説明

探査システム、シールド機及びシールド機の掘進工法

【課題】切羽近傍の複数箇所の地山情報を取得し、それら複数の地山情報に基づいて地山の安定度を判定可能な探査システム及びこの探査システムを備えたシールド機並びにこのシールド機を用いた掘進工法を提供する。
【解決手段】シールド機1は、切羽7の安定度を探査するための探査システム8を備えている。探査システム8は、シールド機1の上部に設置された上部探査装置9と、シールド機1の内部に設置された前方探査装置10と、カッターヘッド2に設置された切削抵抗検出装置と、上部探査装置9、前方探査装置10及び切削抵抗検出装置により測定された測定結果に基づいて地山Eの安定度を判定するための判定装置12と、各装置の測定結果や判定結果を表示するための表示装置13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切羽近傍の地山情報を探査するための探査システム及びその探査システムを備えたシールド機並びにそのシールド機を用いた掘進工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シールド工法では、シールド機の進行方向前方又はシールド機直上の地山情報を取得しながらトンネルを掘削する。
【0003】
例えば、特許文献1には、シールド機の上部に、シールド機本体の外殻から出没可能にジャッキを設けて、シールド機直上の地山の強度を測定する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、シールド機の内部に、カッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能にロータリーパーカションドリルを設けて、進行方向前方の地山の強度を測定する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、カッタービットに歪ゲージを取り付けて、切羽を削孔する際の歪量を測定することにより切削抵抗を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭61−17103号公報
【特許文献2】特開平10−131680号公報
【特許文献3】特開2009−221802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した各方法では、シールド機直上の地山の強度、進行方向前方の地山の強度、地山の切削抵抗のいずれか1つの地山情報しか得ることができない。このため、たとえ自立する地山区間を掘進していても、安全上の観点から、予め設計等により決定された所定の切羽土圧で掘削しなければならないので、掘削抵抗を低減できず、掘進速度を上げることができないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、切羽近傍の複数箇所の地山情報を取得し、それら複数の地山情報に基づいて地山の安定度を判定可能な探査システム及びこの探査システムを備えたシールド機並びにこのシールド機を用いた掘進工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シールド機に設置されて切羽近傍の地山の安定度を探査するための探査システムであって、
前記シールド機内の上部に、前記シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して前記地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、
前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、
前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、
前記上部探査装置、前記前方探査装置及び前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果に基づいて前記地山の安定度を判定するための判定装置と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、シールド機の停止中に、シールド機直上の地山の強度及び進行方向前方の地山の強度等の地山情報を取得し、これらの地山情報に基づいて地山の安定度を判定することができる。さらに、シールド機の掘進中に、切削抵抗等の地山情報を取得し、この地山情報とシールド機の停止中に取得した地山情報とに基づいて、地山の安定度をより正確に判定することができる。
したがって、シールド機の停止中に地山の安定度が高いと判定したにもかかわらず、掘削開始後、停止中に判定した安定度よりも実際の地山の安定度が低いと判定した場合は、予め設計等により決定された所定の切羽土圧で掘削することにより、安全に掘進することができる。
一方、シールド機の停止中に地山の安定度は低いと判定したにもかかわらず、掘削開始後、停止中に判定した安定度よりも実際の地山の安定度が高くて地山が自立すると判定した場合は、予め設計等により決定された所定の切羽土圧よりも低い圧力で掘進することにより、掘削抵抗を低減できて高速掘進が可能となる。
【0011】
本発明において、前記上部探査装置、前記前方探査装置、前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果、及び前記判定装置による判定結果を表示するための表示装置を更に備えることとすれば、作業員は地山の状況を容易に把握することができる。
【0012】
また、本発明において、前記上部探査装置は、前記シールド機の進行方向に所定の間隔で複数、設けられていることとしてもよい。
【0013】
本発明によれば、地山の複数箇所を測定することにより、地山の状態をより正確に把握することができる。
【0014】
また、本発明において、前記所定の間隔は、セグメントの幅と略同一であることとしてもよい。
【0015】
本発明によれば、所定の間隔をセグメントの幅と略同一にすることにより、シールド機がセグメント1つ分の距離だけ掘進すると、上部探査装置もセグメント1つ分の距離だけ前進することとなる。したがって、シールド機の掘進後、例えば、前から2番目の上部探査装置は、前から1番目の上部探査装置が前回測定した箇所に到達するため、再び同じ箇所を測定することができる。これにより、地山の同じ箇所を時間をおいて測定することとなるので、シールド機の掘進に伴う地山の変状を検知することができる。
【0016】
本発明は、前記前方探査装置は、前記シールド機本体内の異なる高さ位置に複数、設けられていることとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、進行方向前方の地山の複数箇所を削孔することにより、掘削対象面全体の強度を把握することができる。
【0018】
本発明は、地山内を掘進するシールド機であって、
前記シールド機内の上部に、前記シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して前記地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、
前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、
前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、
前記上部探査装置、前記前方探査装置及び前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果に基づいて前記地山の安定度を判定するための判定装置と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記上部探査装置、前記前方探査装置、前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果、及び前記判定装置による判定結果を表示するための表示装置を更に備えることとしてもよい。
【0020】
本発明は、シールド機内の上部に、当該シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、を備えたシールド機の掘進工法において、
前記シールド機の停止中に、前記上部探査装置を前記シールド機直上の地山へ貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定する貫入工程と、前記前方探査装置で進行方向前方の地山を削孔しながら、その削孔エネルギー及び削孔速度を測定する削孔工程と、を実施し、これら両工程により測定された測定結果に基づいて切羽近傍の前記地山の安定度を判定する第1の判定工程を実施し、
前記シールド機の掘進中に、前記切削抵抗検出装置で前記切羽を切削しながら、前記切羽の切削抵抗を測定する切削工程を実施し、前記貫入工程、前記削孔工程及び前記切削工程により測定された測定結果に基づいて、切羽近傍の前記地山の安定度を判定する第2の判定工程を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、切羽近傍の複数箇所の地山情報を取得し、それら複数の地山情報に基づいて地山の安定度を判定可能な探査システム及びこの探査システムを備えたシールド機並びにこのシールド機を用いた掘進工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図2】本実施形態に係るシールド機の上部の側断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】(a)は切削抵抗検出装置を先行ビットに取り付けた状態を示す正面図、(b)は切削抵抗検出装置を先行ビットに取り付けた状態を示す側面図、(c)は切削抵抗検出装置を先行ビットに取り付けた状態を示す底面図である。
【図6】(a)は切削抵抗検出装置をティースビットに取り付けた状態を示す平面図、(b)は切削抵抗検出装置をティースビットに取り付けた状態を示す正面図、(c)は切削抵抗検出装置をティースビットに取り付けた状態を示す側面図である。
【図7】シールド機による掘進の施工手順を示す図である。
【図8】シールド機による掘進の施工手順を示す図である。
【図9】シールド機による掘進の施工手順を示す図である。
【図10】シールド機による掘進の施工手順を示す図である。
【図11】前方探査装置の他の配置例を示す図である。
【図12】歪ゲージの他の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1及び図2は、それぞれ本実施形態に係るシールド機1の正面図及び上部の側断面図である。また、図3は、図2のA−A断面図である。
【0025】
図1〜図3に示すように、シールド機1は、円形のシールド機1の前面側に回転可能に設けられたカッターヘッド2と、カッターヘッド2を駆動するための駆動源3と、カッターヘッド2と隔壁4との間に形成されるチャンバー5と、掘削土砂をチャンバー5から排出するための排土機構6と、切羽7の安定度を探査するための探査システム8とを備えている。
【0026】
探査システム8は、シールド機1の上部に設置された上部探査装置9と、シールド機1の内部に設置された前方探査装置10と、カッターヘッド2に設置された切削抵抗検出装置11と、上部探査装置9、前方探査装置10及び切削抵抗検出装置11により測定された測定結果に基づいて地山Eの安定度を判定するための判定装置12と、各装置9、10、11、12の測定結果や判定結果を表示するための表示装置13と、を備えている。以下、各装置9、10、11、12についてそれぞれ説明する。
【0027】
図2に示すように、上部探査装置9は、シールド機1の外殻1aから出没可能で、シールド機1の上方に位置する地山Eに貫入することができる。
【0028】
この上部探査装置9は、シリンダ14と、シリンダ14の伸縮圧を測定するための圧力計(図示しない)と、シリンダ14の伸縮長を測定するためのストローク計(図示しない)と、から構成されており、地山Eへの貫入圧力及び貫入量を測定する。
【0029】
上部探査装置9(9a〜9b)は、シールド機1の進行方向に所定の間隔Lで複数台、設けられている。本実施形態においては、所定の間隔Lをセグメント21の1つ分の幅の長さと同じにした。これにより、一の上部探査装置9が貫入する箇所と、シールド機1がセグメント21の1つ分の距離だけ掘進した後に、当該一の上部探査装置9の後方に隣接する上部探査装置9が貫入する箇所とが同じになる。したがって、地山Eの同じ箇所における貫入圧力及び貫入量を、時間をおいて複数回測定することとなる。これによって、シールド機1の上方の地盤変状を把握することが可能となる。
【0030】
各上部探査装置9a〜9bの圧力計及びストローク計は、運転室22内に設置された判定装置12に接続されており、それぞれの機器で測定された結果は判定装置12に送信される。
また、判定装置12は、モニター等の表示装置13に接続されており、貫入圧力と貫入量との関係がこの表示装置13に表示される。
【0031】
図4は、図1のB−B断面図である。図4に示すように、前方探査装置10は、カッターヘッド2よりも進行方向前方に出没可能で、シールド機1の前方に位置する地山Eを削孔する。
【0032】
本実施形態においては、この前方探査装置10として、回転しながら打撃にて地山Eを削孔可能な油圧式パーカションドリルを用いた。
【0033】
前方探査装置10(10a〜10g)は、図3に示すように、カッターヘッド2の中心軸23を中心とする円の同心円上で、かつ、図3に対して右側に複数台、配置されている。これにより、異なる深度の強度を測定することができる。したがって、進行方向の地山Eの強度を正確に把握することができる。
【0034】
前方探査装置10で地山Eを削孔しながら、各前方探査装置10の打撃エネルギー、打撃数、伝達効率、削孔速度、孔断面積等に基づいて、単位体積あたりの地山Eを削孔するために必要な削孔エネルギーを下記の式(1)により算出する。
Ed=(Ep×Np×T)/(Vd×S)・・・(1)
ここで、Ed:削孔エネルギー(J/cm)、Ep:打撃エネルギー(J)、Np:打撃数(bpm)、T:伝達効率(%)、Vd:削孔速度(cm/min)、S:孔断面積(cm)である。なお、打撃エネルギー、打撃数、伝達効率、孔断面積等の削孔条件は、予め設計等により決定される。
【0035】
各前方探査装置10は、地山Eを削孔しながら削孔速度を測定し、削孔エネルギーをリアルタイムに算出する。
【0036】
各前方探査装置10は、運転室22内に設置された判定装置12に接続されており、各前方探査装置10の削孔条件データ、削孔速度及び削孔エネルギー値は判定装置12に送信される。
また、判定装置12に接続されている表示装置13には、削孔条件、削孔速度及び削孔エネルギー値が表示される。
【0037】
図1に示すように、カッターヘッド2は、中心軸23と、中心軸23を中心にして等角度おきに放射状に設置された12本のスポーク15と、スポーク15の中央部に取り付けられた先行ビット16と、スポーク15の両側に取り付けられたティースビット17と、から構成される。
【0038】
カッターヘッド2を回転させると、先行ビット16で切羽7を掘削することにより形成された溝の間を、後続するティースビット17で掘削することにより、断面が円形状のトンネルを掘削することができる。
【0039】
図5は、先行ビット16に切削抵抗検出装置11aを取り付けた状態を示す図である。
図5に示すように、切削抵抗検出装置11aは、先行ビット16の側面16a、16bの下部に取り付けられた歪ゲージ18と、一端が歪ゲージ18に、他端が判定装置12に接続された電線19と、から構成されている。
【0040】
歪ゲージ18は、カッターヘッド2の回転方向前方側の側面16a及びこの側面16aと反対側の側面16bのそれぞれの下部に取り付けられている。
【0041】
電線19は、スポーク15の表面側から内部へ外殻15aを貫通するように設置されている。
【0042】
切羽7を切削するために、カッターヘッド2を回転させて先行ビット16を切羽7に当接させると、先行ビット16に反力が作用する。そして、その反力によって引張歪及び圧縮歪が先行ビット16に生じる。これらの歪量は、歪ゲージ18により測定され、その測定結果は電線19を介して判定装置12に送信される。
【0043】
図6は、ティースビット17に切削抵抗検出装置11bを取り付けた状態を示す図である。
図6に示すように、切削抵抗検出装置11bは、ティースビット17を支持するためのホルダー20の下端面に取り付けられた歪ゲージ25と、一端が歪ゲージ25に、他端が判定装置12に接続された電線26と、から構成されている。
【0044】
電線26も電線19と同様に、スポーク15の表面側から内部へ外殻15aを貫通するように設置されている。
【0045】
切羽7を切削するために、カッターヘッド2を回転させてティースビット17を切羽7に当接させると、ティースビット17に反力が作用する。そして、この反力が、ピン24を介してホルダー20に伝達されることによって。ホルダー20に歪みが生じる。この歪量は、歪ゲージ25により測定され、その測定結果は電線26を介して判定装置12に送信される。
【0046】
判定装置12は、掘進中に、先行ビット16及びティースビット17の歪量に基づいて周知の手法により、掘削抵抗をリアルタイムに算出する。
【0047】
また、判定装置12は、シールド機1の停止中に、各上部探査装置9から得られた貫入圧力及び貫入量と、各前方探査装置10から得られた削孔条件データ、削孔速度及び削孔エネルギー値と、に基づいて、地山Eの安定度を判別する。具体的には、自立する地山及び自立しない地山におけるそれぞれの貫入圧力、貫入量、削孔条件データ、削孔速度及び削孔エネルギー値等を予め取得して記憶し、これらの測定結果と、現場にて上部探査装置9及び前方探査装置10から得られた測定結果と、を比較して、地山Eの自立の可否を安定度として判別する。
【0048】
この判別結果に基づいてシールド機1の切羽土圧、掘進速度等の掘進条件を設定し、その後、掘進を開始する。
【0049】
掘進中は、判定装置12が、先行ビット16及びティースビット17の歪量に基づいて、常時、掘削抵抗を算出し、この算出結果と、停止時に上部探査装置9及び前方探査装置10から得られた測定結果と、に基づいて地山Eの安定度を判別する。具体的には、自立する地山及び自立しない地山における先行ビット16及びティースビット17の歪量を予め取得して記憶し、これらの測定結果と、掘進中に取得された先行ビット16及びティースビット17の歪量と、を比較するとともに、停止中に上部探査装置9及び前方探査装置10から得られた測定結果を参考にして、掘進中の地山Eの自立の可否についてより正確に判別する。
このように、掘進中に得られる判別結果に基づいて、切羽土圧、加泥材の添加量、排土量、掘進速度等の掘進条件を再調整しながら、掘進を継続する。例えば、地山Eの安定度が低い(例えば、軟弱地盤)場合には、所定の切羽土圧を設定し、加泥材添加量の注入率、或いは排土量の調整を行って、地山Eの安定を確保する。一方、地山Eの安定度が高い(例えば、硬質地盤)場合には、切羽土圧を低くして、加泥材添加量、或いは排土量の調整を行って掘進速度を増加させる。
【0050】
次に、上述した構成からなるシールド機1の掘進工法について、施工手順にしたがって説明する。
【0051】
図7〜図10は、シールド機1による掘進の施工手順を示す図である。
まず、図7に示すように、セグメント21を設置する際等のシールド機1の停止中に、各上部探査装置9(9a〜9c)を地山Eへ貫入して、その貫入圧力及び貫入量を測定する貫入工程を実施する。
測定結果は、判定装置12に送信され、運転室22内のその表示装置13に表示される。
【0052】
次に、図8に示すように、シールド機1の停止中に、各前方探査装置10(10a〜10g)をカッターヘッド2よりも進行方向前方に出没させて、進行方向の地山Eを削孔する削孔工程を実施する。
【0053】
地山Eを削孔する際の各前方探査装置10(10a〜10g)の削孔条件データ、削孔速度及び削孔エネルギー値は、判定装置12に送信され、運転室22内のその表示装置13に表示される。
【0054】
なお、本実施形態においては、貫入工程の後に削孔工程を実施する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、削孔工程の後に貫入工程を実施したり、両工程を同時に実施したりしてもよい。要は、シールド機1の停止中に両工程を実施すればよい。
【0055】
次に、貫入工程及び削孔工程で得られた結果に基づいて、判定装置12が、進行方向前方及びシールド機1直上の切羽7近傍の地山Eの安定度を判定する第1の判定工程を実施する。具体的には、地山Eの自立の可否について判別する。
そして、第1の判定工程による判定結果に基づいて、切羽土圧、加泥材の添加量、排土量、掘進速度等の掘進条件を決定する。掘進条件をシールド機1に入力した後、シールド機1を掘進させる。
【0056】
次に、図9に示すように、シールド機1を掘進させて、先行ビット16及びティースビット17で切羽7を切削しながら、両切削抵抗検出装置11a、11bで歪量を測定する切削工程を実施する。
測定結果は、判定装置12に送信され、運転室22内のその表示装置13に表示される。
【0057】
両切削抵抗検出装置11a、11bにより測定された結果に基づいて判定装置12により、掘削抵抗をリアルタイムに算出し、この掘削抵抗に基づいてより正確に地山Eの安定度を判別する第2の判定工程を実施する。具体的には、地山Eの自立の可否について、第1の判定工程よりも正確に判別する。
【0058】
そして、第2の判別工程による判定結果に基づいて、シールド機1の掘進速度を設定するとともに、切羽土圧、加泥材の添加量、排土量等の掘進条件を再調整する。
【0059】
次に、図10に示すように、シールド機1が所定の距離Lだけ進行したら掘進を停止し、シールド機1のテール部に新しいセグメント21dを設置する。
【0060】
次に、切削工程の測定結果を考慮しながら、上記貫入工程と同様に、各上部探査装置9(9a〜9c)を地山Eへ貫入して、その貫入圧力及び貫入量を測定する。このとき、上部探査装置9b、9cは、上記貫入工程において、それぞれ上部探査装置9a、9bにて前回測定した箇所(図10中のNo.1貫入位置及びNo.2貫入位置)を再び測定することとなる。
測定結果は、判定装置12に送信され、さらに運転室22内のその表示装置13に表示されて、前回の測定結果と比較し、地山Eの安定度の判定に利用される。
【0061】
また、シールド機1の停止中に削孔工程も実施し、貫入工程及び削孔工程で得られた結果に基づいて、判定装置12が、切羽7近傍の地山Eの安定度を判定する第1の判定工程を再び実施する。
【0062】
なお、前回の削孔工程において、シールド機1の1回の掘進距離よりも長い距離(例えば、30m程度)を削孔した場合においては、シールド機1が、削孔済み地山区間を通過する間は削孔工程を省いてもよい。
【0063】
以上のように、シールド機1の停止中に、貫入工程及び削孔工程を実施してその結果に基づいて第1の判定工程を実施し、シールド機1の掘進中に、切削工程を実施しながら、その結果に基づいて第2の判定工程を実施することを繰り返してトンネルを構築する。
【0064】
なお、本実施形態においては、上部探査装置9(9a〜9c)を設置する所定の間隔Lをセグメント21の1つ分の幅の長さとした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、シールド機1が1回の掘進で進む距離と同じになるように設定されていればよい。
【0065】
なお、本実施形態においては、前方探査装置10(10a〜10g)をカッターヘッド2の中心軸23を中心とする同心円上で、かつ、シールド機1の片側にのみ配置したが、この位置に限定されるものではない。例えば、図11に示すように、シールド機1内の左右両側に交互に設置してもよく、要は、異なる高さに設けられていればよい。
【0066】
なお、本実施形態においては、歪ゲージ25をホルダー20の下端面に取り付けた場合について説明したが、この位置に限定されるものではなく、図12に示すように、ティースビット17の側面17a等に取り付けてもよい。
【0067】
上述したシールド機1によれば、シールド機1の停止中に、シールド機1直上の地山Eの強度及び進行方向前方の地山Eの強度等の地山情報を取得し、これらの地山情報に基づいて地山Eの安定度を判定することができる。さらに、シールド機1の掘進中に、切削抵抗等の地山情報を取得し、この地山情報とシールド機1の停止中に取得した地山情報とに基づいて、地山Eの安定度をより正確に判定することができる。
したがって、シールド機1の停止中に地山Eの安定度が高いと判定したにもかかわらず、掘削開始後、停止中に判定した安定度よりも実際の地山Eの安定度が低いと判定した場合は、所定の切羽土圧で掘削することにより、安全に掘進することができる。
一方、シールド機1の停止中に地山Eの安定度は低いと判定したにもかかわらず、掘削開始後、停止中に判定した安定度よりも実際の地山Eの安定度が高くて地山Eが自立すると判定した場合は、予め設計等により決定された切羽土圧よりも低い圧力で掘進することにより、掘削抵抗を低減できて高速掘進が可能となる。
【0068】
また、上部探査装置9、前方探査装置10、切削抵抗検出装置11により測定された測定結果を表示装置13で表示するので、作業員が地山Eの状況を容易に把握することができる。
【0069】
また、判定装置12による判定結果も表示装置13で表示するので、地山Eの安定度を容易に把握することができる。
【0070】
また、上部探査装置9を配置する所定の間隔Lをセグメント21の幅の長さと略同一にすることにより、シールド機1がセグメント21の1つ分の距離だけ掘進すると、上部探査装置9もセグメント21の1つ分の距離だけ前進することとなる。したがって、シールド機1直上の地山Eの同じ箇所を複数回、測定することができる。これにより、同じ箇所を時間をおいて測定することとなるので、シールド機1の掘進に伴う地山Eの変状を検知することができる。
【0071】
また、前方探査装置10で進行方向前方の地山Eの複数箇所を削孔することにより、掘削対象面全体の強度を把握することができる。
【0072】
また、切削工程の測定結果を次の貫入工程及び削孔工程における測定結果に反映することができるので、これらの測定結果の精度を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態においては、地山Eの安定度を判定装置12で判定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、人間が判定してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 シールド機
1a 外殻
2 カッターヘッド
3 駆動源
4 隔壁
5 チャンバー
6 排土機構
7 切羽
8 探査システム
9 上部探査装置
9a〜9c 各上部探査装置
10 前方探査装置
10a〜10g 各前方探査装置
11 切削抵抗検出装置
11a、11b 各切削抵抗検出装置
12 判定装置
13 表示装置
14 シリンダ
15 スポーク
15a 外殻
16 先行ビット
16a、16b 側面
17 ティースビット
17a 側面
18 歪ゲージ
19 電線
20 ホルダー
21 セグメント
21a〜21d 各セグメント
22 運転室
23 回転軸
24 ピン
25 歪ゲージ
26 電線
E 地山

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機に設置されて切羽近傍の地山の安定度を探査するための探査システムであって、
前記シールド機内の上部に、前記シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して前記地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、
前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、
前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、
前記上部探査装置、前記前方探査装置及び前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果に基づいて前記地山の安定度を判定するための判定装置と、
を備えることを特徴とする探査システム。
【請求項2】
前記上部探査装置、前記前方探査装置、前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果、及び前記判定装置による判定結果を表示するための表示装置を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の探査システム。
【請求項3】
前記上部探査装置は、前記シールド機の進行方向に所定の間隔で複数、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の探査システム。
【請求項4】
前記所定の間隔は、セグメントの幅と略同一であることを特徴とする請求項3に記載の探査システム。
【請求項5】
前記前方探査装置は、前記シールド機本体内の異なる高さ位置に複数、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の探査システム。
【請求項6】
地山内を掘進するシールド機であって、
前記シールド機内の上部に、前記シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して前記地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、
前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、
前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、
前記上部探査装置、前記前方探査装置及び前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果に基づいて前記地山の安定度を判定するための判定装置と、
を備えることを特徴とするシールド機。
【請求項7】
前記上部探査装置、前記前方探査装置、前記切削抵抗検出装置により測定された測定結果、及び前記判定装置による判定結果を表示するための表示装置を更に備えることを特徴とする請求項6に記載のシールド機。
【請求項8】
シールド機内の上部に、当該シールド機の外殻から出没可能に設置され、当該外殻から外方へ突出して地山に貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定可能な上部探査装置と、前記シールド機内に、前記シールド機のカッターヘッドよりも進行方向前方に出没可能に設置され、当該カッターヘッドよりも前方へ突出して前記地山を削孔しながら、削孔エネルギー及び削孔速度を測定可能な前方探査装置と、前記カッターヘッドに設置され、前記カッターヘッドを回転させて切羽を切削しながら、切削抵抗を測定可能な切削抵抗検出装置と、を備えたシールド機の掘進工法において、
前記シールド機の停止中に、前記上部探査装置を前記シールド機直上の地山へ貫入しながら、その貫入圧力及び貫入量を測定する貫入工程と、前記前方探査装置で進行方向前方の地山を削孔しながら、その削孔エネルギー及び削孔速度を測定する削孔工程と、を実施し、これら両工程により測定された測定結果に基づいて切羽近傍の前記地山の安定度を判定する第1の判定工程を実施し、
前記シールド機の掘進中に、前記切削抵抗検出装置で前記切羽を切削しながら、前記切羽の切削抵抗を測定する切削工程を実施し、前記貫入工程、前記削孔工程及び前記切削工程により測定された測定結果に基づいて、切羽近傍の前記地山の安定度を判定する第2の判定工程を実施することを特徴とするシールド機の掘進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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