説明

探知装置、スキャニングソナー、探知装置の制御方法及び探知装置用プログラム

【課題】装置設定のためのパラメータの管理を容易に行うことができる探知装置を提供する。
【解決手段】制御部70の抽出部71は、メモリ80の格納領域82から付与されるコード化情報に基づいて、メモリ80の格納領域81に格納されている装置設定用の全てのパラメータの中からエコー画像関連パラメータの値を抽出する。エンコード部73は、抽出部71で抽出されるエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換する。イメージ信号生成部74がエンコード部73で変換して得られるエコー画像関連コードを表示部20に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、探知結果をエコー画像として表示する機能を有する探知装置及びスキャニングソナー、並びに探知装置にエコー画像を表示させるための探知装置の制御方法及び探知装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶には、船舶の周囲の物標を探知するためにソナーや魚群探知機やレーダーなどの探知装置が搭載されている。スキャニングソナーを例に挙げると、船舶の全周囲に向けて送受波器から超音波(水の波動)を放射し、物標で反射されて戻ってくる超音波を送受波器で受けることによって物標の探知が行われる。船舶が漁船であれば、魚群が物標の典型的な例である。
【0003】
送受波器で受けた超音波は電気信号に変換されて信号処理され、視覚による情報把握が可能なように、信号処理された結果がディスプレイ上に表示される。
以下の説明では、このように物標に当たって跳ね返ってきた波動に基づいてディスプレイに表示される画像をエコー画像という。レーダーの場合の波動は電磁波である。例えば、スキャニングソナーのエコー画像の表示については、特許文献1(特開2008‐128900号公報)に記載されている。
【0004】
船舶に搭載されている探知装置の中でも、上述のようにディスプレイに表示されるエコー画像によって物標を認識するタイプのものにあっては、エコー画像の見え方が非常に重要である。例えば、スキャニングソナーを用いてマグロのような高速で泳ぐ魚の漁を行う場合には、エコー画像から魚群の移動経路を推測して仕掛けを投入する。この仕掛けの投入のタイミングをエコー画像によって判断するため、漁獲量がエコー画像の見え方に左右される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送受波器で得られる情報からエコー画像を目的に適合するように表示するには、送受波の環境や探知装置の性能や物標の特性によって信号処理を調整する必要がある。スキャニングソナーにおいては、波動として超音波を用いるため、送受波の環境の例として海況が挙げられる。超音波は、周波数や水温や塩分濃度などによって送波してから受波するまでの吸収減衰の状況が異なってくる。そのため、漁船に探知装置が搭載される場合には、操業する海域の海況によって超音波の吸収減衰に関するパラメータの設定が必要になる。
【0006】
また、探知装置の性能の差があることからパラメータによる調整が必要になる場合がある。例えば、送受波器の感度が高い場合と低い場合では得られる信号の強度に差が生じるため、感度をパラメータとしてエコー画像の形成の調節が必要になる。
【0007】
上述のパラメータはごく一部にすぎず、スキャニングソナーでは、装置として機能させるためのパラメータの設定が数百に及ぶ。そして、厄介なことに、ユーザーにおいても、海況などの日々変化する状況に合わせて一部のパラメータの設定の変更を余儀なくされる。海況などに応じて設定変更が必要なパラメータを一々管理して適切に設定するには経験や訓練が必要であるばかりでなく、煩雑で手間が掛かる。
【0008】
本発明の課題は、装置設定のためのパラメータの管理を容易に行うことができる探知装置、スキャニングソナー、探知装置の制御方法あるいは探知装置用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1観点に係る探知装置は、探知部と表示部と、探知部及び表示部を制御する制御部とを備える。探知部は、パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、探知領域の物標にあったって戻ってくる波動によって物標の探知を行う。表示部は、探知部で得られる波動に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、探知部で探知される物標の表示を行う。制御部は、コード化情報付与部と抽出部とエンコード部とを有する。コード化情報付与部は、エコー画像に影響するエコー画像関連パラメータについてのコード化情報の付与を行う。抽出部は、コード化情報付与部から付与されるコード化情報に基づいて、探知装置設定用の全てのパラメータの中からエコー画像関連パラメータの値を抽出する。エンコード部は、抽出部で抽出されるエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換して出力する。
【0010】
本発明の第1観点の探知装置では、抽出部とエンコード部とによって探知装置設定用のパラメータの中のエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードを得ることができる。そのため、探知装置の設定管理の中のエコー画像の見え方の設定の管理は、エコー画像関連コードによって行うことができる。このエコー画像関連コードは、探知装置の全てのパラメータの中の一部のパラメータであるため、コードの桁数が小さく、装置設定のためのパラメータの管理が容易になる。
本発明の探知装置においては、コード化情報付与部の付与するコード化情報がエコー画像関連パラメータを分類するための分類情報を含むことが好ましい。この場合、制御部が、分類情報に基づいて、抽出部で抽出されるパラメータの値を分類して順番に並べる分類部をさらに有することが好ましく、エンコード部が、分類部で順番に並べられるエコー画像関連パラメータの値を複数種類のエコー画像関連コードに変換することが好ましい。
それにより、エコー画像関連コードが複数種類のグループに分割されるため、一種類当たりのコードの桁数がさらに小さくなる。そのため、変更のあった種類だけを管理することで、管理の負担をさらに減らすことができる。
【0011】
本発明の探知装置においては、エコー画像関連コードを入力する操作部をさらに備えることが好ましい。この場合、制御部はデコード部と書換部とをさらに有することが好ましく、デコード部が操作部から入力されるエコー画像関連コードをデコードしてエコー画像関連パラメータの値に変換し、書換部がエコー画像関連パラメータの書き換えを行うことが好ましい。
【0012】
それにより、エコー画像関連コードを入力すると、デコード部と書換部とによって、エコー画像関連パラメータの書き換えを行うことができる。探知装置のエコー画像関連パラメータの設定をする際に、設定変更の頻度が多いエコー画像関連パラメータの設定をパラメータ毎に行わなくても済むため、パラメータの設定工数を減らすことができる。
【0013】
本発明の探知装置においては、操作部は、複数種類のエコー画像関連コードを入力可能に構成されることが好ましい。この場合、制御部は、デコード部で複数種類のエコー画像関連コードから得られる複数の値からエコー画像関連パラメータの値を解読する解読部をさらに有することが好ましい。
【0014】
それにより、エコー画像関連パラメータの中の書き換えが必要なグループだけを書き換えの対象とすることができ、入力するエコー画像関連コードの桁数が小さくなり、パラメータの設定がさらに容易になる。
【0015】
本発明の探知装置においては、操作部は、エコー画像関連パラメータのうちの少なくとも1つを入力可能に構成されていることが好ましい。この場合、書換部は、操作部から入力される少なくとも一つのエコー画像関連パラメータの書き換えを行うことが好ましく、抽出部は、書き換え後のエコー画像関連パラメータの値を抽出することが好ましく、エンコード部は、抽出部で抽出される書き換え後のエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換することが好ましい。
【0016】
それにより、エコー画像関連パラメータのうちの1つだけを書換部により書き換える場合でも、抽出部とエンコード部とによって、書換後のエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードを生成することができる。それにより、設定工数を増やすことなく書き換え後のエコー画像関連コードを得ることができ、さらに装置設定のためのパラメータの管理を行い易くなる。
【0017】
本発明の第2観点に係る探知装置は、探知部と表示部と制御部と操作部とを備える。探知部は、パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う。表示部は、探知部で得られる波動に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、探知部で探知される物標を表示する。制御部は、探知部及び表示部を制御する。操作部は、制御部に対してエコー画像関連コードを入力する。制御部は、デコード部と書換部とを有する。デコード部は、操作部から入力されるエコー画像関連コードをデコードしてエコー画像関連パラメータの値に変換する。書換部は、エコー画像関連パラメータの書き換えを行う。
本発明の第2観点の探知装置では、エコー画像関連コードを入力すると、デコード部と書換部とによって、エコー画像関連パラメータの書き換えを行うことができる。探知装置のエコー画像関連パラメータの設定をする際に、設定変更の頻度が多いエコー画像関連パラメータの設定をパラメータ毎に行わなくても済むため、パラメータの設定工数を減らすことができる。
【0018】
本発明に係るスキャニングソナーは、送受波器と表示部と制御部とを備える。送受波器は、パラメータにより設定される条件に従って海中の探知領域に向けて超音波ビームの走査を行い、探知領域の物標に当たって戻ってくる超音波によって物標の探知を行う。表示部は、送受波器で得られる超音波に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、送受波器で探知される物標を表示する。制御部は、送受波器及び表示部を制御する。制御部は、コード化情報付与部と抽出部とエンコード部とを有する。コード化情報付与部は、エコー画像に影響するエコー画像関連パラメータについてのコード化情報を付与する。抽出部は、コード化情報に基づいて、スキャニングソナー設定用のパラメータの中からエコー画像関連パラメータの値を抽出する。エンコード部は、抽出部で抽出されるエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換して出力する。
【0019】
本発明のスキャニングソナーでは、抽出部とエンコード部とによってスキャニングソナー設定用のパラメータの中のエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードを得ることができる。そのため、探知装置の設定管理の中のエコー画像の見え方の設定の管理は、エコー画像関連コードによって行うことができる。このエコー画像関連コードは、探知装置の全てのパラメータの中の一部のパラメータであるため、コードの桁数が小さく、装置設定のためのパラメータの管理が容易になる。
【0020】
本発明に係る探知装置の制御方法は、パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、探知部で得られる波動に関する情報をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、探知部で探知される物標を表示する表示部とを備える探知装置に対してエコー画像を表示させるための探知装置の制御方法である。そして、探知装置の制御方法は、抽出ステップとエンコードステップとを有する。抽出ステップでは、探知部が探知するエコー画像に影響するエコー画像関連パラメータの値を、探知装置設定用のパラメータの中から抽出する。エンコードステップでは、抽出ステップで抽出されるエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換する。
【0021】
本発明の探知装置の制御方法では、抽出ステップとエンコードステップとによって探知装置設定用のパラメータの中からエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードを得ることができる。そのため、探知装置の設定管理の中のエコー画像の見え方の設定の管理は、エコー画像関連コードによって行うことができる。このエコー画像関連コードは、探知装置の全てのパラメータの中の一部のパラメータであるため、コードの桁数が小さく、装置設定のためのパラメータの管理が容易になる。
【0022】
本発明に係る探知装置用プログラムは、パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、探知部で得られる波動に関する情報をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、探知部で探知される物標を表示する表示部とを備える探知装置に対してエコー画像を表示させるための探知装置用プログラムである。そして、探知装置用プログラムは、抽出ステップとエンコードステップとをコンピュータに実行させる。抽出ステップでは、探知部の探知結果から得られるエコー画像に影響するエコー画像関連パラメータの値を、探知装置設定用のパラメータの中から抽出する。エンコードステップでは、抽出ステップで抽出されるエコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換する。
【0023】
本発明の探知装置用プログラムでは、抽出ステップとエンコードステップとによって探知装置設定用のパラメータの中からエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードが得られるようにコンピュータに実行させることができる。そのため、探知装置の設定管理の中のエコー画像の見え方の設定の管理は、エコー画像関連コードによって行うことができる。このエコー画像関連コードは、探知装置の全てのパラメータの中の一部のパラメータであるため、コードの桁数が小さく、装置設定のためのパラメータの管理が容易になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の探知装置、スキャニングソナー、探知装置の制御方法あるいは探知装置用プログラムによれば、装置設定のためのパラメータの管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る探知装置の使用方法を説明するための概念図。
【図2】一実施形態に係るスキャニングソナーの表示部と操作部とを示す正面図。
【図3】図2の表示部に表示されるモニター画像の一例を示す正面図。
【図4】一実施形態に係るスキャニングソナーの構成を示すブロック図。
【図5】図4のスキャニングソナーの制御部の構成を説明するためのブロック図。
【図6】一実施形態によるパラメータの抽出と分類について説明するための概念図。
【図7】一実施形態によるパラメータのコード化の手順を示すフローチャート。
【図8】一実施形態によるパラメータの書換処理を説明するためのフローチャート。
【図9】図4のスキャニングソナーの制御部の他の構成を説明するためのブロック図。
【図10】図4のスキャニングソナーの制御部の他の構成を説明するためのブロック図。
【図11】図4のスキャニングソナーの制御部の他の構成を説明するためのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る探知装置は、ソナーや魚群探知機の超音波やレーダーの電磁波などの波動を送波して物標で反射された波動のエコーを受波して物標の探知を行う装置である。本発明の探知装置では、エコー画像として表示される物標を、探知装置の操作を行う者が認識することにより探知が行われる。以下の実施形態においては、上述のような探知装置の例にスキャニングソナーを挙げて説明を行っているが、本発明はスキャニングソナーに限定されるものではない。
<探知装置の使用方法>
図1には、船舶に搭載されたスキャニングソナー(探知装置)により送受波される超音波(波動)によって魚群(物標)を探知している様子が概念的に示されている。図1に示す船舶10には、スキャニングソナーの送受波器が設置されている。送受波器は、船舶10の船底において所定の高さに配置されている。送受波器は多数の超音波振動子で構成されており、各超音波振動子を所定の規則に従って駆動することにより、無指向性の傘型超音波ビーム11を形成することができる。そして、複数の超音波振動子で受波した超音波の受信信号の位相を調整して合成することにより、ペンシル型超音波ビーム12の受波を行うことができる。送受波器を中心に、ペンシル型超音波ビーム12を送受波器の周りで回転させることにより、2つの円錐11a,11bで挟まれた探知領域に入った魚群13を探知することができる。なお、海面と円錐11aの円錐面とのなす角(以下ティルト角という)は、超音波振動子を駆動する所定の規則を変更することによって、変更することが可能である。
【0027】
上述のようなスキャニングソナーは、傘型超音波ビーム11が届く範囲からの情報を得ることができるので、送受波器の受信信号を信号処理することによって、船舶10が航行している海面に平行な水平方向のスキャン(水平スキャン)と、任意の水平方位について海面に垂直な方向のスキャン(垂直スキャン)とを行うことができる。
<エコー画像とその表示>
図2は、スキャニングソナーの表示部と操作部の一例を示す正面図である。スキャニングソナーの表示部20には、探知結果のエコーが面を表示するためのモニター画面21がある。
操作部30には、垂直スキャンにおける方位を設定するための方位設定キー31、モニター画面21上のマークを移動させるためのトラックボール32、水平スキャンにおけるティルト角度を自動または手動で設定するためのティルト角度設定キー33、感度を調節するための感度ダイヤル34、水平スキャンと垂直スキャンのいずれのモードについてレンジ・感度設定を行うか選択するためのスキャンモード選択キー35及びレンジを設定するためのレンジダイヤル36などの各種のキーやダイヤルが設けられている。
【0028】
上述の感度ダイヤル34で設定される感度を上げると、感度に関するパラメータが変更され、物標の存在によって得られる受信信号が弱い場合であっても物標をエコー画像として表示できる一方、雑音の中に物標が紛れて見逃す可能性が大きくなる。逆に、感度を下げると、雑音がエコー画面上に表示され難くなるが物標からの受信信号が弱い場合には物標がエコー画像として表示されなくなる。レンジはモニター画面21に表示される探知領域の広がりであり、水平レンジを切り替えることで表示可能な水平距離が変更され、垂直レンジを切り替えることで表示可能な水深方向の距離が変更される。
図3には、モニター画面21に表示されるエコー画像の一例が示されている。モニター画面21には、上方に表示されている水平モードのエコー画像41と下方に表示されている垂直モードのエコー画像42とを含むエコー画像40が表示されている。水平モードのエコー画像41は、全周スキャンによって得られた画像であって、自船の位置を示す自船マーク43と共に自船を中心とする水平全方位の水中の物標の探知状況を示している。このエコー画像41には、魚群44が映っている。
エコー画像41には、2つの垂直方位マーク45a,45bが設定されており、これらの垂直方位マーク45a,45bの方向で切断した断面のエコー画像が垂直モードのエコー画像42である。エコー画像42において向かって右半分が垂直方位マーク45aの方位に対応し、エコー画像42において向かって左半分が垂直方位マーク45bの方位に対応する。このエコー画像42にも、魚群44が映っている。魚群44の下方に水平に延びている像は、海底で反射した超音波によるものである。
【0029】
モニター画面21には、エコー画像41,42や種々のマーク43,45a,45b以外に、レンジやティルト角などの設定値47が表示されている。なお、レンジやティルト角以外の設定値も同時に表示されることが多いがここでは説明を簡単にするために表示を省いている。また、船首方位や自船位置の緯度経度や水深などの計測値を示すデータ欄48も表示されている。
【0030】
モニター画面21の表示で特徴的なところは、エコー画像関連コード49の表示である。エコー画像40の見え方に影響するエコー画像関連パラメータの設定が一目で分かるように、エコー画像関連パラメータの値がコード化されて表示されている。
【0031】
例えば、船舶10が漁船である場合、日本海で操業する漁船と太平洋で操業する漁船では海水の水温や塩分濃度などの海況が異なり、海況以外に季節や天候によっても超音波の送受波の状態が異なる。そのため、海況などに拘らず同じようにエコー画像40を表示させたい場合には、エコー画像関連パラメータの値を海況や季節などに合わせて設定する必要がある。また、漁の対象である魚種などによってもエコー画像関連パラメータの値を適切に設定する必要が生じる。
【0032】
ここで、エコー画像40の見え方を調節する必要の生じる理由について一例を挙げて説明する。例えば、スキャニングソナーを船に積んで漁を行う漁師は、エコー画像40から魚の行動を推測する。マグロのような高速で泳ぐ魚の漁を行う場合には、エコー画像40に映る魚群44の像から投げ入れた仕掛けがその魚が泳ぐ水深に達するタイミングを図る。そのため、漁獲量がエコー画像40の見え方に左右され、エコー画像40の見え方が重要になる。図3に示すように、モニター画面21にエコー画像関連コード49が表示されていると、漁師はこのエコー画像関連コード49がどのような状況で行った漁の時の値と一致するかを簡単に確認することができる。それにより、エコー画像40に映る映像から仕掛けや網の操作のタイミングなどを安心して適切に判断できるようになる。
【0033】
エコー画像関連パラメータとは、エコー画像40の見え方に影響を与えるパラメータである。従って、ここでは、エコー画像関連パラメータは、スキャニングソナーなどの探知装置の設定に必要な全パラメータから、エコー画像に影響を与えないパラメータを除いた残りのパラメータと定義する。例えば、図2に示すトラックボール32の回転角度とカーソルの移動量との関係もパラメータとして設定することができるが、このようなものはエコー画像関連パラメータではない。また、アラームなどの設定を行うパラメータもあるが、これらもエコー画像関連パラメータから除かれる。
ここで、エコー画像に影響を与えるということの意味も定義する。エコー画像に影響を与えるというのは、そのパラメータを変更したときに、エコー画像を表示するための映像信号が変わることを意味する。従って、モニター画面21の輝度や色などを設定するパラメータは、エコー画像関連パラメータから除かれる。換言すれば、モニター画面21に表示される設定値47やデータ欄48の見え方も一緒に変化させるようなパラメータは、エコー画像関連パラメータから除かれるということである。
<探知装置の構成の概要>
図4は、スキャニングソナーの構成の概要を示すブロック図である。スキャニングソナー1は、既に説明した表示部20と操作部30以外に、探知部50と制御部60とを備えている。
【0034】
探知部50は、複数の送受信チャンネル50a,50b…50nを備えている。各送受信チャンネル50a,50b…50nの構成は同じであるから、送受信チャンネル50aを例に以下説明する。送受信チャンネル50aには、1つの超音波振動子51aが設けられており、超音波振動子51aの送信と受信の動作を送受切替回路52aが切り替えている。送信時には、送信回路53aから送受切替回路52aを介して超音波振動子51aに、パルス幅変調された送信信号が与えられる。そのため、送信回路53aにおいては、送信信号の生成と増幅などが行われる。
【0035】
受信時には、超音波振動子51aから送受切替回路52aを介して受信回路54aに、超音波振動子51aの受信信号が与えられる。そして、受信回路54aにおいては、超音波振動子51aの受信信号に対して、増幅やノイズ除去等の信号処理が行われる。受信回路54aで信号処理された受信信号は、A/D変換器55aにおいて、デジタル信号に変換される。
【0036】
送受信チャンネル50aにインターフェース56aが設けられる一方、送受信チャンネル50a,…50nに共通にインターフェース1aが設けられている。そして、送信信号を生成するための駆動信号が制御部60からインターフェース56a,1aを介して送受信チャンネル50aに送られ、送受信チャンネル50aでデジタル信号に変換された受信データがインターフェース56a,1aを介して制御部60に送られる。
【0037】
制御部60は、プログラマブル送信ビーム形成制御部61とバッファメモリ62,64とプログラマブル受信ビーム形成制御部63とプログラマブルフィルタ65とエンベロープ検出部66とイメージ処理部67とを備えている。プログラマブル送信ビーム形成制御部61は、送信周期毎に各送受信チャンネル50a,…50nの遅延量、ウェイト値及び方位角を計算し、送受信チャンネル50a,…50n毎の駆動信号を生成する。
【0038】
バッファメモリ62には、インターフェース1aを介して各送受信チャンネル50a,…50nの受信データが一時的に記憶される。プログラマブル受信ビーム形成制御部63では、バッファメモリ62に記憶されている受信データの位相及びウェイト値が各送受信チャンネル50a,…50n毎に計算され、計算結果に従って受信データの合成が行われて合成受信信号が生成される。そして、プログラマブル受信ビーム形成制御部63でビーム毎の時系列データとして求められた合成受信信号がバッファメモリ64に書き込まれる。プログラマブルフィルタ65では、ビーム毎に所定の帯域通過特性でフィルタリングされてビーム毎に帯域処理済受信信号が得られる。
【0039】
エンベロープ検出部66では、ビーム毎に帯域処理済受信信号のエンベロープが検出される。イメージ処理部67では、表示部20にエコー画像を表示するために、各ビームの各距離における受信信号強度がイメージ情報化される。
【0040】
ホストCPU70は、メモリ80に記憶されている情報を用いて、スキャニングソナー1の全体の動作を制御する。メモリ80には、例えばスキャニングソナー用プログラムやスキャニングソナー1を制御するためのパラメータ等が記憶されている。
【0041】
操作部30はインターフェース1bを介してホストCPU70などと接続されており、操作部30では、レンジやパラメータの設定、ティルト角や方位の入力、表示メニューの選択などの操作が行える。
<探知装置の制御部の構成と動作について>
図4を用いて説明したプログラマブル送信ビーム形成制御部61、プログラマブル受信ビーム形成制御部63、プログラマブルフィルタ65、エンベロープ検出部66及びイメージ処理部67などにおいて、超音波振動子51a,…での超音波の送受波からエコー画像40を生成するために、送信周期、送信パルス幅、送信パワー、送信ウェイト、受信ウェイト及びオートゲインコントロールなどのエコー画像関連パラメータの設定が必要になる。
【0042】
このスキャニングソナー1は、設定されているエコー画像関連パラメータを、図3に示すようにモニター画面21にエコー画像関連コード49として表示するための構成を制御部60に有している。説明を簡単にするために、図5に示す制御部60の構成は、エコー画像関連コード29の生成や表示や書き換えなどに関するブロックに限っている。
【0043】
制御部60においては、メモリ80が、スキャニングソナー1の装置全体の設定を行うための全パラメータの格納領域81と、エコー画像関連コードとエコー画像関連パラメータとの対応関係を明らかにするためエコー画像関連パラメータの抽出や分類や解読や書き換えに必要な規則が記述されているコード化情報の格納領域82とを有している。
【0044】
また、制御部60のホストCPU70は、スキャニングソナー用プログラムを読み込むことにより、抽出部71、分類部72、エンコード部73、イメージ信号生成部74、デコード部75、解読部76及び書換部77を形成する。
【0045】
エコー画像関連コードの生成と表示には、抽出部71、分類部72、エンコード部73及びイメージ信号生成部74が関わる。これらによるエコー画像関連コードの生成と表示について、図6及び図7を用いて説明する。
【0046】
図6に示す全パラメータのリスト91は、メモリ80の全パラメータの格納領域81に格納されているパラメータの例示とパラメータの設定範囲の例示である。エコー画像関連コードを生成するために、まず、図7に示すようにステップS1で、抽出部71がメモリ80の格納領域82に格納されているコード化情報を参照して、格納領域81に格納されている全パラメータの中からエコー画像関連パラメータを抽出する。図6のエコー画像関連パラメータのリスト92に、抽出されたエコー画像関連パラメータが例示されている。図6において、全パラメータのリスト91からエコー画像関連パラメータのリスト92に向かって延びる矢印94がパラメータの抽出を示しており、バツ印の付いた矢印95がパラメータの非抽出を示している。例えば、超音波を送波する際の送信周期はエコー画像関連パラメータとして抽出され、魚群が探知されたことを音で知らせるためのフィッシュアラームはエコー画像関連パラメータとして抽出されなかったことを示している。
【0047】
次のステップS2では、格納領域82のコード化情報に基づいて、抽出したエコー画像関連パラメータを、ユーザーメニューとシステムメニューの2つの大分類及びそれぞれの大分類の中の送受信設定、感度設定、表示設定及び描画設定などの小分類に分けて所定の順に並べる。図6のエコー画像関連パラメータのリスト93に、分類後のエコー画像関連パラメータの例が示されている。例えば、送信周期、送信パルス幅、送信パワー、残響低減及びサイドローブ低減のパラメータの値がユーザーメニューの送受信設定に分類され、この順に並べられる。それぞれのパラメータの値を表すためのビット数も予め定められて格納領域82のコード化情報に記述されている。ユーザーメニューの送受信設定には、例えば31ビットが割り当てられる。
【0048】
次のステップS3では、エンコード部73が、例えばユーザーメニューの送受信設定の31ビットの数値を16進数に変換してコード化する。図6に示す例では、ユーザーメニュー送受信設定、ユーザーメニュー感度設定、ユーザーメニュー表示・描画設定、システムメニュー送受信設定、システムメニュー感度設定及びシステムメニュー適応ゲイン設定の6種類のエコー画像関連コードが生成される。例えばユーザーメニュー送受信設定であれば、送信周期のパラメータの値を示す4ビットに続いて、送信パルス幅のパラメータの値を示す4ビット、送信パワーのパラメータの値を示す4ビット及び残響低減のパラメータの値を示す2ビットなどが順に続くように並べられる。このビットの並びをコード化すると、最上位桁の16進数が送信周期のパラメータの値に対応し、次の桁の16進数が送信パルス幅のパラメータの値に対応し、次の桁の16進数が送信パワーのパラメータの値に対応し、次の桁の16進数に残響低減のパラメータの値が含まれる。
【0049】
ステップS4では、イメージ信号生成部74が6種類のエコー画像関連コードのうちユーザーメニューの3種類を表すイメージ信号を生成して表示部20に出力する。このようにして、図3に示すエコー画像関連コード29の表示がモニター画面21において行われる。
【0050】
次に、エコー画像関連コードによるエコー画像関連パラメータの書き換えについて図8を用いて説明する。まず、ステップS11で、操作部30からエコー画像関連コードが入力される。初期設定においては、メーカーのメンテナンスの担当者が上述の6種類のエコー画像関連コードを入力する。通常の使用状態では、ユーザーが3種類のユーザーメニューから適当なものを選択して入力する。
【0051】
次にステップS12で、デコード部75が、入力されたエコー画像関連コードを2進数の並びに変換する。エコー画像関連コードが複数種類ある場合には、個別に2進数への変換が行われる。さらに、ステップS13で、解読部76が、メモリ80の格納領域82に格納されているコード化情報を参照して2進数(ビット)の並びを解読し、エコー画像関連パラメータを構成する各パラメータに、エコー画像関連コードから変換された2進数(ビット)の並びを割り振る。それにより、解読部76が新たなエコー画像関連パラメータの値を決定する。例えば、ユーザーメニュー送受信設定のエコー画像関連コードから得られたビットの並びの最初から4つ(4ビット)を送信周期のパラメータの値とするなどである。
【0052】
次のステップS14では、書換部77が、既に設定されている格納領域81のエコー画像関連パラメータの設定値を、解読部76によって決定されたパラメータの値に書き換える。
【0053】
書き換えられた格納領域81のエコー画像関連パラメータは、上述のステップS1〜S4によってエコー画像関連コードに変換されて表示部20に表示される。例えば、操業中に複数回変更されるエコー画像関連パラメータは、その書き換えの履歴をメモリ80に格納するようにすることもできる。また、エコー画像関連パラメータは、従来と同様に操作部30から1つずつパラメータを入力して書き換えることもできる。その場合には、直接書換部77にパラメータが与えられ、対応するパラメータの書き換えが行われる。このような操作によってエコー画像関連パラメータが書き換えられた場合でも、書き換え後のエコー画像関連パラメータは、上述のステップS1〜S4によってエコー画像関連コードに変換されて表示部20に表示される。
<変形例1>
上記実施形態では、スキャニングソナーなどの探知装置の設定に必要な全パラメータから、エコー画像に影響を与えないパラメータを除いた残りのパラメータを全てエコー画像関連パラメータとしてコード化する場合について説明した。
しかし、設定に必要な全パラメータの中の一部のパラメータだけを用いてコード化を実施できるように構成してもよい。また、エコー画像関連パラメータを全てコード化するのではなくて一部だけをコード化するような実施形態も可能である。例えば、エコー画像関連パラメータのうちエコー画像に与える影響が小さく、そのパラメータの変更がユーザーの視認に与える影響が小さい場合にはコード化するパラメータから除外することができる。それにより、さらにエコー画像関連コードの桁数が小さくなり、管理が容易になる。
<変形例2>
上記実施形態では、スキャニングソナー1の構成が変わらない場合について説明した。ところが、スキャニングソナー1の探知部50の一部を変更することはしばしば行われることであり、例えば超音波振動子51aなどを性能の高いタイプに変更するなどの変更が行われる。このように探知部50の性能が変わると、エコー画像の見え方が改善される場合が多い。改善されるとは言え、漁を行うものにとってはエコー画像の見え方が変わることで、新たな経験を要求されることにつながる。
【0054】
そこで、従来と同じエコー画像関連コードを使いながら、スキャニングソナー1の変更前と同じようにエコー画像を調整できるようにスキャニングソナー1を構成してもよい。そのための構成として、変形例2のスキャニングソナーは、図5の制御部60と比較して、図9に示すように、補正データの格納領域83をメモリ80に設ける点が異なる。抽出部71における抽出時及び書換部77による書き換え時に、抽出部71及び書換部77が補正データに基づいてエコー画像関連パラメータの値を補正する。例えば、スキャニングソナー1の変更前には、オートゲインコントロール(AGC)を指示の通り設定していたものを、スキャニングソナー1の変更後は、補正データに基づき、指示の値から1だけ引き算を行う補正をする。
【0055】
それにより、スキャニングソナー1の性能の変更前と変更後においてエコー画像の調節を同じエコー画像関連コードで調節でき、スキャニングソナー1の設定のためのパラメータの管理を容易に行うことができる。
【0056】
<変形例3>
上記実施形態は、スキャニングソナー1の改良に伴ってエコー画像関連パラメータが増える場合であっても適用することができる。しかし、そのまま適用したのでは、スキャニングソナー1の改良前と改良後でエコー画像関連コードの連続性が失われてしまう。例えば、ユーザーメニューの送受信設定のパラメータを2つ増やして、従来31ビットであったものを35ビットに変更したとする。これを従来通りに順番に並べて16進数に変換するようなコード化を行うと、9桁のコードになるが、下2桁目が従来のコードと異なる。そこで、新たに追加された4ビットと従来からある31ビットとを別々に16進数に変換する。それにより、下1桁が新たに追加されたパラメータの値に対応し、残りの8桁が従来のコードに一致する。このようにすれば、エコー画像関連コードの連続性が担保され、過去のエコー画像関連コードを改良後のスキャニングソナーの管理に役立てることができる。そのためには、コード化情報に、上述のようなエコー画像関連パラメータの追加情報を記述しておき、エンコード部73及びデコード部75がその追加情報に基づいて2進数を分割してエンコードとデコードを行うようにすればよい。
【0057】
<変形例4>
上記実施形態では、エコー画像関連コードによりエコー画像関連パラメータを管理でき、パラメータの管理が容易になっている。しかし、異なるエコー画像関連コードを比較する場合、エコー画像関連コードを見比べただけでは、どのパラメータの値をどのように変更しているかを認識するのは困難である。
【0058】
そこで、図10に示すように、2つのエコー画像関連コードを比較するためのコード比較部78を設けてもよい。操作部30から比較するための2つのエコー画像関連コードが入力されると、上述の手順でデコード部75と解読部76と書換部77とによって、2つのエコー画像関連コードに対応するエコー画像関連パラメータがメモリ80の比較パラメータの格納領域84に書き込まれる。コード比較部78は、格納領域84から比較パラメータを読み出して比較し、値が異なるパラメータを抜き出して、その値と共にイメージ信号生成部74に出力する。それにより、表示部20には、2つのエコー画像関連パラメータについて、設定値の異なるパラメータとその値が表示される。それにより、コードによる管理を行う際に、パラメータの設定変更を簡単に把握でき、管理が容易になる。
<変形例5>
上記実施形態では、メモリ80にコード化情報を記憶させる例について説明したが、コード化情報は、ホストCPU70の内部メモリに格納してもよい。この場合には、メモリ80に代わってホストCPU70の内部メモリがコード化情報付与部として機能する。
【0059】
また、コード化すべきパラメータとコード化されないパラメータを区別するために、コード化すべきパラメータには、そのパラメータの先頭や末尾にユーザーメニューとシステムメニューの大分類とその中の小分類を示す数値を付加してもよい。このような遣り方は、メモリ80にコード化情報を記憶させる態様の一つと考える。
【0060】
また、コード化情報の一部を、例えば図11に示すように、ホストCPU70のコード化情報生成部79で生成するようにしてもよい。パラメータに分類すべきか否か及びそのパラメータがどの分類に属するかの情報を持っていても、どのような順序でパラメータの値を並べるかの情報が必要になる。例えば、コード化情報生成部79では、抽出部71で抽出されたパラメータをパラメータの名称の読み方のアルファベット順などの規則に従って並べる順序を分類部72や解読部76に出力する。この場合にはコード化情報生成部79もコード化情報付与部として機能している。なお、抽出部71で抽出されるパラメータの情報の代わりに書換部77で書き換えられるべきパラメータの情報を書換部77からコード化情報生成部79に与えてもよい。
<特徴>
上記実施形態のスキャニングソナー1では、抽出部71とエンコード部73とによってスキャニングソナー1の設定用のパラメータの中からエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードを得ることができる。
【0061】
ソフトウエアの観点から見ると、ホストCPU70は、スキャニングソナー用プログラムを実行することにより、抽出部71と分類部72とエンコード部73とイメージ信号生成部74とデコード部75と解読部76と書換部77の機能を発揮する。スキャニングソナー用プログラムは、例えばメモリ80に書き込まれている。そして、スキャニングソナー用プログラムを実行することにより、抽出ステップ(ステップS1)で、探知部50が探知するエコー画像に影響するエコー画像関連パラメータの値が、メモリ80の格納領域81に格納されている全てのパラメータの中から抽出される。そして、エンコードステップ(ステップS3)で、抽出ステップで抽出されるエコー画像関連パラメータの値が、エコー画像関連コードに変換されて出力される。
【0062】
このエコー画像関連コードによって、スキャニングソナー1の設定管理の中のエコー画像40の見え方の設定の管理を行うことができる。このエコー画像関連コードは、スキャニングソナー1の設定に必要な全てのパラメータの中の一部のパラメータであるため、コードの桁数が小さくなる。例えば、全てのパラメータはスキャニングソナー1の場合には数百に及ぶが、エコー画像関連コードを例えば10桁以内のコードを持つ数種類に集約することができ、管理の中心となるエコー画像関連パラメータが簡潔に表されることでパラメータの管理が容易になる。
【0063】
このスキャニングソナー1のメモリ80(コード化情報付与部)の格納領域82のコード化情報がエコー画像関連パラメータを分類するための分類情報を含んでいる。分類情報とは、図6で説明したように、例えば送信周期というパラメータがユーザーメニューの送受信設定に分類されるという記述である。
格納領域82の分類情報に基づいて、制御部60の分類部72が、抽出部71で抽出されるパラメータの値を分類して順番に並べる。そして、エンコード部73が、分類部72で順番に並べられるエコー画像関連パラメータの値を複数種類のエコー画像関連コードに変換する。それにより、エコー画像関連コードが複数種類のグループ、即ちユーザーメニュー送受信設定、ユーザーメニュー感度設定、ユーザーメニュー表示・描画設定、システムメニュー送受信設定、システムメニュー感度設定及びシステムメニュー適応ゲイン設定の6種類に分割される。このように分割されて一種類当たりのコードの桁数がさらに小さくなるため、変更のあった種類だけを管理することで、管理の負担をさらに減らすことができる。
【0064】
また、スキャニングソナー1では、デコード部75が操作部30から入力されるエコー画像関連コードをデコードしてエコー画像関連パラメータの値に変換し、全パラメータが格納されている格納領域81のエコー画像関連パラメータの書き換えを書換部77が行う。
デコード部75と書換部77とによって、エコー画像関連パラメータの設定を行う際にエコー画像関連コードを入力するだけでエコー画像関連パラメータの書き換えを行うことができるので、設定変更の頻度が多いエコー画像関連パラメータの設定をパラメータ毎に操作部30から行わなくても済み、パラメータの設定工数を減らすことができる。
【0065】
操作部30は、複数種類のエコー画像関連コード、例えばユーザーメニューの送受信設定のコードや感度設定のコードなどを入力可能に構成されている。解読部76がデコード部75で得られる複数の値からエコー画像関連パラメータの値を解読するので、エコー画像関連パラメータの中の書き換えが必要なグループだけを書き換えの対象とすることができる。例えば6種類あるエコー画像関連パラメータの中のユーザーメニュー送受信設定のコードだけを書き換えの対象とでき、入力するエコー画像関連コードの桁数が小さくなり、パラメータの設定がさらに容易になる。
【0066】
また、操作部30は、エコー画像関連パラメータのうちの少なくとも1つ、例えば送信周期のパラメータだけを入力することもできる。操作部30から1つのエコー画像関連パラメータが入力されると、書換部77が、格納領域81に格納されている全パラメータの中から、その入力されたパラメータだけを書き換える。そして、書き換え後のエコー画像関連パラメータは、抽出部71と分類部72とエンコード部73とイメージ信号生成部74によって表示部20に表示される。このようにエコー画像関連パラメータのうちの1つだけが書き換えられた場合でも、書換後のエコー画像関連パラメータに対応するエコー画像関連コードが生成されて表示されるので、設定工数を増やすことなく書き換え後のエコー画像関連コード49を認識することができ、さらにスキャニングソナー1の設定のためのパラメータの管理を行い易くなる。
【0067】
スキャニングソナー1においては、イメージ信号生成部74が、エコー画像関連コードをイメージ信号に変換し、表示部20が、イメージ信号生成部74から出力されるイメージ信号に基づいてエコー画像関連コードを表示する。それにより、スキャニングソナー1を操作する者は、表示部20でエコー画像40と同時にエコー画像関連コード49を確認でき、エコー画像40とエコー画像関連コード49の対応関係を認識し易くなる。
【符号の説明】
【0068】
1 スキャニングソナー
20 表示部
30 操作部
50 探知部
60 制御部
70 ホストCPU
71 抽出部
72 分類部
73 エンコード部
74 イメージ信号生成部
75 デコード部
76 解読部
77 書換部
80 メモリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2008‐128900号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、前記探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、
前記探知部で得られる波動に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、前記探知部で探知される物標を表示する表示部と、
前記探知部及び前記表示部を制御する制御部とを備える探知装置であって、
前記制御部は、
エコー画像に影響するエコー画像関連パラメータについてのコード化情報を付与するコード化情報付与部と、
前記コード化情報付与手段から付与される前記コード化情報に基づいて、探知装置設定用のパラメータの中から前記エコー画像関連パラメータの値を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出される前記エコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換して出力するエンコード部とを有する、探知装置。
【請求項2】
前記コード化情報付与部が付与する前記コード化情報は、前記エコー画像関連パラメータを分類するための分類情報を含み、
前記制御部は、前記分類情報に基づいて、前記抽出部で抽出されるパラメータの値を分類して順番に並べる分類部をさらに有し、
前記エンコード部は、前記分類部で順番に並べられる前記エコー画像関連パラメータの値を複数種類の前記エコー画像関連コードに変換する、請求項1に記載の探知装置。
【請求項3】
前記エコー画像関連コードを入力する操作部をさらに備え、
前記制御部は、
前記操作部から入力される前記エコー画像関連コードをデコードして前記エコー画像関連パラメータの値に変換するデコード部と、
前記エコー画像関連パラメータの書き換えを行う書換部とをさらに有する、請求項1または請求項2に記載の探知装置。
【請求項4】
前記操作部は、複数種類の前記エコー画像関連コードを入力可能に構成され、
前記制御部は、前記デコード部で複数種類の前記エコー画像関連コードから得られる複数の値から前記エコー画像関連パラメータの値を解読する解読部をさらに有する、請求項3に記載の探知装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記エコー画像関連パラメータのうちの少なくとも1つを入力可能に構成され、
前記書換部は、前記操作部から入力される少なくとも一つの前記エコー画像関連パラメータの書き換えを行い、
前記抽出部は、書き換え後の前記エコー画像関連パラメータの値を抽出し、
前記エンコード部は、前記抽出部で抽出される書き換え後の前記エコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換する、請求項3に記載の探知装置。
【請求項6】
パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、前記探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、
前記探知部で得られる波動に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、前記探知部で探知される物標を表示する表示部と、
前記探知部及び前記表示部を制御する制御部と、
前記制御部に対して前記エコー画像関連コードを入力する操作部とを備える探知装置であって、
前記制御部は、
前記操作部から入力される前記エコー画像関連コードをデコードして前記エコー画像関連パラメータの値に変換するデコード部と、
前記エコー画像関連パラメータの書き換えを行う書換部とを有する、探知装置。
【請求項7】
パラメータにより設定される条件に従って海中の探知領域に向けて超音波ビームの走査を行い、前記探知領域の物標に当たって戻ってくる超音波によって物標の探知を行う送受波器と、
前記送受波器で得られる超音波に関する信号をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、前記送受波器で探知される物標を表示する表示部と、
前記送受波器及び前記表示部を制御する制御部とを備えるスキャニングソナーであって、
前記制御部は、
エコー画像に影響するエコー画像関連パラメータについてのコード化情報を付与するコード化情報付与部と、
前記コード化情報に基づいて、スキャニングソナー設定用のパラメータの中から前記エコー画像関連パラメータの値を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出される前記エコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換して出力するエンコード部とを有する、スキャニングソナー。
【請求項8】
パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、前記探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、前記探知部で得られる波動に関する情報をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、前記探知部で探知される物標を表示する表示部とを備える探知装置の制御方法であって、
前記探知部の探知結果から得られるエコー画像に影響するエコー画像関連パラメータの値を、探知装置設定用のパラメータの中から抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出される前記エコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換するエンコードステップと、
を備える、探知装置の制御方法。
【請求項9】
パラメータにより設定される条件に従って探知領域に対して波動の送受波を行い、前記探知領域の物標に当たって戻ってくる波動によって物標の探知を行う探知部と、前記探知部で得られる波動に関する情報をパラメータにより設定される条件に従って信号処理して得られるエコー画像によって、前記探知部で探知される物標を表示する表示部とを備える探知装置に対してエコー画像を表示させるための探知装置用プログラムであって、
前記探知部の探知結果から得られるエコー画像に影響するエコー画像関連パラメータの値を、探知装置設定用のパラメータの中から抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップで抽出される前記エコー画像関連パラメータの値をエコー画像関連コードに変換するエンコードステップと、をコンピュータに実行させる探知装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−247623(P2011−247623A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118258(P2010−118258)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】