接合方法
【課題】一対の金属部材同士の突合部を容易に接合するとともに、接合部分の気密性及び水密性を高めることが可能な接合方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る接合方法は、一対の金属部材である平板14と、角部材R4とを突き合わせて形成された構造体(被接合金属部材N)において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部J8の接合方法であって、突合部J8に対して構造体の内面B側から溶接を行う溶接工程を行った後、突合部J8に対して構造体の外面A側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る接合方法は、一対の金属部材である平板14と、角部材R4とを突き合わせて形成された構造体(被接合金属部材N)において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部J8の接合方法であって、突合部J8に対して構造体の内面B側から溶接を行う溶接工程を行った後、突合部J8に対して構造体の外面A側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダの下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
【0003】
ここで、図24は、従来の接合方法を示した断面図である。例えば、図24の(a)に示すように、一対の金属部材101,101の端面同士を突き合わせて形成された突合部Jに対して摩擦攪拌を行う場合、突合部Jの裏側に裏当材102を配置し、回転ツールGを用いて突合部Jに沿って摩擦攪拌を行う(特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−225179号公報
【特許文献2】特開2005−131666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の接合方法によると、図24の(b)に示すように、接合部において金属部材101,101が収縮するため、接合された金属部材101同士が水平にならずに歪んでしまい、製品の質が低下するという問題があった。また、例えば、金属部材101,101間に形成された溝部103に図示しない継手部材を挿入する場合には、溝部103の底部が水平にならないため、継手部材を精度よく配置することができないという問題があった。また、金属部材101,101の収縮に起因して、塑性化領域Wの裏側に切欠き(Kissing Bond)Eが形成される慮りがあった。これにより、接合された金属部材101,101の水密性及び気密性の低下を招来していた。
【0006】
また同様に、図24の(c)に示すように、金属部材105の側面と、金属部材105の端面を突き合わせて垂直に接合する場合、突合部Jに対して金属部材105,105の外側から摩擦攪拌を行うと、金属部材105,105の収縮により、一方の金属部材105が反ってしまうという問題があった。また、金属部材105,105の接合部の内側(内隅部)には、切欠きEが形成されるという問題があった。
【0007】
ここで、例えば、金属部材101,101の裏側又は金属部材105,105の内側から摩擦攪拌を行えば、前記した問題は解消される。しかし、例えば、筒状の構造体の内側から摩擦攪拌をする場合や、図24の(c)のように内隅部を摩擦攪拌する場合など、接合する金属部材同士の突き合わせの形態によっては、摩擦攪拌装置の取り合い等により回転ツールを適切に可動させることが困難となり接合作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
このような観点から、本発明は、一対の金属部材同士の突合部を容易に接合するとともに、接合部分の気密性及び水密性を高めることが可能な接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、一対の金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、前記突合部に対して一方の面側から溶接を行う溶接工程を行った後、前記突合部に対して他方の面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる接合方法によれば、他方の面側から行う摩擦攪拌工程に先だって、一方の面側から溶接を行うことで、一方の面側を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、摩擦攪拌を行う面の裏面(一方の面)側に発生しがちな切欠きの発生を防止することができるため、接合部分の金属部材の水密性及び気密性を高めることができる。また、一方の面側から溶接を行うことで、装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0011】
また本発明は、複数の金属部材を突き合わせて形成された筒状の構造体において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、前記突合部に対して前記構造体の内面側から溶接を行う溶接工程を行った後、前記突合部に対して前記構造体の外面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【0012】
かかる接合方法によれば、構造体の外面側から行う摩擦攪拌工程に先だって、構造体の内面側から溶接を行うことで、内面側を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、摩擦攪拌を行う面の裏面(構造体の内面)側に発生しがちな切欠きの発生を防止することができるため、接合部分の金属部材の水密性及び気密性を高めることができる。また、構造体の内面側から溶接を行うことで、構造体の内部を接合する際の装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0013】
また、前記溶接工程において形成された溶接金属と、前記摩擦攪拌工程において形成された塑性化領域とを接触させることが好ましい。かかる接合方法によれば、突合部の深さ方向の全長に亘って密閉されるため、接合部の水密性及び気密性をより高めることができる。
【0014】
また、前記溶接工程では、前記一方の面又は前記構造体の内面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、溶接の作業性を高めることができる。
【0015】
また、前記摩擦攪拌工程において、大型の回転ツールによって本接合を行う本接合工程を行う前に、小型の回転ツールによって仮接合を行う仮接合工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、本接合を行う際の突合部の目開きを防止することができる。
【0016】
また、前記摩擦攪拌工程において、前記突合部の両側に一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、前記タブ材と前記金属部材との突合部に沿って摩擦攪拌を行うタブ材仮接合工程とを含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、タブ材を用いることで、回転ツールの挿入位置、離脱位置の設定が容易になる。また、タブ材仮接合工程によれば、タブ材と金属部材との目開きを防止することができる。
【0017】
また、前記摩擦攪拌工程において、摩擦攪拌を行う回転ツールの挿入予定位置に予め下穴を形成する下穴形成工程を含むことが好ましい。かかる接合工程によれば、回転ツールを押し込む際の圧入抵抗を低減することができる。これにより、摩擦攪拌の精度を高めるとともに、迅速に接合作業を行うことができる
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る接合方法は、一対の金属部材同士の突合部を容易に接合するとともに、接合部の気密性及び水密性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第一実施形態]
本発明に係る接合方法について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法については、図1に示すように、4つの壁部材H1,H2,H3,H4によって囲まれて形成された筒状を呈する構造体1を製造する場合を例にして説明する。なお、説明においては、構造体1の中空部側を内側、反対側を外側とする。また、構造体1の内側を構成する面を内面、外側を構成する面を外面とする。
【0020】
本実施形態に係る構造体1は、図1及び図2に示すように、内部に断面視略矩形の中空部を備える筒状体である。構造体1は、構造体1の四隅を構成し平面視略L字状を呈する角部材R1,R2,R3,R4と、角部材R1,R2,R3,R4の間にそれぞれ介設される平板11,12,13,14とからなり、各部材の側端面同士が接合されている。角部材R1〜R4及び平板11〜14は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。
【0021】
壁部材H1は、離間して配置された角部材R1,R4と、角部材R1,R4の間に配置された平板11とで構成されている。壁部材H2は、角部材R1,R2の間に配置された平板12で構成されている。壁部材H3は、離間して配置された角部材R2,R3と、角部材R2,R3の間に配置された平板13とで構成されている。壁部材H4は、角部材R3,R4の間に配置された平板14と、継手部材U,Uとで構成されている。
【0022】
角部材R4の一方の側端面と平板11の他方の側端面との突合部J1及び角部材R1の他方の側端面と平板11の一方の側端面との突合部J2は、壁部材H1の外側(外面)及び内側(内面)から摩擦攪拌されており、摩擦攪拌により形成された各塑性化領域の先端側が重複して形成されている。なお、塑性化領域とは、後記する回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、接合用回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0023】
また同様に、角部材R1の一方の側端面と平板12の他方の側端面との突合部J3及び角部材R2の他方の側端面と平板12の一方の側端面との突合部J4、角部材R2の一方の側端面と平板13の他方の側端面との突合部J5及び角部材R3の他方の側端面と平板13の一方の側端面との突合部J6は、各壁部材の外面側及び内面側から摩擦攪拌されており、摩擦攪拌により形成された各塑性化領域の先端側が重複して形成されている。
【0024】
一方、角部材R3の一方の側端面と平板14の他方の側端面との突合部J7及び角部材R4の他方の側端面と平板14の一方の側端面との突合部J8は、壁部材H4の内面側から溶接された後、外面側から摩擦攪拌が行なわれていることを特徴とする。
以下、本実施形態の接合方法について詳細に説明する。なお、壁部材H1,H2,H3からなる断面視U字状の中間部材については、従来の摩擦攪拌接合と略同等であるから、簡単に説明する。
【0025】
本実施形態に係る接合方法は、(1)中間部材接合工程、(2)突合工程、(3)溶接工程、(4)溝部形成工程、(5)摩擦攪拌工程、(6)継手部材挿入工程、(7)外側仮接合工程、(8)外側本接合工程を主に含むものである。
【0026】
(1)中間部材接合工程
中間部材接合工程は、構造体1の中間体である中間部材20(図3の(b)参照)を形成する工程である。中間部材20は、構造体1から平板14のみ取り除いた部材であって、断面視略U字状を呈する。中間部材20は、対向配置された壁部材H1及び壁部材H3と、壁部材H1と壁部材H3の間に介設される平板12(壁部材H2)とを有する。中間部材接合工程では、壁部材H1、壁部材H3をそれぞれ形成した後、平板12と壁部材H1及び壁部材H3とを接合する。
【0027】
角部材R4の一方の側端面と平板11の他方の側端面との突合部J1は、突合部J1の長手方向の全長に亘って、壁部材H1の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。また、突合部J1に形成された塑性化領域W1,W1の先端側(平板11の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J1の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R1の他方の側端面と平板11の一方の側端面との突合部J2は、突合部J2の長手方向の全長に亘って、内面側及び外面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W2,W2の先端側が重複している。
【0028】
角部材R2の一方の側端面と平板13の他方の側端面との突合部J5は、突合部J5の長手方向の全長に亘って、壁部材H3の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。また、突合部J5に形成された塑性化領域W5,W5の先端側(平板13の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J5の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R3の他方の側端面と平板13の一方の側端面との突合部J6は、突合部J6の長手方向の全長に亘って、外面側及び内面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W6,W6の先端側が重複している。
【0029】
平板12は、図3の(a)及び(b)に示すように、壁部材H1の角部材R1と、壁部材H3の角部材R2との間に介設される。平板12の他方の側端面と角部材R1の一方の側端面との突合部J3は、突合部J3の長手方向の全長に亘って、壁部材H2の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。突合部J3に形成された塑性化領域W3,W3の先端側(平板12の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J3の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R2の他方の側端面と平板12の一方の側端面との突合部J4は、突合部J4の長手方向の全長に亘って、壁部材H2の内面側及び外面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W4,W4の先端側が重複している。
【0030】
図3の(b)に示すように、中間部材20の一部には、平板14が挿入される開口部21が形成されている。なお、本実施形態においては、中間部材20の各突合部において、外面側及び内面側の両面側から摩擦攪拌を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、中間部材20の外面側及び内面側のいずれか一方側から溶接を行い、他方側から摩擦攪拌を行ってもよい。
【0031】
(2)突合工程
突合工程では、図4に示すように、中間部材20の上下を逆さまにした後、中間部材20の開口部21(図3の(b)参照)に平板14を挿入する。平板14の幅は、開口部21の幅と略同等に形成されている。即ち、開口部21に平板14を挿入すると、開口部21に現れる一対の側端面R3b,R4aと平板14の側端面14a,14bとがそれぞれ突き合わされる。図4に示すように、平板14の他方の側端面14aと角部材R3の一方の側端面R3bとの突合面には突合部J7が形成されている。一方、平板14の一方の側端面14bと角部材R4の他方の側端面R4aとの突合面には突合部J8が形成されている。
【0032】
なお、以下に記載する(3)溶接工程、(4)溝部形成工程、(5)摩擦攪拌工程、(6)継手部材挿入工程、(7)外側仮接合工程、(8)外側本接合工程は、突合部J7及び突合部J8に対して行う工程であるが、作業内容は両突合部ともに略同等であるため、突合部J8を例にして説明する。
また、図5に示すように、平板14と角部材R4とが突き合わされて形成された金属部材を、被接合金属部材Nともいう。また、被接合金属部材Nの外側の面を外面A、内側の面を内面B、一方の端面を第一端面C、他方の端面を第二端面D(図10参照)ともいう。
【0033】
(3)溶接工程
溶接工程は、被接合金属部材Nの内面B側から突合部J8に沿って溶接を行う工程である。溶接工程では、図5に示すように、TIG溶接又はMIG溶接などの肉盛溶接を行って、突合部J8に沿って溶接金属T1を形成する。肉盛溶接は、被接合金属部材Nの内面Bから溶接金属T1が突出する程度に行う。溶接工程を行うことで、後記する本接合工程(摩擦攪拌工程)を行う際に、突合部J8の内面B側に切欠き(Kissing Bond)が形成されることを防止することができる。なお、溶接金属T1のうち、内面Bから突出する部分は、切削することが好ましい。これにより、内面Bを平滑に形成することができる。
【0034】
(4)溝部形成工程
溝部形成工程では、図7に示すように、突合部J8の外面A側に、突合部J8の長手方向に沿って溝部Kを形成する。ここで、溝部形成工程、後記する摩擦攪拌工程、継手部材挿入工程、外側仮接合工程及び外側本接合工程では、中間部材20の内側に裏当台25を配置するのが好ましい。裏当台25は、図6に示すように、中間部材20の内側から平板14を支持する部材である。裏当台25は、離間して配置された第一裏当材25a及び第二裏当材25bと、第一裏当材25aと第二裏当材25bとの間に立設された縦部材25c,25cとからなる。第一裏当材25a及び第二裏当材25bの長さは、平板14よりも長く形成されている(図10参照)。第一裏当材25aの外側の面から第二裏当材25bの外側の面までの距離は、平板12の内側の面から平板14の内側の面(図2参照)までの距離と略同等に形成されている。裏当台25は、本実施形態においては、突合部J7,J8ごとに一つずつ設ける。
【0035】
溝部形成工程では、図7の(a)及び(b)に示すように、公知のエンドミル等を用いて突合部J8に沿って所定の幅、深さで切り欠いて溝部K形成する。溝部Kは、本実施形態では、板厚の半分程度の深さで形成されている。溝部Kは、本実施形態では、断面視矩形で形成するが他の形状であってもよい。
【0036】
(5)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、図7の(b)に示すように、溝部Kの底面に現れる突合部J8に沿って大型回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程は、本実施形態では、一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、突合部J8に対して仮接合を行う仮接合工程と、本接合工程の挿入予定位置に下穴を形成する下穴形成工程と、突合部J8に対して本接合を行う本接合工程とを含む。
【0037】
ここで、図8を参照して、各摩擦攪拌に用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「大型回転ツールG」という。)を詳細に説明する。
【0038】
図8の(a)に示す小型回転ツールFは、工具鋼など被接合金属部材Nよりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、被接合金属部材Nの材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、大型回転ツールG(図8の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、大型回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を大型回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
【0039】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも小さくなっている。
【0040】
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が大型回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも小さく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも小さくなっている。また、攪拌ピンF2の長さLAは、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLBよりも小さくなっている。
【0041】
図8の(b)に示す大型回転ツールGは、工具鋼など被接合金属部材Nよりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。
ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。
【0042】
タブ材配置工程では、図9及び図10に示すように、被接合金属部材Nの両端面に一対のタブ材を配置する。第一タブ材31及び第二タブ材32は、突合部J8を挟むように配置されるものであり、それぞれ第一端面C及び第二端面Dに現れる突合部J8を覆うことができる寸法・形状を備えている。第一タブ材31及び第二タブ材32は、本実施形態においては、裏当台25の第一裏当材25aに配置されている。第一タブ材31及び第二タブ材32の表面は、溝部Kの底面と略同等に形成されている。第一タブ材31及び第二タブ材32の材質に特に制限はないが、本実施形態では被接合金属部材Nと同一組成の金属材料で形成している。なお、第一タブ材31及び第二タブ材32と被接合金属部材Nとの突き合わせ面に、公知の離型剤を塗布しておくことが好ましい。これにより、後にタブ材を切除するときに容易に切除することができる。
【0043】
また、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32とは溶接により接合されている。これにより、後記する摩擦攪拌を行った際に、被接合金属部材Nと各タブ材とが目開きすることを防止することができる。
【0044】
仮接合工程では、溝部Kの底面に現れる突合部J8に沿って小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。即ち、図10に示すように、第一タブ材31の適所に設けた開始位置SP1の直上に小型回転ツールFを位置させ、続いて、小型回転ツールFを右回転させつつ下降させて攪拌ピンF2(図8の(a)参照)を開始位置SP1に押し付ける。攪拌ピンF2の全体が第一タブ材31に入り込み、かつ、ショルダ部F1の下端面F11の全面が第一タブ材31の表面に接触したら、小型回転ツールFを回転させつつ仮接合工程の始点s1に向けて相対移動させる。小型回転ツールFが始点s1に達したら、始点s1で小型回転ツールFを離脱させずに仮接合工程の終点e1まで移動させる。小型回転ツールFが終点e1まで達したら小型回転ツールFを離脱させずに終了位置EP1まで移動させ、終了位置EP1で小型回転ツールFを離脱させる。
【0045】
なお、小型回転ツールFの攪拌ピンF2が被接合金属部材Nと第一タブ材31との突合部J31及び被接合金属部材Nと第二タブ材32との突合部J32を横切る際に、被接合金属部材Nと各タブ材を引き離そうとする力が作用するが、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32により形成された内隅部を溶接により接合しているので、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32との間の目開きを防止することができる。仮接合工程の終了位置EP1は、後記する本接合工程の開始位置SM1となる。
【0046】
なお、仮接工程を行う際に、被接合金属部材Nと第一タブ材31との突合部J31及び被接合金属部材Nと第二タブ材32との突合部J32に沿って、小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行ってもよい(タブ材仮接合工程)。これにより、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32とをより強固に接合することができるため、後記する本接合工程を行う際の目開きをより防ぐことができる。また、タブ材仮接合工程と仮接合工程を一筆書きの要領で連続して行うことで作業性を高めることができる。
【0047】
下穴形成工程では、図8の(b)に示すように、後記する本接合工程における摩擦攪拌の開始位置に下穴P1を形成する工程である。即ち、本実施形態に係る下穴形成工程においては、第二タブ材32の表面に設定された開始位置SM1に下穴P1を形成する。
【0048】
下穴P1は、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものであり、本実施形態では、小型回転ツールFの攪拌ピンF2を離脱させたときに形成される抜き穴n1を図示せぬドリルなどで拡径することで形成される。抜き穴n1を利用すれば、下穴P1の形成工程を簡略化することが可能となるので、作業時間を短縮することが可能となる。下穴P1の形態に特に制限はないが、本実施形態では、円筒状としている。なお、本実施形態では、第二タブ材32に下穴P1を形成しているが、下穴P1の位置に特に制限はなく、第一タブ材31に形成してもよく、好適には、本実施形態の如く溝部Kの底面に現れる継ぎ目(境界線)の延長線上に形成することが望ましい。
【0049】
本接合工程では、大型回転ツールGを用いて突合部J8を本格的に接合する。本実施形態に係る本接合工程では、大型回転ツールGを使用し、仮接合された状態の突合部J8に対して被接合金属部材Nの外面A側から摩擦攪拌を行う。
【0050】
本接合工程では、図11に示すように、開始位置SM1に大型回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンG2を途中で離脱させることなく終了位置EM1まで移動させる。即ち、本接合工程では、下穴P1から摩擦攪拌を開始し、終了位置EM1まで連続して摩擦攪拌を行う。
なお、本実施形態では、第二タブ材32に摩擦攪拌の開始位置SM1を設け、第一タブ材31に終了位置EM1を設けているが、開始位置SM1と終了位置EM1の位置を限定する趣旨ではない。
【0051】
図11を参照して本接合工程をより詳細に説明する。
まず、開始位置SM1(下穴P1)の直上に大型回転ツールGを位置させ、続いて、大型回転ツールGを右回転させつつ下降させて攪拌ピンG2の先端を下穴P1に挿入する。攪拌ピンG2の全体が第二タブ材32に入り込み、かつ、ショルダ部G1の下端面G11の全面が第二タブ材32の表面に接触したら、摩擦攪拌を行いながら突合部J8の一端に向けて大型回転ツールGを相対移動させ、突合部J8に突入させる。大型回転ツールGを移動させると、その攪拌ピンG2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンG2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域(以下、「溝部塑性化領域W8」という。)が形成される。
【0052】
被接合金属部材Nへの入熱量が過大になる虞がある場合には、大型回転ツールGの周囲に溝部Kの底面(外面A側)から水を供給するなどして冷却することが望ましい。なお、角部材R4及び平板14の間に冷却水が入り込むと、接合面に酸化皮膜を発生させる虞があるが、本実施形態においては、仮接合工程を実行して角部材R4と平板14の間の目地を閉塞しているので、角部材R4と平板14の間の目地に冷却水が入り込み難く、接合部の品質を劣化させる虞がない。
【0053】
被接合金属部材Nの突合部J8では、被接合金属部材Nの継ぎ目上における移動軌跡上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って大型回転ツールGを相対移動させることで、突合部J8の一端から他端まで連続して摩擦攪拌を行う。突合部J8の他端まで大型回転ツールGを相対移動させたら、摩擦攪拌を行いながらそのまま終了位置EM1に向けて相対移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM1に達したら、大型回転ツールGを回転させつつ上昇させて攪拌ピンG2を終了位置EM1から離脱させる。
【0054】
図12に示すように、本接合工程では、内面Bに形成された溶接金属T1と外面Aに形成された溝部塑性化領域W8とが接触するように、摩擦攪拌の深さを設定することが好ましい。これにより、突合部J8の深さ方向の全長に亘って密閉することができるため、水密性及び気密性を高めることができる。なお、本接合工程が終了したら、溝部Kの底面に発生したバリ等を切削して底面を平滑にすることが好ましい。また、本接合工程が終了したら、一対のタブ材を切削除去する。
【0055】
(6)継手部材挿入工程
継手部材挿入工程は、図13に示すように、溝部Kに継手部材Uを挿入する工程である。継手部材Uの幅、深さ及び長さは、溝部Kの幅、深さ及び長さとそれぞれ略同等の寸法で形成されている。したがって、溝部Kに継手部材Uを挿入すると、継手部材Uの表面(上面)と被接合金属部材Nの外面Aとが面一になるとともに、継手部材Uの両端面は、被接合金属部材Nの第一端面C及び第二端面Dと面一に形成される。継手部材Uは、被接合金属部材Nと同等の組成からなる金属で形成されている。
【0056】
ここで、図12に示すように、溶接工程においては、溶接金属T1が冷却されることにより熱収縮が発生し、平板14が内面B側に反ってしまう可能性があるが、本接合工程において、溝部塑性化領域W8が熱収縮することにより、平板14が外面A側に反る可能性がある。即ち、溶接工程及び本接合工程により、被接合金属部材Nの歪みが是正されるため、溝部Kの底面が略水平に形成される。これにより、継手部材Uを好適に挿入することができる。また、溝部Kの底面に発生したバリ等を切削して当該底面を平滑に形成することで、継手部材Uを安定して配置することができる。
【0057】
(7)外側仮接合工程
外側仮接合工程では、図14及び図15に示すように、平板14と継手部材Uとの突合部J8a及び角部材R4と継手部材Uとの突合部J8bに沿って小型回転ツールFを用いて仮接合を行う。本実施形態における外側仮接合工程は、一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、突合部J8a及び突合部J8bに対して小型回転ツールFを用いて仮接合を行う外側仮接合工程と、大型回転ツールGの挿入予定位置に下穴を形成する下穴形成工程を含むものである。
【0058】
タブ材配置工程は、図14及び図15に示すように、被接合金属部材Nの第一端面C及び第二端面Dに第一タブ材33及び第二タブ材34を配置する。第一タブ材33及び第二タブ材34は、突合部J8、突合部J8a及び突合部J8bを挟むように配置されるものであり、それぞれ第一端面C及び第二端面Dに現れる各突合部を覆うことができる寸法・形状を備えている。第一タブ材33及び第二タブ材34は、本実施形態においては、裏当台25の第一裏当材25aに配置されている。第一タブ材33及び第二タブ材34の表面は、被接合金属部材Nの外面Aと面一に形成されている。第一タブ材33及び第二タブ材34の材質に特に制限はないが、本実施形態では被接合金属部材Nと同一組成の金属材料で形成している。
【0059】
外側仮接合工程では、被接合金属部材Nの外面Aに現れる突合部J8a及び突合部J8bに沿って小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。外側仮接合工程は、本実施形態においては、図15に示すように、第一タブ材33に設定された開始位置SP2から、第一タブ材33に設定された終了位置EP2まで一筆書きの要領で小型回転ツールFを相対移動させて摩擦攪拌を行う。
【0060】
即ち、外側仮接合工程は、第一タブ材33と被接合金属部材Nとの突合部J33を接合する第一タブ材仮接合工程と、平板14と継手部材Uとの突合部J8aを接合する第一外側仮接合工程と、第二タブ材34と被接合金属部材Nとの突合部J34を接合する第二タブ材仮接合工程と、角部材R4と継手部材Uとの突合部J8bを接合する第二外側仮接合工程を含むものである。
【0061】
第一タブ材仮接合工程では、第一タブ材33に設定した開始位置SP2に小型回転ツールFを押圧した後、小型回転ツールFを第一タブ材仮接合工程の始点s33に相対移動させる。小型回転ツールFが始点s33に達したら、突合部J33に沿って、第一タブ材仮接合工程の終点e33まで移動させる。小型回転ツールFが終点e33に達したら、小型回転ツールFを離脱させずに、一旦第一タブ材33に入り込ませ、第一外側仮接合工程の始点s14まで移動させる。
【0062】
なお、小型回転ツールFを右回転させた場合には、小型回転ツールFの進行方向の左側に微細な空洞欠陥が発生する虞があるので、小型回転ツールFの進行方向の右側に被接合金属部材Nが位置するように第一タブ材仮接合工程の始点s33と終点e33の位置を設定することが望ましい。このようにすると、被接合金属部材N側に空洞欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
【0063】
ちなみに、小型回転ツールFを左回転させた場合には、小型回転ツールFの進行方向の右側に微細な空洞欠陥が発生する虞があるので、小型回転ツールFの進行方向の左側に被接合金属部材Nが位置するように第一タブ材仮接合工程の始点と終点の位置を設定することが望ましい。具体的には、図示は省略するが、小型回転ツールFを右回転させた場合の終点e33の位置に始点を設け、小型回転ツールFを右回転させた場合の始点s33の位置に終点を設ければよい。
【0064】
小型回転ツールFが第一外側仮接合工程の始点s14に達したら、そのまま第一外側仮接合工程に移行して、突合部J8aに沿って小型回転ツールFを移動させる。小型回転ツールFが第一外側仮接合工程の終点e14に達したら、一旦第二タブ材34に入りこませて、第二タブ材仮接合工程の始点s34まで移動させる。小型回転ツールFが始点s34に達したら、突合部J34に沿って第二タブ材仮接合工程の終点e34まで小型回転ツールFを移動させる。
【0065】
小型回転ツールFが終点e34に達したら、小型回転ツールFを離脱させずに、一旦第二タブ材34側に突入させ、第二外側仮接合工程の始点sR4まで移動させる。小型回転ツールFがsR4に達したら、突合部J8bに沿って小型回転ツールFを移動させて、そのまま第二外側仮接合工程に移行する。小型回転ツールFが第二外側仮接合工程の終点eR4に達したら、そのまま第一タブ材33に突入させ、終了位置EP2で小型回転ツールFを離脱させる。なお、終了位置EP2は、後記する外側本接合工程の開始位置SM2でもある。
【0066】
外側仮接合工程が終了したら、終了位置EP2に形成された抜き穴(図示省略)を利用して下穴を形成する。下穴形成工程は、前記した工程と略同等であるから説明を省略する。
【0067】
(8)外側本接合工程
外側本接合工程は、被接合金属部材Nの外面Aに現れる突合部J8a及びJ8bを本格的に接合する工程である。本実施形態に係る外側本接合工程は、大型回転ツールGを使用し、仮接合された状態の突合部J8a及び突合部J8bに対して被接合金属部材Nの外面A側から摩擦攪拌を行う。
【0068】
外側本接合工程では、図16の(a)に示すように、開始位置SM2に大型回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入し、挿入した攪拌ピンG2を途中で離脱させることなく終了位置EM2まで移動させる。なお、本実施形態では、第一タブ材33に摩擦攪拌の開始位置SM2及び終了位置EM2を設けているが、開始位置SM2と終了位置EM2の位置を限定する趣旨ではない。
【0069】
図16(a)及び(b)を参照して外側本接合工程をより詳細に説明する。
まず、図16(a)に示すように、開始位置SM2(下穴P1)の直上に大型回転ツールGを位置させ、続いて、大型回転ツールGを右回転させつつ下降させて攪拌ピンG2の先端を下穴に挿入する。攪拌ピンG2の全体が第一タブ材33に入り込み、かつ、ショルダ部G1の下端面G11の全面が第一タブ材33の表面に接触したら、摩擦攪拌を行いながら突合部J8bの一端に向けて大型回転ツールGを相対移動させ、突合部J8bに突入させる。大型回転ツールGを移動させると、その攪拌ピンG2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンG2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域(以下、「外側塑性化領域W8’」という。)が形成される。
【0070】
そして、形成された外側塑性化領域W8’が突合部J34及び突合部J33に接触しないように大型回転ツールGを往復(本実施形態では二往復)させて突合部J8b及び突合部J8aに沿って連続的に摩擦攪拌を行う。最後に、突合部J33を通過させて第一タブ材33に設定された終了位置EM2で大型回転ツールGを離脱させる。
【0071】
図16の(b)に示すように、外側塑性化領域W8’の先端側は、溝部Kの底面に接触するように摩擦攪拌することが好ましい。かかる構成により、突合部J8a及び突合部J8bの深さ方向の全長に亘って摩擦攪拌を行うことができる。また、大型回転ツールGを継手部材Uの幅方向にずらしながら往復させることで、継手部材Uの下面と溝部Kの底面との界面を全面に亘って摩擦攪拌することができるため、水密性及び気密性をより高めることができる。
なお、外側塑性化領域W8’が突合部J34及び突合部J33に接触しないように大型回転ツールGを往復させることで、突合部J34及び突合部J33に形成される酸化皮膜の巻き込みを防止することができる。
【0072】
以上説明した本実施形態の接合方法によれば、被接合金属部材N(平板14)の外面A側から行う摩擦攪拌工程(本接合工程)に先だって、内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、被接合金属部材Nの内面B側、即ち、摩擦攪拌を行う面の裏面側に切欠き(Kissing Bond)が発生するのを防止することができるため、接合部分の水密性及び気密性を高めることができる。
また、構造体1の内面B側から溶接を行うことで、摩擦攪拌を行う場合に比べて装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では、一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0073】
また、図16の(b)に示すように、溶接金属T1と溝部塑性化領域W8とを接触させることで、突合部J8の深さ方向を密閉することができる。さらに、外側本接合工程において、継手部材Uと平板14との突合部J8a及び継手部材Uと角部材R4との突合部J8bを摩擦攪拌するとともに、継手部材Uと溝部Kの底面との界面(突合部)を摩擦攪拌することにより、より気密性及び水密性を高めることができる。
【0074】
なお、第一実施形態では、継手部材Uを用いて段階的に摩擦攪拌を行ったが、これに限定されるものではなく、金属部材の板厚が小さい場合は、継手部材Uを用いずに、溶接工程と、摩擦攪拌工程を行えばよい。
【0075】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第一実施形態に係る溶接工程においては、突合部J8に直接溶接を行ったが、第二実施形態に係る溶接工程のように、予め凹部M1を形成してもよい。なお、第二実施形態に係る接合方法は、溶接工程を除いては第一実施形態と同一であるため、他の工程の説明を省略する。
【0076】
第二実施形態に係る溶接工程は、図17の(a)及び(b)に示すように、平板14及び角部材R4からなる被接合金属部材Nの内面Bに現われる突合部J8に沿って、凹部M1を形成する凹部形成工程と、凹部M1に対して溶接金属T2を充填する溶接金属充填工程とを含む。
【0077】
凹部形成工程では、図17の(a)に示すように、公知のエンドミルを用いて内面Bから突合部J8の長手方向に沿って、所定の幅、深さで凹部M1を形成する。本実施形態では、凹部M1を断面視矩形で形成したが、他の形状であってもよい。凹部M1の深さは、後に行う摩擦攪拌工程における塑性化領域の深さに応じて適宜設定すればよい。
【0078】
溶接金属充填工程では、図17の(b)に示すように、凹部M1に対して、溶接金属T2を充填する。溶接金属充填工程では、凹部M1に対してMIG溶接又はTIG溶接等の肉盛溶接を行って、内面Bから溶接金属T2を突出させる。内面Bから突出した溶接金属T2の部分については、内面Bに沿って切削することで、内面Bを平滑に形成することができる。
【0079】
このように、溶接工程において、凹部形成工程及び溶接金属充填工程を行うことで、溶接工程の作業性を高めることができる。なお、本実施形態では、角部材R4と平板14とを突き合わせた後に凹部M1をしたが、これに限定されるものではなく、予め角部材R4及び平板14の角部を切り欠いて切欠きを形成した後に、これらの切欠きを突き合わせて凹部M1を形成してもよい。
【0080】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、図18に示すように、一対の平板状の金属部材である第一金属部材1aの端部と、第二金属部材1bの端部とを垂直に突き合わせて接合する点で、第一実施形態と相違する。第三実施形態に係る接合方法では、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0081】
(1)突合工程
突合工程では、図18の(a)に示すように、第一金属部材1aの端部と、第二金属部材1bの端部とを直角に突き合わせる。第一金属部材1a及び第二金属部材1bは、平板状を呈し、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。第一金属部材1aの端部には、第一金属部材1aの板幅の略半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部41と、第一金属部材1aの板幅の略半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部42とを有する。同様に、第二金属部材1bの端部には、第二金属部材1bの板幅の略半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部43と、第二金属部材1bの板幅の略半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部44とを有する。
【0082】
突合工程では、第一金属部材1aの凹溝部41に第二金属部材1bの突出部44を当接させて、第一金属部材1aと第二金属部材1bとを略垂直に突き合わせる。これにより、第一金属部材1aと第二金属部材1bとの突合せ面には突合部J10が形成される。第一金属部材1aと第二金属部材1bとを突き合わせて形成された被接合金属部材N1の第一端面Cには、正面視略クランク状に形成された突合部J10が現われる。
【0083】
(2)溶接工程
溶接工程では、図18の(b)に示すように、被接合金属部材N1の内隅部Iに現われる突合部J10に対して溶接を行う。ここで、内隅部Iとは、第一金属部材1aと第二金属部材1bとで形成された内側の角部分をいう。即ち、溶接工程では、被接合金属部材N1の内面B(被接合金属部材N1の内側)から、突合部J10の長手方向に沿ってTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。なお、溶接工程によって形成された溶接金属T3において、被接合金属部材N1の内面Bから突出した部分については、切削して平滑に形成するのが好ましい。
【0084】
(3)摩擦攪拌工程
本実施形態に係る摩擦攪拌工程は、被接合金属部材N1にタブ材46を取り付けるタブ材設置工程と、突合部J10に対して外面A側から摩擦攪拌を行う本接合工程とを含む。タブ材設置工程では、図19の(a)に示すように、被接合金属部材N1の第一端面C及び第二端面(図示省略)に一対のタブ材46を取り付ける。タブ材46は、被接合金属部材N1と同一組成からなる板状部材であって、第二金属部材1bの板厚と略同等に形成されている。タブ材46は、被接合金属部材N1の外面Aとタブ材46の上面とが面一になるように配置されて、溶接により接合されている。
【0085】
本接合工程では、大型回転ツールGを用いて、被接合金属部材N1の外面A側から突合部J10に沿って摩擦攪拌を行う。本実施形態では、タブ材46上において、突合部J10の延長線上に開始位置SM3を設定し、図示しない他方のタブ材に終了位置を設定する。そして、大型回転ツールGを用いて突合部J10に沿って摩擦攪拌を行う。図19の(b)に示すように、本接合工程によって突合部J10に塑性化領域W10が形成される。
【0086】
なお、回転ツールは、右回転させた場合、進行方向左側に、左回転させた場合、進行方向右側に空洞欠陥が形成される可能性がある。従って、例えば、図19の(a)に示すように、本実施形態においては、大型回転ツールGを左回転させてタブ材46の開始位置SM3から突合部J10に沿って移動させるのが好ましい。これにより、仮に空洞欠陥が形成されたとしても、被接合金属部材N1の内側から遠い位置に形成することができる。
【0087】
本実施形態に係る接合方法によれば、一対の金属部材を垂直に突き合わせて接合する場合であっても、水密性及び気密性を高めることができる。即ち、被接合金属部材N1の外面A側から行う摩擦攪拌工程に先だって、内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、被接合金属部材N1の内面B側、即ち、摩擦攪拌を行う面の裏面側に切欠き(Kissing Bond)が発生するのを防止することができるため、接合部分の水密性及び気密性を高めることができる。また、被接合金属部材N1の内面Bから溶接を行うことで、内隅部Iのような摩擦攪拌が困難な箇所でも比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では、一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。また、被接合金属部材N1の内面B側から溶接を行うことで、塑性化領域W10の熱収縮により第二金属部材1bが外面A側に反ってしまうのを防止することができる。
【0088】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る接合方法は、第三実施形態の変形例であって、内隅部Iに凹部を備える点で第三実施形態と相違する。第四実施形態に係る接合方法は、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0089】
(1)突合工程
突合工程では、図20の(a)に示すように、第一金属部材51aの端部と、第二金属部材51bの端部とを直角に突き合わせる。第一金属部材51a及び第二金属部材51bは、板状を呈し、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。第一金属部材51aは、本体部52と、本体部52によりも板薄に形成された第一段部53と、第一段部53よりも板薄に形成された第二段部54とを有する。第二段部54の長さpは、第二金属部材51bの板厚と略同等に形成されている。第一段部53の長さqは、第二段部54の長さよりも小さく形成されている。
【0090】
突合工程では、図20の(b)に示すように、第一金属部材51aの第二段部54に、第二金属部材51bの端面55を当接させる。すると、第一金属部材51aの本体部52、第一段部53及び第二金属部材51bによって断面視矩形の凹部M2が形成される。即ち、第一金属部材51aと第二金属部材51bとからなる被接合金属部材N2の内隅部Iに形成された突合部J11に沿って凹部M2が形成される。
【0091】
(2)溶接工程
溶接工程では、図20の(c)に示すように、被接合金属部材N2の突合部J11に沿って形成された凹部M2に対してTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。なお、溶接工程によって、形成された溶接金属T4において、被接合金属部材N2の内面Bから突出した部分については、切削して平滑に形成するのが好ましい。
【0092】
(3)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、突合部J11の外面A側から大型回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程については、第三実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。なお、第二金属部材51bの板厚が薄い場合は、摩擦攪拌工程で形成される塑性化領域W11と溶接金属T4を接触させることで、より水密性及び気密性を高めることができる。
【0093】
本実施形態に係る接合方法によれば、第三実施形態と同等の効果を得られると共に、第一金属部材51aと第二金属部材51bとを垂直に突き合わせる場合であっても、凹部M2を設けることで、溶接作業を容易に行うことができる。
また、具体的な説明は省略するが、図21に示すように、第四実施形態に係る接合方法を用いて、第一金属部材51a、第二金属部材51b、第一金属部材51aと同等の部材である第三金属部材51c及び第二金属部材51bと同等の部材である第四金属部材51dからなる断面視矩形の筒状の構造体Zを形成することができる。このような構造体Zを例えば、真空容器として使用することができる。
【0094】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態に係る接合方法は、図22及び図23に示すように、円筒状を呈する筒状部材61aと、筒状部材61aの端部を覆う蓋部材61bとを接合する点で第一実施形態と相違する。本実施形態に係る接合方法は、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0095】
(1)突合工程
突合工程では、図22に示すように、筒状部材61aの端面と蓋部材61bとを突き合わせる。筒状部材61aは、円筒を呈する金属部材である。筒状部材61aの端部は、板厚の半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部62と、板厚の半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部63とを有する。
蓋部材61bは、筒状部材61aの開口部を隙間なく覆う部材であって、円板状の本体部64と、本体部64の一端側に突出し断面視円形を呈する突部65とを有する。突部65は、本体部64と同心で形成されており、本体部64の直径よりも小さく形成されている。
【0096】
図23に示すように、筒状部材61aと蓋部材61bとを突き合わせて、筒状部材61aの凹溝部62と、蓋部材61bの突部65とを当接させる。筒状部材61aと蓋部材61bとが突き合わされて突合部J12が形成される。筒状部材61aと蓋部材61bとからなる部材を被接合金属部材N3とする。
【0097】
(2)溶接工程
溶接工程では、図23の(a)に示すように、被接合金属部材N3の内隅部I’に形成された突合部J12に沿って、溶接を行う。本実施形態では、被接合金属部材N3の内面Bに平面視円形に溶接金属T5が形成されるように、TIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。
【0098】
(3)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、図23の(b)に示すように、大型回転ツールGを用いて被接合金属部材N3の外面A側から突合部J12に沿って摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程においては、突合部J12に沿って大型回転ツールGを右回転させながら、蓋部材61bの正面側からみて反時計回りに移動させて摩擦攪拌を行う。このように、大型回転ツールGを右回転させて進行方向左側に蓋部材61bが配置されるように設定することで、蓋部材61b側に空洞欠陥が形成される可能性が高い。これにより、空洞欠陥を被接合金属部材N3の中空部から離れた位置で形成することができる。
【0099】
第五実施形態に係る接合方法によれば、筒状部材61aと、筒状部材61aの一端側を覆う蓋部材61bとを接合する場合であっても、水密性及び気密性を高めることができる。即ち、被接合金属部材N3の外面Aから行う摩擦攪拌工程に先だって、被接合金属部材N3の内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。また、被接合金属部材N3の内面Bから溶接を行うことで、内隅部I’のような摩擦攪拌が困難な箇所でも比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程に先だって溶接工程を行って、金属部材同士を仮付けすることができるため、摩擦攪拌工程の作業を容易に行うことができる。
【0100】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、溶接工程では、TIG溶接又はMIG溶接に限定されるものではなく、他の公知の溶接方法を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第一実施形態に係る構造体を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る構造体を示した平面図である。
【図3】第一実施形態に係る中間部材を示した図であって、(a)は、分解斜視図、(b)は、平面図である。
【図4】第一実施形態に係る突合工程を示した平面図である。
【図5】第一実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図6】第一実施形態に係る摩擦攪拌工程の準備段階を示した斜視図である。
【図7】(a)は、図6の一部の拡大斜視図であり、(b)は、溝部形成工程を示した斜視図である。
【図8】(a)は、小型回転ツールを示した側面図であり、(b)は、大型回転ツールを示した側面図である。
【図9】第一実施形態に係るタブ材配置工程を示した斜視図である。
【図10】第一実施形態に係る仮接合工程を示した平面図である。
【図11】第一実施形態に係る本接合工程を示した平面図である。
【図12】図11のI−I線断面図である。
【図13】第一実施形態に係る継手部材挿入工程を示した斜視図である。
【図14】第一実施形態に係るタブ材配置工程を示した斜視図である。
【図15】第一実施形態に係る外側仮接合工程を示した平面図である。
【図16】第一実施形態に係る外側本接合工程を示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)のII-II線断面図である。
【図17】第二実施形態に係る溶接工程を示した図であって、(a)は、凹部形成工程、(b)は溶接金属充填工程を示す。
【図18】(a)は、第三実施形態に係る突合工程を示した斜視図、(b)は、第三実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図19】(a)は、第三実施形態に係るタブ材配置工程、(b)は、第三実施形態に係る摩擦攪拌工程を示した斜視図である。
【図20】(a)は、第四実施形態に係る被接合金属部材の分解図であり、(b)は、第四実施形態に係る突合工程を示した図であり、(c)は、第四実施形態に係る溶接工程及び摩擦攪拌工程を示した図である。
【図21】第四実施形態に係る構造体を示した斜視図である。
【図22】第五実施形態に係る被接合金属部材の分解斜視図である。
【図23】(a)は、第五実施形態に係る溶接工程を示した斜視図であり、(b)は、第五実施形態に係る摩擦攪拌工程を示した斜視図である。
【図24】従来の接合方法を示した断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 構造体
11〜14 平板
31 第一タブ材
32 第二タブ材
F 小型回転ツール
G 大型回転ツール
H1〜H4 壁部材
J 突合部
K 溝部
M1 凹部
P1 下穴
R1〜R4 角部材
T 溶接金属
W 塑性化領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダの下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
【0003】
ここで、図24は、従来の接合方法を示した断面図である。例えば、図24の(a)に示すように、一対の金属部材101,101の端面同士を突き合わせて形成された突合部Jに対して摩擦攪拌を行う場合、突合部Jの裏側に裏当材102を配置し、回転ツールGを用いて突合部Jに沿って摩擦攪拌を行う(特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−225179号公報
【特許文献2】特開2005−131666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の接合方法によると、図24の(b)に示すように、接合部において金属部材101,101が収縮するため、接合された金属部材101同士が水平にならずに歪んでしまい、製品の質が低下するという問題があった。また、例えば、金属部材101,101間に形成された溝部103に図示しない継手部材を挿入する場合には、溝部103の底部が水平にならないため、継手部材を精度よく配置することができないという問題があった。また、金属部材101,101の収縮に起因して、塑性化領域Wの裏側に切欠き(Kissing Bond)Eが形成される慮りがあった。これにより、接合された金属部材101,101の水密性及び気密性の低下を招来していた。
【0006】
また同様に、図24の(c)に示すように、金属部材105の側面と、金属部材105の端面を突き合わせて垂直に接合する場合、突合部Jに対して金属部材105,105の外側から摩擦攪拌を行うと、金属部材105,105の収縮により、一方の金属部材105が反ってしまうという問題があった。また、金属部材105,105の接合部の内側(内隅部)には、切欠きEが形成されるという問題があった。
【0007】
ここで、例えば、金属部材101,101の裏側又は金属部材105,105の内側から摩擦攪拌を行えば、前記した問題は解消される。しかし、例えば、筒状の構造体の内側から摩擦攪拌をする場合や、図24の(c)のように内隅部を摩擦攪拌する場合など、接合する金属部材同士の突き合わせの形態によっては、摩擦攪拌装置の取り合い等により回転ツールを適切に可動させることが困難となり接合作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
このような観点から、本発明は、一対の金属部材同士の突合部を容易に接合するとともに、接合部分の気密性及び水密性を高めることが可能な接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、一対の金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、前記突合部に対して一方の面側から溶接を行う溶接工程を行った後、前記突合部に対して他方の面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる接合方法によれば、他方の面側から行う摩擦攪拌工程に先だって、一方の面側から溶接を行うことで、一方の面側を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、摩擦攪拌を行う面の裏面(一方の面)側に発生しがちな切欠きの発生を防止することができるため、接合部分の金属部材の水密性及び気密性を高めることができる。また、一方の面側から溶接を行うことで、装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0011】
また本発明は、複数の金属部材を突き合わせて形成された筒状の構造体において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、前記突合部に対して前記構造体の内面側から溶接を行う溶接工程を行った後、前記突合部に対して前記構造体の外面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする。
【0012】
かかる接合方法によれば、構造体の外面側から行う摩擦攪拌工程に先だって、構造体の内面側から溶接を行うことで、内面側を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、摩擦攪拌を行う面の裏面(構造体の内面)側に発生しがちな切欠きの発生を防止することができるため、接合部分の金属部材の水密性及び気密性を高めることができる。また、構造体の内面側から溶接を行うことで、構造体の内部を接合する際の装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0013】
また、前記溶接工程において形成された溶接金属と、前記摩擦攪拌工程において形成された塑性化領域とを接触させることが好ましい。かかる接合方法によれば、突合部の深さ方向の全長に亘って密閉されるため、接合部の水密性及び気密性をより高めることができる。
【0014】
また、前記溶接工程では、前記一方の面又は前記構造体の内面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、溶接の作業性を高めることができる。
【0015】
また、前記摩擦攪拌工程において、大型の回転ツールによって本接合を行う本接合工程を行う前に、小型の回転ツールによって仮接合を行う仮接合工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、本接合を行う際の突合部の目開きを防止することができる。
【0016】
また、前記摩擦攪拌工程において、前記突合部の両側に一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、前記タブ材と前記金属部材との突合部に沿って摩擦攪拌を行うタブ材仮接合工程とを含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、タブ材を用いることで、回転ツールの挿入位置、離脱位置の設定が容易になる。また、タブ材仮接合工程によれば、タブ材と金属部材との目開きを防止することができる。
【0017】
また、前記摩擦攪拌工程において、摩擦攪拌を行う回転ツールの挿入予定位置に予め下穴を形成する下穴形成工程を含むことが好ましい。かかる接合工程によれば、回転ツールを押し込む際の圧入抵抗を低減することができる。これにより、摩擦攪拌の精度を高めるとともに、迅速に接合作業を行うことができる
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る接合方法は、一対の金属部材同士の突合部を容易に接合するとともに、接合部の気密性及び水密性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第一実施形態]
本発明に係る接合方法について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法については、図1に示すように、4つの壁部材H1,H2,H3,H4によって囲まれて形成された筒状を呈する構造体1を製造する場合を例にして説明する。なお、説明においては、構造体1の中空部側を内側、反対側を外側とする。また、構造体1の内側を構成する面を内面、外側を構成する面を外面とする。
【0020】
本実施形態に係る構造体1は、図1及び図2に示すように、内部に断面視略矩形の中空部を備える筒状体である。構造体1は、構造体1の四隅を構成し平面視略L字状を呈する角部材R1,R2,R3,R4と、角部材R1,R2,R3,R4の間にそれぞれ介設される平板11,12,13,14とからなり、各部材の側端面同士が接合されている。角部材R1〜R4及び平板11〜14は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。
【0021】
壁部材H1は、離間して配置された角部材R1,R4と、角部材R1,R4の間に配置された平板11とで構成されている。壁部材H2は、角部材R1,R2の間に配置された平板12で構成されている。壁部材H3は、離間して配置された角部材R2,R3と、角部材R2,R3の間に配置された平板13とで構成されている。壁部材H4は、角部材R3,R4の間に配置された平板14と、継手部材U,Uとで構成されている。
【0022】
角部材R4の一方の側端面と平板11の他方の側端面との突合部J1及び角部材R1の他方の側端面と平板11の一方の側端面との突合部J2は、壁部材H1の外側(外面)及び内側(内面)から摩擦攪拌されており、摩擦攪拌により形成された各塑性化領域の先端側が重複して形成されている。なお、塑性化領域とは、後記する回転ツールの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、接合用回転ツールが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0023】
また同様に、角部材R1の一方の側端面と平板12の他方の側端面との突合部J3及び角部材R2の他方の側端面と平板12の一方の側端面との突合部J4、角部材R2の一方の側端面と平板13の他方の側端面との突合部J5及び角部材R3の他方の側端面と平板13の一方の側端面との突合部J6は、各壁部材の外面側及び内面側から摩擦攪拌されており、摩擦攪拌により形成された各塑性化領域の先端側が重複して形成されている。
【0024】
一方、角部材R3の一方の側端面と平板14の他方の側端面との突合部J7及び角部材R4の他方の側端面と平板14の一方の側端面との突合部J8は、壁部材H4の内面側から溶接された後、外面側から摩擦攪拌が行なわれていることを特徴とする。
以下、本実施形態の接合方法について詳細に説明する。なお、壁部材H1,H2,H3からなる断面視U字状の中間部材については、従来の摩擦攪拌接合と略同等であるから、簡単に説明する。
【0025】
本実施形態に係る接合方法は、(1)中間部材接合工程、(2)突合工程、(3)溶接工程、(4)溝部形成工程、(5)摩擦攪拌工程、(6)継手部材挿入工程、(7)外側仮接合工程、(8)外側本接合工程を主に含むものである。
【0026】
(1)中間部材接合工程
中間部材接合工程は、構造体1の中間体である中間部材20(図3の(b)参照)を形成する工程である。中間部材20は、構造体1から平板14のみ取り除いた部材であって、断面視略U字状を呈する。中間部材20は、対向配置された壁部材H1及び壁部材H3と、壁部材H1と壁部材H3の間に介設される平板12(壁部材H2)とを有する。中間部材接合工程では、壁部材H1、壁部材H3をそれぞれ形成した後、平板12と壁部材H1及び壁部材H3とを接合する。
【0027】
角部材R4の一方の側端面と平板11の他方の側端面との突合部J1は、突合部J1の長手方向の全長に亘って、壁部材H1の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。また、突合部J1に形成された塑性化領域W1,W1の先端側(平板11の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J1の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R1の他方の側端面と平板11の一方の側端面との突合部J2は、突合部J2の長手方向の全長に亘って、内面側及び外面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W2,W2の先端側が重複している。
【0028】
角部材R2の一方の側端面と平板13の他方の側端面との突合部J5は、突合部J5の長手方向の全長に亘って、壁部材H3の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。また、突合部J5に形成された塑性化領域W5,W5の先端側(平板13の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J5の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R3の他方の側端面と平板13の一方の側端面との突合部J6は、突合部J6の長手方向の全長に亘って、外面側及び内面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W6,W6の先端側が重複している。
【0029】
平板12は、図3の(a)及び(b)に示すように、壁部材H1の角部材R1と、壁部材H3の角部材R2との間に介設される。平板12の他方の側端面と角部材R1の一方の側端面との突合部J3は、突合部J3の長手方向の全長に亘って、壁部材H2の内面側及び外面側から摩擦攪拌によって接合されている。突合部J3に形成された塑性化領域W3,W3の先端側(平板12の厚さ方向中央部)は、重複している。これにより、突合部J3の深さ方向の隙間を全て摩擦攪拌することができるため、気密性及び水密性を高めることができる。同様に、角部材R2の他方の側端面と平板12の一方の側端面との突合部J4は、突合部J4の長手方向の全長に亘って、壁部材H2の内面側及び外面側から摩擦攪拌が行われており、塑性化領域W4,W4の先端側が重複している。
【0030】
図3の(b)に示すように、中間部材20の一部には、平板14が挿入される開口部21が形成されている。なお、本実施形態においては、中間部材20の各突合部において、外面側及び内面側の両面側から摩擦攪拌を行ったが、これに限定されるものではない。例えば、中間部材20の外面側及び内面側のいずれか一方側から溶接を行い、他方側から摩擦攪拌を行ってもよい。
【0031】
(2)突合工程
突合工程では、図4に示すように、中間部材20の上下を逆さまにした後、中間部材20の開口部21(図3の(b)参照)に平板14を挿入する。平板14の幅は、開口部21の幅と略同等に形成されている。即ち、開口部21に平板14を挿入すると、開口部21に現れる一対の側端面R3b,R4aと平板14の側端面14a,14bとがそれぞれ突き合わされる。図4に示すように、平板14の他方の側端面14aと角部材R3の一方の側端面R3bとの突合面には突合部J7が形成されている。一方、平板14の一方の側端面14bと角部材R4の他方の側端面R4aとの突合面には突合部J8が形成されている。
【0032】
なお、以下に記載する(3)溶接工程、(4)溝部形成工程、(5)摩擦攪拌工程、(6)継手部材挿入工程、(7)外側仮接合工程、(8)外側本接合工程は、突合部J7及び突合部J8に対して行う工程であるが、作業内容は両突合部ともに略同等であるため、突合部J8を例にして説明する。
また、図5に示すように、平板14と角部材R4とが突き合わされて形成された金属部材を、被接合金属部材Nともいう。また、被接合金属部材Nの外側の面を外面A、内側の面を内面B、一方の端面を第一端面C、他方の端面を第二端面D(図10参照)ともいう。
【0033】
(3)溶接工程
溶接工程は、被接合金属部材Nの内面B側から突合部J8に沿って溶接を行う工程である。溶接工程では、図5に示すように、TIG溶接又はMIG溶接などの肉盛溶接を行って、突合部J8に沿って溶接金属T1を形成する。肉盛溶接は、被接合金属部材Nの内面Bから溶接金属T1が突出する程度に行う。溶接工程を行うことで、後記する本接合工程(摩擦攪拌工程)を行う際に、突合部J8の内面B側に切欠き(Kissing Bond)が形成されることを防止することができる。なお、溶接金属T1のうち、内面Bから突出する部分は、切削することが好ましい。これにより、内面Bを平滑に形成することができる。
【0034】
(4)溝部形成工程
溝部形成工程では、図7に示すように、突合部J8の外面A側に、突合部J8の長手方向に沿って溝部Kを形成する。ここで、溝部形成工程、後記する摩擦攪拌工程、継手部材挿入工程、外側仮接合工程及び外側本接合工程では、中間部材20の内側に裏当台25を配置するのが好ましい。裏当台25は、図6に示すように、中間部材20の内側から平板14を支持する部材である。裏当台25は、離間して配置された第一裏当材25a及び第二裏当材25bと、第一裏当材25aと第二裏当材25bとの間に立設された縦部材25c,25cとからなる。第一裏当材25a及び第二裏当材25bの長さは、平板14よりも長く形成されている(図10参照)。第一裏当材25aの外側の面から第二裏当材25bの外側の面までの距離は、平板12の内側の面から平板14の内側の面(図2参照)までの距離と略同等に形成されている。裏当台25は、本実施形態においては、突合部J7,J8ごとに一つずつ設ける。
【0035】
溝部形成工程では、図7の(a)及び(b)に示すように、公知のエンドミル等を用いて突合部J8に沿って所定の幅、深さで切り欠いて溝部K形成する。溝部Kは、本実施形態では、板厚の半分程度の深さで形成されている。溝部Kは、本実施形態では、断面視矩形で形成するが他の形状であってもよい。
【0036】
(5)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、図7の(b)に示すように、溝部Kの底面に現れる突合部J8に沿って大型回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程は、本実施形態では、一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、突合部J8に対して仮接合を行う仮接合工程と、本接合工程の挿入予定位置に下穴を形成する下穴形成工程と、突合部J8に対して本接合を行う本接合工程とを含む。
【0037】
ここで、図8を参照して、各摩擦攪拌に用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「大型回転ツールG」という。)を詳細に説明する。
【0038】
図8の(a)に示す小型回転ツールFは、工具鋼など被接合金属部材Nよりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、被接合金属部材Nの材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、大型回転ツールG(図8の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、大型回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を大型回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
【0039】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも小さくなっている。
【0040】
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が大型回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも小さく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも小さくなっている。また、攪拌ピンF2の長さLAは、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLBよりも小さくなっている。
【0041】
図8の(b)に示す大型回転ツールGは、工具鋼など被接合金属部材Nよりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。
ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。
【0042】
タブ材配置工程では、図9及び図10に示すように、被接合金属部材Nの両端面に一対のタブ材を配置する。第一タブ材31及び第二タブ材32は、突合部J8を挟むように配置されるものであり、それぞれ第一端面C及び第二端面Dに現れる突合部J8を覆うことができる寸法・形状を備えている。第一タブ材31及び第二タブ材32は、本実施形態においては、裏当台25の第一裏当材25aに配置されている。第一タブ材31及び第二タブ材32の表面は、溝部Kの底面と略同等に形成されている。第一タブ材31及び第二タブ材32の材質に特に制限はないが、本実施形態では被接合金属部材Nと同一組成の金属材料で形成している。なお、第一タブ材31及び第二タブ材32と被接合金属部材Nとの突き合わせ面に、公知の離型剤を塗布しておくことが好ましい。これにより、後にタブ材を切除するときに容易に切除することができる。
【0043】
また、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32とは溶接により接合されている。これにより、後記する摩擦攪拌を行った際に、被接合金属部材Nと各タブ材とが目開きすることを防止することができる。
【0044】
仮接合工程では、溝部Kの底面に現れる突合部J8に沿って小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。即ち、図10に示すように、第一タブ材31の適所に設けた開始位置SP1の直上に小型回転ツールFを位置させ、続いて、小型回転ツールFを右回転させつつ下降させて攪拌ピンF2(図8の(a)参照)を開始位置SP1に押し付ける。攪拌ピンF2の全体が第一タブ材31に入り込み、かつ、ショルダ部F1の下端面F11の全面が第一タブ材31の表面に接触したら、小型回転ツールFを回転させつつ仮接合工程の始点s1に向けて相対移動させる。小型回転ツールFが始点s1に達したら、始点s1で小型回転ツールFを離脱させずに仮接合工程の終点e1まで移動させる。小型回転ツールFが終点e1まで達したら小型回転ツールFを離脱させずに終了位置EP1まで移動させ、終了位置EP1で小型回転ツールFを離脱させる。
【0045】
なお、小型回転ツールFの攪拌ピンF2が被接合金属部材Nと第一タブ材31との突合部J31及び被接合金属部材Nと第二タブ材32との突合部J32を横切る際に、被接合金属部材Nと各タブ材を引き離そうとする力が作用するが、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32により形成された内隅部を溶接により接合しているので、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32との間の目開きを防止することができる。仮接合工程の終了位置EP1は、後記する本接合工程の開始位置SM1となる。
【0046】
なお、仮接工程を行う際に、被接合金属部材Nと第一タブ材31との突合部J31及び被接合金属部材Nと第二タブ材32との突合部J32に沿って、小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行ってもよい(タブ材仮接合工程)。これにより、被接合金属部材Nと第一タブ材31及び第二タブ材32とをより強固に接合することができるため、後記する本接合工程を行う際の目開きをより防ぐことができる。また、タブ材仮接合工程と仮接合工程を一筆書きの要領で連続して行うことで作業性を高めることができる。
【0047】
下穴形成工程では、図8の(b)に示すように、後記する本接合工程における摩擦攪拌の開始位置に下穴P1を形成する工程である。即ち、本実施形態に係る下穴形成工程においては、第二タブ材32の表面に設定された開始位置SM1に下穴P1を形成する。
【0048】
下穴P1は、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の挿入抵抗(圧入抵抗)を低減する目的で設けられるものであり、本実施形態では、小型回転ツールFの攪拌ピンF2を離脱させたときに形成される抜き穴n1を図示せぬドリルなどで拡径することで形成される。抜き穴n1を利用すれば、下穴P1の形成工程を簡略化することが可能となるので、作業時間を短縮することが可能となる。下穴P1の形態に特に制限はないが、本実施形態では、円筒状としている。なお、本実施形態では、第二タブ材32に下穴P1を形成しているが、下穴P1の位置に特に制限はなく、第一タブ材31に形成してもよく、好適には、本実施形態の如く溝部Kの底面に現れる継ぎ目(境界線)の延長線上に形成することが望ましい。
【0049】
本接合工程では、大型回転ツールGを用いて突合部J8を本格的に接合する。本実施形態に係る本接合工程では、大型回転ツールGを使用し、仮接合された状態の突合部J8に対して被接合金属部材Nの外面A側から摩擦攪拌を行う。
【0050】
本接合工程では、図11に示すように、開始位置SM1に大型回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入(圧入)し、挿入した攪拌ピンG2を途中で離脱させることなく終了位置EM1まで移動させる。即ち、本接合工程では、下穴P1から摩擦攪拌を開始し、終了位置EM1まで連続して摩擦攪拌を行う。
なお、本実施形態では、第二タブ材32に摩擦攪拌の開始位置SM1を設け、第一タブ材31に終了位置EM1を設けているが、開始位置SM1と終了位置EM1の位置を限定する趣旨ではない。
【0051】
図11を参照して本接合工程をより詳細に説明する。
まず、開始位置SM1(下穴P1)の直上に大型回転ツールGを位置させ、続いて、大型回転ツールGを右回転させつつ下降させて攪拌ピンG2の先端を下穴P1に挿入する。攪拌ピンG2の全体が第二タブ材32に入り込み、かつ、ショルダ部G1の下端面G11の全面が第二タブ材32の表面に接触したら、摩擦攪拌を行いながら突合部J8の一端に向けて大型回転ツールGを相対移動させ、突合部J8に突入させる。大型回転ツールGを移動させると、その攪拌ピンG2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンG2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域(以下、「溝部塑性化領域W8」という。)が形成される。
【0052】
被接合金属部材Nへの入熱量が過大になる虞がある場合には、大型回転ツールGの周囲に溝部Kの底面(外面A側)から水を供給するなどして冷却することが望ましい。なお、角部材R4及び平板14の間に冷却水が入り込むと、接合面に酸化皮膜を発生させる虞があるが、本実施形態においては、仮接合工程を実行して角部材R4と平板14の間の目地を閉塞しているので、角部材R4と平板14の間の目地に冷却水が入り込み難く、接合部の品質を劣化させる虞がない。
【0053】
被接合金属部材Nの突合部J8では、被接合金属部材Nの継ぎ目上における移動軌跡上に摩擦攪拌のルートを設定し、当該ルートに沿って大型回転ツールGを相対移動させることで、突合部J8の一端から他端まで連続して摩擦攪拌を行う。突合部J8の他端まで大型回転ツールGを相対移動させたら、摩擦攪拌を行いながらそのまま終了位置EM1に向けて相対移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM1に達したら、大型回転ツールGを回転させつつ上昇させて攪拌ピンG2を終了位置EM1から離脱させる。
【0054】
図12に示すように、本接合工程では、内面Bに形成された溶接金属T1と外面Aに形成された溝部塑性化領域W8とが接触するように、摩擦攪拌の深さを設定することが好ましい。これにより、突合部J8の深さ方向の全長に亘って密閉することができるため、水密性及び気密性を高めることができる。なお、本接合工程が終了したら、溝部Kの底面に発生したバリ等を切削して底面を平滑にすることが好ましい。また、本接合工程が終了したら、一対のタブ材を切削除去する。
【0055】
(6)継手部材挿入工程
継手部材挿入工程は、図13に示すように、溝部Kに継手部材Uを挿入する工程である。継手部材Uの幅、深さ及び長さは、溝部Kの幅、深さ及び長さとそれぞれ略同等の寸法で形成されている。したがって、溝部Kに継手部材Uを挿入すると、継手部材Uの表面(上面)と被接合金属部材Nの外面Aとが面一になるとともに、継手部材Uの両端面は、被接合金属部材Nの第一端面C及び第二端面Dと面一に形成される。継手部材Uは、被接合金属部材Nと同等の組成からなる金属で形成されている。
【0056】
ここで、図12に示すように、溶接工程においては、溶接金属T1が冷却されることにより熱収縮が発生し、平板14が内面B側に反ってしまう可能性があるが、本接合工程において、溝部塑性化領域W8が熱収縮することにより、平板14が外面A側に反る可能性がある。即ち、溶接工程及び本接合工程により、被接合金属部材Nの歪みが是正されるため、溝部Kの底面が略水平に形成される。これにより、継手部材Uを好適に挿入することができる。また、溝部Kの底面に発生したバリ等を切削して当該底面を平滑に形成することで、継手部材Uを安定して配置することができる。
【0057】
(7)外側仮接合工程
外側仮接合工程では、図14及び図15に示すように、平板14と継手部材Uとの突合部J8a及び角部材R4と継手部材Uとの突合部J8bに沿って小型回転ツールFを用いて仮接合を行う。本実施形態における外側仮接合工程は、一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、突合部J8a及び突合部J8bに対して小型回転ツールFを用いて仮接合を行う外側仮接合工程と、大型回転ツールGの挿入予定位置に下穴を形成する下穴形成工程を含むものである。
【0058】
タブ材配置工程は、図14及び図15に示すように、被接合金属部材Nの第一端面C及び第二端面Dに第一タブ材33及び第二タブ材34を配置する。第一タブ材33及び第二タブ材34は、突合部J8、突合部J8a及び突合部J8bを挟むように配置されるものであり、それぞれ第一端面C及び第二端面Dに現れる各突合部を覆うことができる寸法・形状を備えている。第一タブ材33及び第二タブ材34は、本実施形態においては、裏当台25の第一裏当材25aに配置されている。第一タブ材33及び第二タブ材34の表面は、被接合金属部材Nの外面Aと面一に形成されている。第一タブ材33及び第二タブ材34の材質に特に制限はないが、本実施形態では被接合金属部材Nと同一組成の金属材料で形成している。
【0059】
外側仮接合工程では、被接合金属部材Nの外面Aに現れる突合部J8a及び突合部J8bに沿って小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う。外側仮接合工程は、本実施形態においては、図15に示すように、第一タブ材33に設定された開始位置SP2から、第一タブ材33に設定された終了位置EP2まで一筆書きの要領で小型回転ツールFを相対移動させて摩擦攪拌を行う。
【0060】
即ち、外側仮接合工程は、第一タブ材33と被接合金属部材Nとの突合部J33を接合する第一タブ材仮接合工程と、平板14と継手部材Uとの突合部J8aを接合する第一外側仮接合工程と、第二タブ材34と被接合金属部材Nとの突合部J34を接合する第二タブ材仮接合工程と、角部材R4と継手部材Uとの突合部J8bを接合する第二外側仮接合工程を含むものである。
【0061】
第一タブ材仮接合工程では、第一タブ材33に設定した開始位置SP2に小型回転ツールFを押圧した後、小型回転ツールFを第一タブ材仮接合工程の始点s33に相対移動させる。小型回転ツールFが始点s33に達したら、突合部J33に沿って、第一タブ材仮接合工程の終点e33まで移動させる。小型回転ツールFが終点e33に達したら、小型回転ツールFを離脱させずに、一旦第一タブ材33に入り込ませ、第一外側仮接合工程の始点s14まで移動させる。
【0062】
なお、小型回転ツールFを右回転させた場合には、小型回転ツールFの進行方向の左側に微細な空洞欠陥が発生する虞があるので、小型回転ツールFの進行方向の右側に被接合金属部材Nが位置するように第一タブ材仮接合工程の始点s33と終点e33の位置を設定することが望ましい。このようにすると、被接合金属部材N側に空洞欠陥が発生し難くなるので、高品質の接合体を得ることが可能となる。
【0063】
ちなみに、小型回転ツールFを左回転させた場合には、小型回転ツールFの進行方向の右側に微細な空洞欠陥が発生する虞があるので、小型回転ツールFの進行方向の左側に被接合金属部材Nが位置するように第一タブ材仮接合工程の始点と終点の位置を設定することが望ましい。具体的には、図示は省略するが、小型回転ツールFを右回転させた場合の終点e33の位置に始点を設け、小型回転ツールFを右回転させた場合の始点s33の位置に終点を設ければよい。
【0064】
小型回転ツールFが第一外側仮接合工程の始点s14に達したら、そのまま第一外側仮接合工程に移行して、突合部J8aに沿って小型回転ツールFを移動させる。小型回転ツールFが第一外側仮接合工程の終点e14に達したら、一旦第二タブ材34に入りこませて、第二タブ材仮接合工程の始点s34まで移動させる。小型回転ツールFが始点s34に達したら、突合部J34に沿って第二タブ材仮接合工程の終点e34まで小型回転ツールFを移動させる。
【0065】
小型回転ツールFが終点e34に達したら、小型回転ツールFを離脱させずに、一旦第二タブ材34側に突入させ、第二外側仮接合工程の始点sR4まで移動させる。小型回転ツールFがsR4に達したら、突合部J8bに沿って小型回転ツールFを移動させて、そのまま第二外側仮接合工程に移行する。小型回転ツールFが第二外側仮接合工程の終点eR4に達したら、そのまま第一タブ材33に突入させ、終了位置EP2で小型回転ツールFを離脱させる。なお、終了位置EP2は、後記する外側本接合工程の開始位置SM2でもある。
【0066】
外側仮接合工程が終了したら、終了位置EP2に形成された抜き穴(図示省略)を利用して下穴を形成する。下穴形成工程は、前記した工程と略同等であるから説明を省略する。
【0067】
(8)外側本接合工程
外側本接合工程は、被接合金属部材Nの外面Aに現れる突合部J8a及びJ8bを本格的に接合する工程である。本実施形態に係る外側本接合工程は、大型回転ツールGを使用し、仮接合された状態の突合部J8a及び突合部J8bに対して被接合金属部材Nの外面A側から摩擦攪拌を行う。
【0068】
外側本接合工程では、図16の(a)に示すように、開始位置SM2に大型回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入し、挿入した攪拌ピンG2を途中で離脱させることなく終了位置EM2まで移動させる。なお、本実施形態では、第一タブ材33に摩擦攪拌の開始位置SM2及び終了位置EM2を設けているが、開始位置SM2と終了位置EM2の位置を限定する趣旨ではない。
【0069】
図16(a)及び(b)を参照して外側本接合工程をより詳細に説明する。
まず、図16(a)に示すように、開始位置SM2(下穴P1)の直上に大型回転ツールGを位置させ、続いて、大型回転ツールGを右回転させつつ下降させて攪拌ピンG2の先端を下穴に挿入する。攪拌ピンG2の全体が第一タブ材33に入り込み、かつ、ショルダ部G1の下端面G11の全面が第一タブ材33の表面に接触したら、摩擦攪拌を行いながら突合部J8bの一端に向けて大型回転ツールGを相対移動させ、突合部J8bに突入させる。大型回転ツールGを移動させると、その攪拌ピンG2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンG2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化して塑性化領域(以下、「外側塑性化領域W8’」という。)が形成される。
【0070】
そして、形成された外側塑性化領域W8’が突合部J34及び突合部J33に接触しないように大型回転ツールGを往復(本実施形態では二往復)させて突合部J8b及び突合部J8aに沿って連続的に摩擦攪拌を行う。最後に、突合部J33を通過させて第一タブ材33に設定された終了位置EM2で大型回転ツールGを離脱させる。
【0071】
図16の(b)に示すように、外側塑性化領域W8’の先端側は、溝部Kの底面に接触するように摩擦攪拌することが好ましい。かかる構成により、突合部J8a及び突合部J8bの深さ方向の全長に亘って摩擦攪拌を行うことができる。また、大型回転ツールGを継手部材Uの幅方向にずらしながら往復させることで、継手部材Uの下面と溝部Kの底面との界面を全面に亘って摩擦攪拌することができるため、水密性及び気密性をより高めることができる。
なお、外側塑性化領域W8’が突合部J34及び突合部J33に接触しないように大型回転ツールGを往復させることで、突合部J34及び突合部J33に形成される酸化皮膜の巻き込みを防止することができる。
【0072】
以上説明した本実施形態の接合方法によれば、被接合金属部材N(平板14)の外面A側から行う摩擦攪拌工程(本接合工程)に先だって、内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、被接合金属部材Nの内面B側、即ち、摩擦攪拌を行う面の裏面側に切欠き(Kissing Bond)が発生するのを防止することができるため、接合部分の水密性及び気密性を高めることができる。
また、構造体1の内面B側から溶接を行うことで、摩擦攪拌を行う場合に比べて装置の取り合い等の問題が解消されるため、比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では、一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。
【0073】
また、図16の(b)に示すように、溶接金属T1と溝部塑性化領域W8とを接触させることで、突合部J8の深さ方向を密閉することができる。さらに、外側本接合工程において、継手部材Uと平板14との突合部J8a及び継手部材Uと角部材R4との突合部J8bを摩擦攪拌するとともに、継手部材Uと溝部Kの底面との界面(突合部)を摩擦攪拌することにより、より気密性及び水密性を高めることができる。
【0074】
なお、第一実施形態では、継手部材Uを用いて段階的に摩擦攪拌を行ったが、これに限定されるものではなく、金属部材の板厚が小さい場合は、継手部材Uを用いずに、溶接工程と、摩擦攪拌工程を行えばよい。
【0075】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第一実施形態に係る溶接工程においては、突合部J8に直接溶接を行ったが、第二実施形態に係る溶接工程のように、予め凹部M1を形成してもよい。なお、第二実施形態に係る接合方法は、溶接工程を除いては第一実施形態と同一であるため、他の工程の説明を省略する。
【0076】
第二実施形態に係る溶接工程は、図17の(a)及び(b)に示すように、平板14及び角部材R4からなる被接合金属部材Nの内面Bに現われる突合部J8に沿って、凹部M1を形成する凹部形成工程と、凹部M1に対して溶接金属T2を充填する溶接金属充填工程とを含む。
【0077】
凹部形成工程では、図17の(a)に示すように、公知のエンドミルを用いて内面Bから突合部J8の長手方向に沿って、所定の幅、深さで凹部M1を形成する。本実施形態では、凹部M1を断面視矩形で形成したが、他の形状であってもよい。凹部M1の深さは、後に行う摩擦攪拌工程における塑性化領域の深さに応じて適宜設定すればよい。
【0078】
溶接金属充填工程では、図17の(b)に示すように、凹部M1に対して、溶接金属T2を充填する。溶接金属充填工程では、凹部M1に対してMIG溶接又はTIG溶接等の肉盛溶接を行って、内面Bから溶接金属T2を突出させる。内面Bから突出した溶接金属T2の部分については、内面Bに沿って切削することで、内面Bを平滑に形成することができる。
【0079】
このように、溶接工程において、凹部形成工程及び溶接金属充填工程を行うことで、溶接工程の作業性を高めることができる。なお、本実施形態では、角部材R4と平板14とを突き合わせた後に凹部M1をしたが、これに限定されるものではなく、予め角部材R4及び平板14の角部を切り欠いて切欠きを形成した後に、これらの切欠きを突き合わせて凹部M1を形成してもよい。
【0080】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、図18に示すように、一対の平板状の金属部材である第一金属部材1aの端部と、第二金属部材1bの端部とを垂直に突き合わせて接合する点で、第一実施形態と相違する。第三実施形態に係る接合方法では、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0081】
(1)突合工程
突合工程では、図18の(a)に示すように、第一金属部材1aの端部と、第二金属部材1bの端部とを直角に突き合わせる。第一金属部材1a及び第二金属部材1bは、平板状を呈し、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。第一金属部材1aの端部には、第一金属部材1aの板幅の略半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部41と、第一金属部材1aの板幅の略半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部42とを有する。同様に、第二金属部材1bの端部には、第二金属部材1bの板幅の略半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部43と、第二金属部材1bの板幅の略半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部44とを有する。
【0082】
突合工程では、第一金属部材1aの凹溝部41に第二金属部材1bの突出部44を当接させて、第一金属部材1aと第二金属部材1bとを略垂直に突き合わせる。これにより、第一金属部材1aと第二金属部材1bとの突合せ面には突合部J10が形成される。第一金属部材1aと第二金属部材1bとを突き合わせて形成された被接合金属部材N1の第一端面Cには、正面視略クランク状に形成された突合部J10が現われる。
【0083】
(2)溶接工程
溶接工程では、図18の(b)に示すように、被接合金属部材N1の内隅部Iに現われる突合部J10に対して溶接を行う。ここで、内隅部Iとは、第一金属部材1aと第二金属部材1bとで形成された内側の角部分をいう。即ち、溶接工程では、被接合金属部材N1の内面B(被接合金属部材N1の内側)から、突合部J10の長手方向に沿ってTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。なお、溶接工程によって形成された溶接金属T3において、被接合金属部材N1の内面Bから突出した部分については、切削して平滑に形成するのが好ましい。
【0084】
(3)摩擦攪拌工程
本実施形態に係る摩擦攪拌工程は、被接合金属部材N1にタブ材46を取り付けるタブ材設置工程と、突合部J10に対して外面A側から摩擦攪拌を行う本接合工程とを含む。タブ材設置工程では、図19の(a)に示すように、被接合金属部材N1の第一端面C及び第二端面(図示省略)に一対のタブ材46を取り付ける。タブ材46は、被接合金属部材N1と同一組成からなる板状部材であって、第二金属部材1bの板厚と略同等に形成されている。タブ材46は、被接合金属部材N1の外面Aとタブ材46の上面とが面一になるように配置されて、溶接により接合されている。
【0085】
本接合工程では、大型回転ツールGを用いて、被接合金属部材N1の外面A側から突合部J10に沿って摩擦攪拌を行う。本実施形態では、タブ材46上において、突合部J10の延長線上に開始位置SM3を設定し、図示しない他方のタブ材に終了位置を設定する。そして、大型回転ツールGを用いて突合部J10に沿って摩擦攪拌を行う。図19の(b)に示すように、本接合工程によって突合部J10に塑性化領域W10が形成される。
【0086】
なお、回転ツールは、右回転させた場合、進行方向左側に、左回転させた場合、進行方向右側に空洞欠陥が形成される可能性がある。従って、例えば、図19の(a)に示すように、本実施形態においては、大型回転ツールGを左回転させてタブ材46の開始位置SM3から突合部J10に沿って移動させるのが好ましい。これにより、仮に空洞欠陥が形成されたとしても、被接合金属部材N1の内側から遠い位置に形成することができる。
【0087】
本実施形態に係る接合方法によれば、一対の金属部材を垂直に突き合わせて接合する場合であっても、水密性及び気密性を高めることができる。即ち、被接合金属部材N1の外面A側から行う摩擦攪拌工程に先だって、内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。これにより、被接合金属部材N1の内面B側、即ち、摩擦攪拌を行う面の裏面側に切欠き(Kissing Bond)が発生するのを防止することができるため、接合部分の水密性及び気密性を高めることができる。また、被接合金属部材N1の内面Bから溶接を行うことで、内隅部Iのような摩擦攪拌が困難な箇所でも比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程では、一対の金属部材同士を仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができるため、作業性を高めることができる。また、被接合金属部材N1の内面B側から溶接を行うことで、塑性化領域W10の熱収縮により第二金属部材1bが外面A側に反ってしまうのを防止することができる。
【0088】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る接合方法は、第三実施形態の変形例であって、内隅部Iに凹部を備える点で第三実施形態と相違する。第四実施形態に係る接合方法は、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0089】
(1)突合工程
突合工程では、図20の(a)に示すように、第一金属部材51aの端部と、第二金属部材51bの端部とを直角に突き合わせる。第一金属部材51a及び第二金属部材51bは、板状を呈し、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金など摩擦攪拌可能な金属材料からなる。第一金属部材51aは、本体部52と、本体部52によりも板薄に形成された第一段部53と、第一段部53よりも板薄に形成された第二段部54とを有する。第二段部54の長さpは、第二金属部材51bの板厚と略同等に形成されている。第一段部53の長さqは、第二段部54の長さよりも小さく形成されている。
【0090】
突合工程では、図20の(b)に示すように、第一金属部材51aの第二段部54に、第二金属部材51bの端面55を当接させる。すると、第一金属部材51aの本体部52、第一段部53及び第二金属部材51bによって断面視矩形の凹部M2が形成される。即ち、第一金属部材51aと第二金属部材51bとからなる被接合金属部材N2の内隅部Iに形成された突合部J11に沿って凹部M2が形成される。
【0091】
(2)溶接工程
溶接工程では、図20の(c)に示すように、被接合金属部材N2の突合部J11に沿って形成された凹部M2に対してTIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。なお、溶接工程によって、形成された溶接金属T4において、被接合金属部材N2の内面Bから突出した部分については、切削して平滑に形成するのが好ましい。
【0092】
(3)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、突合部J11の外面A側から大型回転ツールGを用いて摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程については、第三実施形態と略同等であるため、詳細な説明は省略する。なお、第二金属部材51bの板厚が薄い場合は、摩擦攪拌工程で形成される塑性化領域W11と溶接金属T4を接触させることで、より水密性及び気密性を高めることができる。
【0093】
本実施形態に係る接合方法によれば、第三実施形態と同等の効果を得られると共に、第一金属部材51aと第二金属部材51bとを垂直に突き合わせる場合であっても、凹部M2を設けることで、溶接作業を容易に行うことができる。
また、具体的な説明は省略するが、図21に示すように、第四実施形態に係る接合方法を用いて、第一金属部材51a、第二金属部材51b、第一金属部材51aと同等の部材である第三金属部材51c及び第二金属部材51bと同等の部材である第四金属部材51dからなる断面視矩形の筒状の構造体Zを形成することができる。このような構造体Zを例えば、真空容器として使用することができる。
【0094】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態に係る接合方法は、図22及び図23に示すように、円筒状を呈する筒状部材61aと、筒状部材61aの端部を覆う蓋部材61bとを接合する点で第一実施形態と相違する。本実施形態に係る接合方法は、(1)突合工程、(2)溶接工程、(3)摩擦攪拌工程を含む。
【0095】
(1)突合工程
突合工程では、図22に示すように、筒状部材61aの端面と蓋部材61bとを突き合わせる。筒状部材61aは、円筒を呈する金属部材である。筒状部材61aの端部は、板厚の半分の幅で断面視矩形に切り欠かれた凹溝部62と、板厚の半分の幅で断面視矩形を呈するように突出する突出部63とを有する。
蓋部材61bは、筒状部材61aの開口部を隙間なく覆う部材であって、円板状の本体部64と、本体部64の一端側に突出し断面視円形を呈する突部65とを有する。突部65は、本体部64と同心で形成されており、本体部64の直径よりも小さく形成されている。
【0096】
図23に示すように、筒状部材61aと蓋部材61bとを突き合わせて、筒状部材61aの凹溝部62と、蓋部材61bの突部65とを当接させる。筒状部材61aと蓋部材61bとが突き合わされて突合部J12が形成される。筒状部材61aと蓋部材61bとからなる部材を被接合金属部材N3とする。
【0097】
(2)溶接工程
溶接工程では、図23の(a)に示すように、被接合金属部材N3の内隅部I’に形成された突合部J12に沿って、溶接を行う。本実施形態では、被接合金属部材N3の内面Bに平面視円形に溶接金属T5が形成されるように、TIG溶接又はMIG溶接等の肉盛溶接を行う。
【0098】
(3)摩擦攪拌工程
摩擦攪拌工程では、図23の(b)に示すように、大型回転ツールGを用いて被接合金属部材N3の外面A側から突合部J12に沿って摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌工程においては、突合部J12に沿って大型回転ツールGを右回転させながら、蓋部材61bの正面側からみて反時計回りに移動させて摩擦攪拌を行う。このように、大型回転ツールGを右回転させて進行方向左側に蓋部材61bが配置されるように設定することで、蓋部材61b側に空洞欠陥が形成される可能性が高い。これにより、空洞欠陥を被接合金属部材N3の中空部から離れた位置で形成することができる。
【0099】
第五実施形態に係る接合方法によれば、筒状部材61aと、筒状部材61aの一端側を覆う蓋部材61bとを接合する場合であっても、水密性及び気密性を高めることができる。即ち、被接合金属部材N3の外面Aから行う摩擦攪拌工程に先だって、被接合金属部材N3の内面B側から溶接工程を行うことで、内面Bを仮付けした状態で摩擦攪拌を行うことができる。また、被接合金属部材N3の内面Bから溶接を行うことで、内隅部I’のような摩擦攪拌が困難な箇所でも比較的容易に接合作業を行うことができる。また、摩擦攪拌工程に先だって溶接工程を行って、金属部材同士を仮付けすることができるため、摩擦攪拌工程の作業を容易に行うことができる。
【0100】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、溶接工程では、TIG溶接又はMIG溶接に限定されるものではなく、他の公知の溶接方法を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第一実施形態に係る構造体を示した斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る構造体を示した平面図である。
【図3】第一実施形態に係る中間部材を示した図であって、(a)は、分解斜視図、(b)は、平面図である。
【図4】第一実施形態に係る突合工程を示した平面図である。
【図5】第一実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図6】第一実施形態に係る摩擦攪拌工程の準備段階を示した斜視図である。
【図7】(a)は、図6の一部の拡大斜視図であり、(b)は、溝部形成工程を示した斜視図である。
【図8】(a)は、小型回転ツールを示した側面図であり、(b)は、大型回転ツールを示した側面図である。
【図9】第一実施形態に係るタブ材配置工程を示した斜視図である。
【図10】第一実施形態に係る仮接合工程を示した平面図である。
【図11】第一実施形態に係る本接合工程を示した平面図である。
【図12】図11のI−I線断面図である。
【図13】第一実施形態に係る継手部材挿入工程を示した斜視図である。
【図14】第一実施形態に係るタブ材配置工程を示した斜視図である。
【図15】第一実施形態に係る外側仮接合工程を示した平面図である。
【図16】第一実施形態に係る外側本接合工程を示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)のII-II線断面図である。
【図17】第二実施形態に係る溶接工程を示した図であって、(a)は、凹部形成工程、(b)は溶接金属充填工程を示す。
【図18】(a)は、第三実施形態に係る突合工程を示した斜視図、(b)は、第三実施形態に係る溶接工程を示した斜視図である。
【図19】(a)は、第三実施形態に係るタブ材配置工程、(b)は、第三実施形態に係る摩擦攪拌工程を示した斜視図である。
【図20】(a)は、第四実施形態に係る被接合金属部材の分解図であり、(b)は、第四実施形態に係る突合工程を示した図であり、(c)は、第四実施形態に係る溶接工程及び摩擦攪拌工程を示した図である。
【図21】第四実施形態に係る構造体を示した斜視図である。
【図22】第五実施形態に係る被接合金属部材の分解斜視図である。
【図23】(a)は、第五実施形態に係る溶接工程を示した斜視図であり、(b)は、第五実施形態に係る摩擦攪拌工程を示した斜視図である。
【図24】従来の接合方法を示した断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 構造体
11〜14 平板
31 第一タブ材
32 第二タブ材
F 小型回転ツール
G 大型回転ツール
H1〜H4 壁部材
J 突合部
K 溝部
M1 凹部
P1 下穴
R1〜R4 角部材
T 溶接金属
W 塑性化領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、
前記突合部に対して一方の面側から溶接を行う溶接工程を行った後、
前記突合部に対して他方の面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
複数の金属部材を突き合わせて形成された筒状の構造体において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、
前記突合部に対して前記構造体の内面側から溶接を行う溶接工程を行った後、
前記突合部に対して前記構造体の外面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項3】
前記溶接工程において形成された溶接金属と、前記摩擦攪拌工程において形成された塑性化領域とを接触させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記溶接工程では、前記一方の面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項5】
前記溶接工程では、前記構造体の内面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項6】
前記摩擦攪拌工程において、大型の回転ツールによって本接合を行う本接合工程を行う前に、小型の回転ツールによって仮接合を行う仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記摩擦攪拌工程において、前記突合部の両側に一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、前記タブ材と前記金属部材との突合部に沿って摩擦攪拌を行うタブ材仮接合工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記摩擦攪拌工程において、摩擦攪拌を行う回転ツールの挿入予定位置に予め下穴を形成する下穴形成工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項1】
一対の金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、
前記突合部に対して一方の面側から溶接を行う溶接工程を行った後、
前記突合部に対して他方の面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
複数の金属部材を突き合わせて形成された筒状の構造体において、前記金属部材同士を突き合わせてなる突合部の接合方法であって、
前記突合部に対して前記構造体の内面側から溶接を行う溶接工程を行った後、
前記突合部に対して前記構造体の外面側から摩擦攪拌を行う摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする接合方法。
【請求項3】
前記溶接工程において形成された溶接金属と、前記摩擦攪拌工程において形成された塑性化領域とを接触させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記溶接工程では、前記一方の面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項5】
前記溶接工程では、前記構造体の内面に現れる突合部に沿って形成された凹部に、溶接金属を充填する溶接金属充填工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項6】
前記摩擦攪拌工程において、大型の回転ツールによって本接合を行う本接合工程を行う前に、小型の回転ツールによって仮接合を行う仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記摩擦攪拌工程において、前記突合部の両側に一対のタブ材を配置するタブ材配置工程と、前記タブ材と前記金属部材との突合部に沿って摩擦攪拌を行うタブ材仮接合工程とを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記摩擦攪拌工程において、摩擦攪拌を行う回転ツールの挿入予定位置に予め下穴を形成する下穴形成工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の接合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−82649(P2010−82649A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253816(P2008−253816)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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