炭素濃度、水電解装置3における水素生成量などに従って調整することができる。排ガス・水素混合移送ライン14aに混合される合成物は、原料ガスの成分調整としての機能も果たしている。
【0034】
次に、他の実施形態を図2に基づいて説明する。
なお、前記実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
この実施形態でも、前記実施形態と同様に、燃焼設備として加熱炉1を備えており、該加熱炉1は、燃料ガス供給ライン1aが接続されている。加熱炉1には、燃焼後の排ガスを移送する排ガス移送ライン1bが接続されている。
水電解装置3は、風車4によって得られる電力で稼働して水素を生成し、該水素は、水素移送ライン3aで移送される。水素移送ライン3aは、前記燃料ガス供給ライン1aの中途に合流している。燃料ガス供給ライン1aは、水素移送ライン3aの合流地点の下流側でガス圧縮機10が介設され、加熱炉1の直前上流で水素分離器11を介して下流側の水素移送ライン3aが分岐している。
【0035】
水素分離器11の下流側の水素移送ライン3aは、水素吸蔵合金タンク12、流量調整器13が介設されて排ガス移送ライン1bに合流する。これらラインが合流した排ガス・水素混合移送ライン14aは、ガス圧縮機14が介設されて、下流端がDME合成反応器2に接続されている。なお、排ガス移送ライン1bには、上記合流位置の上流側で、熱交換器21が介設され、さらにCO濃度測定器15が設けられている。該CO濃度測定器15の測定結果は、制御部9に出力されている。制御部9では、CO濃度測定器15の測定結果に基づいて流量調整器13における水素流量を調整することができる。
【0036】
DME合成反応器2の反応物取り出し側には、反応物移送ライン2aが接続され、該反応物移送ライン2aは、熱交換器5を介してDME分離回収器6に接続されている。DME分離回収器6は、分離回収された液相のDMEなどを移送する分離反応物移送ライン6aとオフガス排出ライン6bとが接続されている。オフガス排出ライン6bには、圧力調整弁7が介設されている。
分離合成物移送ライン6aは、熱交換器5を介して、合成物供給ライン8aと、合成物改質ライン8dとに分岐している。合成物供給ライン8aは、加熱炉側合成物供給ライン8bと、反応器側合成物供給ライン8cに分岐し、加熱炉側合成物供給ライン8bは加熱炉1に接続され、反応器側合成物供給ライン8cは排ガス・水素混合移送ライン14aに接続されている。
合成物改質ライン8dは、流量調整器8を介してDME改質反応器19に接続されている。合成物供給ライン8a、合成物改質ライン8dでは、流量調整器8や、それぞれの流量を調整可能な分配弁(図示しない)などによって合成物の分配量、分配比を調整することができる。
また、加熱側合成物供給ライン8b、反応器側合成物供給ライン8cでは、それぞれの流量を調整可能な分配弁(図示しない)などによって合成物の分配比を調整することができる。
【0037】
DME改質反応器19には、水供給ライン18が接続されており、さらに改質した二酸化炭素および水素を取り出して移送する改質ガス移送ライン19aが接続されている。改質ガス移送ライン19aの他端側には、分離膜20が接続されており、該分離膜20の水素透過側に分離水素移送ライン20aが接続されており、該分離水素移送ライン20aは、他端側で水素ガス移送ライン3aに合流して分離水素を燃料ガス供給ライン1aに供給可能になっている。また、分離膜20の他の分離側には、分離二酸化炭素移送ライン20bが接続されており、該分離二酸化炭素移送ライン20bは、前記排ガス・水素混合移送ライン14aに合流しており、DME合成反応器2への二酸化炭素の供給が可能になっている。
【0038】
次に、この実施形態のシステムの動作について説明する。
燃料ガス供給ライン1aでは、燃料ガスとして天然ガスが供給される。
また、風車4で生成される電力によって水電解装置3で生成された水素は、水素移送ライン3aで移送されて燃料ガス供給ライン1aに合流する。
燃料ガス供給ライン1aで加熱炉1近傍まで輸送された水素は、水素分離器11で分離され、下流側の水素移送ライン3aに送られ、燃料ガスは、下流側の燃料ガス供給ライン1aに送られる。
【0039】
加熱炉1では、燃料ガス供給ライン1aによって燃料ガスが供給され、空気供給ライン1cから供給される燃焼用空気と混合されて燃焼する。加熱炉1で燃焼の結果生成される排ガスは、排ガス移送ライン1bで移送され、水素の混合がなされる。
排ガス移送ライン1aで移送される排ガスには、前記水素の混合前に、熱交換器21でガス圧縮機14を出たガスと熱交換させて、温度を一旦下げる。また、水素は熱交換器21通過後の排ガス中の過剰酸素を全てCOとした場合に必要な水素量を流量調整器13で調整して添加することで、排ガス・水素混合移送ライン14aにおける排ガス温度を下げる。ガス圧縮機14で圧縮された後のガスは、再度熱交換器21で熱交換し、製造したDMEの一部を反応器側合成物供給ライン8cによって供給して、燃料として過剰酸素で燃焼させ、所定のCO量としてDME合成反応器2でDMEを製造する。
排ガスは加熱炉1からの排熱とその後のDME等の反応物と酸素の燃焼熱により、反応に必要な温度(一般的には300℃〜400℃)以上になっている。
【0040】
水素分離器11で透過分離された水素は、水素移送ライン3aに介設した水素吸蔵合金タンク12に一旦貯留され、制御部9によって制御される流量調整器13によって所定量の水素は、前記排ガスと混合され、排ガス・水素混合移送ライン14aで移送されて、ガス圧縮機14で圧縮されてDME合成反応器2に導入される。
【0041】
DME合成反応器2内では高温の圧縮混合ガスが触媒下で合成反応する。上記合成反応によって、主としてDMEが生成され、その他に、メタノール、エタノールが一部に含まれた合成物が得られる。
合成物はDME合成反応器2から取り出され、合成物移送ライン2aを通して移送されて熱交換器5を授熱側として通過し、DME分離回収器6に至る。DME分離回収器6では、合成物が冷却されてDMEを主とする液相の合成物が得られ、分離されたオフガスはオフガスライン6bを通してDME分離回収器6から排出され、液相の合成物は、圧力調整弁7で取り出し量が調整されてDME分離回収器6から取り出され、分離合成物移送ライン6aを通して移送され、熱交換器5で受熱して気相化される。
【0042】
気相化された合成物は、流量調整器8と、それぞれの流量を調整可能な分配弁などによって、合成物供給ライン8aと、合成物改質ライン8dにおける合成物の分配量、分配比を調整することができる。
合成物供給ライン8aで移送され、分岐した加熱炉側合成物供給ライン8bによって分配された合成物が加熱炉1に供給され、同じく分岐した反応器側合成物供給ライン8cによって分配された合成物が排ガス・水素混合移送ライン14aの排ガスに混合される。この際の流量調整、分配比は、燃料ガス供給ライン1aにおける燃料の供給量や、排ガスの二酸化炭素濃度、水電解装置3における水素生成量などに従って調整することができる。
【0043】
また、合成物改質ライン8dを移送される合成物は、流量調整器8で流量が調整されてDME改質反応器19に導入される。また、DME改質反応器19には、水供給ライン18を通して水が供給される。該水供給ライン18では、水蒸気が供給されるものであってもよい。DME改質反応器19では、加熱炉1で発生する排熱によって合成物と水蒸気とが高温に加熱され、改質反応によって水素と二酸化炭素とが生成される。
これらの改質ガスは、DME改質反応器19から取り出され、改質ガス移送ライン19aで移送されて分離膜20に導入される。分離膜20では、水素が透過して分離され、分離水素移送ライン20aによって水素移送ライン3aに移送される。
一方、分離膜の他方の分離側では二酸化炭素が分離二酸化炭素移送ライン20bで移送され、排ガス・水素混合供給ライン14aに混合される。
上記により、DME合成反応器2に導入される水素、二酸化炭素の量を合成物の改質によって調整することができる。
【0044】
以上、本発明について、上記各実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態で説明した内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 加熱炉
1a 燃料ガス供給ライン
1b 排ガス移送ライン
2 DME合成反応器
3 水電解装置
3a 水素移送ライン
4 風車
8a 合成物供給ライン
19 DME改質反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備で生成される水素と、
燃焼設備で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素とを、前記水電解設備および前記燃焼設備からの移送ラインに連ねて、前記排ガスの排熱を利用して触媒存在下で反応させ、該反応によってジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を得ることを特徴とする排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項2】
前記排ガスは、主成分として、窒素65〜95体積%,二酸化炭素5〜35体積%を含むことを特徴とする請求項1記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項3】
前記排ガスは、温度が200℃〜500℃の低温工場排熱であることを特徴とする請求項1または2に記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項4】
前記水素は、前記燃焼設備に移送される燃料ガスに合流され、前記燃焼設備の上流側で前記燃料ガスから分離して移送されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項5】
前記燃焼設備で発生する排ガスは、前記燃焼設備の操業に従って成分濃度が変動するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項6】
前記燃焼設備で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度に応じて、前記反応に供する水素の量を調整することを特徴とする請求項5記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項7】
前記反応物の一部または全部を前記燃焼設備の燃料として使用することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項8】
前記反応物の一部を水蒸気改質し、得られた水素と二酸化炭素とを分離し、前記水素を前記反応前の水素に加え、前記二酸化炭素を前記反応前の二酸化炭素に加えることを可能にすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造方法。
【請求項9】
再生可能なエネルギによって稼働する水電解設備と、該水電解設備で生成された水素を移送する水素移送ラインと、
燃焼設備で発生する二酸化炭素を含む排ガスを移送する排ガス移送ラインと、
前記水素移送ラインおよび前記排ガス移送ラインが接続され、前記水素移送ラインから供給される前記水素と前記排ガス移送ラインから移送される前記排ガスとを触媒存在下で反応させてジメチルエーテル、メタノール、エタノールの1種以上の反応物を生成する反応器と、を備えることを特徴とする排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システム。
【請求項10】
前記燃焼設備に燃料ガスを供給する燃料ガス供給ラインを備え、前記水素移送ラインは、該燃料ガス供給ラインの一部で合流して、前記燃焼設備の上流側で該燃料ガス供給ラインから分岐しており、該分岐地点上流側に前記燃料ガスから水素を分離して分岐後の水素移送ラインに水素を導く水素分離器を備えることを特徴とする請求項9記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システム。
【請求項11】
前記反応器で生成された反応物の一部または全部を前記燃焼設備に供給する合成燃料供給ラインを備えることを特徴とする請求項9または10に記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システム。
【請求項12】
前記排ガス移送ラインで移送される排ガス中の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素測定手段と、前記水素移送ラインに介設され、前記二酸化炭素測定手段による測定結果に基づいて水素流量を調整する水素流量調整手段と、を備えることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システム。
【請求項13】
前記反応器で生成された前記反応物の一部と水蒸気とによって前記反応物の水蒸気改質を行う改質器と、該改質器で得られた改質物中から水素と二酸化炭素とをそれぞれ分離する分離器と、該分離器で分離された水素を前記燃焼設備に直接または間接的に供給する改質後水素移送ラインと、前記分離器で分離された二酸化炭素を前記反応器に直接または間接的に供給する改質後二酸化炭素移送ラインと、を備えることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の排熱・再生可能エネルギ利用反応物製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188360(P2012−188360A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51090(P2011−51090)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】