説明

接合製品の製造方法及び接合構造

【課題】接合信頼性の高められた接合製品を、容易に製造する方法を提供すること、並びに、接合信頼性の高められた接合構造を提供すること。
【解決手段】接合部材A(フランジ付き押出形材12)の互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部16a,16b間に、複数のリブ24a,24bが形成された中空接合部材B(リブ付き中空押出形材14)の接合すべき端部を嵌め込んで、接合部材Aのフランジ部16a,16bと中空接合部材Bの上下面板部20a,20bとをそれぞれ重ね合わせた後、摩擦撹拌接合工具のプローブを、フランジ部16a,16bを通じて、上下面板部20a,20bの、リブ24a,24bが配設された部位の外表面に設けられた各凸部30のそれぞれに差し込み、各凸部30のそれぞれに沿って移動させて、接合部材Aと中空接合部材Bの重ね摩擦撹拌接合を行って、接合製品10を製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合製品の製造方法及び接合構造に係り、特に、押出形材等の接合部材を接合して、剛性のある構造部材、例えば、自動車のフレーム等として有利に用いられる接合製品を製造する方法、並びに自動車のフレーム構造等において有利に採用される接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車業界においては、地球環境の保護や省エネルギー化の観点から、低燃費化が要求されている。この低燃費化の要求を満たすためには、自動車の軽量化が不可欠となってきている。
【0003】
例えば、近年においては、自動車のフレーム構造として、アルミニウム合金製の中空押出形材を用いたスペースフレーム構造が採用されるようになってきている。このようなスペースフレームを製造するに際しては、押出形材同士を接合する必要があり、押出形材同士の接合構造や接合方法等が種々検討されてきている。例えば、特許文献1には、中空押出形材等の金属製部材の少なくとも一方に、嵌合用の切り欠きを設け、かかる切り欠きにおいて金属製部材同士を嵌合して、2つの部材を交差せしめ、そして、金属部材の突き合わせ部を外方から摩擦撹拌接合することにより、2つの中空押出形材を接合している。
【0004】
しかしながら、かかる特許文献1の手法では、コーナー部に対して接合用ツールを作用させることができないという摩擦撹拌接合法の固有の理由から、クロス嵌合部のうち、突き合わせ状態となる部分に対してだけしか摩擦撹拌接合を行うことができず、十分な強度を確保することができないといった問題があった。このため、特許文献2においては、この問題を解消するべく、クロス嵌合部の内部に中子を配置し、嵌合させた部材を、それぞれ、中子と摩擦撹拌接合することによって、中子を介して、両部材を接合する方法が明らかにされている。しかし、このように中空押出形材に中子を配置して接合する場合、押出形材に中子を挿入する作業が極めて煩雑であると共に、作業工数が増加し、生産性が著しく低下するといった問題がある。
【0005】
また、特許文献3には、角パイプ同士を突き合わせて、その突き合わせ部を摩擦撹拌接合する手法が明らかにされている。しかし、特許文献3に記載の手法では、角パイプ同士を摩擦撹拌接合できる箇所が、突き合わせ部に限られてしまうため、接合部を増やして、接合信頼性の更なる向上を図ることは困難であった。
【0006】
また更に、特許文献4には、第一の部材と第二の部材を摩擦撹拌接合するに際し、第一の部材として板材及び第二の部材としてリブ部を有する押出形材をそれぞれ用いて、それらを重ね合わせ、そして、第一の部材の該表面側から、第二の部材の該リブ部の形成された部位に摩擦撹拌接合工具のプローブを所定の差し込み位置となるように差し込んで、重ね摩擦撹拌接合を行うことにより、座屈等による欠陥の発生が有利に防止された接合製品が得られることが明らかにされている。しかしながら、かかる特許文献4においては、一つの板状部を有する第一の部材とリブ部を有する第二の部材との接合構造が明らかにされているにすぎず、平行に延びる一対のフランジ部を有する部材と中空部材との接合や、T字状やL字状等に交差された部材の接合については、何等明らかにされてはいない。また、特許文献4では、リブ部の形成された押出形材上に、板材を重ね合わせ、その板材上から摩擦撹拌接合工具のプローブを差し込んで、摩擦撹拌接合を行うようにしているところから、押出形材の外表面に歪みや凹凸があると、接合が不完全となって、健全な接合部が得られないおそれがあり、形材の平坦度の影響を受けるといった問題があった。加えて、押出形材に形成されたリブ部は、外側から視認することができないため、接合に先立って、板材の外表面に、接合すべき部位(リブ部の形成部位)を示す、何らかの目印をつける必要があり、それが生産効率を著しく低下させる原因となっていたのである。
【0007】
【特許文献1】特開平9−323179号公報
【特許文献2】特開平11−59484号公報
【特許文献3】特開2003−236683号公報
【特許文献4】特開2005−329453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、接合信頼性の高められた接合製品を、容易に製造する方法を提供すること、並びに、接合信頼性の高められた接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、かかる課題の解決のために、本発明の要旨とするところは、互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部が一体的に形成されてなる構造の接合部材Aに対して、その対向するフランジ部間に、互いに対向して平行に位置する面板部を有する中空の接合部材Bの端部を嵌め込み、摩擦撹拌接合して、それら2種の接合部材からなる接合製品を製造する方法であって、前記中空接合部材Bとして、前記面板部の対向面間に設けられた複数のリブにて該面板部がそれぞれ一体的に連結されていると共に、該面板部の、該複数のリブが配設された部位の外表面に、先端部が平坦化された凸部が該複数のリブに沿ってそれぞれ一体的に形成された形材を用い、該中空接合部材Bの接合すべき端部を、前記接合部材Aのフランジ部間に嵌め込んで、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とをそれぞれ重ね合わせた後、摩擦撹拌接合工具のプローブを、高速回転下に、該接合部材Aのフランジ部を通じて、該中空接合部材Bの前記凸部のそれぞれに差し込み、該凸部のそれぞれに沿って移動せしめることにより、該接合部材Aと該中空接合部材Bの重ね摩擦撹拌接合を行って、該中空接合部材Bの長手方向に延びる複数の接合部を形成することを特徴とする接合製品の製造方法にある。
【0010】
なお、かかる本発明に従う接合製品の製造方法の好ましい態様によれば、前記中空接合部材Bの前記面板部に設けられた前記凸部のそれぞれが、矩形断面乃至は台形断面を有しており、それら各凸部における先端部の幅が、前記プローブの直径よりも2mm以上大きく、且つ前記リブの厚み以下とされる一方、各凸部における基部の幅が、該先端部の幅と同じかそれよりも大きくされる。
【0011】
また、本発明に従う接合製品の製造方法における別の好ましい態様の一つによれば、前記中空接合部材Bの各リブの厚みが、前記プローブの直径よりも2mm以上大きく、且つそれら各リブの合計厚みが、該中空接合部材Bの前記面板部を連結する外壁部間の距離の1/2以下とされる。
【0012】
さらに、本発明に従う接合製品の製造方法における望ましい態様の一つによれば、前記接合部材Aの前記フランジ部間に、前記凸部の形成された中空接合部材Bを嵌入せしめて、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とをそれぞれ重ね合わせるに際し、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの凸部との間隙が、0.05〜0.5mmとされる。
【0013】
加えて、本発明に従う接合製品の製造方法における他の望ましい態様の一つによれば、前記接合部材Aとして、前記フランジ部の対向方向内側に位置する角部に、面取り加工を施したものが用いられる。
【0014】
また更に、本発明に従う接合製品の製造方法における更に別の好ましい態様の一つによれば、前記フランジ部の端面と前記面取り加工によって形成された面との為す面取り角度が、15°〜45°であり、且つ、該面取り加工によって、該フランジ部の先端部の厚みが、元の厚みの80%以下とされる。
【0015】
そして、本発明においては、互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部が一体的に形成されてなる構造の接合部材Aに対して、その対向するフランジ部間に、互いに対向して平行に位置する面板部を有する中空接合部材Bの端部を嵌め込んで、摩擦撹拌接合してなる接合構造であって、前記中空接合部材Bとして、前記面板部の対向面間にそれぞれ設けられた複数のリブにて該面板部がそれぞれ一体的に連結されていると共に、該面板部の、該複数のリブが配設された部位の外表面に、先端部が平坦化された凸部が該複数のリブに沿ってそれぞれ一体的に形成された形材が用いられ、該中空接合部材Bが、その接合すべき端部において、前記接合部材Aのフランジ部間に嵌め込まれて、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とがそれぞれ重ね合わされた状態において、該接合部材Aと該中空接合部材Bとが、該中空接合部材Bの該凸部に沿って重ね摩擦撹拌接合されて、複数の接合部が該中空接合部材Bの長手方向に延びるように形成されていることを特徴とする接合構造をも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う接合製品の製造方法にあっては、接合されるべき一方の接合部材として、互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部が一体的に形成されてなる構造の接合部材Aが用いられている一方、他方の接合部材として、互いに対向して平行に位置する面板部を有し、且つ、その対向面間に設けられた複数のリブにて各面板部がそれぞれ一体的に連結されていると共に、各面板部の、複数のリブが配設された部位の外表面(リブが形成された面とは反対側の面)に、先端部が平坦化された凸部が、複数のリブに沿ってそれぞれ一体的に形成された中空の接合部材Bが用いられている。このため、接合部材Aのフランジ部間に、中空接合部材Bを嵌め込んで、接合部材Aの各フランジ部と中空接合部材Bの各面板部とをそれぞれ重ね合わせて、摩擦撹拌接合を実施すると、接合時の面圧が、平坦化された先端部の各凸部に集中し、各面板部の平坦度に影響を受けずに接合することができる。その結果、健全な接合部を有する接合製品が有利に製造され得るのである。
【0017】
また、本発明においては、摩擦撹拌接合工具のプローブを、接合部材Aのフランジ部を通じて、中空接合部材Bの、リブが形成された面とは反対側の面に形成された各凸部に差し込むようにしているところから、中空接合部材Bの中空部内に中子を配置しなくとも、リブが、中子等の裏当て治具の役割を奏し、座屈の発生が有利に防止され得るようになっている。従って、中空部内に中子を挿入する作業が不要となって、摩擦撹拌接合を容易に行うことができる。
【0018】
しかも、本発明においては、中空接合部材Bの面板部の外表面に形成された各凸部が目印となって、外側からでも、リブの配設された部位を容易に確認することができるといった利点も享受される。
【0019】
加えて、本発明では、対向配置された各面板部に、それぞれ、複数の凸部が形成されているところから、各面板部とそれに重ね合わされた各フランジ部とが、それぞれ、複数の箇所において重ね接合されるようになっている。その結果、強固な、接合信頼性がより一層高められた接合製品を製造することが可能となっているのである。
【0020】
また、本発明に従う接合構造にあっては、中空接合部材Bの対向する面板部が、それぞれ、複数箇所において、接合部材Aのフランジ部に重ね接合されているところから、上述の如き効果が悉く享受され、接合信頼性の高められたものとなっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0022】
先ず、図1及び図2には、本発明に従って製造される接合製品の一実施形態が、斜視形態及び平面形態とにおいて、それぞれ、概略的に示されている。それらの図からも明らかなように、接合製品10は、接合部材Aであるフランジ付押出形材12と、中空接合部材Bであるリブ付中空押出形材14が互いに組み付けられ、一体的に接合されてなる構造を有している。
【0023】
より具体的には、フランジ付押出形材12は、全体として、長手の角パイプ状の基部13を有し、その基部13の一方の側面板18cから外方(図1中、右方向)に向かって突出するように、互いに対向して平行に延びる一対の平板状のフランジ部16a,16bが、上下方向に所定の間隔をあけて一体的に設けられてなる構造の押出形材である。ここでは、フランジ部16a,16bの厚みが、それぞれ、基部13の上下の面板18a,18bの厚みと同一とされ、且つ、フランジ部16aと上面板18a、及び、フランジ部16bと下面板18bが、それぞれ、面一とされている。
【0024】
なお、かかるフランジ部16a,16bの厚みや突出長さは、適宜に設定され得るものであり、特に制限されるものではないものの、その厚みは、重ね接合を行う観点から、少なくとも、摩擦撹拌接合に用いられる摩擦撹拌接合工具のプローブの長さよりも小さくされる必要があり、ここでは、1〜5mm程度とされている。また、フランジ部16a,16bの突出長さは、あまりにも短かすぎると、接合部の接合長さを十分に確保することができず、接合強度が低下するおそれがあるところから、ここでは、10〜50mm程度とされている。
【0025】
一方、上記フランジ付押出形材12と接合されるリブ付中空押出形材14は、全体として、長手の断面矩形状を呈する中空構造の押出形材である。より詳細には、接合製品10の断面図が図3に示されているのであるが、リブ付中空押出形材14は、上下方向に所定の間隔をあけて、互いに対向して平行に位置する一対の平板状の面板部(上面板部20a、下面板部20b)と、それら上下面板部20a,20bの幅方向(図3中、左右方向)の端部同士をそれぞれ連結する平板状の外壁部(左外壁部22a、右外壁部22b)と、上下面板部20a,20bの対向面間に略垂直に設けられた、それら上下面板部20a,20bを連結する複数(ここでは、2つ)のリブ24a,24bとを有して構成されている。また、かかるリブ24a,24bは、左右外壁部22a,22bの間に所定の間隔をあけて設けられており、そのため、リブ付中空押出形材14は、その内部空間が2つの内壁状のリブ24a,24bで3つに仕切られた状態となっており、その断面形状は、略「目」の字状(図3では、「目」の字が90°回転された状態)とされている。
【0026】
そして、本実施形態においては、かかるリブ24a,24bの厚み:Ta,Tbが、それぞれ、摩擦撹拌接合で用いられる摩擦撹拌接合工具のプローブの直径:Rよりも2mm以上大きくなるようにされている。具体例を挙げると、使用するプローブの直径が2.5mmの場合には、リブ24a,24bの厚み:Ta,Tbが、4.5mm(=2.5mm+2mm)以上となるように設定されているのである。この理由は、摩擦撹拌接合による撹拌領域が、一般に、プローブの直径:Rよりも2mm以上となるからであり、例えば、リブ24a,24bの厚みがR+2mmに満たない場合には、撹拌領域がリブ24a,24bにまで及ぶと、摩擦撹拌されたメタルが、リブ付中空押出形材14のリブ24a,24bと上下面板部20a,20bとの各連結部(コーナー部)26に膨出したり、はみ出て、接合部28にメタル不足が生じ、これにより、接合部28内部に、ポロシティや空洞が形成される等して、接合不完全部が形成され、所望とする十分な接合強度を実現し得ないおそれがあるからである。また、撹拌領域がリブ24a,24bにまで及ばない場合であっても、リブ24a,24bがあまりにも薄すぎると、接合時に加えられる荷重に耐えきれず、座屈するおそれもあるからである。
【0027】
また更に、本実施形態においては、接合製品10の軽量化の観点から、リブ24a,24bの合計厚み(Ta+Tb)が、左右外壁部22a,22bの対向面間の距離:Dの1/2以下となるように設定されている。
【0028】
また、リブ付中空押出形材14には、上述のリブ24a,24bが形成された部位に対応する上下面板部20a,20bの外表面に、それぞれ2つずつ、凸部(凸条)30が、リブ24a,24bに沿って長手方向(図3における紙面に垂直な方向で、図2における左右方向)に延出するように一体的に設けられており、この凸部30を目印にして、摩擦撹拌接合工具のプローブが差し込まれて、線状の各接合部28が形成されている。このリブ付中空押出形材14に設けられた各凸部30は、図4に拡大して示されるように、先端部31が平坦化されている。このため、摩擦撹拌接合時に、摩擦撹拌接合工具からの押圧力を平坦化された突出端面で有利に受けることができ、接合時の面圧が各凸部30に集中すると共に、形材の平坦度(上下面板部20a,20bの平坦度)に左右されずに接合することが可能となり、ひいては、健全な接合部を有する接合製品が製造されることとなるのである。
【0029】
なお、そのような各凸部30の形状や大きさは、使用する摩擦撹拌接合工具のプローブに応じて適宜に設定されるのであるが、ここでは、摩擦撹拌接合時の面圧が各凸部30に集中するところから、各凸部30の形状が、断面四角形状、特に、断面矩形状とされている。また、各凸部30の断面における幅:Wa,Wbは、摩擦撹拌接合で用いられる摩擦撹拌接合工具のプローブの直径:Rよりも2mm以上大きくされている。これは、摩擦撹拌接合による撹拌領域が、一般に、プローブの直径:Rよりも2mm以上となるからであり、各凸部30の断面における幅:Wa,Wbが、R+2mmに満たない場合には、摩擦撹拌されたメタルが、各面板部20a,20bとフランジ付押出形材12の各フランジ部16a,16bとの間にそれぞれ形成される各空隙部32の方に逃げて肉洩れが惹起され、以て、接合部28にメタル不足が生じて、これにより、各接合部28内部に、ポロシティや空洞が形成される等して、接合不完全部が形成され、所望とする十分な接合強度が得られないおそれがあるからである。
【0030】
また、各凸部30の幅:Wa,Wbは、健全な接合部を得るべく、何れも、対応するリブの厚み:Ta,Tbと同じか、それよりも小さくされていることが望ましい。なぜなら、各凸部30の幅:Wa,Wbが、リブの厚み:Ta,Tbに比して、あまりにも大きくなりすぎると、凸部30を目印にして、摩擦撹拌接合工具のプローブを差し込んでも、摩擦撹拌接合工具のプローブの差し込み位置が、リブ24a,24bの配設位置からずれるおそれがあり、その結果、接合時の荷重をリブ24a,24bで支持することができなくなって、リブ付中空押出形材14が座屈して、健全な接合部が得られなくなるおそれがあるからである。
【0031】
さらに、ここでは、同一の面板部上に設けられた各凸部30の突出高さ:Hが、嵌入後のガタツキを防止して、リブ付中空押出形材14がフランジ付き押出形材12のフランジ部16a,16b間に安定して配置され得るように、何れも同じ高さとされている。この突出高さ:Hは、特に制限されるものではないものの、凸部30による効果を有利に得るには、一般に、0.15〜0.5mm程度とされることが望ましい。
【0032】
なお、上記したフランジ付押出形材12及びリブ付中空押出形材14は、同材質のものであっても、或いは異なる材質のものであっても何等差し支えない。また、それら形材の材質としても、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金等の、摩擦撹拌接合が可能な公知の材料を挙げることが出来、それら材料が適宜に選択されて、用いられることとなる。そして、その中でも、特に、アルミニウム合金を採用する場合には、時効処理によって強度を高めることが可能な、Al−Cu−Mg系(2000系)、Al−Mg−Si系(6000系)、Al−Zn−Mg系(7000系)の熱処理型Al合金が、有利に用いられ得るのである。
【0033】
かくして、上述の如きフランジ付押出形材12及びリブ付中空押出形材14を用いて、本実施形態に係る接合製品10を製造するには、例えば、以下の如き手法に従って実施されることとなる。
【0034】
先ず、フランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14とを準備して、図5に示されるように、それぞれ、フランジ部16a,16bの対向方向が上下方向となるように、また、凸部30が形成された上下面板部20a,20bが上下に位置するように、それらフランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14を配置する。そして、何れか一方或いは両方を相対的に動かして、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16bの間に、リブ付中空押出形材14の接合すべき端部を、その切断面34がフランジ付押出形材12の側面板18cに当接するまで嵌入せしめることにより、フランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14とを組み付けて、T字状に交差させる(図6参照)。ここでは、リブ付中空押出形材14の切断面34が、上下面板部20a,20b及び左右外壁部22a,22bの何れの面に対しても垂直となっており、このため、リブ付中空押出形材14の切断面34を、フランジ付押出形材12の側面板18cに当接させると、フランジ付押出形材12に対して、リブ付中空押出形材14が直角に配置されるようになっている。また、リブ付中空押出形材14を、上下に配置されたフランジ部16a,16b間に嵌め込むことにより、図6に示されるように、フランジ部16aと上面板部20a、及び下面板部20bとフランジ部16bが、それぞれ、嵌め込まれた部分において、上下に重ね合わされる。このとき、嵌入されたリブ付中空押出形材14の上下面板部20a,20bには、それぞれ、幅方向に所定の間隔をあけて、凸部30が複数設けられているところから、凸部30が1つしか設けられていないときとは異なり、リブ付中空押出形材14が、フランジ部16a,16b間内でガタつくようなことが有利に防止されている。
【0035】
なお、リブ付中空押出形材14を嵌め込むに際して、フランジ部16a,16bの対向面間の距離は、リブ付中空押出形材14が容易に挿入され得るように、リブ付中空押出形材14の外形寸法(上面板部20aに設けられた凸部30の先端部31から下面板部20bに設けられた凸部30の先端部31までの距離)よりも大きくされることが望ましい。より詳細には、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に、リブ付中空押出形材14を嵌入せしめる際に、フランジ部16aの内側の面と上面板部20aの凸部30の突出端面との間の間隙(クリアランス)の大きさ:G(図7及び図8参照)が、0.05〜0.5mm、より好ましくは0.05〜0.3mmとされることが望ましい。この理由は、間隙の大きさ:Gが0.05未満であると、フランジ部16a,16b間に、リブ付中空押出形材14を嵌め込むことが困難となるからであり、また0.5mmを超えると、摩擦撹拌接合時に、摩擦撹拌されたメタルが間隙から逃げてしまい、メタル不足を惹起するおそれがあるからである。
【0036】
そして、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に上下面板部20a,20bを嵌入せしめ、フランジ部16a,16bと上下面板部20a,20bとを重ね合わせた後、フランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14とが相互に動かないように、クランプ等の固定手段(図示せず)で固定する。次いで、従来と同様な摩擦撹拌接合工具36を用いて、従来と同様にして、摩擦撹拌接合を実施するのである。なお、ここでは、摩擦撹拌接合工具36として、ロッド状のショルダ部材38の先端部に同軸的に且つ一体的に設けた所定長さのピン状のプローブ40を備えてなるものが用いられ、かかる摩擦撹拌接合工具36を、その軸周りに高速回転せしめつつ、図7及び図8に示されるように、リブ付中空押出形材14の各凸部30乃至は各リブ24a,24bに向かって移動させることにより、摩擦撹拌接合工具36のプローブ40を、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16bの外表面側から押し付けて、ショルダ部材38の先端面(ショルダ面)がフランジ部16a,16bの外表面に当接するまで、差し込むようにするのである。これにより、プローブ40が、図9に拡大して示されるように、フランジ部16a,16bを厚さ方向に貫通して、リブ付中空押出形材14の上下面板部20a,20bに形成された各凸部30に差し込まれることとなる。この際、フランジ部16a,16bに重ね合わされた部分の各凸部30は、フランジ部16a,16bの存在により、視認できないが、各凸部30は、リブ付中空押出形材14の長手方向の全長に亘って形成されているところから、フランジ部16a,16b間に嵌め込まれていない部分については、各凸部30を視認することができ、これが目印となって、フランジ部16a,16bの外表面上に印をつけなくても、フランジ部16a,16bを通じて各凸部30に、プローブ40を容易に差し込むことができるようになっている。
【0037】
そして、プローブ40を差し込むことにより、高速回転せしめられるプローブ40とフランジ部16a,16b及び各凸部30との接触部、及び、高速回転せしめられるショルダ部材38のショルダ面とこのショルダ面によって押圧されるフランジ部16a,16bとの接触部において、摩擦熱が発生して、その周囲が可塑化され、塑性流動せしめられる一方、プローブ40の高速回転に伴う撹拌作用にて、重ね合わされた二つの形材の組織が入り交じり合わされ、プローブ40の周りに摩擦撹拌領域42が形成され、引き続き、プローブ40を差し込んだ状態で、摩擦撹拌接合工具36(プローブ40)を、各凸部30に沿って、各凸部30の延出方向(リブ付中空押出形材14の長手方向)に相対的に移動させて、摩擦撹拌領域42を、各凸部30の延出方向に延びるように形成することによって、フランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14とが、線接合されるのである。このような摩擦撹拌接合操作によって、フランジ付押出形材12とリブ付中空押出形材14とが、嵌合された部分において重ね接合され、図1〜図3に示される如き、目的とする接合製品10が製造されるのである。
【0038】
このようにして製造された接合製品10にあっては、リブ付中空押出形材14の長手方向に延びる接合部28が、フランジ部16a,16bの上下に、複数本(2本)ずつ形成されており、接合の信頼性が極めて有利に高められているのである。
【0039】
従って、上述せる如き接合部材Aと中空接合部材Bとを摩擦撹拌接合して得られる本発明の接合製品及び接合構造は、例えば、自動車のスペースフレームや鉄道車両、建築用パネルの枠体等の剛性の必要とされる構造部材に、有利に用いられることとなる。
【0040】
ところで、本発明は、上記した実施形態のものに限定して解釈されるものでは決してなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、各種の変形を加えることが可能であって、その別の実施形態が、図10〜図14に示されている。なお、それら図10〜図14において、上記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図中、それぞれ、上述の実施形態と同一の符号を付与することにより、その詳細な説明を省略する。
【0041】
先ず、図10には、本発明に従って製造される接合製品の別の実施形態が、斜視形態において、概略的に示されている。かかる図10からも明らかなように、接合製品45は、上記の実施形態と同様に、接合部材Aであるフランジ付押出形材44のフランジ部46a,46b間に、中空接合部材Bであるリブ付中空押出形材48の一端部が嵌入され、フランジ部46a,46bとリブ付中空押出形材48とが重ね合わされた状態で、その重ね合わせ部に対して、摩擦撹拌接合が施されてなる構造を有している。
【0042】
ここでは、図10からも明らかなように、フランジ付押出形材44として、長手の角パイプ状の基部13の側面板18cから外方に向かって突出するフランジ部46a,46bの突出方向先端に位置する角部のうち、フランジ部46a,46bの対向方向内側の角部が面取りされたもの用いられている。このため、フランジ付押出形材44フランジ部46a,46bの間に、リブ付中空押出形材48の端部を嵌入する際の嵌入操作が、極めて容易に行われ得るようになっている。
【0043】
なお、上記角部の面取り加工は、図11に示されるように、フランジ部46a,46bの突出方向先端側の端面と面取り加工によって形成された面との為す、面取り角度:θが、15°〜45°となるように行われることが望ましい。この理由は、θが、45°を超えると、削り代が大きく、切削加工が困難となると共に、フランジ部46a,46bの突出方向(図11中、左右方向)に深く削り取られることとなって、この面取り加工が施された分だけ、摩擦撹拌接合の接合長さが短くなり、接合強度の低下を招来するからである。また、15°未満である場合には、面取り加工を施しても、その効果が得られず、つまり、フランジ部46a,46b間へのリブ付中空押出形材48の嵌め込みやすさに影響がなく、面取り加工を施してない状態と同じとなるからである。さらに、かかる面取り加工は、フランジ部46a,46bの先端の厚み:Pが、元の厚み:Qの80%以下(実質的には、0%超)となるように実施されることが望ましい。なぜなら、先端の厚み:Pが、元の厚み:Qの80%を超える場合も、上記θが15°未満の場合と同様に、面取り加工を施しても、その効果が得られないからである。
【0044】
また、本実施形態においては、リブ付中空押出形材48として、図12に示されるように、リブ24a,24bが設けられた上下面板部20a,20bの外表面に、上記実施形態の断面矩形状の凸部30とは違って、断面が台形状の凸部50が設けられてなる構造のものが、採用されている。この実施形態においても、凸部50の先端部が平坦化されており、上記実施形態と同様に、接合時の面圧が各凸部50に集中し、形材の平坦度に何等影響を受けることなく、摩擦撹拌接合を行うことができるようになっている。
【0045】
かかる各凸部50の大きさも、上記実施形態と同様の理由で設定されており、台形断面における上底(先端部の幅):Wa1,Wb1は、それぞれ、摩擦撹拌接合で用いられる摩擦撹拌接合工具のプローブの直径:Rよりも2mm以上大きく、且つ、対応するリブの厚み:Ta,Tbと同じか、それよりも小さくされている。
【0046】
また、下底(基部の幅):Wa2,Wb2は、上底側からの面圧を有利に受けるべく、上底:Wa1,Wb1よりも大きくされている。これは、下底(基部の幅):Wa2,Wb2が、上底:Wa1,Wb1よりも小さくされた台形形状とされると、接合不良が惹起されるおそれがあるからである。また更に、下底(基部の幅):Wa2,Wb2の上限は、前述したリブ24a,24bの厚みの上限と同様に、各面板部20a,20bにおける複数の凸部50の基部の幅の合計(Wa2+Wb2)が、左右外壁部22a,22bの対向面間の距離:Dの1/2以下となるように設定されている。
【0047】
また、本実施形態においては、リブ24a,24bが形成された部位に対応する上下面板部20a,20bの外表面の部分以外にも、左右外壁部22a,22bが形成された部位に対応する上下面板部20a,20bの外表面の部分に、リブ付中空押出形材48の長手方向に延出する断面台形状の凸部52がそれぞれ形成されている。これにより、リブ付中空押出形材48には、各面板部(20a,20b)に、それぞれ、4つの凸部が形成されているのである。また、それら各凸部50,52の突出高さ:Hは、ガタツキを防止するために、何れも同じ高さ(0.15〜0.5mm程度)とされている。
【0048】
そして、それらフランジ付押出形材44とリブ付中空押出形材48を摩擦撹拌接合して、図10に示される接合製品45を得るには、上記実施形態と同様な手法で摩擦撹拌接合が実施されるのであるが、本実施形態では、フランジ付押出形材44にリブ付中空押出形材48を嵌め込んだ後、摩擦撹拌接合操作を実施するのに先立って、それらが相互に動かないように、TIG溶接やMIG溶接等にて、仮止めが施されている。この仮止めによって、フランジ付押出形材44とリブ付中空押出形材48とが相対的に移動するようなことが効果的に防止され得て、摩擦撹拌接合がより一層有利に実施され得ているのである。なお、本実施形態では、仮止めが、図10に示されるように、フランジ部46a,46bの先端部と各凸部50,52との重ね合わせ部分に対して、スポット溶接を実施することによって行われ、その部分に、溶接部54が形成されている。
【0049】
また、このような本実施形態においても、リブ付中空押出形材48が、その長手方向の一部において、フランジ付押出形材44のフランジ部46a,46b間に挿入されているため、フランジ部46a,46b間に嵌め込まれていないリブ付中空押出形材48の各凸部50,52が目印となって、フランジ部46a,46bを通じて、各凸部50,52(リブ24a,24b及び左右外壁部22a,22b)に向かって、摩擦撹拌接合工具36のプローブ40が差し込まれて、摩擦撹拌接合が容易に実施され得ている。
【0050】
しかも、本実施形態にあっては、リブ24a,24bに対応する部分だけでなく、左右外壁部22a,22bに対応する部分においても、摩擦撹拌接合が実施されているところから、接合の信頼性がより一層効果的に高められているのである。
【0051】
また一方、図13には、本発明に従って製造される接合製品の更に別の実施形態が、平面形態において、概略的に示されている。かかる図13からも明らかなように、接合製品56は、上記の実施形態と同様に、接合部材Aであるフランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に、中空接合部材Bであるリブ付中空押出形材58の一端部が嵌入された状態で、重ね摩擦撹拌接合が施されてなる構造を有しているが、ここでは、リブ付中空押出形材58が、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に、直角ではなく、斜めに挿入された状態で接合されている。
【0052】
より具体的には、本実施形態では、中空接合部材Bとして、所定の角度をもって、斜めに切断された中空押出形材が、用いられている。換言すれば、切断面60と上下面板部20a,20bの面との為す角がそれぞれ直角、切断面60と左外壁部22aの面との為す角が鈍角、及び切断面60と右外壁部22bの面との為す角が鋭角となるように切断された中空押出形材が、用いられている。このため、リブ付中空押出形材58の切断面60を、フランジ付押出形材12の側面板18cに当接させると、図13に示されるように、フランジ付押出形材12に対して、リブ付中空押出形材58が斜めに傾斜した状態で配置されるのである。
【0053】
このような本実施形態においても、リブ付中空押出形材58が、その長手方向の一部において、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に嵌入されているため、フランジ部16a,16b間に嵌め込まれていないリブ付中空押出形材58の各凸部30が目印となって、フランジ部16a,16bを通じて各凸部30に、プローブ40が容易に差し込まれて、摩擦撹拌接合が実施されている。また、本実施形態にあっても、リブ付中空押出形材58の長手方向に延びる接合部28が、フランジ部16a,16bの上下に、複数本ずつ形成されているところから、接合の信頼性が極めて有利に高められているのである。
【0054】
さらに、図14には、本発明に従って製造される接合製品の他の実施形態が、平面形態において、概略的に示されている。かかる図14に示される接合製品62も、接合部材Aであるフランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に、中空接合部材Bであるリブ付中空押出形材14が、その長手方向の一部が嵌入され、重ね合わされた状態で、摩擦撹拌接合が施されているが、ここでは、リブ付中空押出形材14が、フランジ付押出形材12に対して平行に配置されている。より具体的には、本実施形態では、切断面34ではなく、リブ付中空押出形材14の左外壁部22aが、フランジ付押出形材12の側面板18cに当接された状態で、摩擦撹拌接合が施されている。
【0055】
このような本実施形態においても、リブ付中空押出形材14が、その長手方向の一部において、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16b間に挿入されているところから、フランジ部16a,16b間に嵌め込まれていないリブ付中空押出形材14の各凸部30が目印となって、フランジ部16a,16bを通じて各凸部30(リブ24a,24b)に、プローブ40が容易に差し込まれて、摩擦撹拌接合が実施されている。また、リブ付中空押出形材58の長手方向に延びる接合部28が、フランジ部16a,16bの上下に、複数本ずつ形成されているところから、接合の信頼性も有利に高められているのである。
【0056】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約を受けるものではない。
【0057】
例えば、上記実施形態では、接合部材Aとして、長手の角パイプ状の基部13の一方の側面板18cから外方に向かって突出するように平板状のフランジ部16a,16bが一体的に設けられてなる構造の押出形材が用いられていたが、互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部を備えた構造のものであれば、押出形材の如き展伸材の他にも、鋳造材であっても何等差し支えないのである。また、接合部材Aの形状も、上例に何等限定されるものではなく、例えば、断面がH形のものを採用することも、勿論、可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、中空接合部材Bとして、全体として、角パイプ状の中空の押出形材(外壁部の断面形状が矩形状とされた押出形材)が採用されていたが、互いに対向して平行に位置する面板部が、複数のリブにてそれぞれ一体的に連結されてなる構造のものであれば、その全体形状は、矩形状に何等限定されるものではなく、左右の外壁部が、曲面状のもの(外壁部の断面形状が略長円形状のもの)であっても、或いは、左右の側壁部が断面「く」字状とされたもの(外壁部の断面形状が略六角形状のもの)であっても、勿論、採用可能である。
【0059】
また、リブ24a,24bの配設個数も何等限定されるものではなく、少なくとも2個以上形成されておれば、リブの配設個数に応じた複数の接合部を形成することが可能となって、従来に比して信頼性の高い接合製品を製造することができる。なお、リブを、n個設けた場合(nは、2以上の整数)には、n個のリブの合計厚みが、左右外壁部の対向面間の距離(或いは上下面板部の内幅):Dの1/2以下となるように、設定されることが望ましい。なぜなら、1/2Dを超えると、中空形材を用いるメリットが没却されてしまうおそれがあり、特に、合計厚みがDと同程度となると、中実の形材を採用するのと同じになってしまうからである。
【0060】
さらに、上例では、フランジ付押出形材12のフランジ部16a,16bと、リブ付中空押出形材14の上下面板部20a,20bが、上下に重ね合わされていたが、換言すれば、上下に配置されたフランジ部16a,16b間に、リブ付中空押出形材14が水平に挿入されていたが、フランジ部16a,16bの対向方向が水平方向となるように、フランジ付押出形材12を配置して、リブ付中空押出形材14を上下方向に移動させて、嵌め込むことも勿論可能である。この場合にあっても、フランジ部の内側の面と凸部の突出端面との間の間隙:Gが、それぞれ、0.05〜0.5mm、より好ましくは0.05〜0.3mmとされることが望ましい。
【0061】
加えて、上例では、フランジ部16a,16b間に挿入されていない部分の各凸部30を目印にして、フランジ部16a,16bの外表面上に印を付けることなく、プローブ40を差し込んで、摩擦撹拌接合を行っていたが、フランジ部16a,16bの外表面上に印を付けて、摩擦撹拌接合を行うことも何等差し支えない。本発明においては、従来のものとは異なり、そのような目印を極めて容易に付けることができるのであり、その結果として、重ね摩擦撹拌接合を極めて良好な作業性をもって実施することができる。
【0062】
また、摩擦撹拌接合工具36としても、摩擦撹拌接合に際して用いられる公知の各種の回転工具が、何れも、適宜に選択されて用いられ得るのである。加えて、ショルダ部材38とプローブ40とが一体的な構造とされたものの他、ショルダ部材38とプローブ40とが別体に構成され、それぞれが別個に軸方向に移動可能とされた状態において、同軸的に組み合わされてなる構造の複動式回転工具にあっても、有利に用いられ得るのである。そして、そのような複動式回転工具としては、公知の各種のものが、適宜に選択されて用いられることとなる。
【0063】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでない。
【0065】
なお、下記の実施例1〜3及び比較例1では、摩擦撹拌接合工具として、プローブ直径:2.5mm、プローブ長さ:5mmであるプローブが、ショルダ部材(肩径:8mm)の先端部に同心的に設けられた回転工具を用いると共に、回転数:1000rpm、送り速度:500mm/分の条件で、摩擦撹拌接合を行った。
【0066】
先ず、接合部材Aとして、図15に示される如き断面が略「H」字状のアルミニウム合金(6063−T4)製の押出形材を準備した。なお、接合部材Aの各寸法は以下の通りであった。
<接合部材A>
上フランジ部の突出長さ(a):24.5mm
下フランジ部の突出長さ(b):24.5mm
上下フランジの対向面間距離(c):49.5mm
上下フランジの幅(d):48.5mm
厚み(上下フランジ部を含め、全体の厚み):3mm
【0067】
一方、中空接合部材Bとして、2つのリブ(内壁)を有する、断面が略「目」字状のアルミニウム合金(6063−T4)製の中空押出形材を準備した。具体的には、実施例1〜3では、中空接合部材Bとして、上下面板部のリブが配設された部位の外表面に、それぞれ、台形(実施例1,2)又は矩形(実施例3)の断面形状を呈する凸部が形成された形材を準備する一方、比較例1では、凸部が何等形成されていない形材を準備した。なお、それら実施例1〜3及び比較例1に係る中空接合部材Bの各寸法を、下記表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
そして、図15に示されるように、上記接合部材Aのフランジ部間に、実施例1〜3及び比較例1に係る中空接合部材Bの一方の端部を嵌入して、接合部材Aのフランジ部と中空接合部材Bの凸部が形成された面板部をそれぞれ重ね合わせた。その後、接合部材Aと中空接合部材Bが相互に動かないように、それらを固定した後、高速回転する摩擦撹拌接合工具のプローブを、フランジ部を通じて、各凸部に差し込み、更に、各リブの延出方向に沿って移動させることにより、摩擦撹拌接合を行った。
【0070】
その結果、凸部が形成された中空接合部材Bを用いた実施例1〜3にあっては、フランジ部の外表面に目印を付けなくとも、凸部を目印にして、リブに沿って摩擦撹拌接合を行うことができたのに対し、凸部の無い中空接合部材Bを用いた比較例1では、目印を付けないと、リブの形成部位がわからず、摩擦撹拌接合にかなりの時間を要した。
【0071】
また、凸部が形成された中空接合部材Bを用いた実施例1〜3に係る接合製品は、座屈や接合不完全部等の欠陥が惹起されることなく、健全な接合部を有し、接合信頼性の極めて高いものとなった。一方、凸部の無い中空接合部材Bを用いた比較例1に係る接合製品にあっては、中空接合部材Bの平坦度に影響を受け、当接部が偏在するために、接合部において間隙(クリアランス)の大きい箇所が発生し易くなって、摩擦撹拌されたメタルが間隙から逃げてしまい、メタル不足を惹起した。
【0072】
さらに、上記実施例で採用された接合部材Aのフランジ部の対向方向内側に位置する角部に、下記1)〜5)に示されるように面取り加工を施して、上記実施例2で用いられた中空接合部材Bを嵌入させて、嵌入のしやすさを評価した。
1)面取り角度θ:45°、面取り後の先端部の厚み:2.4mm(元の80%)
2)面取り角度θ:45°、面取り後の先端部の厚み:略0mm(元の約0%)
3)面取り角度θ:15°、面取り後の先端部の厚み:2.4mm(元の80%)
4)面取り角度θ:45°、面取り後の先端部の厚み:2.55mm(元の85%)
5)面取り角度θ:50°、面取り後の先端部の厚み:1.5mm(元の50%)
【0073】
その結果、上記1)〜3)の場合は、面取り加工を施していない場合より、スムーズに中空接合部材Bを挿入することができた。一方、上記4)及び5)の場合は、面取り加工を施していない場合とあまり変わらなかった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に従って製造される接合製品の一例を部分的に示す斜視説明図である。
【図2】図1における平面説明図である。
【図3】図2におけるIII−III断面説明図である。
【図4】図1に示される接合製品の製造に用いられる中空接合部材Bの部分拡大断面説明図である。
【図5】図1に示される接合製品の製造工程の一例を示す斜視説明図であって、接合部材Aのフランジ部間に中空接合部材Bの端部を嵌入させる前の状態を示している。
【図6】図1に示される接合製品の製造工程の他の一例を示す斜視説明図であって、接合部材Aのフランジ部間に中空接合部材Bの端部を嵌入させた状態を示している。
【図7】図1に示される接合製品の製造工程の他の一例を示す正面説明図であって、フランジ部と面板部との重ね合わせ部分に対して、摩擦撹拌接合工具のプローブが差し込まれる前の状態を示している。
【図8】図7におけるVIII−VIII断面説明図である。
【図9】図1に示される接合製品の製造工程の別の一例を示す部分拡大断面説明図であって、摩擦撹拌接合工具のプローブが差し込まれた状態を示している。
【図10】本発明に従って製造される接合製品の他の一例を部分的に示す斜視説明図である。
【図11】図10に示されるフランジ部の先端を示す部分拡大断面説明図である。
【図12】図10に示される接合製品の製造に用いられる中空接合部材Bの部分拡大断面説明図である。
【図13】本発明に従って製造される接合製品の他の一例を部分的に示す平面説明図である。
【図14】本発明に従って製造される接合製品の更に別の一例を部分的に示す斜視説明図である。
【図15】実施例において製造された接合製品を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0075】
10,56,62 接合製品
12,44 フランジ付押出形材 13 基部
14,48,58 リブ付中空押出形材
16a,16b,46a,46b フランジ部
18a,18b,18c 基部の面板 20a,20b 上下面板部
22a,22b 左右外壁部 24a,24b リブ
26 コーナー部 28 接合部
30,50,52 凸部 31 先端部
32 空隙部 34,60 切断面
36 摩擦撹拌接合工具 38 ショルダ部材
40 プローブ 42 摩擦撹拌領域
54 溶接部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部が一体的に形成されてなる構造の接合部材Aに対して、その対向するフランジ部間に、互いに対向して平行に位置する面板部を有する中空の接合部材Bの端部を嵌め込み、摩擦撹拌接合して、それら2種の接合部材からなる接合製品を製造する方法であって、
前記中空接合部材Bとして、前記面板部の対向面間に設けられた複数のリブにて該面板部がそれぞれ一体的に連結されていると共に、該面板部の、該複数のリブが配設された部位の外表面に、先端部が平坦化された凸部が該複数のリブに沿ってそれぞれ一体的に形成された形材を用い、該中空接合部材Bの接合すべき端部を、前記接合部材Aのフランジ部間に嵌め込んで、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とをそれぞれ重ね合わせた後、摩擦撹拌接合工具のプローブを、高速回転下に、該接合部材Aのフランジ部を通じて、該中空接合部材Bの前記凸部のそれぞれに差し込み、該凸部のそれぞれに沿って移動せしめることにより、該接合部材Aと該中空接合部材Bの重ね摩擦撹拌接合を行って、該中空接合部材Bの長手方向に延びる複数の接合部を形成することを特徴とする接合製品の製造方法。
【請求項2】
前記中空接合部材Bの前記面板部に設けられた前記凸部のそれぞれが、矩形断面乃至は台形断面を有しており、それら各凸部における先端部の幅が、前記プローブの直径よりも2mm以上大きく、且つ前記リブの厚み以下とされている一方、各凸部における基部の幅が、該先端部の幅と同じかそれよりも大きくされている請求項1に記載の接合製品の製造方法。
【請求項3】
前記中空接合部材Bの各リブの厚みが、前記プローブの直径よりも2mm以上大きく、且つそれら各リブの合計厚みが、該中空接合部材Bの前記面板部を連結する外壁部間の距離の1/2以下とされている請求項1又は請求項2に記載の接合製品の製造方法。
【請求項4】
前記接合部材Aの前記フランジ部間に、前記凸部の形成された中空接合部材Bを嵌入せしめて、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とをそれぞれ重ね合わせるに際し、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの凸部との間隙が、0.05〜0.5mmとされる請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の接合製品の製造方法。
【請求項5】
前記接合部材Aとして、前記フランジ部の対向方向内側に位置する角部に、面取り加工を施したものを用いる請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の接合製品の製造方法。
【請求項6】
前記フランジ部の端面と前記面取り加工によって形成された面との為す面取り角度が、15°〜45°であり、且つ、該面取り加工によって、該フランジ部の先端部の厚みが、元の厚みの80%以下とされる請求項5に記載の接合製品の製造方法。
【請求項7】
互いに対向して平行に延びる平板状のフランジ部が一体的に形成されてなる構造の接合部材Aに対して、その対向するフランジ部間に、互いに対向して平行に位置する面板部を有する中空接合部材Bの端部を嵌め込んで、摩擦撹拌接合してなる接合構造であって、
前記中空接合部材Bとして、前記面板部の対向面間にそれぞれ設けられた複数のリブにて該面板部がそれぞれ一体的に連結されていると共に、該面板部の、該複数のリブが配設された部位の外表面に、先端部が平坦化された凸部が該複数のリブに沿ってそれぞれ一体的に形成された形材が用いられ、該中空接合部材Bが、その接合すべき端部において、前記接合部材Aのフランジ部間に嵌め込まれて、該接合部材Aのフランジ部と該中空接合部材Bの面板部とがそれぞれ重ね合わされた状態において、該接合部材Aと該中空接合部材Bとが、該中空接合部材Bの該凸部に沿って重ね摩擦撹拌接合されて、複数の接合部が該中空接合部材Bの長手方向に延びるように形成されていることを特徴とする接合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate