説明

接合部材の作成方法および接合構造

【課題】被接合部材を接着剤で接合して形成される接合部材の接着強度を向上させる。
【解決手段】2つの被接合部材110、120を接着剤130で接合して接合部材100を形成する際に、接合される2つの被接合部材110、120のうちの少なくとも一方の被接合部材110の接合面111に互いに連通しない複数の長溝112を近接させて設けて、接合面111に、表面粗さが算術平均粗さで25μm以上100μm以下となる規則性のある凹凸形状を形成したのちに、2つの被接合部材110、120を接合して、接着剤130と接合面111との濡れ性が向上するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着材により2つの部材を接合して得られる接合部材の作成方法および接合部材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部材を接着材により接合して形成される接合部材、例えば貼り合わせ基板の接合界面に気泡が残留しないようにする方法として、特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平9−63912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されたものは、接合される2つの部材の接合面に逃げ溝を設けることで、これら2つの部材を接合した際に、接合界面に残留する気泡が逃げ溝を介して排出、若しくは逃げ溝に吸収されるようにして、接合界面に残留する気泡(残留気泡)が減少するようにしていた。
【0004】
しかし、残留気泡を十分に減少させることのできる程度に複数の溝を設けると、溝の端部において接着剤との濡れ不良が起こることがある。この場合、接着剤が溝の内部へ十分に行き渡らないために、接着剤が行き渡らない部分から剥離が生じ易くなり、接合部材において十分な接着強度が得られないことがあった。
【0005】
よって、本発明は、接着剤との濡れを向上させて接合部材の接着強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2つの部材を接着材料で接合して接合部材を形成する際に、接合される2つの部材のうちの少なくとも一方の接合面に、複数の長溝を互いに連通しないようにしつつ近接させて設けて凹凸を形成したのちに、2つの部材を接合するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着材料が複数の長溝を通って接合面の全体に行き渡るようになると共に、接合面に形成した凹凸により接着材料と接合部材との接触面積が増大する。
【0008】
よって、接着材料を接合面の全体に行き渡らせたうえで、接着材料と接合面との濡れ性を向上させることができるので、接合により得られる接合部材の接着強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、2つの被接合部材を接着剤により接合して形成される接合部材を説明する図である。図2は、被接合部材の接合面に形成される長溝を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は、(a)における面Aで被接合部材を切断した断面の一部を抜き出した図である。
【0011】
実施例にかかる接合部材100は、2つの被接合部材110、120を接着剤130により接合して形成される。
【0012】
図2に示すように、被接合部材110の接合面の全面にわたって、複数の線状の長溝112が、互いに連通しないようにしつつ近接させて設けられており、接合面111には、これら複数の長溝112により規則性のある微細な凹凸、すなわち緻密な縞模様が形成される。
【0013】
図2の(b)に示すように、断面視において略逆三角形形状(或いはV字形状)の断面形状の長溝112を接合面111の表面に並べて形成することで、接合面111の表面に断面視において略三角形形状の突起113が並ぶようにして、規則性のある微細な凹凸が接合面111の表面に形成されるようにしている。
【0014】
接着剤と接合面に形成された微細な凹凸との関係について説明する。
【0015】
接着剤130と接合面111との親和性(濡れ性)は、接着強度に大きく影響を及ぼす。濡れ性は、接着剤、被着物(接合面の材料組成)、そして接着剤が用いられる雰囲気における気体の、3つの間での界面張力の相互作用に応じて決まり、接触角θという指標で一般に示される。
【0016】
ここで、接触角θは、下記式(1)により定まる。
【0017】
cosθ=(Ta−Tb)/Tc ・・・(1)
Taは固体と気体との界面張力であり、Tbは固体と液体との界面張力であり、Tcは液体と気体との界面張力である。
【0018】
接触角θの値が小さいほど濡れ性が高くなる。この接触角θは、平滑な接合面に滴下した液体状の接着剤が接合面に形成する液滴において、液滴の外周の接線と接合面との交差角、すなわち接線と接合面の表面とがなす角度のうちの液滴側の角度である。
【0019】
ここで、液滴が形成される表面が、同一の材料から構成される場合であっても、その表面に形成された微細な凹凸の大きさが、接着剤の液滴よりも小さい場合には、その凹凸により接触角が影響を受け、接触角の値が、理想的平滑面における接触角の値と異なる値となることが知られている。
【0020】
表面に凹凸が存在する場合の接触角θaは、理想的平滑面での接触角θbとの間で、下記式(2)で示す関係を満たすことが知られている。
【0021】
cosθa=r・cosθb ・・・(2)
ここで、rは、理想的平滑面の表面積に対する凹凸面の表面積増加割合を示し、r>1である。
【0022】
したがって、接着剤130の液滴の大きさよりも微細な凹凸を設けて接合面111の表面積を増大させると、接着剤130と接合面111の表面との接触面積が理想的平滑面の場合よりも大きくなり、接着剤130と接合面111との濡れ性が向上する。その結果、接着剤130と接合面111との親和性を増大させることが可能であるので、接合部材100の接着強度の向上と、接合界面に残存するボイドの低減を図ることができる。
【0023】
本実施例では、接合面111の表面粗さが算術平均粗さで100μm以下となるように長溝112を設けることで、接着剤130の液滴の大きさよりも微細な凹凸が接合面111に形成されるようにしている。
【0024】
ここで、本実施例で用いる接着剤130には、2つの被接合部材110と被接合部材120とを接合することのできる成分の他に、接着特性の向上のために直径100μm前後の繊維からなるフィラーが含まれている。
【0025】
そのため、接合面111の表面粗さが100μmよりも大きくなると、長溝112がフィラーにより塞がれて、接着剤130が長溝112を通って接合面111の全体に行き渡ることができなくなることがあるので、接合面111の表面粗さの上限を100μmに設定して、長溝112にフィラーが入り込まないようにしている。
【0026】
また、フィラーの長溝112への入り込みを防止するという観点から、接合面111の表面粗さ(長溝112の幅)が極小であることが好ましいが、極小になりすぎると逆に、接着剤130の長溝112を通った接合面111全体への広がりが阻害されてしまう。
【0027】
かかる場合、長溝112に沿った接着剤130の指向性を持つ広がりが阻害されると共に、接着剤130と接合面111とのぬれ性が悪くなってしまう。
【0028】
そのため、本実施例では、2つの被接合部材110、120の接合に用いられる接着剤130の粘度に基づいて、接合面111の表面粗さが算術平均粗さで25μm以上となるように長溝112を設けるようにしている。
【0029】
すなわち、本実施例では、接合面111の表面粗さが、算術平均粗さで25μm以上100μm以下となるように長溝112を設けることで、接着剤130の長溝112を通った接合面111全体への広がりと、接着剤130と接合面111とのぬれ性が確保されるようにしている。
【0030】
なお、接合面111に形成される長溝は、従来公知の粗面化の方法の一つであるヘアライン処理、機械的な切削法、そして所望の長溝のパターンを形成した型を用いたプレス加工法などにより形成される。
【0031】
図3は、2つの被接合部材110、120を接着剤130で接合して接合部材100を形成する際の接合方法を説明する図である。
【0032】
ここで、被接合部材110、120のうち、被接合部材110の接合面111に、図2の(a)に示した長溝が形成されているものとする。
【0033】
始めに、長溝の形成されていない被接合部材120の接合面121に、接着剤130を塗布する。この状態が図3の(a)である。
【0034】
ここで、接合面121に塗布する接着剤は、2つの被接合部材110と被接合部材120とを接合することのできる成分を主成分として含む接着剤が用いられ、被接合部材110、120を構成する材料に応じて適宜決定される。ここでは、被接合部材110と被接合部材120とを完全に接合する前の段階で流動状態にある接着剤(液体状接着剤)を用いるが、シート状に加工されている接着剤を用いるようにしても良い。
【0035】
よって、発明における用語「接着材料」は、シート状に加工された接着剤と、液体状の接着剤の両方を意味するものとする。
【0036】
続いて、長溝が形成されている被接合部材110の接合面111を、被接合部材120の接合面121と接合する。この状態が図3の(b)である。
【0037】
そして、被接合部材110の長溝112の形成方向に沿って、被接合部材110を摺動させて、被接合部材110の接合面111と被接合部材120の接合面121との摺り合わせを行う。
【0038】
ここで、被接合部材110には、図3の(c)において矢印Xで示す方向に延びる長溝が複数形成されているので、被接合部材110をこの長溝に沿う方向(図中矢印X参照)において往復移動させる。この状態が図3の(c)である。
【0039】
このように、2つの被接合部材110と被接合部材120とを接合することで、接合面111、121と、接着剤130とのなじみを向上させることができ、さらに、接着剤130に内包されている気泡の長溝112内への排出を促すことができる。
【0040】
また、長溝112の形成方向に沿って被接合部材110、120に押圧力を作用させながら、被接合部材110、120の摺り合わせを行うことで、接着剤130の長溝112に沿う方向への押し広がりを促し、なじみの向上と気泡の排出効果を最大限、発揮させることが可能となる。
【0041】
この接合方法では、接着剤を塗布して被接合部材同士を接合する際に、一方の被接合部材を他方の被接合部材に向けて押圧して、接着剤が接合面に沿って押し広げられるようにすることで、均一な接着剤の層が被接合部材の間に形成されるようにしている。
【0042】
ここで、被接合部材の接合面に形成する微細な凹凸に一定の規則性を持たせると、被接合部材の押圧時に、接合面に沿って押し広げられる接着剤の流れ方向が、微細な凹凸により規定されて、接着剤が接合面の全体に均一に広がるようにすることができる。
【0043】
これにより、さらなる接着強度の向上と、接着剤に包含される気泡を低減させることが可能となる。また、接着剤は、水分と比較すると格段に粘度が高いので、接着面に大きく凹凸が施されていると、接着剤が凹部内に浸透しづらくなるという問題が生ずるが、算術平均粗さで100μm以下の表面粗さとなる微細な凹凸を接合面に形成するようにした場合は、上記したような問題は生じない。
【0044】
以上の通り、本実施例では、2つの被接合部材110、120を接着剤130で接合して接合部材100を形成する際に、接合される2つの被接合部材110、120のうちの一方の被接合部材110の接合面111の全面にわたって複数の長溝112を互いに接しないようにしつつ近接させて設けて、接合面111に規則性のある微細な凹凸を形成したのちに、2つの被接合部材110、120を接合する構成とした。
【0045】
これにより、接着剤130が、複数の長溝112を通って接合面111の全体に行き渡るようになり、さらに長溝により接合面111に形成した微細な凹凸により、接着剤130と接合面111との接触面積が増大して、接着剤130と接合面111との濡れ性が向上する。よって、接合部材100の接着強度を向上させることができる。
【0046】
また、接着剤130に残留する(内包される)気泡は、2つの被接合部材110と被接合部材120とを接合する際に、接合面111に形成された長溝112を通って排出、若しくは長溝112により吸収される。
【0047】
よって、被接合部材110と被接合部材120との間に形成される接着剤130の層に残留する(内包される)気泡の量を低減させて、接合部材100の接着強度を一層向上させることができる。
【0048】
この際、接合面111の表面粗さが算術平均粗さで25μm以上100μm以下となるように複数の長溝112を設ける構成とした。
【0049】
これにより、接着剤130と接触する接合面111の表面積が、接合面を理想的平滑面とした場合よりも広くなるので、被接合部材110、120同士を接合して得られる接合部材100の接着強度を向上させることができる。
【0050】
また、接合面111には、複数の長溝112が縞模様状に設けられている構成とした。
【0051】
これにより、被接合部材110、120を接合する際に接合面111に作用する押圧力の分布が不均一となるような場合であっても、接着剤130が長溝112を通って接合面111の全体に行き渡るようになり、接着強度の向上と残存気泡の低減の両方を実現できる。
【0052】
とくに、接合面111において複数の直線状の長溝112を平行に配置して、規則性を持った縞模様が接合面111に現れるようにしたので、2つの被接合部材110と被接合部材120との接合時に、接着剤130が、複数の直線状の長溝112に沿って接合面111の全体に行き渡るようになる。
【0053】
これにより、接着剤130が広がり難い部分にも長溝112を伝って接着剤130が行き渡るようになるので、接着剤130が広がり難い部分への接着剤130の流れを改善できる。
【0054】
よって、この場合にもまた、接着強度の向上と残存気泡の低減の両方を実現できる。
【0055】
また、規則性を持った縞模様を、ヘアライン処理、機械的切削、プレス加工により形成する構成とした。
【0056】
よって、ヘアライン処理の場合は、被接合部材同士を接合する直前に、簡単な処理を施すだけで、接合面へ縞模様を形成できる。よって、工程の自由度が増加し、コストダウンが可能となる。
【0057】
また、機械的切削の場合は、化学的処理により縞模様を形成する場合よりも簡単に、接合面へ縞模様を形成でき、面加工における機械的切削時の切削痕を縞模様状とすることで、改めて工程を追加する必要がなく、コストダウンが可能となる。
【0058】
さらに、プレス加工の場合は、所望のパターンを作成した型を用いることで所望の縞模様が形成された被接合部材を得ることができるので、量産時の工程を簡素化でき、製造時間の短縮、とこれに伴うコストダウンを実現できる。
【0059】
さらに、2つの被接合部材110、120の接合は、接合面111、121の間に接着剤130を介在させた状態で、被接合部材110、120を接合面111に形成された長溝112に沿って摺動させながら行う構成とした。
【0060】
これにより、従来の接合部材の接合時に行われていた被接合部材同士を押圧して接合する方法の場合に生じていた問題、すなわち、接着剤の押し広がり不良が改善される。また、摺動により接着剤130を接合面111の全体に行き渡らせることができるので、接合面111に対する接着剤のなじみを向上させることができる。
【0061】
また、長溝112により接合面111の表面に現れた縞模様に沿って被接合部材110、120を摺動させることで、縞模様に沿う方向への接着剤の押し広がりが促進される。
【0062】
よって、この場合にもまた、接着強度の向上と、接着剤に含まれる気泡の排出による残存気泡の低減の両方を実現できる。
【0063】
また、複数の長溝112は、断面視において三角形形状の突起が接合面111に並ぶように形成される構成としたので、接着剤130と接触する接合面111の表面積が広くなり、被接合部材110、120同士を接合して得られる接合部材100の接着強度を向上させることができる。
【0064】
図4は、規則性のある微細な凹凸が形成されるように加工が施された接合面の断面形状の変形例を説明する図である。
【0065】
上記実施例では、断面視において略三角形形状の突起113が接合面111に並ぶように複数の長溝112を設けることで、規則性のある微細な凹凸が表面に形成された接合面を形成していた。
【0066】
この際、断面視において略逆三角形形状の断面形状の長溝の幅方向における端部が、隣接する長溝の幅方向における端部と一致するようにして、断面視において略三角形形状の突起113が接合面111の表面に並ぶようにしていた。
【0067】
しかし、接合面に形成される長溝の断面形状は、この形状に限定されるものではなく、例えば、図4の(a)に示すように、長溝112と長溝112の間の突起113部の先端側をカットして略平面となる平坦部113aが形状されるようにした長溝とするようにしても良い。
【0068】
また、(b)に示すように底部に略平面となる平坦部112aを有する長溝112とすること、そして(c)に示すように、(a)および(b)に示す長溝を任意の比率で備えるようにしても良い。
【0069】
このような形状にすることによっても、規則性のある微細な凹凸が形成された接合面を形成することができるので、接着剤と接合面との濡れ性の向上と、接合部材の接合強度の向上が可能となる。
【0070】
さらに、被接合部材の押圧により被接合部材同士を接合して接合部材を形成する際に、接着剤が長溝を伝って接合面の全体に行き渡るようになるので、接着剤の押し広がり性も向上する。
【0071】
さらに、接着剤に内包される気泡が長溝により排出されて、接合界面に残留する気泡の量を減少させることができるので、より一層の接着強度の向上を図ることができる。
【0072】
図5は、接合面に形成される長溝の変形例を説明する図である。
【0073】
上記実施例では、接合面において複数の直線状の長溝を平行に配置して規則性を持った縞模様を形成する構成としたが、規則性を持った縞模様の形態は前記した形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、図5の(a)に示すように、被接合部材が円柱形状を有している場合、接合面においてそれぞれ直径の異なる複数の円状の長溝114を同心に配置して、規則性を持った波紋状の縞模様を形成するようにしても良い。ここで、波紋状の縞模様の長溝は、機械的切削法により簡便に形成可能である。
【0075】
図5に示す円柱形状の被接合部材110Aと、矩形の板状の被接合部材120との接合を説明する。
【0076】
円柱形状の被接合部材110Aの場合、接着剤130を接合面に塗布したのちに、2つの被接合部材110Aと被接合部材120とを接合し、被接合部材110Aを被接合部材120の上で摺動させる。
【0077】
この際、被接合部材120に対する被接合部材110Aの位置を変えずに被接合部材110Aを図中矢印Zで示す方向に回転させるのではなく、図5の(c)に示すように、被接合部材110Aを上方向から見た場合における外周上の点(基準点)Aが、図中符号Yを付した点線で示すように、被接合部材120の上で楕円を描き、さらに当該楕円の中心が被接合部材110Aの外周を規定する円状の線分115の上を周方向に沿って移動して、被接合部材120の上で円を描くように、被接合部材110Aを被接合部材120の上で摺動させる。
【0078】
これにより、被接合部材110Aと被接合部材120との間の接着剤130の縞模様状の長溝112に沿った方向の押し広がりが促され、接着剤130と被接合部材110Aに形成された長溝114との濡れ性を向上する。よって、被接合部材110Aと接着剤130とのなじみを向上させる。
【0079】
さらに、上記実施例の場合と同様に、被接合部材110Aと被接合部材120との間の接着剤130の層に内包される気泡の排出効果を最大限に発揮させることが可能となる。
【0080】
図6は発明にかかる接合構造の応用例を説明する図である。
【0081】
本発明にかかる接合構造は、電圧源に接続されて、スイッチング素子をオンオフするパルス動作によってパルス状電圧を生成して負荷の駆動電流を制御する電力変換器に応用可能である。
【0082】
この場合、電力変換器のスイッチング素子が実装された基板510の接合面と、放熱器520の接合面とのうちの少なくとも一方に、上記した長溝を設けたのちに、基板510と放熱器520とを接着剤530により接合する。
【0083】
これにより、図6の(b)に示すように、スイッチング素子などの発熱源511から放熱器520に向かう熱の流れの経路上にある接着剤530の層に内包される気泡の量を減少させることができる。
【0084】
よって、気泡に起因する不要な熱抵抗の増加を防いで電力変換器の放熱性能を安定化させることが可能となり、さらに、電力変換装置の小型化が可能となる。
【0085】
上記実施例においては、接合される2つの被接合部材のうちの少なくとも一方の被接合部材の接合面に長溝を設けて、規則性のある微細な凹凸が接合面に形成されるようにしたが、2つの被接合部材の両方の接合面に長溝を設けて、規則性のある微細な凹凸が接合面に形成されるようにしても良い。
【0086】
また、直線状や円状の長溝のみならず、曲線状や流線状の長溝を、互いに接しないように複数設けて、接合面に縞模様状が現れるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施例にかかる接合部材を説明する図である。
【図2】被接合部材の接合面に形成される溝を説明する図である。
【図3】被接合部材を接着剤で接合して接合部材を形成する際の接合方法を説明する図である。
【図4】被接合部材の接合面に形成される溝の変形例を説明する図である。
【図5】被接合部材の接合面に形成される溝の他の変形例を説明する図である。
【図6】実施例にかかる接合構造の応用例を説明する図である。
【符号の説明】
【0088】
100 接合部材
110 被接合部材
110A 被接合部材
111 接合面
112 長溝
114 長溝
120 被接合部材
130 接着剤
510 基板
511 発熱源
520 放熱器
530 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材を接着材料で接合して接合部材を形成する接合部材の作成方法であって、
接合される2つの部材のうちの少なくとも一方の接合面に、互いに連通しない複数の長溝を近接させて設けて凹凸を形成したのち、前記2つの部材を接合するようにした
ことを特徴とする接合部材の作成方法。
【請求項2】
前記接合面の表面粗さが、算術平均粗さで25μm以上100μm以下となるように、前記複数の長溝を設ける
ことを特徴とする請求項1に記載の接合部材の作成方法。
【請求項3】
前記複数の長溝は、縞模様状に設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合部材の作成方法。
【請求項4】
前記縞模様は、複数の直線状の長溝を平行に配置して形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の接合部材の作成方法。
【請求項5】
前記縞模様は、それぞれ径の異なる複数の円状の長溝を同心に配置して波紋状の縞模様に形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の接合部材の作成方法。
【請求項6】
前記2つの部材の接合は、前記2つの部材の間に前記接着材料を介在させた状態で、前記部材を摺動させながら行う
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの何れか一項に記載の接合部材の作成方法。
【請求項7】
前記2つの部材の接合は、前記接合面に形成された長溝に沿って、前記部材を摺動させながら行う
ことを特徴とする請求項6に記載の接合部材の作成方法。
【請求項8】
前記2つの部材の接合は、前記2つの部材の間に前記接着材料を介在させた状態で、一方の部材の基準点が、他方の部材の上で楕円を描きつつ、かつ描いた楕円の中心が前記他方の部材の上で円を描くように、前記一方の部材を摺動させながら行う
ことを特徴とする請求項5に記載の接合部材の作成方法。
【請求項9】
前記複数の長溝は、断面視において三角形形状の突起が前記接合面に並ぶように形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の接合部材の作成方法。
【請求項10】
前記三角形形状の突起の先端側は切断されて平坦部が形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載の接合部材の作成方法。
【請求項11】
前記長溝は、ヘアライン処理により形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの何れか一項に記載の接合部材の作成方法。
【請求項12】
前記長溝は、機械的切削により形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの何れか一項に記載の接合部材の作成方法。
【請求項13】
前記長溝は、プレス加工により形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの何れか一項に記載の接合部材の作成方法。
【請求項14】
2つの部材を接着材料で接合して形成される接合部材の接合構造であって、
接合される2つの部材のうちの少なくとも一方の接合面の全面に、複数の長溝が互いに連通しないようにしつつ近接させて設けられて、前記接合面に前記複数の長溝からなる縞模様が形成されている
ことを特徴とする接合部材の接合構造。
【請求項15】
前記接合面の表面粗さが、算術平均粗さで25μm以上100μm以下となるように、前記複数の長溝は設けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の接合部材の接合構造。
【請求項16】
前記2つの部材のうちの一方は、電圧源に接続されて、スイッチング素子をオンオフするパルス動作によってパルス状電圧を生成して負荷の駆動電流を制御する電力変換器であり、他方は放熱器である
ことを特徴とする請求項14または請求項15に記載の接合部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−126682(P2010−126682A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304798(P2008−304798)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(302019131)イデアシステム株式会社 (10)
【Fターム(参考)】