説明

掘削工具

【課題】掘削時の衝撃や係止ピンが挿抜方向に押し出されるような場合でも、係止ピンが移動しないように係止ピンを強固に固定することが可能な掘削工具を提供する。
【解決手段】取付孔部32を備えた工具本体20と取付部材40とを有する掘削工具10において、取付部材40には取付孔部32に挿入される取付軸部45が設けられ、取付軸部45の外周面に取付軸部45の延在方向に交差する凹溝46が形成され、工具本体40には、取付孔部32の延在方向に交差する方向に延びて一部が取付孔部32を貫通するピン孔33が形成され、ピン孔33には、取付孔部32に挿入された取付軸部45の凹溝46に係合する係止ピン56が挿入されており、ピン孔33の開口部には、剛性体からなり、係止ピン56の端面に当接して固定する固定部材50と、この固定部材50をピン孔33の延在方向に係止して固定する係止部37とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーの各種工事、各種さく井工事、あるいは各種基礎杭孔工事等において、地盤や土砂を掘削する際に用いられる掘削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地盤や土砂を掘削する掘削工具として、中心軸回りに回転されるデバイスと、前記中心軸から偏心した回転軸回りに回転自在とされたビットヘッドとを備え、前記デバイスが一方向に回転した際に、前記ビットヘッドが径方向外方に張り出し、かつ、前記デバイスが他方向に回転した際に、前記ビットヘッドが径方向内方に後退するように構成された、いわゆる拡径式の掘削工具が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
詳述すると、デバイスの先端面に開口して前記中心軸に平行に延びる取付孔部が、前記中心軸から偏心した位置に穿設されており、この取付孔部には、デバイスの外周面に開口して取付孔部の内周面の一部を貫通するピン孔が形成され、このピン孔に係止ピンが配設されている。
ビッドヘッドは、超硬合金等の硬質材料からなるチップが固定されたビット掘削部と、このビット掘削部に連設して前記取付孔部へと挿入される取付軸部とを備えており、取付軸部の外周面には、前記係止ピンと係合する凹溝が形成されている。
【0004】
ビットヘッドの取付軸部がデバイスの取付孔部に挿入されるとともに、デバイスの外周面からピン孔に係止ピンが挿入され、係止ピンと取付軸部の凹溝とが係合される。これにより、ビットヘッドは回転軸の先端側に抜け止めされる。また、ビッドヘッドは、凹溝の底面と係止ピンの外周面とが摺動することで、取付孔部(及び取付軸部)の軸線を回転軸として回動することが可能な構成とされている。
【0005】
このような掘削工具においては、掘削を行う場合には、デバイスを一方向(順方向)に回転させ、回転により生じるデバイス及びビットヘッドと被掘削物(山地や地盤等)又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッドを径方向外方に張り出し、掘削孔を形成する。そして、掘削孔の形成が終了したら、デバイスを他方向(逆方向)に回転させて被切削物又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッドを径方向内方に後退させ、掘削孔を通じて掘削工具を回収する。
【0006】
ここで、係止ピンが抜け落ちた場合には、ビットヘッドがデバイスから抜け落ちて掘削孔の内部に残存してしまい、掘削工事を中断したり、中止して再度掘削したりすることになる。したがって、係止ピンがデバイスから抜け落ちることがないように抜け止め手段を設ける必要がある。
このような係止ピンの抜け止め手段として、例えば特許文献2〜4に開示されているように、弾性部材を用いたものが提案されている。
【特許文献1】特開平05−065787号公報
【特許文献2】特開平06−074222号公報
【特許文献3】特開平08−295268号公報
【特許文献4】特開平08−295269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述の掘削工具に設けられた係止ピンに、特許文献2〜4に開示された抜け止め手段を採用した場合、掘削時の衝撃や反発によって係止ピンが弾性部材を押圧して弾性変形させてしまうため、係止ピンを強固に固定することができなくなるおそれがあった。また、ビットヘッドが回転軸回りに回転させられたときに、ビットヘッドの取付軸部と係止ピンとが接触していると、係止ピンが挿抜方向に押し出されてしまう問題があった。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、掘削時の衝撃や係止ピンが挿抜方向に押し出されるような場合でも、係止ピンが移動しないように係止ピンを強固に固定することが可能な掘削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の掘削工具は、掘削機械の先端側に装着され、取付孔部を備えた工具本体と、この工具本体に着脱可能に装着される取付部材と、を有する掘削工具において、前記取付部材には、前記取付孔部に挿入される取付軸部が設けられ、該取付軸部の外周面には、前記取付軸部の延在方向に交差する凹溝が形成され、前記工具本体には、前記取付孔部の延在方向に交差する方向に延びて一部が前記取付孔部を貫通するピン孔が形成され、該ピン孔には、前記取付孔部に挿入された取付軸部の前記凹溝に係合する係止ピンが挿入されており、前記ピン孔の開口部には、剛性体からなり、前記係止ピンの端面に当接して固定する固定部材と、この固定部材を前記ピン孔の延在方向に係止して固定する係止部とが設けられていることを特徴としている。
【0010】
この構成の掘削工具においては、工具本体に形成されたピン孔の開口部に、剛性体からなり、係止ピンの端面に当接して係止ピンを固定する固定部材が配設されているので、掘削時の衝撃等によって固定部材が大きく弾性変形することがなく、係止ピンを強固に固定することが可能となる。また、この固定部材を、ピン孔の延在方向(係止ピンの挿抜方向)に係止して固定する係止部が設けられているので、係止ピンが挿抜方向に向けて移動することが防止され、係止ピンの抜け落ちを確実に防止できる。
【0011】
ここで、前記工具本体に、前記固定部材と前記係止部との係合状態を維持する補助部材を配設してもよい。
この場合、補助部材によって固定部材と係止部との係合状態が維持されることになり、掘削時の衝撃等によって固定部材が係止部から外れてしまうことを防止でき、係止ピンの抜け落ちを確実に防止することができる。
【0012】
また、前記補助部材を弾性材で構成してもよい。
この場合、弾性材の弾性力を利用して固定部材と係止部との係合状態を維持させることが可能となり、固定部材の移動を防止できる。なお、弾性材で構成された補助部材には、係止ピンが直接接触することがないため、係止ピンからの押圧力によって補助部材が弾性変形することはなく、係止ピンを強固に固定することができる。
【0013】
さらに、前記工具本体に、前記固定部材がスライド移動されるスライド溝を形成し、該スライド溝の一端に前記ピン孔を開口させるとともに前記係止部を形成し、前記スライド溝の他端に前記固定部材の装入部を設けてもよい。
この場合、スライド溝の他端側に設けられた装入部から固定部材をスライド溝内に装入し、固定部材をスライド溝の一端側に向けて移動させることで、固定部材をピン孔の開口部に配設するとともに係止部によって係止して固定することができる。よって、簡単な操作で固定部材を配設して、係止ピンを強固に固定することが可能となる。
【0014】
また、前記工具本体を中心軸回りに回転されるデバイスとし、このデバイスの先端に開口するように前記取付孔部を形成し、前記取付部材を硬質材料からなるチップが固定されたビット掘削部を有するビットヘッドとし、前記ビット掘削部に前記取付軸部を連設し、該取付軸部の外周面に、前記取付軸部の延在方向に交差するとともに周方向に沿って延びる凹溝を形成し、前記デバイスを一方向に回転した際に前記ビットヘッドが前記回転軸回りに回転して外方に張り出し、かつ、前記デバイスを他方向に回転した際に前記ビットヘッドが前記回転軸回りに回転して前記ビットヘッドが内方に後退する構成としてもよい。
この場合、いわゆる拡径式の掘削工具において、ビットヘッドを係止する係止ピンを強固に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、掘削時の衝撃や係止ピンが挿抜方向に押し出されるような場合でも、係止ピンが移動しないように係止ピンを強固に固定することが可能な掘削工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の第1の実施形態である掘削工具について添付した図面を参照して説明する。
この掘削工具10は、図1に示すように、中心軸Oに沿って延びる概略多段円柱状をなすデバイス20と、このデバイス20の先端側(図1、図5において左側)に着脱可能に装着されたビットヘッド40と、デバイス20の外周側に嵌合されたケーシングトップ11と、ケーシングトップ11の後端側に接続されたケーシングパイプ13とを備えている。
【0017】
ケーシングトップ11は、概略円筒状をなしており、デバイス20の外周側に嵌合される構成とされており、デバイス20から打撃を受けて推進力を与えられるものである。ケーシングトップ11の後端側部分は、外径が一段小さくされており、ケーシングパイプ13の接続部12とされている。
ケーシングパイプ13は、円筒状をなし、その外径がケーシングトップ11と同一とされ、内径がケーシングトップ11の接続部12の外径と略同一とされている。このケーシングパイプ13は、ケーシングトップ11の接続部12に嵌合された状態で、先端部がケーシングトップ11に溶接されている。
【0018】
デバイス20は、先端側に位置するデバイス本体21と、デバイス本体21の後端側に連なり径方向外方に張り出した大径部22と、大径部22の後端側に連なり大きく径方向内方に後退した小径部23と、を有している。なお、デバイス本体21、大径部22及び小径部23は一体に成形されている。小径部23は、図示しない打撃力付与機構(エアハンマ)に接続されるとともに、図示しない回転駆動機構によって回転される構成とされている。このデバイス20は、中心軸O回りに回転されるとともに、中心軸O方向に打撃力を受けるものである。
大径部22の外径は、ケーシングパイプ13の内径と略同一とされている。また、デバイス本体21の外周側にケーシングトップ11が嵌合され、大径部22の先端面がケーシングトップ11の後端面に当接させられている。こうして、ケーシングトップ11は、大径部22を介して打撃を受けて推進力を与えられるように構成されている。
【0019】
また、デバイス20の内部には、中心線Oに沿って延びる流体供給路24が、小径部23の後端面に開口してデバイス本体21にまで達するように設けられている。この流体供給路24の先端部分には、中心線Oに直交する方向(径方向外方)に向けて延びる連絡路25が連設され、この連絡路25から中心線Oに平行に延びて後述する取付孔部32の底面に開口する連通孔26が形成されている。
さらに、流体供給路24の先端部分には、先端側に向かうにしたがい漸次径方向外方に向かう流体吐出孔27が連設されている。
【0020】
デバイス本体21の先端面には、後端側及び径方向内方に向けて凹む収容凹部30が設けられている。本実施形態では、先端面視して図2及び図3に示すように、2つの収容凹部30が中心軸Oに対して点対称となるように設けられている。これにより、デバイス本体21の先端面のうち、収容凹部30以外の部分は、先端面視して概略H字状をなし、先端側に向けて突出することになる。この概略H字状をなす部分には、超硬合金等の硬質材料で構成されたチップ15が複数植設されており、被掘削物を掘削するデバイス掘削部29とされている。
【0021】
詳述すると、デバイス掘削部29は、デバイス本体21の外周面に沿って延びる一対の外周掘削部29Aと、中心軸Oを通過するとともに一対の外周掘削部29Aを連絡する中央掘削部29Bとを備えている。中央掘削部29Bは、中心軸Oに直交するように延在し、5つのチップ15が、それぞれのチップ15の中心軸Oからの径方向距離が互いに異なるように配列されている。また、外周掘削部29Aは、径方向外方に向かうにしたがい漸次後端側へと後退するように僅かに中央掘削部29Bに対して傾斜しており、周方向に沿って6つのチップ15が配列されている。
【0022】
また、収容凹部30の先端側を向く底面のうち、回転方向R1前方側部分には、径方向外側に向かうにしたがい漸次後端側に向けて後退する傾斜面部31がそれぞれ形成されている。この傾斜面部31には、前述した流体吐出孔27が開口させられている。また、この傾斜面部31の径方向外方端に連なるデバイス20の側面には、図1から図3に示すように、径方向内方に向けて一段凹むとともに中心軸Oに平行に延びる切欠溝28が形成されている。
【0023】
収容凹部30の先端側を向く底面のうち、回転方向R1後方側には、図2及び図3に示すように中心軸Oから偏心するとともに中心軸Oに対して点対称となり、かつ、図1に示すように中心軸Oと平行に延びる2つの回転軸P1、P2に沿ってそれぞれ延びる2つの取付孔部32が形成されている。
【0024】
そして、デバイス本体21には、中心軸O及び回転軸P1、P2に直交する方向に延びて、2つの取付孔部32に貫通するピン孔33が形成されている。このピン孔33は、中心軸Oに直交する断面において図4に示すように、中心軸Oを通過するとともに、2つの取付孔部32の内周面の一部を貫通するように設けられている。つまり、このピン孔33は、デバイス20の径方向に延びるように構成されているのである。
【0025】
ピン孔33の一端側(図1及び図5において下側)部分は、一段小径とされている。また、ピン孔33の他端側(図1及び図5において上側)の開口部には、図1及び図5に示すように、ピン孔33の延在方向に直交する方向に延びる(中心軸Oに平行に延びる)スライド溝34が形成されている。
スライド溝34の中心軸O方向後端側には、図5及び図6に示すように、デバイス本体21の外周面に開口して断面円形をなす装入凹部35が形成されている。装入凹部35は、底部と内周面との間にリング状溝36が形成されている。
【0026】
また、装入凹部35の中心軸O方向先端側には、装入凹部35の直径よりも小さな幅で延びる係止溝部37が設けられている。本実施形態では、図6に示すように、係止溝部37は装入凹部35に向けて開口したU字状をなしている。
そして、スライド溝34の中心軸O先端側に、ピン孔33の開口部が配設されている。
【0027】
次に、ビットヘッド40について説明する。
ビットヘッド40は、図1から図3に示すように、超硬合金等の硬質材料で構成されたチップ15が複数植設されたビット掘削部41と、このビット掘削部41の後端側に向けて延びる概略円柱状をなす取付軸部45とを備えている。
ビット掘削部41は、取付軸部45の先端側に連設され、取付軸部45の軸線に対して直交する方向に延在する平面部42と、この平面部42に連なるテーパ部43と、テーパ部43よりも一段後端側に後退した段部44と、を備えている。なお、本実施形態では、図2及び図3に示すように、平面部42に3つのチップ15が植設され、テーパ部43に2つのチップ15が植設され、段部44に3つのチップ15が一列に植設されている。
【0028】
取付軸部45は、デバイス20の先端面に開口した取付孔部32に嵌入される構成とされており、取付軸部45の軸線が回転軸P1、P2とそれぞれ一致することになる。この取付軸部45には、軸線(回転軸P1、P2)に対して直交するとともに取付軸部45の周面に沿った凹溝46が形成されている。本実施形態では、図2から図4に示すように、凹溝46は、取付軸部45の外周面の一部に形成され、取付軸部45の軸線(回転軸P1、P2)方向から見て概略L字状をなしている。なお、この凹溝46は、取付軸部45の軸線(回転軸P1、P2)方向から見てビット掘削部41のテーパ部43及び段部44が設けられた側とは反対側に形成されている。
【0029】
次に、スライド溝34に配設される固定部材50と、補助部材53について説明する。
固定部材50は、図7及び図8に示すように、フランジ部51を備えた円板状をなしている。この固定部材50は、容易に弾性変形することがないように鋼材等の剛性体から構成されている。フランジ部51の外径は、スライド溝34の装入凹部35の直径よりも小さく、かつ、係止溝部37の溝幅よりも大きく設定されている。
補助部材53は、図9及び図10に示すように、概略円板状をなし、合成ゴム等の弾性部材で構成されている。補助部材53の一端は、テーパ状に形成されるとともに径方向外方へと突出した爪部54が形成されている。
【0030】
次に、ビットヘッド40とデバイス20との連結方法について、図11、図12を参照にして説明する。
まず、デバイス20の先端面に開口した取付孔部32に、ビットヘッド40の取付軸部45を挿入する。このとき、取付孔部32の一部を貫通したピン孔33部分と取付軸部45の外周面に形成された凹溝46とが対向するように、ビットヘッド40を配置する。
【0031】
この状態で、スライド溝34に開口されたピン孔33に、円柱状をなす係止ピン56を挿入する(図11(a)、図12(b))。すると、係止ピン56は、中心軸Oと直交して2つの取付孔部32に貫通するように配置される。
スライド溝34の装入凹部35から、固定部材50をフランジ部51が径方向内方に向くようにして、スライド溝34内へと装入し、係止溝部37へとスライド移動させる(図11(b)、図12(c))。こうして、係止ピン56の端面に固定部材50が当接されるとともに、フランジ部51が係止溝部37によってピン孔33の延在方向に係合し、固定部材50が固定される。
【0032】
そして、装入凹部35に、弾性変形可能な補助部材53が圧入される(図11(c)(d)、図12(d))。このとき、補助部材53に設けられた爪部54が装入凹部35の内周面に形成されたリング状溝36に係合して補助部材53が固定される。また、補助部材53の外周面が固定部材50の外周面を押圧することになり、固定部材50がスライド溝34内を移動することが防止される。
【0033】
このようにして、デバイス20とビットヘッド40とが連結される。ビットヘッド40は、取付軸部45の外周面に形成された凹溝46が、係止ピン56によって係止されることで回転軸P1、P2方向先端側には、抜け止めされる。
【0034】
このように構成された掘削工具10においては、デバイス20を回転駆動手段によって、図2及び図3に示す回転方向R1へと回転させることで、被掘削物又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッド40が回転軸P1、P2回りに回転して、ビットヘッド40のテーパ部43及び段部44が径方向外方へと突出される。
一方、デバイス20を回転駆動手段によって、図2及び図3に示す回転方向R2へと回転させることで、被掘削物又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッド40が回転軸P1、P2回りに回転して、ビットヘッド40がデバイス20の先端面に形成された収容凹部30へと収容される。
【0035】
この掘削工具10は、掘削機械(図示なし)に備えられた打撃装置によって駆動され、掘削工具10に回転力、打撃力及び推力が伝達され、掘削工具10の先端に形成されたデバイス掘削部29及びビットヘッド40によって岩盤等の被掘削物を破壊して掘削するものである。この掘削作業においては、流体供給路24からエア等の流体が吐出され、被掘削物を破壊して生成された掘削屑を切欠溝28を介して掘削工具10の後端側へと排出する。
【0036】
掘削時には、デバイス20を回転方向R1に回転させることで、ビットヘッド40を径方向外方へと突出させて径の大きな掘削孔を形成するとともに、ケーシングトップ11に推力を与えてケーシングパイプ13を埋設していく。
掘削孔の形成が終了したら、デバイス20を回転方向R2に回転させることで、ビットヘッド40を収容凹部30内へと収容し、掘削工具10をケーシングパイプ13の内径よりも小さくする。この状態で掘削工具10を引き抜くことで、埋設したケーシングパイプ13の内部を通じて掘削工具10を回収する。
【0037】
本実施形態である掘削工具10においては、デバイス20とビットヘッド40とを係止する係止ピン56が挿入されるピン孔33の開口部に、鋼材等の剛性体からなる固定部材50が配設され、この固定部材50が係止ピン56の端面に当接されているので、掘削時の衝撃等によって固定部材50が大きく弾性変形することがなく、係止ピン56を強固に固定することが可能となる。また、この固定部材50を、ピン孔33の延在方向(係止ピン56の挿入方向)に係止して固定する係止溝部37が設けられているので、係止ピン56がピン孔33の延在方向(係止ピン56の挿入方向)に向けて移動することが防止され、係止ピン56の抜け落ちを確実に防止できる。
【0038】
さらに、固定部材50と係止溝部37との係合状態を維持する補助部材53が配設されているので、掘削時の衝撃等によって固定部材50が係止溝部37から外れてしまうことを防止でき、係止ピン56の抜け落ちを確実に防止することができる。また、補助部材53が弾性材で構成されているので、弾性材の弾性力を利用して固定部材50と係止溝部37との係合状態を維持させることが可能となり、固定部材50の位置ずれを防止できる。なお、弾性材で構成された補助部材53には、係止ピン56が直接接触することがないため、係止ピン56からの押圧力によって補助部材53が弾性変形することはなく、係止ピン56を強固に固定することができる。
【0039】
また、デバイス20の外周面に、固定部材50がスライド移動されるスライド溝34が形成され、スライド溝34の後端側に固定部材50をスライド溝34内部に装入するための装入凹部35が形成され、この装入凹部35の先端側に係止溝部37が形成されているので、装入凹部35から固定部材50をスライド溝34内に装入し、固定部材50をスライド移動させることで、固定部材50をピン孔33の開口部に配設するとともに係止溝部37によって係止して固定することができる。よって、簡単な操作で固定部材50を配設して、係止ピン56を強固に固定することができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施形態である掘削工具について説明する。図13から図15に、本発明の第2の実施形態である掘削工具を示す。
この第2の実施形態である掘削工具110においては、デバイス120の先端に3つのビットヘッド140が着脱可能に装着されている。
【0041】
デバイス本体121の先端面には、先端面視して図14及び図15に示すように、3つの収容凹部130が中心軸Oに対して点対称に形成されている。
また、収容凹部130の先端側を向く底面のうち、回転方向R1前方側部分には、径方向外方に向かうにしたがい漸次後端側に向けて後退する傾斜面部131がそれぞれ形成されている。この傾斜面部131には、前述した流体吐出孔127が開口させられている。この傾斜面部131の径方向外方端に連なるデバイス120の側面には、径方向内方に向けて一段凹むとともに中心軸Oに平行に延びる切欠溝128が形成されている。
さらに、本実施形態では、流体供給孔124が後述する取付孔部132の底面よりも先端側にまで延びるように形成されており、この流体供給孔124に連設され、傾斜面部131に開口する流体吐出孔127が設けられている。
【0042】
収容凹部130の先端側を向く底面のうち、回転方向R1後方側には、図14及び図15に示すように中心軸Oから偏心するとともに中心軸Oに対して点対称となり、かつ、図13に示すように中心軸Oと平行に延びる3つの回転軸P1、P2、P3に沿ってそれぞれ延びる3つの取付孔部132が形成されている。
【0043】
そして、これらの取付孔部132には、それぞれ回転軸P1、P2、P3に直交する方向に延びて取付孔部132に貫通するピン孔133がぞれぞれに形成されている。なお、このピン孔133は、デバイス120の径方向に延びるように構成されている。
これらピン孔133の開口部には、ピン孔133の延在方向に直交する方向に延びる(中心軸Oに平行に延びる)スライド溝134がそれぞれ形成されている。つまり、3つのスライド溝134が形成されているのである。
【0044】
取付孔部132に装着されるビットヘッド140は、図13から図15に示すように、超硬合金等の硬質材料で構成されたチップ115が複数植設されたビット掘削部141と、このビット掘削部141の後端側に向けて延びる概略円柱状をなす取付軸部145とを備えている。
取付軸部145は、デバイス120の先端面に開口した取付孔部132に嵌入される構成とされており、取付軸部145の軸線が回転軸P1、P2、P3とそれぞれ一致することになる。この取付軸部145には、軸線(回転軸P1、P2、P3)に対して直交するとともに取付軸部145の周面に沿った凹溝146が形成されている。
【0045】
デバイス120の先端面に開口した3つの取付孔部132に、それぞれビットヘッド140の取付軸部145が挿入され、スライド溝134にそれぞれ開口された3つのピン孔133に、円柱状をなす3つの係止ピン156がそれぞれ挿入される。
スライド溝134の装入凹部135から、固定部材150を、フランジ部151が径方向内方に向くようにしてスライド溝134内へと装入し、係止溝部137へとスライド移動させ、係止ピン156の端面に固定部材150を当接させるとともに、フランジ部151を係止溝部137に係合させる。
そして、装入凹部135に、弾性変形可能な補助部材153を圧入し、固定部材150がスライド溝134内を移動しないように固定する。
【0046】
このように構成された掘削工具110においては、デバイス120を回転駆動手段によって、図14及び図15に示す回転方向R1へと回転させることで、被掘削物又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッド140が回転軸P1、P2、P3回りに回転して、ビット掘削部141が径方向外方へと突出される。
一方、デバイス120を回転駆動手段によって、図14及び図15に示す回転方向R2へと回転させることで、被掘削物又はケーシングトップとの摩擦力によってビットヘッド140が回転軸P1、P2、P3回りに回転して、ビット掘削部141がデバイス120の先端面に形成された収容凹部130へと収容される。
【0047】
このような構成とされた本実施形態である掘削工具110においては、3つのビットヘッド140を備えており、例えば大径の掘削孔を掘削する場合でも、径方向外方部分でのチップ115の数を確保して効率的に掘削を行うことができる。
また、流体供給孔127がデバイス本体121の先端側にまで延びるように形成されているので、エア等の流体を確実に掘削孔の内部へと吐出することで掘削屑の排出を促進してスムーズに掘削作業を進めることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態である掘削工具について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
デバイス掘削部及びビット掘削部に植設されるチップの個数や配置には、特に制限はなく、掘削条件等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0049】
また、弾性材で構成された補助部材を装入凹部に圧入するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の構成の補助部材を用いても良い。例えば、図16及び図17に示すように、スライド溝234に設けられた装入凹部235に、固定部材250のフランジ部251に当接するように当接部材257を装入するとともに、この当接部材257をいわゆるスナップリング258で固定したものであってもよい。つまり、当接部材257とスナップリング258とで補助部材253を構成してもよい。
また、例えば図18及び図19に示すように、スライド溝334に、スライド方向に交差する方向に延びる貫通孔339を設け、この貫通孔339に固定部材350のフランジ部351に当接するスプリングピン(補助部材)353を挿入してもよい。
【0050】
さらに、デバイスの先端面にチップを植設してデバイス掘削部を設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図20及び図21、図22及び図23に示すように、チップ415、515をすべてビットヘッド440、540に植設したものであってもよい。
【0051】
また、本実施形態では、工具本体をデバイスとし、取付部材をビットヘッドとしたもので説明したが、これに限定されることはなく、例えば、図24〜図26に示すように、工具本体660の中心軸Oに沿って延びる取付孔部661に、取付部材としてパイロットビット670を着脱可能に装着し、工具本体660とパイロットビット670との固定に係止ピン656及び固定部材650を利用してもよい。さらに、工具本体660の後端側に向けて開口する取付孔部662を設け、この取付孔部662に装着する取付部材としてアダプタ680を着脱可能に装着し、工具本体660とアダプタ680との固定に係止ピン662及び固定部材650を利用してもよい。
また、取付軸部及び取付孔部は、断面円形に限らず、図25に示すような正六角形等の断面多角形でもよく、係止ピンがこの多角形の辺に沿って取り付けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図2】図1に示す掘削工具の拡径状態を示す正面図である。
【図3】図1に示す掘削工具の縮径状態を示す正面図である。
【図4】図1におけるX−X断面図である。
【図5】図4におけるY−Y断面図である。
【図6】図5におけるZ方向矢視図である。
【図7】図1に示す掘削工具に備えられた固定部材の上面図である。
【図8】図7に示す固定部材の側面断面図である。
【図9】図1に示す掘削工具に備えられた補助部材の上面図である。
【図10】図9に示す補助部材の側面断面図である。
【図11】図1に示す掘削工具における係止ピンの固定方法を示す説明図である。
【図12】図1に示す掘削工具における係止ピンの固定方法を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図14】図13に示す掘削工具の拡径状態を示す正面図である。
【図15】図13に示す掘削工具の縮径状態を示す正面図である。
【図16】補助部材の他の例を示す説明図である。
【図17】図16におけるZ方向矢視図である。
【図18】補助部材の他の例を示す説明図である。
【図19】図18におけるZ方向矢視図である。
【図20】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図21】図20に示す掘削工具の拡径状態を示す正面図である。
【図22】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図23】図22に示す掘削工具の拡径状態を示す正面図である。
【図24】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図25】図24におけるA−A断面図である。
【図26】図24におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10、110、410、510、610 掘削工具
20、120 デバイス(工具本体)
32、132、432、532、661、662 取付孔部
33、133 ピン孔
34、134、234、334 スライド溝
35、135、235 装入凹部(装入部)
37、137 係止溝部(係止部)
40、140、440、540、640 ビットヘッド(取付部材)
41、141 ビット掘削部
45、145 取付軸部
46、146 凹溝
50、150、250、350、450、550、650 固定部材
53、153、253、353 補助部材
56、156、456、556、656 係止ピン
660 工具本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機械の先端側に装着され、取付孔部を備えた工具本体と、この工具本体に着脱可能に装着される取付部材と、を有する掘削工具において、
前記取付部材には、前記取付孔部に挿入される取付軸部が設けられ、該取付軸部の外周面には、前記取付軸部の延在方向に交差する凹溝が形成され、
前記工具本体には、前記取付孔部の延在方向に交差する方向に延びて一部が前記取付孔部を貫通するピン孔が形成され、該ピン孔には、前記取付孔部に挿入された取付軸部の前記凹溝に係合する係止ピンが挿入されており、
前記ピン孔の開口部には、剛性体からなり、前記係止ピンの端面に当接して固定する固定部材と、この固定部材を前記ピン孔の延在方向に係止して固定する係止部とが設けられていることを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
前記工具本体には、前記固定部材と前記係止部との係合状態を維持する補助部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
【請求項3】
前記補助部材が弾性材で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の掘削工具。
【請求項4】
前記工具本体には、前記固定部材がスライド移動されるスライド溝が形成され、該スライド溝の一端に前記ピン孔が開口されるとともに前記係止部が形成され、前記スライド溝の他端に前記固定部材の装入部が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の掘削工具。
【請求項5】
前記工具本体が中心軸回りに回転されるデバイスとされ、このデバイスの先端に開口するように前記取付孔部が形成され、
前記取付部材が、硬質材料からなるチップが固定されたビット掘削部を有するビットヘッドとされ、前記ビット掘削部に前記取付軸部が連設され、該取付軸部の外周面には、前記取付軸部の延在方向に交差するとともに周方向に沿って延びる凹溝が形成され、
前記デバイスが一方向に回転した際に前記ビットヘッドが前記回転軸回りに回転して外方に張り出し、かつ、前記デバイスが他方向に回転した際に前記ビットヘッドが前記回転軸回りに回転して前記ビットヘッドが内方に後退する構成とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の掘削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−41186(P2009−41186A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204174(P2007−204174)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】