説明

接合可能なウェハ表面のための応力が低減されたNi−P/Pd積層

本発明は、AlまたはCu表面上に、接合可能な金属被覆を以下に記載の順で有する基板に関する:(a)Ni−P層、(b)Pd層、および任意的に、(c)Au層、ここで、Ni−P層(a)の厚さは0.2〜10mであり、Pd層(b)の厚さは0.05〜1.0mであり、そして任意的なAu層(c)の厚さは0.01〜0.5mであり、そしてNi−P層(a)のP含量は10.5〜14重量%である。得られるNi−P/Pd積層の堆積内部応力は、34.48MPa(5,000psi)以下である。さらに、このような基板の調製プロセスを記述した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlまたはCu表面上に、特定の厚さを有し、応力が低減されているNi−P層およびPd層を有する、接合可能な金属被覆を有する基板に関する。本発明はさらに、このような基板を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線の接合およびフリップチップのはんだ付けのための無電解ニッケル−パラジウム−金プロセスは、先行技術において知られ、例えば欧州特許出願第EP0701281A2において記載されている。米国特許第6,445,069号および欧州特許出願第EP1126519A2にも同様のプロセスが記載されている。ウェハレベルの小型化、電気信号の完全性および金属積層の信頼性のような技術的な見地から、アンダーバンプメタライゼーション(UBM)が促進されている。ウェハは薄くなって来ており、従って、適用されるどのような金属層も望ましくないウェハの撓みの原因となり得る。
従来技術によると、CuまたはAu層がウェハ表面を最初に被覆し、次いでウェハ表面の個々の隔室の上にNi−PおよびPd(ならびに任意的にAu)のめっきがなされる(「pads」)。従来技術の積層における層は、ウェハの撓みを引き起こす内部応力の堆積を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、応力が低減され、従ってウェハの撓みが最小化あるいは回避された、接合可能なウェハ表面のためのNi−P/Pd積層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、AlまたはCu表面上に、接合可能な金属被覆を以下に記載の順で有する基板によって達成される:(a)Ni−P層、(b)Pd層、および任意的に(c)Au層、ここで、Ni−P層(a)の厚さは0.2〜10μmであり、Pd層(b)の厚さは0.05〜1.0μmであり、そして任意的なAu層(c)の厚さは0.01〜0.5μmであり、Ni−P層(a)のP含量は10.5〜14重量%である。得られるNi−P/Pd積層(層(a)および(b))の(引張)堆積内部応力は、一般に34.48MPa(5,000psi)以下である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、個々の層の厚さを上述の範囲内で選択し、そしてNi−P層について上記のリン含量を選択することにより、得られるNi−P/Pd層の堆積内部応力が、34.48MPa(5,000psi)以下の引張応力となるか、または圧縮応力にもなり、従ってそのような積層に被覆されたウェハの撓みが最小化されるか、あるいは全く回避されるとの驚くべき発見に基づく。
【0006】
本発明による積層において、Ni−P層の厚さは0.2〜10μm、好ましくは0.5〜3.0μmの範囲である。
Pd層の厚さは0.05〜1.0μmの範囲、好ましくは0.1〜0.5μmの範囲である。
任意的なAu層の厚さは0.01〜0.5μm、好ましくは0.01〜0.3μmの範囲である。
Ni−P層のP含量は10.5〜14重量%の範囲である。この層は以下、「高リンNi−P層」ともいう。
【0007】
高リンNi−P層の堆積内部応力は、一般に圧縮応力である(0〜34.38MPa(0〜5,0000psi))。リン含量が4重量%〜約10.5重量%の間(中リン)のNi−P層の応力は引張応力であり、圧縮応力は10.5重量%を超える高リン含量において得られる(W.Riedal,“Electroless Nickel Plating”,Finishing Publicatios Ltd.,1991,P.111参照)。
Pd層の引張堆積内部応力は、好ましくは137.9MPa(20,000psi)以下、より好ましくは103.4MPa(15,000psi)以下、最も好ましくは68.96MPa(10,000psi)以下である。この関連で、従来技術のNi−P/Pd積層(米国特許第4,424,241号参照)は、そのPd層中のフィルム応力が206.9〜344.8MPa(30,000〜5,000psi)までも高いこと特筆される。
個々の層の堆積内部応力値は、銅基板(試験片)上に一層のみを、それらを積層して上記積層を製造するのと同じ条件下で堆積して、市販の測定装置手段により個々の層の応力を測定することによって決定することができる。
【0008】
次に、接合可能なウェハ表面のための、応力が低減されたNi−P/Pd積層を有する本発明による基板の調製について、より詳細に説明する:
それは、ウェハレベルの小型化、電気信号の完全性および金属積層の信頼性のための近年の要求の観点から開発された、いわゆる「アンダーバンプメタライゼーション」(UBM)を要件とする。
UBMプロセスは、一般に4つの別個の部分に分けることができる。
第1の部分は前処理を要件とし、Al/Al−合金およびCuパッドの表面前処理を包含する。AlおよびAl−合金の前処理のためには、例えばシアン化物イオンを含有しない薬品の工業標準を満たすXenolyte(商品名)クリーナーACA(商品名)、XenolyteエッチMA(商品名)、Xenolyte CFA(商品名)またはXenolyte CF(商品名)(すべてAtotech Deutschaland GmbHから入手可能)などの異なる亜鉛化(zincation)を利用することができる。
【0009】
UBMプロセスの第2部分は無電解ニッケルめっきを要件とする。
無電解ニッケルめっきのこの工程において、ニッケル塩、および次亜リン酸または次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムおよび次亜リン酸アンモニウムから選択される浴に可溶なその塩を含有する水性無電解ニッケルめっき溶液を使用することができる。この溶液は、さらなる次亜リン酸ニッケルを含有せず、不溶のオルトリン酸塩を形成することのできるアルカリまたはアルカリ土類金属イオンを含有してはならない。
無電解ニッケル溶液中のニッケルイオンの運転濃度は、典型的にはリットル当たりのグラム数(g/L)で約1〜約18、好ましくは約3〜約9g/Lが利用される。別の言い方とすると、ニッケルカチオンの濃度は、リットル当たり0.02〜約0.3モルの範囲、好ましくはリットル当たり約0.05〜約0.15モルの範囲であろう。
【0010】
ニッケルめっき溶液は、次亜リン酸または次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムおよび次亜リン酸アンモニウムの如き浴に可溶なその塩に由来する次亜リン酸塩イオンも還元剤として含有する。
めっき浴に用いられる還元剤の量は、無電解ニッケル反応においてニッケルカチオンをフリーのニッケル金属に還元するための化学量論的に十分な量以上であり、このような濃度は、通常リットル当たり約0.05〜約1.0モルの範囲内である。別の言い方とすると、次亜リン酸塩還元イオンは、約2〜約60g/Lまたは約12〜50g/Lまたはさらに約20〜約45g/Lの次亜リン酸塩イオン濃度を与えるように導入される。従来からの実施と同様に、還元剤は反応中に補充される。
ニッケルおよび次亜リン酸塩そのナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム塩の如き次亜リン酸還元剤を含有する本発明のめっき溶液は、基板上にニッケル−リン合金被覆の連続堆積を与える。約3〜約6の間のpHでめっき処理を行うことにより高水準のリン(「高リン」)、重量基準で一般に約10.5重量%〜約14重量%が得られ、好ましくは約4〜約5.6のpHにおいて高リン含量の合金堆積を与える。
ニッケルめっき溶液は、緩衝剤、キレートまたは錯化剤、湿潤剤、促進剤、禁止剤、光沢剤などの如き他の物質も含有することができる。これらの物質は当業界で公知である。
【0011】
従ってある実施態様において、めっき溶液中に錯化剤または錯化剤の混合物を含むことができる。当業界において錯化剤はキレート剤とも呼ばれる。錯化剤は、溶液中に存在するニッケルイオンを錯化し、さらにめっきプロセス中に生成した次亜リン酸塩の分解生成物を可溶化するのに十分な量でめっき溶液に含まれるべきである。錯化剤は、一般に約200g/L以下、より典型的には約15〜約75g/Lの量で使用される。別の実施態様において、錯化剤は約20〜約60g/Lの量で存在する。
ある実施態様において、ニッケル錯化またはキレート剤として、カルボン酸、ポリアミン、スルホン酸またはこれらの混合物が使用される。有用なカルボン酸は、例えばモノ−、ジ−、トリ−およびテトラ−カルボン酸である。カルボン酸は、ヒドロキシまたはアミノ基の如き種々の置換部分で置換することができ、酸はそれらのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩としてめっき溶液中に導入することができる。例えば酢酸の如きいくつかの錯化剤は、緩衝剤として働くことができ、このような添加剤成分の適当な濃度は、任意のめっき溶液について、それらの二重機能性を考慮して最適化することができる。
【0012】
本発明の溶液中のニッケル錯化またはキレート剤として有用なカルボン酸の例は:酢酸、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、アミノ酢酸(グリシン)、2−アミノプロピオン酸、(アラニン)の如きモノカルボン酸;2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸);コハク酸、アミノコハク酸(アスパラギン酸)、ヒドロキシコハク酸(リンゴ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、酒石酸の如きジカルボン酸;2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸(クエン酸)の如きトリカルボン酸;およびエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)の如きテトラカルボン酸を包含する。ある実施態様では、ニッケルめっき溶液中に上記錯化/キレート剤の2種以上の混合物が使用される。
【0013】
本発明の水性無電解ニッケルめっき浴は、上述のpH範囲で運転することができる。このめっき溶液は、その運転中に水素イオンの生成のためにより酸性となる傾向があるので、水酸化、炭酸および重炭酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムの如き浴に可溶であって浴に適合するアルカリ物質を添加することによってpHを定期的または連続的に調整することができる。めっき溶液の運転pHの安定性は、酢酸、プロピオン酸、ホウ酸などの如き種々の緩衝剤化合物を約30g/L以下の量、典型的には約2〜約10g/Lの量で添加することによって向上することができる。上記したように、酢酸およびプロピオン酸の如き緩衝剤化合物のいくつかは錯化剤としても機能する。
無電解ニッケルめっき溶液は、酢酸塩などの浴に可溶で適合する塩のかたちで便利に導入することのできる鉛イオン、カドミウムイオン、スズイオン、ビスマスイオン、アンチモンイオンおよび亜鉛イオンなどの、当業界でこれまでに知られているタイプの有機および/または無機安定化剤も含有してよい。無電解めっき溶液に有用な有機安定化剤は、例えばチオ尿素、メルカプタン、スルホン酸塩、チオシアン酸塩などの如き硫黄含有化合物を包含する。安定化剤は、溶液の0.05〜約5ppm、より頻繁には約0.1〜2または3ppmの量の如き少量で使用される。
【0014】
ニッケルめっき溶液は、これまでに知られている、可溶で他の浴成分と適合する種々のタイプのいずれかの湿潤剤の1種以上を任意的に使用することができる。ある実施態様において、このような湿潤剤の使用によりニッケル合金堆積の孔食が回避または阻害される。湿潤剤は、約1g/L以下の量で使用することができる。
めっきされる基板は、約40℃以上、溶液の沸点以下の温度においてめっき溶液と接触する。ある実施態様では、酸性タイプの無電解ニッケルめっき浴が約70℃〜約95℃の温度、より頻繁には約80℃〜約90℃の温度において使用される。アルカリ性側の無電解ニッケルめっき浴は、一般に広い運転範囲内であるが、一般に酸性無電解めっき溶液よりも低い温度において運転される。
無電解ニッケル溶液のめっきされる基板との接触の継続時間は、ニッケル−リン合金の所望の厚さに依存する関数である。接触時間は、典型的には1〜30分に及ぶことができる。
【0015】
ニッケル合金を堆積している間、一般に穏やかな撹拌が行われる。この撹拌は、穏やかな空気撹拌、機械的撹拌、ポンプによる浴の循環、バレルめっきの回転などであることができる。めっき溶液は、定期的または継続的なろ過処理に供し、その中の不純物の水準を減少することができる。いくつかの実施態様では、定期的または継続的な浴成分の補充を行って、pHの水準を所望の限界内に維持するとともに、成分濃度、特にニッケルイオンおよび次亜リン酸塩イオンの濃度を維持することもできる。
【0016】
UBMプロセスの第3工程は、無電解パラジウムめっき浴からのめっきを包含する。
無電解パラジウム浴は、EP0698130B1に記載されており、本発明のために追加的な安定化剤によって修飾された。興味深いことに、この浴は、高リンのNi−P層上に事前活性化なしにPd層をめっきするために用いることができる。しかしながら、特により低い温度におけるPdめっきのためには、無電解Pdめっき工程の前に、高リンのNi−P層の活性化工程を任意的に行うことができる。
【0017】
無電解Pdめっきの好ましい浴のパラメータは以下のとおりである:
pH:好ましくは5〜6.5、より好ましくは5.6〜6.0
浴温度:好ましくは70〜90℃、より好ましくは82〜87℃
浸漬時間:好ましくは3〜20分、より好ましくは5〜10分
追加的な安定化剤:好ましくは10〜500mg/L、より好ましくは100〜300mg/L
無電解Pdめっき工程の前に活性化工程を行う場合、Pdめっき浴温度は約40℃までも低くすることができる(約95℃以下)。このような活性化は、例えばPdClまたはPdSOの如き、通常は酸性であってPd2+イオン源を含有する、いわゆる無機Pd活性化剤によって達成することができ、Ni−P層上に元素状Pdのシード層を堆積する。このような活性化剤は当業者によく知られており、Xenolyte Activator ACU1(商品名)(Atotech Deutschland GmbH製)の商品名で溶液として商業的に入手可能である。PdクラスターがSnに囲まれている、いわゆるコロイダル酸性活性化剤も同様によく知られており、使用することができる。
【0018】
EP0698130に記載されているような最新技術の無電解パラジウム浴中の追加的な安定化剤を、高リンのNi−P層上にいかなる活性化も行うことなくパラジウムを堆積するために使用することができる。さらに、このような安定化剤は、堆積されるパラジウム層の低減された内部応力をもたらす70℃〜90℃の間の温度におけるパラジウムの無電解堆積を可能とする。公知の無電解パラジウム浴はこのような浴温度では寿命が短く、工業的用途においては許容されるものではない。追加的な安定化剤は、スルフィミド、ポリフェニルスルフィド、ピリミジン、ポリアルコール、およびチオシアン酸塩の如き無機錯化剤よりなる群から選択される。好ましいスルフィミドはサッカリンであり、好ましいピリミジンはニコチンアミド、ピリミジン−3−スホン酸、ニコチン酸、2−ヒドロキシピリジンおよびニコチンである。好ましいポリアルコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーおよびこれらの誘導体である。
【0019】
最後に、Ni−P/Pd積層上に任意的に金層をめっきしてもよい。この目的のために、従来技術から公知の無電解金めっき電解質を使用することができる。パラジウム層の表面上の任意的な金層の厚さは、0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.3μmである。任意的な金層は、浸漬プロセスによって堆積されることが最も好ましい。このような浸漬プロセスは、例えばH.KaiserによるEdelmetallschichten:Abscheidung,Eigenschaften,Anwendungen;E.Leuze Verlag,2002,43ページに記載されている。無電解金めっきのための好適な浴は、Aurotech SFplus(商品名)(T=80〜90℃;pH=4.5〜6.0;浸漬時間=7〜15分;0.5〜2g/L Au(K[Au(CN)]として))の商品名で商業的に入手可能である。
【0020】
従って、本発明において出発基板としてAl被覆ウェハを使用する場合、上記プロセスは、(前処理工程として)洗浄、エッチング、亜鉛化工程を含み、次いでニッケルめっき、任意的に高リンNi−Pd層の活性化、パラジウムめっきおよび任意的に金めっきを含む。
出発基板としてCu被覆ウェハを使用する場合、前処理は洗浄、任意的にエッチングおよびPd活性化工程を含み、次いでまたもやニッケルめっき、任意的に高リンNi−Pd層の活性化、パラジウムめっきおよび任意的に金めっき工程による。
【実施例】
【0021】
本発明につき、以下の実施例および比較例によりさらに説明する。
Ni−P/Pd積層のほか、PdまたはNi−P層個々の内部応力の値は、「堆積応力分析機」(モデル683;Speciality Testing & Development Co.製)により測定した。同社によって特別にデザインされた試験片をNi−P、PdおよびNi−P/Pd層で被覆し、装置の供給者によって記載された手順に従って試験した。
【0022】
実験例1(比較実験)
中リンNi−P層(Xenolyte(商品名)NiM(商品名)、Atotech Deutschland GmbH)上に、1g/LのPd2+イオン、27.6g/Lのギ酸および3g/Lのエチレンジアミンを含有する組成の、業界最新の浴(EP0698130に記載)から、pH5.5および温度55℃において純Pd層をめっきした。
Ni−Pめっき(1.3μm)をしたCu基板のPd浴中の浸漬時間は5分間であった。得られた積層応力は、引張方向に103.4MPa(15,000psi)であった(応力の計算には、Ni−PおよびPd層の厚さの合計を考慮した;Pd層の厚さは0.27μmであった)。
【0023】
実験例2(比較実験)
Cu基板上に被覆した中リンNi−P層(Xenolyte(商品名)NiM(商品名)、Atotech Deutschland GmbH)上に、応力低減Pd浴(stress reduced Pd bath、米国特許第4、424、241号に開示)から純Pd層をめっきした。Cu基板は、Xenolyte(商品名)NiM(商品名)浴中に5分間浸漬し、脱イオン水で5分間リンスした後、パラジウム浴に浸漬した。
このPd浴は:
Pd2+イオン 1g/L
エチレンジアミン 3g/L
ギ酸ナトリウム 40.8g/L
サッカリンナトリウム塩水和物 0.2g/L(無水物ベース)
を含有する。
この浴のpHは5.8であり、浴温度は85℃であった。
得られたNi−P/Pd積層の厚さは、Ni−P層につき0.9μm、Pd層につき0.21μmであった。観測されたオーバーオールの積層応力は53.79MPa(7,800psi)の引張応力であった。
【0024】
実験例3
高リンNi−P浴からのNi−P層および実験例2で使用した応力低減Pd浴からめっきした純Pd層を有する、Cu上のNi−P/Pd積層のフィルム応力を測定した。
【0025】
高リンNi−P浴は:
Ni2+イオン 6g/L
次亜リン酸ナトリウム・HO 30g/L
リンゴ酸 10g/L
コハク酸 18g/L
乳酸 30g/L
Pbイオン 0.2mg/L
を含有する。
この浴のpHは4.8であり、浴温度は85℃であった。
得られたNi−P層の厚さは0.92μmであり、Pd層の厚さは0.19μmであった。得られた積層の応力値は21.38MPa(3,100psi)の引張応力であった。
【0026】
実験例4
(実験例3で使用した高リンNi−P浴からの)高リンNi−P層上に、Xenolyte Activator ACU1(Atotech Deutschland GmbH製)によるNi−P層の追加活性化の後に、実験例1のPd浴からのPd層を堆積した。
得られた積層は、Ni−P層の平均厚さが0.84μm、Pd層の厚さが0.25μm、オーバーオールの応力値が27.58MPa(4,000psi)の引張応力であった。Pdめっき前のNi−P層の応力は、圧縮方向に34.48MPa(5,000psi)であった。
【0027】
実験例5
Cu上の、高リンNi−P浴(浴組成については実験例3参照)からの高リンNi層は、小さな圧縮応力を与える。この圧縮応力は、厚さ1μm(27.58MPa(4,0000psi)の圧縮応力)から少なくとも3μm(25.52MPa(3,700psi)の圧縮応力)までは少しずつ減少する。実験例2に記載した組成の浴から0.3μmのPd層をめっきした後のオーバーオールの積層応力は、1μmのNi−Pのとき20.69MPa(3,000psi)の引張応力、3μmのNi−Pのとき21.38MPa(3,100psi)の引張応力であった。
【0028】
実験例6(比較実験)
実験例1に記載した組成でpHが5.5であり温度が55℃である業界最新の浴からのPd層を、Xenolyte Activator ACU1(Atotech Deutschland GmbH製)で活性化したCu上に直接堆積し、平均(mean)応力値241.4MPa(35,000psi)の引張応力を得た。
【0029】
実験例7
実験例2で使用した応力低減浴からのPd層を、Xenolyte Activator ACU1(Atotech Deutschland GmbH製)で活性化したCu基板上に直接堆積し、pH5.8、浴温度85℃において平均応力値89.65MPa(13,000psi)の引張応力を得た。このPd浴はこの温度でさらに48時間以上安定であるが、実験例1の業界最新の浴は85℃において3時間後に析出(plate out)した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlまたはCu表面上に、接合可能な金属被覆を以下に記載の順で有する基板:
(a)Ni−P層、
(b)Pd層、および任意的に、
(c)Au層、
ここで、Ni−P層(a)の厚さは0.2〜10μmであり、Pd層(b)の厚さは0.05〜1.0μmであり、そして任意的なAu層(c)の厚さは0.01〜0.5μmであり、
Ni−P層(a)のP含量は10.5〜14重量%であり、そして
Ni−P層(a)およびPd層(b)からなる積層の堆積内部応力は34.48MPa(5,000psi)以下である。
【請求項2】
Ni−P層(a)の厚さが0.5〜3.0μmであり、Pd層(b)の厚さが0.1〜0.5μmであり、そして任意的なAu層(c)の厚さが0.01〜0.3μmである、請求項1の基板。
【請求項3】
Pd層(b)の堆積内部応力が137.9MPa(20,000psi)以下の引張応力である、請求項1の基板。
【請求項4】
以下の工程を有する、請求項1の基板を調製するための方法:
(i)AlまたはCu表面を有する基板を、ニッケル塩、ならびに次亜リン酸または次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムおよび次亜リン酸アンモニウムから選択される浴に可溶な塩を含有するNi−Pめっき浴、ただしこの溶液はさらなる次亜リン酸ニッケルを含有せず、不溶のオルト亜リン酸塩を形成可能なアルカリまたはアルカリ土類金属イオンを含有しない、の中に、約70℃〜約95℃の温度および約3〜約6のpHにおいて1〜30分の時間で浸漬して基板上にNi−P層を得て、そして
(ii)工程(i)で得られたNi−Pで被覆された基板を、少なくとも1種のパラジウムイオン源、少なくとも1種の還元剤、少なくとも1種の錯化剤および10〜500mg/Lの量で少なくとも1種のスルフィミド安定化剤添加物を含有するPdめっき浴中に、5〜6.5のpHにおいて3〜20分の時間で浸漬して基板上にPd層を得る、
ここで、Pd層は、工程(i)で得られたNi−P層上に、該Pd層の堆積に先立って該Ni−P層のいかなる活性化もせずに、工程(ii)を約70〜約90℃の温度で行って堆積されるか、あるいは
工程(i)で得られたNi−P層上に、該Ni−P層の活性化を行った後に、工程(ii)を約40〜約95℃の温度で行って堆積される。
【請求項5】
基板がAlウェハであり、その表面が洗浄されエッチングされているか、またはその後ニッケルめっき(i)に先立って亜鉛沈着がなされている、請求項4の方法。
【請求項6】
基板がCuウェハであり、その表面が洗浄されて任意的にエッチングされ、その後Ni−Pめっき(i)に先立ってPd活性化がなされている、請求項4の方法。
【請求項7】
さらに、(iii)Ni−P層およびPd層で被覆された基板をAuめっき浴中に浸漬する工程を有する、請求項4〜6のいずれか一項の方法。

【公表番号】特表2012−505964(P2012−505964A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531435(P2011−531435)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062756
【国際公開番号】WO2010/043502
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】