説明

接合体の製造装置及び製造方法

【課題】本発明は、低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に前記接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体を製造するにあたり、接合部材と被接合部材の接合性を担保できると同時に、接合部材の表面に酸化物が生じ難い接合体の製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、易酸化元素を含む低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造装置であって、被接合部材の接合部材が接合されるべき接合予定面に接合部材を形成する接合材を供給する接合材供給手段と、接合材の加熱溶融手段と、接合材供給手段による接合材の供給前に、接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備えその酸化表面に接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造装置およびその製造方法に関するものであり、特に前記被接合部材が一対のガラス基板であり、その一対のガラス基板と前記接合部材とから形成される気密部を含む接合体、いわゆる複層ガラスパネルの製造に好適な接合体の製造方法及びその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
酸化物が表面に存在する酸化表面を有する被接合部材に、Sn、Inなどの低融点金属からなる接合部材を直接接合し、接合体を形成する技術の確立が要請されている。以下、その従来技術について、被接合部材がガラスで構成されたガラス基板である場合を具体例として説明する。
【0003】
従来、例えば複層ガラス、平面型画像表示装置を構成するガラスパネルにおいて、間隙を介して対向配置された一対のガラス基板の当該間隙の気密性を確保するため、一対のガラス基板の外周縁部を接合部材で封止接合して気密部が形成されている。ここで、アウトガスの発生防止または接合工程の低温化等の観点から、接合部材を形成する接合材として広く用いられてきたフリットガラスに代えて低融点金属を使用することが提案されている。しかしながら、低融点金属が溶融するレベルの温度領域では溶融した低融点金属とガラス基板との濡れ性は低いため、溶融した低融点金属との濡れ性があるCu、Cr、Ag等からなる下地層を介して接合部材と接合する技術が従来から種々提案されている(例えば下記特許文献1)。なお、以下述べる「接合部材」・「接合材」は、特に注記する場合を除き基本的に低融点金属で構成されたもののことを意味する。
【0004】
一方で、下地層を介してガラス基板に接合部材を接合する場合には、下地層を形成する工程が別途必要になり製造コストが上昇するのみならず、下地層とガラス基板の接合界面または下地層と接合部材の接合界面に非接合部分が生じる可能性がある。そして、この非接合部分がリークパスとなり、気密部を高真空または高圧力にした場合に気密が破れる可能性が少なからず存在する。この問題を解消するため、下地層を介することなく接合部材をガラス基板に直接接合する技術の一例が下記特許文献2〜4に開示されている。
【0005】
特許文献2には、低融点金属とガラス基板との接合機構におけるガラス基板表面の酸素の存在に着目し、酸化銀を微量添加したIn合金を接合材としガラス基板を直接接合する技術が開示されている。かかる接合材によれば、接合材とともに溶融した酸化銀から分解放出された酸素がIn合金とガラス基板との接合面に供給されてそれらの濡れ性を高め、In合金が溶融するレベルの温度領域下でも強固な接合を得ることができるという利点がある。
【0006】
特許文献3には、Al、Si、Tiなど酸化されやすい元素がSn、Znからなる金属材料とガラス基板との接合性を高める点に着目し、これらのいずれか2種以上を含み、重量%で0.0001〜1.5%の酸素を含有した接合材によりガラス基板を直接接合する技術が開示されている。かかる接合材によれば、接合材中に酸素を含有させることにより、金属材料とガラス基板との接合界面における酸化されやすい元素による酸化物結合から金属結合への移行が滑らかになり、接合部材とガラス基板との接合界面が強固になるという利点がある。
【0007】
特許文献4には、接合材としてのInが接合される接合面の汚れが溶融したInとガラス基板との濡れ性を劣化させ引いては気密性を低下させることに着目し、溶融したInを接合面に充填する前にガラス基板の接合面を改質処理、具体的には化学的・物理的に研磨処理したり、または加熱処理し、その後溶融したInを接合面に充填する技術が開示されている。かかる接合方法によれば、接合面は、改質処理により活性化された清浄面となるので、溶融したInとガラス基板の濡れ性が高まり、気密性を確保することができるという利点がある。
【0008】
上記のように特許文献2〜4に開示された技術は、直接接合したガラス基板と接合部材との接合性を高めることができるという利点を有するものの、接合材を溶融させて接合部材を形成する工程において、接合部材の表面に酸化物が生成することを抑制することができないという欠点がある。すなわち、特許文献2・3によれば、接合材自身が酸素または酸素を発生する酸化物を含んでいる。そのため、接合部材の形成工程を真空雰囲気中で行う場合でも、溶融した接合材と内包する酸素との結合により生じた酸化物が接合部材の表面に露出する可能性がある。また、特許文献4は、接合部材の表面に生成する酸化物の抑制する手段については具体的に触れていない。ここで、一対のガラス基板と接合部材の接合態様としては、(1)双方のガラス基板の主面に各々形成された接合部材の接合面同士を合わせて接合する態様、(2)一方のガラス基板の主面のみに形成された接合部材の接合面を他方のガラス基板の主面に合わせて接合する態様、(3)双方のガラス基板の主面に同時に接合部材の接合面を合わせて接合する態様があるが、いずれの接合態様にしても、接合部材の表面に酸化物が存在すると、接合界面に非接合部分が生じてしまう可能性があるため、気密を確保できないという問題が生じる。
【0009】
なお、上記問題を解消するため、接合部材の形成工程やガラス基板の接合工程を低酸素雰囲気や還元雰囲気中で行う技術が下記特許文献5・6に開示されているが、これらの技術は、接合部材の表面における酸化物生成の抑制とガラス基板と接合部材との接合性の確保とを同時に確保できるものではない。また、ガラス基板に形成された接合部材の表面に生じた酸化膜を破断する技術が下記特許文献7に開示されているが、破断された酸化膜は接合部材表面に依然として残存するので気密性を確実に確保できる技術ではない。
【0010】
【特許文献1】特開昭62−124936号公報
【特許文献2】特開2002−15688号公報
【特許文献3】WO2000−58234号公報
【特許文献4】特開2004−14460号公報
【特許文献5】特開2005−331673号公報
【特許文献6】特開2004−253299号公報
【特許文献7】特開2006−92873号公報
【0011】
なお、以上の従来技術の説明では被接合部材がガラス基板の場合を具体例として説明したが、被接合部材が金属またはセラミックスからなる場合にも、それらの酸化表面と接合部材とを直接接合する技術確立の要請がある。特に、被接合部材が金属からなる場合には、酸化表面の酸化物を還元除去するフラックスを用いて接合部材を被接合部材へ直接接合する技術が周知であるが、このフラックスを使用することなく接合することができれば、フラックスによる被接合部材や接合界面の汚染の回避、フラックスを洗浄除去する工程の削減などが可能となるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明は、上記従来技術の問題点を解消するため本願発明者らが鋭意検討したうえなされたものであり、低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に前記接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体を製造するにあたり、接合部材と被接合部材の接合性を担保できると同時に、接合部材の表面に酸化物が生じ難い接合体の製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
また、本願発明は、低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され外周縁部が前記接合部材で接合されるとともに少なくとも一方の外周縁部が前記接合部材と直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体を製造するにあたり、接合部材とガラス基板の接合性を担保できると同時に、接合部材の表面に酸化物が生じ難い接合体の製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本願請求項1に係る発明(第1発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造装置であって、被接合部材の接合部材が接合されるべき接合予定面に接合部材を形成する接合材を供給する接合材供給手段と、接合材の加熱溶融手段と、接合材供給手段による接合材の供給前に、接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置である。
ここで「易酸化元素」とは、溶融した低融点金属と酸化表面との化学結合性を高めそれらの濡れ性を改善する目的で添加される、例えばZn、Al、Ti、Si、Cr、Be、希土類などで例示される酸素親和性の高い元素のことを言う。また、「低融点金属」とは、例えばSn、In、Zn、Ga等で例示される概ね400℃以下の比較的低い温度で溶融する金属のことを言う。さらに、「直接接合」とは、接合部材と被接合部材とが他の相を介さず直接的に接合している場合のみならず、接合部材または被接合部材に含まれる元素により形成される相を介して接合している場合を含むが、接合部材または被接合部材に含まれない元素から形成された相を介して接合している場合を含まない。したがって、上記従来技術で説明した下地層を介して接合部材と被接合部材とが接合している態様は本願発明の範囲には含まれないが、接合部材に含まれる易酸化元素で構成された酸化物等を介して接合部材と被接合部材が接合している態様は本願発明の範囲に含まれることとなる。以下同様である。
【0015】
第1発明に係る製造装置によれば、接合材供給手段により被接合部材の接合部材が接合されるべき接合予定面に供給された接合材は、加熱溶融手段により加熱溶融される。ここで、接合材が供給される接合予定面は、酸化領域形成手段により、非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域となっている。そのため、溶融した接合材に含まれる酸素親和性の高い易酸化元素と接合予定面の酸素とは酸化領域中において容易に化学結合するので、溶融した接合材と接合予定面との濡れ性が高まり、もって接合部材は被接合部材と強固に接合し、健全な接合界面を得ることが可能となる。このように、本願第1発明によれば、接合予定面を酸化し易い状態である酸化領域とすることで、接合材自体に酸素を含有させることなく接合部材と被接合部材との接合性を確保でき、さらに、接合材に易酸化元素を添加することにより低融点金属の融点近傍の比較的低い温度で接合部材と被接合部材とを接合することが可能となる。その一方で、接合予定面のみが非接合面よりも酸化し難い状態されているので、接合部材の表面における酸化物生成を抑制することができる。
【0016】
なお、上記第1発明に係る接合体の製造装置は、酸化表面を形成し易い金属、セラミックスまたはガラスのいずれかで構成された被接合部材を含む接合体を製造する場合に好適である。
【0017】
本願請求項3に係る発明(第2発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され少なくとも一方の外周縁部が接合部材と直接接合された一対のガラス基板と、接合部材及び一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、少なくとも一方のガラス基板の接合部材が接合されるべき接合予定面に接合部材を形成する接合材を供給する接合材供給手段と、接合材の加熱溶融手段と、接合材供給手段による接合材の供給前に、接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置である。
【0018】
第2発明に係る製造装置によれば、基本的に第1発明と同様な作用効果を奏することができる。すなわち、接合材供給手段により一方のガラス基板の接合部材が接合されるべき接合予定面に供給された接合材は、加熱溶融手段により加熱溶融される。ここで、接合材が供給される接合予定面は、酸化領域形成手段により、非接合面よりも局所的に酸化し易い状態である酸化領域となっている。そのため、溶融した接合材に含まれる易酸化元素と接合予定面の酸素とは酸化領域中において容易に化学結合するので、溶融した接合材と接合予定面との濡れ性が高まり、接合部材はガラス基板と強固に接合し、健全な接合界面を得ることが可能となる。その一方で、接合予定面のみが非接合面よりも酸化し難い状態にされているので、接合部材の表面における酸化物生成を抑制することができる。
【0019】
本願請求項4に係る発明(第3発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され双方の外周縁部が前記接合部材で直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、前記一対のガラス基板を所定の間隙を有する状態に対向配置する位置決め手段と、前記位置決め手段により対向配置された一対のガラス基板の前記接合部材が接合されるべき各々の接合予定面にともに前記接合部材を形成する接合材を供給する接合部材供給手段と、前記接合材の加熱溶融手段と、前記接合材供給手段による接合材の供給前に、前記一対のガラス基板の各々の接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置である。
【0020】
第3発明に係る製造装置によれば、一対のガラス基板は所定の間隙を有する状態に位置決め手段により位置決めされる。そして、位置決めされた一対のガラス基板の接合部材が接合されるべき各々の接合予定面に接合材供給手段により供給された接合材は、加熱溶融手段により加熱溶融される。ここで、一対のガラス基板において、接合材が供給される各々の接合予定面は、酸化領域形成手段により、非接合面よりも局所的に酸化し易い状態である酸化領域となっている。そのため、溶融した接合材に含まれる易酸化元素と接合予定面の酸素とは酸化領域中において容易に化学結合するので、一対のガラス基板の各々の接合予定面と溶融した接合材との濡れ性が高まり、もって一対のガラス基板の双方と接合部材との接合性を同時に確保することができる。
【0021】
上記接合材供給手段は、接合予定面に供給された溶融状態の接合材を介して当該接合材と接合予定面の接触界面に超音波振動を印加する超音波印加部を有するよう構成することが望ましい。このような超音波印加部を設けることにより、溶融した接合材と接合予定面の接触界面に存在する気泡及び異物の除去、溶融した接合材の攪拌による新生面の露出が促進され、接合材と接合予定面との濡れ性が高まるので接合性をより向上させることが可能となる。
【0022】
また、接合材供給手段は、接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面に当接しつつ当該接触界面と摺動する摺動部を有するよう構成することが望ましい。このような摺動部を設けることにより、溶融した接合材と接合予定面との接触界面を摺動部で物理的に直接に掻き掃うことで、当該接触界面に存在する異物及び気泡の除去、溶融した接合材の攪拌による新生面の露出が促進され、接合材と接合予定面との濡れ性が高まるので接合性をより向上させることが可能となる。
【0023】
また更に、接合材供給手段は、接合予定面に供給された溶融状態の接合材の露出した表面に当接しつつ当該表面に存在する異物を除去する異物除去部を有するよう構成することが望ましい。このような異物除去部を設けることにより、接合材の表面に存在する異物を極めて少なくすることができ、接合性をより向上させることが可能となる。なお、上記異物には、溶融した接合材の表面に生じた酸化物のみならず、接合材に内在していた酸化物等の異物も含まれる。
【0024】
上記加熱溶融手段の構成は特に限定されるものではなく、接合材供給手段から供給された接合材が接合予定面に当接したときに溶融状態であるよう構成すればよい。すなわち、加熱溶融手段は、接合材供給手段から供給された接合材が接合予定面に当接したときに当該接合材を溶融可能に構成することができる。このように、接合材が接合予定面に当接するまでは非溶融状態を維持しつつ接合材を供給することで、接合材表面の酸化が防止され、結果として接合部材の表面に酸化物が生成することを抑制することができる。また、接合材供給手段から供給された接合材が接合予定面に当接する前に接合材を溶融可能に構成することができる。このように、接合材が接合予定面に当接する前に接合材を溶融状態としておくことで、接合材を確実に接合予定面への供給することができ、また接合材の供給精度の向上を図ることができる。
【0025】
上記接合体の製造装置において、接合予定面に対し接合材供給手段を相対的に移動可能に構成した移動手段を付加するとともに、酸化領域形成手段は、移動手段で移動する接合材供給手段の進行方向において、当該接合材供給手段から供給された接合材が接合予定面に当接する位置より前方の領域を酸化領域とする構成とすれば好ましい。かかる製造装置によれば、酸化領域は、移動手段により移動する接合材供給手段から供給される接合材が接合予定面と当接する位置より、その移動方向において前方の領域のみに限定される。したがって、接合材と被接合部材との接合性を確保でき、更に酸化領域の大きさを小さく局所化することにより溶融した接合材の表面に生じる酸化物を抑制することが可能となる。
【0026】
加えて、上記酸化領域形成手段は、接合材供給手段の進行方向において、前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面を前記酸化領域よりも酸化し難い状態にすることが可能に構成されていることが望ましい。すなわち、溶融した接合材に添加されている易酸化元素と接合予定面との化学結合は接合材と接合予定面との接触界面が酸化領域に触れることにより促進されるが、化学結合が完了した後も酸化され易い状態が継続すると余剰な酸化物が生成され望ましくない。したがって、上記のように酸化領域形成手段を構成することで、溶融した接合材と接合予定面との接触界面における余剰な酸化物の発生を抑制することができ、接合材と被接合部材またはガラス基板との接合性を更に高めることができる。
【0027】
上記接合体の製造装置における酸化領域形成手段は、溶融した接合材の表面における酸化物生成の防止の観点から、接合予定面の表面近傍に酸化領域を形成可能に構成されていることが望ましい。
【0028】
上記接合体の製造装置における酸化領域形成手段は、具体的には以下のように構成することが望ましい。
第1の態様の酸化領域形成手段は、酸化領域を酸素に富む状態とするため、接合予定面に酸化剤を供給可能に構成することができる。酸化剤としては常温常圧において液体状の形態のものを使用することができるが、接合予定面に余剰な酸素を残留させないためには溶融した接合材に触れたときに蒸発すること、すなわち接合材の融点以下の沸点を有する酸化剤を使用することが望ましく、さらに人体に対する毒性が比較的低い過酸化水素を含む酸化剤を使用することが望ましい。また、酸化剤としては上記以外に、常温常圧において気体状の形態のものを使用することができるが、被接合部材の表面を清浄化する機能も併せて期待できるオゾンを使用することが望ましい。
【0029】
第2の態様の酸化領域形成手段は、接合予定面を活性化させるため、接合予定面のみを局所加熱可能に構成することができる。局所加熱する手段としては、レンズ等で集光した赤外線を接合予定面に照射する手段、接合予定面に対応したパネル状ヒータ等を使用することができるが、加熱領域を比較的精密に制御可能なレーザを用いることが望ましい。
【0030】
上記接合体の製造装置において、接合予定面に供給された溶融状態の接合材が、酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置かれていることが望ましい。このように、溶融した接合材の周囲の雰囲気を低酸化性雰囲気とすることにより、溶融した接合材の表面に生じる酸化物を抑制することができる。上記の構成は、具体的には、接合体を収納可能な気密室と、気密室の雰囲気を上記酸化領域よりも低酸化性雰囲気とすることが可能に構成された雰囲気制御手段により実現することができる。なお、上記気密室の雰囲気を不活性雰囲気とすることが出来るように製造装置を構成すれば、溶融した接合材の表面に生じる酸化物を更に低減することが可能となるので好ましい。
【0031】
上記接合体の製造装置は、易酸化元素としてAl、Zn、Ti、Si、Cr、Beのいずれか1種以上を含み、かつ低融点金属としてSn、Zn、In、Pbのいずれか1種以上を含む接合部材を有する接合体を製造する場合に好ましく、特に、易酸化元素としてAlを含み、かつ低融点金属としてSnを含む接合部材を有する接合体を製造する場合に格別に好適である。
【0032】
本願請求項24に係る発明(第4発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に前記接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造方法であって、被接合部材の接合部材が接合されるべき接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、酸化領域形成工程の後に、接合部材を形成する接合材を接合予定面に溶融して供給する接合材供給工程と、を含む接合体の製造方法である。第4発明に係る接合体の製造方法は、上記第1発明に係る接合体の製造装置により実施することができるものである。なお、上記第4発明に係る接合体の製造方法は、酸化表面を形成し易い金属、セラミックスまたはガラスのいずれかで構成された被接合部材を含む接合体を製造する場合に好適である。
【0033】
本願請求項26に係る発明(第5発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され少なくとも一方の外周縁部が接合部材と直接接合された一対のガラス基板と、接合部材及び一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造方法であって、少なくとも一方のガラス基板の接合部材が接合されるべき接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、酸化領域形成工程の後に、接合部材を形成する接合材を接合予定面に溶融して供給する接合材供給工程と、を有する接合体の製造方法である。第5発明に係る接合体の製造方法は、上記第2発明に係る接合体の製造装置により実施することができるものである。
【0034】
本願請求項27に係る発明(第6発明)は、易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され双方の外周縁部が前記接合部材で直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、前記一対のガラス基板を所定の間隙を有する状態に対向配置する位置決め工程と、前記位置決め工程で対向配置された一対のガラス基板の接合部材が接合されるべき各々の接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、前記酸化領域形成工程の後に、一対のガラス基板の各々の接合予定面に接合部材を形成する接合材を溶融して供給する接合材供給工程と、を有する接合体の製造方法である。第6発明に係る接合体の製造方法は、上記第3発明に係る接合体の製造装置により実施することができるものである。
【0035】
なお、溶融した接合材と接合予定面との接触界面に存在する気泡及び異物の除去、溶融した接合材の攪拌による新生面の露出を促進し、接合部材と被接合部材との接合性をより向上させるため、前記接合材供給工程において、接合予定面に供給された溶融した接合材を介して上記接触界面に超音波振動を印加することが好ましい。また、同様な目的から、前記接合材供給工程において、上記接触界面に当接する摺動部で接触界面を直接的に掻き掃うことが望ましい。
【0036】
また、接合部材の表面に存在する異物を少なくし、接合部材へ接合される他の被接合部材の接合性をより向上させるため、前記接合材供給工程において、接合予定面に供給された溶融した接合材の露出表面に当接しつつ異物を除去することが望ましい。
【0037】
上記接合材供給工程において接合材を溶融状態とする方法は特に限定されるものではなく、接合予定面に供給された接合材が接合予定面に当接したときに溶融状態であれば足りる。すなわち、接合材供給工程において、接合材が接合予定面に当接したときに接合材を溶融可能なように構成することにより、接合材が接合予定面に当接するまでは非溶融状態を維持しつつ接合材を供給することができ、接合材の酸化を抑制することができる。また、接合材供給工程において、接合材が接合予定面に当接する前に接合材を溶融状態として接合予定面に供給可能なように構成することにより、溶融した接合材の確実な接合予定面への供給及び接合材の供給精度の向上を図ることができる。
【0038】
さらに、酸化領域を小さくして溶融した接合材の表面に生じる酸化物を抑制するため、接合材供給工程では接合予定面に対し接合材を移動させながら延設し、酸化領域形成工程では、延設される接合材の進行方向において供給された接合材が接合予定面に当接する位置より前方の領域を酸化領域とすることが望ましい。さらに加えて、溶融した接合材と被接合部材の接触界面における酸化物の生成を抑制するため、接合材供給工程において接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面を酸化領域よりも酸化し難い状態とすることが、なお好ましい。
【0039】
さらに加えて、溶融した接合材の表面における酸化物生成の防止の観点から、上記酸化領域形成工程において、接合予定面の表面近傍に酸化領域を形成することが望ましい。
【0040】
さらに、上記接合体の製造方法における酸化領域形成工程は、具体的には以下のように構成することが望ましい。
第1の態様の酸化領域形成工程は、接合予定面に酸化剤を供給する方法によるものである。かかる酸化領域形成工程は、上記第1の態様の酸化領域形成手段により実施することができる。なお、酸化剤としては常温常圧において液体状の形態のものを使用することができるが、接合予定面に余剰な酸素を残留させないためには溶融した接合材に触れたときに蒸発すること、すなわち接合材の融点以下の沸点を有する酸化剤を使用することが望ましく、さらに人体に対する毒性が比較的低い過酸化水素を含む酸化剤を使用することが望ましい。また、酸化剤としては上記以外に、常温常圧において気体状の形態のものを使用することができるが、被接合部材の表面を清浄化する機能も併せて期待できるオゾンを使用することが望ましい。
【0041】
第2の態様の酸化領域形成手段は、接合予定面のみを局所的に加熱する方法によるものである。かかる酸化領域形成工程は、上記第2の態様の酸化領域形成手段により実施することができる。局所加熱する方法としては、レンズ等で集光した赤外線を接合予定面に照射し加熱する方法、接合予定面に対応したパネル状ヒータ等を使用し加熱する方法を使用することができるが、加熱する領域を比較的精密に制御可能なレーザを使用することが望ましい。
【0042】
さらに、上記接合体の製造方法において、溶融した接合部の表面における酸化物生成の抑制の観点から、接合材供給工程および酸化領域形成工程の間、接合材供給工程において接合予定面に供給された溶融状態の接合材を酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置くことが望ましい。さらに、接合体を酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置くことが望ましく、さらに加えて、接合体を不活性雰囲気中に置くことが酸化物低減のためには好適である。
【0043】
上記接合体の製造方法は、易酸化元素としてAl、Zn、Ti、Si、Cr、Beのいずれか1種以上を含み、かつ低融点金属としてSn、Zn、In、Pbのいずれか1種以上を含む接合部材を有する接合体を製造する場合に好ましく、特に、易酸化元素としてAlを含み、かつ低融点金属としてSnを含む接合部材を有する接合体を製造する場合に格別に好適である。
【発明の効果】
【0044】
上記説明のとおり本願発明に係る接合体の製造装置及び製造方法によれば、上記本願発明の課題を解決することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本願発明について、その実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施態様の説明では、SnAgAl系合金を接合材として一対のガラス基板を接合し、ガラスパネルを製造する場合を例として具体的に説明するが、ガラス基板を、金属基板またはセラミックス基板と代えた場合においても、また一のガラス基板・金属基板・セラミックス基板と一の接合部材とを接合する場合においても、同様な作用・効果を奏することができる。さらに、本願発明はこれら実施態様に限定されることなく、本願発明と同一性の範囲において変形実施することができる。
【0046】
[第1態様]
本願発明に係る第1態様の接合体の製造装置および製造方法(以下第1態様の製造装置及び製造方法と言う。第2態様の接合体の製造装置および製造方法において同じ。)について図1〜13を参照しつつ説明する。ここで、図1は第1態様の製造装置を含むガラスパネル製造ラインの概略構成図、図2は第1態様の製造装置の正面図及び側面図、図3は図2の部分拡大側面図、図4は図2の製造装置の動作を説明する図、図5は図1のガラスパネル製造ラインに含まれるガラス基板接合装置の正面図及び側面図、図6は図5の部分拡大正面図、図7は図1の製造ラインで製造されるガラスパネルの構成を示す図、図8は図1の製造装置の接合材供給手段の変形例を示す図、図9は図1の製造装置の加熱溶融手段の第1変形例を示す図、図10は図1の製造装置の加熱溶融手段の第2変形例を示す図、図11は図1の製造装置の酸化領域形成手段の第1変形例を示す図、図12は図1の製造装置の酸化領域形成手段の第2変形例を示す図、図13は図1の製造装置の酸化領域形成手段の第3変形例を示す図である。
【0047】
まず、第1態様の製造装置で製造するガラスパネルの構成について図7を参照し説明する。図7(a)・(c)において符合wは第1態様の製造装置で製造されるガラスパネルである。符合w1及びw2は、所定の間隙gを介し主面が対向配置された一対のガラス基板である。符合mは、対向配置されたガラス基板w1・w2の外周縁部、具体的には夫々の外周縁よりやや内側寄りに枠状に設けられ、夫々の主面に直接接合し、後述する気密部を気密にするため気密部を封止する接合部材である。ここで、接合部材mは、図7(b)・(c)に示すように、ガラス基板w1に形成された接合部材m1とガラス基板w2に形成された接合部材m2とを各々の接合面で合わせ接合し一体化された状態で構成されている。なお、接合部材mとしてはガラス基板w1・w2との接合性に優れたSnAgAl系合金、具体的には質量%でAgが8.5%、Alが0.35%、残部Snからなる合金を使用している。符合kは、ガラス基板w1・w2及び接合部材mにより画成された空間である気密部である。この気密部kは、ガラスパネルwの用途に応じ、真空雰囲気や所定の気体または液体が封入された雰囲気とされる。
【0048】
なお、ガラスパネルwの構成は上記に限定されることなく、例えば図7(d)に示すように、接合部材mが一方のガラス基板w1にのみに直接接合し、溶融した接合部材mとの濡れ性に富む下地層uを介して他方のガラス基板w2に接合している態様のガラスパネルw、または図7(e)に示すように、接合部材mが一方の基板w1のみに直接接合し、ガラス基板w1・w2との間隙を確保するための金属やガラス等で構成された枠状部材S及びガラスフリットGを介して他方のガラス基板w2に接合している態様のガラスパネルwを排除するものではない。すなわち、第1態様の製造装置及び製造方法は、一対のガラス基板w1・w2の少なくとも一方に接合部材mが直接接合しているガラスパネルwに適用することが出来る。
【0049】
次に上記ガラスパネルwを製造する製造ラインについて図1を参照し説明する。符号100は第1態様の製造装置を含むガラスパネルwの製造ラインであり、順に並んだ、ガラス基板w1・w2を収納し所定の雰囲気とするロード室101、表面に付着した異物や水分等を除去するためガラス基板w1・w2を加熱処理・電子線照射処理等を行う洗浄室102、第1態様の製造装置が組込まれた接合部材形成室103、ガラス基板w1・w2を接合しガラスパネルとするガラス基板接合室104、ガラスパネルを冷却する冷却室105、ガラスパネルを払い出すアンロード室106、及び各室で処理されたガラス基板w1・w2を各室に受け渡す搬送手段とで構成されている。この製造ライン100では、準備されたガラス基板w1・w2はロード室101に投入され、その後、洗浄室102、接合部材形成室103、ガラス基板接合室104、冷却室105、アンロード室106の順序で処理され、ガラスパネルwが製造される。
【0050】
上記接合部材形成室103に組込まれる第1態様の製造装置について図2・3を参照し説明する。図2において符号10は第1態様の製造装置である。製造装置10は、接合材供給手段11、加熱溶融手段12、酸化領域形成手段13、移動手段14、上記各手段を内包する気密室15、上記各手段の動作を制御する制御手段16、気密室15の雰囲気を制御する雰囲気制御手段17とで構成されている。以下、各構成要素ごとに、ガラス基板w1に接合部材m1を形成する場合を例として説明する。
【0051】
[接合材供給手段]
まず、接合材供給手段11について説明する。図2において、符号111はワイヤー状の接合材Mを巻回するボビン状の接合材送出部であり、図示しないモータ等で回転され定量的に接合材Mを送り出す。符号112は、接合材Mが挿通可能な案内通路である貫通孔を有する両端開口の略管状の接合材案内部である。接合材案内部112は、その下方端部が、製造装置10の所定位置にセットされたガラス基板w1の接合部材m1との接合予定面s2へ向かう姿勢で、移動手段14の固定部材145に位置決め固定されている(図3参照)。ここで、製造装置10では、1mm程度の直径に成形したワイヤー状の接合材Mを用いており、初期状態において、上記接合材送出部111に巻回された接合材Mの先端部分は接合材送出部111から引き出され、接合材案内部112の上方端部の開口から案内通路に挿入され下方端部の開口から突出した状態にセットされている。そして、製造装置10の稼動時には、接合材送出部111から定量的に送り出された接合材Mは、接合材案内部112の案内通路で導かれ、下方端部の開口から繰り出されることにより、接合予定面s2へ供給される。なお、本態様における「接合予定面」とは、図3及び図4(a)に示すように、接合部材m1が接合されるべき、ガラス基板w1の主面の一領域を構成する矩形枠形状の面s2であって、接合部材m1とガラス基板w1との接合が完了しそれらの接合界面s1が形成される前の面のことを言う。また、以下で述べる「非接合面」とは、ガラス基板w1の主面において上記接合予定面s2以外の領域s5のことを言う。
【0052】
符合113は、上記接合予定面s2に供給され加熱溶融手段12で溶融された接合材M1(図3においてハッチングを付した部分)を介して当該接合材M1と接合予定面s2との接触界面s4に超音波を印加する超音波印加部である。なお、製造装置10では装置構成の便宜のため、超音波印加部113は加熱溶融手段12に組み込まれており、加熱溶融手段12の発熱部121を通じて接合材M1に超音波を印加するよう構成されている。
【0053】
上記接合材供給手段11の好ましい態様について図8を参照し説明する。
第1の好ましい態様の接合材供給手段の部分拡大側面図を示す図8(a)において、符合114は、接合予定面s2に供給された溶融状態の接合材M1と当該接合予定面s2との接触界面s4に当接する摺動部である。摺動部114は、接合材供給部112の移動と同期して移動可能なように、接合材供給部112が固定された固定部材145に固定されており、その移動により上記接触界面s4と摺動するよう構成されている。なお、摺動部114を駆動する手段を独立して設け、接触界面s4と摺動するよう構成してもよい。ここで、摺動部114の接触界面s4と直接接触する接触部材は、溶融した接合材M1を汚染し難いもの例えば接合材M1に含まれるSnとの親和性が低く融点の高いステンレス、カーボン、セラミックスで構成することが望ましい。また、接触界面s4の気泡や異物の除去、溶融した接合材M1の攪拌による新生面の露出を効果的に行うため、当該接触部材は、当該気泡や異物の捕捉性および接合材M1の攪拌性に優れた、ブラシ状部材または網状部材であることが望ましい。なお、ブラシ状部材は複数のワイヤーを束ね並設することにより、また網状部材は複数のワイヤーを編みこんで網目を形成することにより構成することができる。
【0054】
第2の好ましい態様の接合材供給手段の部分拡大側面図を示す図8(b)において、符合115は、接合予定面s2に供給された溶融状態の接合材M1の露出した表面に当接しつつ接合材M1の表面に存在する異物dを掻き取ることで除去する異物除去部である。異物除去部114も、接合材供給部112の移動と同期して移動可能なように、接合材供給部112が固定された固定部材145に固定されており、その移動とともに延設される接合材M1の露出表面に当接しつつ移動可能に構成されている。なお、異物除去部114を駆動する手段を独立して設けてもよい。ここで、異物除去部114は、溶融した接合材M1を汚染し難いもの例えば接合材M1に含まれるSnとの親和性が低く融点の高いステンレス、カーボン、セラミックスで構成することが望ましい。さらに、細かい異物を精度良く除去するとともに接合材M1を余剰に除去しないよう、異物除去部114は、複数のワイヤーを編みこむことにより網目を形成した網状部材であることが望ましい。
【0055】
[加熱溶融手段]
加熱溶融手段12について説明する。図2において、符合121は内蔵したヒータにより接合材Mの融点以上の温度に発熱する発熱部であり、符合122は発熱部121が固定されるとともにそのヒータの発熱回路等が組み込まれた本体部である。なお、上記超音波印加部113は本体部122に内蔵されている。ここで、図3に示すように、加熱溶融手段12の発熱部121は、接合材案内部112の下方端部の開口から繰り出される接合材Mの先端が接触可能な位置であって、接合予定面s2の上方に設けられている。したがって、接合材案内部112の下方端部の開口から繰り出された接合材Mは接合予定面s2に当接する前に発熱部121に接触することにより、溶融した状態で接合予定面s2に供給される。なお、加熱溶融手段12は、発熱部121と接合材供給部122との位置関係を保持可能なように移動手段14の固定部材145に位置決め固定されている。
【0056】
上記加熱溶融手段12の変形例を含む製造装置について、図9及び図10を参照し説明する。なお、図9及び図10において、上記製造装置10と同様な構成要素については同一符合を付し、詳細な説明を省略する(以下同じ。)。
【0057】
第1変形例に係る加熱溶融手段を含む製造装置30を示す図9において、符合32が、レーザ光照射装置で構成した非接触で接合材Mを加熱溶融する加熱溶融手段である。加熱溶融手段32は、図示しないレーザ光発振部と、当該レーザ光発振部に光ファイバを介して接続され、内蔵レンズで集光したレーザ光322を所定方向へ照射するレーザ光照射部321とで構成されている。ここで、図9(b)に示すように、レーザ光照射部321は、接合材案内部112の下方端部から繰り出される接合材Mが接合予定面s2に当接したときに当該接合材Mを溶融するため、その当接する位置にレーザ光322が焦点を結ばれるよう固定部材145に位置決め固定されている。また、超音波印加部313は、レーザ光322で溶融された接合材M1に超音波を印加可能なように、加熱溶融手段32の後方に独立し固定部材145に位置決め固定されている。なお、上記レーザ光照射装置に代えて例えば集光パネルで集光した赤外線で接合材Mを加熱溶融する赤外線照射装置を、非接触型の加熱溶融手段として使用することができる。非接触型の加熱溶融手段によれば、接合材Mに直接接触する部材がないので、溶融した接合材M1を汚染することがない。
【0058】
第2変形例に係る加熱溶融手段を含む製造装置40を示す図10において、符合42が加熱溶融手段である。ここで本態様の加熱溶融手段42は接合材供給手段の機能も併せ持つものであり、投入された接合材Mを加熱溶融する図示しない加熱部を備え当該加熱部で溶融された接合材M1を収納する収納容器421、収納容器421の下方に連設され収納容器421に収納された接合材M1を吐出するノズル422、及び接合材M1を定量供給するための図示しないギアポンプとで構成されている。なお、加熱手段42は、図10(b)に示すように、ノズル422から吐出される溶融した接合材M1が接合予定面s2に供給されるよう、固定部材145に位置決め固定されている。加熱溶融手段42によれば、収納容器421に収納された接合材M1は、ギアポンプにより定量供給され、ノズル422から吐出され、溶融状態で接合予定面s2に確実に供給される。
【0059】
[酸化領域形成手段]
酸化領域形成手段13について説明する。図2において、符合131は、液体状の酸化剤が充填された酸化剤充填部であり、酸化剤充填部131に充填された酸化剤は図示しない供給ポンプにより供給配管132を通じて定量供給される。この酸化剤充填部131には、過酸化水素を純水に対し質量%で3%添加混合した過酸化水素水が酸化剤として充填されている。なお、塩素や硝酸などの酸化剤に較べ過酸化水素は比較的人体に対する毒性や金属腐食性は低いもの、高濃度となると人体や機械装置に対し無視できない影響を及ぼすので、上記のように純水など適宜な溶媒で希釈して用いることが望ましい。
【0060】
符合133は、上記酸化剤充填部131から供給配管132を通じて供給された過酸化水素水が流通する流通通路である貫通孔を有する両端開口の略管状の酸化剤供給部である。また、符合134は、上記流通通路を通じて酸化剤供給部133から供給された過酸化水素水を接合予定面s2に塗布する、接合予定面s2に接触可能な塗布面135を有するとともに酸化剤供給部133の下端開口に密設された酸化剤塗布部である。
【0061】
ここで、図3に示すように、酸化剤塗布部134は、その塗布面135が、移動手段14で移動する接合材供給部112の進行方向において、接合材供給部112から供給され加熱溶融手段12で溶融された接合材M1が接合予定面s2に当接する位置より前方の領域、より具体的に言えば、上記進行方向に沿い接合予定面s2に延設される接合材M1の前縁よりも前方の領域s3であって、接合予定面s2に接触可能な位置に配置されており、また塗布面135は領域s3の大きさに対応するよう形成されている。このように酸化領域形成手段13を構成することにより、過酸化水素水は、延設される接合材M1の進行方向において、接合材M1が接合予定面s2に当接する位置より前方の領域に塗布されるので、非接合面に対し領域s3を局所的に非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域s3とすることができる。なお、酸化剤塗布部134は、接合予定面s2及び接合材M1各々との上記位置関係を保持可能なように酸化剤供給部133を介して固定部材145に位置決め固定されている。さらに、酸化剤塗布部134は、過酸化水素水を含浸し易い柔軟性のあるフェルトなどの材料で構成されており、接合予定面s2に密接しつつその表面近傍に非常に薄く過酸化水素水の層136を形成することができる。
【0062】
酸化剤塗布部134で酸化領域s3に塗布された過酸化水素水の層136に含まれる過酸化水素は、延設される接合材M1の前縁部に触れることで酸素と水に分解される。この分解生成された酸素の作用により、接合材M1に含まれるAlと接合予定面s2の酸素が化学結合し易くなることで両者の濡れ性が高まり、接合部材m1とガラス基板w1とは良好に接合する。一方で、過酸化水素から分解生成された水及び過酸化水素水に含まれる水は、過酸化水素の沸点以上に加熱された接合材M1に触れることにより残渣を残すことなく蒸発飛散するので、異物等のない健全な接合面s1を得ることができる。なお、上記蒸発する水分は吸引手段などを用いて適宜除去すればよい。
【0063】
さらに、本態様の酸化領域形成手段13では、上記のように接合材M1に触れることにより蒸発飛散する過酸化水素を酸化剤として使用することで、酸化領域s3に存在する過酸化水素水の層136から分解生成された酸素は、過酸化水素水の層136と接合材M1との接触部である接合材M1の前縁部のみに実質的に作用し、接合材M1と接合予定面s2との接触界面s4には作用しないように構成されている。以上を言い換えると、酸化領域形成手段13は、接合材供給手段11の進行方向において、接合予定面s2に供給された溶融状態の接合材M1と接合予定面s2との接触界面s4を酸化領域s3よりも酸化し難い状態に可能なよう構成されている。
【0064】
なお、上記酸化領域形成手段で実現している、接合予定面s2を酸化し易い状態である酸化領域とする機能は本発明と同一性の範囲内で変形実施することが可能である。以下酸化領域形成手段の具体的な変形例を含む製造装置について、図11〜13を参照し説明する。
【0065】
第1変形例に係る酸化領域形成手段を含む製造装置50を示す図11において、符合53が酸化領域形成手段である。酸化領域形成手段53は、紫外線光発生部531と、紫外線光発生部531で発生した紫外線光533を、接合予定面s2における領域s3の大きさに対応する照射面積で照射する紫外線光照射部532とで構成されている。そして、紫外線光照射部532は、紫外線光533が、延設される接合材M1の前縁よりも前方の領域s3を常に照射可能なように固定部材145に位置決め固定されている。ここで、当該領域s3に照射された紫外線光533は、領域s3に吸着された水分を分解してオゾンと水素を発生させる。オゾンは酸化性の高い気体であるので、非接合面に対し領域s3を局所的に酸化し易い状態である酸化領域s3とすることができる。なお、紫外線光533の強度や領域s3に吸着された水分量を調整することによりオゾンの発生する範囲、すなわち酸化領域s3を接合予定面s2の表面近傍に形成することができる。
【0066】
第2変形例に係る酸化領域形成手段を含む製造装置60を示す図12において、符合63が酸化領域形成手段である。酸化領域形成手段63は、オゾンや酸素など酸化性の高い酸化性ガスが充填された酸化性ガス充填部631、酸化性ガス充填部631から供給された酸化性ガスが流通する略管状の酸化性ガス流通部632、領域s3に酸化性ガスを供給する酸化性ガス供給部633とで構成されている。ここで、酸化性ガス供給部633は、接合予定面s2との間に微小な間隙hが形成されるよう対向配置される開口部634と開口部634から上方に伸びる酸化性ガス滞留部635とを有する底面開口の筐体状のものであり、酸化性ガス貯留部635は酸化性ガス流通部632の下流側開口と通じている。ここで、開口部634は領域s3に対応した大きさを有しており、酸化性ガス供給部632は、延設される接合材M1の前縁よりも前方の領域s3の上方に開口部634が常に位置するように固定部材145に位置決め固定されている。
【0067】
上記のように構成された酸化領域形成手段63によれば、酸化性ガス充填部631に充填された酸化性ガスは、酸化性ガス流通部632を通じて酸化性ガス滞留部635に供給される。ここで、酸化性ガス供給部633の開口部634は、接合予定面s2と微小な間隙hで対抗配置されており酸化性ガス滞留部635はほぼ密閉された状態となっている。そのため、供給された酸化性ガスは酸化性ガス滞留部635の中に滞留するので、非接合面に対し領域s3を局所的に酸化し易い状態である酸化領域s3とすることができる。なお、酸化性ガス滞留部635に滞留した酸化性ガスは、僅かな間隙hから流出することにより延設される接合材M1の前縁部と触れることができる。
【0068】
第3変形例に係わる酸化領域形成手段を含む製造装置70を示す図13において、符号73が酸化領域形成手段である。酸化領域形成手段73はレーザ光照射装置により構成されており、具体的には、レーザ光発振部731と、レーザ光発振部731に光ファイバを介して接続され、内蔵レンズで集光したレーザ光733を所定方向へ照射するレーザ光照射部732とで構成されている。ここで、図13(b)に示すように、レーザ光照射部732は、レーザ光733が、延設される接合材M1の前縁よりも前方の領域s3を、当該領域s3に対応する照射面積で常に照射可能なように固定部材145に位置決め固定されている。
【0069】
上記ように構成された酸化領域形成手段73によれば、レーザ光照射部732から照射されたレーザ光733は、延設される接合材M1の前方の領域s3を加熱する。そして、加熱された領域s3は、非接合面に比べ局所的に酸化し易い状態である酸化領域s3となる。ここで、ガラス基板自体の材質・構造などにもよるが、非加熱部分との温度勾配によるガラス基板w1の破損を防止するため、領域s3と非加熱部分との温度差が一定範囲となるようレーザ光733の強度を制御することが望ましい。
【0070】
[移動手段]
図2に示すように、駆動手段14は、門型の支持体141、支持体141の上辺部に固定された昇降部142、支持体141の両側辺部の間に設けられ紙面に対し垂直及び水平方向に移動可能な水平移動部143、接合部材m1が形成される主面を上方に向けた水平な姿勢でガラス基板w1を載置可能な水平移動部143に設けられたテーブル144とで構成されている。そして、上記したように接合材供給部112、加熱溶融手段12及び酸化剤供給部133は固定部材145を介して昇降部142の下端部に接続されている。なお、以下、図2(a)に示すように、昇降部142の移動方向をZ軸方向、水平移動部143の移動方向であって紙面に平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向という。
【0071】
なお、テーブル144には、ガラス基板w1の全面を加熱可能なパネル状の発熱体を設けてもよい。この発熱体によりガラス基板w1の全面を加熱することにより、接合部材m1とガラス基板w1との接合性を高めることができる。例えば、酸化領域形成手段13を組み込んだ製造装置10の場合には、加熱された接合予定面s2に塗布された過酸化水素水の層136は一時的に沸騰する状態となる。そして、この状態の過酸化水素水に接合材M1の前縁部が触れると、前縁部の溶融した接合部M1が沸騰の圧力により攪拌され新生面が露出し易くなるので、接合部材m1とガラス基板w1との接合性を高めることができる。また、酸化領域形成手段73を組み込んだ製造装置70の場合には、レーザ光733により領域s3を比較的高温に加熱する場合でも、ガラス基板w1の全体を加熱しておくことにより、ガラス基板w1の破損を防止することができる。
【0072】
[制御手段]
図2に示すように、制御手段16は、電気通信回線161を介して製造装置10の上記各構成要素と接続された制御部162で構成されており、各構成要素の動作を制御する。具体的には、制御部162はコンピュータで構成されており、その記憶部(メモリー)に格納された動作プログラム及び指令データを演算部(CPU)が読み出し適宜演算することにより、接合材送出部111に組み込まれたモータに指令して接合材Mの供給量を制御し、発熱部121に組み込まれたヒータに指令して発熱温度を制御し、酸化剤充填部131に組み込まれた供給ポンプに指令して酸化剤の供給量を制御し、移動手段14を構成する昇降部142及び水平移動部143に指令してその移動経路や移動速度を制御するよう構成されている。
【0073】
[気密室]
図2に示すように、気密室15は、製造装置10の上記各構成要素を内包する気密空間152を形成する筐体151と、製造装置10へのガラス基板w1の投入・排出のために筐体151の両側壁に設けられた搬入口153及び搬出口154とで構成されている。なお、搬入口153及び搬出口154には気密室15の気密性を確保するため気密扉が設けられている。
【0074】
[雰囲気制御手段]
図2に示すように、雰囲気制御手段17は、供給ポンプを備え収納された所定のガスを所定圧力で供給可能なガス供給部172と、気密室15の気密空間152を真空状態とする真空ポンプ173と、ガス供給部172と真空ポンプ173とを気密空間152に接続する供給配管171とで構成されており、気密空間152を所定の雰囲気に制御する。ここで、ガス供給部172には、ガラス基板w1の用途等に応じて適用する複数種のガス、例えば不活性ガスであるアルゴンガス・窒素ガス、還元性ガスである水素ガス・一酸化炭素ガス、酸化性ガスである酸素ガスを分離して収納することが可能であり、更にガス供給部172に備える混合弁によりこれらのガスを所定割合で混合して気密空間152に供給することもできる。
【0075】
以下、上記製造装置10の動作について主に図2〜4を参照しつつ説明するが、製造装置10は、ガラスパネル製造ライン100の接合部材形成室103に組み込まれ使用されるものであり、当該製造ライン100におけるガラス基板w1・w2の処理の態様も含め説明する。なお、図4では、理解し易いように、接合材供給手段11、加熱溶融手段12及び酸化領域形成手段13等の表示を省略している。
【0076】
[準備工程]
まず、図1に示すように、準備したガラス基板w1・w2をプリロード室101に投入
する。ガラス基板w1・w2の投入後、プリロード室101の内部は一旦真空にされた後にアルゴンガスが置換され、不活性雰囲気とされる。なお、以下の洗浄室102、接合部材形成室103、接合室104、冷却室105及びアンロード室106は、同様に不活性雰囲気とされている。
【0077】
[洗浄工程]
次いで、ガラス基板w1・w2を洗浄室102に投入し、所定の温度で加熱処理し、または電子線洗浄処理することによりガラス基板w1・w2の表面に付着した水分及び異物等を洗浄除去する。ここで、ガラスフリット等不純物ガスを生じる接合部材がガラス基板w1・w2に形成されている場合には、上記加熱処理工程において接合部材から生じた不純物ガスを除去する脱ガス処理も併せて行うことができる。
【0078】
[接合部材形成工程]
洗浄工程で洗浄されたガラス基板w1・w2を接合部材形成室103に投入し、図7(b)に示したように、ガラス基板w1に接合部材m1を、ガラス基板w2に接合部材m2を形成する。接合部材m1・m2の形成方法は同一であるので、以下ガラス基板w1に接合部材m1を形成する場合のみを説明する。
【0079】
図2に示すように、ガラス基板w1を、接合部材m1が形成される主面を上方に向けた水平な姿勢でテーブル144に載置する。次いで、酸化剤塗布部134の塗布面135が接合予定面s2上に設定した始点A(図4(a)参照)に接触した状態となるよう位置決めするため、X・Y・Z軸各方向へ昇降部142及び水平移動部143を移動させる。ここで、図4(a)に示すように、接合予定面s2は接合部材m1に対応する一筆書き可能な矩形枠状の形状であるので、始点Aは、その接合予定面s2における一の角部等に任意に設定することができる。酸化剤塗布部134の塗布面135が始点Aに位置決めされたとき、接合材供給部112、発熱部121及び酸化剤塗布部134は、図3に示す位置関係で接合予定面s2と対峙している。
【0080】
その後、酸化剤充填部131の供給ポンプを駆動し、酸化剤供給部133を介して酸化剤塗布部134に過酸化水素水を供給し、内蔵ヒータを発熱させ発熱部121を接合材Mの融点以上の温度に加熱する。次いで、水平移動部143を駆動し、図4(b)に示すように、ガラス基板w1のX軸方向への水平移動を開始する。始点Aには酸化剤供給部134の塗布面135が接触しているので、過酸化水素水が塗布され、ガラス基板w1の移動とともに図3に示すように過酸化水素水の層136が形成される。これにより、始点Aの周囲の領域は、非接合面s5よりも酸化し易い状態である酸化領域s3とされる(酸化領域形成工程)。
【0081】
ガラス基板w1の水平移動の開始と同時に、接合材送出部111のモータを駆動し、接合材供給部112から接合材Mを繰り出す。繰り出された接合材Mは発熱部121に触れ、始点Aに溶融した接合材M1が供給される(接合材供給工程)。ここで、上記のとおり始点Aの周囲の領域には過酸化水素水の層136が形成されている。この過酸化水素水の層136と接合材M1の前縁部が触れることにより、過酸化水素水中の過酸化水素は酸素と水に分解される。この分解生成された酸素の作用により、接合材M1に含まれるAlと接合予定面s2における酸素とが化学結合し易くなることで両者の濡れ性が高まり、その後健全な接合界面s1が形成される。一方で、酸化領域s3は延設される接合材M1の前方のみに局所的に形成され、その上ガラス基板w1及び接合部材m1は不活性雰囲気中に置かれているので、表面に酸化物が生じることを抑制しつつ接合部材m1を形成することができる。
【0082】
その後、図4(c)において矢印で示すように、矩形枠状の移動経路に沿いガラス基板w1を移動させると、その移動経路に沿い接合材M1が接合予定面s2に延設される。接合材供給部112、発熱部121及び酸化剤塗布部134は、所定の位置関係を保持できるように固定部材144に位置決め固定されているので、延設される接合材M1の前方の領域には常に非接合面s5より酸化し易い状態である酸化領域s3とされる。以上により、矩形枠状に連続的に形成される接合部材m1は接合予定面s2と良好に接合し健全な接合界面s1が形成されるとともに、その表面における酸化物生成を抑制することが可能となる。
【0083】
[ガラス基板接合工程]
上記接合部材形成工程で接合部材m1・m2が形成されたガラス基板w1・w2を、図1に示すガラス基板接合室104に投入し、図5及び図6に示すガラス基板接合装置20で接合する。
【0084】
ここで、ガラス基板接合装置20は、図5に示すように、上記製造装置10と同様な、雰囲気制御手段17で雰囲気制御される気密室15の内部に置かれた、制御手段16で駆動制御される移動手段14とを有し、当該移動手段14のテーブル144は接合部材m1が形成された主面を上方に向け水平な姿勢でガラス基板w1を載置可能に構成され、また昇降部142には、接合部材m2が形成された主面を下方に向けた水平な姿勢でガラス基板w2を保持する保持手段28が組み込まれている。
【0085】
保持手段28は、図6に示すように、上記の姿勢でガラス基板w2を保持可能な保持部281と、保持部281とガラス基板w2の間に設けられた通電により発熱するパネル状の発熱部282とから構成されている。なお、図6では、ガラス基板w1・w2と発熱部282との位置関係を理解し易くするためそれらは断面図で示している。
【0086】
発熱部282には、ガラス基板w2の外周縁部に形成された接合部材m2に対応した矩形枠状の突起部283が形成されている。そして、当該突起部283は、ガラス基板w2を保持部281に保持したときに、水平面内において接合部材m2に対応する位置であってガラス基板w2の上面(主面と対向する面)に接触し、発熱部282を発熱させた場合に突起部283介して接合部材m2のみが局所的に加熱可能なように構成されている。
【0087】
上記ガラス基板接合装置20の動作を説明する。まず、ガラス基板w1を、接合部材m1が形成された主面を上方に向けた姿勢でテーブル144に載置し、ガラス基板w2を、接合部材m1が形成された主面を下方に向けた姿勢で保持部281に保持させる。次いで、ガラス基板w1・w2の接合部材m1と接合部材m2の各々の接合面が相向合い接触する状態となるよう、X・Y・Z軸各方向へ昇降部142及び水平移動部143を移動させる。その後、発熱部282に通電し発熱させることで、接合部材m1・m2の接触界面を溶融すると同時に、昇降部142を下方に駆動することにより上記接触界面をやや加圧すると、溶融した接合部材m1・m2は接触界面において接合一体化される。その後、発熱部282の通電を停止し、溶融した接合部材m1・m2を冷却凝固することにより接合部材m1と接合部材m2とが接合界面で一体化した接合部材mが形成される。以上により、図7(a)で示した、ガラス基板w1・w2が当該接合部材mで接合され気密部kが構成されたガラスパネルwを得ることができる。ここで、接合部材m1・m2の各々の表面、すなわち接合部材m1・m2の各々の接合面は酸化物の生成が抑制されているので、接合部材m1と接合部材m2との接合界面にはリークパスとなる欠陥が生じ難い。そして、上記のとおり接合部材m1・m2とガラス基板w1・w2とは良好に接合されており、これらの接合界面s1にもリークパスとなる非接合部分が生じ難く、気密部kの気密性を確保することができる。
【0088】
[冷却工程]
上記、ガラス基板接合工程で形成したガラスパネルwを冷却室105に投入し、常温となるまで保持する。
【0089】
[払出工程]
冷却されたガラスパネルwをアンロード室106に投入する。ガラスパネルwは、アンロード室106の内部をアルゴンガスから大気へ置換した後、外部へ払い出される。
【0090】
[第2態様]
本願発明に係る、一対のガラス基板を同時に接合部材で接合する第2態様の製造装置および製造方法について図14〜17を参照しつつ説明する。ここで、図14は第2態様の製造装置を含むガラスパネル製造ラインの概略構成図、図15は第2態様の製造装置の正面図及び側面図、図16は図15の部分拡大側面図、図17は図14の製造ラインで製造されるガラスパネルの構成を示す図である。
【0091】
第2態様の製造装置で製造するガラスパネルの構成について図17を参照し説明する。図17(a)・(b)に示すように,ガラスパネルwのガラス基板w4は、ガラス基板w3と対向配置したときにガラス基板w3の各辺の縁より所定幅wだけ突出する外周縁を有する大きさである。ガラス基板w3・w4を接合する接合部材nは、ガラス基板w3・w4の外周縁部であって、その一端がガラス基板w3の主面及び当該主面の辺縁から垂直に伸びた側面に直接接合し、他端がガラス基板w4の主面に直接接合されている。ここで、ガラス基板w3・w4の主面間には、間隙gを維持するための球状の間隙維持部材pが複数個配置されている。
【0092】
なお、第2態様の製造装置で製造可能なガラスパネルは、上記態様のガラスパネルに限定されることなく、例えば図17(c)に示すガラス基板w3・w4の外周縁の内側であって各々の主面にのみ接合部材nが直接接合する態様のガラスパネル、また図17(d)に示すガラス基板w3・w4の各々の主面及び側面に接合部材nが直接接合する態様のガラスパネルを排除するものではない。
【0093】
上記ガラスパネルwを製造する製造ラインは、図14に示すように、上記図1の製造ライン100とほぼ同様に構成されている。すなわち、製造ライン200は、順に並んだ上記製造ライン100と同様なロード室101、洗浄室102、冷却室105、アンロード室106と、上記洗浄室102と冷却室105の間に設けられ第2態様の製造装置が組み込まれたガラスパネル組立室203と、各室で処理されたガラス基板w3・w4を各室に受け渡す搬送手段と、を備えている。以下、ガラスパネル組立室203に組み込まれた第2態様の製造装置及びその動作について説明する。
【0094】
第2態様の製造装置80は、図15及び図16に示すように、上記第1態様の製造装置10と同様な接合材供給手段11、加熱溶融手段12、酸化領域形成手段13、気密室15、制御手段16及び雰囲気制御手段17を備え、更に、接合部材nが接合される主面を下方に向けた水平な姿勢でガラス基板w3を保持する保持手段88が組み込まれている。保持手段88は、上記姿勢でガラス基板w3を吸着保持可能な複数の吸着部882と、吸着部882が固定された略平板状の本体部881とで構成されている。製造装置80の移動手段84は、その支持体141の上辺部の左端に固定され固定部材145を介して接合材供給部112等を固定する第1の昇降部142と、同上辺部の右端に固定された第2の昇降部845を備えており、上記保持手段88は、第2の昇降部845に取り付けられている。ここで、上記保持手段88、第2の昇降部845及び水平移動部143は、これらの協動によりガラス基板w4に対しガラス基板w3を位置決めする位置決め手段を構成している。
【0095】
製造装置80の動作について説明する。準備されたガラス基板w3・w4を、上記と同様にロード室101を経て洗浄室102で洗浄し、ガラスパネル組立室203に投入する。そして、ガラス基板w3を、接合部材nが接合される主面を下方に向けた姿勢で保持手段88に保持させ、ガラス基板w4を、接合部材nが接合される主面を上方に向けた水平な姿勢でテーブル144に載置する。ここで、ガラス基板w4の主面には予め間隙維持部材pが整列配置されている。
【0096】
次いで、図16(a)に示すように、ガラス基板w3・w4の各々の主面が相向合いかつガラス基板w3の主面が間隙維持部材pの頂点に接触する状態となるよう、X・Y・Z軸各方向へ水平移動部143及び第2の昇降部845を移動させ、ガラス基板w3・w4を位置決めする(位置決め工程)。位置決め工程が完了した後にガラス基板w3は保持手段88から解放されるが、ガラス基板w4の主面には間隙維持部材pが配置されているので、ガラス基板w3・w4の間隙gは維持される。
【0097】
次いで、酸化剤塗布部134の塗布面135を、ガラス基板w3・w4の接合部材nとの接合予定面に設定した始点へ接触した状態に位置決めするため、X・Y・Z軸各方向へ第1の昇降部142及び水平移動部143を移動させる。酸化剤塗布部134が始点に位置決めされたとき、図16(b)に示すように、柔軟性のあるフェルトで構成された酸化剤塗布部134の一部はガラス基板w3・w4の外周縁部における間隙gに進入して各々の主面に接触し、別の一部はガラス基板w3の側面と接触する状態となっている。すなわち、酸化剤塗布部134の塗布面135は、ガラス基板w3の接合予定面s23及びガラス基板w4の接合予定面s24の双方に接触している状態となっている。また、接合材供給部112、発熱部121及び酸化剤塗布部134は、図16(c)に示す位置関係で接合予定面s23・s24と対峙している。
【0098】
その後、酸化剤充填部131の供給ポンプを駆動し、酸化剤供給部133を介して酸化剤塗布部134に過酸化水素水を供給し、内蔵ヒータを発熱させ発熱部121を接合材Mの融点以上の温度に加熱する。次いで、水平移動部143を駆動し、位置決めされた状態のガラス基板w3・w4の水平移動を開始する。始点を含む接合予定面s23・s24には共に酸化剤供給部134の塗布面135が接触しているので、双方に過酸化水素水が塗布され、ガラス基板w3・w4の移動とともに図16(c)に示すように双方に過酸化水素水の層136が形成される。これにより、双方の始点の周囲の領域は酸化し易い状態である酸化領域s33・s34とされる(酸化領域形成工程)。
【0099】
ガラス基板w3・w4の水平移動の開始と同時に、接合材送出部111のモータを駆動し、接合材供給部112から接合材Mを繰り出す。繰り出された接合材Mは発熱部121に当接し、始点を含む接合予定面s23・s24の双方に溶融した接合材M1が供給される(接合材供給工程)。ここで、始点の周囲の領域には過酸化水素水の層136が形成されている。この過酸化水素水の層136と接合材M1の前縁部が触れることにより、過酸化水素水中の過酸化水素は酸素と水に分解される。この分解生成された酸素の作用により、接合材M1に含まれるAlと接合予定面s23・s24における酸素とが化学結合し易くなることで両者の濡れ性が高まり、その後ガラス基板w3・w4ともに健全な接合界面s13・s14が形成される。一方で、酸化領域s33・s34は延設される接合材M1の前方のみに局所的に形成され、その上ガラス基板w3・w4及び接合部材nは不活性雰囲気中に置かれているので、表面に酸化物が生じることを抑制しつつ接合部材nを形成することができる。
【0100】
その後、所定の移動経路に沿いガラス基板w3・w4を移動させると、その移動経路に沿い接合材M1が接合予定面s23・s24に延設される。接合材供給部112、発熱部121及び酸化剤塗布部134は、所定の位置関係を保持できるように固定部材144に位置決め固定されているので、延設される接合材M1の前方の領域には常に酸化領域s33・s34が形成される。以上により、矩形枠状に連続的に形成される接合部材nは、接合予定面s23・s24と良好に接合し健全な接合界面s13・s14が形成されるとともに、その表面における酸化物生成を抑制することが可能となる。
【0101】
なお、間隙維持部材pによりガラスパネルwの間隙gが維持されるため、製造装置80では、ガラス基板w3の位置決め後に保持手段88をガラス基板w3から解放する構成としたが、図16(d)に示すように、保持手段88によりガラス基板w3とガラス基板w4とを位置決めした状態を保持しつつ接合部材nを形成する構成とすることもできる。この場合には、接合材供給部112、発熱部121及び酸化剤供給部133をX・Y・Z各軸方向に独立して移動可能なように構成しておけばよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本願発明に係る第1態様の接合体の製造装置を含むガラスパネル製造ラインの概略構成図である。
【図2】本願発明に係る第1態様の接合体の製造装置の正面図及び側面図である
【図3】図2の部分拡大側面図である。
【図4】図2の製造装置の動作を説明する図である。
【図5】図1のガラスパネル製造ラインに含まれるガラス基板接合装置の正面図及び側面図である。
【図6】図5の部分拡大正面図である。
【図7】図1の製造ラインで製造されるガラスパネルの構成を示す図である。
【図8】図1の製造装置の接合材供給手段の変形例を示す図である。
【図9】図1の製造装置の加熱溶融手段の第1変形例を示す図である。
【図10】図1の製造装置の加熱溶融手段の第2変形例を示す図である。
【図11】図1の製造装置の酸化領域形成手段の第1変形例を示す図である。
【図12】図1の製造装置の酸化領域形成手段の第2変形例を示す図である。
【図13】図1の製造装置の酸化領域形成手段の第3変形例を示す図である。
【図14】本願発明に係る第2態様の接合体の製造装置を含むガラスパネル製造ラインの概略構成図である
【図15】本願発明に係る第2態様の接合体の製造装置の正面図及び側面図である。
【図16】図15の部分拡大側面図である
【図17】図14の製造ラインで製造されるガラスパネルの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
10(30、40、50、60、70,80) 接合体の製造装置
11 接合材供給手段
12(32、42) 加熱溶融手段
13(53、63、73) 酸化領域形成手段
14(84) 移動手段
15 気密室
16 制御手段
17 雰囲気制御手段
20 ガラス基板接合装置
100(200) ガラスパネル製造ライン
101 プリロード室
102 洗浄室
103 接合部材形成室
104 ガラス基板接合室
105 冷却室
106 アンロード室
203 パネル組立室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化元素を含む低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に前記接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造装置であって、
前記被接合部材の前記接合部材が接合されるべき接合予定面に前記接合部材を形成する接合材を供給する接合材供給手段と、
前記接合材の加熱溶融手段と、
前記接合材供給手段による接合材の供給前に、前記接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置。
【請求項2】
前記被接合部材は、金属、セラミックス又はガラスのいずれかで構成されている請求項1に記載の接合体の製造装置。
【請求項3】
易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され少なくとも一方の外周縁部が前記接合部材と直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、
少なくとも一方のガラス基板の前記接合部材が接合されるべき接合予定面に前記接合部材を形成する接合材を供給する接合材供給手段と、
前記接合材の加熱溶融手段と、
前記接合材供給手段による接合材の供給前に、前記接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置。
【請求項4】
易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され双方の外周縁部が前記接合部材で直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、
前記一対のガラス基板を所定の間隙を有する状態に対向配置する位置決め手段と、
前記位置決め手段により対向配置された一対のガラス基板の前記接合部材が接合されるべき各々の接合予定面にともに前記接合部材を形成する接合材を供給する接合部材供給手段と、
前記接合材の加熱溶融手段と、
前記接合材供給手段による接合材の供給前に、前記一対のガラス基板の各々の接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成手段と、を有する接合体の製造装置。
【請求項5】
前記接合材供給手段は、前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材を介して当該接合材と接合予定面との接触界面に超音波振動を印加する超音波印加部を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項6】
前記接合材供給手段は、前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面に当接しつつ当該接触界面と摺動する摺動部を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項7】
前記接合材供給手段は、前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材の露出表面に当接し異物を除去する異物除去部を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項8】
前記加熱溶融手段は、前記接合材供給手段から供給された接合材が前記接合予定面に当接したときに当該接合材を溶融可能に構成されている請求項1乃至7のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項9】
前記加熱溶融手段は、前記接合材供給手段から供給された接合材が前記接合予定面に当接する前に接合材を溶融可能に構成されている請求項1乃至7のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項10】
前記接合予定面に対し前記接合材供給手段を相対的に移動可能に構成した移動手段を有し、前記酸化領域形成手段は、前記移動手段で移動する接合材供給手段の進行方向において、当該接合材供給手段から供給された接合材が前記接合予定面に当接する位置より前方の領域を酸化領域とする請求項1乃至9のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項11】
前記酸化領域形成手段は、前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面を前記酸化領域よりも酸化し難い状態にする請求項10に記載の接合体の製造装置。
【請求項12】
前記酸化領域形成手段は、前記接合予定面の表面近傍に前記酸化領域を形成可能に構成されている請求項1乃至11のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項13】
前記酸化領域形成手段は、前記接合予定面に酸化剤を供給可能に構成されている請求項1乃至12のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項14】
前記酸化剤が前記接合部材の融点以下の沸点を有する請求項13に記載の接合体の製造装置。
【請求項15】
前記酸化剤が過酸化水素を含む請求項14に記載の接合体の製造装置。
【請求項16】
前記酸化剤がオゾンである請求項13に記載の接合体の製造装置。
【請求項17】
前記酸化領域形成手段は、前記接合予定面のみを局所加熱可能に構成されている請求項1乃至11のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項18】
前記酸化領域形成手段は、前記接合予定面のみをレーザで局所加熱可能に構成されている請求項17に記載の接合体の製造装置。
【請求項19】
前記接合予定面に供給された溶融状態の接合材が、前記酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置かれている請求項1乃至18のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項20】
前記接合体を収納可能な気密室と、前記気密室の雰囲気を前記酸化領域よりも低酸化性雰囲気とすることが可能に構成された雰囲気制御手段を有する請求項1乃至18のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項21】
前記気密室の雰囲気を不活性雰囲気にすることが可能に構成された雰囲気制御手段を有する請求項20に記載の接合体の製造装置。
【請求項22】
前記接合部材は、易酸化元素としてAl、Zn、Ti、Si、Cr、Beのいずれか1種以上を含み、かつ低融点金属としてSn、Zn、In、Pbのいずれか1種以上を含む請求項1乃至21のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項23】
前記接合部材は、易酸化元素としてAlを含み、かつ低融点金属としてSnを含む請求項22に記載の接合体の製造装置。
【請求項24】
易酸化元素を含む低融点金属からなる接合部材と、酸化表面を備え当該酸化表面に前記接合部材が直接接合する被接合部材とを含む接合体の製造方法であって、
被接合部材の接合部材が接合されるべき接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、
前記酸化領域形成工程の後に、接合部材を形成する接合材を接合予定面に溶融して供給する接合材供給工程と、を含む接合体の製造方法。
【請求項25】
前記被接合部材は、金属、セラミックス又はガラスのいずれかで構成されている請求項24に記載の接合体の製造方法。
【請求項26】
易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され少なくとも一方の外周縁部が前記接合部材と直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造方法であって、
少なくとも一方のガラス基板の接合部材が接合されるべき接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、
前記酸化領域形成工程の後に、接合部材を形成する接合材を接合予定面に溶融して供給する接合材供給工程と、を有する接合体の製造方法。
【請求項27】
易酸化元素を含む低融点金属からなる枠状の接合部材と、所定の間隙を介して対向配置され双方の外周縁部が前記接合部材で直接接合された一対のガラス基板と、前記接合部材及び前記一対のガラス基板で形成された気密部を含む接合体の製造装置であって、
前記一対のガラス基板を所定の間隙を有する状態に対向配置する位置決め工程と、
前記位置決め工程で対向配置された一対のガラス基板の接合部材が接合されるべき各々の接合予定面を非接合面よりも酸化し易い状態である酸化領域とする酸化領域形成工程と、
前記酸化領域形成工程の後に、一対のガラス基板の各々の接合予定面に接合部材を形成する接合材を溶融して供給する接合材供給工程と、を有する接合体の製造方法。
【請求項28】
前記接合材供給工程において、接合予定面に供給された溶融状態の接合材を介して当該接合材と接合予定面との接触界面に超音波振動を印加する請求項24乃至28のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項29】
前記接合材供給工程において、接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面に当接する摺動部で前記接触界面を直接的に掻き掃う請求項24乃至28のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項30】
前記接合材供給工程において、接合予定面に供給された溶融状態の接合材の露出表面に当接しつつ異物を除去する請求項24乃至28のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項31】
前記接合材供給工程において、接合材が接合予定面に当接したときに接合材を溶融する請求項24乃至30のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項32】
前記接合材供給工程において、接合材が接合予定面に当接する前に接合材を溶融状態として接合予定面に供給する請求項24乃至30のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項33】
前記接合材供給工程では接合予定面に対し接合材を移動させながら延設するとともに、前記酸化領域形成工程では、前記延設される接合材の進行方向において供給された接合材が接合予定面に当接する位置より前方の領域を酸化領域とする請求項24乃至32のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項34】
前記酸化領域形成工程では、前記接合材供給工程で接合予定面に供給された溶融状態の接合材と接合予定面との接触界面を前記酸化領域よりも酸化し難い状態とする請求項33に記載の接合体の製造方法。
【請求項35】
前記酸化領域形成工程において、接合予定面の表面近傍に酸化領域を形成する請求項24乃至34のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項36】
前記酸化領域形成工程において、前記接合予定面に酸化剤を供給する請求項24乃至35のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項37】
前記酸化剤が前記接合部材の融点以下の沸点を有する請求項36に記載の接合体の製造方法。
【請求項38】
前記酸化剤が過酸化水素を含む請求項37に記載の接合体の製造方法。
【請求項39】
前記酸化剤がオゾンである請求項36に記載の接合体の製造方法。
【請求項40】
前記酸化領域形成工程において、接合予定面のみを局所的に加熱する請求項24乃至34のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項41】
前記酸化領域形成工程において、接合予定面のみをレーザで局所的に加熱する請求項40に記載の接合体の製造方法。
【請求項42】
前記接合材供給工程および酸化領域形成工程の間、前記接合材供給工程において接合予定面に供給された溶融状態の接合材を前記酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置く請求項24乃至41のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項43】
前記接合材供給工程および酸化領域形成工程の間、前記接合体を前記酸化領域よりも低酸化性雰囲気中に置く請求項24乃至41のいずれかに記載の接合体の製造装置。
【請求項44】
前記接合材供給工程および酸化領域形成工程の間、前記接合体を不活性雰囲気中に置く請求項43に記載の接合体の製造装置。
【請求項45】
前記接合部材は、易酸化元素としてAl、Zn、Ti、Si、Cr、Beのいずれか1種以上を含み、かつ低融点金属としてSn、Zn、In、Pbのいずれか1種以上を含む請求項24乃至44のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項46】
前記接合部材は、易酸化元素としてAlを含み、かつ低融点金属としてSnを含む請求項45に記載の接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−90332(P2009−90332A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263447(P2007−263447)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(507285968)サンワ化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】