説明

接合部材及び接合構造

【課題】複数の布地ピース等を自由に組み合わせて接合するために最適であり、且つ、そのような組み合わせを簡易に行うことができる接合部材及び接合構造を提供する。
【解決手段】布地ピースN,Nの端部には、複数の接合部材1が、その座金3によって連設固定されている。接合部材1は、リング2の一方端21a側に座金3が設けられており、それに対向する部位に突起4が形成されたものである。接合部材1,1同士は、それらのうちの何れか一方の接合部材1におけるリング2とその他方端21bとの間から、他方の接合部材1のリング2が交差するように遊挿されて鎖状に絡んで結合され、これにより、それらの接合部材1,1が固着された布地ピースN,Nが接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部材、例えば、布地(織布、不織布、及び編物を含む)、その他の単位物品や単位構造片(ピース、個品、個片)といった単位部材同士を接合するための接合部材(接合具)及びそれを備える接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの布地等の端部同士を接合する種々の接合構造、例えば、ホックやスナップ等の形状が凹凸状に異なる2個1組で布地等を接合するもの、ファスナー等の留め具により布地等を接合するもの、マッジックテープ(登録商標)等の面的に着脱可能に布地等を接合するもの(面ファスナー)等が知られており、かかる接合構造により、所望のデザインの衣服、包装具、日用品等が構成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5592691号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の方法を用いて布地ピース同士をそれらの端部で接合することにより、それら複数の布地ピースを自由に組み合わせることには様々な制限が存在していた。
【0005】
例えば、ホックやスナップ等の接合構造は、接合対象である布地ピース等における予定された特定箇所に形状の異なる部材を取り付けておくものであるため、互いに対応する部材が取り付けられた箇所で接合しなければならず、接合可能部位が限定されてしまい、複数の布地ピースの自由な組み合わせを提供することができない。また、ファスナー等の接合構造には、線上に並んだ務歯(エレメント)を噛み合わせて両側を固定するスライダー等の補助部材が必要であり、さらに、ホックやスナップ等と同様に、接合可能箇所が限定されてしまい、複数の布地ピースの自由な組み合わせを提供することができない。
【0006】
またさらに、そもそも、ホックやスナップ等は「留め具」であって、上述の如く、予め設定された箇所で嵌め合わせたり掛け合わせたりする必要がある。そうすると、例えば、その留め具が目視できない位置に取り付けられているときや、接合する布地を過度に引っ張らないと留め具の部材同士を当接させることができないとき等に、一対の部材を留め難い場合がある。こうなると、作業性が極度に低下してしまうおそれがある。そして、かかる不都合は、それらホックやスナップ等に特有の形状に起因している場合が多いものと認められる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、複数の布地ピース等を自由に組み合わせて接合するのに最適であり、且つ、そのような組み合わせを簡易に行うことができる新しい接合部材(接合具)及びそれを用いた接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による接合部材は、少なくとも2つの単位部材を相互に接合するための接合部材であって、両端が自由端であり且つそれらの両端(部)が行き違いになるように形成された環状胴部と、環状胴部の一方端側に設けられており且つ単位部材の端部に固定される基座部と、環状胴部において基座部に対向する部位に設けられた少なくとも1つの凸状係合部とを備えており、環状胴部の他方端は、基座部を越えて凸状係合部側に位置しており、且つ、 環状胴部における一方端と他方端との間の重なり部位は、互いに離間して又は離間可能に設けられている。
【0009】
このように構成された接合部材において、環状胴部は、その一方端側に設けられ且つ布地ピース等の単位部材に固定される基座部から他方端に向かって環状に延在する。環状胴部の他方端は、基座部側に戻って更に基座部を通り越し、基座部に対向して配設された少なくとも1つの凸状係合部側へ延びている。また、環状胴部の他方端は、自由端であり、さらに、環状胴部が周回してその経路上で重なり合った部分、つまり、環状胴部における一方端と他方端との間の重なり部位は、固着されておらず、互いに離間して又は離間可能に設けられている。よって、環状胴部とその他方端との間から、別の接合部材の環状胴部が交差するように遊挿され(離間距離が短い場合、環状体の胴部同士が摺動するように挿嵌され)、接合部材同士が鎖状に組み合わされる。
【0010】
この際、それらの接合部材は、遊動可能に結合され、それぞれの凸状係合部が係合するように動きが規制され得る。これにより、それらの接合部材が固定された単位部材同士が接合される。また、接合部材の結合を解いて単位部材を分離するには、逆の動作によって、何れか一方の接合部材の環状胴部を、他方の接合部材の環状胴部とその他方端の間から抜き出して取り外せばよい。なお、一の接合部材に組み合わされる別の接合部材は、凸状係合部の数に応じて、又は、その数に限らず、単数でも複数であってもよい。
【0011】
このように、接合部材が簡易な構造の環状胴部を備えるとともに、複数の接合部材が組み合わされる際、一の接合部材における環状胴部とその他方端との間の隙間が、他の接合部材の言わば係合口及びに抜出口として機能するので、任意の単位部材同士の組み合わせ作業を極めて簡便に行うことができる。
【0012】
また、接合部材同士の係合動作をより平易ならしめ、且つ、それらの係合が不用意に又は簡単に外れないようにするべく、環状胴部の他方端が凸状係合部の突出方向に向かって設けられていると好適であり、さらに、環状胴部の重なり数が2重であることが好ましい。この場合、より具体的には、環状胴部における基座部と他方端との延在基軌道に沿う距離は、その延在基軌道の全長の1/4以下又は略1/4以下である態様を例示することができる。
【0013】
ここで、「環状胴部の延在基軌道」とは、環状胴部に凹凸が形成されていないと仮定したときの仮想的な平滑延在軌道を示し、その具体例については、後述する実施形態において説明する。また、「凸状係合部の突出方向」とは、凸状係合部が環状胴部の外方へ突設されている場合、環状胴部の中央よりも凸状係合部側の領域に向かう方向であり、その具体例についても、後述する実施形態において説明する。
【0014】
またさらに、凸状係合部が環状胴部の延在基軌道よりも外方に突設されたものであっても好適である。かかる凸状係合部の突設形状については、特に制限されず、例えば、凸状係合部の周辺が弧状に形成されており、且つ、凸状係合部が乳頭形状である態様が挙げられる。このようにすれば、組み合わされる接合部材が、それぞれの凸状係合部においてより確実に係合し得るので、接合部材によって接合された単位部材の乱れが抑制され得る。
【0015】
更に具体的には、環状胴部が屈曲された部位から基座部が構成され、及び/又は、基座部が環状胴部の一部を保持する台座を有するように構成されてもよい。後者の場合、例えば、環状胴部が基座部の台座に摺動可能に保持されていれば、環状胴部に外力が作用した(印加された)とき、環状胴部が基座部に対して移動し得る。これにより、基座部に無理な力がかからないので、基座部に固定された単位部材が過度に引っ張られたりして接合部材や単位部材が破損したり、両者の固定が破断したりすることが有向に抑止される。
【0016】
さらにまた、凸状係合部が弧状をなしており、その弧周を含む仮想的な平面を基準にして一方の弧端側の部位が他方の弧端側の部位よりも凸設又は凹設されていても好適である。このようにすれば、対向した状態で組み合わされる一対の接合部材の凸状係合部の形状を互いに相補的なものとすることができる。その結果、一方の凸状係合部が他方の凸状係合部に嵌合するように係合することにより、それらが組み合わされたときの嵩高さが低減され、接合された単位部材の平坦性が高められる。
【0017】
また、本発明による接合構造は、本発明の接合部材を複数備えるものであり、好ましくは、それらの複数の接合部材が、互いに同一の形状及び/又はサイズからなるものである。その場合、複数の接合部材は、布地ピース等の単位部材の端部の全周(全周縁)に亘って固定され、これにより、接合構造が単位部材の端部の全周(全周縁)に亘って形成されていてもよく、或いは、接合部材が単位部材の端部の一部にのみ設けられ、接合構造がその部位のみに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接合部材及び接合構造によれば、接合部材の組み合わせは任意であり、また、その接合部材同士は、基座部が単位部材に固定され、且つ、その基座部に対向設置された凸状係合部において当接して結合することから、単位部材同士を接合する部位の制約を緩和しつつ、単位部材を所望の間隔で接合することができる。また、これにより、単位部材における接合可能範囲を広く設定することができるので、単位部材の更なる自由な組み合わせを提供することができる。
【0019】
さらに、環状胴部が鎖状に係合して接合部材の結合が生起されるので、個々の接合部材の動きの自由度が高められ、接合される単位部材の柔軟な動き(例えば、上下左右に対しての動き)を実現できる利点がある。しかも、接合部材が簡易な構造を有する環状胴部を備えるとともに、一の接合部材における環状胴部とその他方端との間の隙間が、他の接合部材の係合口及びに抜出口として機能するので、任意の単位部材同士の接合を極めて簡便に実施することができ、その作業性及び生産効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による接合部材の好適な一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明による接合構造の好適な一実施形態の構成を概略的に示す斜視図であり、図1に示す接合部材が固定された複数の単位部材が接合された状態の一例を示す。
【図3】本発明による接合部材の好適な他の一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明による接合部材の好適な更に他の一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明による接合部材における一部の他の形態例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明による接合部材における一部の更に他の形態例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。またさらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0022】
図1は、本発明による接合部材の好適な一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。なお、本実施形態における単位部材は、衣服用の布地ピース(布地、生地等)を例にとって説明するが、本発明はそれに制限されず、プラスチック製部材や紙地等を含む種々の部材に適用することができる。
【0023】
接合部材1は、無終端ではなく、すなわち両端(後述する一方端21a及び他方端21b)が自由端であり、且つ、それらの両端(部)が行き違いになるように形成されたリング2(環状胴部)を備えている。このリング2は、例えば、金属や樹脂等の線材等が円形に屈曲されてなるものである。リング2の一方端21a側には、布地ピースN(単位部材)の端部に固定される座金3(基座部)が設けられている。この座金3は、座板31の長辺に胴筒32が跨設されており、座板31の短辺寄りに穿設された孔3hにおいて、布地ピースNに例えば縫着される(後述する図2参照。)。リング2は、この座金3の胴筒32を挿通しており、リング2の一方端21aが例えばやや太く拡径されていることにより、その一方端21a側が座金3から抜出しないように構成されている。換言すれば、座金3は、リング2の一部を保持する台座として機能するものである。
【0024】
また、リング2における座金3に対向する部位には、リング2の一部が屈曲されてなる突起4(凸状係合部)が形成されている。なお、図1において、一点鎖線で示す仮想軸A1は、リング2によって画成される円の略中心C1並びに座金3及び突起4のそれぞれの略中央を結ぶ仮想線を示し、仮想軸A2は、その円の中心C1を通り、且つ、仮想軸A1に直交する仮想線を示す。また、座金3に「対向する部位」とは、突起4の如く、仮想軸A1とリング2との交点K1及びその周辺の部位(座金3に略180度対向する部位)だけではなく、仮想軸A2とリング2との交点K2,K3を結ぶ周上の部位も含む概念である。
【0025】
突起4は、図示のとおり、リング2の延在基軌道22よりも外方に突設された乳頭形状をなしている。ここで、延在基軌道22は、図1に破線で示す如く、環状胴部に相当するリング2が突起4を有していないと仮定したときの仮想的な平滑延在軌道(リング2の延在軸に沿う軌道)を示す。
【0026】
このように、リング2は、その一方端21a側に設けられた座金3から、他方端21bに向かって環状に延在しており、さらに、座金3側に戻ってその座金3を通り越し、他方端21bが突起4側に位置するように、且つ、突起4の突出方向に向かって延びている。なお、突起4の突出方向とは、図1において矢印Y1で示す方向だけではなく、リング2の中央よりも突起4側の領域に向く方向、すなわち、仮想軸A2よりも突起4が存在する領域4Rに向く方向であり、例えば、図示の他方端21bが向く方向(矢印Y2で示す方向)も突起4の突出方向に含まれる。
【0027】
より具体的には、リング2は、一方端21aと他方端21bが行き違う周領域W1において重なり数が2重になっており、他の周領域では重なっていない。また、リング2の他方端21bは、自由端であり、さらに、リング2が周回してその経路上で重なり合った部分(すなわち、リング2における一方端21aと他方端21bとの間の重なり部位である周領域W1)は、固着されておらず、互いに離間して又は離間可能に設けられている。例えば、リング2が金属線材から或いは樹脂成形体として形成されている場合、周領域W1におけるリング2の重なり部位は、互いに非固着状態で接しており、且つ、人手によって容易に引き離すことができるように構成され得る。
【0028】
またさらに、リング2における座金3と他方端21bとの延在基軌道22に沿う距離(仮想軸A1とリング2との交点K4と、他方端21bとの間の弧長)は、その延在基軌道22の全長(リング2の1周分の周軸長さ。重なり部位の長さは2重に算入(カウント)しない。)の好ましくは1/4以下とされている。すなわち、リング2の他方端21bは、交点K2,K4間に位置している。
【0029】
図2は、本発明による接合構造の好適な一実施形態の構成を概略的に示す斜視図であり、一の布地ピースNの端部に沿って複数の接合部材1が連設固定され、且つ、そのようにして接合部材1が固定された複数(2つ)の布地ピースN,Nが接合された状態の一例を示す。布地ピースNは、例えば直線状に延びる端部を有し、接合部材1は、先述したとおり、座金3の座板31に設けられた孔3hにおいて、布地ピースNに糸8等を用いて固定(逢着)されている。
【0030】
そして、接合部材1,1同士は、それらのうちの何れか一方の接合部材1におけるリング2とその他方端21bとの間から、他方の接合部材1のリング2が交差するように遊挿され、図2において一点鎖線で囲まれた範囲Fに示す如く、鎖状に絡んで組み合わされる。これにより、それらの接合部材1,1は、布地ピースN,Nが互いに引き離されるような方向に移動しても、それぞれの突起4同士が係合するように、動きが規制され、且つ、接合部材1,1が遊動可能に結合された状態が保持される。接合部材1,1の他の組み合わせにおいても同様である。その結果、複数の接合部材1が固定された布地ピースN,N同士が確実に且つ安定的に接合される。
【0031】
また、逆の動作によって、結合状態にある接合部材1,1の何れか一方の接合部材1のリング2を、他方の接合部材1のリング2と他方端21bの間から抜出して両者の絡みを取り外すことにより、接合部材1,1の結合を解いて布地ピースN,Nを簡便に分離することができる。
【0032】
このように構成された接合部材1及びそれを用いた接合構造によれば、まず、接合部材1の組み合わせは任意であり、且つ、接合部材1同士は、座金3において布地ピースNに固定され、その座金3に対向して形成された突起4,4が係合することにより結合される。その結果、布地ピースN,N同士を接合する部位の制約を軽減することができ、しかも、布地ピースN,Nを所望の間隔で接合することができる。また、布地ピースNにおける接合可能範囲を広く設定することができるので、布地ピースNの更なる自由な組み合わせを提供することができる。さらに、リング2が鎖状に絡んで係合して接合部材1,1が結合されるので、個々の接合部材1の可動自由度が高められ、接合される布地ピースNの柔軟な動き(例えば、上下左右に対しての動き)を実現することができる。
【0033】
加えて、接合部材1が簡易な構造を有するリング2を備え、一の接合部材1におけるリング2とその他方端21bとの間の隙間から、他の接合部材1を遊挿させ且つ抜出することができるので、任意の布地ピースN,N同士の接合を極めて容易ならしめることができ、その作業性及び生産効率を格段に向上させることが可能となる。
【0034】
また、リング2の他方端21bが突起4の突出方向に向かって設けられているので、接合部材1,1同士をより平易に係合させることができ、しかも、それらの係合が不用意に或いは簡単に外れてしまうことをより抑制することができる。さらに、リング2の重なり数が2重であれば、3重以上の重なり数の場合に比して、接合部材1の結合を外れ難くしつつ、両者を係合させる際の操作の手間を軽減することができるので、現実的且つ有用である。
【0035】
またさらに、突起4がリング2の延在基軌道22よりも外方に突設されているので、組み合わされる接合部材1,1は、それぞれの突起4,4おいて確実に係合し易くなる。換言すれば、突起4の存在によって、リング2の動きを規制し易くなり、接合部材1ひいては布地ピースNの不要な動きを抑制することができ、接合部材1,1が予定していない状態で絡まってしまうことを防止し易くなる。
【0036】
さらにまた、リング2が座金3の胴筒32を挿通した状態で保持されているので、リング2に外力が作用したときに、リング2が座金3に対して胴筒32内を相対的に摺動することにより、座金3に固定された布地ピースNが過度に引っ張られること等に起因して接合部材1や布地ピースNが破損してしまったり、両者の固定状態が破断したりすることを有効に防止することができる。
【0037】
図3は、本発明による接合部材の好適な他の一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。接合部材10は、リング2及び座金3に替えてそれぞれリング12(環状胴部)及び座金13(基座部)を備え、且つ、突起4に替えて突起14(凸状係合部)が形成されたこと以外は、前述した接合部材1と同等の思想に基づいて構成されたものである。
【0038】
接合部材10のリング12は、両端(一方端121a及び他方端121b)が行き違いになるように形成されており、金属や樹脂等の線材等が三角形に屈曲されてなる。座金13は、リング12の一方端121a側に設けられており、接合部材1の座金3と同様に布地ピースNの端部に固定される。この座金13は、座板131の長辺側上面に胴筒132が跨設されており、座板131の短辺寄りの例えば四隅に穿設された孔13hにおいて、布地ピースNに例えば縫着される。リング12は、この座金13の胴筒132の内部を挿通して摺動可能に保持されている。このように、座金13も、座金3と同様に、リング12の一部を保持する台座として機能する。
【0039】
また、突起14は、リング2の頂部の一つであって、座金13に対向する部位において、図示矢印Y11で示す方向に突設されている。なお、図3において、一点鎖線で示す仮想軸A11は、座金13及び突起14のそれぞれの略中央を結ぶ仮想線(リング10における座金13が設けられている辺の略垂直二等分線と概ね一致する。)を示す。また、仮想軸A12は、リング12の内側領域における仮想軸A11の中心C11を通り、且つ、仮想軸A11に直交する仮想線を示す。さらに、座金13に「対向する部位」とは、突起14の如く、仮想軸A11とリング12との交点K11及びその周辺の部位(座金13に略180度対向する部位)だけではなく、仮想軸A12とリング12との交点K12,K13間を結ぶ周上(交点K11を含む周上)の部位も含む概念である。
【0040】
さらに、リング12は、座金13から他方端121bに向かって環状に延在しており、さらに、座金13側に戻ってそこを通り越し、他方端121bが突起14側に位置するように、且つ、突起14の突出方向に向かって延びている。なお、突起14の突出方向とは、図3において矢印Y11で示す方向だけではなく、仮想軸A12よりも突起14が存在する側の領域14Rに向かう方向であり、例えば、図示の他方端121bが向く方向(矢印Y12で示す方向)も突起14の突出方向に含まれる。
【0041】
かかる構成により、リング12は、一方端121aと他方端121bが行き違う周領域W11において重なり数が2重になっている。また、リング12は、周回してその経路上で重なり合った部分(重なり部位)である周領域W11において固着されておらず、互いに離間して又は離間可能に設けられている。またさらに、リング12における座金13と他方端121bとの延在基軌道122に沿う距離(仮想軸A11とリング12との交点K4と、他方端121bとの間の軸長)は、その延在基軌道122の全長(リング12の1周分の周軸長さ)の好ましくは1/4以下又は略1/4以下とされている。
【0042】
このように構成された接合部材10においても、接合部材1によるのと同様の作用効果が奏される(冗長な記載を避けるため、ここでは重複する説明を省略する。)。また、リング12に設けられた突起14が、リング12の形状から自ずと形成されるものであることから、例えば接合部材1の突起4のような突出加工を施さなくても、接合部材10同士、又は他の接合部材との連結時の係合状態を確実に生起することができる。
【0043】
図4は、本発明による接合部材の好適な更に他の一実施形態の構成を概略的に示す斜視図である。接合部材100は、リング2に突起4が複数(図4においては2つを例示し、それぞれ突起41,42と記す。これらはともに凸状係合部に相当する。)設けられ、且つ、座金3が設けられた部位において、リング2が上下に重なるように形成されていること以外は、図1に示す接合部材1と同様に構成されたものである。
【0044】
同図において、一点鎖線で示す仮想軸A101,A102,A103は、リング2によって画成される円の略中心C1と、突起41、突起42、及び座金3のそれぞれの略中央(交点K5,K6,K7)を結ぶ仮想線を示し、隣接する仮想線間の交差角の角度は略120度とされている。このように、接合部材100においては、リング2の他方端21bが突起41,42の突出方向に向かって延びている。なお、突起41,42の突出方向とは、図4において矢印Y101,Y102で示す方向だけではなく、仮想軸A2(詳細は図1及びその説明参照)よりも突起41,42が存在する領域104Rに向く方向であり、例えば、図示の他方端21bが向く方向(矢印Y120で示す方向)も突起41,42の突出方向に含まれる。
【0045】
このように構成された接合部材100においても、接合部材1によるのと同様の作用効果が奏される(冗長な記載を避けるため、ここでの重複する説明を省略する。)。また、リング2に複数の突起41,42が設けられているので、一の接合部材100に複数の他の接合部材(例えば、突起4を1つ有する2つの接合部材1,1)が連結されたとき、それらの突起4が、突起41,42に係合することにより、3つ以上の布地ピースNの接合を安定化させることができる。
【0046】
図5は、本発明による接合部材における一部の他の形態例を示す概略斜視図である。同図に示す留め輪30(基座部)は、上述した接合部材1,100のリング2の一方端21aや接合部材10のリング12の一方端121aを含む端部が屈曲されて形成されたものである。かかる留め輪30を設けた場合にも、座金3,13の胴筒32,132からリング2,12が抜出することが防止される。或いは、座金3,13を設けなくても、留め輪30そのものを布地ピースNに縫着等によって固定することができるので、この場合、部品点数を低減することができ、より簡易な構成によって取扱性が高められ、且つ、コストを更に低減することも可能となる。
【0047】
図6は、本発明による接合部材における一部の更に他の形態例を示す図であり、平面視において図1における突起4と同等形状を有する突起43(凸状係合部)を、図1に矢印Y1で示す方向の反対方向から視認した状態を示す模式図である。突起43は、リング2,12等の環状胴部に設けられたものであり、平面弧状をなし、その弧周を含む仮想的な平面Pを基準にして、一方の弧端43a側の部位Taが他方の弧端43b側の部位Tbよりも、図示の上下何れか一方へ凹設されている。逆に言えば、平面Pを基準にして、他方の弧端43b側の部位Tbが一方の弧端43a側の部位Taよりも、図示の他方へ凸設されている。
【0048】
このように構成された突起43を有する接合部材によれば、図6に実線と細一点鎖線で示す如く、対向した状態で組み合わされる一対の接合部材の突起43,43の形状が互いに相補的なものとなり、一方の突起43が他方の突起43に嵌合するように係合し得る。これにより、それらが組み合わされたときの嵩高さHを低減することができ、接合された布地ピースNの平坦性を高めることが可能となる。なお、図示の如く一対の接合部材の突起43,43を上下左右ともに相補的にするには、例えば、その一対の接合部材が互いに鏡像体となるように形成すればよい。
【0049】
なお、上述したとおり、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、座金3,13及び留め輪30は金属でなくてもよい。また、リング2,12は、中実丸棒(丸線)状ではなく、中空管状でも平板状でもよく、リング2,12の略全体が同一径又は同一幅を有していなくてもよく、その形成には、曲げ加工やプレス加工等の通常の手法を適宜選択して用いることができる。さらに、接合部材1,10,100の個体(個片)だけではなく、それらが適宜の部材に複数連設された例えばテープ状のものも、本発明の接合部材に含まれる。またさらに、布地ピースNの形状は、図示に制限されず、任意の形状とすることができる。さらにまた、図2に示す接合部材1,1のうちの少なくとも何れか一方の向きを左右反転した状態で、布地ピースNに固定しても構わない。
【0050】
また、接合部材10の長辺(交点K12,K13が存在する辺)を図示よりも短く形成してもよい(突起14における頂角をより大ききしてもよい。)。加えて、リング2,12等の環状胴部の形状は、円形や三角形に限定されず、楕円形や更なる多角形の他、曲率を有する部位と直線状の部位が混在していてもよいし、或いは、立体的に(3次元的に)任意に屈曲された部位を有していても構わず、更には、適宜の装飾が施されていてもよく、接合部材を組み合わせたときの平坦性を高める観点からは、平面的に(2次元的に)形成されていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、衣服用の布地ピース(布地)等の単位部材を接合する種々の形態及び用途に適用することができる。すなわち、本発明による接合部材及び接合構造によれば、例えば、衣服用の布地ピース毎にクリーニングや保管、また、接合して着用をする場合に、作業者がより手軽に各布地ピースを接合したり、その接合部を取り外したりすることを極めて簡便に実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1,10…接合部材、2,12…リング(環状胴部)、3,13…座金(基座部)、3h,13h…孔、4,14,41,42,43…突起(凸状係合部)、4R,14R,104R…領域、8…糸、30…留め輪(基座部)、21a,121a…一方端、21b,121b…他方端、31,131…座板、22,122…延在基軌道、32,132…胴筒、43a,43b…弧端、A1,A2,A11,A12,A101,A102,A103…仮想軸、C1…中心、K1,K2,K3,K4,K5,K6,K7,K11,K12,K13…交点、N…布地ピース(単位部材)、P…平面、Ta,Tb…部位、W1,W11…周領域、Y1,Y2,Y11,Y12,Y101,Y102,Y120…矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの単位部材を相互に接合するための接合部材であって、
両端が自由端であり、且つ、該両端が行き違いになるように形成された環状胴部と、
前記環状胴部の一方端側に設けられており、且つ、前記単位部材の端部に固定される基座部と、
前記環状胴部において前記基座部に対向する部位に設けられた少なくとも1つの凸状係合部と、
を備えており、
前記環状胴部の他方端は、前記基座部を越えて前記凸状係合部側に位置しており、
前記環状胴部における前記一方端と前記他方端との間の重なり部位は、互いに離間して又は離間可能に設けられている、
接合部材。
【請求項2】
前記環状胴部の他方端が前記凸状係合部の突出方向に向かって設けられており、且つ、前記環状胴部の重なり数が2重である、
請求項1記載の接合部材。
【請求項3】
前記凸状係合部は、前記環状胴部の前記延在基軌道よりも外方に突設されたものである、
請求項1又は2項載の接合部材。
【請求項4】
前記基座部は、前記環状胴部が屈曲された部位から構成され、及び/又は、前記環状胴部の一部を保持する台座を有する、
請求項1乃至3の何れか1項記載の接続部材。
【請求項5】
前記凸状係合部は、弧状をなしており、該凸状係合部の弧周を含む仮想的な平面を基準にして一方の弧端側の部位が他方の弧端側の部位よりも凸設又は凹設されている、
請求項1乃至4の何れか1項記載の接続部材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の接合部材を複数備える接合構造。
【請求項7】
前記複数の接合部材は、互いに同一の形状及び/又はサイズからなる、
請求項6に記載の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39193(P2013−39193A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177055(P2011−177055)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【特許番号】特許第4950353号(P4950353)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(508060988)
【Fターム(参考)】