説明

掘削装置

【課題】ボーリングビットの装着作業の簡素化及びドリリングロッドの継ぎ足し作業を効率よく安全に行うことができる土木掘削装置を提供する。
【解決手段】回転テーブルの回転部にボーリングビットが挿通できる大きさの穴を開け,その穴を塞ぐように,着脱自在に回転テーブルと嵌合するスライディングキャップを装着する。回転テーブルの回転トルクをそのスライディングキャップを介してドリリングロッドに伝達し,その先端に連結するボーリングビットを回転して掘削作業を行う。また,スライディングキャップに駒部を設けて,ドリリングロッドの継ぎ足し作業時に,ドリリングロッド側に設けた駒受けの下に差し入れることで,ドリリングロッドを回転テーブルに対して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,回転テーブルが,角状ロッドより大きい穴部を有する掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許3833624号公報には,ドリルパイプを有する掘削装置が開示されている。また,特開2005−97853号公報には,掘削装置が開示されている。
【0003】
特開2005−97853号公報に開示された掘削装置は,先端ビットの幅が回転テーブルの穴より大きい。そのため,この掘削装置を用いて掘削を行う場合,いったん人力により穴を掘って先端ビットを埋めて,その後先端ビットとつながるロッドに回転テーブルを通していた。このため,掘削当初は人力にて穴を掘らなければならないという問題があった。先端ビットが大きくなるにつれ,この問題は大きな問題となった。
【0004】
また,特開2005−97853号公報に開示された掘削装置では,いったんウォータースイベルを上方に移動させ,角状ロッドを取り付ける。この際,先端ビッドやそれに連結された部分の自重により先端ビットが下方に進んでしまうという問題がある。先端ビットや角状ロッドが重くなるについて,この問題は大きな問題となった。そこで,角状ロッドに水平方向に貫通する穴を設け,この穴に棒を通し,先端ビットが下方に進む事態を防止することが考えられる。しかし,このように貫通穴に棒を通す場合は,指を挟んでしまい,人身事故につながるという問題がある。
【0005】
また,いちいちウォータースイベルを移動させると,ウォータースイベルの位置を調整するのが煩わしいという問題がある。
【0006】
さらに,掘削中,先端ビットが硬い物体に衝突した場合,急激な反動が角状ロッドを介してウォータースイベルに伝わり,ウォータースイベルが外れるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特許第3833624号公報
【特許文献2】特開2005−97853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで,本発明は,先端ビットと角状ロッドを用いる掘削装置において,掘削当初より,先端ビットを用いて掘削できる掘削装置を提供することを目的とする。
【0009】
また,本発明は,新たな角状ロッドを連結する際に,先端ビット(及び既に先端ビットと連結された角状ロッド)が下方に進んでしまう事態を安全かつ効果的に防止できる掘削装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに,本発明は,新たな角状ロッドを連結する際に,ウォータースイベルをリーダー部に固定し続けることができる掘削装置を提供することを目的とする。
【0011】
さらに,本発明は,掘削中に硬い物体にぶつかっても,その反動を吸収できる掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は,基本的には,回転テーブルに設けられた穴を角状ロッドのサイズではなく,先端ビット(ガイド付きウイングビット)を通すことができるサイズとする。そして,ガイド付きウイングビットにスライディングキャップを搭載する。そして,スライディングキャップは,回転テーブルに設けられた穴を通過できず,回転テーブル上に収容されるようにする。そして,スライディングキャップには,回転テーブルに設けられた穴と同心の角状の穴を設ける。そして,この角状の穴に角状ロッドを通し,ガイド付きウイングビットと接続する。回転テーブルの回転は,ガイド付きウイングビットを介して,角状ロッドに伝わる。そして,角状ロッドの回転は,その先端に位置するガイド付きウイングビットに伝わる。このようにすることで,掘削当初から,ガイド付きウイングビットを用いて掘削を進めることができるため,人力にて穴を掘る必要がなくなる。
【0013】
具体的に説明すると,この掘削装置は,ガイド付きウイングビットに角状ロッドを連結させ,前記ガイド付きウイングビット及び角状ロッドを回転させつつ掘削を行う掘削装置に関する。
【0014】
そして,ガイド付きウイングビットは,回転軸と,回転軸の下方先端に設けられ,下方に進むにつれて先細となるウィングと,回転軸を取り囲むビットガイドと,ガイド付きウイングビットの後方部分に設けられ角状ロッドと連結するためのジョイント機構とを有する。このガイド付きウイングビットは,出願人が先に特許出願したものに開示されているため,公知である。よって,ガイド付きウイングビットとして公知のものを適宜用いることができる。
【0015】
本発明において,角状ロッドは,ガイド付きウイングビットのジョイント機構と連結するための連結部を有する。この角状ロッドや,角状ロッドとガイド付きウイングビットとを連結するための機構は,出願人が先に特許出願したものに開示されているため,公知である。ジョイント機構及び連結部は,角状ロッドとガイド付きウイングビットとを連結できるものであれば,任意のものを用いても良い。
【0016】
ガイド付きウイングビットの頭部は,スライディングキャップを搭載するためのスライディングキャップ搭載部を有する。このスライディングキャップ搭載部は,スライディングキャップを搭載できるものであれば,どのようなものであってもよい。たとえば,ガイド付きウイングビットの頭部(掘削中上方に位置する部位)が,平坦であれば,スライディングキャップを搭載することができるので,ガイド付きウイングビットの頭部が平坦であれば,スライディングキャップ搭載部として機能する。もちろん,スライディングキャップ搭載部として,スライディングキャップを搭載し,仮に固定できるようにスライディングキャップを収容する収容機構が設けられていても良い。
【0017】
スライディングキャップは,中央部に角状穴を有する。この角状穴は,角状ロッドが挿入される部位である。角状穴及び角状ロッドの断面形状は,略正方形があげられる。しかしながら,公知の正多角形や,正多角形以外の多角形を用いることもできる。正多角形以外の多角形を用いた場合,位置あわせに苦労するけれども,しっかりと角状ロッドとスライディングキャップとを結合できる。そして,スライディングキャップは,ガイド付きウイングビットの頭部から脱着できるものである。
【0018】
掘削装置は,掘削作業を行う際にガイド付きウイングビット又は角状ロッドとともに回転し,中央部に穴部を有する,回転テーブルを有する。掘削装置における回転テーブルは公知である。よって,本発明においても公知の回転テーブルを適宜用いることができる。
【0019】
そして,回転テーブルの穴部は,ガイド付きウイングビットを通過させることができる形状であり,かつ,スライディングキャップを通過させない形状である。たとえば,スライディングキャップがガイド付きウイングビットよりも若干幅広な部分を有しており,この部分が穴部を通過できないようにされていればよい。すると,ガイド付きウイングビットが下方に進んだ場合,スライディングキャップは回転テーブルの穴部に入ることができず,スライディングキャップがガイド付きウイングビットから離脱する。このようにすると,スライディングキャップが回転テーブル上に残ることとなる。
【0020】
そして,回転テーブルは,スライディングキャップを収容するためのスライディングキャップ収容部を有する。このため,回転テーブル上に残ったスライディングキャップは,スライディングキャップ収容部に有用されることとなる。このスライディングキャップ収容部は,たとえば,スライディングキャップの外周のうち少なくとも一部を固定できる固定壁などにより実現できる。
【0021】
スライディングキャップの角状穴は,角状ロッドを収容できる形状である。このため,スライディングキャップが回転した場合,角状ロッドがこれにつれて回転できる。
【0022】
このような構成を採用するため,この掘削装置は,回転テーブルの穴部に,ガイド付きウイングビットが挿入されている場合は,回転テーブルが回転すると,ガイド付きウイングビットが回転する。
【0023】
そして,ガイド付きウイングビットが回転テーブルの穴部の下方に進む際に,スライディングキャップがガイド付きウイングビットから離脱し,回転テーブルのスライディングキャップ収容部に収容される。
【0024】
回転テーブルの穴部に角状ロッドが位置する場合は,角状ロッドは,回転テーブルのスライディングキャップ収容部に収容されたスライディングキャップの角状穴を通して収容される。そして,回転テーブルが回転すると,回転テーブルが回転するに合わせて,スライディングキャップが回転するとともに,角状ロッドが回転する。また,角状ロッドの回転に合わせてガイド付きウイングビットが回転する。
【0025】
また,本発明の好ましいパターンは,スライディングキャップが駒部を有する。さらに,このパターンは,角状ロッドがその側面に1又は複数の駒受けを有する。そして,スライディングキャップは,駒部を回転させる回転機構を有する。このため,回転テーブルが回転する際は,駒部を,角状ロッドに触れない位置に置くことができる。一方,角状ロッドを連結する際は,駒部を角状ロッドの駒受けに収容される位置に置くことができる。これにより,安全に仮止めを行うことができる。よって,新たな角状ロッドを連結する際に,先端ビット(及び既に先端ビットと連結された角状ロッド)が下方に進んでしまう事態を安全かつ効果的に防止できる。
【0026】
この掘削装置において,スライディングキャップは,駒部を有する。また角状ロッドは,その側面に1又は複数の駒受けを有する。また,スライディングキャップは,駒部を回転させる回転機構を有する。駒部は,軸受けをすることができる突起などであれば公知のものを適宜採用できる。駒部は,たとえば,角状ロッドを取り囲む対面に1つずつ設けても良い。また,角状ロッドの断面が4角形の場合は,4角形の辺ごとに1つずつ駒部をもうけても良い。駒部の大きさや形状は適宜調整すればよい。駒受けは,駒を挿入できる形状であれば良い。具体的には,角状ロッドの側面に溝又は貫通穴を設けこれを駒受けとして用いればよい。
【0027】
回転機構は,駒部が,角状ロッドに触れない位置に移動させることができるとともに,駒部が,駒受けに収容される位置に移動させることができるものである。具体的には,スライディングキャップ上に駒部台を設けて,駒部台と駒部とをピボットなどにより駒部が回転できるように固定したものがあげられる。
【0028】
この掘削装置は,このような構成を有するため,駒部が,角状ロッドに触れない位置にある場合は,駒部を角状ロッドと接触しない位置におくことができる。また,回転機構により,駒部の位置を角状ロッドの駒受け内に変化させることができる。そして,駒部が,角状ロッドの駒受けに収容される位置にある場合は,駒部が角状ロッドの変異を妨げる。
【0029】
本発明の別の好ましいパターンは,リーダー部の傾斜機構を有する。リーダー部の傾斜機構は,リーダー部を傾斜させることができる。このため,新たな角状ロッドを連結する際に,リーダー部を傾斜させることで,角状ロッドの上方の空間を空けることができ,この空間を用いて新たな角状ロッドを連結できる。よって,新たな角状ロッドを連結する際に,ウォータースイベルをリーダー部に固定し続けることができる。
【0030】
この掘削装置は,さらに,ウォータースイベルと,リーダー部と,リーダー部の傾斜機構とを有する。そして,ガイド付きウイングビットは,送排出口と,送排出口と接続され,安定液を輸送するための第1の安定液管と,ガイド付きウイングビット又は角状ロッドとガイド付きウイングビットと脱着するための脱着部を有する。このウォータースイベルの基本構成は公知のものを適宜採用できる。そして,角状ロッドは,ガイド付きウイングビットの第1の安定液管と接続されるとともに,ウォータースイベルと接続できる第2の安定液管を有する。
【0031】
ウォータースイベルは,安定液供給部と回転部とを有する。安定液供給部は,第1の安定液管又は第2の安定液管へ安定液を供給できる。この安定液の例は,泥水である。回転部は,角状ロッドの回転に伴って回転できる。そして,リーダー部は,ウォータースイベルと接続され,リーダー部の傾斜機構は,リーダー部を傾斜させることができる。
【0032】
本発明の別の好ましいパターンは,ウォータースイベルに下方より衝撃が伝わった場合に,ウォータースイベル本体部の突起部が,ウォータースイベルの外套部の溝部を上方に移動する。そして,本体部が外套部を上方に移動する。これにより,下方からの衝撃を緩和することができる。
【0033】
具体的には,本発明の掘削装置においてウォータースイベルは,本体部と外套部とを有する。そして,本体部は,突起部を有する。外套部は,本体部を取り囲む部位であり,本体部を上方に移動できる空間を有するとともに,突起部を上下移動可能に収容できる溝部を有する。
【0034】
この掘削装置は,ウォータースイベルに下方より衝撃が伝わった場合に,本体部の突起部が,溝部を上方に移動し,本体部が外套内部を上方に移動することで,衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば,先端ビットと角状ロッドを用いる掘削装置において,掘削当初より,先端ビットを用いて掘削できる掘削装置を提供できる。
【0036】
また,本発明によれば,新たな角状ロッドを連結する際に,先端ビット(及び既に先端ビットと連結された角状ロッド)が下方に進んでしまう事態を安全かつ効果的に防止できる掘削装置を提供できる。
【0037】
さらに,本発明によれば,新たな角状ロッドを連結する際に,ウォータースイベルをリーダー部に固定し続けることができる掘削装置を提供できる。
【0038】
さらに,本発明によれば,掘削中に硬い物体にぶつかっても,その反動を吸収できる掘削装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下,図面を参照しながら実施例を通して,本発明の実施の形態について説明する。しかしながら,本発明は以下の実施例に限定されることなく,実施例から当業者に自明な範囲の修正及び改変を適宜含むものであり,当業者に周知な技術を適宜盛り込むことができるものとする。
【実施例1】
【0040】
[掘削装置の構成]
図1から図4を参照して本発明に係る掘削装置の実施形態を説明する。
図1は,本発明の掘削装置本体の側面図である。図2は,本発明の掘削装置本体の正面図である。図3は,本発明の掘削装置本体の平面図である。図1から図3に示すように,本発明に係る掘削装置本体1は,掘削のためのボーリングビットないし角形ロッドに回転トルクを与える回転手段としての回転テーブル2,掘削方向をガイドするリーダー部3,リーダー部3に取り付けられた油圧駆動の昇降シリンダー4,昇降シリンダー4に取り付けられ,安定液(泥水)を循環させる安定液循環手段としてのウォータースイベル10,回転テーブル2及びリーダー部3を載置固定するベース5,掘削装置本体1を所定の掘削場所に設置するためのアウトリガー6,荷重を調節するテンションシリンダー等から構成されている。回転テーブル2の中央部の回転部2Aには,後述するガイド付ウイングビットを挿通できるサイズの円形の穴が開けられている。また,ウォータースイベル10は,昇降シリンダー4を油圧駆動させることで,リーダー部3に沿って上下に移動できるようになっている。ウォータースイベル10は,安定液を正逆循環の両方に対応できるスイベルである。図4は,ベース5近傍の構造を示す図である。図4において,15はレール,16はベース5の天板,17は車輪である。掘削装置本体1を設置する際,レール15に沿ってベースを移動して位置決めするようになっている。回転テーブル2,リーダー部3が天板5の上に載置される。
【0041】
リーダー部3の側面には,地盤に対してリーダー部3を垂直に設置するための下げ振り14が固定して取り付けてある。下げ振りは周知の物を使用して固定取り付けすればよい。掘削装置の運搬等,下げ振りを使用しない場合は下げ紐を巻き取ることができるので邪魔にならない。掘削を行うに際し,所定の孔口に掘削装置本体1を据え付けるときに下げ振りとねじジャッキを使用してリーダー部3の垂直出しを行う。このとき,リーダー部3は回転テーブル2の回転部2Aの回転面に対して直立する位置にしておく。下げ振りをその都度取り付ける必要がないので,簡単かつ短時間で掘削装置本体を正確に据え付けることができる。また,下げ振りの支点が固定取り付けされているので,別個に水平器等を使用して掘削装置本体を据え付けるよりも簡便・正確である。
【0042】
[ワンタッチジョイントロッド]
ドリリングロッドとしてワンタッチジョイントロッドを使用する。ワンタッチジョイントロッドは,基本的には,本出願人による先の発明(特許3833624号公報参照)に開示されたものである。すなわち,円形の鋼製パイプの外周にパイプ長手方向に角形の外套を形成させた,いわゆる角形ロッドである。例えば,図5,図6に示すように,角形ロッド21は,回転軸と及び安定液の流路となる円形のパイプ22の両端の各々にパイプ外周をほぼ4等分するように固着したカラー23と,パイプ22の長手方向に両端のカラー23同士を結合するように固着した角形の外套から形成されている。そして,角形ロッド21のカラー23の一方の端のカラー23の対向する位置に,一の角形ロッドを他の角形ロッドと連結するための一対のアーム24が取り付けられ,その角形ロッド21の他方の端には,アーム24の先端25を掛け止める一対の係合孔26が設けられている。アーム24は,例えば,バネを用いて,常時先端25を係合孔26と係合する方向に付勢されている。したがって,角形ロッド21を連結するときは,一の角形ロッドのアーム側と他の角形ロッドの係合孔側を接近させていくと自動的にアーム24の先端25が係合孔26に係合される。角形ロッドの連結を離すときは,アーム24の先端25と反対の端を押圧すれば,先端25が係合孔26から外れ,間単位切り離すことができる。
【0043】
角形ロッド21のカラー23のアーム24又は係合孔26が取り付けられていない他の対向する位置には,角形ロッド21を正逆回転させる回転トルクを伝達させるためのカップリング部を設けている。すなわち,角形ロッド21の一端に凸部28を設け,他端に凹部29を設けてある。例えば,角形ロッドを連結するとき,先行する角形ロッドの凸部28が後続させる角形ロッドの凹部29に挿入又は差込まれるようにしてある。また,後述するように,角形ロッド21を連結する際に先行の角形ロッド21が地中に沈み込まないように仮受けするための駒受け27が角形ロッド21に設けられている。1本の角形ロッド21内の長手方向の数箇所に駒受けを設けておけば,必要に応じて必要な箇所で角形ロッドを回転テーブルの上面で簡単に仮受けすることができる。
【0044】
以上のように,角形ロッド21の連結・着脱作業をワンタッチで行える。なお,使用した角形ロッド21のサイズは,例えば,長さ1500mm,断面の一辺267mmのサイズのもので,掘削深さが20mの場合は,13本の角形ロッドを継ぎ足す必要がある。また,抜管の際にも同じ回数の作業が必要である。したがって,ワンタッチで角形ロッド21の着脱を行えることは作業時間の短縮にとって非常に大きな効果がある。
【0045】
このワンタッチ式ジョイントは着脱操作が簡単であるほか,正逆回転のいずれの方向の回転トルク伝達にも対応する。かつ,ボーリングビットに必要な荷重を伝達し,また,ジョイント部のシール性を良好にするという役割を果たす。
【0046】
[ガイド付ウイングビット]
本発明では,ボーリングビットとしてガイド付ウイングビットを使用する。図7は,スライディングキャップ(後述)を被せたガイド付ウイングビットを示す図である。図7において,31はウイング,32は回転軸,33は安定液の送排出口,34はビットガイドである。ウイングビットの構造は,通常の構造のものでよい。回転テーブル2から伝達される回転トルクにより回転する。自重及び上部に連結した角形ロッド21から荷重を与えながら回転させて,屈進する。なお,ビットガイド34のサイズは,例えば,長さ1300mm,直径550mmである。
【0047】
[スライディングキャップ]
図8は,回転テーブル2からの回転トルクを角形ロッド21に伝達するスライディングキャップの平面図である。図9は,スライディングキャップの正面図である。図において,41はスライディングキャップ,42はスライディングキャップ41に取り付けられ,角形ロッド21を継ぎ足すときに使用する駒部である。スライディングキャップ41には角形ロッド21を挿通する角形の穴44が開けられている。この角形の穴44のサイズは,角形ロッド21を挿通したときに角形ロッド21が内部で自由に回転しないサイズであればよい。例えば,正方形の角形ロッド21を使用する際には,角形の穴44の一辺が角形ロッド21の対角線の長さより小さければよい。ただし,角形の穴44の一辺が角形ロッド21の一辺の長さより大きすぎると,ガタが大きく,回転の開始停止時に角がぶつかり,衝撃・磨耗等による破損の原因となる。角形の穴44の一辺のサイズとしては数ミリのクリアランスをとったサイズにするのが好ましい。一辺のサイズが267mmの角形ロッド21の場合,角形の穴44の一辺のサイズとしては270〜280mmが好ましい。
【0048】
駒部42の一端は,駒回転軸43に取り付けられている。駒部42は,その駒回転軸43を回転の軸として自由に回転できるようになっている。そして,駒部42を水平方向に回転したとき,駒部42の他端が,角形の穴44に張り出す位置にくるようになっている。例えば,駒部42を垂直方向に向くように回転させたとき,駒部42は角形の穴44に張り出していないので,角形ロッド21は角形の穴44を自由に挿通することができる。一方,駒部42を水平方向に向くように回転させたとき,駒部42は角形の穴44に張り出すので,角形ロッド21の挿通を妨げるようになる。駒部42の角形の穴44に張り出す長さは,上述の駒受け27のサイズに適合する長さになっている。なお,角形ロッド21のカラー23も駒受け27と同等な機能を持っていて,一種の駒受けといえる。
【0049】
[ウォータースイベル]
ウォータースイベル10は,正逆循環方式併用のウォータースイベルである。その構造は,基本的には,本出願人による先の発明(特開2004−339819号公報)に開示された構造のものと同様である。ウォータースイベル10は,アウターハウジングとそのアウターハウジング内に回転自在に挿合するインナーハウジングからなっている。そして,インナーハウジングの下端が角形ロッドとワンタッチジョイントで連結するようになっている。
【0050】
ウォータースイベル10のアウターハウジンウ側面には,図10に示す位置に,鍔状に張り出す突起をなす衝撃吸収ガイド13が取り付けられている。ウォータースイベル10を昇降シリンダー4に取り付けるときは,昇降シリンダー4の取り付け部の下部に位置する台座部12の上に衝撃吸収ガイド13が載るようにウォータースイベル10を取り付ける。衝撃吸収ガイド13の長さは,その上端が昇降シリンダー4の取り付け部の上部との間で隙間ができる長さにしてある。そうすることで,掘削時に角形ロッド側から伝わる衝撃が,昇降シリンダー4の取り付け部上部に伝わらないようにできる。この隙間は,10〜20mmとっておけばよい。また,この隙間を空間にしておくのでなく,バネや硬質ゴム等の弾性体を取り付けておいてもよい。
【0051】
なお,パイプ内径,ウォータースイベルの内径,地上部の配管及び高圧ホース等の内径が通常のものより大きくでき,安定液送排出の流動抵抗を小さくできる。
【0052】
[掘削工程]
掘削装置本体1を所定の位置に設置した後,ガイド付ウイングビットを回転テーブル2の回転部21Aの穴に挿通させる。それには,まず,ガイド付ウイングビットのジョイント部35側からスライディングキャップ41をビットガイド34に被せる(図7参照)。次に,ガイド付ウイングビットのジョイント部35をウォータースイベルの下端にワンタッチジョイントで連結する。そして,油圧駆動の昇降シリンダー4でガイド付ウイングビットを吊り下げたウォータースイベル10を下降させる。ガイド付ウイングビットを回転テーブル2の回転部2Aの穴に挿通する。ガイド付ウイングビットのビットガイド34の直径は,回転テーブル2の回転部2Aの穴の直径よりサイズが小さい。それで,ガイド付ウイングビットは,回転テーブルの中央部の穴をそのまま通過していく。ガイド付ウイングビットのビットガイド34が回転テーブル2を通過していくと,最後に,その上に被せられたスライディングキャップ41が回転テーブル2と接する位置に来る。スライディングキャップ41の外形サイズは回転テーブル2の回転部2Aに開けた穴のサイズより大きいので,その穴を通過できない。スライディングキャップ41は,単にビットガイド34に被せてあるだけなので,ビットガイド34から離されて回転テーブル2の上部に残される。回転テーブル2の上部には,スライディングキャップ41の外形の形状に合わせた窪みを形成してある(図示せず)。それで,スライディングキャップ41は,その窪みに嵌合する。
【0053】
その後,スライディングキャップ41の駒部42を用いて,ガイド付ウイングビットを仮受けし,ウォータースイベル10との連結を切り離す。ウォータースイベル10を昇降シリンダー4によって,上昇させる。リーダー部3を後述する方法で背面方向に少し傾けてウォータースイベル10が作業の邪魔にならないようにする。例えば,背面方向に10°〜20°傾斜させる。連結用の後続の角形ロッド21をガイド付ウイングビットの上に垂直に配置し,その角形ロッド21を下げていくことで,前述のワンタッチジョイントで角形ロッド21をガイド付ウイングビットと連結する。そして,傾斜させたリーダー部3を垂直位置に戻す。ウォータースイベル10を下降させて,ワンタッチで角形ロッド21と連結する。
【0054】
回転テーブル2の回転部2Aが回転するとそれに連動してスライディングキャップ41も回転する。スライディングキャップ41には角形ロッド21が自由に挿通できる角形の穴44が開けてある。それで,角形ロッド21をスライディングキャップ41に挿通した状態で,回転テーブル2からの回転トルクを,スライディングキャップ41を介して角形ロッド21に伝達することになる。
【0055】
角形ロッド21の長さ分の掘削が進み,次の角形ロッド21を継ぎ足すときは,適当な位置に角形ロッド21を留める。スライディングキャップ41に取り付けた駒部42を角形ロッドの駒受け27に適合させ,角形ロッド21が落下しないようにする。その後,角形ロッド21をウォータースイベル10から切り離す。ウォータースイベル10を上方に移動し,後続の角形ロッド21を先行の角形ロッド21及びウォータースイベル10にワンタッチジョイントで連結する。リーダー部3を傾斜・復帰させるのは前述と同様である。簡単かつ安全に角形ロッド21の継ぎ足し作業ができる。その後,駒部42を角形ロッド21の駒受け27から外して角形ロッド21を上下フリーにする。そして,掘削作業を再開する。以上の作業を所定の深さまで繰り返す。掘削が所定の深さまで完了し,抜管するときは,上記と逆の手順を同様に行えばよい。
【0056】
上述したように角形ロッド21の一端に駒受け27を設けるに留まらず,角形ロッド内の数箇所の位置に駒受け27を設けておけば,角形ロッド21の長手方向に沿っての数箇所の位置で必要に応じて必要な箇所で角形ロッド21が回転テーブル2の上方で間単に仮受けできる。また,スライディングキャップ41に取り付けられた駒部42は縦から横に動くようになっているのでなく,水平に回転するようにしてあってもよい。角形ロッド21の必要箇所でスライディングキャップ41の駒部42が角形ロッド21の側面の駒受け27に水平にセットされて,同様に角形ロッド21を仮受けできる。
なお,駒部42は,必ずしも,スライディングキャップ42に取り付けられていなくてもよい。回転テーブル2に取り付けて,スライディングキャップ42を跨いで角形ロッドの側面の駒受け27に適合させてもよい。取り付け位置は,回転テーブル2の回転部2A上でも他の場所のどちらでもよい。その場合,スライディングキャップ42の上面と回転テーブル2に取り付ける駒部の底部が水平に一致するように,回転テーブル2のスライディングキャップ嵌め込み深さを調整しておくのが好ましい。また,回転テーブル2に駒部を取り付ける場合は,スライディングキャップを使用しないときにも対応できる。
【0057】
[リーダー部]
掘削装置本体1のリーダー部3は,油圧駆動で水平位置まで転倒できるようになっている。図1において,リーダー部3を水平位置まで転倒した場合を一例として二点鎖線で示してある。51はリーダー部を起倒させるための油圧駆動の起倒シリンダーである。起倒シリンダー51の伸縮度合いに応じて,リーダー部3は支点52を支点として垂直方向を基準に背面方向に0°〜90°までの任意の角度で回転が可能である。掘削装置の運搬の際はリーダー部3を水平位置まで転倒しておく(背面方向に90°倒す)。機高を低くできるので,運搬途中の高さ制限の制約回避に有利である。掘削作業中の角形ロッドの着脱作業の際,リーダー部に取り付けられているウォータースイベル10が前述のように作業の邪魔になる。リーダー部を背面側に適当な角度だけ傾斜させてウォータースイベル10が作業の邪魔にならないようにする。そうしておいて,角形ロッドの着脱を行う。その後,リーダー部3を元の位置の垂直方向に戻し,ウォータースイベル10に角形ロッド21を連結して掘削作業を再開又は抜管作業をする。リーダー部3を適度な角だけ転倒できるようにすることで,施工箇所が狭い条件下でも,機械幅が,作業スペース確保のためのスライディング装置等の余計な飛び出しを必要とせず,機械本体の機械幅内で角形ロッド21の着脱ができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る掘削装置は,狭隘な施工場所や作業高さに制限のある施工条件下の場所打ち杭に有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の掘削装置本体の側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】ベース部近傍の図である。
【図5】図5(a),図5(b),及び図5(c)は,それぞれ,ワンタッチジョイントロッドの平面図,正面図,及び側面図である。
【図6】ワンタッチジョイントロッドを連結した図である。
【図7】スライディングキャップを被せたガイド付ウイングビットを示す図である。
【図8】スライディングキャップの平面図である。
【図9】スライディングキャップの正面図である。
【図10】ウォータースイベル取り付け部を側面から見た図である。
【符号の説明】
【0060】
1 掘削装置本体
2 回転テーブル
2A 回転部
3 リーダー部
4 昇降シリンダー
5 ベース
6 アウトリガー
7 テンションシリンダー
10 ウォータースイベル
11 アウターハウジング
12 インナーハウジング
13 衝撃吸収ガイド
14 下げ振り
15 レール
16 天板
17 車輪
21 角形ロッド
22 パイプ
23 カラー
24 アーム
25 アームの先端
26 係合孔
27 駒受け
28 凸部
29 凹部
31 ウイング
32 回転軸
33 安定液の送排出口
34 ビットガイド
35 ジョイント部
41 スライディングキャップ
42 駒部
43 駒回転軸
44 角形の穴
51 起倒シリンダー
52 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド付きウイングビット(34)に角状ロッド(21)を連結させ,前記ガイド付きウイングビット(34)及び角状ロッド(21)を回転させつつ掘削を行う掘削装置であって,

前記ガイド付きウイングビット(34)は,回転軸(32)と,前記回転軸(32)の下方先端に設けられ,下方に進むにつれて先細となるウィング(31)と,前記回転軸を取り囲むビットガイド(34)と,前記ガイド付きウイングビット(34)の後方部分に設けられ前記角状ロッド(21)と連結するためのジョイント機構(35)とを有し,

前記角状ロッド(21)は,前記ガイド付きウイングビット(34)のジョイント機構(35)と連結するための連結部(26)を有し,

前記ガイド付きウイングビット(34)の頭部は,スライディングキャップ(41)を搭載するためのスライディングキャップ搭載部を有し,

前記スライディングキャップ(41)は,中央部に角状穴(44)を有し,前記ガイド付きウイングビット(34)の頭部から脱着できるものであり,

前記掘削装置は,
掘削作業を行う際にガイド付きウイングビット(34)又は角状ロッド(21)とともに回転し,中央部に穴部を有する,回転テーブル(2)を有し,

前記回転テーブル(2)の穴部は,ガイド付きウイングビット(34)を通過させることができる形状であり,かつ,前記スライディングキャップ(41)を通過させない形状であり,

前記回転テーブル(2)は,前記スライディングキャップ(41)を収容するためのスライディングキャップ収容部を有し,

前記スライディングキャップ(41)の角状穴(44)は,前記角状ロッド(21)を収容できる形状であり,かつ前記スライディングキャップ(41)が回転した場合,前記角状ロッド(21)がこれにつれて回転できる形状であり,

これにより,
前記回転テーブル(2)の穴部に,前記ガイド付きウイングビット(34)が挿入されている場合は,前記回転テーブル(2)が回転すると,前記ガイド付きウイングビット(34)が回転し,
前記ガイド付きウイングビット(34)が,前記回転テーブル(2)の穴部の下方に進む際に,前記スライディングキャップ(41)が前記ガイド付きウイングビット(34)から離脱し,前記回転テーブル(2)の前記スライディングキャップ収容部に収容され,
前記回転テーブル(2)の穴部に,前記角状ロッド(21)が位置する場合は,前記角状ロッド(21)は,前記回転テーブル(2)のスライディングキャップ収容部に収容されたスライディングキャップ(41)の角状穴(44)を通して収容され,前記回転テーブル(2)が回転すると,前記回転テーブル(2)が回転するに合わせて,前記スライディングキャップ(41)が回転するとともに,前記角状ロッド(21)が回転し,角状ロッド(21)の回転に合わせて前記ガイド付きウイングビット(34)が回転する,

掘削装置。
【請求項2】
前記スライディングキャップ(41)は,駒部(42)を有し,
前記角状ロッド(21)は,その側面に1又は複数の駒受け(27)を有し,
前記スライディングキャップ(41)は,前記駒部(42)を回転させる回転機構を有し,
前記回転機構は,
前記駒部(42)が,前記角状ロッド(21)に触れない位置に移動させることができるとともに,
前記駒部(42)が,前記駒受け(27)に収容される位置に移動させることができ,

これにより,
前記駒部(42)が,前記角状ロッド(21)に触れない位置にある場合は,前記駒部(42)は前記角状ロッド(21)と接触せず,
前記駒部(42)が,前記角状ロッドの駒受け(27)に収容される位置にある場合は,前記駒部(42)が前記角状ロッドの変異を妨げる,

請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記掘削装置は,さらに,
ウォータースイベル(10)と,リーダー部(3)と,リーダー部の傾斜機構(53)と,を有し,

前記ガイド付きウイングビット(34)は,
送排出口(33)と,
前記送排出口(33)と接続され,安定液を輸送するための第1の安定液管と,
前記ガイド付きウイングビット(34)又は前記角状ロッド(21)と脱着するための脱着部を有し,

前記角状ロッド(21)は,前記ガイド付きウイングビット(34)の第1の安定液管と接続されるとともに,前記ウォータースイベル(10)と接続できる第2の安定液管(22)を有し,

前記ウォータースイベル(10)は,安定液供給部と回転部とを有し,
前記安定液供給部は,第1の安定液管又は第2の安定液管(22)へ安定液を供給でき,
前記回転部は,前記角状ロッド(21)の回転に伴って回転でき,
前記リーダー部は,前記ウォータースイベル(10)と接続され,
前記リーダー部の傾斜機構(53)は,前記リーダー部を傾斜させることができる,

請求項1に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記ウォータースイベル(10)は,
本体部と外套部とを有し,
前記本体部は,
突起部(13)を有し,
前記外套部は,
前記本体部を上方に移動できる空間を有するとともに,
前記突起部を上下移動可能に収容できる溝部を有し,

これにより,
前記ウォータースイベル(10)に下方より衝撃が伝わった場合に,
前記本体部の突起部が,前記溝部を上方に移動し,
前記本体部が前記外套内部を上方に移動することで,
前記衝撃を緩和することができる,
請求項3に記載の掘削装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−70969(P2010−70969A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238987(P2008−238987)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(508185856)
【Fターム(参考)】