説明

掘進機の連結構造および掘進機の水中回収方法

【課題】地中から水中へと推進させた掘進機を、安全かつ能率的に回収することができ、回収された掘進機の再利用も容易かつ迅速に行えるようにする。
【解決手段】 地中Eから水中Sへ推進させる掘進機10と埋設管20列との連結構造30、40である。掘進機10の後端側と埋設管20列の前端側とを軸方向に嵌脱自在に連結する嵌脱連結部34、44、嵌脱連結部34、44を水密状態で封止する水密封止部46、掘進機10の後部および埋設管20列の前部にそれぞれ配置され、通行可能な開口が水密扉32、42で開閉自在に封鎖される水密隔壁31、41、掘進機10の後部または埋設管20列の前部に配置され、対面する相手側の埋設管20列または掘進機10を軸方向に押動して嵌脱連結部34、44の連結を解除するシリンダ装置などの嵌脱駆動部60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機の連結構造および掘進機の水中回収方法に関し、詳しくは、地中から水中に掘り進んで後方に埋設管列を敷設する掘進機を、水中で回収する方法と、このような方法に使用される掘進機を埋設管列と連結しておく連結構造とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
掘進機を用いて地下に管路を構築する推進工法は、下水道やガス管などの施工に広く利用されている。
一般的な推進工法では、施工区間の両端に地表から地盤に立坑を構築する。出発立坑の側面から地盤に掘進機を推進させる。掘進機の後方に連結された埋設管列を地盤内に敷設する。到達立坑まで到達した掘進機を到達立坑から地上に回収する。
これとは別に、地中に構築する管路の末端を、海や河川などの水中に開口させることがある。例えば、発電所の取水管路や排水管路を、発電所の地中から海岸を経て海面下の水中に開口させておくことがある。
【0003】
このような地中から水中に構築される管路の施工に、前記した推進工法を適用するには、掘進機の回収を水中で行わなければならない。
特許文献1には、海底下の地盤内を推進されて埋設管列を敷設した掘進機を、海底を掘削してコンクリート壁などで構築され、内部に海水が導入された到達立坑まで推進させたあと、掘進機の後端に配置された切断管を切断して後方の埋設管列と分離し、掘進機を海中から海面上に引き上げて回収する技術が示されている。
特許文献2には、シールド掘進機を水中で回収する方法として、シールドフレームを延出形成し、その内部に前後2重の隔壁を構築し、前後の隔壁の間でシールドフレームを切断したあと、前隔壁で仕切られたシールド掘進機を回収する技術が示されている。シールドフレームをスライド可能に重合された二重筒構造にしておき、前記した前後の隔壁を構築したあと、シールドフレームの前筒体を後筒体から引き出して分離させ、シールドフレームの前筒体を含むシールド掘進機を回収する技術が示されている。
【特許文献1】特開2002−180779号公報
【特許文献2】特開2005−126991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術における水中からの掘進機の回収技術では、水中での作業が難しく手間がかかるという問題がある。
特許文献1の技術で、海中の到達立坑内において掘進機の後端の切断管を切断する作業は、切断管を構成する鋼板材を、水中溶断装置で溶断したり、円盤カッタで切断したりすることになる。このような海中での切断作業は、潜水装備を着けた熟練作業者でなければ難しい。熟練作業者であっても、かなり面倒で時間のかかる作業になる。特に、深度のある海中での潜水作業には、作業者の健康や安全上の観点から作業時間に制限を受ける。1度の潜水作業で切断作業が完了しないと、時間をあけて潜水作業を繰り返したり、潜水作業者が交替しながら作業を行ったりする必要がある。作業能率が悪く、作業期間が長くかかり、作業コストも高くつく。
【0005】
また、切断された切断管の一部が連結されたままの掘進機は、そのままでは、次の推進工法に使用することはできない。切断された切断管を取り外して、新たな切断管を、掘進機の後部に連結しておかなければならない。
特許文献2の技術で、シールドフレームを切断する場合も、上記同様の問題がある。二重筒構造のシールドフレームを用いる場合は、水中での切断作業は不要であるが、シールドフレームの内部で、前後一対の隔壁を構築する作業や、シールドフレームの前筒体を後筒体から引き出す推進ジャッキの設定作業など、複雑で手間のかかる作業が必要である。前記切断作業を行う場合よりも、却って作業性が悪く、コストも高くつくことになる。掘進機およびシールドフレームを水中から回収したあと、シールドフレームに構築された隔壁を溶断などの手段で切断したりして撤去しなければ、次回のシールド掘進には使用できないので、却って手間がかかることになる。
【0006】
本発明の課題は、地中から水中へと推進させた掘進機を、安全かつ能率的に回収することができ、回収された掘進機の再利用も容易かつ迅速に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる掘進機の連結構造は、地中から水中へと推進させる掘進機と掘進機の後方に連結される埋設管列との連結構造であって、前記掘進機の後端側と前記埋設管列の前端側とを軸方向に嵌脱自在に連結する嵌脱連結部と、前記嵌脱連結部を水密状態で封止する水密封止部と、前記掘進機の後部および前記埋設管列の前部にそれぞれ配置され、通行可能な開口が水密扉で開閉自在に封鎖される水密隔壁と、前記掘進機の後部または前記埋設管列の前部に配置され、対面する相手側の埋設管列または掘進機を軸方向に押動して前記嵌脱連結部の連結を解除する嵌脱駆動部とを備える。
各構成について詳しく説明する。
【0008】
〔埋設管〕
通常の管路構築に利用される埋設管が使用できる。構築しようとする管路の目的や要求性能に合わせて、材質や寸法構造が設定される。
具体的には、ヒューム管、コンクリート管、鋼管、FRP管、セラミック管、合成樹脂管などがある。複数の材料層が積層された複合管も使用される。埋設管列のうち水中に露出した状態になる部分には、耐水性や耐海水性のある材料を用いたり、耐水処理、耐蝕処理が施された埋設管を用いたりすることが有効である。
埋設管の寸法は、構築する管路の目的や要求性能に合わせて設定される。通常、埋設管の口径800〜3000mm、長さ1.0〜5.0mの範囲に設定できる。
【0009】
埋設管同士の連結は、通常、前後の埋設管で端部同士を嵌合させて連結する。そのために、埋設管の端部には嵌合用の段差や凹凸構造が設けられる。埋設管同士を、間にスリーブ管を挟んで嵌合連結する場合もある。埋設管同士が一定の範囲で屈曲できるように連結する連結具を介する場合もある。埋設管同士の連結個所が、水中に露出する場合は、連結個所を水密構造にしておく。この場合も、通常の埋設管連結においても採用されている封止材やパッキン材を使用することができる。
掘進機と連結される埋設管については、後述する特定の連結構造を備えておく。埋設管の先端に連結構造を加工したり、連結構造の取付構造を付け加えたりすることができる。埋設管そのものは通常の埋設管と同じものを兼用し、その先端に連結装置を取り付けることもできる。
【0010】
〔掘進機〕
通常の管路構築に利用される掘進機のうち、水中に推進させて回収したあと再使用が可能な構造を備えるものが使用される。
通常の掘進機は、地盤内における浸出水や地下水圧に耐える水密構造や耐水構造を備えていることが多いので、水中に推進させても特に問題はない。海水に対する耐蝕性や水中深度における耐圧耐水性などに優れていれば、より好ましい。
掘進機は、構築する管路の口径に対応する円筒状をなす。前端には地盤を掘り進む回転掘削盤などの掘削機構を備える。掘削する地盤に泥水を供給する泥水供給機構や、地盤を圧密する圧密機構、掘削した土砂水を回収する排土機構なども備えておくことができる。掘進機の推進方向を変向する変向機構を備えることもある。掘進機の内部には、掘進機の位置を測定する測量装置や、掘削機構などに電力、油空圧などを供給するエネルギー供給用の配線ケーブルや配管チューブなどの線管類も収容される。各作動機構の作動制御を行ったり作動状態を検知したりする制御ケーブルや情報通信線も配置される。
【0011】
掘進機の寸法は、敷設する埋設管の口径や推進距離などの施工条件に対応して設定される。通常、埋設管の口径と同じ外径で、長さ2.0〜7.0mの範囲に設定できる。
〔連結構造〕
掘進機とその後方に配置される埋設管列とを連結する。
連結構造は、掘進機および埋設管とは別個の連結装置を用いることもできるし、連結装置の一部に、掘進機あるいは埋設管の構造を利用することもできる。
〔嵌脱連結部〕
掘進機の後端側と埋設管列の前端側とを軸方向に嵌脱自在に連結する。
【0012】
通常の土木構造や機械構造において、軸状あるいは筒状の部材を互いに嵌め合わせて連結したり、連結を解除して部材同士を分離したりできる機能を果たす手段や機構、構造を適用できる。
具体的には、何れの円筒形状をなす掘進機の後端側と埋設管列の前端側とに、外径の差を設けておけば、外径の大きな側すなわち外筒部を外径の小さな側すなわち内筒部の外周に重ねるように嵌め合わせることができる。掘進機および埋設管列の基本的な外径は、同径に設定されるので、内筒部になる側では、端部近くに段差を付けて、所定長さ分だけ外径が小さな内筒部になるようにしておけばよい。外径を小さくした段差部分の長さが、内筒部の長さになり、外筒部と内筒部との嵌合長さにほぼ相当することになる。
【0013】
外筒部の内周径と内筒部の外周径との間には、一定の隙間を設けることで、スムーズな嵌合連結動作および連結解除動作が可能になる。嵌脱連結部の長さは、連結状態で十分な連結一体化が果たせ、水密封止部の機能も十分に発揮できるとともに、連結解除も容易にできる程度に設定しておく。具体的には、100〜200cmの長さに設定することができる。
嵌脱連結部は、掘進機の後端側と埋設管列の前端側との何れの側が、外筒部および内筒部になっても構わない。推進時における捲れを防ぐには、埋設管列の前端側を内筒部、掘進機の後端側を外筒部に設定しておくことが有効である。
【0014】
連結装置の一部に掘進機または埋設管列そのものを利用する場合は、外筒部または内筒部の何れか一方を、掘進機または埋設管そのものの端部で構成することができる。
〔水密封止部〕
互いに嵌脱される嵌脱連結部の掘進機側と埋設管列側とを水密状態で封止する。
通常の土木機械や装置、機器などにおける嵌合部分や摺動部分に採用されている水密封止構造が適用できる。
具体的には、摺動パッキンやブラシ状封止部材などが使用できる。通常の推進工法などにおいて埋設管同士の屈曲自在な連結個所に採用されている摺動可能な封止具や封止パッキンが採用できる。埋設管列から掘進機を分離したあとは、水密封止部の構造が水中に露出することになるので、耐水性や耐海水性に優れた材料や構造を採用することが望ましい。
【0015】
水密封止部を構成する封止部材は、嵌脱連結部において相手側に対して摺動可能であれば、掘進機側と埋設管側との何れの側に設けられていてもよい。両方の側に封止部材を設けておくこともできる。嵌脱連結部の軸方向において、2重あるいは3重以上で封止部材あるいは水密封止部を設けておけば、水密封止機能はより高くなる。
〔水密隔壁〕
掘進機の後部および埋設管列の前部にそれぞれ配置される。水密隔壁の前後の空間を水密状態で隔離する。
通常の水中設備や水中で使用される装置、機器における水密隔壁と共通する材料や構造が採用できる。例えば、鋼板などの機械的強度や耐圧性に優れた材料が使用される。鋼板に補強リブや補強枠などを組み合わせて耐圧性を向上させることが有効である。FRP樹脂など金属以外の材料を利用することもできる。
【0016】
水密隔壁には、前後に通行可能な開口を設け、この開口を開閉自在に封鎖する水密扉を設けておくことで、前後の空間が確実に水密隔離された状態と、互いに行き来が自由な状態とを、必要に応じて選択的に設定することができる。
水密扉は、水密隔壁と同様に耐水性および耐圧性のある材料や構造が採用される。水密扉と水密隔壁との当接個所には、水密性のある封止パッキンなどを配置しておくことが望ましい。水密扉は、ヒンジ機構などで開閉自在に水密隔壁に取り付けられてあれば、開閉作業が容易である。また、水密隔壁に着脱自在であり、水密隔壁に取り付けた状態と水密隔壁から取り外した状態とを切り替えられるだけでもよい。例えば、水密扉の外周に沿って配置された締結ボルトで水密隔壁にボルト締結する構造であれば、ボルトの操作によって着脱が可能になる。
【0017】
水密隔壁には、水密扉を配置する開口に加えて、前後の空間にケーブルやパイプ、配線などの線管類を通す貫通空間を設けることができる。これらの貫通空間は、線管類を挿通配置した状態で、線管類の外形と貫通空間の内形との間を水密構造にしておく。また、貫通空間に線管類を挿通しないときには、貫通空間を閉塞する水密蓋を取り付けられるようにしておくことが望ましい。
水密隔壁は、掘進機あるいは埋設管に直接に設けられてもよいし、掘進機または埋設管に設置された連結装置に設けられていてもよい。水密隔壁は、掘進機、埋設管あるいは連結装置に対して取り付け取り外しが可能な構造にしておくことができる。この場合、水密隔壁そのものが水密扉であると考えることもできる。水密隔壁が必要になる掘進機と埋設管列との分離作業の前に、水密隔壁を取り付け、掘進機を埋設管列から分離し管路の構築が終わった段階で、埋設管列から水密隔壁を取り外すことができる。水密隔壁を取り外せば、構築した後の管路の開口が広くなり、管路の流通抵抗が低減される。水密隔壁を残したままにすることで、管路の先端部における構造強度を高めたり、異物の通過を阻止する柵やフィルターの取り付けに利用したりすることもできる。
【0018】
〔嵌脱駆動部〕
嵌脱連結部の連結を解除する機能を果たす。掘進機の後部または埋設管列の前部の何れかに配置される。対面する相手側の埋設管列または掘進機を軸方向に押動して嵌脱連結部の連結を解除する。
嵌脱連結部は、軸方向に嵌合連結し軸方向に連結解除される構造を有するので、嵌脱駆動部には、軸方向に押動力を作用できる機構や装置構造を備えておけばよい。
具体的には、ピストンシリンダ機構やトグル機構、カムラック機構、ボールねじ機構、リンク機構、リニアアクチュエータ機構などが利用できる。これらの機構を作動させる駆動源には、油圧、空圧、水圧、蒸気圧などの圧力、電気モータ、電磁力などが採用される。
【0019】
掘進機あるいは埋設管列の周方向に沿って存在する嵌脱連結部に対して、嵌脱駆動部は、少なくとも直径の両端になる周方向の2個所に設けておいてもよいが、通常は、周方向で3個所以上の複数個所に嵌脱駆動部を配置することで、嵌脱連結部の嵌脱動作を確実にすることができる。嵌脱駆動部の配置は、周方向で等間隔であってもよいし、掘進機や埋設管列に配置される部材や機器との干渉を避けるなどのために非等間隔に配置される場合もある。嵌脱駆動部の設置数は、掘進機および埋設管列の径や、嵌脱連結部の駆動に必要な駆動力と一つの嵌脱駆動部で発生できる駆動力との関係、周方向で駆動力を均等化することなどを勘案して設定できる。通常、周方向の4〜10個所に嵌脱駆動部を配置しておけばよい。
【0020】
嵌脱駆動部の具体例として、掘進機または埋設管列の何れかに対して周方向の複数個所に配置されてなるシリンダ装置と、シリンダ装置に配置され、軸方向に進退自在に作動し相手側の掘進機または埋設管列に先端を当接させて押動する作動軸とを有するものが採用できる。また、掘進機または前記埋設管列の何れかに支持された雌ねじ部と、雌ねじ部にねじ込まれ回動させることで軸方向に進退自在に作動し、相手側の埋設管列または掘進機に先端が当接する雄ねじ軸とを有する、ジャッキねじ装置を、周方向の複数個所に配置してなるものも採用できる。
〔連結装置〕
連結装置は、嵌脱連結部と水密封止部と水密隔壁と嵌脱駆動部とを備えることができる。掘進機の後端と埋設管列の先端との間に装着される。
【0021】
嵌脱連結部、水密封止部、水密隔壁および嵌脱駆動部のうち、一部の構造に、掘進機あるいは埋設管列の構造を利用する場合は、掘進機あるいは埋設管列を利用する構造については、連結装置に備えていなくてもよい。
連結装置として、互いに分離自在で、掘進機に装着される前部装置と、埋設管列に装着される後部装置とからなるものが採用できる。前部装置と後部装置とにおける各構造部分の振り分けあるいは分割配置は、それぞれの構造部分の機能が良好に発揮できるように設定すればよい。例えば、嵌脱連結部は、前部装置と後部装置との両方に分割して配置できる。水密封止部は、前部装置と後部装置との何れかに配置することができる。水密隔壁は、通常、前部装置と後部装置の両方に設置する。嵌脱駆動部は、通常、前部装置と後部装置との何れか一方に配置しておけばよい。管路の構築完了後、掘進機とともに水中から回収して再利用できる構造については、掘進機側の前部装置に配置しておくことが有効である。
【0022】
連結装置を、掘進機あるいは埋設管列に取り付け固定するための構造を、連結装置または掘進機、埋設管列の何れかまたは両方に設けておくことができる。掘進機、埋設管列に対して、連結装置は固定設置されてあってもよいし、必要に応じて取り付けおよび取り外しが可能になっていてもよい。例えば、埋設管列に配置される後部装置を、管路の構築完了後に埋設管列から取り外して回収すれば、後部装置を繰り返し使用することが可能になる。
〔管路の構築〕
掘進機あるいは掘進機の水中回収方法は、前記した連結構造を備えておく以外は、掘進機および埋設管の材質、構造などに特別な制約はないので、掘進機を用いて埋設管を敷設する、各種の管路構築技術に適用することができる。
【0023】
具体的には、例えば、海岸や湖、河川などの水域近くに設置される発電所の取水管路や排水管路を、発電所から水域まで管路を構築して、水域の水中に管路の末端を開口させておく場合に適用できる。海水淡水化施設において海水を取り込む海水採集管路に適用できる。水害防止用の遊水池や地下遊水空間から海中へ放水するための放水管路に適用できる。工場などにおける熱排水を海中に廃棄する排水管路に適用できる。下水処理場の処理水を海中に放出する管路にも適用できる。
管路の構築工事のうち、掘進機を水中に推進させるまでの段階については、通常の管路構築工事と同じように実施できる。掘進機の推進を始める出発立坑や掘進機に推力を加える元押しジャッキ、埋設管を出発立坑から搬入して掘進機と連結する作業、掘進機を推進させながら推進方向を制御する作業、その他についても、特別な規制はない。なお、掘進機および埋設管列に設けられた水密隔壁は開口を解放して自由に通行できる状態にしておけば、作業者が掘進機の内部で作業を行うことにも何ら支障はない。
【0024】
管路の構築工法として、一般的に推進埋設工法や推進工法、シールド推進工法、シールド工法などと呼ばれる工法が適用される。管路を構成する埋設管列は、予め製造された所定長さの埋設管を、埋設管列の最後尾に順次連結していく方法のほか、掘進機と埋設管列の間、あるいは、埋設管列の途中に、新たな埋設管を構成する管壁材を挿入し継ぎ足して管構造を作製していく方法でも構築できる。
管路構築の最終段階で、掘進機が地中から水中へと進出しても、水密封止部によって水密状態で連結された嵌脱連結部は、外部からの水の浸入を確実に遮断できる。掘進機の内部における作業も可能である。
【0025】
地中から水中に推進されるのは、掘進機とその後方の埋設管列の一部である。埋設管列を構成する1本の埋設管の一部だけを水中に進出させておけば、掘進機の回収作業ができる。複数本分の埋設管を水中に進出させておくこともできる。例えば、海岸の傾斜面から沖の方まで管路を水中に延ばして設置することができる。
〔水中回収方法〕
前記した連結構造で埋設管列と連結された掘進機を、地中から水中へと推進させたあと水中で回収する。
掘進機を回収する水深は、構築する管路の用途や立地条件などによって異なるが、通常、水深0〜30mからの掘進機の回収が可能である。水深が深くなるほど、水密封止部や水密隔壁などの水密構造に耐圧性の高い構造を採用すればよい。比較的に水深が浅い場合は、特別な水密手段を講じず、通常の地中推進用の掘進機や埋設管列の構造がそのまま採用できる場合もある。
【0026】
掘進機および埋設管列を推進させる工程は、通常の推進工法などにおける作業手順や作業条件が採用される。この段階では、掘進機および埋設管列のそれぞれに設けられた水密隔壁の水密扉を開けた状態にしておくことができる。作業者が埋設管列の内部から掘進機へと自由に出入りして作業が行える。通常は水密扉を閉じておき、通行時のみに開閉することもできる。
掘進機の推進が、地中から水中に至り、掘進機と埋設管列の一部とが水中に露出している状態になる。埋設管列の残りの部分は地中に埋設された状態である。掘進機の推進が終われば、掘進機および埋設管列の内部に設置された電力ケーブルや制御通信線、油圧配管、各種測定機器、送排泥管などは、埋設管列の後方から撤去しておくことができる。但し、嵌脱駆動部の駆動に必要な動力源など最低限必要な機材は残しておく。
【0027】
掘進機の回収作業を行う前に、掘進機および埋設管列のそれぞれに設けられた水密隔壁の水密扉を閉じる。掘進機および埋設管列の内部空間を水中と隔離できる状態にしておく。水密扉を閉じる作業などは、埋設管列から掘進機の内部へと作業者が入り込んで行うこともできる。
水密扉が閉じられた状態で、嵌脱駆動部を作動させ、掘進機を埋設管列の前方に移動させて埋設管列との連結を解除する。嵌脱連結部から掘進機および埋設管列の内部へと水が浸入しようとするが、水密隔壁で隔離された掘進機および埋設管列の内部空間に水が浸入することはない。
【0028】
掘進機が埋設管列から分離されれば、埋設管列は残して、掘進機を水中から水面上へと回収する。掘進機とともに連結装置の一部も回収することができる。
掘進機の回収作業は、水際の地上や水上の船舶、作業台などからクレーンやウィンチなどを用いて、掘進機を吊り上げればよい。潜水作業者が水中に入って掘進機に吊り上げロープを巻いたりフックを金具に引っ掛けたりする作業を行うことができる。この程度の作業であれば、比較的に短時間で済み、水中溶断作業のような特殊な技術も必要とはされない。
水中から回収された掘進機は、次の管路構築作業に使用できる。連結装置の一部が掘進機に配置されたままであれば、そのままで再使用することができる。水密封止部の封止パッキンなど、損傷したり性能が低下したりする可能性がある一部の部材を取り換えてから再使用してもよい。
【0029】
水中に残された埋設管列は、そのままで前記した各種用途の管路に使用できる。埋設管列の先端に、埋設管列を水底に安定して支持する支持台や埋設管列を固定する固定構造を設置したり、先端部分を保護する保護構造を設置したりすることができる。異物の侵入を防ぐ防護柵やフィルター装置を設置することもできる。開閉自在な扉を設置することもできる。これらの構造を設置するときに、埋設管列の先端近くに残った水密隔壁の構造を利用することもできる。
埋設管列の先端に、連結装置の一部が残っている場合、残った部材や構造を埋設管列から取り外して回収してもよいし、埋設管列に残したままにしておくこともできる。例えば、嵌脱駆動部の機器類が再利用可能であれば、埋設管列から取り外して回収することが有効である。水密隔壁あるいは水密扉を取り外して回収することもできる。これら取り外し回収を行う構造については、埋設管列あるいは連結装置に対して、ボルト締結などの着脱自在な取り付け手段で取り付けておくことが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明にかかる掘進機の連結構造は、掘進機と埋設管列とを連結し、水密封止部で水密封止された嵌脱連結部を、嵌脱駆動部を駆動させて連結解除することで、埋設管列から掘進機を分離する。掘進機が水中に存在していても、嵌脱駆動部の駆動による嵌脱連結部の連結解除は容易かつ迅速に行える。技術的に難しい潜水作業を長時間にわたって行わなくてもよい。水密隔壁によって掘進機および埋設管列の内部には水が浸入しない。水中で嵌脱連結部の連結解除を行っても何ら問題はない。嵌脱連結部で埋設管列との連結が解除された掘進機は、切断されたり破壊されたりした個所はないので、そのまま次の管路構築工事に使用できる。
【0031】
なお、掘進機を地中で推進しているあいだは、水密隔壁の水密扉を通行して、埋設管列から掘進機へと自由に行き来できる。掘進機および埋設管列の一部が水中に推進された状態でも、水密封止部で水密封止された嵌脱連結部は、外部から水が浸入することはない。内部における作業は、通常の地中における管路構築作業と変わらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
〔掘進機による管路の構築〕
図1〜4は、掘進機10を用いた推進工法による管路の構築作業を段階的に示している。
<地中の推進>
図1は、地中における推進工法の施工段階を示している。地盤Eが海や河川の水域Sに落ち込む傾斜面に向かって、地中を水平方向に、掘進機10と埋設管20の列が推進させられてくる。
図示を省略したが、出発立坑は、通常の推進工法と同様に、地表から地盤Eに垂直に掘削されており、掘進機10や埋設管20の搬入を行い、出発立坑に設置された元押しジャッキなどから埋設管20列に推進力を加える。掘進機10に供給される電力線や油空圧配管、通信線なども、出発立坑から埋設管20列を通じて掘進機10まで接続されている。
【0033】
この段階では、通常の推進工法と全く同じ作業が行われる。掘進機10は、先端に備えた掘削盤12を回転させることで地盤Eを掘削しながら推進される。掘削された土砂は、埋設管20列の内部を通って出発立坑から地表に排出される。
なお、掘進機10と埋設管20とは、連結装置30、40を介して連結されている。連結装置30、40には水密隔壁31、41が設置されているが、何れの水密隔壁31、41も封鎖されておらず、作業者は、埋設管20の内部を通って掘進機10まで行き来することができる。掘進機10の内部機器の点検や調整などを行うことができる。
<水中への推進>
図2に示すように、掘進機10が地盤Eの傾斜面を貫通して水域Sに突き出される。
【0034】
掘進機10の掘削盤12は、地盤Eから水域Sに出る前あるいは出た後で回転を止めておけばよい。埋設管20列に後方から推進力を加えることで、掘進機10およびそれに続く埋設管20列の一部までが、水域Sに露出する。掘進機10と埋設管20との間の水密隔壁31、41では、水密扉32、42を閉じる。掘進機10に接続されていた各種のケーブルや配管、ダクトなども、後方の埋設管20との間の接続を外す。
なお、内部に大きな空洞のある掘進機10および埋設管20は、水域Sに入ったときに大きな浮力によって上方側に反りかえるような外力を受けることがある。掘進機10の場合は内部に設置された機器の重量がかなりあるので浮力の影響は受け難いとしても、内部がほとんど空洞である埋設管20は浮力の影響を大きく受ける。そこで、埋設管20列の内部で先端近くに重しとなる重量物を運び入れて、浮力と相殺しておくことが有効である。
【0035】
<掘進機の分離と回収>
図3に示すように、連結装置30、40のうち、埋設管20側の後部装置30に備えたシリンダ装置60を進出駆動させて、掘進機10側に配置された前部装置40を前方側に押し動かす。シリンダ装置60は、埋設管20の内部から油空圧配管などのエネルギー供給源によって駆動することができる。
後部装置30と前部装置40との嵌合連結が解除され、埋設管20および後部装置30と、掘進機40および前部装置40とが、互いに分離される。前部装置40と後部装置30の連結が解除されると、水域Sの水が連結装置30、40の内部に浸入してくる。しかし、水密隔壁31、41の水密扉32、42は閉じられているので、水密隔壁31、41を超えて、埋設管20あるいは掘進機10の内部にまで水が浸入してくることはない。前部装置40と後部装置30とが十分に分離された状態になれば、シリンダ装置60は後部装置30側に退出駆動させる。
【0036】
掘進機10と前部装置40とは、水域Sから水上に引き上げられて回収される。なお、前部装置40を後部装置30から分離する前の段階で、掘進機10および前部装置40を、クレーンなどで吊り上げたり、掘進機10の下に支持台を設けた状態にしておけば、前部装置40を後部装置30から切り離したときに、掘進機10が水中でみだりに動いたり姿勢が傾いたりすることが防げる。
水中から引き上げられた掘進機10と前部装置40は、別の新たな推進工事あるいは水中推進工事に使用することができる。掘進機10の内部に水は浸入しておらず、内部機器の水浸かりや海水腐蝕、損傷などの問題は生じていない。
【0037】
<埋設管列の仕上げ>
図4に示すように、後部装置30は、埋設管20に取り付けたままでよい。シリンダ装置60は、後部装置30から取り外して回収する。シリンダ装置60は再使用することができる。
水域Sに突き出した埋設管20は、周囲を何ら支持されておらず不安定になり易いので、埋設管20の固定を行うことが有効である。埋設管20の先端に、コンクリートブロックなどからなる固定部材90を配置する。固定部材90は、埋設管20の先端周囲を取り囲んで物理的に保護する。水域Sを通過する船舶の衝突や魚網などに引っ掛けられて、埋設管20が変形したり損傷したりすることを防止できる。固定部材90は、十分な重量があれば、水底に設置するだけでもよい。水底から地盤Eに支持杭やアンカーを打ち込めば、強固に安定した設置ができる。
【0038】
図示を省略しているが、埋設管20列の後端側は、例えば、発電所の排水管や取水管に接続するなどして、水域Sに至る管路を構築しておく。埋設管20列の内面に保護モルタルや保護コーティングを施しておくこともできる。このような作業も、埋設管20の前端で水密隔壁31を遮断しておけば、作業者が埋設管20列の内部に立ち入って自由に作業を行うことができる。
所定の管路が構築されたあと、後部装置30の水密隔壁31で水密扉32を開くか取り外してしまえば、水域Sの水が埋設管20列の内部に出入りできるようになる。例えば、水域Sの低温水を発電所の冷水取水装置に取り込んで冷却に使用したり、発電所で発生した排水を水域Sに放出したりすることができる。
【0039】
〔連結部分の詳細構造例(1)〕
図5、6は、連結装置30、40の詳しい具体的構造を示している。前記した管路の構築工程における図2の連結状態を示している。
<後部装置>
後部装置30は、全体形状が、埋設管20の外形と同形の円筒状をなし、鋼材などの構造材料で構成されている。
後部装置30の後端が、埋設管20の先端外周に有する段差形状に嵌合されて一体的に結合されている。埋設管20の端部には元々、互いの連結に利用される段差構造を有しているので、この段差構造を利用して、埋設管20と後部装置30とを連結固定する。埋設管20と後部装置30との嵌合部分には封止材を塗工しておいたり、封止リングを挟み込んだりして、水密状態で連結しておく。
【0040】
後部装置30のうち、埋設管20と接続される後端側には水密隔壁31を有する。水密隔壁31は鋼板などで構成され、施工環境である水中の水圧に十分に耐えて、埋設管20側に水が浸入することを防止する。水密隔壁31の中央には、作業者が出入りできる程度の開口があいており、この開口には水密扉32が設けられている。水密扉32も耐圧性のある鋼板などで構成されている。
図6に詳しく示すように、水密扉32の外周縁を多数の締付ボルト33で水密隔壁41に固定している。水密扉32と水密隔壁31との対面個所にはゴムなどからなる封止パッキンを介在させて、水密性を高めておくことができる。必要時には、締付ボルト33を緩めて水密扉32を取り払える。水密隔壁31の開口を解放状態にできる。
【0041】
水密隔壁31のうち、水密扉32よりも外側には、複数個所に貫通孔部50が設けられ、貫通孔部50には、電力ケーブルや通信線、油空圧配管など、埋設管20から掘進機10へと延びる線管類が挿通されている。図示を省略しているが、貫通孔部50は、線管類を取り外したあと、フランジ蓋などを取り付けて塞げば、水密状態で封鎖することができる。
水密隔壁31の前方外周には、後部装置30の外径よりも一段小さな外周で前方に延び、前部装置40との嵌合連結を果たす嵌合内筒34を有する。
嵌合内筒34の内周側には、シリンダ装置60が取り付けられている。図6に示すように、シリンダ装置60は、周方向に等間隔で複数個所に配置されている。シリンダ装置60は空気圧で駆動され、シリンダ装置60の前端に備えた作動軸62が前後に進退駆動できるようになっている。図示を省略したが、シリンダ装置60に圧力空気を供給したりシリンダ装置60の作動開始や作動停止を制御したりする線管類は、シリンダ装置60の後方から水密隔壁31を通して、埋設管20の内部まで引き込まれている。埋設管20の奥側あるいは埋設管20列の後端である出発立坑や地表からでも、シリンダ装置60の作動を制御することができる。
【0042】
<前部装置>
前部装置40も、後部装置30と同様に鋼材で構成され、全体形状は、埋設管20の外形と同じ円筒状である。したがって、掘進機10、前部装置40、後部装置30および埋設管20は全て同じ外形で連続した円筒状を構成する。
前部装置40の後端には、後部装置30と同様の水密隔壁41を有し、水密隔壁41の中央に設けられた開口を、締付ボルト43で取り付けられた水密扉42で塞いでいる。図示を省略しているが、水密隔壁41には、線管類を通す貫通孔部50も備えている。
水密隔壁41の後方外周には、前部装置40の外周に沿って後方に延びる嵌合外筒44を有する。嵌合外筒44は、後部装置30の嵌合内筒34の外径よりも少し大きな内径と、嵌合内筒34とほぼ同じ長さに設定されている。
【0043】
嵌合外筒44の内周面には、軸方向の3個所に摺動封止材46が取り付けられている。摺動封止材46は、柔軟性のあるゴム板やブラシ材からなり、嵌合筒部44の周方向で全周にわたって設けられている。摺動封止材45の内周縁が後部装置30の嵌合内筒34の外周面に当接することで、嵌合外筒44と嵌合内筒34との間が水封状態になる。また、嵌合外筒44を嵌合内筒34から軸方向に抜き出すと、摺動封止材45の内周縁が嵌合内筒34の表面に沿って摺動する。
嵌合外筒44の根元側で、前部装置40の後端面に、後部装置30に備えたシリンダ装置60の作動軸62が当接する。作動軸62が進出することで、前部装置40を押し動かすことができる。
【0044】
<連結装置の作動>
図7は、連結装置30、40の作動状態を示す、前記した管路の構築工程における図3の状態に対応する。
後部装置30に備えるシリンダ装置60を駆動し、作動軸62を前方に進出させる。作動軸62の先端が前部装置40の内部後端面に当接し、前部装置40および掘進機10を前方側に押し出す。嵌合外筒44の摺動封止材45が、嵌合内筒34の外周面を摺動し、嵌合外筒44が嵌合内筒34から前方に抜け出す。その後、シリンダ装置60の作動軸62を後退させれば、作動軸62の先端は前部装置40の内部後端面から離れて、後部装置30側に戻る。
【0045】
このようにして、前部装置40および掘進機10と、後部装置30および埋設管20とが分離される。
〔連結部分の詳細構造例(2)〕
図8は、さらに別の構造例を示す。図8(a)は、前部装置40と後部装置30との連結状態を示し、図8(b)は分離作業時の状態を示している。前記実施形態と共通する点は説明を省略して、相違点を主に説明する。
前部装置40については、基本的には前記実施形態と共通する構造を備えているので、詳しい説明は省略する。
【0046】
後部装置30は、埋設管20の先端に対して、先端面から内周面に嵌合される円筒枠状をなしている。埋設管20の前方に大きく張り出さず、埋設管20の内側に納まっている。
そして、埋設管20の先端外周に存在する段差部分が、後部装置30における嵌合内筒34として利用される。前部装置40の嵌合外筒44の内径を、埋設管20の段差部分の外径よりも少し大きく設定し、嵌合外筒44の長さを、埋設管20の段差部分の長さに合わせて設定している。嵌合外筒44に内周面に設置された摺動水密材46の内周縁が、埋設管20の段差部分の外周面に当接し摺動する。
【0047】
後部装置30の内周奥には、前記実施形態と同様の水密隔壁31および水密扉32を備える。水密隔壁31の外周近くには、ジャッキねじ装置70が設置されている。ジャッキねじ装置70は、水密隔壁31に支持固定されたナット状の雌ねじ部74と、この雌ねじ部74にねじ込まれ軸方向に延びる雄ねじ軸72とを有する。雌ねじ部74と雄ねじ軸72とは、水密状態で組立てられており、水密隔壁31の水密機能を損なわないようになっている。ジャッキねじ装置70は、後部装置30の周方向に間隔をあけて複数個所に設置されている。
雄ねじ軸72を回動させると、雄ねじ軸72が雌ねじ部74に対して軸方向に進退する。雄ねじ軸72の前方先端は、前部装置40の内部後端面に当接している。雄ねじ軸72の後端側は、水密隔壁31よりも埋設管20の奥側に存在しているので、埋設管20の内部空間に作業者が立ち入って、雄ねじ軸72を操作することができる。
【0048】
図8(b)に示すように、ジャッキねじ装置70の雄ねじ軸72を回して、雄ねじ軸72を前方側に進出させれば、雄ねじ軸72の先端が、前部装置40を押し動かして、前部装置40および掘進機10を前方側に押し出す。前部装置40の嵌合外筒44は、摺動封止材46が、埋設管20の段差部分を利用した嵌合内筒34の外周面に沿って摺動し、抜け出すことになる。
後部装置30から前部装置40および掘進機10が分離されたあとは、ジャッキねじ装置70の雄ねじ軸72を逆方向に回動させ、雄ねじ軸72の先端を後部装置30の内側まで後退させておけばよい。
【0049】
この実施形態では、ジャッキねじ装置70を用いることで、例えば前記シリンダ装置60を用いる場合に比べて、構造が簡単になり設置スペースも少なくて済む。小口径の埋設管20および掘進機10に適している。但し、ジャッキねじ装置70は、作業者が埋設管20列の先端で操作する必要がある。雄ねじ軸72を、モータなどで駆動すれば、作業者が埋設管20列に入らなくても、ジャッキねじ装置70を駆動することが可能である。
〔連結部分の詳細構造例(3)〕
図9は、さらに別の構造例を示す。図9(a)は、前部装置40と後部装置30との連結状態を示し、図9(b)は分離作業時の状態を示している。さらに、図9(c)は、後部装置30を埋設管20と分離する状態を示している。前記実施形態と共通する点は説明を省略して、相違点を主に説明する。
【0050】
前部装置40については、基本的に前記実施形態と共通する構造を備えているので、詳しい説明は省略する。
後部装置30は、埋設管20の先端の段差部分に嵌脱自在に取り付けられている。すなわち、後部装置30の後端に、円筒状をなして後方側に延びる嵌合筒部38を有する。嵌合筒部38の外径は、埋設管20の全体外径と同じであり、嵌合筒部38の内径は、埋設管20の段差部分の外径よりも少し大きく、嵌合筒部38の長さは埋設管20の段差部分の長さに対応している。嵌合筒部38の内周面には、前記同様の摺動封止材36が配置されている。摺動封止材36の内周縁が、埋設管20の段差部分の外周面に当接する。
【0051】
後部装置30には、前記実施形態と共通するシリンダ装置60や、前部装置40の嵌合外筒44に対応する嵌合内筒34、水密隔壁31、水密扉32も備えている。
図9(a)から図9(b)に示すように、シリンダ装置60を駆動させて、後部装置30および埋設管20から、前部装置40および掘進機10を分離するのは、前記実施形態と共通している。
次に、図9(c)に示すようにして、後部装置30の全体を埋設管20から分離することができる。前記した管路の構築工程のうち、図4に示す仕上げ段階における作業となる。
【0052】
すなわち、水中において、後部装置30を埋設管20から前方に引き出す。後部装置30の嵌合筒部38に有する摺動封止材36が、埋設管20の段差部分の外周面を摺動して、埋設管20から後部装置30が抜け出す。シリンダ装置60や水密隔壁31などを含む後部装置30の全体が、埋設管20から分離される。後部装置30は、水中から水面上に回収する。回収された後部装置30は、別の管路構築作業に再び使用することができる。
埋設管20の先端は大きく開口するので、水の出入りがスムーズに行われる。前記図4の状態のように水密隔壁31が存在することで水の流通に抵抗を生じることがなくなる。固定部材90の施工作業で後部装置30が邪魔になることがない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかる掘進機の連結構造および水中回収方法は、例えば、発電所の取水管路や排水管路の構築など、地中から水中へ至る管路の構築に利用できる。地中のみにおける通常の管路構築に比べて、作業が難しく手間およびコストがかかるとされていた、地中から水中への管路構築を、作業性良く効率的かつ経済的に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態を表す管路の構築工程を段階的に示す模式的構造図
【図2】次の工程を示す模式的構造図
【図3】次の工程を示す模式的構造図
【図4】次の工程を示す模式的構造図
【図5】連結部分の詳細構造を示す軸方向の断面図
【図6】軸直交方向の埋設管側を見た断面図
【図7】連結部分を分離する作動状態を示す軸方向の断面図
【図8】連結部分の別の構造例とその分離作動状態を示す断面図
【図9】連結部分の別の構造例とその分離作動状態を示す断面図
【符号の説明】
【0055】
10 掘進機
12 掘削盤
20 埋設管
30 後部装置(連結装置)
31、41 水密隔壁
32、42 水密扉
33、43 締付ボルト
34 嵌合内筒
40 前部装置(連結装置)
44 嵌合外筒
46 摺動水密材
50 貫通孔部
60 シリンダ装置(嵌脱駆動部)
62 作動軸
70 ジャッキねじ装置
72 雄ねじ軸
74 雌ねじ部
90 固定部材
E 地盤
S 水域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中から水中へと推進させる掘進機と掘進機の後方に連結される埋設管列との連結構造であって、
前記掘進機の後端側と前記埋設管列の前端側とを軸方向に嵌脱自在に連結する嵌脱連結部と、
前記嵌脱連結部を水密状態で封止する水密封止部と、
前記掘進機の後部および前記埋設管列の前部にそれぞれ配置され、通行可能な開口が水密扉で開閉自在に封鎖される水密隔壁と、
前記掘進機の後部または前記埋設管列の前部に配置され、対面する相手側の埋設管列または掘進機を軸方向に押動して前記嵌脱連結部の連結を解除する嵌脱駆動部と
を備える掘進機の連結構造。
【請求項2】
前記嵌脱連結部と前記水密封止部と前記水密隔壁と前記嵌脱駆動部とを備える連結装置が、前記掘進機の後端と前記埋設管列の先端との間に装備されてなり、
前記連結装置が、互いに分離自在で、前記掘進機に装着される前部装置と、前記埋設管列に装着される後部装置とからなる
請求項1に記載の掘進機の連結構造。
【請求項3】
前記嵌脱駆動部が、前記掘進機または前記埋設管列の何れかに対して周方向の複数個所に配置されてなるシリンダ装置と、シリンダ装置に配置され、軸方向に進退自在に作動し相手側の掘進機または埋設管列に先端を当接させて押動する作動軸とを有する
請求項1または2に記載の掘進機の連結構造。
【請求項4】
前記嵌脱駆動部が、前記掘進機または前記埋設管列の何れかに支持される雌ねじ部と、雌ねじ部にねじ込まれてなり、回動させることで軸方向に進退自在に作動し、相手側の埋設管列または掘進機に先端を当接させて押動する雄ねじ軸とを有するジャッキねじ装置を、周方向の複数個所に配置してなる
請求項1または2に記載の掘進機の連結構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載された連結構造で埋設管列と連結された掘進機を、地中から水中へと推進させたあと水中で回収する方法であって、
前記掘進機および前記埋設管列のそれぞれに設けられた前記水密隔壁の水密扉を開けた状態で、掘進機および埋設管列を推進させる工程(a)と、
前記掘進機および前記埋設管列のそれぞれに設けられた前記水密隔壁の水密扉を閉じる工程(b)と、
前記水密扉が閉じられた状態で、前記嵌脱駆動部を作動させ、掘進機を埋設管列の前方に移動させて埋設管列との連結を解除する工程(c)と、
前記埋設管列から分離された掘進機を水中から水面上へと回収する工程(d)と、
を含む掘進機の水中回収方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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