説明

採熱配管施工方法

【課題】コンクリートの充填性を確保しつつ部品点数を削減するとともに、はつり作業に伴う採熱配管の損傷を防止することができる採熱配管施工方法を提供する。
【解決手段】掘削土を孔壁2A側に逃がしながら地盤を掘削して2を形成し、掘削機7のロッド74が目標深度に到達した後に、掘削機7のロッド74を引き上げながらロッド74の先端部からコンクリートを圧入し、杭孔2にコンクリートを未硬化の状態で充填し、掘削機のロッド74を杭孔から引き抜いた後に、未硬化のコンクリートが硬化する前に杭孔2に対して採熱配管5が設置された鉄筋籠3を挿入し、その後、コンクリートを硬化させて、基礎杭1を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱を利用する採熱配管施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
年間を通して略一定の温度に保たれている地中に採熱配管を埋設し、採熱配管内部を循環する熱媒を介して熱交換を行うことで地中熱を利用する手法が広く採用されている。採熱配管を地中に埋設する工法としては、ボーリング機等で地中に孔を掘削し、採熱配管を埋設する工法が知られている。しかしながら、このような工法では、採熱配管を埋設する専用孔を施工するため、敷地の確保が必要になるとともに、工数が多くなり、コストの増大、工期の長期化を招く原因となるという問題がある。
【0003】
この問題に対して、従来、場所打ち基礎杭を構成する鉄筋籠内部に採熱配管を取り付け、基礎杭とともに採熱配管を埋設する工法が行われている。この工法では、地盤に杭孔を掘削し、その掘削した杭孔に鉄筋籠を設置した後に、トレミー管を用いて杭孔内部にコンクリートを打設することにより基礎杭の施工を行っている。しかし、鉄筋籠の内部に採熱配管を取り付ける施工方法では、掘削した杭孔に対して鉄筋籠を設置した後にコンクリートを打設することとなる。このため、鉄筋籠に設けられている鉄筋と採熱配管の間の距離を十分にとらなければコンクリートの充填性が悪化するという問題があった。
【0004】
そこで、鉄筋籠の鉄筋と採熱配管との間の距離を十分にとることができる採熱配管施工方法が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。この採熱配管施工方法では、場所打ち基礎杭を構築する鉄筋籠の内部に、採熱配管を支持するための鉄筋を配筋して採熱配管を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−333001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された採熱配管施工方法では、採熱配管を支持するための鉄筋によって採熱配管を支持することにより、鉄筋籠の鉄筋と採熱配管との間の距離を十分にとることができ、コンクリートの充填性の悪化を防止している。しかし、鉄筋籠の内部に採熱配管を支持するために鉄筋を配筋している。このため、採熱配管を支持する鉄筋の分の部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に開示された採熱配管施工方法では、基礎杭を形成する際、杭孔を掘削した後、コンクリートを打設するまでの間に、杭孔内部に杭壁が崩れることを防止する安定液を注入することが一般的である。杭孔に注入された安定液では、安定液中における削土の粒子が杭孔の杭底部に沈殿してスライムが生成される。このスライムは、基礎杭の強度に大きな悪影響を与え、強度の低い不良コンクリートを生成する原因となる。
【0008】
強度の低い不良コンクリートは、コンクリートの打設に伴って上昇し、杭孔内におけるコンクリートの打設が完了した後、杭孔の上方から抜け出した形で形成されている。この不良コンクリートは、はつり作業によって削りとられるが、このはつり作業を行う際、コンクリートとともに、強度の低い採熱配管を損傷させてしまうおそれがあるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の課題は、コンクリートの充填性を確保しつつ部品点数を削減するとともに、はつり作業に伴う採熱配管の損傷を防止することができる採熱配管施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明に係る採熱配管施工方法は、場所打ちの基礎杭の内部に採熱配管を配設する採熱配管施工方法であって、掘削機のロッドを下降させて、掘削土を孔壁側に逃がしながら地盤を掘削して杭孔を形成し、掘削機のロッドが目標深度に到達した後に、掘削機のロッドを引き上げながらロッドの先端部からコンクリートを圧入し、杭孔にコンクリートを未硬化の状態で充填し、掘削機のロッドを杭孔から引き抜いた後に、未硬化のコンクリートが硬化する前に杭孔に対して採熱配管が設置された鉄筋籠を挿入し、その後、コンクリートを硬化させて、基礎杭を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る採熱配管施工方法では、杭孔にコンクリートを未硬化の状態で充填し、未硬化のコンクリートが硬化する前に杭孔に対して採熱配管が設置された鉄筋籠を挿入している。このため、たとえば支持部材を設けて鉄筋籠の鉄筋から遠い位置に採熱配管を設けることなく、鉄筋籠の鉄筋組立用力骨に直接取り付けた場合でも、コンクリートの充填性を悪化させないようにすることができる。したがって、コンクリートの充填性を確保しつつ部品点数を削減することができる。
【0012】
また、本発明に係る採熱配管施工方法では、掘削土を孔壁側に逃がしながら地盤を掘削して杭孔を形成し、掘削機のロッドが目標深度に到達した後に、掘削機のロッドを引き上げながらロッドの先端部からコンクリートを圧入して基礎杭を構築している。このため、安定液を注入することなく基礎杭を構築することができるので、安定液の注入よって生じる不良コンクリートのはつり作業が不要となる。したがって、はつり作業に伴う採熱配管の損傷を好適に防止することができる。
【0013】
ここで、杭孔に挿入される鉄筋籠が1つである態様とするができる。
【0014】
このように、杭孔に挿入される鉄筋籠が1つであることにより、鉄筋籠の杭孔へ挿入する際に、鉄筋籠の接合作業が不要となる。さらに、鉄筋籠を接合する場合には、採熱配管の接続も必要となるが、鉄筋籠が1つであることにより、採熱配管の接続も不要となる。特に、鉄筋籠の接続と採熱配管の接続とは、異なる施工者が行うことが多いので、鉄筋籠の接続を行う施工者と採熱配管の接続を行う施工者が施工現場で入り乱れることを防止することができ、工期の長期化防止に大きく寄与することができる。
【0015】
また、鉄筋籠は、高さ方向に延在する複数の主筋を備え、複数の主筋は、鉄筋籠を杭孔に挿入された状態で平面視して周状に配置されており、複数の主筋の周囲にはフープ筋が設けられており、採熱配管は、フープ筋よりも内側に配置されている態様とすることができる。
【0016】
このように、採熱配管がフープ筋よりも内側に配置されていることにより、採熱配管がフープ筋よりも外側に配置されている場合のように、規定のかぶり厚を確保するために、杭径を大きくせずに済ませることができる。
【0017】
さらに、フープ筋は、複数の主筋の周囲にらせん状に配筋される態様とすることができる。
【0018】
このように、複数の主筋の周囲に、らせん状に配筋されたフープ筋が設けられていることにより、鉄筋籠がトラス梁状となって剛性(かごの変形に対する抵抗性)が向上する。このため、鉄筋籠を杭孔内に挿入する際に、鉄筋籠を容易に挿入することができる。
【0019】
採熱配管の下端部は、採熱配管を流通する熱媒が折り返す折り返し部とされており、折り返し部に先鋭部が形成されている態様とすることが好適である。
【0020】
このように、採熱配管を流通する熱媒が折り返す折り返し部に先鋭部が形成されていることにより、鉄筋籠を未硬化のコンクリートに挿入する際、鉄筋籠に取り付けられた採熱配管を未硬化のコンクリートに容易に挿入することができる。
【0021】
さらに、本発明に係る基礎杭は、場所打ち基礎杭の内部に採熱配管が配設された場所打ちの基礎杭であって、掘削機のロッドを下降させて、掘削土を孔壁側に逃がしながら地盤を掘削して杭孔を形成し、掘削機のロッドが目標深度に到達した後に、掘削機のロッドを引き上げながらロッドの先端部からコンクリートを圧入し、杭孔にコンクリートを未硬化の状態で充填し、掘削機のロッドを杭孔から引き抜いた後に、未硬化のコンクリートが硬化する前に杭孔に対して採熱配管が設置された鉄筋籠を挿入し、その後、コンクリートを硬化させて、基礎杭を生成して構築されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る採熱配管施工方法によれば、コンクリートの充填性を確保しつつ部品点数を削減するとともに、はつり作業に伴う採熱配管の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る採熱配管施工方法によって構築された基礎杭の側面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】本実施形態に係る基礎杭の配置例を示す平面図である。
【図4】(a)は、採熱配管における折り返し部の平面図、(b)は、その側面図である。
【図5】本実施形態に係る採熱配管施工方法に用いる掘削装置の概略構成図である。
【図6】掘削装置におけるドリル部の側面図である。
【図7】(a)は杭孔を掘削する工程を側面視して示す工程図、(b)は(a)に続く工程を示す工程図、(c)は(b)に続く工程を示す工程図である。
【図8】(a)は基礎杭孔内に鉄筋籠を挿入する工程を側面視して示す工程図、(b)は(a)に続く工程を示す工程図、(c)は(b)に続く工程を示す工程図である。
【図9】(a)は基礎杭上部に不良コンクリートが残存している基礎杭の側面図、(b)は本実施形態に係る基礎杭の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る採熱配管施工方法により構築された基礎杭の側面図、図2は図1のII−II線断面図である。図1では、便宜上、鉄筋と採熱配管の位置関係を一部省略して図示している。図1および図2に示すように、基礎杭1は、杭孔2に設けられる。基礎杭1は、鉄筋籠3および硬化コンクリート4を備えている。また、鉄筋籠3の内側には採熱配管5が取り付けられている。本実施形態に係る採熱配管施工方法では、基礎杭1を構築する際に、掘削土を排出することなく杭孔2の孔壁に練りつけ、杭孔2に対する安定液の注入を不要としたいわゆる無排土工法を用いている。無排土工法では、掘削土の排出が不要となるとともに、掘削土を孔壁2Aに練りつけることから、孔壁2Aの強度を高めることができる。
【0026】
本実施形態に係る基礎杭1は、比較的小径の杭であり、具体的に、その径は620mm程度とされている。このため、図3に示すように、構造物の基礎となる1つのフーチング10に対して、複数本、ここでは4本の基礎杭1が配置されている。これらの4本の基礎杭1は、平面視して略正方形の頂点にそれぞれ位置するように分散して配置されている。また、本実施形態では、基礎杭1の全長は約28m程度とされているが、それよりも長くもしくは短くすることもできる。
【0027】
図1および図2に示すように、基礎杭1の内部に設けられる鉄筋籠3は、複数の鉄筋により円筒状に構成されている。鉄筋籠3は、高さ方向に延在する複数の主筋31を備えている。本実施形態では、図2に示すように、鉄筋籠3は、8本の主筋31を備えている。複数の主筋31は、鉄筋籠3を杭孔2に挿入された状態で平面視して周状、ここでは円形状に配置されている。これらの8本の主筋31により、概略円筒形状を形成している。
【0028】
円筒形状をなす8本の主筋31の外周には、鉄筋籠3のらせん状に形成されたフープ筋32が設けられている。フープ筋32は、鉄筋籠3の全長に亘って形成されている。フープ筋32は、主筋31に対して番線によってくくりつけられて固定されている。また、フープ筋32を溶接等の他の固定方法によって主筋31に固定することもできる。
【0029】
また、主筋31の内側には、複数本、ここでは7本の力骨筋33が設けられている。力骨筋33は、高さ方向に略等間隔をおいて離間して配設されている。これらの力骨筋33は、主筋31に対して溶接固定されている。
【0030】
さらに、鉄筋籠3は、主筋31の外側に配置されたスペーサー34を備えている。スペーサー34は、図2に示すように、鉄筋籠3の平面視してから見て、それぞれ略90度ずつの間隔で配設される。また、スペーサー34は、図1に示すように、鉄筋籠3の長手方向に離間して配置される。それぞれ対面するスペーサー34の距離が杭孔2の口径と略同一とされている。スペーサー34は、鉄筋籠3の鉛直方向に沿った中心軸を杭孔2の中心軸と一致するように鉄筋籠3の位置を調整している。
【0031】
また、力骨筋33の内側には、複数の採熱配管5が取り付けられる。採熱配管5は樹脂等からなり、可とう性を有する配管である。また、採熱配管5は、採熱配管5の内部を流通する液体状の熱媒が折り返す折り返し部5Aを備えており、その折り返し部5Aが下端位置に配置されている。採熱配管5は、結束バンド等によって鉄筋籠3における力骨筋33に取り付けられており、その長手方向が鉄筋籠3の高さ方向に沿って配置されている。また、採熱配管5の両端部は杭孔2の上端開口部から外部に向けて引き出された状態となっている。
【0032】
さらに、図4に示すように、採熱配管5における折り返し部5Aは、先端が尖った形状をなす先鋭部5Bとされている。採熱配管5は、一方の端部から熱媒を流入させ、他方の端部から熱媒を排出させる。この採熱配管5を流通する熱媒は、採熱配管5を介して地中を循環することによって吸熱もしくは放熱を行い、地上における図示しない空調設備等の熱消費装置と地中と間での熱交換を行う。
【0033】
また、本実施形態に係る採熱配管施工にあたり、基礎杭1を構築する際には、杭孔2の生成や鉄筋籠3の建込、さらにはコンクリートの4の打設等が行われる。これらの作業は、図5に示すトラックミキサー6や掘削機7等を用いて行われる。ここで、これらのトラックミキサー6や掘削機7の構造について説明する。
【0034】
図5に示すように、トラックミキサー6は、ドラム部6Aおよびシュート部6Bを備えており、ドラム部6Aおよびシュート部6Bは、車体6Cに設けられている。ドラム部6Aには、コンクリートが積載されている。ドラム部6Aに積載されているコンクリートは、シュート部6Bを介してトラックミキサー6の後方へ向けて吐出される。
【0035】
コンクリートの吐出位置には、コンクリートポンプ8が設置されている。コンクリートポンプ8には搬送管9の一端側が接続されている。この搬送管9の他端側は、掘削機7に接続されている。コンクリートポンプ8は、トラックミキサー6から吐出されたコンクリートを、搬送管9を介して掘削機7へ向けて圧送する。
【0036】
掘削機7の前端部には、鉛直方向に延在するアーム71が取り付けられている。アーム71には、アーム71の延在方向に沿って昇降自在とされたスライダ72が設けられている。さらに、アーム71には、ワイヤ73が設けられており、スライダ72には、スライダ72の移動に伴って鉛直方向に移動するロッド74が取り付けられている。このロッド74は、その長手方向が鉛直方向を向くようにしてスライダ72に取り付けられており、その上端側部にワイヤ73が取り付けられている。こうして、ロッド74は、ワイヤ73により吊り下げられている。
【0037】
さらに、ロッド74における上端部には、圧入口74Aを備えており、圧入口74Aには、搬送管9の他端部が接続されている。ロッド74の内部は中空構造となっており、コンクリートポンプ8から搬送管9を介して圧送されたコンクリートは圧入口74Aを通して、ロッド74の下方へ搬送される。
【0038】
また、ロッド74の下方先端部には、図6にも示すドリル75が設けられている。さらに、図6に示すように、ドリル75の長手方向の略中間部には練付部76が設けられている。ドリル75は、練付部76の上方に位置するドリル上部75Aおよび練付部76の下方に位置するドリル下部75Bを備えている。
【0039】
ドリル上部75Aには、ドリル75があらかじめ定められた回転方向に回転する際に、掘削土を下方に搬送するように角度が設定された上部スクリュー77Aが設けられている。さらに、練付部76の下方に位置するドリル下部75Bには、ドリル75があらかじめ定められた回転方向に回転する際に、掘削土を上方に搬送するように角度を設けた下部スクリュー77Bが設けられている。このように、上部スクリュー77Aと下部スクリュー77Bの設置角度は逆転しており、ドリル75があらかじめ定められた回転方向に回転する際に、掘削土は練付部76に搬送されることになる。
【0040】
練付部76は、ドリル75において最も径が大きくなるように構成されている。また、練付部76には、ドリル75の長手方向に延在する複数の溝が設けられている。そのためドリル75による掘削時には、上部スクリュー77Aおよび下部スクリュー77Bにより削土が練付部76に搬送されるとともに、練付部76は削土を杭孔2の孔壁2Aに押し付ける構成となっている。
【0041】
ドリル75の長手方向の上方先端部には、接続継手78が設けられている。また、ロッド74における下端部には、接続継手78と接続可能とされた図示しない接続継手が設けられている。ドリル75における接続継手78がロッド74における図示しない接続継手に対して回転挿入されることにより、ドリル75は、ロッド74の下端部に接続される。
【0042】
また、ドリル75の下端部には吐出口79が形成されている。ドリル75は長手方向の全長に亘って中空構造として構成されており、搬送管9を介して圧送されたコンクリートは、ロッド74を介して圧送され、吐出口79から排出される。
【0043】
次に、本実施形態に係る採熱配管施工方法を用いた採熱配管施工作業の手順について説明する。
【0044】
基礎杭1を用いた採熱配管5の施工では、図7(a)に示すように、最初に杭孔2の掘削作業が行われる。掘削機7は、先端部にドリル75が取り付けられたロッド74を回転駆動させながら下降させて地盤を掘削する。掘削機7は、ドリル75に設けられた練付部76により掘削土を孔壁2Aに練りつけながら杭孔2を掘削する。杭孔2を掘削する間の掘削土は、孔壁2Aに練りつけられるため、掘削土は排出されずに掘削が行われる。
【0045】
こうして杭孔2が目標深度にまで掘削されると、ドリル75の回転駆動および下降を一旦停止させる。次に、ドリル75を下降時と同一方向に回転させながら上昇させるとともに、コンクリートポンプ8を駆動する。コンクリートポンプ8を駆動することにより、コンクリートが、搬送管9およびロッド74を介してドリル75まで搬送される。搬送されたコンクリートは、ドリル75の下端における吐出口79から杭孔2に対して圧入される。
【0046】
以後、図7(b)に示すように、掘削機7は、コンクリートを杭孔2に充填しながらロッド74を徐々に引き上げていく。ロッド74を引き上げる際にも、杭孔2形成時と同様に、掘削土は孔壁2Aに練りつけられる。その後、図7(c)に示すように、コンクリートが地表面まで充填されるまで、ロッド74の上昇およびコンクリートの圧入が続けられる。コンクリートは、杭孔2に充填されて未硬化コンクリート4Aとなる。
【0047】
杭孔2に対する未硬化コンクリート4Aの充填が終了した後、未硬化コンクリート4Aが硬化するまでにはある程度の時間を要する。ここで、未硬化コンクリート4Aが硬化する前に、杭孔2に対して鉄筋籠3を建て込む。鉄筋籠3の建込を行う際には、図8(a)に示すように、クレーン11によって鉄筋籠3を吊り下げて、鉄筋籠3を杭孔2に挿入する。鉄筋籠3は、杭孔2に挿入された後、頂部が杭孔2から突出し、この頂部がフーチングに固定される。このため、鉄筋籠3の長さは、杭孔2の深さからフーチングに固定される分の長さを加算した長さに地組みされている。また、鉄筋籠3がフーチングに固定されない様態の場合などには、鉄筋籠3の長さは、杭孔2の深さと略同一とすることもできる。
【0048】
その後、クレーン11に設けられた図示しない加振装置によって鉄筋籠3に対して振動を付与しながら、鉄筋籠3を徐々に下降させる。下降される鉄筋籠3は、図8(b)に示すように、自重によって未硬化コンクリート4A内に沈降していく。ここで、鉄筋籠3に振動が付与されることにより、鉄筋籠3は未硬化コンクリート4Aに対して沈降しやすくされている。
【0049】
こうして、未硬化コンクリート4Aに対する鉄筋籠3の沈降が進み、鉄筋籠3が杭孔2の底部に到達することにより、鉄筋籠3の建込が終了する。鉄筋籠3には、採熱配管5が取り付けられていることから、鉄筋籠3の建込が行われることにより、採熱配管5の杭孔2への設置も同時に行われる。鉄筋籠3が杭孔2の底部に到達すると、鉄筋籠3はクレーンから取り外される。その後、一定時間が経過することにより、図8(c)に示すように、未硬化コンクリート4Aが固化して硬化コンクリート4となり、採熱配管5を備える基礎杭1が構築される。
【0050】
鉄筋籠3に採熱配管5が取り付けられている場合、鉄筋籠3を建て込んだ後にコンクリートを打設すると、採熱配管5を鉄筋籠3における鉄筋との間にある程度の距離を確保しなければコンクリートの充填性が低下するおそれがある。この点、本実施形態に係る採熱配管施工方法においては、未硬化コンクリート4Aに対して鉄筋籠3を挿入している。このため、採熱配管5を鉄筋籠の鉄筋組立用力骨に直接取り付けた場合でもコンクリートの充填性が低下することを防止することができる。したがって、たとえば鉄筋籠の内部に採熱配管を支持するための鉄筋を配筋する必要がなくなり、その結果、コンクリートの充填性を確保しつつ部品点数を削減することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る採熱配管施工方法では、杭孔2を掘削する際に、掘削土を排出することなく孔壁2Aに練りつけ、杭孔2に対する安定液の注入を不要としたいわゆる無排土工法を用いている。このため、不良コンクリートが生成される原因であるスライムを発生させないようにすることができるので、基礎杭上部に生じる不良コンクリートをはつる作業が不要となる。
【0052】
以下に、不良コンクリートのはつり作業を不要とした場合の効果についてさらに説明する。図9は(a)は、杭孔2に安定液を注入して構築された基礎杭1の上端部の図である。図9(a)に示すように、基礎杭1の上方における地表面から突出した位置には、スライムが含まれて基礎杭1よりも強度が劣り、はつり作業によって削り取られる不良コンクリート1Aが形成される。また、不良コンクリート1Aには、採熱配管5の端部が含まれた状態となっている。
【0053】
この不良コンクリート1Aを削り取るはつり作業は、比較的固いコンクリートを削り取る必要があることから、不良コンクリート1Aに大きな衝撃を与えたり、切削能力の大きい作業機械などを用いたりして行われることとなる。このため、これらの作業機械等が誤って採熱配管5に接触してしまうと、採熱配管5を損傷したり、さらには切断してしまったりする可能性が低くなかった。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る採熱配管施工方法では、いわゆる無排土工法を採用していることから、図9(b)に示すように、図9(a)に示すような不良コンクリート1Aが形成されないこととなる。このため、不良コンクリート1Aのはつり作業が不要とるので、はつり作業に伴う採熱配管5の破損を防止することが可能になる。
【0055】
また、鉄筋籠3の外周部には、鉄筋籠3の全長に亘ってらせん状に形成されているフープ筋32が設けられている。このようなフープ筋32が設けられていることにより、鉄筋籠3がトラス梁状となって耐久性が向上する。このため、鉄筋籠3を杭孔2に挿入する際に、鉄筋籠3を容易に挿入することができる。
【0056】
また、採熱配管5は、鉄筋籠3におけるフープ筋32よりも内側の位置に取り付けられる。採熱配管5がフープ筋32よりも内側に配置されていることにより、採熱配管5がフープ筋32よりも外側に配置されている場合のように、規定のかぶり厚を確保するために、杭径を大きくせずに済ませることができる。
【0057】
さらに、採熱配管5における折り返し部5Aは、先端が尖った形状をなす先鋭部5Bとされている。このように、採熱配管5の先端が先鋭部5Bとされていることにより、鉄筋籠3および採熱配管5を未硬化コンクリート4Aに容易に挿入することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る採熱管施工方法では、1つのフーチング10に対して、4本の基礎杭1を設けており、単位面積当たりの基礎杭1の施工本数を多くしている。このため、複数の基礎杭1が密集することとなるので、基礎杭1に設けられた採熱配管5における採熱効果を高めることができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、練付部76を備えるドリル75を用いた無排土工法によって基礎杭1を構築しているが、他の無排土工法によって基礎杭1を構築する態様とすることもできる。また、上記実施形態では、鉄筋籠3が円筒形状をなしているが、断面が矩形状の方形状をなす態様とすることもできる。さらに、上記実施形態では、採熱配管5を力骨筋33に取り付けているが、主筋31やフープ筋32に取り付ける態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1…基礎杭
1A…不良コンクリート
2…杭孔
2A…杭壁
3…鉄筋籠
4…未硬化コンクリート
5…採熱配管
5A…折り返し部
5B…先鋭部
6…トラックミキサー
6A…ドラム部
6B…シュート部
7…掘削機
8…コンクリートポンプ
9…搬送管
10…フーチング
11…クレーン
31…主筋
32…フープ筋
33…力骨筋
34…スペーサー
71…アーム
72…スライダ
73…ワイヤ
74…ロッド
74A…圧入口
75…ドリル
75A…ドリル上部
75B…ドリル下部
76…練付部
77A…上部スクリュー
77B…下部スクリュー
78…接続部
79…吐出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちの基礎杭の内部に採熱配管を配設する採熱配管施工方法であって、
掘削機のロッドを下降させて、掘削土を孔壁側に逃がしながら地盤を掘削して杭孔を形成し、
前記掘削機のロッドが目標深度に到達した後に、前記掘削機のロッドを引き上げながら前記ロッドの先端部からコンクリートを圧入し、
前記杭孔にコンクリートを未硬化の状態で充填し、前記掘削機のロッドを杭孔から引き抜いた後に、未硬化のコンクリートが硬化する前に前記杭孔に対して採熱配管が設置された前記鉄筋籠を挿入し、
その後、前記コンクリートを硬化させて、前記基礎杭を生成することを特徴とする採熱配管施工方法。
【請求項2】
前記杭孔に挿入される前記鉄筋籠が1つである請求項1に記載の採熱配管施工方法。
【請求項3】
前記鉄筋籠は、高さ方向に延在する複数の主筋を備え、前記複数の主筋は、前記鉄筋籠を前記杭孔に挿入された状態で平面視して周状に配置されており、
前記複数の主筋の周囲にはフープ筋が設けられており、
前記採熱配管は、前記フープ筋よりも内側に配置されている請求項1または請求項2に記載の採熱配管施工方法。
【請求項4】
前記フープ筋は、前記複数の主筋の周囲にらせん状に配筋される、請求項3に記載の採熱配管施工方法。
【請求項5】
前記採熱配管の下端部は、前記採熱配管を流通する熱媒が折り返す折り返し部とされており、前記折り返し部に先鋭部が形成されている請求項1〜請求項4に記載のうちのいずれか1項に記載の採熱配管施工方法。
【請求項6】
場所打ち基礎杭の内部に採熱配管が配設された場所打ちの基礎杭であって、
掘削機のロッドを下降させて、掘削土を孔壁側に逃がしながら地盤を掘削して杭孔を形成し、
前記掘削機のロッドが目標深度に到達した後に、前記掘削機のロッドを引き上げながら前記ロッドの先端部からコンクリートを圧入し、
前記杭孔にコンクリートを未硬化の状態で充填し、前記掘削機のロッドを杭孔から引き抜いた後に、未硬化のコンクリートが硬化する前に前記杭孔に対して採熱配管が設置された前記鉄筋籠を挿入し、
その後、前記コンクリートを硬化させて、前記基礎杭を生成して構築されていることを特徴とする基礎杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−37161(P2012−37161A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178783(P2010−178783)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】