掘削装置
【課題】縮拡径可能な掘削翼の採用を前提とした上で、比較的簡単な構造で且つ少ない工数で任意の掘削径での掘削に対応できるようにした掘削装置を提供する。
【解決手段】ドリルケーシング2の一部を構成することになる掘削翼用チューブアタッチメント12の周囲に、固定翼15aと可動翼15bとからなる複数の掘削翼15をブラケット19を介して装着する。掘削翼15は可動翼15bを拡縮径用シリンダ25にてスライドさせることでその拡縮径が可能であり、掘削径に変更に対応可能である。同時に、掘削翼15の脱着を行って、ブラケット19側および固定翼15a側の取付孔20,22の組み合わせを変更することでも掘削径の変更に対応可能である。
【解決手段】ドリルケーシング2の一部を構成することになる掘削翼用チューブアタッチメント12の周囲に、固定翼15aと可動翼15bとからなる複数の掘削翼15をブラケット19を介して装着する。掘削翼15は可動翼15bを拡縮径用シリンダ25にてスライドさせることでその拡縮径が可能であり、掘削径に変更に対応可能である。同時に、掘削翼15の脱着を行って、ブラケット19側および固定翼15a側の取付孔20,22の組み合わせを変更することでも掘削径の変更に対応可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削装置に関し、特にPCウェルもしくはケーソン等のいわゆる井筒の圧入沈設による立坑の構築に際して、井筒の刃先下を拡底もしくは拡径するような形態で掘削するのに好適な掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の拡径掘削のための掘削装置として縮拡径可能な掘削翼を用いたものが例えば特許第3031876号公報以外に特許文献1,2で知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、ケーシングパイプに装着された可変伸縮掘削翼を固定翼翼と可動翼とをもって構成し、可動翼の変位量を例えばカムや油圧をもって連続的に制御することにより、いわゆる楕円掘削や段付き穴形状の掘削が可能となっている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、掘削翼を一次掘削用の固定翼と二次掘削用のために旋回動作に基づく縮拡径可能な可動翼とをもって構成し、一次掘削の際には可動翼を縮径状態として固定翼にて比較的小径の掘削を行う一方、二次掘削の際には可動翼を拡径状態とした上で一次掘削済み領域を拡径するようにして掘削することを基本としている。
【特許文献1】特開2000−8780号公報
【特許文献2】特開2004−176530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の技術では、円形以外の任意の形状の孔の掘削を行える点でその汎用性に優れるものの、可変伸縮掘削翼を構成している固定翼に対する可動翼の変位量の制御はカムの使用を前提としたいわゆる倣い制御の方式となっているため、構造が複雑でコストアップが余儀なくされる。
【0006】
また、後者の技術では、ドリルケーシングに対して掘削翼が着脱可能であるが故に、その掘削翼を交換することで掘削径の異なる掘削にも対応できるものの、掘削径のサイズに応じた複数種類の掘削翼を予め用意しておく必要があり、したがって上記と同様にコストアップが余儀なくされることとなって好ましくない。その上、掘削翼の脱着の際には可動翼を旋回させるための油圧シリンダまでも脱着する必要があり、作業工数が増加して脱着作業が繁雑なものとなる。
【0007】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、縮拡径可能な掘削翼の採用を前提とした上で、比較的簡単な構造で且つ少ない工数で任意の掘削径での掘削に対応できるようにした掘削装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、外周に掘削翼を装着したチューブ状のドリルケーシングを掘削翼とともに回転させながら地盤を掘削する装置であることを前提として、固定翼と可動翼とで形成され、この可動翼を固定翼に沿ってスライド変位させることで拡縮径が可能な掘削翼と、固定翼に対して可動翼をスライド変位させる直動型のアクチュエータとを備えていて、上記ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で調整可能となっていることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、請求項2に記載のように、上記可動翼は固定翼に重なるように配置してあるとともに、上記アクチュエータは固定翼と可動翼とにまたがるように架橋的に配置してあるものとし、より望ましくは請求項3に記載のように、上記固定翼はドリルケーシングに対して着脱可能であって、その取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっているものとする。
【0010】
また、掘削の回転時に土砂あるいは岩盤等からアクチュエータを保護するためには、請求項4,5に記載のように、上記掘削翼のうちそれ自体の回転方向とは反対側の面に直動型のアクチュエータを配置するとともに、上記掘削翼は、直動型のアクチュエータの収縮状態をもって拡径状態となるように設定するものとする。
【0011】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、固定翼に対する可動翼の位置を変更することで掘削翼の縮拡径に基づく掘削径の変更が可能であることはもちろんのこと、ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置を可動翼のスライド方向で調整することでも掘削径の変更が可能であり、実質的に一組の掘削翼をもって小径から大径までの任意の大きさの掘削径を掘削することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,2に記載の発明によれば、一組の掘削翼だけで任意の掘削径のもとでの掘削に対応可能であり、多くの掘削翼を用意しておく必要もないので、設備コストの低減が図れる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっていることから、掘削径の調整を容易に行える。
【0014】
また、請求項4に記載の発明によれば、実質的に掘削翼の背面側に縮拡径のためのアクチュエータを配置してあることにより、掘削中の土砂あるいは岩盤等から機能上重要なアクチュエータを保護することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、アクチュエータの収縮状態をもって掘削翼が拡径状態となるように設定してあることにより、掘削中の土砂あるいは岩盤等から上記同様に機能上重要なピストンロッドを保護することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、掘削翼以外に先行掘削翼を付設したことにより、掘削効率が向上し、例えば硬質地盤でも容易に掘削でき利点がある。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、掘削翼以外に内部掘削翼を付設したことにより、ドリルケーシングの内側での掘削効率が向上する。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、スタビライザを付設したことにより、特に井筒沈設工法に際して掘削孔の鉛直度ひいては掘削孔と井筒との同心精度を高めることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1以下の図面は本発明のより具体的な実施の形態を示し、特に図1,2に示すように、孔の掘削と並行して立坑の躯体となるPCウェルもしくはケーソン等の井筒を継ぎ足しながら所定量ずつ圧入沈設する場合の例を示している。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態のシステムでは、大別してパイプまたはチューブ状のドリルケーシング(以下、単に「ケーシング」という)2を回転しながらこれを地中に徐々に圧入して立坑(掘削孔)Hを掘削する全旋回式オールケーシング掘削機(以下、単に「掘削機」という)1と、その掘削された掘削孔H内に井筒としてのケーソン3を順次圧入沈設する圧入沈設手段としての圧入沈設装置4と、図示外のクローラクレーン等により吊り下げ支持されていて、掘削機1による掘削に伴って発生した土砂を外部に排土するハンマーグラブ5等をもって構成してある。なお、6は上記掘削機1のための油圧パワーユニットである。
【0021】
圧入沈設装置4は、地面Gに立設された枠状の架台7内に加圧板8を昇降駆動させるための油圧式のパワージャッキ9を備えており、加圧板7が当接することになる最上段のケーソン3をもってそれ以下の全てのケーソン3,3…を一斉に圧入沈設する機能を有している。
【0022】
圧入沈設装置4の架台7の上には掘削機1の掘削駆動手段として機能する回転圧入駆動部10を搭載してある。この回転圧入駆動部10は、周知のように圧入沈設装置4や回転圧入駆動部10の中心部を貫通するように配置されたチューブ状のケーシング2を把持した上でこれを鉛直軸周りに回転駆動しながら地中に圧入する機能を有している。
【0023】
図2,3および図4は上記ケーシング2の要部の詳細を示しており、ケーシング2の先端部には、上段から順にケーシング2とほぼ同径のスタビライザ用チューブアタッチメント11、掘削翼用チューブアタッチメント12およびファーストチューブアタッチメント13を図示外のボルト・ナット等にて順次着脱可能に直列にて連結してあり、これらの各チューブアタッチメント11,12,13はケーシング2の一部を形成している。そして、図5にも示すように、スタビライザ用チューブアタッチメント11の外周には最も下段のケーソン3に内接することになるスタビライザ14を放射状に配置してある。また、掘削翼用チューブアタッチメント12には後述するように固定翼15aと可動翼15bとからなる縮拡径可能な複数の掘削翼15を螺旋状の先行掘削翼16とともに装着してある。さらに、ファーストチューブアタッチメント13にはその先端側に図12に示すように複数の掘削刃(ビット)17を装着してあるほか、図7に示すようにその内周側には内部掘削翼18を放射状に配置してある。
【0024】
上記掘削翼用チューブアタッチメント12は、図6に示すように、円筒外周面の三等分位置に後述する掘削翼15の着座面19aを有する偏平ボックス状のブラケット19を固定してある。このブラケット19は着座面19aが掘削翼用チューブアタッチメント12の接線方向と平行となるように設定してあり、その着座面19aには多数の取付穴20を規則性をもって形成してある。また、掘削翼用チューブアタッチメント12の円筒外周面のうちブラケット19よりも下方位置には、隣り合うブラケット19,19同士の間に位置する螺旋状の先行掘削翼16を着脱可能に装着してある。
【0025】
一方、図8,9に示すように、掘削翼15は平板状の固定翼15aとこれよりの小さな平板状の可動翼15bとをスライド可能に重ね合わせることで形成してあり、その固定翼15aには先に述べた掘削翼用チューブアタッチメント12側のブラケット19と同様に多数の取付穴22を規則性をもって形成してある。そして、同図から明らかなように、固定翼15aをブラケット19の着座面19aに着座させつつブラケット19側と固定翼15a側のそれぞれ複数の取付穴20,22同士を合致させた上で、ボルト・ナット29により掘削翼15をブラケット19に対して着脱可能に固定してある。つまり、掘削翼15は、平面視にてケーシング2の接線方向もしくはそれと平行な方向に大きく張り出すようにブラケット19に着脱可能に固定してある。
【0026】
ここで、上記のようにブラケット19および固定翼15aに形成してある多数の取付穴20,22はその全てが同時使用されるものではなく、掘削翼15の長手方向において取付穴20,22同士の合致位置を変えることにより、図8,9に示すように掘削翼用チューブアタッチメント12の中心から可動翼15bの先端までの距離a、すなわち掘削翼15の回転半径を適宜段階的に調整可能となっている。
【0027】
掘削翼15は、図8,9のほか図10,11に示すように、その回転方向を時計回り方向とした場合に、固定翼15aの回転方向側の面に可動翼15bを重ね合わせるように配置してあり、可動翼15bは固定翼15aに沿って動くように該固定翼15aに設けた翼ガイド23にスライド可能に案内支持させてある。また、回転方向に向かって固定翼15aの背面側すなわち固定翼15aの反回転方向側の面にはブラケット24を介して直動型のアクチュエータとして拡縮径用シリンダ(油圧シリンダ)25を装着してある。この拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26は同じく固定翼15aの反回転方向側に位置するスライダ27の一端に連結してあるととともに、さらにスライダ27の他端は固定翼15aをはさんで反対側の可動翼15bに連結してあり、結果として拡縮径用シリンダ25は固定翼15aと可動翼15bにまたがるように架橋的に配置してある。したがって、拡縮径用シリンダ25を伸縮作動させることによりその拡縮径用シリンダ25のストローク分だけ可動翼15bが固定翼15aに対してスライドし、結果としてケーシング2の接線方向もしくはそれと平行な方向で掘削翼15が縮拡径可能な構造となっている。
【0028】
なお、掘削翼15を形成している固定翼15aおよび可動翼15bの下端には、複数の掘削刃(ビット)30を装着してある。
【0029】
ここで、拡縮径用シリンダ25を固定翼15aの反回転方向側の面に装着してあるのは、掘削時に掘削翼15が向かっていくことになる土砂や岩盤等から拡縮径用シリンダ25を保護するためである。また、図9と図13を比較すると明らかなように、可動翼15bの拡径スライド方向に対して拡縮径用シリンダ25の伸長方向を逆向きとなるように設定し、もって拡縮径用シリンダ25の収縮状態において掘削翼15が拡径状態となり、逆に拡縮径用シリンダ25の伸長状態において掘削翼15が縮径状態となるように設定してある。
【0030】
また、図8,10に示すように、掘削翼用チューブアタッチメント12のうち隣り合うブラケット19,19同士の間には、先行掘削翼16の真上に開口するようにそれぞれに窓部28を開口形成してある。これよって、掘削翼15が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらずその掘削翼15にて掘削した土砂を窓部28を通してケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部に取り込むようになっている。また、螺旋状の先行掘削翼16は、例えばサイズ違いのものとの交換が可能なように、円周方向で複数のピースに分割された上で、図7に示すように掘削翼用チューブアタッチメント12側に予め溶接固定されたブラケット21に対してボルト・ナット22にて着脱可能に固定してある。
【0031】
なお、掘削時のケーシング2の回転方向を例えば時計周り方向とした場合に、先行掘削翼16にはその時計回り方向の回転をもって積極的に地盤に食い込むような捻れ角を持たせてある。
【0032】
図12は図3に示したファーストチューブアタッチメント13の詳細を示しており、その内周面には内部掘削翼31を放射状に配置してある。そして、先に述べたようにケーシング2の回転方向を時計回り方向とした場合に、ファーストチューブアタッチメント13の回転に伴って内部掘削翼31が積極的に地盤に食い込むように、内部掘削翼31を回転方向にに向けて所定角度だけ傾斜させてある。なお、内部掘削翼31にはファーストチューブアタッチメント13の先端部と同様の掘削刃(ビット)32を装着してある。
【0033】
したがって、本実施の形態のシステムでは、図1,2に示すように、ケーシング2を時計周り方向に回転駆動させながら所定の掘削推力(掘進力)を付与して、複数の掘削翼15にてケーソン3の刃先下(最下段のケーソン3の刃口3aの下側)を拡径気味に掘削しながらそのケーソン3を徐々に圧入沈設することになる。なお、ケーソン3の圧入沈設の進行に伴いケーソン3自体の上段側への継ぎ足しとともに、ケーシング2も所定のチューブアタッチメントの継ぎ足しが行われる。
【0034】
すなわち、図2では各掘削翼15が図4,9に拡大して示すような拡径状態にあることから、ケーシング2を時計周り方向に回転駆動させながら所定の掘削推力(掘進力)を付与すると、ケーシング32最下端のファーストチューブアタッチメント13が先行して地盤に食い込み、その口径に相当する土砂を周囲の土砂から切り取り、そのファーストチューブアタッチメント13の内部に取り込まれた土砂を内部掘削翼31が掘削しつつ砕土化する。その一方、ケーシング2の外側では拡径状態にある各掘削翼15が大きな口径のもとで地盤を掘削し、掘削された土砂が窓部28からケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部に取り込まれることになる。
【0035】
なお、掘削翼15が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらず、拡縮径用シリンダ25の油圧供給系路をいわゆる油圧的にロックすることで、その拡径もしくは縮径状態が自己保持される。
【0036】
ここで、各掘削翼15による掘削の際には、それに先行して螺旋状の先行掘削翼16が地盤に食い込むことで掘削効率が向上し、また窓部28の直下に上記先行掘削翼16が位置していることでケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部への掘削土砂の取り込み効率が向上することになる。
【0037】
そして、このような掘削の進行と並行して、例えば図1に示したバケット系掘削機であるハンマーグラブ5によってケーシング2内の土砂が排土される。また、掘削中は図5に示すようにスタビライザ14がケーソン3に内接しながらケーシング2とともに回転していることから、ケーソン3とケーシング2の径方向での相対位置関係はそのスタビライザ14によって保たれ、掘削中の掘削孔Hとケーシング2およびケーソン3それぞれの同心精度は高精度に保たれることになる。
【0038】
ここで、図14の(A)は図4を拡大した図であり、先に述べたように掘削翼15を図9のように拡径状態とした場合の掘削径(掘削孔Hの径)D1を示しており、これに対して図13のように掘削翼15を縮径状態とした場合には、図14の(B)のように同図(A)よりも小径の掘削径(掘削孔Hの径)D3での掘削が可能となる。
【0039】
一方、図15は図9および図14の(A)と同様に各掘削翼15を拡径状態とすることを前提として、掘削翼用チューブアタッチメント12側のブラケット19に対する掘削翼15の取付位置を変更した場合を示している。つまり、図15では、ブラケット19に対する掘削翼15の取付位置を図14の(A)に比べ所定量Cだけ後退させている(ただし、この所定量Cは拡縮径用シリンダ25のストロークよりも小さい)。この取付位置の調整は、先に図6,8に基づいて説明したようにブラケット19側および固定翼15a側の取付穴20,22同士の組み合わせを変えることで行う。その結果として、図15に示すように、図14の(A)の掘削径D1と同図(B)の掘削径D3との中間の掘削径D2(D1>D2>D3)のもとでの掘削が可能となる。
【0040】
このような掘削径の調整量は、図6,8に示した取付穴20,22のピッチとその数に依存し、先に述べたようにブラケット19側および固定翼15a側の取付穴20,22同士の組み合わせを変えることで段階的に調整することが可能となる。
【0041】
もちろん、図14の(B)のような掘削翼15の縮径状態で、図15と同様に所定量Cだけその取付位置を後退させればD3よりのさらに小さな掘削径での掘削も可能となる。
【0042】
また、図16,17は逆に上記のように掘削翼15を脱着することなくその掘削径を変更する場合の例を示している。
【0043】
図16では、図13と比較すると明らかなように、スペーサ33を併用することで拡縮径用シリンダ25のストロークを調整し、もって拡径時の掘削翼15による掘削径を図14の(A)のものより小さくしている。なお、図17から明らかなように縮径時にはスペーサ33が何ら機能しないために縮径状態での掘削径は図14の(B)のものと変わりはない。
【0044】
より詳しくは、拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26に着脱可能なスペーサ33を装着することで、図16では拡径状態の掘削翼15による掘削径が図14の(A)のものより小さくなっている。そして、サイズの異なる複数のスペーサ33を予め用意しておいてそれらを適宜交換することにより、このスペーサ方式によっても掘削翼15による掘削径を段階的に調整することが可能となる。
【0045】
より望ましくは、上記の取付穴20,22の組み合わせによる掘削翼15の取付位置の調整と上記スペーサ交換方式とを併用することにより、掘削可能な最大掘削径と最小掘削径との差をより大きく確保しながら、掘削径をより微細に且つ多段階に調整することが可能となる。なお、本発明者が実験を行ったところ、ケーシング2の径の2倍以上の掘削径、掘削面積としてケーシング2のみの場合の4倍以上でも掘削が可能であることが判明した。
【0046】
このように本実施の形態によれば、各掘削翼15を縮径もしくは拡径させたり、あるいはブラケット19に対する掘削翼15の脱着をもってその取付位置を積極的に変更することにより、その掘削径を調整することが可能であり、一台の掘削装置をもって実質的に任意の掘削径のもとでの掘削が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態として掘削装置全体の構成を示す概略説明図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】図2の要部分解説明図。
【図4】図3における掘削翼用チューブアタッチメントの平面図。
【図5】図3におけるスタビライザ用チューブアタッチメントの平面図。
【図6】図3における掘削翼用チューブアタッチメント単体での詳細を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図7】図6のおける先行掘削翼の取付状態を示す要部拡大断面図。
【図8】図3における掘削翼の拡大説明図。
【図9】図8の要部平面図。
【図10】図8の左側面図。
【図11】図8に示す掘削翼の背面図。
【図12】図3におけるファーストチューブアタッチメントの詳細を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図13】図9の掘削翼を縮径状態とした図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図14】掘削翼による掘削径の説明図で、(A)は掘削翼を図4,9のような拡径状態としたときの掘削径を示す平面図、(B)は掘削翼を図13のように縮径状態としたときの掘削径を示す平面図。
【図15】図14の(A)の拡径状態のままでケーシングに対する掘削翼の取付位置を変更した場合の掘削径を示す平面図。
【図16】本発明の第2の実施の形態としてスペーサを併用したときの掘削翼の拡径状態を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図17】図16の状態から縮径状態としたときの図で、(A)は平面図、(B)は正面図。
【符号の説明】
【0048】
1…全旋回式オールケーシング掘削機
2…ドリルケーシング
3…ケーソン(井筒)
4…圧入沈設装置
11…スタビライザ用チューブアタッチメント
12…掘削翼用チューブアタッチメント
13…ファーストチューブアタッチメント
14…スタビライザ
15…掘削翼
15a…固定翼
15b…可動翼
16…先行掘削翼
20…取付穴
22…取付穴
25…拡縮径用シリンダ(直動型のアクチュエータ)
29…ボルト・ナット
31…内部掘削翼
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削装置に関し、特にPCウェルもしくはケーソン等のいわゆる井筒の圧入沈設による立坑の構築に際して、井筒の刃先下を拡底もしくは拡径するような形態で掘削するのに好適な掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の拡径掘削のための掘削装置として縮拡径可能な掘削翼を用いたものが例えば特許第3031876号公報以外に特許文献1,2で知られている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、ケーシングパイプに装着された可変伸縮掘削翼を固定翼翼と可動翼とをもって構成し、可動翼の変位量を例えばカムや油圧をもって連続的に制御することにより、いわゆる楕円掘削や段付き穴形状の掘削が可能となっている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、掘削翼を一次掘削用の固定翼と二次掘削用のために旋回動作に基づく縮拡径可能な可動翼とをもって構成し、一次掘削の際には可動翼を縮径状態として固定翼にて比較的小径の掘削を行う一方、二次掘削の際には可動翼を拡径状態とした上で一次掘削済み領域を拡径するようにして掘削することを基本としている。
【特許文献1】特開2000−8780号公報
【特許文献2】特開2004−176530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者の技術では、円形以外の任意の形状の孔の掘削を行える点でその汎用性に優れるものの、可変伸縮掘削翼を構成している固定翼に対する可動翼の変位量の制御はカムの使用を前提としたいわゆる倣い制御の方式となっているため、構造が複雑でコストアップが余儀なくされる。
【0006】
また、後者の技術では、ドリルケーシングに対して掘削翼が着脱可能であるが故に、その掘削翼を交換することで掘削径の異なる掘削にも対応できるものの、掘削径のサイズに応じた複数種類の掘削翼を予め用意しておく必要があり、したがって上記と同様にコストアップが余儀なくされることとなって好ましくない。その上、掘削翼の脱着の際には可動翼を旋回させるための油圧シリンダまでも脱着する必要があり、作業工数が増加して脱着作業が繁雑なものとなる。
【0007】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、縮拡径可能な掘削翼の採用を前提とした上で、比較的簡単な構造で且つ少ない工数で任意の掘削径での掘削に対応できるようにした掘削装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、外周に掘削翼を装着したチューブ状のドリルケーシングを掘削翼とともに回転させながら地盤を掘削する装置であることを前提として、固定翼と可動翼とで形成され、この可動翼を固定翼に沿ってスライド変位させることで拡縮径が可能な掘削翼と、固定翼に対して可動翼をスライド変位させる直動型のアクチュエータとを備えていて、上記ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で調整可能となっていることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、請求項2に記載のように、上記可動翼は固定翼に重なるように配置してあるとともに、上記アクチュエータは固定翼と可動翼とにまたがるように架橋的に配置してあるものとし、より望ましくは請求項3に記載のように、上記固定翼はドリルケーシングに対して着脱可能であって、その取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっているものとする。
【0010】
また、掘削の回転時に土砂あるいは岩盤等からアクチュエータを保護するためには、請求項4,5に記載のように、上記掘削翼のうちそれ自体の回転方向とは反対側の面に直動型のアクチュエータを配置するとともに、上記掘削翼は、直動型のアクチュエータの収縮状態をもって拡径状態となるように設定するものとする。
【0011】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、固定翼に対する可動翼の位置を変更することで掘削翼の縮拡径に基づく掘削径の変更が可能であることはもちろんのこと、ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置を可動翼のスライド方向で調整することでも掘削径の変更が可能であり、実質的に一組の掘削翼をもって小径から大径までの任意の大きさの掘削径を掘削することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,2に記載の発明によれば、一組の掘削翼だけで任意の掘削径のもとでの掘削に対応可能であり、多くの掘削翼を用意しておく必要もないので、設備コストの低減が図れる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっていることから、掘削径の調整を容易に行える。
【0014】
また、請求項4に記載の発明によれば、実質的に掘削翼の背面側に縮拡径のためのアクチュエータを配置してあることにより、掘削中の土砂あるいは岩盤等から機能上重要なアクチュエータを保護することができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、アクチュエータの収縮状態をもって掘削翼が拡径状態となるように設定してあることにより、掘削中の土砂あるいは岩盤等から上記同様に機能上重要なピストンロッドを保護することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、掘削翼以外に先行掘削翼を付設したことにより、掘削効率が向上し、例えば硬質地盤でも容易に掘削でき利点がある。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、掘削翼以外に内部掘削翼を付設したことにより、ドリルケーシングの内側での掘削効率が向上する。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、スタビライザを付設したことにより、特に井筒沈設工法に際して掘削孔の鉛直度ひいては掘削孔と井筒との同心精度を高めることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1以下の図面は本発明のより具体的な実施の形態を示し、特に図1,2に示すように、孔の掘削と並行して立坑の躯体となるPCウェルもしくはケーソン等の井筒を継ぎ足しながら所定量ずつ圧入沈設する場合の例を示している。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態のシステムでは、大別してパイプまたはチューブ状のドリルケーシング(以下、単に「ケーシング」という)2を回転しながらこれを地中に徐々に圧入して立坑(掘削孔)Hを掘削する全旋回式オールケーシング掘削機(以下、単に「掘削機」という)1と、その掘削された掘削孔H内に井筒としてのケーソン3を順次圧入沈設する圧入沈設手段としての圧入沈設装置4と、図示外のクローラクレーン等により吊り下げ支持されていて、掘削機1による掘削に伴って発生した土砂を外部に排土するハンマーグラブ5等をもって構成してある。なお、6は上記掘削機1のための油圧パワーユニットである。
【0021】
圧入沈設装置4は、地面Gに立設された枠状の架台7内に加圧板8を昇降駆動させるための油圧式のパワージャッキ9を備えており、加圧板7が当接することになる最上段のケーソン3をもってそれ以下の全てのケーソン3,3…を一斉に圧入沈設する機能を有している。
【0022】
圧入沈設装置4の架台7の上には掘削機1の掘削駆動手段として機能する回転圧入駆動部10を搭載してある。この回転圧入駆動部10は、周知のように圧入沈設装置4や回転圧入駆動部10の中心部を貫通するように配置されたチューブ状のケーシング2を把持した上でこれを鉛直軸周りに回転駆動しながら地中に圧入する機能を有している。
【0023】
図2,3および図4は上記ケーシング2の要部の詳細を示しており、ケーシング2の先端部には、上段から順にケーシング2とほぼ同径のスタビライザ用チューブアタッチメント11、掘削翼用チューブアタッチメント12およびファーストチューブアタッチメント13を図示外のボルト・ナット等にて順次着脱可能に直列にて連結してあり、これらの各チューブアタッチメント11,12,13はケーシング2の一部を形成している。そして、図5にも示すように、スタビライザ用チューブアタッチメント11の外周には最も下段のケーソン3に内接することになるスタビライザ14を放射状に配置してある。また、掘削翼用チューブアタッチメント12には後述するように固定翼15aと可動翼15bとからなる縮拡径可能な複数の掘削翼15を螺旋状の先行掘削翼16とともに装着してある。さらに、ファーストチューブアタッチメント13にはその先端側に図12に示すように複数の掘削刃(ビット)17を装着してあるほか、図7に示すようにその内周側には内部掘削翼18を放射状に配置してある。
【0024】
上記掘削翼用チューブアタッチメント12は、図6に示すように、円筒外周面の三等分位置に後述する掘削翼15の着座面19aを有する偏平ボックス状のブラケット19を固定してある。このブラケット19は着座面19aが掘削翼用チューブアタッチメント12の接線方向と平行となるように設定してあり、その着座面19aには多数の取付穴20を規則性をもって形成してある。また、掘削翼用チューブアタッチメント12の円筒外周面のうちブラケット19よりも下方位置には、隣り合うブラケット19,19同士の間に位置する螺旋状の先行掘削翼16を着脱可能に装着してある。
【0025】
一方、図8,9に示すように、掘削翼15は平板状の固定翼15aとこれよりの小さな平板状の可動翼15bとをスライド可能に重ね合わせることで形成してあり、その固定翼15aには先に述べた掘削翼用チューブアタッチメント12側のブラケット19と同様に多数の取付穴22を規則性をもって形成してある。そして、同図から明らかなように、固定翼15aをブラケット19の着座面19aに着座させつつブラケット19側と固定翼15a側のそれぞれ複数の取付穴20,22同士を合致させた上で、ボルト・ナット29により掘削翼15をブラケット19に対して着脱可能に固定してある。つまり、掘削翼15は、平面視にてケーシング2の接線方向もしくはそれと平行な方向に大きく張り出すようにブラケット19に着脱可能に固定してある。
【0026】
ここで、上記のようにブラケット19および固定翼15aに形成してある多数の取付穴20,22はその全てが同時使用されるものではなく、掘削翼15の長手方向において取付穴20,22同士の合致位置を変えることにより、図8,9に示すように掘削翼用チューブアタッチメント12の中心から可動翼15bの先端までの距離a、すなわち掘削翼15の回転半径を適宜段階的に調整可能となっている。
【0027】
掘削翼15は、図8,9のほか図10,11に示すように、その回転方向を時計回り方向とした場合に、固定翼15aの回転方向側の面に可動翼15bを重ね合わせるように配置してあり、可動翼15bは固定翼15aに沿って動くように該固定翼15aに設けた翼ガイド23にスライド可能に案内支持させてある。また、回転方向に向かって固定翼15aの背面側すなわち固定翼15aの反回転方向側の面にはブラケット24を介して直動型のアクチュエータとして拡縮径用シリンダ(油圧シリンダ)25を装着してある。この拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26は同じく固定翼15aの反回転方向側に位置するスライダ27の一端に連結してあるととともに、さらにスライダ27の他端は固定翼15aをはさんで反対側の可動翼15bに連結してあり、結果として拡縮径用シリンダ25は固定翼15aと可動翼15bにまたがるように架橋的に配置してある。したがって、拡縮径用シリンダ25を伸縮作動させることによりその拡縮径用シリンダ25のストローク分だけ可動翼15bが固定翼15aに対してスライドし、結果としてケーシング2の接線方向もしくはそれと平行な方向で掘削翼15が縮拡径可能な構造となっている。
【0028】
なお、掘削翼15を形成している固定翼15aおよび可動翼15bの下端には、複数の掘削刃(ビット)30を装着してある。
【0029】
ここで、拡縮径用シリンダ25を固定翼15aの反回転方向側の面に装着してあるのは、掘削時に掘削翼15が向かっていくことになる土砂や岩盤等から拡縮径用シリンダ25を保護するためである。また、図9と図13を比較すると明らかなように、可動翼15bの拡径スライド方向に対して拡縮径用シリンダ25の伸長方向を逆向きとなるように設定し、もって拡縮径用シリンダ25の収縮状態において掘削翼15が拡径状態となり、逆に拡縮径用シリンダ25の伸長状態において掘削翼15が縮径状態となるように設定してある。
【0030】
また、図8,10に示すように、掘削翼用チューブアタッチメント12のうち隣り合うブラケット19,19同士の間には、先行掘削翼16の真上に開口するようにそれぞれに窓部28を開口形成してある。これよって、掘削翼15が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらずその掘削翼15にて掘削した土砂を窓部28を通してケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部に取り込むようになっている。また、螺旋状の先行掘削翼16は、例えばサイズ違いのものとの交換が可能なように、円周方向で複数のピースに分割された上で、図7に示すように掘削翼用チューブアタッチメント12側に予め溶接固定されたブラケット21に対してボルト・ナット22にて着脱可能に固定してある。
【0031】
なお、掘削時のケーシング2の回転方向を例えば時計周り方向とした場合に、先行掘削翼16にはその時計回り方向の回転をもって積極的に地盤に食い込むような捻れ角を持たせてある。
【0032】
図12は図3に示したファーストチューブアタッチメント13の詳細を示しており、その内周面には内部掘削翼31を放射状に配置してある。そして、先に述べたようにケーシング2の回転方向を時計回り方向とした場合に、ファーストチューブアタッチメント13の回転に伴って内部掘削翼31が積極的に地盤に食い込むように、内部掘削翼31を回転方向にに向けて所定角度だけ傾斜させてある。なお、内部掘削翼31にはファーストチューブアタッチメント13の先端部と同様の掘削刃(ビット)32を装着してある。
【0033】
したがって、本実施の形態のシステムでは、図1,2に示すように、ケーシング2を時計周り方向に回転駆動させながら所定の掘削推力(掘進力)を付与して、複数の掘削翼15にてケーソン3の刃先下(最下段のケーソン3の刃口3aの下側)を拡径気味に掘削しながらそのケーソン3を徐々に圧入沈設することになる。なお、ケーソン3の圧入沈設の進行に伴いケーソン3自体の上段側への継ぎ足しとともに、ケーシング2も所定のチューブアタッチメントの継ぎ足しが行われる。
【0034】
すなわち、図2では各掘削翼15が図4,9に拡大して示すような拡径状態にあることから、ケーシング2を時計周り方向に回転駆動させながら所定の掘削推力(掘進力)を付与すると、ケーシング32最下端のファーストチューブアタッチメント13が先行して地盤に食い込み、その口径に相当する土砂を周囲の土砂から切り取り、そのファーストチューブアタッチメント13の内部に取り込まれた土砂を内部掘削翼31が掘削しつつ砕土化する。その一方、ケーシング2の外側では拡径状態にある各掘削翼15が大きな口径のもとで地盤を掘削し、掘削された土砂が窓部28からケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部に取り込まれることになる。
【0035】
なお、掘削翼15が拡径状態にあるか縮径状態にあるかにかかわらず、拡縮径用シリンダ25の油圧供給系路をいわゆる油圧的にロックすることで、その拡径もしくは縮径状態が自己保持される。
【0036】
ここで、各掘削翼15による掘削の際には、それに先行して螺旋状の先行掘削翼16が地盤に食い込むことで掘削効率が向上し、また窓部28の直下に上記先行掘削翼16が位置していることでケーシング2(掘削翼用チューブアタッチメント12)の内部への掘削土砂の取り込み効率が向上することになる。
【0037】
そして、このような掘削の進行と並行して、例えば図1に示したバケット系掘削機であるハンマーグラブ5によってケーシング2内の土砂が排土される。また、掘削中は図5に示すようにスタビライザ14がケーソン3に内接しながらケーシング2とともに回転していることから、ケーソン3とケーシング2の径方向での相対位置関係はそのスタビライザ14によって保たれ、掘削中の掘削孔Hとケーシング2およびケーソン3それぞれの同心精度は高精度に保たれることになる。
【0038】
ここで、図14の(A)は図4を拡大した図であり、先に述べたように掘削翼15を図9のように拡径状態とした場合の掘削径(掘削孔Hの径)D1を示しており、これに対して図13のように掘削翼15を縮径状態とした場合には、図14の(B)のように同図(A)よりも小径の掘削径(掘削孔Hの径)D3での掘削が可能となる。
【0039】
一方、図15は図9および図14の(A)と同様に各掘削翼15を拡径状態とすることを前提として、掘削翼用チューブアタッチメント12側のブラケット19に対する掘削翼15の取付位置を変更した場合を示している。つまり、図15では、ブラケット19に対する掘削翼15の取付位置を図14の(A)に比べ所定量Cだけ後退させている(ただし、この所定量Cは拡縮径用シリンダ25のストロークよりも小さい)。この取付位置の調整は、先に図6,8に基づいて説明したようにブラケット19側および固定翼15a側の取付穴20,22同士の組み合わせを変えることで行う。その結果として、図15に示すように、図14の(A)の掘削径D1と同図(B)の掘削径D3との中間の掘削径D2(D1>D2>D3)のもとでの掘削が可能となる。
【0040】
このような掘削径の調整量は、図6,8に示した取付穴20,22のピッチとその数に依存し、先に述べたようにブラケット19側および固定翼15a側の取付穴20,22同士の組み合わせを変えることで段階的に調整することが可能となる。
【0041】
もちろん、図14の(B)のような掘削翼15の縮径状態で、図15と同様に所定量Cだけその取付位置を後退させればD3よりのさらに小さな掘削径での掘削も可能となる。
【0042】
また、図16,17は逆に上記のように掘削翼15を脱着することなくその掘削径を変更する場合の例を示している。
【0043】
図16では、図13と比較すると明らかなように、スペーサ33を併用することで拡縮径用シリンダ25のストロークを調整し、もって拡径時の掘削翼15による掘削径を図14の(A)のものより小さくしている。なお、図17から明らかなように縮径時にはスペーサ33が何ら機能しないために縮径状態での掘削径は図14の(B)のものと変わりはない。
【0044】
より詳しくは、拡縮径用シリンダ25のピストンロッド26に着脱可能なスペーサ33を装着することで、図16では拡径状態の掘削翼15による掘削径が図14の(A)のものより小さくなっている。そして、サイズの異なる複数のスペーサ33を予め用意しておいてそれらを適宜交換することにより、このスペーサ方式によっても掘削翼15による掘削径を段階的に調整することが可能となる。
【0045】
より望ましくは、上記の取付穴20,22の組み合わせによる掘削翼15の取付位置の調整と上記スペーサ交換方式とを併用することにより、掘削可能な最大掘削径と最小掘削径との差をより大きく確保しながら、掘削径をより微細に且つ多段階に調整することが可能となる。なお、本発明者が実験を行ったところ、ケーシング2の径の2倍以上の掘削径、掘削面積としてケーシング2のみの場合の4倍以上でも掘削が可能であることが判明した。
【0046】
このように本実施の形態によれば、各掘削翼15を縮径もしくは拡径させたり、あるいはブラケット19に対する掘削翼15の脱着をもってその取付位置を積極的に変更することにより、その掘削径を調整することが可能であり、一台の掘削装置をもって実質的に任意の掘削径のもとでの掘削が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態として掘削装置全体の構成を示す概略説明図。
【図2】図1の要部拡大図。
【図3】図2の要部分解説明図。
【図4】図3における掘削翼用チューブアタッチメントの平面図。
【図5】図3におけるスタビライザ用チューブアタッチメントの平面図。
【図6】図3における掘削翼用チューブアタッチメント単体での詳細を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図7】図6のおける先行掘削翼の取付状態を示す要部拡大断面図。
【図8】図3における掘削翼の拡大説明図。
【図9】図8の要部平面図。
【図10】図8の左側面図。
【図11】図8に示す掘削翼の背面図。
【図12】図3におけるファーストチューブアタッチメントの詳細を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図13】図9の掘削翼を縮径状態とした図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図14】掘削翼による掘削径の説明図で、(A)は掘削翼を図4,9のような拡径状態としたときの掘削径を示す平面図、(B)は掘削翼を図13のように縮径状態としたときの掘削径を示す平面図。
【図15】図14の(A)の拡径状態のままでケーシングに対する掘削翼の取付位置を変更した場合の掘削径を示す平面図。
【図16】本発明の第2の実施の形態としてスペーサを併用したときの掘削翼の拡径状態を示す図で、(A)はその平面図、(B)は正面図。
【図17】図16の状態から縮径状態としたときの図で、(A)は平面図、(B)は正面図。
【符号の説明】
【0048】
1…全旋回式オールケーシング掘削機
2…ドリルケーシング
3…ケーソン(井筒)
4…圧入沈設装置
11…スタビライザ用チューブアタッチメント
12…掘削翼用チューブアタッチメント
13…ファーストチューブアタッチメント
14…スタビライザ
15…掘削翼
15a…固定翼
15b…可動翼
16…先行掘削翼
20…取付穴
22…取付穴
25…拡縮径用シリンダ(直動型のアクチュエータ)
29…ボルト・ナット
31…内部掘削翼
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に掘削翼を装着したチューブ状のドリルケーシングを掘削翼とともに回転させながら地盤を掘削する装置であって、
固定翼と可動翼とで形成され、この可動翼を固定翼に沿ってスライド変位させることで拡縮径が可能な掘削翼と、
固定翼に対して可動翼をスライド変位させる直動型のアクチュエータと、
を備えていて、
上記ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で調整可能となっていることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
上記可動翼は固定翼に重なるように配置してあるとともに、
上記アクチュエータは固定翼と可動翼とにまたがるように架橋的に配置してあることを特徴とする請求項1に掘削装置。
【請求項3】
上記固定翼はドリルケーシングに対して着脱可能であって、その取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の掘削装置。
【請求項4】
上記掘削翼のうちそれ自体の回転方向とは反対側の面に直動型のアクチュエータを配置してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項5】
上記掘削翼は、直動型のアクチュエータの収縮状態をもって拡径状態となるように設定してあることを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
上記掘削翼をドリルケーシングの接線方向に沿わせるかもしくは接線方向と平行に且つドリルケーシングの円周の等分位置に複数配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項7】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼装着位置よりも下方位置に螺旋状の先行掘削翼を装着したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項8】
上記先行掘削翼を着脱可能としたことを特徴とする請求項7に記載の掘削装置。
【請求項9】
上記ドリルケーシングの内周側であって且つ掘削翼装着位置よりも下方位置に内部掘削翼を装着したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項10】
井筒沈設工法に際して井筒の刃先下を掘削する装置であって、
上記ドリルケーシングのうち掘削翼装着位置よりも上方位置に、井筒の内周面に接触するスタビライザを装着したことを特徴とする請求項9に記載の掘削装置。
【請求項11】
上記ドリルケーシングのうち少なくとも掘削翼が装着された部分がチューブアタッチメントとして分割されていて、この掘削翼が装着されたチューブアタッチメントをドリルケーシングに対して着脱可能に連結したことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項12】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼が装着された部分と内部掘削翼が装着された部分がそれぞれに独立したチューブアタッチメントとして分割されていて、これらの複数のチューブアタッチメントとドリルケーシングをそれぞれ直列に着脱可能に連結したことを特徴とする請求項9に記載の掘削装置。
【請求項13】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼が装着された部分と内部掘削翼が装着された部分およびスタビライザが装着された部分がそれぞれに独立したチューブアタッチメントとして分割されていて、これらの複数のチューブアタッチメントとドリルケーシングをそれぞれ直列に着脱可能に連結したことを特徴とする請求項10に記載の掘削装置。
【請求項1】
外周に掘削翼を装着したチューブ状のドリルケーシングを掘削翼とともに回転させながら地盤を掘削する装置であって、
固定翼と可動翼とで形成され、この可動翼を固定翼に沿ってスライド変位させることで拡縮径が可能な掘削翼と、
固定翼に対して可動翼をスライド変位させる直動型のアクチュエータと、
を備えていて、
上記ドリルケーシングに対する固定翼の取付位置が可動翼のスライド方向で調整可能となっていることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
上記可動翼は固定翼に重なるように配置してあるとともに、
上記アクチュエータは固定翼と可動翼とにまたがるように架橋的に配置してあることを特徴とする請求項1に掘削装置。
【請求項3】
上記固定翼はドリルケーシングに対して着脱可能であって、その取付位置が可動翼のスライド方向で段階的に調整可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の掘削装置。
【請求項4】
上記掘削翼のうちそれ自体の回転方向とは反対側の面に直動型のアクチュエータを配置してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項5】
上記掘削翼は、直動型のアクチュエータの収縮状態をもって拡径状態となるように設定してあることを特徴とする請求項4に記載の掘削装置。
【請求項6】
上記掘削翼をドリルケーシングの接線方向に沿わせるかもしくは接線方向と平行に且つドリルケーシングの円周の等分位置に複数配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項7】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼装着位置よりも下方位置に螺旋状の先行掘削翼を装着したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項8】
上記先行掘削翼を着脱可能としたことを特徴とする請求項7に記載の掘削装置。
【請求項9】
上記ドリルケーシングの内周側であって且つ掘削翼装着位置よりも下方位置に内部掘削翼を装着したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項10】
井筒沈設工法に際して井筒の刃先下を掘削する装置であって、
上記ドリルケーシングのうち掘削翼装着位置よりも上方位置に、井筒の内周面に接触するスタビライザを装着したことを特徴とする請求項9に記載の掘削装置。
【請求項11】
上記ドリルケーシングのうち少なくとも掘削翼が装着された部分がチューブアタッチメントとして分割されていて、この掘削翼が装着されたチューブアタッチメントをドリルケーシングに対して着脱可能に連結したことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項12】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼が装着された部分と内部掘削翼が装着された部分がそれぞれに独立したチューブアタッチメントとして分割されていて、これらの複数のチューブアタッチメントとドリルケーシングをそれぞれ直列に着脱可能に連結したことを特徴とする請求項9に記載の掘削装置。
【請求項13】
上記ドリルケーシングのうち掘削翼が装着された部分と内部掘削翼が装着された部分およびスタビライザが装着された部分がそれぞれに独立したチューブアタッチメントとして分割されていて、これらの複数のチューブアタッチメントとドリルケーシングをそれぞれ直列に着脱可能に連結したことを特徴とする請求項10に記載の掘削装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−249917(P2006−249917A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29119(P2006−29119)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000140694)株式会社加藤建設 (50)
【Fターム(参考)】
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